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特開2024-61189半導体モジュール、半導体装置、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061189
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】半導体モジュール、半導体装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20240425BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H01L23/48 Q
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168966
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 まい
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大輝
(57)【要約】
【課題】半導体素子と、半導体素子の電極に接合材により接合されたリードとを備える半導体モジュールにおけるクラックの発生を抑制する。
【解決手段】半導体モジュール(2)は、半導体素子(510)が搭載された回路板(5)と、半導体素子の上面の電極(511)に接合材(S3)により接合されたリード(7)と、半導体素子及びリードを封止する封止材と、を備え、リードは、電極に接合される接合部(701)と、接合部の第1の側面(701a)に接続され、接合部における半導体素子の電極と向かい合う下面(701c)とは反対の方向に折り曲げられた配線部(703)とを含み、接合部の下面における配線部の折り曲げ部分の立ち上がり位置(712)が、接合部の第1の側面の位置と、接合部の第1の側面とは反対側の第2の側面(701b)の位置との間にある。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が搭載された回路板と、
前記半導体素子の上面の電極に接合材により接合されたリードと、
前記半導体素子及び前記リードを封止する封止材と、を備え、
前記リードは、前記電極に接合される接合部と、前記接合部の第1の側面に接続され、前記接合部における前記半導体素子の前記電極と向かい合う下面とは反対の方向に折り曲げられた配線部とを含み、
前記接合部の前記下面における前記配線部の折り曲げ部分の立ち上がり位置が、前記接合部の前記第1の側面の位置と、前記接合部の前記第1の側面とは反対側の第2の側面の位置との間にある
半導体モジュール。
【請求項2】
前記接合材と、前記半導体素子の前記上面に前記電極の外周に沿って延在する絶縁層と、前記封止材とが相互に接続する三重点が存在する、請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記接合部の前記下面における前記第1の側面から前記立ち上がり位置までの距離が、前記接合部の厚さと対応する距離よりも長い、請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記リードにおける前記接合部の前記第1の側面は、前記接合部に接続された前記配線部により隔てられた、前記配線部と接続されていない2つの非接続区間を有する、請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記リードにおける前記接合部は、前記第1の側面の前記非接続区間のそれぞれにおける前記配線部側の端と、前記配線部との間に、前記第1の側面から他の側面に向かう方向に進行する切れ込みが形成されている、請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記切れ込みは、前記第1の側面に対して直交する方向に進行している、請求項5に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記切れ込みは、前記第1の側面から遠ざかるにつれて切れ込み間の距離が変化する方向に進行している、請求項5に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記半導体素子の前記上面には前記電極の周囲に延在する絶縁層があり、
前記リードの前記接合部における前記第1の側面から前記絶縁層までの距離が、前記接合部における他の側面のうちの少なくとも1つの側面から前記絶縁層までの距離と略同一である、請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記リードは、前記配線部の前記接合部と接続している側とは反対側の端部に接続され、前記回路板の導体パターンと接合された第2の接合部を含む、請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の半導体モジュールと、
前記半導体モジュールの前記回路板における前記半導体素子が搭載された面とは反対側の面に配置された冷却器と、
を備える半導体装置。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の半導体モジュール、又は請求項10に記載の半導体装置を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュール、半導体装置、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置等の電力変換装置には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)等の半導体素子を搭載した回路板を有する半導体装置を備えるものがある。回路板は、絶縁基板の表面に導体パターンが設けられた配線板と、配線板上に配置される半導体素子等の回路部品とを含む。
【0003】
この種の半導体装置では、半導体素子の電極のうちの配線板側を向いた面とは反対側の面(上面)に設けられた電極と、配線板の導体パターンとを電気的に接続する導電部材として、リード等と呼ばれる導体板を用いることがある。
【0004】
リードを用いて半導体素子の電極と配線板の導体パターンとを電気的に接続する半導体装置では、半導体素子の電極とリードとの接合部に係る応力を軽減するための種々の対策が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、半導体素子の電極と接する接合部と、配線板の導体パターンに接する接合部と、接合部同士を接続する配線部とからなるリードフレーム(リード)の接合部の幅を配線部の幅よりも広くした半導体装置が記載されている。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、半導体素子の上面に設けられた上面電極と電気的に接続される金属配線板(リード)が、半導体素子の上面部と平行な接合部と、接合部の第1端部に接続し、半導体素子の上面と離れる方向に延伸する立ち上がり部とを有し、半導体素子の上面と平行な面内において、立ち上がり部が、半導体素子の上面において上部電極を複数の区画に分割するゲートランナーと重ならないようにした半導体装置が記載されている。
【0007】
また、例えば、特許文献3には、リードフレーム(リード)を接合する半導体チップ(半導体素子)の電極面に形成した金属膜の厚さを30μm以上に厚膜化した半導体装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-46164号公報
【特許文献2】特開2018-98283号公報
【特許文献3】特開2007-288095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した半導体装置において半導体素子の電極と配線板の導体パターンとを電気的に接続するリードは、例えば、半導体素子で発生した熱がリードを介して放熱しやすくするため、半導体素子の電極との接続面積を広くすることが好ましい。
【0010】
リードにおける半導体素子の電極と接する接合部は、電極向かい合う面の平面形状が矩形になっている。また、リードにおける2つの接合部同士を接続する配線部における半導体素子の電極と接する接合部側の端部は、接合部の1つの側面に接続しており、接合部の側面に接続された配線部の端部を折り曲げている。このようなリードの接合部を半導体素子の電極とはんだ等の接合材で接合した場合、接合部の側面から延出して折り曲げられた配線部の位置に生じる接合材のフィレットの角度が、接合材の側面に生じるフィレットの角度よりも大きくなる。
【0011】
しなしながら、接合材のフィレットの角度が大きくなると、半導体素子の上面に電極を囲むように設けられている絶縁層と、はんだ等の接合材と、半導体素子及びリードフレームを封止する封止材とが相互に接触する三重点にかかる応力が大きくなり、三重点からクラックが発生することがある。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、半導体素子と、半導体素子の電極に接合材により接合されたリードとを備える半導体モジュールにおけるクラックの発生を抑制することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様の半導体モジュールは、半導体素子が搭載された回路板と、前記半導体素子の上面の電極に接合材により接合されたリードと、前記半導体素子及び前記リードを封止する封止材と、を備え、前記リードは、前記電極に接合される接合部と、前記接合部の第1の側面に接続され、前記接合部における前記半導体素子の前記電極と向かい合う下面とは反対の方向に折り曲げられた配線部とを含み、前記接合部の前記下面における前記配線部の折り曲げ部分の立ち上がり位置が、前記接合部の前記第1の側面の位置と、前記接合部の前記第1の側面とは反対側の第2の側面の位置との間にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体素子と、半導体素子の電極に接合材により接合されたリードとを備える半導体モジュールにおけるクラックの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施の形態に係る半導体装置の構成例を示す上面図である。
図2図1の半導体装置のA-A’線断面図である。
図3図1の領域Rを拡大した部分上面図である。
図4図3に示した部分のB-B’線断面図である。
図5】一実施の形態に係るリードの第1の接合部側の構成例を説明する斜視図である。
図6】半導体素子の第2の主電極と第1の接合部との接続面を説明する上面図である。
図7図6に示した部分のC-C’線断面図及びD-D’線断面図である。
図8】一実施の形態に係る半導体モジュールで生じる応力を説明する断面図である。
図9】リードの第1の接合部側の従来例を説明する斜視図である。
図10】半導体素子の第2の主電極と第1の接合部との接続面を説明する上面図である。
図11図10に示した部分のE-E’線断面図である。
図12】従来例のリードを用いた半導体モジュールで生じる応力を説明する断面図である。
図13】リードの第1の接合部の下面における第1の側面から立ち上がり位置までの距離とフィレット角との関係を説明する図である。
図14】リードに入れる切れ込みの第1の例を説明する下面図である。
図15】リードに入れる切れ込みの第2の例を説明する下面図である。
図16】リードに入れる切れ込みの第3の例を説明する下面図である。
図17】本発明に係る半導体装置を適用した車両の一例を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、参照する各図におけるX、Y、Zの各軸は、例示する半導体装置等における平面や方向を定義する目的で示されており、X、Y、Zの各軸は互いに直交し、右手系を成している。以下の説明では、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向と呼ぶことがある。また、X軸及びY軸を含む面をXY面と呼び、Y軸及びZ軸を含む面をYZ面と呼び、Z軸及びX軸を含む面をZX面と呼ぶことがある。これらの方向(前後左右上下方向)や面は、説明の便宜上用いる文言であり、半導体装置の取付姿勢によっては、XYZ方向のそれぞれとの対応関係が変わることがある。例えば、半導体装置の放熱面側(冷却器側)を下面側とし、その反対側を上面側と呼ぶことにする。また、本明細書において、平面視は、半導体装置等の上面又は下面(XY面)をZ方向からみた場合を意味する。また、各図における縦横比や各部材同士の大小関係は、あくまで模式的に表されており、実際に製造される半導体装置等における関係とは必ずしも一致しない。説明の便宜上、各部材同士の大小関係を誇張して表現している場合も想定される。
【0017】
また、以下の説明で例示する半導体装置は、例えば、産業用又は車載用モータのインバータ等の電力変換装置に適用されるものである。このため、以下の説明では、既知の半導体装置と同一の、又は類似した構成、機能、及び動作等についての詳細な説明を省略する。
【0018】
図1は、一実施の形態に係る半導体装置の構成例を示す上面図である。図2は、図1の半導体装置のA-A’線断面図である。図3は、図1の領域Rを拡大した部分上面図である。図4は、図3に示した部分のB-B’線断面図である。図1及び図3では、ケース内に充填される封止材を省略している。また、図2及び図4では、ケース内に充填される封止材の断面を示すハッチングを省略している。
【0019】
図1及び図2に例示したように、本実施の形態に係る半導体装置1は、冷却器3の上面に半導体モジュール2を配置して構成される。なお、半導体モジュール2に対して、冷却器3は任意の構成である。
【0020】
冷却器3は、半導体モジュール2の熱を外部に放出するものであり、全体として直方体形状を有している。特に図示はしないが、冷却器3は、平板状の基部の下面側に複数のフィンを設け、これらのフィンをウォータジャケットに収容して構成される。なお、冷却器3は、これに限らず適宜変更が可能である。
【0021】
半導体モジュール2は、ベース4、回路板5、ケース6、リード7、接合材S1~S4、ボンディングワイヤ8、並びに封止材9を含む。
【0022】
ベース4は、回路板5を搭載する基板であり、回路板5を搭載したベース4は、回路板5が搭載された面を上向きにしてケース6の下面に取り付けられる。ケース6は、上面及び下面が開口した四角管状の絶縁部材601と、絶縁部材601と一体化された主端子602及び603と、複数の制御端子604とを含む。ベース4に搭載された回路板5は、ケース6の絶縁部材601の中空部に収容される。ベース4は、例えば、銅板等の金属板であり、回路板5で発生する熱を冷却器3に伝導させる。この種のベース4は、放熱板、放熱層と呼ばれてもよい。放熱板であるベース4は、例えば、サーマルグリスやサーマルコンパウンドなどの熱伝導材を介して冷却器3の上面に配置されてもよい。なお、半導体モジュール2は、ベース4が省略され、回路板5の下面(図2に例示した配線板500の導体パターン504)が冷却器3に接合されてもよい。
【0023】
回路板5は、配線板500と、配線板500の上面に搭載された半導体素子510とを含む。配線板500は、絶縁基板501と、絶縁基板501の上面に設けられた導体パターン502及び503と、絶縁基板501の下面に設けられた導体パターン504とを含む。配線板500は、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板やAMB(Active Metal Brazing)基板であり得る。
【0024】
絶縁基板501は、特定の基板に限定されない。絶縁基板501は、例えば、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)、酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)等のセラミックス材料によって形成されたセラミックス基板であってよい。絶縁基板501は、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁樹脂を成形した基板、ガラス繊維等の基材に絶縁樹脂を含侵させた基板、平板状の金属コアの表面を絶縁樹脂でコーティングした基板であってもよい。
【0025】
絶縁基板501の上面に設けられた導体パターン502及び503は、回路板5における配線部材として用いられる導電部材であり、絶縁基板501の下面に設けられた導体パターン504は、回路板5で発生した熱をベース4に伝導させる放熱部材として用いられる導電部材である。これらの導体パターン502~504は、例えば、銅やアルミニウム等の金属板によって形成される。絶縁基板501の下面に設けられた導体パターン504は、はんだ等の接合材S1を介してベース4の上面に接合される。絶縁基板501の上面に設けられた導体パターン502及び503は、導体層、導体板、又は配線パターンと呼ばれてもよい。絶縁基板501の下面に設けられた導体パターンは、放熱層、放熱板、又は放熱パターンと呼ばれてもよい。
【0026】
絶縁基板501の上面に設けられた導体パターン502及び503は、上述のように、回路板5における配線部材として用いられる導電部材である。
【0027】
図1図4に例示した半導体モジュール2では、第1の導体パターン502の上面に半導体素子510が搭載されている。半導体素子510は、下面に設けられた第1の主電極(図示せず)が接合材S2により第1の導体パターン502と接合されている。
【0028】
半導体素子510の上面には、第2の主電極511と、制御電極512と、これらの電極を電気的に絶縁する絶縁層513とが形成されている。絶縁層513は、半導体素子510の上面に形成されたパッシベーション膜等の表面保護膜であり得る。第2の主電極511は、リード7を介して、絶縁基板501の上面に設けられた第2の導体パターン503と電気的に接続される。リード7は、半導体素子510の第2の主電極511と接合材S3により接合される第1の接合部701と、第2の導体パターン503と接合材S4により接合される第2の接合部702と、第1の接合部701と第2の接合部702とを接続する配線部703とを含む。半導体素子510の上面の制御電極512は、ボンディングワイヤ8により、ケース6に設けられた制御端子604と電気的に接続される。
【0029】
図1及び図2に例示した半導体モジュール2では、第1の導体パターン502が、ケース6に設けられた第1の主端子602と電気的に接続され、第2の導体パターン503が、ケース6に設けられた第2の主端子603と電気的に接続されている。第1の導体パターン502と第1の主端子602とを電気的に接続し、第2の導体パターン503と第2の主端子603とを電気的に接続する方法は、既知の接続方法のいずれかであればよく、特定の方法に限定されない。また、ケース6における主端子602及び603の形状や位置、制御端子604の数や位置等は、図示したものに限らず、適宜変更可能である。更に、本実施の形態の半導体モジュール2のケース6には、不図示の第3の主端子等が設けられていてもよい。
【0030】
本実施の形態では、半導体素子510は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子とFWD(Free Wheeling Diode)素子の機能を一体化したRC(Reverse Conducting)-IGBT素子で構成される。
【0031】
なお、配線板500の上面に搭載される半導体素子は、特定のものに限定されない。配線板500の上面には、IGBT、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子としての半導体素子と、FWD等のダイオード素子としての半導体素子とが搭載されてもよい。また、半導体素子として逆バイアスに対して十分な耐圧を有するRB(Reverse Blocking)-IGBT等を用いてもよい。また、半導体素子の形状、配置数、配置箇所等は適宜変更が可能である。配線板500の上面側に設けられる配線部材としての導体パターンのレイアウトは、搭載される半導体素子の種類、形状、配置する数、配置箇所等に応じて変更される。
【0032】
半導体素子510がIGBT素子の場合、上面側の第2の主電極511はエミッタ電極と呼ばれてもよく、下面側の第1の主電極はコレクタ電極と呼ばれてもよい。半導体素子510がMOSFET素子の場合、上面側の第2の主電極511はソース電極と呼ばれてもよく、下面側の第1の主電極はドレイン電極と呼ばれてもよい。また、第1の半導体素子510の上面に設けられる制御電極512は、ゲート電極と、補助電極とを含んでもよい。例えば、補助電極は、第2の主電極511と電気的に接続され、ゲート電位に対する基準電位となる補助エミッタ電極あるいは補助ソース電極であってよい。また、補助電極は、半導体モジュール2に付加的に設けられる温度センス部と電気的に接続され、半導体素子510の温度を測定する温度センス電極であってよい。このような、半導体素子510の上面に形成された電極(主電極511、ゲート電極及び補助電極を含む制御電極512)は、総じて上面電極と呼ばれてもよい。
【0033】
上述したリード7は、銅板等の金属板を折り曲げて形成したものであり、リードフレーム、金属配線板と呼ばれてもよい。リード7における第1の接合部701は、半導体素子510の上面に配置された第2の主電極511と接合材S3により電気的に接続される。半導体素子510の上面には、第2の主電極511と制御電極512とを電気的に絶縁する絶縁層513が形成されている。第2の主電極511とリード7の第1の接合部701とを接合する接合材S3は、平面視で第2の主電極511を囲むように形成されている絶縁層513により、溶融時の平面(XY面)内での広がりが規制される。
【0034】
リード7の配線部703における第1の接合部701側の端部は、第1の接合部701における1つの側面701aに接続しており、第1の接合部701の下面(言い換えると第1の接合部701における半導体素子510の第2の主電極511と向かい合う面)とは反対の方向に折り曲げられている。同様に、リード7の配線部703における第2の接合部702側の端部は、第2の接合部702における1つの側面に接続しており、第2の接合部702の下面(言い換えると第2の接合部702における導体パターン503と向かい合う面)とは反対の方向に折り曲げられている。
【0035】
ケース6内に収容された半導体素子510、リード7、ボンディングワイヤ8等は、封止材9により封止される。封止材9は、単一の絶縁材料であってもよいし、組成(特性)が異なる複数種類の絶縁材料の組み合わせであってもよい。例えば、封止材9は、半導体素子510、リード7等の表面をコーティングするPA(ポリアミド)等のコーティング材と、ケース6内の中空部に充填されたエポキシ樹脂やシリコーンゲル等の充填材とを含んでもよい。
【0036】
本実施の形態に係る半導体装置1(半導体モジュール2)は、図4に例示した三重点TPにかかる応力の増大を抑制することを可能にする。本明細書における三重点TPは、図4においては接合材S3と、半導体素子510の絶縁層513と、封止材9とが相互に接続する点であるが、平面視においては半導体素子510の第2の主電極511と絶縁層513との境界である矩形の輪郭により示される。以下、三重点TPに係る応力の増大を抑制することを可能にするリード7の構成例について説明する。
【0037】
図5は、一実施の形態に係るリードの第1の接合部側の構成例を説明する斜視図である。図6は、半導体素子の第2の主電極と第1の接合部との接続面を説明する上面図である。図7は、図6に示した部分のC-C’線断面図及びD-D’線断面図である。図8は、一実施の形態に係る半導体モジュールで生じる応力を説明する断面図である。なお、図7及び図8では、物体の断面であることを示すハッチングを省略している。
【0038】
本実施の形態に係る半導体モジュール2に用いるリード7は、図5及び図6に例示したように、第1の接合部701の側面のうちの配線部703が接続している第1の側面701aにおいて配線部703を第1の接合部701の下面701cとは反対の方向に折り曲げるときの、下面701c内での立ち上がり位置712を、第1の側面701aとは反対側の側面701bの方向(Y方向正側)に変位させている。このため、平面視において半導体素子510の第2の主電極511と向かい合う第1の接合部701の下面701cの平面形状は、第1の側面701aと対応する辺のうちの配線部703と接続している接続区間711の、半導体素子510の絶縁層513の内周からの距離G2が、接続区間711ではない非接続区間の、半導体素子510の絶縁層513の内周からの距離G1よりも長くなる。図5及び図6では第1の接合部701における配線部703により隔たられた2つの側面に符号701aを付しているが、以下の説明では、便宜上、平面視において符号701aを付した2つの側面を示す辺同士を結んだ線(図示せず)で表される面も、第1の側面701aに含まれるものとする。本実施の形態に係るリード7の第1の接合部701における第1の側面701aは、配線部703により隔てられた、配線部703と接続されていない2つの部分側面(非接続区間)を有する。
【0039】
このようなリード7の第1の接合部701と半導体素子510の第2の主電極511とを接合材S3で接合すると、第1の接合部701の第1の側面701aのうちの非接続区間では、図7に例示したC-C’線断面図のように、フィレット角θ1のフィレットが生じる。フィレット角θ1は、接合材S3、半導体素子510の絶縁層513、及び図示しない封止材による三重点TPで生じる応力が所定の範囲内となるように、非接続区間における第1の側面701aから半導体素子510の絶縁層513の内周までの距離G1、接合材S3の量等により制御される。
【0040】
また、第1の側面701aのうちの接続区間711では、図7に例示したD-D’線断面図のように、フィレット角θ2のフィレットが生じる。接続区間711の折れ曲がりの下面701c側の立ち上がり位置712は、半導体素子510の絶縁層513の内周からの距離G2が、非接続区間における距離G1よりも長いため、配線部703における折り曲がり部分と、半導体素子510の第2の主電極511との間の空間の容積が増大する。そのため、図9図12を参照して後述する従来例と比べて、第1の側面701aの非接続区間から半導体素子510の絶縁層513の内周までの距離G1を短く保ちながら、接続区間711のフィレット角θ2を小さくすることができる。
【0041】
例えば、本実施の形態の半導体モジュール2で用いるリード7の第1の接合部701は、図6及び図8に示したように、第1の側面701aとは反対側を向いた第2の側面701bもまた、半導体素子510の絶縁層513の内周から距離G1になるように形成される。この場合、第2の側面701bにはフィレット角θ1のフィレットが生じる。このとき、第1の接合部701における第2の側面701b側(及び図7に示した第1の側面701aの非接続区間)のフィレット角θ1は、接合材S3と、半導体素子510の絶縁層513と、封止材9とが相互に接続する三重点TPにかかる応力が所定の範囲内となるように、絶縁層513の内周から距離G1及び接合材S3の量等により制御される。
【0042】
また、本実施の形態に係るリード7の第1の接合部701は、第1の側面701aの接続区間711における下面701c側の立ち上がり位置712から半導体素子510の絶縁層513の内周までの距離G2を距離G1よりも長くしている。このため、接続区間711におけるフィレット角θ2を、半導体素子510の絶縁層513の内周から距離G1の側面に生じるフィレット角θ1と略同一、又はフィレット角θ1よりも小さくすることができる。このため、本実施の形態に係る半導体モジュール2では、リード7の第1の接合部701における接続区間711に係る応力を低減することができる。また、第1の接合部701における第1の側面701aを、1つの接続区間711と、平面視において接続区間711を挟む(接続区間711により隔てられた)2つの非接続区間とに分割している。このため、半導体素子510の絶縁層513から接続区間711の立ち上がり位置712までの距離G2を非接続区間の距離G1よりも長くした場合でも、第1の接合部701における半導体素子510の第2の主電極511と接する(向かい合う)面の面積の減少を抑制することができる。
【0043】
上述した本実施の形態に係る半導体モジュール2の作用効果について、図9図12を参照して従来例と比較し、より詳細に説明する。
【0044】
図9は、リードの第1の接合部側の従来例を説明する斜視図である。図10は、半導体素子の第2の主電極と第1の接合部との接続面を説明する上面図である。図11は、図10に示した部分のE-E’線断面図である。図12は、従来例のリードを用いた半導体モジュールで生じる応力を説明する断面図である。なお、図11及び図12では、物体の断面であることを示すハッチングを省略している。
【0045】
図9に例示したリード17は、上述した実施の形態に係るリード7と同様、半導体素子510の第2の主電極511と接合材S3により接合される第1の接合部1701の側面のうちの第1の側面1701aに配線部1703が接続している。しかしながら、リード17の配線部1703における第1の接合部1701の下面1701c側の立ち上がり位置1712は、第1の側面1701aの下辺を延長した位置と略同一になっている。すなわち、リード17における、半導体素子510の第2の主電極511と向かい合う第1の接合部1701の下面1701cの平面視での形状は、図10に例示したように、矩形になる。この場合、第1の側面1701aと対応する辺のうちの配線部703と接続している接続区間1711では、図11に例示したように、配線部1703の全体が第1の接合部1071の第1の側面1701aよりも半導体素子510の絶縁層513側に突出している。このため、リード17の第1の接合部1701と半導体素子510の第2の主電極511とを接合材S3により接合した場合、第1の側面1701aにおける配線部1703との接続区間に生じるフィレットのフィレット角θ3は、図12に例示したように、第1の接合部1701における第2の側面1701b側(及び図示しない第1の側面1701aの非接続区間)のフィレット角θ1と比べて大きくなる。
【0046】
これに対し、本実施の形態のリード7では、図5図8を参照して上述したように、第1の接合部701の下面701cにおける、配線部703の折れ曲がりの立ち上がり位置712を、配線部703が接続する第1の側面701aよりも、第1の側面701aとは反対側の第2の側面701b側にずらしている。このため、配線部703における第1の接合部701の第1の側面701aから半導体素子510の絶縁層513側への突出量は、従来例のリード17の配線部1703の突出量と比べて小さくなる。これにより、図8に例示したように、本実施の形態のリード7の第1の接合部701と半導体素子510の第2の主電極511とを接合材S3により接合したときの配線部703の部分で生じるフィレット角θ2を、第1の接合部701の第2の側面701b(及び図7に示した第1の側面701aの非接続区間)のフィレット角θ1と略同一にすることができる。したがって、本実施の形態のリード7を用いることにより、接合材S3と封止材9との界面において封止材9を上方向に引っ張る力が大きくなることを抑制できる。すなわち、本実施の形態の半導体モジュール2では、リード7の第1の接合部701と半導体素子510の第2の主電極511とを接合する接合材S3と、半導体素子510の絶縁層513と、封止材9とが相互に接続する三重点TPにかかる応力の増大を抑制することができ、半導体モジュール2の寿命を長くする(向上させる)ことができる。
【0047】
また、本実施の形態に係るリード7は、図5及び図6を参照して上述したように、第1の接合部701の第1の側面701aのうちの配線部703と接続している接続区間711の立ち上がり位置712のみを第2の側面701b側にずらすことにより、下面701cの面積の減少を抑制している。このため、本実施の形態の半導体モジュール2は、リード7の第1の接合部701における半導体素子510の第2の主電極511との接続面の面積を確保して電気的特性や放熱性の低下を抑制しつつ、三重点TPにかかる応力の増大を抑制することができる。
【0048】
なお、本実施の形態に係るリード7を製造する際の、配線部703における第1の接合部701側の端部の折り曲げの方法は、特定の方法に限定されない。リード7の配線部703の折り曲げ加工には、既知のプレス加工を適用することができる。
【0049】
また、本実施の形態に係るリード7を製造する際の、第1の接合部701の下面における第1の側面701aから立ち上がり位置712までの距離は、特定の距離に限定されない。
【0050】
図13は、リードの第1の接合部の下面における第1の側面から立ち上がり位置までの距離とフィレット角との関係を説明する図である。図13には、上述した従来例のように立ち上がり位置712が第1の側面701aと同じ位置(すなわち距離0)である場合のフィレット角と、第1の側面701aから立ち上がり位置712までの距離を距離L1、距離L2(>L1)、及び距離L3(>L2)とした場合のフィレット角と、のそれぞれを太い破線で概略的に示している。距離L1は、リード7の第1の接合部701の厚さTと対応する距離よりも短い。距離L2は、リード7の第1の接合部701の厚さTと対応する距離と略同一である。距離L3は、リード7の第1の接合部701の厚さTと対応する距離よりも長い。
【0051】
リード7の第1の接合部701における第1の側面701aから半導体素子510の絶縁層513までの距離G1を一定に保ったまま、立ち上がり位置712を絶縁層513から遠ざかる方向にずらしていくと、配線部703における第1の接合部701の下面701cから連続している面と絶縁層513との距離が長くなる。このため、第1の側面701aから立ち上がり位置712までの距離が長くなるほど、接合材Sのフィレット角が小さくなる。
【0052】
本願の発明者らは、第1の接合部701の厚さTが0.5mmのリード7において、第1の側面701aから立ち上がり位置712までの距離とフィレット角との関係を調べた。その結果では、第1の側面701aから立ち上がり位置712までの距離を1.0mm以上にすることで、配線部703の位置で生じるフィレット角が、第1の側面701aで生じるフィレット角と略同一になった。
【0053】
このように、第1の側面701aから立ち上がり位置712までの距離を第1の接合部701の厚さTと対応する距離よりも長くすることでフィレット角を小さくすることができる。しかしながら、第1の側面701aから立ち上がり位置712までの距離を長くすることにより、第1の接合部701の下面701cの面積が減少し、半導体素子510の第2の主電極511との接続面積が小さくなる。したがって、第1の側面701aから立ち上がり位置712までの距離は、配線部703の位置で生じるフィレットのフィレット角θ2が三重点TPにかかる応力に与える影響と、第1の接合部701の半導体素子510の第2の主電極511との接続面積が電気的及び熱的な特性に与える影響とを考慮して設定することが好ましい。
【0054】
なお、本実施の形態に係るリード7における配線部703の折り曲げ部分の角度は、図2図4図13等に例示した略直角となる角度に限らず、任意の鈍角であってもよい。
【0055】
また、立ち上がり位置712が第1の側面701aよりも第2の側面701b側になるように第1の接合部701と配線部703との接続部を折り曲げる際には、例えば、第1の側面701aにおける接続区間711と非接続区間との境界に切れ込みを入れてもよい。
【0056】
図14は、リードに入れる切れ込みの第1の例を説明する下面図である。図15は、リードに入れる切れ込みの第2の例を説明する下面図である。図16は、リードに入れる切れ込みの第3の例を説明する下面図である。図14図16の各図は、配線部703の折り曲げ加工をする前のリード7における、第1の接合部701と、配線部703のうちの第1の接合部701側の部分とを示している。
【0057】
図14には、第1の側面701aのうちの配線部703により隔てられた2つの部分(非接続区間)のそれぞれにおける配線部703側の端と、配線部703との間に、第1の側面701aと直交する方向(Y方向)に進行する切れ込み701dを形成した例を示している。切れ込み701dの深さLは、図13を参照して上述した、第1の側面701aから立ち上がり位置712までの距離と対応する。切れ込み701dの幅Wは特定の幅に限定されないが、第1の接合部701の下面701cの面積を広くするためには、幅Wを小さくすることが好ましい。切れ込み701dを形成する方法は、特定の方法に限定されない。
【0058】
図15には、第1の側面701aのうちの配線部703により隔てられた2つの部分(非接続区間)のそれぞれにおける配線部703側の端と、配線部703との間に、第1の側面701aから遠ざかるにつれて切れ込み間の距離が長くなる方向に進行する切れ込み701eを形成した例を示している。このような切れ込み701eは、例えば、平面視における立ち上がり位置712の長さを、図14に例示した切れ込み701dを形成した場合と比べて長くすることができる。そのため、例えば、第1の接合部701から立ち上がり位置712を超えて配線部703に電流や熱が流れやすくなると考えられる。切れ込み701eの進行方向となる角度θ4は、特定の角度に限定されない。また、切れ込み701eの深さL及び幅Wの組み合わせも、特定の組み合わせに限定されない。
【0059】
図16には、第1の側面701aのうちの配線部703により隔てられた2つの部分(非接続区間)のそれぞれにおける配線部703側の端と、配線部703との間に、第1の側面701aから遠ざかるにつれて切れ込み間の距離が短くなる方向に進行する切れ込み701fを形成した例を示している。このような切れ込み701fは、例えば、平面視における第1の接合部701の下面701cの面積を広くするのに有利である。切れ込み701fの進行方向となる角度θ5は、特定の角度に限定されない。また、切れ込み701fの深さL及び幅Wの組み合わせも、特定の組み合わせに限定されない。
【0060】
また、上述した実施の形態では、リード7のうちの、半導体素子510の第2の主電極511と接合される第1の接合部701と、配線部703と、の接続部分について説明している。しかしながら、上述した第1の接合部701と配線部703との接続部分の構成は、例えば、リード7のうちの、配線板500の第2の導体パターン503と接合される第2の接合部702と、配線部703と、の接続部分にも適用されてもよい。
【0061】
本実施の形態の半導体モジュール2を含む半導体装置1は、上述したように、車載用モータのインバータ等の電力変換装置に適用され得る。図17を参照して、本発明の半導体装置1が適用された車両について説明する。
【0062】
図17は、本発明に係る半導体装置を適用した車両の一例を示す平面模式図である。図17に示す車両1001は、例えば、4つの車輪1002を備えた四輪車で構成される。車両1001は、例えば、モータ等によって車輪を駆動させる電気自動車、モータの他に内燃機関の動力を用いたハイブリッド車であってもよい。
【0063】
車両1001は、車輪1002に動力を付与する駆動部1003と、駆動部1003を制御する制御装置1004と、を備える。駆動部1003は、例えば、エンジン、モータ、エンジンとモータのハイブリッドの少なくとも1つで構成されてよい。
【0064】
制御装置1004は、上記した駆動部1003の制御(例えば電力制御)を実施する。制御装置1004は、上記した半導体装置1を備えている。半導体装置1は、駆動部1003に対する電力制御を実施するように構成されてよい。
【0065】
この種の車両1001に用いる半導体装置1の半導体モジュール2において、半導体素子の上面の電極(例えば、半導体素子510の第2の主電極511)に、上述したリード7の第1の接合部701が接合材S3により接合されていると、熱履歴による半導体モジュール2内での応力の増大や電気的及び熱的な特性の劣化を抑制することができる。このため、車両1001に用いる半導体装置1の点検や交換の頻度を低減することができる。
【0066】
なお、半導体装置1が適用される車両は、図17に例示したような四輪車に限定されない。半導体装置1が適用される車両は、例えば、二輪車や鉄道車両を含む。
【0067】
以上、本実施の形態及び変形例を説明したが、他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0068】
また、本実施の形態は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更に、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0069】
以下、上記の実施の形態における特徴点を整理する。
【0070】
上記実施の形態に係る半導体モジュールは、半導体素子が搭載された回路板と、前記半導体素子の上面の電極に接合材により接合されたリードと、前記半導体素子及び前記リードを封止する封止材と、を備え、前記リードは、前記電極に接合される接合部と、前記接合部の第1の側面に接続され、前記接合部における前記半導体素子の前記電極と向かい合う下面とは反対の方向に折り曲げられた配線部とを含み、前記接合部の前記下面における前記配線部の折り曲げ部分の立ち上がり位置が、前記接合部の前記第1の側面の位置と、前記接合部の前記第1の側面とは反対側の第2の側面の位置との間にある。
【0071】
上記実施の態様に係る半導体モジュールは、前記接合材と、前記半導体素子の前記上面に前記電極の外周に沿って延在する絶縁層と、前記封止材とが相互に接続する三重点が存在する。
【0072】
上記実施の態様に係る半導体モジュールは、前記接合部の前記下面における前記第1の側面から前記立ち上がり位置までの距離が、前記接合部の厚さと対応する距離よりも長い。
【0073】
上記実施の態様に係る半導体モジュールにおいて、前記リードにおける前記接合部の前記第1の側面は、前記接合部に接続された前記配線部により隔てられた、前記配線部と接続されていない2つの非接続区間を有する。
【0074】
上記実施の態様に係る半導体モジュールにおいて、前記リードにおける前記接合部は、前記第1の側面の前記非接続区間のそれぞれにおける前記配線部側の端と、前記配線部との間に、前記第1の側面から他の側面に向かう方向に進行する切れ込みが形成されている。
【0075】
上記実施の態様に係る半導体モジュールにおいて、前記切れ込みは、前記第1の側面に対して直交する方向に進行している。
【0076】
上記実施の態様に係る半導体モジュールにおいて、前記切れ込みは、前記第1の側面から遠ざかるにつれて切れ込み間の距離が変化する方向に進行している。
【0077】
上記実施の態様に係る半導体モジュールにおいて、前記半導体素子の前記上面には前記電極の周囲に延在する絶縁層があり、前記リードの前記接合部における前記第1の側面から前記絶縁層までの距離が、前記接合部における他の側面のうちの少なくとも1つの側面から前記絶縁層までの距離と略同一である。
【0078】
上記実施の形態に係る半導体モジュールにおいて、前記リードは、前記配線部の前記接合部と接続している側とは反対側の端部に接続され、前記回路板の導体パターンと接合された第2の接合部を含む。
【0079】
上記実施の態様に係る半導体装置は、上記の半導体モジュールと、前記半導体モジュールの前記回路板における前記半導体素子が搭載された面とは反対側の面に配置された冷却器と、を備える。
【0080】
上記実施の態様に係る車両は、上記の半導体モジュール、又は半導体装置を備える。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したように、本発明は、半導体素子の電極とリードとを接合する接合材と、半導体素子の電極の外周に沿って延在する絶縁層と、半導体素子及びリードを封止する封止材とが相互に接する三重点におけるクラックの発生を抑制することができるという効果を有し、特に、産業用又は電装用の半導体モジュール、半導体装置、及び車両に有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 半導体装置
2 半導体モジュール
3 冷却器
4 ベース
5 回路板
500 配線板
501 絶縁基板
502、503、504 導体パターン
510 半導体素子
511 主電極
512 制御電極
513 絶縁層
6 ケース
601 絶縁部材
602、603 主端子
604 制御端子
7、17 リード
701、702、1701 接合部
701a、701b、1701a、1701b 側面
701c、1701c 下面
701d、701e、701f 切れ込み
711 接続区間
712、1712 立ち上がり位置
703、1703 配線部
8 ボンディングワイヤ
S1、S2、S3、S4 接合材
1001 車両
1002 車輪
1003 駆動部
1004 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17