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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061186
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】乗物用収納構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
B60R5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168960
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 陽平
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BA20
3D022BC13
(57)【要約】
【課題】収納部に収納される様々な形状の物品を固定可能な乗物用収納構造を提供する。
【解決手段】乗物用内装材14に設けられた収納部20に収納物を収納する乗物用収納構造1であって、前記収納部20は、乗物室内側に向けて開口した開口部17を有するとともに、前記開口部17から乗物室外側に窪んで収納物を収納可能な収納空間を形成する収納部本体21と、前記開口部17を乗物室内側から閉塞する板状の蓋部31と、を備え、前記蓋部31のうち前記収納空間側の面に、前記収納部20内に収納された収納物を前記収納部本体21に押し付ける押さえ部材50が着脱可能に取り付けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用内装材に設けられた収納部に収納物を収納する乗物用収納構造であって、
前記収納部は、
乗物室内側に向けて開口した開口部を有するとともに、前記開口部から乗物室外側に窪んで収納物を収納可能な収納空間を形成する収納部本体と、
前記開口部を乗物室内側から閉塞する板状の蓋部と、を備え、
前記蓋部のうち前記収納空間側の面に、前記収納部内に収納された収納物を前記収納部本体に押し付ける押さえ部材が着脱可能に取り付けられている乗物用収納構造。
【請求項2】
前記蓋部は行列状に並ぶ複数の取付孔を有し、
前記押さえ部材は、前記取付孔に対して前記収納空間側から取り付け可能な突出部を有し、
前記突出部が前記取付孔の孔縁部に係止することで、前記押さえ部材が前記蓋部に対して着脱可能に取り付けられる請求項1に記載の乗物用収納構造。
【請求項3】
前記突出部は、その突出方向の先端側に位置する先端側部が、該先端側部より基端側に位置する基端側部の外周面から外側に張り出した形状のものとされ、
前記取付孔は、前記先端側部を挿入可能な挿入孔部と、前記挿入孔部の孔縁部に連なって形成され、前記基端側部が挿通可能とされるとともに、前記先端側部をその孔縁部に係止可能な係止孔部と、を備えており、
前記押さえ部材は、前記突出部の前記先端側部が前記係止孔部の孔縁部に係止することで、前記取付孔に取り付け可能とされている請求項2に記載の乗物用収納構造。
【請求項4】
前記蓋部は乗物室内側に膨出する膨出部を備え、前記取付孔は前記膨出部に設けられており、
前記押さえ部材は、前記膨出部の縁部に架け渡される形で前記蓋部に対して取り付けられている請求項2または請求項3に記載の乗物用収納構造。
【請求項5】
前記押さえ部材は弾性変形可能なリング状をなし、その径方向が前記蓋部の板面と交差するように前記蓋部に対して取り付けられており、
前記蓋部が前記開口部を閉塞した状態において、前記押さえ部材が径方向の内側に向けて変形することで、前記収納部内に収納された収納物を前記収納部本体に押し付け可能とされている請求項1または請求項2に記載の乗物用収納構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、乗物用収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両のラゲッジサイドトリムに設けられた開口を通して収納部内に物品を収納可能な収納構造が開示されている。この収納構造は、物品と干渉する固定用部品と、固定用部品の一端部を支持する第1支持部材と、固定用部品の他端部に係合される第2支持部材とを備えており、固定用部品、第1支持部材、および第2支持部材の少なくとも1つに設けられた弾性部を弾性変形させて固定用部品を第2支持部材に係合させることで、収納部内に物品を固定する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-111234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記構成のものは、固定部材を固定する箇所が限定されているため、物品を押さえる位置を調節することができない。また、固定する物品の押さえ形状(へこみ)を利用して抑える構成のため、固定できる物品が限定される。
【0005】
本明細書に開示される技術は上記事情に基づいて完成されたものであって、収納部に収納される様々な形状の物品を固定可能な乗物用収納構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本明細書に開示される技術は、乗物用内装材に設けられた収納部に収納物を収納する乗物用収納構造であって、前記収納部は、乗物室内側に向けて開口した開口部を有するとともに、前記開口部から乗物室外側に窪んで収納物を収納可能な収納空間を形成する収納部本体と、前記開口部を乗物室内側から閉塞する板状の蓋部と、を備え、前記蓋部のうち前記収納空間側の面に、前記収納部内に収納された収納物を前記収納部本体に押し付ける押さえ部材が着脱可能に取り付けられている。
【0007】
上記構成によれば、収納部内に収納された収納物を、車両の振動等による異音およびがたつきを押さえ部材により抑制しつつ、安定して固定することができる。しかも、押さえ部材は蓋部に対して着脱可能に取り付けられるから、収納物の大きさや形状により押さえ部材を取り換えたり、収納物の種類により押さえ部材を取り外したりすることができる。
【0008】
前記蓋部は行列状に並ぶ複数の取付孔を有し、前記押さえ部材は、前記取付孔に対して前記収納空間側から取り付け可能な突出部を有し、前記突出部が前記取付孔の孔縁部に係止することで、前記押さえ部材が前記蓋部に対して着脱可能に取り付けられてもよい。
【0009】
上記構成によれば、収納部内に収納された収納物の大きさや形状に応じて押さえ部材を取り付ける取付孔を選択することができるから、適切な位置で収納物を押さえることが可能となる。
【0010】
前記突出部は、その突出方向の先端側に位置する先端側部が、該先端側部より基端側に位置する基端側部の外周面から外側に張り出した形状のものとされ、前記取付孔は、前記先端側部を挿入可能な挿入孔部と、前記挿入孔部の孔縁部に連なって形成され、前記基端側部が挿通可能とされるとともに、前記先端側部をその孔縁部に係止可能な係止孔部と、を備えており、前記押さえ部材は、前記突出部の前記先端側部が前記係止孔部の孔縁部に係止することで、前記取付孔に取り付け可能とされていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、押さえ部材を蓋部に対して簡単に取り付けおよび取り外せる一実施形態が可能となる。
【0012】
前記蓋部は乗物室内側に膨出する膨出部を備え、前記取付孔は前記膨出部に設けられており、前記押さえ部材は、前記膨出部の縁部に架け渡される形で前記蓋部に対して取り付けられていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、押さえ部材は膨出部により取付孔から離隔した状態で収納空間内に配置されるから、蓋部に対して乗物室内面側から突出部を有する別の部材を取り付ける際に、押さえ部材が邪魔になって、突出部を取付孔に簡単に挿入できない事態を抑制することができる。
【0014】
前記押さえ部材は弾性変形可能なリング状をなし、その径方向が前記蓋部の板面と交差するように前記蓋部に対して取り付けられており、前記蓋部が前記開口部を閉塞した状態において、前記押さえ部材が径方向の内側に向けて変形することで、前記収納部内に収納された収納物を前記収納部本体に押し付け可能とされていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、簡易且つ軽量な押さえ部材の一実施形態が可能である。
【発明の効果】
【0016】
本明細書に開示する技術によれば、収納部に収納される様々な形状の物品を、車両の振動等による異音及びがたつきの発生を抑制しつつ安定して固定可能な乗物用収納構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る車両用収納構造を採用した車両の荷室を示す斜視図
図2】収納部の分解斜視図
図3】蓋部を閉じる途中の収納部の縦断面図
図4】蓋部を閉じた状態の収納部の縦断面図
図5図4の一部拡大縦断面図
図6】蓋部の正面図
図7】蓋部を閉じた状態の収納部の横断面図
図8】収納部(蓋部)に小物収納ボックスを取り付けた例を車両内側から視た図
【発明を実施するための形態】
【0018】
一実施形態の車両用収納構造(乗物用収納構造)1を図1から図8によって説明する。以下の説明において、図1における紙面奥側を車両前方側とし、手前側を車両後方側とする。また、以下の説明で、上下とは、各部材が荷室11内に配された状態における車両上下方向(図1の上下方向)、前後は車両前後方向、右は車両進行方向における右側(図1の右)、左は車両進行方向における左側(図1の左)を、それぞれ意味することとする。さらに、複数の同一部位については、一の部位に符号を付し、他の部位については符号を省略することがある。
【0019】
図1は、車両(乗物の一例)10の後部に設けられた荷室11を車両後方から視た斜視図である。図1に示すように、この荷室11は、車両後方ドア(図示せず)を開けた状態で車両後部開口12からアクセス可能とされている。荷室11は、床面を構成するデッキボード13と、デッキボード13の車両幅方向両側に配され、デッキボード13の両端部から立ち上がる形態で車両の前後方向かつ上下方向に延在する側壁面を構成する一対のデッキサイドトリム(乗物用内装材の一例)14と、を備えている。
【0020】
デッキサイドトリム14のうち前方かつ下方には、ホイールハウスに倣う形でホイールハウス部15が設けられている。また、デッキサイドトリム14のうちホイールハウス部15の後方には、左右それぞれに、収納部20が設けられている。以下、右側のデッキサイドトリム14に配された収納部20を基準として説明するが、左側の収納部20も同様の形態である。
【0021】
収納部20は、図3および図4に示すように、収納部本体21と蓋部31とを備えて構成されている。収納部本体21は、デッキサイドトリム14の主面において開口する開口部17から、車室外側に窪む収納空間Rを形成する部分である。
【0022】
本実施形態において、収納部本体21は、デッキサイドトリム14の主面を構成する主面部16とは別部材で形成されている。具体的には、収納部本体21は、開口部17の奥方に位置する奥壁22と、車両下方に位置する底壁23と、底壁23と対向する上壁24と、車両前方及び後方に位置する前壁25及び後壁26と、を備える箱型をなしている(図2参照)。なお収納部本体21は、主面部16と一体に形成してもよい。
【0023】
図3に示すように、収納部本体21の開口である本体開口部27は、主面部16に設けられた開口部17よりやや小さい寸法に設定されており、開口部17の車室外面側に、開口部17に臨む形で配されるように、収納部本体21が主面部16に対して図示しない固定部により固定されている。
【0024】
本体開口部27の開口縁部には、径方向の外側に向けて延びるフランジ部28が設けられている。また、フランジ部28の外縁には、車室内側に向けて立ち上がる肉厚の立壁29が設けられており、立壁29の車室内側の端面が、主面部16の車室外面に当接している。これにより、主面部16の開口部17と本体開口部27と間に、立壁29の内周面を溝底部とする断面略U字形状の溝部30が、開口部17を取り囲む形で形成されている。
【0025】
一方、上述した蓋部31は、全体として概ね平坦な板状の蓋部本体32と、蓋部本体の外周縁部から車室外側に向けて立ち上がる蓋部側立壁33とを備える。蓋部本体32は、主面部16の開口部17にぴったり嵌る大きさ、すなわち、主面部16の開口部17と同等あるいは僅かに小さい寸法に設定されている。また、蓋部側立壁33は、蓋部31が主面部16の開口部17を塞いだ状態において、収納部本体21のフランジ部28に当接する立ち上がり寸法とされている(図4参照)。
【0026】
蓋部側立壁33のうち、蓋部本体32の下縁部から立ち上がる下側立壁33Lには、車両前後方向の全体にわたって下方に向けて突出する係止リブ34が設けられている。この係止リブ34は、蓋部31が主面部16の開口部17を塞いだ状態において、上述した溝部30内に配され、開口部17の下縁部に車室外側から係止する(図4参照)。
【0027】
また、蓋部側立壁33のうち、蓋部本体32の上縁部から立ち上がる上側立壁33Uには、前後方向の両端部寄りに、上側係止部35が設けられている。上側係止部35は、上側立壁33Uの上面から突出する突出位置と、突出しない退避位置との間で進退可能な片状とされている。上側係止部35は、蓋部31が主面部16の開口部17を塞いだ状態において突出位置とすることで、上述した溝部30内に配され、開口部17の上縁部に車室外側から係止する(図4参照)。また、退避位置とすることで係止を解き、蓋部31の上端をフリーの状態とすることができる(図3参照)。
【0028】
なお、上側係止部35は、その下方に設けられた操作部36により、係止位置と退避位置との間で移動可能とされている。
【0029】
この蓋部31には、種々の機能部品を取り付けるための複数の取付孔40が板面を貫通して形成されている。これら複数の取付孔40は、横方向および縦方向に行列状に配されている。具体的には、図6に示すように、横3行縦4列とされている。各取付孔40は、円形状の挿入孔部41と、挿入孔部41の孔縁から外側に延び出した長孔状の複数(本実施例においては3つ)の係止孔部42と、からなる。なお、この蓋部31への取付構造については、後に詳しく説明するが、例えば、種々のものを引っ掛けることが可能なフックや小物を収納可能な収納ボックス等の機能部品において、取付孔40に係合する部分(突出部)を同一形状とすることで、それら種々の機能部品を、蓋部31に対して取り付けることができるようになっている。
【0030】
上述した取付孔40は、蓋部31に設けられた膨出部37に設けられている。詳細には、蓋部31のうち操作部36の下方には、車両における前後方向(図6の左右方向)に延びて蓋部31の板面から乗物室内側に丘状に膨出する膨出部37が上下方向に並んで3本設けられている。膨出部37は、蓋部31の板面と平行に延在する膨出面37Aを備えており、複数の取付孔40は、この膨出面37Aに設けられている(図5参照)。つまり、1本の膨出部37に、それぞれ、4つの取付孔40が設けられている。
【0031】
さて、本実施形態において蓋部31の車室外面には、押さえ部材50が着脱可能に取り付けられている。押さえ部材50は、図2に示すように、弾性変形可能な略D字形状のリング状をなす押さえ部材本体51と、当該押さえ部材本体51の外周面に設けられ、径方向の外側に向けて突出し、上述した取付孔40に対して係合可能な突出部52と、を備えている。
【0032】
押さえ部材本体51の軸方向の寸法W1は、上述した膨出部37の膨出縁部37Bの上下方向の幅寸法W2より大きい寸法に設定されている(図5参照)。なお、膨出部37の膨出縁部37Bとは、膨出部37が蓋部本体32から立ち上がる立ち上がり縁部であって、収納空間R側の縁部を指すこととする。
【0033】
突出部52は、押さえ部材本体51の周方向に沿って2つ設けられている。より詳細には、略D字形状の押さえ部材本体51のうち、平面視直線状とされた部分の外面に設けられている。2つの突出部52の間の寸法L1は、車両前後方向の両端部に並ぶ二つの取付孔40間の寸法と同寸法に設定されている(図7)。これら2つの突出部52が一組となることで、押さえ部材50が蓋部31に対して安定的に支持されるようになっている。
【0034】
突出部52は、図5に示すように、先端側に位置する先端側部53と、基端側に位置する基端側部54と、を備える。これら先端側部53および基端側部54は、それぞれ円柱状をなしている。先端側部53の直径D1は、基端側部54の直径D2よりも大きいものとされる。
【0035】
また、先端側部53の直径D1は、図6に示す挿入孔部41の直径B1よりもやや小さい値に設定されている(図6参照)。このため、に先端側部53を挿入孔部41挿通することが可能となっている。また、基端側部54の直径D2は、係止孔部42の幅B2とほぼ同じ又は幅B2よりもわずかに小さいものとされる。つまり、基端側部54は、係止孔部42内において、係止孔部42の長手方向に沿って変位可能となっている。
【0036】
2つの突出部52は、複数の取付孔40のうち車両の前端および後端に配されたいずれかの高さの2つの取付孔40に対して選択的に挿入される。つまり、2つの突出部52を同じ高さの2つの取付孔40のいずれかに挿抜することで、押さえ部材50を蓋部31に対して着脱することができ、図4に示すように、どの取付孔40を選択するかによって、押さえ部材50の蓋部31に対する取り付け高さを変更することができる。
【0037】
本実施形態の車両用収納構造1は上述した通りであって、次に、収納部20の利用方法の一例について説明する。この収納部20に例えば収納物としてペットボトルPを収納する際には、まず、開口部17を塞いでいる蓋部31の操作部36を回転させて係止状態を解除し、蓋部31を取り外して収納空間Rを車室内側(荷室11)に開放する。そして、2本のペットボトルPを収納部本体21の内側に立てた状態で並べる。本実施形態においてペットボトルPは、図3に示すように、収納部本体21の高さよりやや小さい高さ寸法を有しており、蓋部31において行列状に並ぶ3行の取付孔40のうち、中段の取付孔40に対応する部分で押さえると安定的に固定することができる。
【0038】
そこで、押さえ部材50の2つの突出部52を、蓋部31の裏面(収納空間R側に配される面)から、中段の両端に配された2つの挿入孔部41にそれぞれ挿入し、基端側部54を下方に向けて延びる係止孔部42にスライドさせる。これにより、2つの突出部52の先端側部53が係止孔部42の孔縁部に係止し、もって、押さえ部材50は、その径方向が蓋部31の板面と交差する形で蓋部31に対して固定される。
【0039】
次に、図3に示すように、蓋部31の下端に設けられた係止リブ34をデッキサイドトリム14の開口部17の内周に形成された溝部30内に斜めに嵌め入れ、蓋部31の下端部を回動中心として上端部を回動させて、開口部17を塞ぐ。この時、リング状の押さえ部材本体51はペットボトルPに押し付けられ、ペットボトルPの外面に沿う形で径方向の内側に向けて次第に弾性変形し、その弾発力により、ペットボトルPを収納部本体21の奥壁22に押さえつける(図7参照)。
【0040】
なお本実施形態において、上述したように、押さえ部材本体51の上下方向における寸法W1は、膨出部37の膨出縁部37Bの上下間の寸法より大きい寸法に設定されている(W1>W2、図5参照)。また、押さえ部材本体51の車両前後方向における寸法L3は、膨出部37の膨出縁部37Bの同寸法L2よりも大きい寸法に設定されている(L3>L2、図7参照)。従って、押さえ部材本体51は、膨出部37の膨出縁部37Bに架け渡された状態とされ、ひいては、取付孔40から離隔した位置に配置される。
【0041】
開口部17が蓋部31により完全に塞がれたら、操作部36を回動操作し、上側係止部35を溝部30内に突出させて、蓋部31を開口部17の縁部に係止する。これにより、収納物(ペットボトルP)の収納操作が完了する。
【0042】
本実施形態の収納部20は、さらに、蓋部31の車室内面側に、機能部材を取り付けることができる。例えば、図7に示すように、背面に突出部61を有するティッシュボックスケース60や、図8に示すように、小物収納ボックス70を取付孔40に取り付けることができる。この時、ティッシュボックスケース60や小物収納ボックス70を、押さえ部材50と同様に中段の取付孔40に取り付けたい場合であっても、上述したように、押さえ部材本体51は取付孔40から離隔した位置に配置されているから、突出部61を取り付ける際に、押さえ部材50が取付孔40を塞いで邪魔になることを回避することができる。
【0043】
次に、作用効果について説明する。本実施形態は、デッキサイドトリム14に設けられた収納部20に収納物を収納する車両用収納構造1であって、収納部20は、車室内側に向けて開口した開口部17を有するとともに、開口部17から車室外側に窪んで収納物を収納可能な収納空間Rを形成する収納部本体21と、開口部17を車室内側から閉塞する板状の蓋部31と、を備え、蓋部31のうち収納空間R側の面に、収納部20内に収納された収納物を収納部本体21に押し付ける押さえ部材50が着脱可能に取り付けられている。
【0044】
上記構成によれば、収納部20内に収納された収納物を、車両の振動等による異音及びがたつきを押さえ部材50により抑制しつつ固定することができる。しかも、押さえ部材50は蓋部31に対して着脱可能に取り付けられるから、収納物の大きさや形状により押さえ部材50を取り換えたり、収納物の種類により押さえ部材50を取り外したりすることができる。
【0045】
また、蓋部31は行列状に並ぶ複数の取付孔40を有し、押さえ部材50は、取付孔40に対して収納空間R側から取り付け可能な突出部52を有し、突出部52が取付孔40の孔縁部に係止することで、押さえ部材50が蓋部31に対して着脱可能に取り付けられる。
【0046】
上記構成によれば、収納部20内に収納された収納物の大きさや形状に応じて押さえ部材50を取り付ける取付孔40を選択することができるから、適切な位置で収納物を押さえることが可能となる。
【0047】
また、突出部52は、その突出方向の先端側に位置する先端側部53が、該先端側部53より基端側に位置する基端側部54の外周面から外側に張り出した形状のものとされ、取付孔40は、先端側部53を挿入可能な挿入孔部41と、挿入孔部41の孔縁部に連なって形成され、基端側部54が挿通可能とされるとともに、先端側部53をその孔縁部に係止可能な係止孔部42と、を備えており、押さえ部材50は、突出部52の先端側部53が係止孔部42の孔縁部に収納空間R側から係止することで、取付孔40に取り付け可能とされている。
【0048】
上記構成によれば、押さえ部材50を蓋部31に対して簡単に取り付けおよび取り外すことができる。
【0049】
また、蓋部31は車室内側に膨出する膨出部37を備え、取付孔40は膨出部37に設けられており、押さえ部材50は、膨出部37の縁部に架け渡される形で蓋部31に対して取り付けられている。
【0050】
上記構成によれば、押さえ部材50は膨出部37により取付孔40から離隔した状態で収納空間R内に配置されるから、蓋部31に対して車室内面側から突出部61を有する別の部材(ティッシュボックスケース60)を取り付ける際に、押さえ部材50が邪魔になって、突出部61を取付孔40に簡単に挿入できない事態を抑制することができる。
【0051】
また、押さえ部材50は弾性変形可能なリング状をなし、その径方向が蓋部31の板面と交差するように蓋部31に対して取り付けられており、蓋部31が開口部17を閉塞した状態において、押さえ部材50が径方向の内側に向けて変形することで、収納部20内に収納された収納物を収納部本体21に押し付け可能とされている。
【0052】
上記構成によれば、簡易且つ軽量な押さえ部材50とすることができる。
【0053】
このように、本実施形態によれば、ペットボトルPや、ボール等の小物が詰められた袋等、多様な物品を収納することが想定され得る収納部20において、好適に収納物を保持することができる。
【0054】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0055】
(1)上記実施形態では、デッキサイドトリム14に設けた収納部20の車両用収納構造1について示したが、収納構造は、例えばドアトリム等、乗物用内装材の他の部分に設けられた収納部についても適用させることができる。
【0056】
(2)上記実施形態では、押さえ部材50としてリング状の形態を示したが、押さえ部材は上記実施形態に限るものでなく、例えば、バネ状やスポンジ状、ゴム状の弾性体、またはこれらの組合せ構造等、様々な形態のものを用いることができる。またリング状とする場合も、上記実施形態のサイズに限るものでない。
【0057】
(3)上記実施形態では、1の押さえ部材50に2つの突出部52を設けて蓋部31に取り付ける構成を示したが、取付部分(突出部)の数は2つに限らず、1つや、3つ以上とすることもできる。また取付孔40の数や並び方も、上記実施形態に限るものでなく、適宜変更することができる。
【0058】
(4)押さえ部材50を蓋部31に対して取り付けるための構造は、上記実施形態に示した突出部52および取付孔40による取り付け構造に限るものでない。
【0059】
(5)取付孔が蓋部の膨出部でない部分に設けられる形態や、押さえ部材が取付孔40に密着する形態も、技術的範囲に含まれる。
【0060】
(6)上記実施形態では、押さえ部材50が車両前後方向および上下方向の双方において膨出縁部37Bに架け渡される構成を示したが、車両前後方向または上下方向のどちらかだけに架け渡される形態や、膨出部の縁部に架け渡されない形態としてもよい。
【0061】
(7)上記実施形態では、押さえ部材50が弾性体である形態を示したが、収納部に収納される収納物が決まっている場合には、押さえ部材は収納物に沿う形の、弾性体でない材料にて構成されていてもよい。
【0062】
(8)膨出部の膨出寸法や突出部の突出寸法を調節することにより、車室内側から取り付ける機能部品の突出部の先端面を押さえ部材に当接させる構成として、車室内側から取り付ける機能部品のがたつきを抑制する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0063】
1:車両用収納構造(乗物用収納構造)、14:デッキサイドトリム(乗物用内装材)、17:開口部、20:収納部、21:収納部本体、27:本体開口部、31:蓋部、32:蓋部本体、37:膨出部、40:取付孔、41:挿入孔部、42:係止孔部、50:押さえ部材、51:押さえ部材本体、52:突出部、53:先端側部、54:基端側部、P:ペットボトル(収納物)、R:収納空間
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8