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特開2024-61196育苗培土の製造方法、育苗培土及び植物の栽培方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061196
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】育苗培土の製造方法、育苗培土及び植物の栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 24/20 20180101AFI20240425BHJP
   A01G 24/30 20180101ALI20240425BHJP
   A01G 24/44 20180101ALI20240425BHJP
【FI】
A01G24/20
A01G24/30
A01G24/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168979
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】508187665
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・テクノサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樫村 ちはる
(72)【発明者】
【氏名】田村 純一
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】登坂 実
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022BA02
2B022BA11
2B022BA23
(57)【要約】
【課題】植物育成用容器からの取り出し性に優れる固化培土を製造可能な育苗培土の製造方法、該製造方法で得られる育苗培土、及び該育苗培土を用いた植物の栽培方法を提供する。
【解決手段】培土基材(A)、アルギン酸の多価カチオン塩(B)、クエン酸の多価カチオン塩(C)及びアルギン酸の1価カチオン塩(D)を配合する育苗培土の製造方法、該製造方法で得られる育苗培土、及び該育苗培土を用いた植物の栽培方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培土基材(A)、アルギン酸の多価カチオン塩(B)、クエン酸の多価カチオン塩(C)及びアルギン酸の1価カチオン塩(D)を配合する育苗培土の製造方法。
【請求項2】
前記アルギン酸の多価カチオン塩(B)が、繊維の形態で配合されてなる、請求項1に記載の育苗培土の製造方法。
【請求項3】
前記繊維の平均繊維長が、1~50mmであり、平均繊維径が、0.01~3mmである、請求項2に記載の育苗培土の製造方法。
【請求項4】
下記工程A1及びA2を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の育苗培土の製造方法。
工程A1:前記培土基材(A)と前記アルギン酸の多価カチオン塩(B)と前記クエン酸の多価カチオン塩(C)と、を混合して、培土混合物を得る工程
工程A2:前記培土混合物に前記アルギン酸の1価カチオン塩(D)水溶液を添加して、前記アルギン酸の多価カチオン塩(B)及び前記クエン酸の多価カチオン塩(C)の少なくとも一部の多価カチオンを、前記アルギン酸の1価カチオン塩(D)が有する1価カチオンとイオン交換させてなる固化剤を形成し、該固化剤で前記培土基材(A)が固化された育苗培土を得る工程
【請求項5】
前記アルギン酸の多価カチオン塩(B)が、アルギン酸カルシウム塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の育苗培土の製造方法。
【請求項6】
前記クエン酸の多価カチオン塩(C)が、クエン酸カルシウム塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の育苗培土の製造方法。
【請求項7】
前記アルギン酸の1価カチオン塩(D)が、アルギン酸ナトリウム塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の育苗培土の製造方法。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の育苗培土の製造方法によって製造される育苗培土。
【請求項9】
請求項8に記載の育苗培土を用いる、植物の栽培方法。
【請求項10】
培土基材(A)、クエン酸の多価カチオン塩(C)及びアルギン酸の1価カチオン塩(D)を配合する育苗培土の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、育苗培土の製造方法、育苗培土及び植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業分野及び園芸分野においては、作業効率の向上を目的として、各種作業の機械化及び自動化が進展しつつある。その中の1つとして、播種、苗の植付け等を自動で行う機械移植がある。機械移植は、培土を充填した育苗ポット内で播種及び育苗して得られた土付苗を移植機によって取り出した後、植付けるという手順により行われる。
【0003】
機械移植を行う際には、上記の通り、移植作業中に土付苗を育苗ポットから取り出すが、その際、土付苗が崩壊することなく良好な固化状態が保たれていることが望ましい。そのため、培土を固化するための種々の方法が検討されている。培土を固化する際には、良好な固化性に加えて、その材料が農地に残留しない生分解性、乾燥又は保水状態でも土付苗が崩壊しない強度、育苗ポットからの離型性、水の浸透性、通気性、良好な作業性等の性能が求められる。
【0004】
特許文献1には、生分解性に優れる材料からなり、優れた作業性と優れた固化性とを両立する育苗培土の製造方法として、培土基材(A)と、アルギン酸の多価カチオン塩(B)と、アルギン酸の1価カチオン塩(C)と、を配合する育苗培土の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-92420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術によって形成される固化培土は固化性に優れるものの、植物育成用容器への貼り付き力が強くなり過ぎることがあり、植物育成用容器から固化培土を取り出す際の作業効率が低下する場合がある。
【0007】
本実施形態は、上記課題を解決するためになされたものであり、植物育成用容器からの取り出し性に優れる固化培土を製造可能な育苗培土の製造方法、該製造方法で得られる育苗培土、及び該育苗培土を用いた植物の栽培方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の本実施形態によって、上記課題を解決できることを見出した。
[1]培土基材(A)、アルギン酸の多価カチオン塩(B)、クエン酸の多価カチオン塩(C)及びアルギン酸の1価カチオン塩(D)を配合する育苗培土の製造方法。
[2]前記アルギン酸の多価カチオン塩(B)が、繊維の形態で配合されてなる、上記[1]に記載の育苗培土の製造方法。
[3]前記繊維の平均繊維長が、1~50mmであり、平均繊維径が、0.01~3mmである、上記[2]に記載の育苗培土の製造方法。
[4]下記工程A1及びA2を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の育苗培土の製造方法。
工程A1:前記培土基材(A)と前記アルギン酸の多価カチオン塩(B)と前記クエン酸の多価カチオン塩(C)と、を混合して、培土混合物を得る工程
工程A2:前記培土混合物に前記アルギン酸の1価カチオン塩(D)水溶液を添加して、前記アルギン酸の多価カチオン塩(B)及び前記クエン酸の多価カチオン塩(C)の少なくとも一部の多価カチオンを、前記アルギン酸の1価カチオン塩(D)が有する1価カチオンとイオン交換させてなる固化剤を形成し、該固化剤で前記培土基材(A)が固化された育苗培土を得る工程
[5]前記アルギン酸の多価カチオン塩(B)が、アルギン酸カルシウム塩である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の育苗培土の製造方法。
[6]前記クエン酸の多価カチオン塩(C)が、クエン酸カルシウム塩である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の育苗培土の製造方法。
[7]前記アルギン酸の1価カチオン塩(D)が、アルギン酸ナトリウム塩である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の育苗培土の製造方法。
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載の育苗培土の製造方法によって製造される育苗培土。
[9]上記[8]に記載の育苗培土を用いる、植物の栽培方法。
[10]培土基材(A)と、クエン酸の多価カチオン塩(C)と、アルギン酸の1価カチオン塩(D)と、を配合する育苗培土の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態によると、植物育成用容器からの取り出し性に優れる固化培土を製造可能な育苗培土の製造方法、該製造方法で得られる育苗培土、及び該育苗培土を用いた植物の栽培方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
例えば、数値範囲「X~Y」(X、Yは実数)という表記は、X以上、Y以下である数値範囲を意味する。そして、本明細書における「X以上」という記載は、X及びXを超える数値を意味する。また、本明細書における「Y以下」という記載は、Y及びY未満の数値を意味する。
本明細書中に記載されている数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の下限値又は上限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本明細書に記載されている作用機序は推測であって、本実施形態の効果を奏する機序を限定するものではない。
【0013】
[育苗培土の製造方法]
本実施形態の育苗培土の製造方法は、
培土基材(A)、アルギン酸の多価カチオン塩(B)、クエン酸の多価カチオン塩(C)及びアルギン酸の1価カチオン塩(D)を配合する育苗培土の製造方法である。
なお、以下の説明において、アルギン酸の多価カチオン塩(B)を「アルギン酸多価塩(B)」、クエン酸の多価カチオン塩(C)を「クエン酸多価塩(C)」、アルギン酸の1価カチオン塩(D)を「アルギン酸1価塩(D)」と称する場合がある。また、各成分は、各々、「(A)成分」、「(B)成分」等と略称する場合がある。
【0014】
本実施形態の製造方法は、アルギン酸多価塩(B)、クエン酸多価塩(C)及びアルギン酸1価塩(D)を併用するものである。この方法によると、培土中で、アルギン酸多価塩(B)、クエン酸多価塩(C)及びアルギン酸1価塩(D)が接触し、アルギン酸多価塩(B)及びクエン酸多価塩(C)の表面近傍に存在する多価カチオンの一部がアルギン酸1価塩(D)の1価カチオンとイオン交換される。これによって、アルギン酸多価塩(B)及びクエン酸多価塩(C)を起点として、アルギン酸1価塩(D)がゲル化してなる網目構造が培土中に広がり、培土を固化させることができる。アルギン酸多価塩(B)、クエン酸多価塩(C)及びアルギン酸1価塩(D)は生分解性に優れるため、本実施形態の製造方法は、環境適合性に優れる。
また、本実施形態の製造方法によって得られる固化培土は、植物育成用容器からの取り出し性に優れる。その理由は定かではないが、クエン酸多価塩(C)はアルギン酸多価塩(B)よりも多くの多価カチオンを含むため、クエン酸多価塩(C)の添加によって、アルギン酸塩から形成されるゲルの架橋点が増加し、固化する際における培土の収縮量が大きくなったことが一因と推測される。
【0015】
以下、初めに本実施形態の製造方法で使用する各成分について説明し、その後、本実施形態の製造方法の手順等について説明する。
【0016】
<培土基材(A)>
培土基材(A)は、育成する植物の種類に応じて、育苗用培土として公知のものを使用することができる。具体的には、赤玉土、鹿沼土、荒木田土、腐葉土、桐生砂等の各種園芸用土;川砂、海砂、浜砂、山砂等の砂類;パーライト、バーミキュライト、ロックウール、ゼオライト、鉱滓等の鉱物;ピートモス、ココピート、水苔、腐葉土、パーク堆肥、モミガラ、亜炭、薫炭、フスマ、炭粉等の有機質資材などが挙げられる。
培土基材(A)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて、無機質肥料、有機質肥料、化学堆肥等の肥料などを配合したものであってもよい。
【0017】
<アルギン酸の多価カチオン塩(B)>
アルギン酸多価塩(B)は、アルギン酸の多価カチオン塩であれば特に限定されず、アルギン酸マグネシウム塩、アルギン酸カルシウム塩、アルギン酸ストロンチウム塩、アルギン酸バリウム塩等のアルギン酸アルカリ土類金属塩;アルギン酸鉄塩、アルギン酸亜鉛塩、アルギン酸銅塩等のアルギン酸遷移金属塩;アルギン酸アルミニウム塩等の3価以上のカチオン塩などが挙げられる。これらの中でも、汎用性及び培土の固化性の観点から、アルギン酸の2価カチオン塩が好ましく、アルギン酸アルカリ土類金属塩がより好ましく、アルギン酸カルシウム塩がさらに好ましい。
アルギン酸多価塩(B)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
アルギン酸多価塩(B)のマンヌロン酸(M)とグルロン酸(G)の比率であるM/G比は、特に限定されないが、良好な硬さを有する固化状態を得る観点から、好ましくは0.1~5、より好ましくは0.4~3、さらに好ましくは0.5~1.5である。
【0019】
アルギン酸多価塩(B)における多価カチオンの含有量は、特に限定されないが、良好な硬さを有する固化状態を得る観点から、アルギン酸塩のモノマー単位(C)1モルに対して、好ましくは0.01~3モル、より好ましくは0.05~2モル、さらに好ましくは0.1~1.5モルである。
【0020】
アルギン酸多価塩(B)を配合する際の形態は特に限定されず、例えば、繊維、粉末、ペレット、顆粒、フレーク等の形態で配合されることが好ましく、繊維の形態で配合されることがより好ましい。
【0021】
アルギン酸多価塩(B)を粉末の形態で配合する場合、その粉末の平均粒子径は、適用する培土基材(A)及び植物の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、0.01~5mmであり、好ましくは0.1~4mm、より好ましくは0.5~2mmである。
なお、本実施形態において、粉末の平均粒子径は、当該粉末の投影像においてとりうる最大長さの値と、その最大長さに直交する方向の最大長さの値の平均値を、任意に選択した10個の粉末について求め、これを平均した値として求めることができる。
【0022】
アルギン酸多価塩(B)を繊維の形態で配合する場合、その繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、好ましくは1~50mm、より好ましくは2~40mm、さらに好ましくは3~30mmである。
また、アルギン酸多価塩(B)の平均繊維径は、特に限定されないが、好ましくは0.01~3mm、より好ましくは0.05~2.5mm、さらに好ましくは0.1~2mmである。
なお、繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、当該繊維の投影像における繊維径及び繊維長を、任意に選択した10個の繊維について求め、これを平均した値として求めることができる。また、本実施形態において「繊維」とは、上記平均繊維長と平均繊維径との比[平均繊維長/平均繊維径]が2以上のものを意味する。
上記平均繊維長と平均繊維径との比[平均繊維長/平均繊維径]は、特に限定されないが、良好な固化状態を得る観点から、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは7以上である。また、上記比[平均繊維長/平均繊維径]は、繊維の分散性の観点から、20以下であってもよく、15以下であってもよい。
また、繊維の断面形状としては、丸型、三角形型、T型、偏平型、多葉型、V字型、中空型等のいずれの形状であってもよい。
【0023】
なお、アルギン酸多価塩(B)を繊維の形態にする方法としては、例えば、アルギン酸ナトリウム塩等のアルギン酸の1価カチオン塩水溶液を、所望のノズル径を有する紡糸ノズル等を使用して、塩化カルシウム水溶液等の多価カチオン塩化物水溶液中に吐出紡糸した後、形成された繊維状のアルギン酸多価塩を回収及び乾燥して得ることができる。上記のアルギン酸の1価カチオン塩水溶液の濃度は、例えば、0.5~10質量%であり、多価カチオン塩化物水溶液の濃度は、例えば、1~30質量%である。
【0024】
アルギン酸多価塩(B)の製造に用いるアルギン酸1価カチオン塩の1質量%水溶液粘度は、特に限定されないが、汎用性、水への溶解性の観点から、好ましくは10~1,000mPa・s、より好ましくは20~600mPa・s、さらに好ましくは30~400mPa・sである。
【0025】
なお、アルギン酸多価塩(B)を、繊維、粉末、ペレット、顆粒、フレーク等の形態で配合する場合、これらは本実施形態の効果を阻害しない範囲において、アルギン酸多価塩(B)以外の成分を含んでいてもよい。
【0026】
アルギン酸多価塩(B)の配合量は、特に限定されないが、良好な固化状態を得る観点から、培土基材(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~50質量部、より好ましくは0.5~30質量部、さらに好ましくは1~10質量部である。
【0027】
<クエン酸の多価カチオン塩(C)>
クエン酸多価塩(C)は、クエン酸の多価カチオン塩であれば特に限定されず、例えば、クエン酸マグネシウム塩、クエン酸カルシウム塩、クエン酸ストロンチウム塩、クエン酸バリウム塩等のクエン酸アルカリ土類金属塩;クエン酸鉄塩、クエン酸亜鉛塩、クエン酸銅塩等のクエン酸遷移金属塩;クエン酸アルミニウム塩等の3価以上のカチオン塩などが挙げられる。これらの中でも、植物育成用容器からの取り出し性の観点から、クエン酸の2価カチオン塩が好ましく、クエン酸のアルカリ土類金属塩がより好ましく、クエン酸カルシウム塩がさらに好ましい。
クエン酸多価塩(C)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
クエン酸多価塩(C)を配合する際の形態は特に限定されず、例えば、繊維、粉末、ペレット、顆粒、フレーク等の形態で配合されることが好ましい。
【0029】
クエン酸多価塩(C)を粉末の形態で配合する場合、クエン酸多価塩の平均粒子径は、好ましくは1~500μm、より好ましくは20~300μm、さらに好ましくは50~150μmである。
クエン酸多価塩(C)の平均粒子径の算出方法は、任意の50個の粒子の長手方向の長さを測定し、これらを平均した値として求めることができ、具体的には実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0030】
クエン酸多価塩(C)の配合量は、植物育成用容器からの取り出し性の観点から、培土基材(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは1~3質量部である。
【0031】
アルギン酸多価塩(B)の配合量に対する、クエン酸多価塩(C)の配合量の比〔(C)/(B)〕は、特に限定されないが、植物育成用容器からの取り出し性の観点から、質量基準で、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~5、さらに好ましくは0.3~3である。
【0032】
<アルギン酸の1価カチオン塩(D)>
アルギン酸1価塩(D)としては、例えば、アルギン酸リチウム塩、アルギン酸ナトリウム塩、アルギン酸カリウム塩等のアルギン酸アルカリ金属塩;アルギン酸アンモニウム塩などが挙げられる。これらの中でも、汎用性及び培土の固化性の観点から、アルギン酸アルカリ金属塩が好ましく、アルギン酸ナトリウム塩がより好ましい。
【0033】
アルギン酸1価塩(D)のマンヌロン酸(M)とグルロン酸(G)の比率であるM/G比は、特に限定されないが、良好な硬さを有する固化状態を得る観点から、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.4~5、さらに好ましくは0.5~3である。
【0034】
アルギン酸1価塩(D)における1価カチオンの含有量は、特に限定されないが、良好な硬さを有する固化状態を得る観点から、アルギン酸塩のモノマー単位(C)1モルに対して、好ましくは0.5~3モル、より好ましくは0.6~2モル、さらに好ましくは0.8~1.5モルである。
【0035】
アルギン酸1価塩(D)を配合する際の形態は特に限定されず、例えば、繊維、粉末、ペレット、顆粒、フレーク、水溶液等の形態で配合されることが好ましく、水溶液の形態で配合されることがより好ましい。
【0036】
アルギン酸1価塩(D)を粉末の形態で配合する場合、その粉末の平均粒子径は、適用する培土基材(A)及び植物の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、0.01~3mmであり、好ましくは0.05~2.5mm、より好ましくは0.1~2mmである。平均粒子径の算出方法は、アルギン酸多価塩(B)の平均粒子径の算出方法と同じである。
【0037】
アルギン酸1価塩(D)を水溶液の形態で配合する場合、その水溶液中の濃度は、アルギン酸1価塩(D)、適用する培土基材(A)及び植物の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、0.01~10質量%であり、好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~4質量%である。
【0038】
なお、アルギン酸1価塩(D)を、繊維、粉末、ペレット、顆粒、フレーク、水溶液等の形態で配合する場合、これらは本実施形態の効果を阻害しない範囲において、アルギン酸1価塩(D)以外の成分を含んでいてもよい。
【0039】
アルギン酸1価塩(D)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、固化培土の強度及びアルギン酸1価塩(D)水溶液の浸透性の観点から、好ましくは10,000~1,000,000、より好ましくは15,000~800,000、さらに好ましくは20,000~600,000である。
なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;Gel Permeation Chromatography)によってポリスチレン換算にて測定された値を意味する。具体的には、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0040】
アルギン酸1価塩(D)の配合量は、特に限定されないが、良好な固化状態を得る観点から、培土基材(A)100質量部に対して、好ましくは0.05~20質量部、より好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.12~5質量部である。
【0041】
アルギン酸多価塩(B)由来の多価カチオン及びクエン酸多価塩(C)由来の多価カチオンの合計と、アルギン酸1価塩(D)由来の1価カチオンとの配合比{〔(B)+(C)〕/(D)}は、特に限定されないが、良好な固化状態を得る観点から、好ましくは0.01~200、より好ましくは0.05~20、さらに好ましくは0.1~10である。
【0042】
<配合方法>
各成分の配合方法は特に限定されないが、優れた作業性と優れた固化性を両立させる観点から、下記工程A1及びA2を含む配合方法Aが好ましい。
工程A1:培土基材(A)、アルギン酸多価塩(B)及びクエン酸多価塩(C)を混合して、培土混合物を得る工程
工程A2:前記培土混合物にアルギン酸1価塩(D)水溶液を添加して、前記アルギン酸多価塩(B)及び前記クエン酸多価塩(C)の少なくとも一部の多価カチオンを、前記アルギン酸1価塩(D)が有する1価カチオンとイオン交換させてなる固化剤を形成し、該固化剤で培土基材(A)が固化された育苗培土を得る工程
【0043】
(工程A1)
工程A1は、培土基材(A)、アルギン酸多価塩(B)及びクエン酸多価塩(C)を混合して、培土混合物を得る工程である。
これらを混合する方法は特に限定されず、例えば、公知のミキサー、捏和機等の機械による撹拌;手作業による撹拌などの方法が挙げられる。
工程A1によって、培土基材(A)、アルギン酸多価塩(B)及びクエン酸多価塩(C)を混合してなる培土混合物が得られる。
【0044】
(工程A2)
工程A2は、工程A1で得られた培土混合物に、アルギン酸1価塩(D)水溶液を添加して、前記アルギン酸多価塩(B)及び前記クエン酸多価塩(C)の少なくとも一部の多価カチオンを、前記アルギン酸1価塩(D)が有する1価カチオンとイオン交換させてなる固化剤を形成し、該固化剤で培土基材(A)が固化された育苗培土を得る工程である。
【0045】
培土混合物にアルギン酸1価塩(D)水溶液を添加する方法は特に限定されず、例えば、アルギン酸1価塩(D)水溶液を培土混合物に潅水する方法、アルギン酸1価塩(D)水溶液を培土混合物に潅注する方法、アルギン酸1価塩(D)水溶液中に培土混合物を浸漬する方法等が挙げられる。
培土混合物にアルギン酸1価塩(D)水溶液を添加することによって、培土混合物中のアルギン酸多価塩(B)及びクエン酸多価塩(C)と水溶液中のアルギン酸1価塩(D)とが反応して、固化した培土が得られる。
【0046】
配合方法Aによる場合、工程A1で得られる培土混合物は、工程A2を実施するまでは固化しない状態が保たれる。したがって、育苗培土の使用者は、所望の時期に工程A2を実施することで、育苗培土を固化することができる。
配合方法Aによる場合、工程A1は、培土基材(A)を植物育成用容器に充填する前に実施することが好ましく、工程A2は、上記培土混合物を植物育成用容器に充填した後に実施することが好ましい。
【0047】
本実施形態の製造方法で得られる育苗培土に播種を行う場合、播種の時期は特に限定されず、工程A1の前、工程A1と同時、工程A1と工程A2の間、工程A2と同時又は工程A2の後のいずれの時期であってもよい。
【0048】
培土基材(A)、アルギン酸多価塩(B)、クエン酸多価塩(C)及びアルギン酸1価塩(D)の配合方法は、下記工程B1を有する配合方法Bであってもよい。
工程B1:培土基材(A)、アルギン酸多価塩(B)、クエン酸多価塩(C)及び固形のアルギン酸1価塩(D)を混合して、育苗培土を得る工程
【0049】
工程B1における混合方法は、上記工程A1で挙げられた方法と同じ方法が挙げられる。また、固形のアルギン酸1価塩(D)の形状は、上記した通り、繊維、粉末、ペレット、顆粒、フレーク等が挙げられ、その好ましい態様も同様である。
【0050】
配合方法Bによる場合、工程B1で得られる育苗培土は、水を添加するまでは固化しない状態が保たれる。したがって、育苗培土の使用者は、所望の時期に育苗培土に水を添加することで、育苗培土を固化することができる。なお、工程B1で得られる育苗培土に対して水を添加して培土を固化する工程を「工程B2」と称する。
工程B2によって、アルギン酸多価塩(B)及びクエン酸多価塩(C)の少なくとも一部の多価カチオンが、アルギン酸1価塩(D)が有する1価カチオンとイオン交換されてなる固化剤が形成され、該固化剤で培土基材(A)が固化された育苗培土が得られる。
配合方法Bによる場合、工程B1は、培土基材(A)を植物育成用容器に充填する前に実施することが好ましく、工程B2は、上記培土混合物を植物育成用容器に充填した後に実施することが好ましい。
【0051】
本実施形態の製造方法で得られる育苗培土に播種を行う場合、播種の時期は特に限定されず、工程B1の前、工程B1と同時、工程B1と工程B2の間、工程B2と同時又は工程B2の後のいずれの時期であってもよい。
【0052】
<育苗培土の用途>
本実施形態の製造方法によって得られる育苗培土を充填する植物育成用容器の形状は特に限定されず、様々な形状を有するものに適用可能である。
植物育成用容器としては、底壁及び側壁を有し、底壁の形状が、略円形、略四角形、略六角形等の形状を有するものが挙げられ、育苗ポット、育苗セル等の公知の容器を使用することができる。上記育苗セルは複数個が連なった育苗トレイの形態を有していてもよい。
上記育苗ポット又は育苗セルのサイズは、例えば、開口部穴径が20~60mm、深さが40~65mm、容積は9~165cmである。
本実施形態の育苗培土の製造方法によって製造された育苗培土は、野菜、花卉、苗木、稲等の農園芸作物に対して好適である。
【0053】
以上、培土基材(A)、アルギン酸の多価カチオン塩(B)、クエン酸の多価カチオン塩(C)及びアルギン酸の1価カチオン塩(D)を配合する実施形態の育苗培土の製造方法について説明したが、本実施形態の製造方法は、培土基材(A)、クエン酸の多価カチオン塩(C)及びアルギン酸の1価カチオン塩(D)を配合する育苗培土の製造方法であってもよい。すなわち、アルギン酸の多価カチオン塩(B)を任意成分とする態様においても、上記した理由により、クエン酸多価塩(C)の使用によって、植物育成用容器からの取り出し性の向上効果が得られる。
アルギン酸の多価カチオン塩(B)を任意成分とする態様についての説明は、アルギン酸の多価カチオン塩(B)の配合を任意とする点以外、上記した培土基材(A)、アルギン酸の多価カチオン塩(B)、クエン酸の多価カチオン塩(C)及びアルギン酸の1価カチオン塩(D)を配合する実施形態についての説明と同じである。
【0054】
[育苗培土]
本実施形態の育苗培土は、本実施形態の育苗培土の製造方法によって製造される育苗培土である。したがって、本実施形態の育苗培土は、培土基材(A)と、アルギン酸多価塩(B)に由来する成分と、クエン酸多価塩(C)に由来する成分と、アルギン酸1価塩(D)に由来する成分と、を含有するものである。
アルギン酸多価塩(B)に由来する成分、クエン酸多価塩(C)に由来する成分、アルギン酸1価塩(D)に由来する成分とは、アルギン酸多価塩(B)及びクエン酸多価塩(C)の少なくとも一部の多価カチオンを、アルギン酸1価塩(D)が有する1価カチオンとイオン交換させて形成される成分である。
各成分の種類、配合量、配合方法等は、すべて上記した通りである。
【0055】
[植物の栽培方法]
本実施形態の植物の栽培方法は、本実施形態の育苗培土を用いる植物の栽培方法である。
本実施形態の育苗培土は、生分解性に優れる材料からなり、優れた作業性と優れた固化性とを有する。そのため、該育苗培土を用いる本実施形態の植物の栽培方法は、環境適合性、作業性に優れる。
本実施形態の植物の栽培方法によって栽培される植物は特に限定されず、野菜、花卉、苗木、稲等の農園芸作物が挙げられる。
【実施例0056】
以下、実施例を示し、本実施形態について具体的に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
なお、各成分の重量平均分子量(Mw)は以下の手順で測定した。
【0057】
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、プルラン標準試料[昭和電工株式会社製、STD P-1300]、TSKgel標準ポリエチレンオキシド[東ソー株式会社製、SE-2、SE-5、SE-15、SE-30、SE-70、SE-150]、ポリエチレングリコール[富士フィルム和光純薬株式会社製、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000 和光一級]を用いて3次式で近似した。GPCの測定条件を、以下に示す。
装置:HPLC Prominence[株式会社島津製作所製]
検出器:RID-10A[株式会社島津製作所製]
カラム:Gelpack GL-W550+GL-W540[昭和電工マテリアルズ・テクノサービス株式会社製]
溶離液:0.1M 硝酸ナトリウム水溶液
測定液:測定試料4mgを0.1M硝酸ナトリウム水溶液2mlで溶解し、メンブレンフィルターを用いて濾過したもの。
注入量:100μL
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
【0058】
(アルギン酸の1価カチオン塩水溶液の粘度測定)
アルギン酸の1価カチオン塩水溶液の粘度は、BROOKFIELD社製のコーンプレート型粘度計「DV2TCP」を用いて、25℃にて、スピンドルCPA-42Z、回転数50~200回転/分、測定時間5分の条件で測定した。なお、アルギン酸の1価カチオン塩水溶液の粘度は、同一ロットのアルギン酸の1価カチオン塩水溶液の粘度を上記条件で3回測定し、これを平均した値とした。
【0059】
製造例1
(アルギン酸カルシウム塩繊維の調製)
アルギン酸ナトリウム塩(キミカ株式会社製、商品名:アルギテックスLL)を水道水に投入後、撹拌して溶解させ、アルギン酸ナトリウム塩水溶液(濃度:約2質量%)を得た。該アルギン酸ナトリウム塩水溶液をシリンジ(吐出径:18ゲージ(1.04mm))を使用して、5質量%の塩化カルシウム水溶液中に連続的に吐出し、塩化カルシウム水溶液中に繊維状のアルギン酸カルシウム塩を析出させた。得られた繊維状のアルギン酸カルシウム塩を塩化カルシウム水溶液中から回収した後、水洗し、70℃で乾燥した後、所望の長さに切断することで、以下の物性を有するアルギン酸カルシウム塩繊維を得た。なお、平均繊維長及び平均繊維径の測定方法は前述の通りである。
平均繊維長:5mm
平均繊維径:0.5mm
M/G比:1.3
多価カチオン含有量:0.5モル/モノマー単位1モル
【0060】
(クエン酸カルシウム塩の平均粒子径の測定方法)
クエン酸カルシウム塩の平均粒子径は、クエン酸カルシウム塩を、CCDマイクロスコープ(株式会社モリテックス製、商品名「MS-804」)を用いて、200倍で観察し、任意の50個の粒子の長手方向の長さを測定し、これらを平均した値として求めた。
【0061】
製造例2
(アルギン酸の1価カチオン塩水溶液1の製造)
アルギン酸ナトリウム塩1(重量平均分子量(Mw)=670,000、M/G比=0.6、0.4質量%水溶液の粘度=6.8mPa・s)及びアルギン酸ナトリウム塩2(重量平均分子量(Mw)=29,000、M/G比=0.6、1.0質量%水溶液の粘度=1.76mPa・s)を、アルギン酸ナトリウム塩1の濃度が0.2質量%、アルギン酸ナトリウム塩2の濃度が0.4質量%になるように水道水に投入後、撹拌して溶解させることによって、アルギン酸の1価カチオン塩水溶液1を得た。
【0062】
製造例3
(アルギン酸の1価カチオン塩水溶液2の製造)
製造例2において、アルギン酸ナトリウム塩1の濃度を0.3質量%、アルギン酸ナトリウム塩2の濃度を0.5質量%に変更したこと以外は製造例2と同様にして、アルギン酸の1価カチオン塩水溶液2を得た。
【0063】
[育苗培土の製造]
実施例1~4
培土基材100質量部と、製造例1で調製したアルギン酸カルシウム塩繊維3.2質量部と、表1に記載の量のクエン酸カルシウム塩(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「くえん酸カルシウム四水和物」、粒子状、平均粒子径104.7μm)と、をミキサーの容器に投入後、撹拌混合して培土混合物を得た。なお、表1に記載のクエン酸カルシウム塩の添加量は、水和物を構成する水分子の質量を除いた量である。
上記で得られた培土混合物4~5gを、育苗トレイ(底部直径18mm、上部(開口)直径25mm、高さ45mm)に投入し、振動させつつ余分な培土混合物を除去した後、プレスを行って、育苗トレイ内に培土混合物を充填した。
次いで、培土混合物に対して、潅水及び乾燥を1サイクルとする処理を1日で5サイクル繰り返した。なお、潅水量は、育苗トレイ30穴に対して0.3Lとし、乾燥条件は、天日干し10分間及び80℃の送風乾燥機で50分間の条件とした。その翌日、培土混合物を充填した育苗トレイの上部開口部から、上記で調製したアルギン酸の1価カチオン塩水溶液1を、10ml添加した。その後、80℃で10分間、続いて40℃で8時間、送風乾燥機を用いて乾燥することによって、固化培土を得た。
【0064】
比較例1
実施例1において、クエン酸カルシウム塩を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして固化培土を得た。
【0065】
[植物育成用容器からの取り出し性評価]
フォースゲージ(株式会社イマダ製、商品名「デジタルフォースゲージ」)を、ピン端子(直径5.0mm)が上向きになるように固定し、該フォースゲージの上に、各例で作製した固化培土が入った育苗トレイを設置し、育苗トレイの底の穴とピン端子の位置を合わせた。固定されたフォースゲージのピン端子に対して、育苗トレイの底の穴から露出している固化培土を垂直に押し付け、ピン端子に押された固化培土が育苗トレイから分離されたときの荷重を植物育成用容器への貼り付き力とした。植物育成用容器への貼り付き力が小さいほど、植物育成用容器からの取り出し性に優れる。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1から、本実施形態の製造方法である実施例1~4で得られた固化培土は、植物育成用容器への貼り付き力が小さく、植物育成用容器からの取り出し性に優れていることが分かる。一方、クエン酸の多価カチオン塩(C)を使用しなかった比較例1で得られた固化培土は、植物育成用容器への貼り付き力が大きく、植物育成用容器からの取り出し性に劣っていた。
【0068】
次に、クエン酸の多価カチオン塩(C)が、固化培土の圧縮強度に及ぼす影響について調査した。
【0069】
実施例5~7
実施例1において、アルギン酸の1価カチオン塩水溶液1を、製造例2で調製したアルギン酸の1価カチオン塩水溶液2に変更し、クエン酸カルシウム塩の添加量を表2に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして固化培土を作製した。
【0070】
比較例2
実施例5において、クエン酸カルシウム塩を配合しなかったこと以外は実施例5と同様にして固化培土を得た。
【0071】
[圧縮強度の測定]
固化培土の圧縮強度は、圧縮試験機(株式会社島津製作所製、製品名「卓上形精密万能試験機AGS-X」)を使用して、5mm/分の速度で圧縮した際の最大圧縮強度を測定した。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
表2から、本実施形態の製造方法である実施例5~7で得られた固化培土は、クエン酸の多価カチオン塩(C)を使用しなかった比較例2で得られた固化培土よりも、圧縮強度に優れていた。