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特開2024-61175落石防護網構造とその施工方法並びにその土砂撤去方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061175
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】落石防護網構造とその施工方法並びにその土砂撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
E01F7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168939
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】501047173
【氏名又は名称】株式会社ライテク
(71)【出願人】
【識別番号】508112852
【氏名又は名称】株式会社トーエス
(71)【出願人】
【識別番号】512077273
【氏名又は名称】株式会社T.クリエーションセンター
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 豊
(72)【発明者】
【氏名】荒川 晃一
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001PA06
2D001PC03
2D001PD05
2D001PD10
2D001PD11
(57)【要約】
【課題】土砂の漏れ出しを抑制すると共に、網体を補強する。
【解決手段】斜面2に網体123を吊設し、網体123が、上下に間隔をおいて複数段に設けた横ロープ材125,125A,125B,125Cと、これら横ロープ材125,125A,125B,125C間を覆う網とを備えた落石防護網構造である。下段の網体123に、金属製の網である金網124と合成樹脂製の網142を張設したから、網体の下段である網体下段部123Cが補強されると共に、網体下段部123Cにおける崩壊土砂の漏れ出しを削減することができる。また、網体下段部123Cを網体中段部123Bに回動可能に連結したから、網体下段部123Cを上方に引き上げることにより捕捉した崩壊土砂を撤去することができ、また、冬季間には網体下段部123Cを上方に引き上げることにより積雪荷重を回避することができる
【選択図】図38
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に網体を吊設し、前記網体が、上下に間隔をおいて複数段に設けた横ロープ材と、これら横ロープ材間を覆う網とを備えた落石防護網構造において、
下段の前記網体に、金属製の網と合成樹脂製の網を張設したことを特徴とする落石防護網構造。
【請求項2】
前記下段の網体を上段の前記網体に回動可能に連結したことを特徴とする請求項1記載の落石防護網構造。
【請求項3】
前記下段の網体が左右分割可能なことを特徴とする請求項1又は2記載の落石防護網構造。
【請求項4】
前記設置面に複数の防護柵用支柱を立設し、これら防護柵用支柱の間に防護面を設けると共に、この防護面が前記網体と前記設置面との間に位置することを特徴とする請求項1又は2記載の落石防護網構造。
【請求項5】
前記下段の網体は、合成樹脂製の網を張設すると共に、前記合成樹脂製の網の下端を裏面側に折返し、前記合成樹脂製の網の下端を前記設置面に固定し、前記合成樹脂製の網の上に前記金属製の網を重ね合わせ、この金属製の網の上に横ロープ材を配置することを特徴とする請求項1又は2記載の落石防護網構造の施工方法。
【請求項6】
前記下段の網体の横ロープ材を縦方向に切断し、縦方向の切断位置間の前記下段の網体を上方に引上げ、前記下段の網体により捕捉した崩壊土砂を撤去することを特徴とする請求項1又は2記載の落石防護網構造の土砂撤去方法。
【請求項7】
前記下段の網体の横ロープ材を縦方向に切断し、前記縦方向の切断位置の上部間で下段の網体の上部を切断し、縦方向の切断位置間の前記下段の網体を外し、前記下段の網体により捕捉した崩壊土砂を撤去することを特徴とする請求項1又は2記載の落石防護網構造の土砂撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落石防護網構造とその施工方法並びにその土砂撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、所定の距離を隔てて立設された支柱と、両端部を隣り合った前記支柱のそれぞれに固定された横ロープと、を備え、前記横ロープは、隣り合った前記支柱の間の前記距離よりも長く、支柱の下部を地中に建て込む防護柵(例えば特許文献1)がある。また、斜面の幅方向に間隔を空けて立設する、複数の支柱と、前記複数の支柱間に敷設するネットと、前記支柱と山側アンカーとを接続する山側控え材と、を具備し、支柱を斜面の山側または谷側へと傾斜自在に構成した防護柵(例えば特許文献2)がある。
【0003】
上記特許文献1の防護柵では、支柱を立て込むため、大型の掘削装置が必要となる。また、上記特許文献2の防護柵では、支柱を立て込む必要はないが、山側アンカーと支柱の上中下を複数の山側控えで連結するため施工が煩雑となる。
【0004】
また、ヒンジを介して回動自在に立設した支柱に複数の水平ロープ材を架設し、水平ロープ材の全体に防護ネットを取り付け、支柱上部と斜面山側との間に第1の緩衝具を介在した控えロープで接続する落石防護柵(例えば特許文献3)がある。
【0005】
上記特許文献3では、支柱の斜面山側への傾倒を阻止するために、支柱上部と斜面との間に控材を設置する必要があり、また、第1の緩衝具から控えロープが抜け出すと、支柱が谷側に倒れてしまうという問題がある。
【0006】
ところで、特許文献1の防護柵では、横ロープを、隣り合った前記支柱の間の前記距離よりも長く形成し、横ロープの前側に張設した防護ネットに撓みを形成し、この撓みにより落石などの衝撃を緩和することができる。
【0007】
上記特許文献1の防護柵においては、横ロープに余長を設けているが、全体として網体に導入可能な撓み量が少なく、土砂などの補足量の増加効果も低い。また、横ロープを支柱に連結し、この支柱に連結した横ロープの前側に防護ネットを張設しているため、支柱部分で防護ネットに撓みを導入することができず、支柱部分で防護ネットの衝撃緩和効果が低いという問題もある。
【0008】
また、落石用の防護構造として、斜面に網体を吊設し、前記網体が、上下に間隔をおいて複数段に設けた横ロープ材と、これら横ロープ材を覆う網とを備えた落石防護網構造(例えば特許文献4)あり、この落石防護網構造では、落石が網体に衝突することで落石エネルギーを吸収した後、落石を網体と地山との間に誘導して網裾まで導き、落石を抜け出すことなく捕捉することができる。
【0009】
上記特許文献4の落石防止網構造は、落石の発生する可能性のある斜面に設けられるものであるが、集中豪雨や地震などの影響により設置した斜面に土砂崩壊が発生すると、落石用に作られた防止網構造に、崩壊土砂が衝突して、損傷する虞があり、これを防止するには崩壊土砂の衝撃力を減衰させる必要がある。そして、既設の落石防護網構造を補強しようとしても、斜面を覆うように網体が設けられているため、その網体が邪魔になって施工に制約を受けるという問題もある。
【0010】
このような問題を考慮して同一出願人は、左右方向に間隔を置いて設置面に複数の支柱を立設し、これら支柱の間に防護面を設けた防護柵を前後方向に間隔を置いて配置し、前側の前記防護柵の前方の前記設置面に複数個の前側アンカーを配置し、前記前側アンカーと前記前側の防護柵の前記支柱側との間に連続した前側の吊ロープ材を前後交互に架け渡し、前記前側アンカーと後側の前記防護柵の前記支柱側との間に連続した後側の吊ロープ材を前後交互に架け渡した防護構造(例えば特許文献5)を提案している。
【0011】
前記防護構造では、前側と後側の防護柵を共通する前側アンカーに連結したため、アンカー工事の制約のある現場でも使用することができ、前側と後側で多段に設けた防護柵により崩壊土砂などの衝撃力を減衰することができる。
【0012】
さらに、特許文献5では、特許文献3のように支柱上部と斜面との間に控材を設置しなくても、支柱脚部の下縁がベース部の上面に当接することにより、ベース部の下面に対して支柱が垂直に立設され、前側への傾動を防止することができる。
【0013】
また、特許文献5の防護構造では、防護柵を多段に設け、崩壊土砂などの衝撃力を受けると、一段目の防護柵の支柱が後方に傾動し、一段目の防護柵を越えた崩壊土砂は、同様に、二段目の防護柵に捕捉するようにしている。このように特許文献5の防護構造は、多段に設けた防護柵により崩壊土砂などの衝撃力を減衰するものであるため、一段の防護柵により崩壊土砂などの衝撃力を減衰する防護柵の開発が望まれていた。
【0014】
ところで、上記特許文献4の落石防止網構造などでは、下部側から崩壊土砂が漏れ出す虞があり、また、崩壊土砂を捕捉した後の除去作業が煩雑であった。さらに、崩壊土砂の影響以外でも、豪雪地域では積雪荷重により網体に加わる荷重も大であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2019-27024号公報
【特許文献2】特開2017-193882号公報
【特許文献3】特開2003-105721号公報
【特許文献4】特開2012-41720号公報
【特許文献5】特開2022-44995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明は、土砂の漏れ出しを抑制すると共に、網体を補強することができる落石防護網構造とその施工方法を提供することを目的し、また、網体により捕捉した崩壊土砂の処理を容易に行うことができる落石防護網構造とその土砂撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に係る発明は、設置面に網体を吊設し、前記網体が、上下に間隔をおいて複数段に設けた横ロープ材と、これら横ロープ材間を覆う網とを備えた落石防護網構造において、下段の前記網体に、金属製の網と合成樹脂製の網を張設したことを特徴とする。
【0018】
また、請求項2に係る発明は、前記下段の網体を上段の前記網体に回動可能に連結したことを特徴とする。
【0019】
また、請求項3に係る発明は、前記下段の網体が左右分割可能なことを特徴とする。
【0020】
また、請求項4に係る発明は、前記設置面に複数の防護柵用支柱を立設し、これら防護柵用支柱の間に防護面を設けると共に、この防護面が前記網体と前記設置面との間に位置することを特徴とする。
【0021】
また、請求項5に係る発明は、前記下段の網体は、合成樹脂製の網を張設すると共に、前記合成樹脂製の網の下端を裏面側に折返し、前記合成樹脂製の網の下端を前記設置面に固定し、前記合成樹脂製の網の上に前記金属製の網を重ね合わせ、この金属製の網の上に横ロープ材を配置することを特徴とする。
【0022】
また、請求項6に係る発明は、前記下段の網体の横ロープ材を縦方向に切断し、縦方向の切断位置間の前記下段の網体を上方に引上げ、前記下段の網体により捕捉した崩壊土砂を撤去することを特徴とする。
【0023】
また、請求項7に係る発明は、前記下段の網体の横ロープ材を縦方向に切断し、前記縦方向の切断位置の上部間で下段の網体の上部を切断し、縦方向の切断位置間の前記下段の網体を外し、前記下段の網体により捕捉した崩壊土砂を撤去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の構成によれば、網体の下段が補強されると共に、網体の下段における崩壊土砂の漏れ出しを削減することができる。
【0025】
請求項2の構成によれば、下段の網体を上方に引き上げることにより捕捉した崩壊土砂を撤去することができ、また、冬季間には下段の網体を上方に引き上げることにより積雪荷重を回避することができる。
【0026】
請求項3の構成によれば、下段の網体を左右に分けて上方に引き上げることができる。
【0027】
請求項4の構成によれば、防護柵の防護面により崩壊土砂を捕捉することができ、下段の網体に加わる崩壊土砂の影響を低減することができる。
【0028】
請求項5の構成によれば、下段の網体の下端からの崩壊土砂の漏れ出しを抑制することができる。
【0029】
請求項6の構成によれば、補足した崩壊土砂の範囲に対応して切断し、切断位置間の下段の網体を引上げることにより、崩壊土砂を撤去することができる。
【0030】
請求項7の構成によれば、引上げが困難な場合、補足した崩壊土砂の範囲に対応して切断し、切断位置間の下段の網体を外すことにより、崩壊土砂を撤去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施例1を示す防護柵の側面図である。
図2】同上、平面図である。
図3】同上、要部の平面図である。
図4】同上、正面図である。
図5】同上、要部の正面図である。
図6】同上、網体の正面図である。
図7】同上、前側傾動位置における支柱下部の拡大側面図である。
図8】同上、後側傾動位置における支柱下部の拡大側面図である。
図9】同上、崩壊土砂により支柱が傾動した防護柵の側面図である。
図10】同上、支柱を示し、図10(A)は正面図、図10(B)は側面図である。
図11】同上、支柱頭部の上部プレートの側面図である。
図12】同上、支柱脚部の下部プレートの側面図である。
図13】同上、支柱取付部材の斜視図である。
図14】同上、前側アンカーの上部の部材を分解した状態の断面図である。
図15】同上、回転連結具の正面図である。
図16】同上、ワイヤークリップの正面図である。
図17】同上、控えロープ材の正面図である。
図18】同上、緩衝具の側面図である。
図19】同上、防護面の要部の正面図である。
図20】同上、側面控えロープ材の正面図である。
図21】同上、支柱下部の変形例の拡大側面図である。
図22】同上、防護構造の側面図である。
図23】同上、防護構造の平面図である。
図24】同上、防護構造の要部の平面図である。
図25】同上、網体中段部と網体下段部の連結構造の平面図である。
図26】同上、連結体を示し、図26(A)は挟持板の正面図、図26(B)は側面図である。
図27】同上、巻付グリップの正面図である。
図28】同上、網体下段部の施工前の平面図である。
図29】同上、網体下段部の延長部分施工後の平面図である。
図30】同上、延長部分の要部の拡大平面図である。
図31】同上、網体下段部に合成樹脂製の網を張設した後の平面図である。
図32】同上、合成樹脂製の網の下端の設置面への固定構造を示す断面図である。
図33】同上、網体下段部に金網を張設した後の平面図である。
図34】同上、網体下段部の上部の拡大平面図である。
図35】同上、防護構造の平面図である。
図36】同上、押えアンカーの断面図である。
図37】本発明の実施例2を示す防護構造の要部の平面図である。
図38】同上、網体下段部の左右方向中央の拡大平面図である。
図39】同上、最下段の横ロープ材の中央の連結構造の平面図である。
図40】本発明の実施例3を示す防護構造の要部の平面図である。
図41】本発明の実施例4を示す防護構造の要部の平面図である。
図42】同上、防護柵の側面図であり、図42(A)は崩壊土砂を捕捉した状態、図42(B)は撤去作業を示す。
図43】同上、防護構造の側面図である。
図44】同上、網体下段部の切断位置の補修後の拡大平面図である。
図45】本発明の実施例5を示す防護構造の要部の平面図である。
図46】同上、防護構造の側面図である。
図47】本発明の実施例6を示す防護構造の要部の平面図である。
図48】同上、連結体の側面図である。
図49】同上、単管を用いた吊上げ方法を示す要部の側面図である。
図50】同上、網体下段左部を巻き上げた状態の防護構造の要部の平面図である。
図51】本発明の実施例7を示す防護構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例0033】
図1図36は本発明の実施例1を示す。図1及び図2に示すように、防護柵1は、傾斜地である山間地の道路や線路等の山側の斜面2に設けられるものであって、土砂崩れ,落石,雪崩等を防止するために危険箇所に沿って設置される。
【0034】
前記防護柵1は、山側の設置面(設置場所)たる斜面2に設けられている。また、防護柵1は、例えば4本の防護柵用支柱3,3,3,3と、各支柱3,3,3,3間に連続して設けられた防護面4を備える。それら4本の支柱3,3,3,3は、左右方向に均等な間隔を置いて立設されている。尚、支柱3は鋼製であってH形鋼などからなる。
【0035】
前記防護柵1の両端に設けた前記支柱3,3が、端末の支柱であり、これら端末の支柱3,3の間に設けた支柱3,3が、中間の支柱であり、端末の支柱3と中間の支柱3は同一構成をなす。尚、この例では、中間の支柱3が2本の例を示したが、中間の支柱3は1本でも3本以上でもよい。
【0036】
前記防護面4は、複数の網目を有する合成樹脂製の網体5を備え、この網体5は可撓性を有し、図6に示すように、網体5の周囲に合成樹脂製の上縁,下縁ロープ材6U,6S及び左縁,右縁ロープ材6L,6Rが設けられている。前記網体5は、例えば合成樹脂からなる貫通型無結筋網であり、合成樹脂製の繊維糸を複数撚り合わせて線材を形成し、これら線材は交差方向をなし、交差部により無結筋により相互に固定されている。また、縁ロープ材6U,6S,6L,6Rも合成樹脂製のものが用いられる。尚、網体5に用いるもの以外のロープ材は、鋼製のワイヤーロープなどを用いることもできるが、後述する接続用ロープには合成樹脂製の繊維ロープを用いている。
【0037】
前記防護面4の上部には、左右方向の上横ロープ材7が配置され、前記防護面4の下部には、左右方向の下横ロープ材8が配置される。
【0038】
前記支柱3は、斜面2に設けた鋼製の支柱取付部材11に前後方向傾動可能に取り付けられている。図7及び図13などに示すように、前記支柱取付部材11は、斜面2に固定する板状のベース部12を備え、このベース部12は略方形で前後方向に長く形成されている。尚、支柱取付部材11は支柱構造の一部を構成し、この例の支柱構造は、支柱3と支柱取付部材11を備える。
【0039】
前記ベース部12の前側左右には、アンカー挿通孔13を穿設し、このアンカー挿通孔13にベース部固定用アンカー14を挿通し、このアンカー14を地中に固定し、アンカー14の頭部を定着具15によりベース部12に定着している。
【0040】
図10などに示すように、前記支柱3は、H型鋼からなる支柱本体21を備え、この支柱本体21は山側と谷側にフランジ部21F,21Fを有し、これら山側と谷側のフランジ部21F,21Fをウエブ部21Uにより連結している。
【0041】
前記支柱本体21の下端には、支柱脚部22を設けられており、この支柱脚部22は、左右で2枚の下部プレート23,23(図12)の上部に該下部プレート23,23に比べて前後方向幅狭な上固定部24,24を設け、これら左右の上固定部24,24により前記ウエブ部21Uを左右から挟んだ状態で、ウエブ部21Uに左右の上固定部24,24を溶着などにより固定すると共に、左右の下部プレート23,23同士を溶接などにより一体化し、それら下部プレート23,23の下部に左右の透孔25を穿設し、この透孔25が支柱3の回動中心となる。
【0042】
図7及び図8などに示すように、前記下部プレート23の後縁部26は、支柱3の長さ方向に形成されている。また、下部プレート23の下縁部27は、前記後縁部26に直交して該後縁部26の下端に形成され、その下縁部27と下部プレート23の縦方向の前縁部28との間に、前記透孔25の中心を中心とした円弧部29が形成されている。
【0043】
図10などに示すように、前記支柱3の高さ方向中央と下部には、中央補強板30と下部補強板31が設けられている。この中央補強板30は、前記ウエブ部21Uとフランジ部21F,21Fの間の凹部21Hに嵌め入れて固定されると共に、左右の凹部21H,21Hに溶接などにより固定されている。
【0044】
また、前記下部補強板31は、前記ウエブ部21Uとフランジ部21F,21Fの間の凹部21Hに嵌め入れて固定されると共に、左右の凹部21H,21Hに溶接などにより固定され、具体的にはフランジ部21Fの内面に固定され、さらに、下部補強板31の内縁部31Fは前記支柱脚部22の外面に当接し、好ましくは、内縁部31Fが支柱脚部22に溶接などにより固定されている。このように下部補強板31により支柱本体21の下部を補強することができると共に、支柱脚部22を支柱本体21に強固に取り付けることができる。
【0045】
図13などに示すように、前記ベース部12の後側(反山側)で左右方向中央には、前記支柱3の前記支柱脚部22を連結する支柱連結部33が設けられている。この支柱連結部33は、前後方向で縦板状をなす一対の連結受け部34,34を、左右に間隔を置いて配置すると共に、一対の連結受け部34,34に、前記透孔25に対応して左右方向の連結孔34T,34Tを穿設し、それら一対の連結受け部34,34間に前記支柱脚部22の下部プレート23が挿入配置され、それら連結孔34T,34T及び支柱脚部22の透孔25に、連結軸たるボルト35を挿通し、このボルト35にナット(図示せず)を螺合している。これにより支柱3はボルト35を中心に前後方向に傾動する。
【0046】
また、一対の連結受け部34,34には、前記連結孔34T,34Tの後側に透孔36,36を穿設し、これら透孔36,36に、支柱回動制御部たる断面円形のボルト37を挿通し、このボルト37にナット(図示せず)を螺合している。尚、ボルト35,37同士は平行に配置されている。尚、この例ではボルト35よりボルト37が高い位置となる。
【0047】
この場合、ボルト35,37の位置は、支柱3が山側に傾動し、ベース部12の上面部12Jに対して角度θ(図1)が75度となる前側傾動位置で前記支柱3の後縁部26がボルト37に当接し、支柱3が谷側に傾動し、ベース部12に対して90度となる後側傾動位置で前記支柱3の後縁部26がボルト37に当接するように配置されている。また、前側傾動位置で角度θは65度以上、80度以下程度でもよく、65度未満では上横ロープ材7の高さ位置が低くなり、80度を超えると、90度までの傾動量が小さくなるため、上記の範囲が好ましい。尚、前側傾動位置の角度θは90度未満である。
【0048】
前記前側傾動位置でボルト37が後縁部26に当接する位置が後縁部26の第1の当接位置であり、前記後側傾動位置でボルト37が後縁部26に当接する位置が後縁部26の第2の当接位置であり、第2の当接位置は第1の当接位置より上方に位置する。そして、前記後縁部26と支柱回動制御部たるボルト37により、前記支柱3の前側への傾動を規制する前側規制構造38と、前記支柱3の後側への傾動を規制する第1の後側規制構造39を構成している。
【0049】
また、支柱3が後側傾動位置において、前記下部プレート23の下縁部27が前記ベース部12の上面部12Jに当接して支柱3の後方への傾動が規制され、それら下縁部27と上面部12Jにより、前記支柱3の後側への傾動を規制する第2の後側規制構造40を構成している。
【0050】
図13に示すように、前記左右の連結受け部34,34の前側には、左右方向で縦板状の連結プレート41を設け、この連結プレート41の左右に、下横ロープ材8を連結する連結部たる連結孔42,42を穿設し、この連結孔42は前後方向に形成されている。
【0051】
図10などに示すように、前記支柱3は、前記支柱本体21の上部に控えロープ材51を連結する支柱頭部52を有する。この支柱頭部52は、左右で2枚の上部プレート53,53を有し、左右の上部プレート53,53の下固定部54,54により前記ウエブ部21Uの上端を左右から挟んだ状態で、支柱本体21の上部に上部プレート53,53を固定し、上部プレート53,53の山側に左右方向の透孔55を穿設し、この透孔55に控えロープ材51を連結する。
【0052】
また、図10などに示すように、前記支柱3の上部左右には、上横ロープ材7用の連結プレート57,57を固定し、この連結プレート57を凹部21Hに嵌め入れて溶接などにより固定されている。前記連結プレート57は、支柱本体21の前記凹部21Hに挿入されて固定され、凹部21Hから突出した連結プレート57の先端側に上下方向の連結孔58を穿設し、この連結孔58に上横ロープ材7が連結される。尚、端末の支柱3,3の左右方向外側の連結孔58,58には、側面控えロープ材59が連結される。この場合、連結プレート57により支柱本体21の上部を補強することができると共に、支柱頭部52を支柱本体21に強固に取り付けることができる。
【0053】
このように支柱3は、H型鋼を補強部材たる補強板31,32,連結プレート57で補強した構造であるから、強度的に優れたものとなる。
【0054】
また、図1などに示すように、前記支柱3の前方である山側の斜面2には、隣り合う支柱3,3間の位置に前側アンカー61を設置すると共に、両端の支柱3,3の左右外側で、支柱3,3間の距離の約2分の1の位置に両端の前側アンカー61A,61Aを設置する。また、防護柵1の左右外側の斜面2には、前記側面控えロープ材59を連結する側面アンカー61Bが設置されている。
【0055】
また、側面アンカー61Bの斜面2の前後位置は、前記ボルト35の位置に対応し、具体的には隣り合う支柱3,3のボルト35,35の延長線上に位置する。尚、アンカー61,61A,61B及び以下に説明するアンカーは、アンカーロッド62を斜面2にグラウト材などの凝固材により固定したものが例示される。
【0056】
図1及び図14に示すように、前記アンカー61,61A,61Bはアンカーロッド62の下部が斜面2に埋設固定され、その上部にロープ連結部たる筒部63を外装し、この筒部63の上に、透孔64Tを有する支圧板64を配置し、前記アンカーロッド62の上部に螺合した定着具たるナット65により、筒部63をアンカーロッド62の上部に回動可能に取り付け、その筒部63の外周に取付片66を一体に設け、この取付片66の透孔66Tに、連結具たるシャックル67のシャックル軸69を連結する。
【0057】
尚、図15などに示すように、シャックル67は、略U字形のシャックル本体68の端部に前記シャックル軸69が着脱可能に連結される。
【0058】
これによりシャックル67は、シャックル軸69を中心に上下揺動可能で、回動可能な筒部63により水平回動可能にアンカーロッド62に接続される。尚、筒部63を回動してシャックル本体68の向きを調整した後、ナット65を締め付けて固定する。また、ナット65の下部には、曲面状の圧接凸部65Aが設けられ、この圧接凸部65Aが前記透孔64Tに圧接する。
【0059】
図1及び図17に示すように、前側アンカー61,61Aと支柱3の上部とを連結する控えロープ材51は、ロープ本体71(図1及び図9)の山側端に輪部72を有すると共に、ロープ本体71の山側端に長さ調整可能な輪部73を有する。この輪部73は、ロープ本体71の谷側端を折り返して重ね合わせ部74を形成し、この重ね合わせ部74を、緩衝具たる複数のワイヤクリップ75により結束することにより折返し部に前記輪部73が形成され、重ね合わせ部74の長さにより、ロープ本体71の長さを調整することができる。
【0060】
尚、図16に示すように、前記ワイヤクリップ75は、Uボルト76と、このUボルト76を挿通する本体77、Uボルト76の端部に螺合するナット78とからなり、Uボルト76と本体77との間に重ね合わせ部74のロープ本体71,71とを挟着するものである。
【0061】
また、図17に示すように、前記控えロープ材51は緩衝装置80を備える。この緩衝装置80は、前記ロープ本体71の途中で山側端側にループ部81を形成し、このループ部81の重合部81Aのロープ本体71,71を所定の挟持力で挟持する緩衝具82(図18)が一又は複数設けられ、この例では緩衝具82を一つ設けている。
【0062】
この緩衝具82は、一対の把持体83,83の合せ目に、重合部81Aのロープ本体71,71を嵌合する溝84,84を備え、それら把持体83,83を挿通したボルト85と、このボルト85に螺合したナット86とにより締め付けることにより、重合部81Aのロープ本体71,71を所定の摩擦力で把持するように構成している。
【0063】
さらに、ループ部81のロープ本体71には、金属などの硬質材料からなる複数のリング体87が移動可能に遊嵌されている。ロープ本体71に所定以上の張力が発生すると、ループ部81が縮小する方向に重合部81Aのロープ本体71が摺動し、その摩擦力により衝撃力が吸収される。
【0064】
また、その摺動は、リング体87が把持体83に当接し、ループ部81の長さが複数のリング体87の合計寸法になるまで可能であり、ループ部81内の複数のリング体87同士が圧接した後は、ループ部81がそれ以上縮小することがなく、それ以上、控えロープ材51が伸びることが無く、全体としてロープ本体71の引張強度が低下することがない。
【0065】
また、ループ部81が縮小する前のロープ本体71の長さは、前側傾動位置の支柱上部とアンカー61,61Aとの間隔に対応し、ループ部81が縮小した後のロープ本体71の長さは、後側傾動位置の支柱上部とアンカー61,61Aとの間隔に対応するように、前記緩衝装置80を設定している。具体的には縮小前のループ部81の直径,リング体87の寸法及び数を設定している。
【0066】
控えロープ材51の一端の輪部72を、連結手段たるシャックル67により前記支柱3上部の透孔55に連結し、控えロープ材51の他端の輪部73にターンバックル88を連結し、このターンバックル88にシャックル67を連結し、このシャックル67を前記前側アンカー61,61Aに連結したシャックル67に連結する。
【0067】
そして、網体5に衝撃力が作用し、ロープ本体71に所定以上の張力が発生すると、ループ部81が縮小する方向に重合部81Aのロープ本体71,71が摺動し、その摩擦力により衝撃力が吸収される。また、その摺動は、リング体87が把持体83に当接するまで可能であり、当接した後は、ループ部81がそれ以上縮小することがなく、全体としてロープ本体71の引張強度が低下することがない。すなわち、ロープ本体71は、ワイヤーロープなどからなるが、リング体87による規制により、所定の曲率までループ部81が縮小しても、折れ曲がるなどの心配がなく、摺動後も引張強度が低下することが防止される。
【0068】
図3及び図5などに示すように、上横ロープ材7及び下横ロープ材8は両端に輪部91,91を有し、支柱3の上段において、上横ロープの一端(図3及び図5中で左側)の輪部91をシャックル67により支柱3の上部の連結孔58(図10)に連結し、他端(図3及び図5中で右側)の輪部91にターンバックル88を連結し、このターンバックル88を隣りの支柱3の上部の連結孔42(図13)に連結する。
【0069】
また、支柱3の下段において、下横ロープ材8の一端の輪部91を、シャックル67により支柱3の下部の連結孔58に連結し、他端の輪部91にターンバックル88を連結し、このターンバックル88を隣りの支柱3の下部の連結孔42に連結する。
【0070】
尚、防護面4の高さは、支柱3を立設した状態で斜面2と上横ロープ材7の間隔である。また、防護面4の高さが支柱3の有効高さhである(図4)。
【0071】
前記網体5の上下寸法Hは、前記上,下横ロープ材7,8の間隔Kより広く、前記上下寸法Hは前記間隔Kの2倍以上、好ましくは2.5倍以上、5倍以下である。尚、この例では網体5の上下寸法Hは4.0mで、防護面4の高さは1.6m程度である。
【0072】
また、網体5の左右寸法は、支柱3、3の間隔と同一であり、図19に示すように、隣り合う網体5,5の左,右縁ロープ材6L,6Rに接続用ロープたる繊維ロープ100を巻き付けることより、網体5,5同士を連結する。尚、繊維ロープ100は支柱3の後部に位置する。そして、防護面4の長さに対応して複数の網体5,5を一体化し、防護柵1の長さに対応して、一体化して連続した網体5を用いる。
【0073】
左右端末の支柱3,3の上部と、前記側面アンカー61Bとは、左右端末の支柱3,3の上部から斜め下向きに配置された側面控えロープ材59により連結される。
【0074】
図20に示すように、側面控えロープ材59は1本のロープ本体102の両端側をそれぞれ折り返して重ね合わせ部103,103を形成し、この重ね合わせ部103を複数(2つ)のワイヤクリップ75により結束することにより折返し部に輪部104が形成され、さらに、ロープ本体102の両端102T,102Tのみの重ね合わせ部105を複数(5つ)のワイヤクリップ75により結束している。そして、前記重ね合わせ部103,105の寸法を調整することにより側面控えロープ材59の長さを現場で調整することができる。
【0075】
また、図20に示すように、同図の中央にはロープ本体102が3本重ね合わされているが、ロープ本体102の両端102T,102Tのみの重ね合わせ部105をワイヤクリップ75により結束することにより、ロープ本体102に所定以上の張力が加わった場合、両端102T,102Tの摩擦摺動を許容することができ、このようにロープ材の結束具であるワイヤクリップ75は、摩擦摺動により衝撃力を吸収する緩衝具でもある。
【0076】
そして、端部の支柱3の上部の左右方向外側の連結孔58(図10)にシャックル67により側面控えロープ材59の一端の輪部104を連結し、側面控えロープ材59の他端の輪部104にターンバックル88を連結し、このターンバックル88にシャックル67を連結し、このシャックル67を前記側面アンカー61Bに連結したシャックル67に連結する。
【0077】
前記網体5の前記上,下横ロープ材7,8への取付には、前記繊維ロープ100が用いられている。
【0078】
複数の網体5,5を一体化した後、中間の支柱3の後側から網体5,5を上,下横ロープ材7,8に取り付ける。具体的には、支柱3の後側から上横ロープ材7に上縁ロープ材6Uを重ね合わせ、図19に示すように、両ロープ材7,6Uに繊維ロープ100を巻き付けて連結している。また、支柱3の後側から下横ロープ材8に下縁ロープ材6Sを重ね合わせ、両ロープ材8,6Sに繊維ロープ100を巻き付けて連結している。そして、この例では、網体5は、上縁,下縁ロープ材6U,6S以外は、上,下横ロープ材7,8や支柱3などの他の部材に連結していない。
【0079】
このように中間の支柱3の後側から上,下横ロープ材7,8に上,下縁ロープ材6U,6Sを連結し、前記網体5の上下寸法Hは、前記上,下横ロープ材7,8の間隔Kより大きいため、図1などに示すように、防護柵1には支柱3の後方に、網体5の上下方向の余長部5Yが形成される。尚、余長部5Yは、端末の支柱3,3間の全長に設けられる。
【0080】
また、図1に示すように、防護面4の端末の網体5の上下方向の左,右縁ロープ材6L,6Rは、端末の支柱3,3や他の部材に連結されておらず、防護面4の端末の網体5の左,右縁ロープ材6L,6Rと端末の支柱3との間には、網体のない左右方向の開口部5K,5Kが形成されている。
【0081】
従って、防護面4により捕捉した崩壊土砂Dの衝撃力を緩和した後、該崩壊土砂Dの一部を、左右の開口部5Kから左右外側に排出することが可能であり、防護柵1に過大な荷重が加わることを防止できる。
【0082】
前記下横ロープ材8と前記前側アンカー61とを下横ロープ材8用の補強ロープ材111により連結している。図3に示すように、補強ロープ材111は、ロープ本体112の山側端に輪部113を有すると共に、ロープ本体112の谷側端に輪部113を有する。
【0083】
前記輪部113は、ロープ本体112の端部側を折り返して重ね合わせ部114を形成し、この重ね合わせ部114を複数のワイヤクリップ75により結束することにより折返し部に輪部113が形成され、重ね合わせ部114の長さにより、ロープ本体112の長さを調整することができる。
【0084】
補強ロープ材111の一端の輪部113をシャックル67により下横ロープ材8の左右方向中央に連結し、補強ロープ材111の他端の輪部113にターンバックル88を連結し、このターンバックル88にシャックル67を連結し、このシャックル67を前記前側アンカー61に連結したシャックル67に連結する。
【0085】
上記のような防護構造120においては、斜面2に土砂崩壊が発生すると、防護柵1において、支柱3の高さより上下寸法Hが大きな網体5により崩壊土砂Dの衝撃力を減衰すると共に、支柱3の高さに対して、多量の崩壊土砂Dを捕捉することができる。この場合、支柱3の後側から網体5の上側及び下側を上横ロープ材7及び下横ロープ材8に連結し、支柱3の後方においても網体5を上下方向において撓ませた構造であるから、全体として衝撃力の減衰効果に優れたものとなる。
【0086】
また、支柱3の下部をヒンジ軸たるボルト35によるヒンジ構造としたから、網体5内へ崩壊土砂Dが侵入し、上,下横ロープ材7,8に反力が作用し、支柱3を谷側に倒そうとする力が加わり、控えロープ材51に所定以上の張力が発生すると、支柱3が後方に傾動すると共に、ループ部81が縮小する方向に重合部81Aのロープ本体71が摺動し、その摩擦力により衝撃力が吸収される。
【0087】
支柱3が後方に傾動し、後側傾動位置になると、支柱3の上部においては、控えロープ材51が後側傾動位置の支柱上部とアンカー61,61Aとの間隔に対応する長さとなりこれ以上ループ部81が縮小しないため、控えロープ材51により支柱3の上部の傾動が規制され、一方、支柱3の下部においては、前側傾動位置でボルト37が支柱3の後縁部26に当接して支柱3の後方への傾動を規制すると共に、ベース部12に支柱脚部22の下縁部27が当接して支柱3の後方への傾動を規制し、支柱3の上下において、後方への傾動が規制され、これにより上下において支柱3を補強することができる。
【0088】
加えて、前側傾動位置でボルト37が後縁部26に当接して支柱3の前方の傾動が規制されるから、施工時などに控えロープ材51を張力調整手段たるターンバックル88により張設する際の作業を容易に行うことができる。
【0089】
しかも、下横ロープ材8の左右方向中央に補強ロープ材111を連結し、この補強ロープ材111を前側アンカー61に連結したから、補強ロープ材111が無いと、崩壊土砂Dなどにより網体5が膨らみ、下横ロープ材8に張力が発生し、下横ロープ材8を連結した支柱取付部材11のアンカー14を引っ張る力が加わり、アンカー14を引き抜く力が加わるのに対して、この力の発生を補強ロープ材111により軽減することができる。即ち、下横ロープ材8を、両側の支柱取付部材11,11の2点で支持する場合に比べて、下横ロープ材8の左右方向中央に補強ロープ材111を連結することにより、補強ロープ材111と両側の支柱取付部材11,11の2点で支持することにより、支柱取付部材11に加わる荷重を軽減できる。
【0090】
また、支柱3,3の上部間に上横ロープ材7を設けると共に、支柱取付部材11,11間に下横ロープ材8を設け、防護面4は網体5を有し、上横ロープ材7に網体5の上縁側たる上縁ロープ材6Uを連結すると共に、下横ロープ材8に網体5の下縁側たる下縁ロープ材6Sを連結し、網体5の上下寸法Hが前記上,下横ロープ材7,8の間隔Kより大きいと共に、網体5は中間の支柱3の後方に該網体上下方向の余長部5Yを有するから、中間の支柱3に網体5を連結する必要がなく、中間の支柱3の後方に網体5の余長部5Yを有することにより、網体5による衝撃力の減衰効果が向上すると共に、支柱3の高さに対して捕捉する崩壊土砂Dの量を多く確保することができる。
【0091】
このように本実施例では、左右方向に間隔を置いて設置面たる斜面2に複数の支柱3,3を立設し、これら支柱3,3の間に防護面4を設け、前方に前側アンカー61を配置し、この前側アンカー61と支柱3の上部を控えロープ材51で連結した防護柵1において、控えロープ材51の途中に、所定以上の張力が作用したとき該控えロープ材51の摩擦摺動を許容する緩衝装置80を設け、支柱3を斜面2に傾動可能に立設し、支柱3の前側傾動位置で該支柱3の前側への傾動を規制する前側規制構造38と、支柱3の後側傾動位置で該支柱3の後側への傾動を規制する後側規制構造39を備えるから、支柱3の傾動範囲を規制することができ、防護面4に崩壊土砂Dなどにより衝撃力を受けると、支柱3が後方へ傾動して衝撃力を緩和し、後側傾動位置に傾動した支柱3は、その上部が控えロープ材51により支持されると共に、後側規制構造39により後方への傾動が規制され、崩壊土砂Dなどを捕捉することができる。また、前側規制構造38を有するから、前側傾動位置で支柱3の前側への傾動が規制されるため、支柱3の上部と前側アンカー61を連結する控えロープ材51の施工が容易となる。
【0092】
また、このように本実施例では、緩衝装置80は、前側規制構造38により規制される支柱3の前側傾動位置から後側規制構造39により規制される支柱3の前記後側傾動位置への支柱3の傾動により控えロープ材51の摩擦摺動を停止するように構成されているから、支柱3が後方に傾動することにより、控えロープ材51に所定以上の張力が発生すると、控えロープ材51の摩擦摺動により衝撃力が吸収され、支柱3が後側傾動位置まで傾動すると、摩擦摺動を停止し、支柱3の上部を控えロープ材51が支持し、後側傾動位置から後方への支柱3の回動を規制することができる。
【0093】
また、このように本実施例では、前側規制構造38及び後側規制構造39は、支柱3の前側傾動位置と支柱3の前記後側傾動位置で該支柱3の異なる位置に当接する支柱回動規制部たるボルト37を備えるから、ボルト37が異なる位置で支柱3に当接し、支柱3の前側傾動位置と後側傾動位置を規制することができ、構造簡易にして支柱3の傾動範囲を規制することができる。
【0094】
また、このように本実施例では、支柱3,3の上部間に上横ロープ材7を設けると共に、支柱3,3の下部間に下横ロープ材8を設け、防護面4は網体5を有し、上横ロープ材7に網体5の上縁側を連結すると共に、下横ロープ材8に網体5の下縁側を連結し、網体5の上下寸法が前記上,下横ロープ材7,8の間隔Kより大きいから、網体5による衝撃力の減衰効果を向上することができる。
【0095】
また、このように本実施例では、支柱3の前方左右に前側アンカー61,61を配置し、これら左右の前側アンカー61,61と支柱3の上部を左右の控えロープ材51,51で連結したから、支柱3の上部に左右の控えロープ材51,51を連結したから、2本の控えロープ材51,51により2倍の支持力が得られる。
【0096】
また、このように本実施例では、隣り合う支柱3,3の中央前方に前側アンカー61を配置し、この前側アンカー61と下横ロープ材8の左右方向中央を補強ロープ材111により連結したから、崩壊土砂Dなどにより支柱3の下部に加わる力を軽減できる。
【0097】
また、前側アンカー61,61Aと支柱3の上部とを連結する控えロープ材51は、重ね合わせ部74の長さにより、ロープ本体71の長さを調整することができる。また、側面控えロープ材59は1本のロープ本体102の両端側をそれぞれ折り返して重ね合わせ部103,103を形成し、この重ね合わせ部103を複数(2つ)のワイヤクリップ75により結束することにより折返し部に輪部104が形成され、前記重ね合わせ部103,105の寸法を調整することにより側面控えロープ材59の長さを現場で調整することができる。
【0098】
さらに、下ロープ材用の補強ロープ材111の輪部113は、ロープ本体112の端部側を折り返して重ね合わせ部114を形成し、この重ね合わせ部114を複数のワイヤクリップ75により結束することにより折返し部に輪部113が形成され、重ね合わせ部114の長さにより、補強ロープ材111の長さを調整することができる。
【0099】
また、網体5は上,下縁ロープ材6U,6Sを含めて合成樹脂製であるから、上,下横ロープ材7,8への連結作業が容易となる。
【0100】
また、前記ベース部12と前記支柱脚部22により、前記支柱3の前側への傾動を規制する第2の後側規制構造40を構成したから、端部の支柱3に側面ロープ材59を連結するだけで済み、支柱3とその後方の斜面2との間に設ける控えロープ材51が不要となる。
【0101】
また、支柱3に対して筒部63を回動可能に構成したから、ロープ材51,59,111に張力が発生した場合、支柱3への荷重を軽減し、支柱3の変形を少なくできる。
【0102】
また、左右方向に間隔を置いて設置面たる斜面2に複数の支柱3,3を立設し、これら支柱3,3の間に防護面4を設けた防護柵1において、支柱3の上部間に上横ロープ材7を設けると共に、支柱3の下部間に下横ロープ材8を設け、防護面4は網体5を有し、上横ロープ材7に網体5の上縁側たる上縁ロープ材6Uを連結すると共に、下横ロープ材8に網体5の下縁側たる下縁ロープ材6Sを連結し、網体5の上下寸法Hが前記上,下横ロープ材7,8の間隔Kより大きいと共に、網体5は中間の支柱3の後方に該網体5の上下方向の余長部5Yを有するから、上横ロープ材7に網体5の上縁ロープ材6Uを連結すると共に、下横ロープ材8に網体5の下縁ロープ材6Sを連結することにより、中間の支柱3に網体5を連結する必要がなく、中間の支柱3の後方に網体5の余長部5Yを有することにより、網体5による衝撃力の減衰効果が向上すると共に、支柱3の高さに対して捕捉する崩壊土砂Dの量を多く確保することができる。
【0103】
また、左右の上固定部24,24により前記ウエブ部21Uを左右から挟んだ状態で、ウエブ部21Uに左右の上固定部24,24を溶着などにより固定したから、支柱本体21に支柱脚部22を一体化することができる。うまた、左右の上部プレート53,53の下固定部54,54により前記ウエブ部21Uの上端を左右から挟んだ状態で、支柱本体21の上部に上部プレート53,53を固定したから、支柱本体21に支柱頭部52を一体化することができる。
【0104】
また、支柱3は、該支柱3の長さ方向を厚さ方向に配置した補強部材たる補強板31,32,連結プレート57を備え、これら補強板31,32,連結プレート57によりH型鋼からなる支柱本体21を補強した構造であるから、強度的に優れたものとなる。
【0105】
また、左右の控えロープ材51,51を連結した前側アンカー61に、補強ロープ材111を連結したから、補強ロープ材111用にアンカーを設ける必要がなく、施工性が向上する。
【0106】
図21は、前側規制構造と後側規制構造の変形例を示す。
【0107】
一対の連結受け部34,34には、前記連結孔34T,34Tの前側上部に透孔36A,36Aを穿設し、これら透孔36A,36Aに、支柱回動制御部たる断面円形のボルト37Aを挿通し、このボルト37Aにナット(図示せず)を螺合している。尚、ボルト35,37A同士は平行に配置されている。
【0108】
この場合、ボルト35,37Aの位置は、支柱3が山側に傾動し、ベース部12に対して75度となる前側傾動位置で前記支柱3の前縁部28がボルト37に当接し、また、ベース部12に対して90度となる後側傾動位置で前記支柱3の前縁部28に突設した凸部117の上縁部118がボルト37に当接するように配置されている。
【0109】
この場合、そして、前記前縁部28と支柱回動制御部たるボルト37Aにより、前記支柱3の前側への傾動を規制する前側規制構造38A(垂直より前側)を構成し、凸部117の上縁部118と支柱回動制御部たるボルト37Aにより、前記支柱3の後側への傾動を規制する第1の後側規制構造39Aを構成している。
【0110】
この変形例のように支柱脚部22の前縁部28側が支柱回動制御部たるボルト37に当接することにおり支柱3の回動範囲を規制してもよい。
【0111】
図22図24に示すように、防護構造120は既設の落石防護網構造121を備え、既設の落石防護網構造121が設けられた斜面2に、防護柵1を設けている。尚、新設の落石防護網構造121にも用いることができる。
【0112】
前記防護構造120は、既設又は新設の落石防護網構造121を備え、この落石防護網構造121は、斜面2に複数立設した落石防護網用支柱122と、斜面2を覆うように設けられた網体123とを備える。前記支柱122は左右方向に間隔をおいて立設され、前記網体123は網目状に配置した横ロープ材125,125A,125B,125C,126と、前記横ロープ材125,125A,125B,125C,126と交差方向に張設される縦ロープ材127,127A,127Bと、これら縦ロープ材127,127A,127B,横ロープ材125,125A,125Bの間を塞ぐように設けられた網たる金網124とからなる。
【0113】
前記横ロープ材125,125A,125B,125Cは、両端が後述するアンカーにより斜面2に固定されるアンカー用横ロープ材であり、横ロープ材126は横ロープ材125,125A,125B,125C間に等間隔で配置される。
【0114】
前記縦ロープ材127は、前記支柱3に対応して配置されると共に、支柱3の上部に連結されている。また、前記縦ロープ材127Aは、縦ロープ材127,127の間に略等間隔で複数(2本)設けられている。さらに、縦ロープ材127Bは、隣り合う縦ロープ材127,127A,127Aの間に略等間隔で複数(2本)設けられている。尚、前記横ロープ材126の端部は、両端の縦ロープ材127,127に連結される。
【0115】
図22に示すように、前記斜面2に岩盤用のアンカー131を固定し、このアンカー131により支柱ベース132を斜面2に固定し、この支柱ベース132に枢軸133により支柱122の下部を回動可能に連結し、その支柱122は前後方向に傾動可能に構成されている。尚、前記支柱122は前記支柱3より高い。
【0116】
また、前記複数の支柱122の上部に、前記網体123の上部を連結し、その支柱122位置から下方の斜面2を覆うように前記網体123が配置されており、網体123と斜面2の間隔は支柱122位置から後方に向かって狭まる。
【0117】
前記支柱122の上方である山側の斜面2には、隣り合う支柱122,122間の位置に前側アンカー136,136を上下に設置すると共に、両端の支柱122,122の左右外側で、支柱122,122間の距離の約2分の1の位置に両端の前側アンカー136A,136Aをロープ材129の長さ方向に設置する。
【0118】
前記前側アンカー136,136同士は、長さ調整可能な連結部材137により連結されている。また、前記アンカー136A,136A同士も、前記連結部材137により連結されている。
【0119】
そして、上下方向に並んだ前記アンカー136,136及び連結部材137により上部固定手段139を構成している。ロープ材129の長さ方向に並んだ前記アンカー136A,136A及び連結部材137により端部固定手段140を構成している。
【0120】
前記前側アンカー136A,136,136・・・136A及び支柱122,122・・・122間には、連続した前記ロープ材129を上下交互にジグザグに架け渡しており、2本のロープ材129,129は上下に重なる位置に配置されている。尚、前記支柱3の上部及び前記上部固定手段139にはそれぞれ滑車(図示せず)が設けられ、これら滑車に前記ロープ材129の途中を掛装している。
【0121】
また、連続するロープ材129の端部129T,129Tを、両側の前側アンカー136A,136Aに連結している。
【0122】
また、前記横ロープ材125,125A,125B,125Cの左右両側の斜面2には、前記アンカー136Aが設置され、前記アンカー136Aに前記横ロープ材125,125A,125B,125Cの端部が連結されている。
【0123】
さらに、両端の支柱122,122には、控えロープ材141が連結され、この控えロープ材141は一端を前記支柱122の上部に連結し、他端を両端のアンカー136Aと最上段の横ロープ材125のアンカー136Aとの間の位置に配置したアンカー136Bに連結している。
【0124】
また、ロープ材125,125A,141の端部側には、前記緩衝装置80が設けられている。
【0125】
前記網体123は、前記横ロープ材125Aより上部が網体上段部123Aであり、前記横ロープ材125A,125Bの間が網体中段部123Bであり、前記横ロープ材125Bより下部が網体下段部123Cであり、この例では複数段(3段)を有するように分かれている。
【0126】
前記金網124は最上段の横ロープ材125と最下段の横ロープ材125Cとの間に張設されている。さらに、前記網体下段部123Cに合成樹脂製の網142が張設されている。
【0127】
上記のような既設の落石防護網構造121が設置された斜面2に、前記防護構造120を構築する際は、アンカー136と支柱122の間で、支柱122側に前記前側アンカー61,61Aを設ける。この場合、支柱122の前方の上方には網体123は無く、ロープ材125が設けられているのみであるから、アンカー131の工事の装置や作業に伴う制約が少なく済む。
【0128】
また、支柱122の後方の斜面2に防護柵1を構築し、ロープ材51,111は支柱122,122の間を通し、斜面2に沿って配置する。
【0129】
また、防護柵1の高さは支柱122の高さより低いと共に、この例では防護柵1は前記網体123との間に隙間ができる高さである。
【0130】
このように本実施例では、防護柵1を用いた防護構造120であって、設置面たる斜面2には、前側アンカー61と防護柵1の間に、落石防護網用支柱122が立設され、落石防護網用支柱122に落石防護網たる網体123が吊設されており、この網体123と斜面2との間に防護柵1が位置するから、防護柵1により崩壊土砂Dなどの衝撃力を減衰し、網体123に加わる衝撃力を軽減することができる。
【0131】
また、好ましくは防護柵1の左右幅を、網体123の左右幅より広くすれば、崩壊土砂Dにより網体123に加わる衝撃を緩和することができ、また、前側アンカー61Aと側面アンカー61Bを、網体123の左右外側に設けたから、それらアンカー61,61Aの施工に網体123が邪魔にならない。
【0132】
次に、前記落石防護網構造121の構造及び施工方法を説明する。尚、図23及び図24などでは、防護柵1を図示省略している。また、各実施例において、防護柵1を設ける場合と設けない場合を適宜選定できる。図23に示すように、連結部材137により連結された前側アンカー136,136の前側に、さらに、連結部材137により連結された前側アンカー136,136を設け、また、連結部材137により連結されたアンカー136A,136Aを両側に一対設けている。
【0133】
そして、連結部材137の谷側の前側アンカー136,136と両側のアンカー136A,136A及び支柱122,122,122の上部に、連続した1本のロープ材を上下交互にジグザクに架け渡し、残りの連結部材137の谷側の前側アンカー136,136と両側のアンカー136A,136A及び支柱122,122,122の上部に、連続した1本のロープ材を上下交互にジグザクに架け渡しており、それら2本のロープ材129,129は上下に重なる位置に配置されている。
【0134】
図23及び図24に示すように、前記横ロープ材125,125A,125Bは、それぞれ上下に間隔を置いて2本ずつ設けられている。
【0135】
尚、前記網142は合成樹脂からなる貫通型無結筋網であり、例えば合成樹脂製の繊維糸を複数撚り合わせて線材を形成し、これら線材は交差方向をなし、それらの交差部により無結筋により相互に固定されている。尚、無結節網にはラッセル式もあるが、好ましくは貫通型を用いる。
【0136】
また、前記合成樹脂製の網142としては、前記合成樹脂製網体5と略同一形状のものが例示される。また、前記金網124として、金属製の線材の直径が5mm程度で、四角の升目が50mm×50mm程度のものが例示され、合成樹脂製の網142の升目も金網とほぼ同一寸法のものを用いることができる。
【0137】
この例では、網体中段部123Bと網体下段部123Cの縦ロープ材は、上下に並んだ横ロープ材125B,125Bの間で分割可能に構成されており、網体中段部123Bと網体下段部123Cを連結し、その連結構造を図25に示す。尚、図25などでは金網124及び網142を図示省略している。
【0138】
図25に示すように、網体中段部123Bと網体下段部123Cとの間で、縦ロープ材127,127A,127Bを、上縦ロープ材1127,1127A,1127Bと下縦ロープ材2127,2127A,2127Bに分割している。それら網体中段部123Bと網体下段部123Cを連結及び連結解除可能な連結手段151は、連結体152と連結具たる前記シャックル67を備える。
【0139】
図26に示すように、前記連結体152は、一対の挟持体たる挟持板153,153を備え、挟持板153の長さ方向中央の内面にロープ材を把持する溝部154を形成し、挟持板153には、前記溝部154を挟んで両側に透孔155,155を穿設すると共に、これら透孔の外側に連結孔156,156を穿設している。
【0140】
前記溝部154,154により上側の横ロープ材125Bを挟み付けるようにして一対の挟持板153,153の内面同士を合わせ、透孔155,155にボルト157を挿通し、このボルト157にナット158を螺合することにより、上側の横ロープ材125Bに連結体152を固定する。
【0141】
前記固定状態で下側の連結孔156に、シャックル軸69を挿通し、シャックル本体68内に下側の横ロープ材125Bを挿通し、シャックル本体68の両端にシャックル軸69を挿通し、挿通したシャックル軸69にナットを螺合することにより、下側の横ロープ材125Bを連結体152に連結する。
【0142】
また、上縦ロープ材1127,1127A,1127Bの下端は、巻付グリップ161により連結体152の上側の連結孔156に連結され、また、下縦ロープ材2127,2127A,2127Bの上端は、巻付グリップ161により、連結体152の下側の連結孔156に連結したシャックル67のシャックル本体68に連結される。
【0143】
前記巻付グリップ161は、図27に示すように、複数素線よりなるワイヤーの中間部分にループ部162を形成し、このループ部162に連なる両方の脚部163,163に所定のピッチで撚りを与えたものであり、使用にあたっては、ループ部162を上側の連結孔156,156に挿通し、脚部163,163を上縦ロープ材1127,1127A,1127Bの下端の撚りに沿って順次巻き付けることにより連結される。
【0144】
同様にして、脚部163,163を下縦ロープ材2127,2127A,2127Bとの上端の撚りに沿って順次巻き付けることにより連結し、ループ部162をシャックル本体68に連結し、下縦ロープ材2127,2127A,2127Bとの上端を下側の連結孔156に連結する。
【0145】
このように網体中段部123Bに網体下段部123Cを連結することにより、シャックル67を中心として、網体下段部123Cを網体中段部123Bの上に重ねように回動することができる。
【0146】
尚、図25に示すように、横ロープ材と縦ロープ材は、その交差箇所を交差連結具159により固定されている。
【0147】
次に、施工例について説明する。図28に示すように、金網124を除いて網体123の網体上段部123Aと網体中段部123Bを施工する。この場合、網体中段部123Bの下端には、上下2本並んだ横ロープ材125B,125Bの上側の横ロープ材125Bを設け、2本のうちの下側の横ロープ材125Bは後で設けてもよい。
【0148】
図28の状態から、網体上段部123Aと網体中段部123Bの全体に、金網124を張設すると共に、金網124の下端124Kを上側の横ロープ材125Bから下方に部分的に突出させる(図29)。この突出部分の突出長さTは、網体下段部123Cの前後方向長さLより短く、前後方向長さL(図28)の2分の1以下、0.5m(メートル)以上、好ましくは1mである。そして、前記金網124の突出部分が金網124の延長部分171である。
【0149】
前記金網124の張設作業では、一定幅の金網124をロール状に巻いた単位金網1124を用い、この単位金網1124の幅は、複数の縦ロープ材127,127A,127Bの間隔K(図28)より広く、この例では、間隔Kの3倍に重ね代を加えた幅で、一例として、間隔Kが1m、重ね代が30cmでは、単位金網1124の幅は、3.3mとなる。
【0150】
そして、3本の縦ロープ材の間を塞ぐように、上下方向に連続した単位金網1124を上下方向に張設すると共に、左右に隣り合う単位金網1124,1124の幅方向両側の縁部1124F,1124F同士を重ね合わせて重ね合わせ部分1124Kを形成し、それら1124F,1124F同士を結合手段たる結合コイル172により結合する。図30において、左側の縁部1124Fが右側の単位金網の右縁部であり、右側の縁部1124Fが左側の単位金網1124の右縁部である。
【0151】
このように網体中段部123Bの下部に、金網124により0.5mの延長部分171を形成するように、網体上段部123A,網体中段部123B及び延長部分171に金網124を張設した後、網体下段部123Cにおける合成樹脂製の網142の張設作業を行う。
【0152】
図31及び図32に示すように、網体下段部123Cにおける合成樹脂製の網142の張設作業においては、網142の上部を延長部分171上に重ね、網142の上端を横ロープ材125Bに連結具(図示せず)により連結する。また、図32に示すように、網142の下端を裏面側に折返し、網142の下端側に重ね合わせ部分143(図32)を形成する。折り返した網142の下端142Tは、斜面2への固定手段である複数の固定用アンカー144により斜面2に固定する。固定用アンカー144の上端には、ロープ材に係止する係止部144Tを有する。このようにポケット状をなす重ね合わせ部分143により崩壊土砂Dの漏れを防止できる。
【0153】
次に、図33に示すように、網体下段部123Cの合成樹脂製の網142上に金網124を重ね合わせて張設する。この場合、上述した網体123の上端から延長部分171までの張設作業と同様に、網体下段部123C部分において、単位金網1124のロールを用いて網142を張設し、隣り合う単位金網1124の縁部1124F,1124F同士を重ね合わせて重ね合わせ部分1124Kを形成し、幅方向両側の縁部1124F,1124F同士を結合手段たる結合コイル172により結合する。
【0154】
また、図34に示すように、網体下段部123Cの金網124の上縁に、その網目を通すように横方向の端末筋145を挿通する。この端末筋145は丸鋼などの杆部材からなる。そして、端末筋145を前記シャックル67により前記連結体152に連結する。
【0155】
この後、網体下段部123Cにおける横ロープ材125B,125C及び横ロープ材125B,125Cの間の中間の横ロープ材126を、金網124の上に重ねて施工し、上述したように、下縦ロープ材2127,2127A,2127Bの上端を連結体152の下部に連結する。
【0156】
また、網体下段部123Cにおける横ロープ材125B,125C、横ロープ材125B,125Cの間の中間の横ロープ材126及び下縦ロープ材2127,2127A,2127Bを、前記結合コイル172により金網124と網142と延長部分171の金網124に連結する。
【0157】
また、図35に示すように、下段の横ロープ材125Cを複数の押えアンカー174により斜面2に固定する。前記押えアンカー174はコ字型部材175を備え、このコ字型部材175は、板材をコ字型に形成してなり、間隔を置いて配置した上下の腕片176,176とを連結片177により連結し、前記上下の腕片176,176にアンカー本体178を挿通する透孔176T,176Tを穿設し、これら透孔176T,176Tにアンカー本体178を挿通することにより、コ字型部材175内の連結片177側の収納空間179が閉じられ、この収納空間179に前記横ロープ材126が抜け止め状態で遊挿される。また、アンカー本体178には雌螺子部178Mが設けられ、この雌螺子部にナット178Nが螺合される。そして、アンカー本体178が斜面2に固定され、下側の腕片176が斜面2に接地する。
【0158】
このように本実施例では、請求項1に対応して、設置面たる斜面2に網体123を吊設し、網体123が、上下に間隔をおいて複数段に設けた横ロープ材125,125A,125B,125Cと、これら横ロープ材125,125A,125B,125C間を覆う網とを備えた落石防護網構造において、下段の網体たる網体下段部123Cに、金属製の網である金網124と合成樹脂製の網142を張設したから、網体の下段である網体下段部123Cが補強されると共に、網体下段部123Cにおける崩壊土砂Dの漏れ出しを削減することができる。
【0159】
このように本実施例では、請求項2に対応して、下段の網体たる網体下段部123Cを上段の網体たる網体中段部123Bに回動可能に連結したから、網体下段部123Cを上方に引き上げることにより捕捉した崩壊土砂Dを撤去することができ、また、冬季間には網体下段部123Cを上方に引き上げることにより積雪荷重の影響を回避することができる。
【0160】
このように本実施例では、請求項4に対応して、設置面たる斜面2に複数の防護柵用支柱3,3・・・を立設し、これら防護柵用支柱3,3・・・の間に防護面4を設けると共に、この防護面4が網体123と斜面2との間に位置するから、防護柵1の防護面4により崩壊土砂Dを捕捉することができ、網体下段部123Cに加わる崩壊土砂Dの影響を低減することができる。
【0161】
このように本実施例では、請求項5に対応して、下段の網体たる網体下段部123Cは、合成樹脂製の網142を張設すると共に、合成樹脂製の網142の下端を裏面側に折返し、合成樹脂製の網142の下端を設置面たる斜面2に固定し、合成樹脂製の網142の上に金属製の網たる金網124を重ね合わせ、この金網124の上に横ロープ材126を配置するから、網体下段部123Cの下端からの崩壊土砂Dの漏れ出しを抑制することができる。
【0162】
以下、実施例上の効果として、連結体152は、一対の挟持体たる挟持板153,153を備え、挟持板153の長さ方向中央の内面にロープ材を把持する溝部154を形成し、挟持板153には、前記溝部154を挟んで両側に透孔155,155を穿設すると共に、これら透孔の外側に連結孔156,156を穿設しているから、交差方向のロープ材の一方を挟持し、他方のロープ材の端部を、透孔155,155を用いて連結することができる。
【0163】
また、複数の縦ロープ材の間を塞ぐように、単位金網1124を上下方向に張設すると共に、左右に隣り合う単位金網1124,1124の幅方向両側の縁部1124F,1124F同士を重ね合わせて重ね合わせ部分1124Kを形成し、それら1124F,1124F同士を結合手段たる結合コイル172により結合したから、重ね合わせ部分1124Kにより、単位金網1124,1124間の崩壊土砂Dの漏れを防止できる。
【0164】
また、網体下段部123Cの上方の網体123たる網体上段部123Aと網体中段部123Bに金網124を張設すると共に、金網124の下端124Kを下方に部分的に延長した延長部分171を設け、この金網124の延長部分171に、網体下段部123Cの網142を張設したから、網142の上部側を延長部分171に連結し、網142の下端に下端側重ね合わせ部分143を形成し、下端側重ね合わせ部分143により崩壊土砂Dの漏れを防止できる。
【0165】
また、網体下段部123Cの金網124の上縁に、その網目を通すように横方向の端末筋145を挿通し、端末筋145を前記シャックル67により前記連結体152に連結するから、網体下段部123Cの金網124を網体123の上部側に簡便且つ安定して取り付けることができる。
【0166】
また、縦ロープ材と横ロープ材の升目に比べて、金網124と合成樹脂製の網142の升目が小さいから、崩壊土砂Dの漏れを効果的に防止できる。
【実施例0167】
図37図39は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例の落石防護網構造121は、網体下段部123Cを左右分割可能に構成している。
【0168】
網体下段部123Cにおいて、中間の横ロープ材126及び下段の横ロープ材125Cを左右方向中央で左右横ロープ材126L,126R及び左右横ロープ材125CL,125CRに分割している。
【0169】
前記横ロープ材126に対応して、横向きにした前記連結体152を左右方向中央の前記下縦ロープ材2127に固定する。
【0170】
そして、左横ロープ材126Lの網体中央側端部を、前記巻付グリップ161により、前記連結体152の左の連結孔156に連結する。また、同様に右横ロープ材126Rの網体中央側端部を、前記巻付グリップ161により、前記連結体152の右側の連結孔156に連結する。
【0171】
また、最下段の左右横ロープ材125CL,125CRの網体中央側端部と、縦ロープ材127の下端とを、連結手段の連結具たる連結体152Bにより連結している。この連結体152Bは、図39に示すように、逆T字形の板材からなる本体153Aの左右と上部に連結孔156を形成し、左右の連結孔156,156に連結したシャックル67,67に、巻付グリップ161,161により、左右横ロープ材125CL,125CRの網体中央側端部を連結し、上部の連結孔156に連結したシャックル67に、巻付グリップ161により、中央の縦ロープ材127の下縦ロープ材2127の下端を連結している。
【0172】
尚、シャックル67を用いずに、左右横ロープ材125CL,125CRの網体中央側端部を、巻付グリップ161,161により、連結孔156,156に連結してもよく、また、中央の縦ロープ材127の下縦ロープ材2127の下端を、巻付グリップ161,161により、連結孔156に連結してもよい。
【0173】
そして、下縦ロープ材2127に固定した連結体152と、連結体152の両側に連結したシャックル67,67により連結手段151Aを構成し、少なくとも左右一方のシャックル67を外すことにより、網体下段部123Cが左右に分割することができると共に、シャックル67を用いて左右に分割した網体下段部123Cを左右中央で連結し、一体化することができる。
【0174】
尚、金網124及び網142を図示省略しているが、結合コイル172によりロープ材を金網124及び網142に結合している。
【0175】
このように本実施例では、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0176】
また、左右方向両側に連結孔156,156を有する連結体152を、縦ロープ材である下縦ロープ材2127に固定したから、左右の連結孔156,156に左右の横ロープ材を簡便に接続及び接続解除することができる。
【実施例0177】
図40は本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例の落石防護網構造121は、下側の横ロープ材125Bを用いずに上側の横ロープ材125Bが1本の例を示す。
【0178】
シャックル67に、下縦ロープ材2127,2127A,2127Bの上端を巻付グリップ161により連結し、横方向に並んだ複数のシャックル67,67・・・を中心にして、網体下段部123Cを網体中段部123Bの上に重ねるように巻き上げることができる。
【0179】
このように横ロープ材125Bが1本の場合でも、その横ロープ材125Bに連結した連結体152のシャックル67を中心に、網体下段部123Cを巻き上げることができる。
【0180】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【実施例0181】
図41図44は本発明の実施例4を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例は防護構造120により捕捉した崩壊土砂Dの撤去方法を示し、また、防護柵1と落石防護網構造121の両者が崩壊土砂Dを捕捉した例である。
【0182】
落石防護網構造121の網体下段部123Cにおいて、崩壊土砂Dを左右に挟んだ2箇所の切断位置181,181で、中間の横ロープ材126,126・・・と下段の横ロープ材125Cを切断する。この場合、切断位置181,181は、防護柵1により捕捉した崩壊土砂Dに対応して設定し、好ましくは崩壊土砂Dの予想落下位置より広くなるように設定する。
【0183】
また、切断位置181,181に近い金網124の前記重ね合わせ部分1124K(図30)の結合コイル172を撤去して、左右に隣り合う単位金網1124,1124同士の連結を解除する。さらに、合成樹脂製の網142は切断位置181,181又はその近傍で切断する。また、下段の横ロープ材125Cを固定する押えアンカー174は、ナット178Nを外し、アンカー本体178からコ字型部材175を外し、横ロープ材125Cの固定を解除する。
【0184】
この後、網体下段部123Cを切断位置181,181において横ロープ材を切断した切断位置181,181間の切断網体下段部123C´を、シャックル67に挿通した下側の横ロープ材125Bを中心に、上方に持ち上げるようにして網体中段部123Bに重ね合わせ、その切断網体下段部123C´の上側になった切断網体下段部123C´の下端側に、保持手段たる吊ロープ材180を連結し、この吊ロープ材180を網体5の上部に連結し、切断網体下段部123C´を吊り下げた状態で固定する。
【0185】
これらの作業の途中で、捕捉した崩壊土砂Dが斜面2を伝わって下方に落下する。このようにして落石防護網構造121から落下により撤去した崩壊土砂Dを受け止めるために、斜面2の下の構造物設置面たる平地182に、土嚢183を積むと共に前後左右方向に並べて崩壊土砂止め構造物184(図43)を形成する。
【0186】
切断網体下段部123C´を捲り上げるようにして固定した状態で、防護柵1により捕捉した崩壊土砂Dの撤去を行う。図42に示すように、足場185を固定するために、前記横ロープ材125を用いたり、新たに支柱122,122の上部間に仮設用横ロープ材186を張設したりして、横ロープ材125又は/及び仮設用横ロープ材186に足場185の先端側を支持すると共に、足場185の基端側を斜面2より支持する。
【0187】
そして、作業者187が足場185に載って作業を行い、前記網体5の上部を防護柵用支柱3の上部から外す。この場合、図19に示したように、巻き付けた繊維ロープ100を外して支柱3,3の上部間の上横ロープ材7から網体5の上縁ロープ材6Uを取り外したり、網体5の上端側を切断したりすることにより、前記網体5の上部を防護柵用支柱3の上部から外し、図42(B)に示すように、網体5の上端側を支柱3の下方に斜面2に落とし、捕捉した崩壊土砂Dを斜面2の下方へ流下させる。流下した崩壊土砂Dは前記切断位置181,181の間を通って崩壊土砂止め構造物184により捕捉される。
【0188】
崩壊土砂を撤去した後、防護構造120の修復作業を行う。切断位置181で下側の横ロープ材125Bを切断した場合、図44に示すように、下側の横ロープ材125Bの切断位置181(図41)の左右の切断端125BT,125BTを、上側の横ロープ材125Bに固定した連結体152のシャックル67に、巻付グリップ161,161により連結する。これにより、上側の横ロープ材125Bに固定した連結体152のシャックル67に、左右の切断端125BT,125BT及び下縦ロープ材2127Bの3本の上端が連結される。尚、切断位置181の上下位置は、捕捉した崩壊土砂Dの量などにより適宜設定することができ、下側の横ロープ材125Bを切断しない場合もある。また、切断位置で切断する横ロープ材の数は複数本であるが、その本数は適宜選定可能である。
【0189】
また、修復作業において、切断位置181に近い縦ロープ材127Bに前記連結体152を横向きで取り付け、横ロープ材126の切断位置181の左右の切断端126T,126Tを、縦ロープ材127Bに固定した横向きの連結体152の左右のシャックル67,67に、巻付グリップ161,161により連結する。さらに、切断位置181において切断した下段の横ロープ材125Cを適宜手段より連結補修する。
【0190】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏し、また、請求項6に対応して、下段の網体たる網体下段部123Cの横ロープ材126,125Cを縦方向に切断し、縦方向の切断位置181,181間の切断網体下段部123C´を上方に引上げ、網体下段部123Cにより捕捉した崩壊土砂Dを撤去するから、補足した崩壊土砂Dの範囲に対応して切断し、切断位置181,181間の下段の網体を引上げることにより、崩壊土砂Dを撤去することができる。
【0191】
また、切断網体下段部123C´を上方に引き上げることにより落下した崩壊土砂Dを受け止める崩壊土砂止め構造物184を設けたから、崩壊土砂Dの流下を崩壊土砂止め構造物184により止めることができる。
【0192】
さらに、切断網体下段部123C´を上方に引き上げ、捕捉した崩壊土砂Dを撤去した後、防護柵1が捕捉した崩壊土砂Dを斜面2に沿って流下させることにより、切断網体下段部123C´に多量の崩壊土砂Dが溜まらず、崩壊土砂Dは切断網体下段部123C´を上方に引き上げて開いた空間を通って、効率良く撤去される。
【0193】
また、支柱3の上部側に足場185の先端側を支持すると共に、足場185の基端側を斜面2より支持し、これにより略水平に配置した足場185に載って網体5の上部を防護柵用支柱3の上部から外す作業を容易に行うことができる。さらに、前記支柱3の後側への傾動を規制する第1の後側規制構造39Aを備えるから、支柱3が後方に傾動することがなく、足場を安定して設けることができる。
【実施例0194】
図45図46は本発明の実施例5を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例では、上記実施例4において、切断網体下段部123C´を引き上げることが困難な場合に、両切断位置181,181の上部を横切断位置181A(図45)において切断する例を示す。
【0195】
横切断位置181Aにて、網体下段部123Cの縦ロープ材127,127A,127Bの上部を切断し、この切断網体下段部123C´を下方に引き下げ、崩壊土砂Dを撤去する。尚、捕捉した崩壊土砂Dの量などにより、横切断位置181Aの上下位置を設定することができる。
【0196】
崩壊土砂Dを撤去した後、実施例4と同様に修復作業を行い、横切断位置181Aにおける縦ロープ材127,127A,127Bの上端を、巻付グリップ161により対応する連結体152のシャックル67に連結する。
【0197】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏し、また、請求項7に対応して、下段の網体たる網体下段部123Cの横ロープ材126,125Cを縦方向に切断し、縦方向の切断位置181,181の上部間で網体下段部123Cの上部を切断し、縦方向の切断位置181,181間の切断網体下段部123C´を外し、網体下段部123Cにより捕捉した崩壊土砂Dを撤去するから、引上げが困難な場合、補足した崩壊土砂Dの範囲に対応して切断し、切断位置181,181間の切断網体下段部123C´を外すことにより、崩壊土砂Dを撤去することができる。
【0198】
また、網体下段部123Cに多量の崩壊土砂Dが溜まり、切断網体下段部123C´を引き上げることが困難な場合に、多量の崩壊土砂Dを円滑に撤去することができる。
【実施例0199】
図47図50は本発明の実施例6を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例の防護構造120は、実施例2の網体下段部123Cを左右中央で分割した落石防護網構造121において、網体下段部123Cにより捕捉した崩壊土砂Dを除去したり、冬季の豪雪地域において積雪荷重載荷重が加わることを回避したりするために、網体下段部123Cを巻き上げて保持する例を示す。
【0200】
下段の横ロープ材125Cと縦ロープ材127,127A,127Bの下端とが、連結具たる連結体152Aにより連結される。この連結体152Aは、前記連結体152が連結孔156を両側に有するのに対して、連結孔156が片側1箇所に設けられている点で前記連結体152と相違し、他は同一構成である。尚、中央の縦ロープ材127の下縦ロープ材2127の下端は、シャックル67により連結体152Bに連結されている。
【0201】
そして、下段の横ロープ材125Cに、連結孔156を上側にして連結体152Aを固定し、その連結孔156に巻付グリップ161により縦ロープ材127,127A,127Bの下端を連結している。尚、同様に各実施例においても、縦ロープ材の下端と下段の横ロープ材125Cとを連結体152Aとシャックル67と巻付グリップ161により連結している。
【0202】
網体下段部123Cの左側半分を巻き上げるには、網体下段部123Cの幅方向中央で、左右の左横ロープ材126L及び左横ロープ材125CLと縦ロープ材127との連結を解除する。この場合、左右の左横ロープ材126L及び左横ロープ材125CLの一方の端部の連結体152との連結を解除したり、左横ロープ材126L及び左横ロープ材125CLの両方の端部の連結体152との連結を解除したりすることができる。尚、それら連結の解除にはシャックル67を用いることができる。また、シャックル67を用いることなく、巻付グリップ161のループ部162を連結孔156に連結している場合は、巻付グリップ161を切断することにより、連結体152,152Bとロープ材との連結を解除してもよい。
【0203】
また、網体下段部123Cの左右方向中央の縦ロープ材127の近傍で、単位金網1124,1124同士の連結を解除すると共に、合成樹脂製の網142の連結箇所の連結を解除する。このようにして、網体下段部123Cを幅方向中央で左右に分離し、網体下段左部123CLと網体下段右部123CR(図47及び図50)を形成する。また、下段の横ロープ材125の両端側の前側アンカー136A,136Aとの連結を解除する。また、下段の横ロープ材125Cを押えアンカー174から取り外す。
【0204】
網体下段左部123CLと網体下段右部123CRの一方である網体下段左部123CLの下段の横ロープ材125Cに、図49に示すように、支持杆たる単管191を添わせると共に、その単管191をシャックル67により連結する。
【0205】
そして、複数のシャックル67に吊上げロープ材192の一端側を連結し、吊上げロープ材192の他端側をクレーンなどの吊上げ装置(図示せず)に連結し、その吊上げ装置により網体下段左部123CLを巻き上げるようにして吊り上げ、その網体下段左部123CLの上側になった下端側に、保持手段たる前記吊ロープ材180を連結し、この吊ロープ材180を網体5の上部に連結し、網体下段左部123CLを固定する。また、必要な場合は、同様にして、網体下段右部123CRを巻き上げて、網体5の上部に重ね合わせて固定する。
【0206】
こうすることで網体下段部123Cに補足した崩壊土砂Dを撤去したり、冬季間に巻き上げて積雪荷重の影響を緩和したりすることができる。そして、逆の手順で網体下段部123Cを張り直すことができる。
【0207】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏し、請求項2に対応して、下段の網体たる網体下段部123Cを上段の網体たる網体中段部123Bに回動可能に連結したから、網体下段部123Cを上方に引き上げることにより捕捉した崩壊土砂Dを撤去することができ、また、冬季間には網体下段部123Cを上方に引き上げることにより積雪荷重を回避することができる。
【0208】
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、下段の網体たる網体下段部123Cが左右分割可能であるから、網体下段部123Cを左右に分けて上方に引き上げることができる。
【0209】
また、網体下段左部123CLと網体下段右部123CRの一方である網体下段左部123CLの下段の横ロープ材125に、支持杆たる単管191を添わせると共に、シャックル67により連結し、複数のシャックルに吊上げロープ材192の一端側を連結し、吊上げロープ材192の他端側をクレーンなどの吊上げ装置(図示せず)に連結し、吊上げ装置により網体下段左部123CLを巻き上げるようにして、網体下段左部123CLの下段の横ロープ材125を均一に吊り上げることができる。
【実施例0210】
図51は本発明の実施例7を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例の防護構造120は新設の落石防護網構造121からなり、防護柵1の無い例を示している。
【0211】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0212】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、網体を防護柵用支柱の前側に配置してもよい。また、両端の防護柵用支柱において、上横ロープ材と左,右縁ロープ材の上端側とを連結したり、下横ロープ材と左,右縁ロープ材の下端側とを連結したりしてもよい。さらに、実施例では、落石防護網用支柱として傾動可能なものを示したが、固定された落石防護網用支柱を用いてもよく、また、落石防護網の材質や形状も適宜選定可能であり、落石防護網用支柱及び落石防護網は各種タイプのものを用いることができる。また、緩衝装置は、ロープ材を緩衝具により把持し、摩擦摺動後にロープ材の端部に設けたストッパが緩衝具に係止して摩擦摺動を停止するタイプのものなど各種のものを用いることができる。さらに、設置面は斜面以外でもよい。
【0213】
また、合成樹脂製の網は少なくとも網体下段部に設ければよく、網体の上部側たる網体上段部と網体中段部にも合成樹脂製の網を張設してもよい。さらに、金属製の網及び合成樹脂製の網の形状・大きさなどは適宜選定可能である。また、実施例では、網体の下段の崩壊土砂を流下して撤去した後、防護柵の崩壊土砂を流下して撤去するようにしたが、防護柵の崩壊土砂を下段の網体に流下させて溜めた後、下段の崩壊土砂を流下して撤去するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0214】
1 防護柵
2 斜面(設置面)
3 防護柵用支柱
4 防護面
5 網体
121 落石防護網構造
122 落石防護網用支柱
123 網体(落石防護網)
123A 網体上段部(網体の上段)
123B 網体中段部(網体の上段)
123C 網体下段部(網体の下段)
124 金網(金属製の網)
125 横ロープ材
125A 横ロープ材
125B 横ロープ材
126 中間の横ロープ材
142 合成樹脂製の網
171 延長部分
181 切断位置
D 崩壊土砂
図1
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