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特開2024-61180フェノール樹脂ペレット及び樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061180
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】フェノール樹脂ペレット及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 61/10 20060101AFI20240425BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240425BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20240425BHJP
   C08J 3/12 20060101ALN20240425BHJP
【FI】
C08L61/10
C08K3/013
C08J9/00 Z CEZ
C08J3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168954
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】大島 仁昌
(72)【発明者】
【氏名】田中 数洋
(72)【発明者】
【氏名】霞末 充広
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA12
4F070AA18
4F070AA19
4F070AA44
4F070AA47
4F070AC13
4F070AC16
4F070AC27
4F070AC28
4F070DA55
4F074AA13
4F074AA16A
4F074AA34
4F074AA59
4F074AA65
4F074AC17
4F074AC32
4F074AC34
4F074AC36
4F074CB91
4F074CD20
4F074DA02
4F074DA57
4J002AA01X
4J002BB03X
4J002BB12X
4J002BC03X
4J002BD03X
4J002BN15X
4J002CC03W
4J002CF06X
4J002DE076
4J002DE146
4J002DE216
4J002DG046
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DL006
4J002GF00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】リサイクルによる資源循環が可能であり、樹脂成形品における機械的強度の向上に資するフェノール樹脂ペレットを提供することを目的とする。
【解決手段】平均粒径が0.1~3mmであるフェノールフォーム粉と、前記フェノールフォーム粉100質量部に対して15~350質量部の熱可塑性樹脂と、前記フェノールフォーム粉100質量部に対して0~50質量部の無機物とを含む、フェノール樹脂ペレットの提供。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.1~3mmであるフェノールフォーム粉と、
前記フェノールフォーム粉100質量部に対して15~350質量部の熱可塑性樹脂と、
前記フェノールフォーム粉100質量部に対して0~50質量部の無機物とを含む、フェノール樹脂ペレット。
【請求項2】
平均粒径が1~10mmである、請求項1に記載のフェノール樹脂ペレット。
【請求項3】
かさ比重が0.40~0.85g/cmである、請求項1に記載のフェノール樹脂ペレット。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル系樹脂、及び、スチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のフェノール樹脂ペレット。
【請求項5】
前記無機物が、炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、シリカ、バライト粉、ベーマイト紛体、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラス繊維、及びロックウールからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のフェノール樹脂ペレット。
【請求項6】
平均粒径が0.1~3mmであるフェノールフォーム粉または前記フェノールフォーム粉を含むフェノール樹脂ペレットの少なくとも一方と、熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物を押出成形して樹脂成形品とすることを含み、
前記フェノールフォーム粉の含有量が、前記樹脂成形品100質量部に対して、1~100質量部である、樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂ペレット及び樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂を含有する成形材料は、断熱性、難燃性、機械的強度、コスト等のバランスに優れた材料として、様々な用途に広く利用されている。例えば、フェノール樹脂を含有するペレット等の成形材料は、フェノール樹脂発泡体(フェノールフォーム)や各種の樹脂成形品の製造等に用いられる。
【0003】
フェノール樹脂を含有する成形材料としては、例えば、特許文献1には、ノボラック型フェノール樹脂にガラス繊維とを含有してなる組成物を、2軸混練押出し機で混練しながら押し出して得ることができるペレットが開示されている。また、特許文献2には、ノボラック型フェノール樹脂と、高分子量ポリエチレンと、無機充填剤を含有する組成物を、2軸混練機を用いて溶融混練して得ることができる顆粒状の成形材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-7883号公報
【特許文献2】特開2006-265321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、昨今の環境問題に対する関心の高まりから、フェノール樹脂を含有する成形材料や成形品については、使用後の樹脂成形品をリサイクルして製造されることが望ましい。例えば、フェノールフォームそのもの、あるいは、フェノールフォームを製造する際に発生する端材などをリサイクルして、再度発泡体やその他の用途として利用することが考えられる。しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載のフェノール樹脂を含有する成形材料は、このようなリサイクルが考慮されていない。また、このようなリサイクルを考慮して製造されたフェノール樹脂成形材料や成形品については、成形不良などの問題が生じることがあった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、リサイクルによる資源循環が可能であり、樹脂成形品における機械的強度の向上に資するフェノール樹脂ペレットを提供することを目的とする。また、リサイクルによる資源循環が可能であり、優れた機械的強度を有する樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討した結果、上記目的は、以下の構成により達成されることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の一態様に係るフェノール樹脂ペレットは、平均粒径が0.1~3mmであるフェノールフォーム粉と、前記フェノールフォーム粉100質量部に対して15~350質量部の熱可塑性樹脂と、前記フェノールフォーム粉100質量部に対して0~50質量部の無機物とを含む。このような構成により、リサイクルによる資源循環が可能であり、樹脂成形品における機械的強度の向上に資するフェノール樹脂ペレットを提供することができる。
【0009】
また、前記フェノール樹脂ペレットは、平均粒径が1~10mmであることが好ましい。このような構成により、前記フェノール樹脂ペレットを用いて樹脂成形品を成形する際の成形性を確保しやすいといった利点がある。
【0010】
さらに、前記フェノール樹脂ペレットは、かさ比重が0.40~0.85g/cmであることが好ましい。かさ比重が0.40g/cm以上であることにより、ペレットの密着性が良好であり、砕けにくいため、ハンドリング性に優れている。一方、かさ比重が0.85g/cm以下であることにより、無機物の含有量が多くなりすぎず、ペレットが硬くもろくなることがない、といった利点がある。
【0011】
また、前記フェノール樹脂ペレットにおいて、前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル系樹脂、及び、スチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0012】
また、前記フェノール樹脂ペレットにおいて、前記無機物が、炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、シリカ、バライト粉、ベーマイト紛体、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラス繊維、及びロックウールからなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の他の一態様に係る樹脂成形品の製造方法は、平均粒径が0.1~3mmであるフェノールフォーム粉または前記フェノールフォーム粉を含むフェノール樹脂ペレットの少なくとも一方と、熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物を押出成形して樹脂成形品とすることを含み、前記フェノールフォーム粉の含有量が、前記樹脂成形品100質量部に対して、1~100質量部である。このような構成により、リサイクルによる資源循環が可能であり、優れた機械的強度を有する樹脂成形品を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リサイクルによる資源循環が可能であり、樹脂成形品における機械的強度の向上に資するフェノール樹脂ペレットを提供することができる。また、リサイクルによる資源循環が可能であり、優れた機械的強度を有する樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
[フェノール樹脂ペレット]
本実施形態におけるフェノール樹脂ペレットは、平均粒径が0.1~3mmであるフェノールフォーム粉と、前記フェノールフォーム粉100質量部に対して15~350質量部の熱可塑性樹脂と、前記フェノールフォーム粉100質量部に対して0~50質量部の無機物とを含む。このようなフェノール樹脂ペレットはリサイクルによる資源循環が可能であるため、環境に配慮しつつ、コストを削減することができる。また、前記フェノール樹脂ペレットを利用して樹脂成形品を成形した場合には、成形品の機械的強度を向上させることができる。さらに、前記フェノール樹脂ペレットは樹脂成形品を成形する際の加工性にも優れる。
【0017】
前記フェノール樹脂ペレットの平均粒径は1~10mmであることが好ましい。このような範囲であることにより、前記フェノール樹脂ペレットを用いて樹脂成形品を成形する際の成形性が確保されやすいといった利点がある。前記フェノール樹脂ペレットの平均粒径の下限値は、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましい。前記フェノール樹脂ペレットの平均粒径の上限値は、8mm以下であることがより好ましく、6mm以下であることがさらに好ましい。
【0018】
前記フェノール樹脂ペレットの形状は、特に限定されないが、例えば円柱等が挙げられる。前記フェノール樹脂ペレットが円柱の場合には、前記平均粒径とはその直径の平均値である。
【0019】
前記フェノール樹脂ペレットのかさ比重は0.40~0.85g/cmであることが好ましい。かさ比重が0.40g/cm以上であることにより、ペレットの密着性が良好であり、砕けにくいため、ハンドリング性に優れている。また、かさ比重が0.40g/cm以上となるように無機物を含有することにより、ペレットの耐熱性、難燃性が向上する。一方、かさ比重が0.85g/cm以下であることにより、無機物の含有量が多くなりすぎず、ペレットが硬くもろくなることがない、といった利点がある。さらに、かさ比重を0.40~0.85g/cmとすることによって、ペレットを袋に収納して防音材として使用した際に優れた防音効果を有する。
【0020】
前記フェノール樹脂ペレットのかさ比重の下限値は、0.5g/cm以上であることがより好ましく、0.55g/cm以上であることがさらに好ましい。また、前記フェノール樹脂ペレットのかさ比重の上限値は、0.80g/cm以下であることがより好ましく、0.78g/cm以下であることがさらに好ましい。
【0021】
次にフェノール樹脂ペレットに含まれる各成分について詳しく説明する。本実施形態におけるフェノール樹脂ペレットは、平均粒径が0.1~3mmであるフェノールフォーム粉と、熱可塑性樹脂とを含んでいればよく、必要に応じて、無機物、繊維材料、有機物、可塑剤、離型剤など、ペレットとして一般的に含まれているものを適宜含んでいてもよい。
【0022】
(フェノールフォーム粉)
本実施形態におけるフェノールフォーム粉の平均粒径は0.1~3mmである。前記平均粒径が0.1~3mmの範囲から外れる場合には、フェノール樹脂ペレットを成形する際に成形不良が生じるおそれがある。前記平均粒径の下限値は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上である。また、前記平均粒径の上限値は、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは2mm以下である。前記フェノールフォーム粉の平均粒径は、例えば、顕微鏡による画像解析によって測定することができる。
【0023】
本実施形態におけるフェノールフォーム粉は、例えば、フェノール樹脂発泡体(フェノールフォーム)を粉砕・切断することによって得られる。前記フェノールフォームは、環境配慮の観点から、フェノールフォームを製造する際に発生する端材等を利用することがより好ましい。
【0024】
前記フェノールフォームとしては、特に限定されないが、一般的に、フェノール樹脂を含む組成物を、発泡、硬化させることによって製造される。前記フェノールフォームには、必要に応じて、発泡剤、酸硬化剤、界面活性剤、可塑剤、有機アミノ基含有化合物、及び金属炭酸塩等が任意に含まれる。
【0025】
前記フェノールフォームに含まれるフェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などが挙げられるが、耐熱性、耐久性に優れるといった観点から、レゾール型フェノール樹脂が好ましい。
【0026】
前記フェノールフォームの粉砕方法としては、特に限定されないが、例えば、カッターミル、ピンミル、ハンマーミル、ジェットミルなどを用いて粉砕することができる。また、前記フェノールフォーム粉を、フェノールフォームを粉砕・切断することによって得る場合には、1種のフェノールフォームのみを用いてもよいし、2種以上のフェノールフォームを用いてもよい。
【0027】
(熱可塑性樹脂)
本実施形態におけるフェノール樹脂ペレットはバインダーとして熱可塑性樹脂を含む。前記バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル系樹脂、及び、スチレン系樹脂等が挙げられる。前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。前記スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート(ASA)樹脂等が挙げられる。また、リサイクルポリオレフィン等のリサイクル製品を用いることで、環境により配慮されたフェノール樹脂ペレットを提供することができる。
【0028】
前記バインダーの中でも、汎用性、コストの観点から、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂が好ましく使用される。また、リサイクル材の品質が高く、汎用樹脂として多く用いられ、かつ真比重が高いといった観点からはポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましく使用される。
【0029】
これらのバインダーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
前記バインダーの含有量は、前記フェノール樹脂発泡体100質量部に対して、15~350質量部である。前記バインダーの含有量が15質量部以上であることにより、フェノールフォーム粉を用いてフェノール樹脂ペレットを成形する際に成形不良が生じにくく、資源循環が可能であるフェノール樹脂ペレットを得ることができる。また、前記熱可塑性樹脂の含有量が350質量部以下であることにより、フェノールフォーム粉のリサイクル率向上が図られ、フェノール樹脂の持つ耐熱性、難燃性といった性能が発現しやすいといった利点がある。前記バインダーの含有量の下限値は、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましい。また、前記バインダーの含有量の上限値は、200質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましい。
【0031】
また、前記フェノール樹脂ペレット全量に対して、前記バインダーの含有量は、10~80質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましい。前記バインダーの含有量が少なすぎると、ペレットを造粒する際に成形不良が生じやすいため、10質量%以上であることによって、ペレットを成形しやすいといった利点がある。
【0032】
(無機物)
本実施形態におけるフェノール樹脂ペレットは無機物を含んでいてもよい。前記無機物としては、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、シリカ、バライト粉、ベーマイト紛体、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラス繊維、及びロックウール等が挙げられる。これらの中でも、炭酸カルシウム、バライト粉、タルク、及びガラス繊維が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
前記無機物の含有量は、前記フェノール樹脂発泡体100質量部に対して、0質量部以上50質量部以下である。本実施形態におけるフェノール樹脂ペレットは無機物の含有が必須ではないが、無機物を含有しているほうが好ましい。無機物を含有することによってペレットの機械的強度を向上させ、耐熱性、難燃性を得ることができる。また、ペレットを袋に収納して防音材として使用する場合には、優れた防音効果を有する。前記無機物の含有量は、0質量部超えであることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましい。
【0034】
(製造方法)
上述したフェノール樹脂ペレットの製造方法は、上述した組成及び形状のフェノール樹脂ペレットを製造することができれば、特に限定されない。前記製造方法としては、例えば、フェノールフォーム粉やバインダー等の上記の各種成分を配合した混合物を200~220℃程度の2軸混練ロールにより3分間程度溶融混練し、任意のサイズにカッティングすることでフェノール樹脂ペレットを得る方法等が挙げられる。
【0035】
(用途)
本実施形態におけるフェノール樹脂ペレットは、リサイクルによる資源循環が可能である。また、前記フェノール樹脂ペレットは、その表面状態が平滑であり、ペレットの互着がなく、取扱いが良好であるため、加工性に優れている。そのため、例えば、押出成形によって樹脂成形品を成形する際には、熱可塑性樹脂等と均一に混ざりやすいと考えられる。さらに、前記フェノール樹脂ペレットを用いて成形した樹脂成形品は機械的強度に優れている。したがって、前記フェノール樹脂ペレットは、樹脂成形品などの様々な用途に利用され得る。また、本実施形態におけるフェノール樹脂ペレットは、袋に収納され、防音材として使用され得る。
【0036】
[樹脂成形品]
本実施形態における樹脂成形品の製造方法は、平均粒径が0.1~3mmであるフェノールフォーム粉または前記フェノールフォーム粉を含むフェノール樹脂ペレットの少なくとも一方と、熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物を押出成形して樹脂成形品とすることを含む。すなわち、前記樹脂成形品は、前記フェノールフォーム粉を含むフェノール樹脂ペレットと前記熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物を押出成形して、あるいは、フェノール樹脂ペレットを成形せずに、前記フェノールフォーム粉と前記熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物を押出成形して成形される。
【0037】
さらに、前記フェノールフォーム粉の含有量が、前記樹脂成形品100質量部に対して、1~100質量部である。
【0038】
上記製造方法によれば、リサイクルによる資源循環が可能であり、優れた機械的強度を有する樹脂成形品を得ることができる。
【0039】
前記フェノールフォーム粉の含有量は、前記樹脂成形品100質量部に対して、3~100質量部であることが好ましく、3~70質量部であることがより好ましい。
【0040】
前記樹脂成形品は、平均粒径が0.1~3mmのフェノールフォーム粉または前記フェノールフォーム粉を含むフェノール樹脂ペレットと熱可塑性樹脂以外にも、任意で無機物、増量剤、難燃剤、硬化助剤、着色剤、離型剤、可塑剤、界面活性剤、尿素、酸、不織布等の添加剤等、樹脂成形品に一般的に含まれる成分を含んでいてもよい。
【0041】
前記フェノールフォーム粉については、特に限定されないが、例えば、上記[フェノール樹脂ペレット]において例示されたフェノールフォーム粉と同様のものが挙げられる。
【0042】
前記フェノール樹脂ペレットについては、特に限定されないが、上記[フェノール樹脂ペレット]において例示されたフェノール樹脂ペレットを用いることが好ましい。
【0043】
前記熱可塑性樹脂については、特に限定されないが、例えば、[フェノール樹脂ペレット]において例示された熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。
【0044】
前記樹脂組成物は、上述したフェノールフォーム粉またはフェノール樹脂ペレット、熱可塑性樹脂、添加剤等を公知の方法により混合して得ることができる。例えば、上述したフェノールフォーム粉またはフェノール樹脂ペレット、熱可塑性樹脂、添加剤等を混合し、混錬することで、調製することができる。混練の際に例えば、二軸混練設備、ニーダー、及びミキサー等を用いることができる。ここで、混練温度は、特に限定されないが、常温~100℃の範囲であることが好ましい。
【0045】
そして、上述したフェノールフォーム粉またはフェノール樹脂ペレット、熱可塑性樹脂、添加剤等を混合した樹脂組成物を押出成形することによって、樹脂成形品を得ることができる。
【0046】
前記押出成形には、一般的な押出成形機を用いることができる。押出成形時の温度としては特に限定されないが、100~300℃の範囲であることが好ましい。
【0047】
前記樹脂成形品の形状は特に限定されず、任意の形状とすることができる。前記形状としては、例えば、直方体(例えば、板状など)、直方体以外の多面体、円柱などが挙げられる。
【0048】
前記樹脂成形品の曲げ強さ及び曲げ弾性率は、フェノールフォーム粉やフェノール樹脂ペレットを混合しない場合と比べて向上している。前記曲げ強さ及び曲げ弾性率は、使用する熱可塑性樹脂によって好ましい値が異なるため、特に限定されないが、前記曲げ強さは、例えば、20~40MPaであることが好ましい。また、前記曲げ弾性率は、例えば、リサイクルポリオレフィンを使用する場合には、1000MPa以上であることが好ましい。前記曲げ強さ及び曲げ弾性率は、JIS K 7171に準拠して測定することができる。
【0049】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例0050】
[ペレットの成形]
本実施例で使用した各成分の詳細は以下の通りである。
【0051】
(フェノールフォーム粉)
以下に示す配合で製造されたフェノールフォームをカッターミルで粉砕した。
【0052】
・フェノールフォームの配合
(1)液体状レゾール型フェノール樹脂:品番PF-339(旭有機材工業株式会社製)、100質量部
(2)界面活性剤:ヒマシ油エチレンオキサイド付加物(付加モル数30)、4質量部
(3)有機アミノ基含有化合物(ホルムアルデヒドキャッチャー剤):尿素、4質量部
(4)発泡剤:イソプロピルクロリドとイソペンタンの混合物、10質量部
(5)酸硬化剤:パラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸の混合物、17質量部
(6)可塑剤:フタル酸とジエチレングリコールをモル比1:2で反応してなるポリエステルポリオール、2質量部
(7)金属炭酸塩:炭酸カルシウム、3質量部
【0053】
粉砕したフェノールフォーム粉について、見開き3mmの篩を用いて篩分けを行い、平均粒径が1.5mmであるフェノールフォーム粉-1を得た。また、粉砕したフェノールフォーム粉について、見開き10mmの篩を用いて篩分けを行い、平均粒径が5mmであるフェノールフォーム粉-2を得た。
【0054】
(バインダー:熱可塑性樹脂)
・熱可塑性樹脂-1:リサイクルポリオレフィン
・熱可塑性樹脂-2:リサイクルポリスチレン
・熱可塑性樹脂-3:ポリエチレン
・熱可塑性樹脂-4:ポリ塩化ビニル
【0055】
(無機物)
・無機物-1:炭酸カルシウム
・無機物-2:バライト粉
・無機物-3:タルク
・無機物-4:ガラス繊維
【0056】
これらの原料を用い、表1、2に示す割合(表中の成分の数値はすべて質量部を示す)で混合した混合物を200~220℃の2軸混練ロールにより3分間溶融混練し、任意のサイズにカッティングしペレットを得た(実施例1~9、比較例1~3)。
【0057】
上述のようにして得られた各ペレット(実施例1~9、比較例1~3)について、以下の方法に従って、かさ比重、ペレット表面状態、及び加工性を測定・評価した。これらの結果を表1、2に示す。
【0058】
[かさ比重]
かさ比重は、JIS Z 2504(見掛密度測定方法)に準拠して測定した。
【0059】
[ペレット表面状態]
ペレットの表面状態を以下のように評価した。
◎:平滑で艶がある
○:平滑であるが艶が乏しい
×:ササクレだっている
【0060】
[加工性]
ペレットの加工性を以下のように評価した。
〇:ペレットの互着がなく、取扱いが良好
×:一部ペレット同士がくっついている
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
この結果から次のように考察できる。すなわち、本発明で規定する要件を満足するフェノール樹脂ペレット(実施例1~9)は、ペレットの表面状態が良好であり、加工性に優れることがわかった。
【0064】
これに対し、比較例1~3では、ペレットを成形することができなかった。具体的には、比較例1は、バインダーの含有量が少なく、ペレットを成形することができなかった。比較例2は、フェノールフォーム粉の平均粒径が3mmよりも大きく、ペレットを成形することができなかった。比較例3は、無機物の含有量が多く、ペレットを成形することができなかった。
【0065】
[樹脂成形品の成形]
上記実施例2で得られたペレットとリサイクルポリオレフィンを表3に示す割合(表中の成分の数値はすべて質量部を示す)で常温23℃で5分間混合し、押出成形機(押出温度180℃)にて、厚み2mm、幅50mmの板材(樹脂成形品)を得た。得られた各板材(実施例10~13、比較例4)について、以下の方法に従って、曲げ強さ、曲げ弾性率、押出成形性、表面状態及び強度を測定・評価した。これらの結果を表3に示す。
【0066】
[曲げ強さ]
曲げ強さは、JIS K 7171に準拠して測定した。
【0067】
[曲げ弾性率]
曲げ弾性率は、JIS K 7171に準拠して測定した。
【0068】
[押出成形性]
押出成形性を以下のように評価した。
○:押出成形品の表面の外観が良好
△:押出成形品の表面にシワがある
【0069】
[表面状態]
押出成形品の表面状態を以下のように評価した。
○:表面に艶がある
△:表面がざらついている
×:表面に凹凸がある
【0070】
【表3】
【0071】
この結果から次のように考察できる。すなわち、本発明で規定する要件を満足するフェノール樹脂ペレットを用いて成形した樹脂成形品は、優れた曲げ強さ、曲げ弾性率を有することがわかった。また、フェノールフォーム粉の含有量が樹脂成形品100質量部に対して1~100質量部となるように成形した樹脂成形品は、優れた曲げ強さ、曲げ弾性率を有することがわかった。