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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061204
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】織機のプログラム更新管理システム
(51)【国際特許分類】
   D03D 51/00 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
D03D51/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168992
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】松崎 新司
【テーマコード(参考)】
4L050
【Fターム(参考)】
4L050AB07
4L050AB09
4L050CC25
4L050EC04
4L050ED31
4L050ED35
4L050ED36
(57)【要約】
【課題】織機の稼働率の低下を抑制しつつ、織機の制御プログラムを更新することができる織機のプログラム更新管理システムを提供する。
【解決手段】織機のプログラム更新管理システム10は、織機30の運転状態及び機台停止中の場合は機台停止理由を判別する運転状態判別部37と、織機30の制御プログラムを更新プログラムにより更新する、更新プログラム実行部38と、更新プログラム実行部38が制御プログラムの更新を実施するときの機台停止理由を設定する、機台停止理由設定部40と、運転状態判別部37により判別された織機30の運転状態が機台停止理由設定部により設定された機台停止理由による機台停止であることを検出する機台停止理由検出部41と、制御プログラムの更新プログラムを格納する配信サーバ21と、配信サーバ21内の更新プログラムの有無を検出する更新プログラム検出部42とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機の運転状態及び機台停止中の場合は機台停止理由を判別する運転状態判別部と、
前記織機の制御プログラムを更新プログラムにより更新する、更新プログラム実行部と、
前記更新プログラム実行部が前記制御プログラムの更新を実施するときの機台停止理由を設定する、機台停止理由設定部と、
前記運転状態判別部により判別された前記織機の運転状態が前記機台停止理由設定部により設定された機台停止理由による機台停止であることを検出する機台停止理由検出部と、
前記更新プログラムを格納する更新プログラム格納部と、
前記更新プログラム格納部内の前記更新プログラムの有無を検出する更新プログラム検出部と
を備え、
前記機台停止理由検出部が、前記運転状態判別部により判別された前記織機の運転状態が前記機台停止理由による機台停止であることを検出し、且つ前記更新プログラム検出部が、前記更新プログラム格納部内に前記更新プログラムが有ることを検出した場合に、
前記更新プログラム実行部が、前記制御プログラムを前記更新プログラムにより更新する織機のプログラム更新管理システム。
【請求項2】
前記制御プログラムの更新における、オペレータの更新指示の要否を設定するオペレータ指示設定部と、
前記オペレータの更新指示が必要な場合に、前記オペレータの更新指示を確認するオペレータ指示確認部と、を更に備え、
前記オペレータ指示設定部が前記オペレータの更新指示の要否を設定した後、
前記オペレータの更新指示が必要と設定されている場合には、前記オペレータの更新指示を受けるまで前記制御プログラムの更新を保留する請求項1に記載の織機のプログラム更新管理システム。
【請求項3】
前記織機に接続されたホストコンピュータをさらに備え、
前記ホストコンピュータは、
前記機台停止理由設定部と、
前記機台停止理由検出部と、
前記更新プログラム検出部と
を有し、
前記織機は、
前記運転状態判別部と、
前記更新プログラム実行部と
を有し、
前記更新プログラム格納部は、前記ホストコンピュータ及び前記織機に接続された配信サーバである請求項1又は2に記載の織機のプログラム更新管理システム。
【請求項4】
前記織機は、
前記運転状態判別部と、
前記更新プログラム実行部と、
前記機台停止理由設定部と、
前記機台停止理由検出部と、
前記更新プログラム検出部と、
前記更新プログラムを記憶する記憶部と
を有し、
前記更新プログラム格納部は、前記記憶部であって、前記更新プログラムは、前記織機に接続される記憶媒体から前記記憶部に格納される請求項1又は2に記載の織機のプログラム更新管理システム。
【請求項5】
前記機台停止理由は、前記織機の切り卸し、機揚がり及び品種変更の機台停止理由の少なくとも1つを含む請求項1又は2に記載の織機のプログラム更新管理システム。
【請求項6】
前記織機の主制御部に接続された周辺装置を更に備え、
前記制御プログラムは、前記周辺装置の周辺装置制御プログラムを更に含み、
前記更新プログラムは、前記周辺装置制御プログラムの更新プログラムを更に含む、請求項1又は2に記載の織機のプログラム更新管理システム。
【請求項7】
工場管理システム端末を更に備え、
前記工場管理システム端末は、前記織機の前記制御プログラムの更新情報を表示するモニタリング画面を有する請求項1又は2に記載の織機のプログラム更新管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機のプログラム更新管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工場内に設置された複数の織機と、各織機の稼働状態を管理するホストコンピュータとを有する織機のプログラム更新管理システムが記載されている。この特許文献1に記載されているような織機のプログラム更新管理システムにおいて、織機の制御プログラムの更新プログラムをホストコンピュータに接続された更新サーバに記録し、制御プログラムの更新が必要な場合に、更新サーバから各織機に更新プログラムを供給することが一般に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-107586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の織機のプログラム更新管理システムでは、制御プログラムの更新のために織機を機台停止させる必要があるため、織機の稼働率が低下するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、織機の稼働率の低下を抑制しつつ、織機の制御プログラムを更新することができる織機のプログラム更新管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る織機のプログラム更新管理システムは、織機の運転状態及び機台停止中の場合は機台停止理由を判別する運転状態判別部と、織機の制御プログラムを更新プログラムにより更新する、更新プログラム実行部と、更新プログラム実行部が制御プログラムの更新を実施するときの機台停止理由を設定する、機台停止理由設定部と、運転状態判別部により判別された織機の運転状態が機台停止理由設定部により設定された機台停止理由による機台停止であることを検出する機台停止理由検出部と、更新プログラムを格納する更新プログラム格納部と、更新プログラム格納部内の更新プログラムの有無を検出する更新プログラム検出部とを備え、機台停止理由検出部が、運転状態判別部により判別された織機の運転状態が機台停止理由による機台停止であることを検出し、且つ更新プログラム検出部が、更新プログラム格納部内に更新プログラムが有ることを検出した場合に、更新プログラム実行部が、制御プログラムを更新プログラムにより更新する。
【0007】
また、制御プログラムの更新における、オペレータの更新指示の要否を設定するオペレータ指示設定部と、オペレータの更新指示が必要な場合に、オペレータの更新指示を確認するオペレータ指示確認部とを更に備え、オペレータ指示設定部がオペレータの更新指示の要否を設定した後、オペレータの更新指示が必要と設定されている場合には、オペレータの更新指示を受けるまで制御プログラムの更新を保留してもよい。
また、織機に接続されたホストコンピュータをさらに備え、ホストコンピュータは、機台停止理由設定部と、機台停止理由検出部と、更新プログラム検出部とを有し、織機は、運転状態判別部と、更新プログラム実行部とを有し、更新プログラム格納部は、ホストコンピュータ及び織機に接続された配信サーバであってもよい。
また、織機は、運転状態判別部と、更新プログラム実行部と、機台停止理由設定部と、機台停止理由検出部と、更新プログラム検出部と、更新プログラムを記憶する記憶部とを有し、更新プログラム格納部は、記憶部であって、更新プログラムは、織機に接続される記憶媒体から記憶部に格納されてもよい。
また、機台停止理由は、織機の切り卸し、機揚がり及び品種変更の機台停止理由の少なくとも1つを含んでもよい。
また、織機の主制御部に接続された周辺装置を更に備え、制御プログラムは、周辺装置の周辺装置制御プログラムを更に含み、更新プログラムは、周辺装置制御プログラムの更新プログラムを更に含んでもよい。
また、織機システム端末は工場管理システムを更に備え、工場管理システム端末は、織機の制御プログラムの更新情報を表示するモニタリング画面を有してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、織機のプログラム更新管理システムは、織機の運転状態及び機台停止中の場合は機台停止理由を判別する運転状態判別部と、織機の制御プログラムを更新プログラムにより更新する、更新プログラム実行部と、更新プログラム実行部が、制御プログラムの更新を実施するときの機台停止理由を設定する、機台停止理由設定部と、運転状態判別部により判別された織機の運転状態が機台停止理由設定部により設定された機台停止理由による機台停止であることを検出する機台停止理由検出部と、更新プログラムを格納する更新プログラム格納部と、更新プログラム格納部内の更新プログラムの有無を検出する更新プログラム検出部とを備え、機台停止理由検出部が、運転状態判別部により判別された織機の運転状態が機台停止理由による機台停止であることを検出し、且つ更新プログラム検出部が、更新プログラム格納部内に更新プログラムが有ることを検出した場合に、更新プログラム実行部が、主制御部の制御プログラムを更新プログラムにより更新するため、織機の稼働率の低下を抑制しつつ、織機の制御プログラムを更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1の織機システムの概略図である。
図2】実施の形態1の織機のプログラム更新管理システムの概略図である。
図3】実施の形態1の織機のプログラム更新管理システムにおける、制御プログラムの更新工程のフローチャートである。
図4】実施の形態3の織機のプログラム更新管理システムの概略図である。
図5】実施の形態3の織機のプログラム更新管理システムにおける、制御プログラムの更新工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1の織機システムについて図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施の形態1の織機システムの概略図である。工場内に設置されている織機システム1は、ホストコンピュータ20と、配信サーバ21と、織機30とが互いにネットワーク11により通信可能に接続されて構成されている。ネットワーク11は、例えば工場内に配設されたLAN(Local Area Network)を用いることができ、有線及び無線によるものを適当に組み合わせて用いることができる。
【0011】
ホストコンピュータ20は、複数の織機30の稼働状態を管理するものである。各織機30は、織機30の運転制御を行う主制御コントローラ33を有している。主制御コントローラ33には制御プログラムがインストールされており、制御プログラムに従って製織運転の制御を行う。また、織機30の運転状態及び設定状態を表示し、オペレータが織機30を操作するためのタッチパネルであるファンクションパネル32が設けられている。なお、織機30としてはエアジェット織機又はウォータジェット織機等の任意の自動織機を用いることができる。
【0012】
織機30の制御プログラムは、工程の改善、追加機能の導入及び織機30の改造に伴う機台制御の変更等の理由により、適宜更新される場合がある。織機30の制御プログラムを更新するためのプログラムを、更新プログラムという。制御プログラムの更新を実施するときには、織機の製織運転を停止して機台停止状態とする必要がある。また、制御プログラムの更新中には、オペレータが織機30及びファンクションパネル32を操作することは不可能となる。
【0013】
配信サーバ21には、更新プログラムが記録されており、各織機30にネットワーク11を介して更新プログラムを配信する。更新プログラムには、制御プログラムの一部分を更新するパッチ形式のプログラムが用いられてもよいし、制御プログラムの全体を入れ替える入れ替え形式のプログラムが用いられてもよい。なお、配信サーバ21は更新プログラム格納部を構成している。
【0014】
図1の織機システム1においては、織機30を2台ずつまとめてグループA、グループB及びグループCとして管理している。なお、この織機システム1においては織機30を合計6台図示しているが、この織機30の台数は例示であって、少なくとも1台の織機30が設けられていればよい。また、織機30のグループ管理についてはこれに限定されるものではなく、工場管理の必要に応じて、任意の織機30の台数毎に任意の数のグループにまとめて管理されていてもよいし、グループ管理がされていなくともよい。
【0015】
この織機30のグループA、グループB及びグループCのうち、稼働停止しているグループの各織機30に対して配信サーバ21から更新プログラムを供給し、稼働停止しているグループの織機30に対して一斉に後に詳しく説明する制御プログラムの更新工程を実施することができる。これにより、織機30の稼働停止時間を利用して効率的に制御プログラムの更新工程を実施することができる。
【0016】
図2は、本実施の形態1に係る、織機のプログラム更新管理システムの概略図である。プログラム更新管理システム10は、ホストコンピュータ20と、配信サーバ21と、織機30とを有している。織機30は、主制御コントローラ33と、通信部35と、主記憶部36と、センサ70と、ファンクションパネル32とを有している。通信部35は、ネットワーク11を介してホストコンピュータ20及び配信サーバ21との通信を行う。また、主記憶部36は、織機30の主制御コントローラ33の制御プログラムの更新プログラム及び各種設定情報等を記憶する。主記憶部36としては、不揮発性メモリや磁気ディスク等の任意の記憶装置を用いることができる。なお、主記憶部36は記憶部を構成している。
【0017】
センサ70は、主制御コントローラ33に接続されている。センサ70は、織機30のメインモータ、送り出しモータ、巻き取りモータ及び緯入れ用電磁バルブ等の各種構成の動作状態を検出し、検出結果を信号として主制御コントローラ33に送信する。
【0018】
主制御コントローラ33は、運転状態判別部37と、更新プログラム実行部38とを有している。運転状態判別部37は、センサ70から送信された、織機30の各モータや緯入れ用電磁バルブ等の構成要素の動作状態の検出結果の信号や、後述するファンクションパネル32の作業開始ボタン32aが押下されたときの信号を受信し、それらの信号に基づいて織機30が製織運転中であるか機台停止しているかを判定し、織機30が機台停止している場合には機台停止理由を判定する。そして、織機30が製織運転中か機台停止しているかの判定結果、及び織機30が機台停止している場合の機台停止理由の判定結果を、通信部35を介してホストコンピュータ20に送信する。なお、この織機30において、織機30の運転状態とは、織機30が機台停止している状態を含む。また、主制御コントローラ33は主制御部を構成している。
【0019】
更新プログラム実行部38は、主記憶部36に記憶された主制御コントローラ33の更新プログラムを実行し、主制御コントローラ33の制御プログラムを更新する。
【0020】
ファンクションパネル32は、作業開始ボタン32aを有している。作業開始ボタン32aは、切り卸し、機揚がり及び品種変更等の作業を開始するときに、オペレータが作業に対応する作業開始ボタン32aを押下するものである。作業開始ボタン32aが押下されることにより、作業に対応する作業名を示す信号が主制御コントローラ33に送信される。
【0021】
また、織機30は、送出制御コントローラ51と、巻取制御コントローラ53と、緯入れ制御コントローラ55とを有している。送出制御コントローラ51は、経糸ロールの送り出しを行う送り出しモータを制御するコントローラである。巻取制御コントローラ53は、クロスロールの巻き取りを行う巻き取りモータを制御するコントローラである。緯入れ制御コントローラ55は、緯入れ用電磁バルブの動作を制御するコントローラである。通信部35、ファンクションパネル32、主記憶部36、送出制御コントローラ51、巻取制御コントローラ53及び緯入れ制御コントローラ55は、主制御コントローラ33に接続されている。
【0022】
また、送出制御コントローラ51には、送出制御コントローラ51の更新プログラムを記憶する送出制御記憶部52が接続されており、巻取制御コントローラ53には、巻取制御コントローラ53の更新プログラムを記憶する巻取制御記憶部54が接続されており、緯入れ制御コントローラ55には、緯入れ制御コントローラ55の更新プログラムが接続される緯入れ制御記憶部56が接続されている。なお、ファンクションパネル32、送出制御コントローラ51、巻取制御コントローラ53及び緯入れ制御コントローラ55は周辺装置を構成している。
【0023】
主制御コントローラ33は、織機30の図示しないメインモータの駆動制御及び下位制御コントローラである送出制御コントローラ51、巻取制御コントローラ53及び緯入れ制御コントローラ55の統括制御を実行する。
【0024】
ホストコンピュータ20は、各織機30の制御プログラムの機台停止理由を設定する機台停止理由設定部40と、機台停止理由設定部40により設定された機台停止理由を検出する機台停止理由検出部41と、更新プログラムの有無を検出する更新プログラム検出部42とを有している。
【0025】
機台停止理由設定部40は、織機30の特定の機台停止理由を機台停止理由として設定する。すなわち、機台停止理由設定部40は、オペレータがファンクションパネル32に入力した、切り卸し、機揚がり及び品種変更の1つ又は複数の機台停止理由を、制御プログラムの機台停止理由として設定する。なお、機台停止理由の設定は、任意の時期に実施することができる。例えば織機30が設置された直後の初期設定のときに実施してもよいし、織機30の当日最初の運転前に実施してもよいし、織機30の運転中の任意のタイミングで実施してもよい。
【0026】
機台停止理由検出部41は、織機30の運転状態を監視し、織機30の機台停止理由が機台停止理由設定部40により予め設定された機台停止理由であるか否かを検出する。すなわち、機台停止理由設定部40により予め設定された機台停止理由が切り卸しである場合には、機台停止理由検出部41は織機30の機台停止理由が切り卸しによる機台停止であるか否かを検出する。また、機台停止理由設定部40により予め設定された機台停止理由が機揚がりである場合には、機台停止理由検出部41は織機30の運転状態が機揚がりによる機台停止状態であるか否かを検出する。さらに、機台停止理由設定部40により予め設定された機台停止理由が品種変更である場合には、機台停止理由検出部41は織機30の運転状態が品種変更による機台停止状態であるか否かを検出する。
【0027】
更新プログラム検出部42は、配信サーバ21に更新プログラムが有るか無いかを検出する。すなわち、更新プログラム検出部42は、配信サーバ21に更新プログラムが存在するか否かを問い合わせる。更新プログラムが存在することを更新プログラム検出部42が検出した場合には、更新プログラム検出部42は配信サーバ21に対して更新プログラムの配信を要求する。機台停止理由設定部40と更新プログラム検出部42とは、機台停止理由検出部41に接続されている。
【0028】
さらに、ホストコンピュータ20は、オペレータ指示設定部43とオペレータ指示確認部44とを有している。オペレータ指示設定部43は、制御プログラムの更新前に、オペレータの更新指示が必要か又は不要であるかを、オペレータのファンクションパネル32へ入力した設定情報に基づいて設定する。このオペレータの更新指示の要否の設定は、任意の時期に実施することができる。例えば織機30が設置された直後の初期設定のときに実施してもよいし、織機30の当日最初の運転前に実施してもよいし、織機30の運転中の任意のタイミングで実施してもよい。
【0029】
オペレータ指示確認部44は、オペレータ指示設定部43によりオペレータの更新指示が必要と設定された場合に、ファンクションパネル32に入力されるオペレータの更新指示を確認する。すなわち、制御プログラムの更新にオペレータの更新指示が必要であると設定されているとオペレータ指示確認部44が判定した場合には、オペレータ指示確認部44はファンクションパネル32にオペレータの更新指示を要求するメッセージを表示する。このとき、主制御コントローラ33は、ファンクションパネル32にオペレータの更新指示が入力されるまで織機30の制御プログラムの更新を保留する。また、ファンクションパネル32にオペレータの更新指示が入力された場合には、主制御コントローラ33がオペレータの指示を確認し、主制御コントローラ33が制御プログラムの更新を続行する。オペレータ指示設定部43は、オペレータ指示確認部44に接続されている。
【0030】
次に、本実施の形態1に係る織機システム1の運転動作を説明する。最初に、織機システム1の通常の運転動作について説明する。図1に示す織機システム1において、各織機30の主制御コントローラ33は、インストールされた制御プログラムに基づいて各織機30のメインモータを制御し、送出制御コントローラ51、巻取制御コントローラ53及び緯入れ制御コントローラ55を統括制御する。ホストコンピュータ20は、ネットワーク11を介して各織機30の運転状態を監視している。
【0031】
織機30は製織運転中に、巻き上げ完了したクロスロールの切り卸し、経糸ロールを使い切ったときに経糸ロールを交換する機揚がり、製織する織布製品の品種を変更する品種変更等が発生したときに、製織運転が停止する。すなわち、織機30は織機特有の上記の理由による機台停止状態が発生したときに、約10分又はそれ以上の時間、製織運転が停止する機台停止状態となる場合がある。また、織機30のメンテナンスを行うためにオペレータがファンクションパネル32を操作することで機台停止する場合や、メインモータ、送り出しモータ、巻き取りモータ及び緯入れ用電磁バルブのエラーによって織機の製織運転が停止して、機台停止状態となる場合がある。
【0032】
次に、織機30の制御プログラムの更新工程について説明する。本実施の形態1における制御プログラムの更新工程は、予め設定された機台停止理由に基づいて、自動で行われるように設定される。
【0033】
図3は、本実施の形態1の織機のプログラム更新管理システム10における、制御プログラムの更新工程のフローチャートである。更新工程のステップS1においては、オペレータは上記の切り卸し、機揚がり及び品種変更の機台停止状態から、制御プログラムの更新を実施するときの機台停止理由として設定する1つ又は複数の機台停止状態を選択して、ファンクションパネル32に入力する。本実施の形態1においては、切り卸しが機台停止理由として設定される。ファンクションパネル32に入力された機台停止理由は、通信部35を介してホストコンピュータ20に送信され、機台停止理由設定部40(図2参照)に入力されて設定される。
【0034】
次に、ステップS2においては、オペレータは、制御プログラムの更新に際して、オペレータの更新指示を必要とするか否かの設定をファンクションパネル32に入力する。ファンクションパネル32に入力された、オペレータの更新指示を必要とするか否かの設定情報は、通信部35を介してホストコンピュータ20に送信され、オペレータ指示設定部43に入力されて設定される。
【0035】
次に、ステップS3においては、ホストコンピュータ20の機台停止理由検出部41が織機30の運転状態を監視し、織機30の運転状態が、機台停止理由設定部40により設定された機台停止理由による機台停止状態であるか否かを検出する。ステップS1において設定された機台停止理由が切り卸しであるため、機台停止理由検出部41は織機30の運転状態が切り卸しによる機台停止状態であるか否かを検出する。
【0036】
織機30の状態は、センサ70から主制御コントローラ33に送信された、メインモータ、送り出しモータ、巻き取りモータ及び緯入れ用電磁バルブ等の各構成の動作状態の検出結果の信号と、オペレータがファンクションパネル32の作業開始ボタン32aを押下したときに主制御コントローラ33に送信された作業名を示す信号とに基づいて、運転状態判別部37が判別する。例えば、センサ70が織機30は機台停止状態であることを検出し、且つオペレータが切り卸しの作業開始ボタン32aを押下している場合には、主制御コントローラ33に、織機30が機台停止状態であるという信号と、切り卸しの作業開始ボタン32aが押下されたという信号が入力され、運転状態判別部37が織機30の運転状態が切り卸しによる機台停止状態であると判別する。次に、運転状態判別部37が通信部35を介して、ホストコンピュータ20に織機30が切り卸しによる機台停止状態であるという判別結果を送信する。
【0037】
運転状態判別部37から送信された運転状態の判別結果に基づいて、織機30の機台停止理由が、予め設定された機台停止理由である、切り卸しによる機台停止状態であることを機台停止理由検出部41が検出したときは、次のステップS4に処理が進行する。また、織機運転状態が、機台停止理由である切り卸しによる機台停止状態であることを機台停止理由検出部41が検出しなかった場合には、所定の時間経過後に再度ステップS3の処理が実施される。
【0038】
次に、ステップS4においては、ホストコンピュータ20の更新プログラム検出部42が、配信サーバ21に更新プログラムが存在するか否かを問い合わせる。更新プログラムが存在することを更新プログラム検出部42が検出した場合には、更新プログラム検出部42は配信サーバ21に対して更新対象の織機30への更新プログラムの配信を要求する。次に、配信サーバ21から更新対象の織機30に更新プログラムが配信され、配信された更新プログラムは織機30の主記憶部36に記憶され、ステップS5に処理が進行する。また、更新プログラムが存在しないことを更新プログラム検出部42が検出した場合には、所定の時間経過後に再度ステップS3の処理が実施される。
【0039】
次に、ステップS5においては、ステップS2においてオペレータ指示設定部43により、制御プログラムの更新にオペレータの更新指示が必要であることが設定されていたか否かをオペレータ指示確認部44が判定する。制御プログラムの更新にオペレータの更新指示が必要であると設定されているとオペレータ指示確認部44が判定した場合には、ステップS6において、ホストコンピュータ20のオペレータ指示確認部44は、織機30のファンクションパネル32にオペレータの更新指示を要求するメッセージを表示させる。このとき、主制御コントローラ33は、ファンクションパネル32にオペレータの更新指示が入力されるまで織機30の制御プログラムの更新を保留する。オペレータの更新指示がファンクションパネル32に入力されたことを主制御コントローラ33が確認すると、ステップS7に処理が進行する。また、制御プログラムの更新にオペレータの更新指示が必要であると設定されていないとオペレータ指示確認部44が判定した場合には、オペレータ指示確認部44はオペレータの指示が不要であるという情報を主制御コントローラ33に送信し、主制御コントローラ33は、オペレータの更新指示を待機することなくステップS7に処理が進行する。
【0040】
次に、図3のステップS7においては、主制御コントローラ33の更新プログラム実行部38は、織機30の主記憶部36に記憶された更新プログラムによって、織機30の制御プログラムを更新する。このステップ7の制御プログラム更新は、ステップS1において機台停止理由として設定された切り卸しの機台停止状態の間に実施される。すなわち、織機30の運転において必ず発生する切り卸しの間に、制御プログラムの更新が実施されるため、制御プログラムの更新のために織機30の運転を機台停止状態とする必要がなく、織機の稼働率の低下を抑制することができる。次に、制御プログラムの更新が完了することで、更新工程が終了する。
【0041】
このように、この発明に係る織機のプログラム更新管理システム10は、織機30の運転状態及び機台停止中の場合は機台停止理由を判別する運転状態判別部37と、織機30の制御プログラムを更新プログラムにより更新する、更新プログラム実行部38と、更新プログラム実行部38が制御プログラムの更新を実施するときの機台停止理由を設定する、機台停止理由設定部40と、運転状態判別部37により判別された織機30の運転状態が機台停止理由設定部により設定された機台停止理由による機台停止であることを検出する機台停止理由検出部41と、制御プログラムの更新プログラムを格納する配信サーバ21と、配信サーバ21内の更新プログラムの有無を検出する更新プログラム検出部42とを備え、機台停止理由検出部41が、運転状態判別部37により判別された織機30の運転状態が機台停止理由による機台停止であることを検出し、且つ更新プログラム検出部42が、配信サーバ21内に更新プログラムが有ることを検出した場合に、更新プログラム実行部38が、制御プログラムを更新プログラムにより更新するため、織機30の稼働率の低下を抑制しつつ、織機30の制御プログラムを更新することができる織機のプログラム更新管理システムを提供することができる。
【0042】
また、制御プログラムの更新における、オペレータの更新指示の要否を設定するオペレータ指示設定部43と、オペレータの更新指示が必要な場合に、オペレータの更新指示を確認するオペレータ指示確認部44とを更に備え、オペレータ指示設定部43がオペレータの更新指示の要否を設定した後、オペレータの更新指示が必要と設定されている場合には、オペレータの更新指示を受けるまで制御プログラムの更新を保留するため、オペレータの意に反して制御プログラムの更新が開始され、織機30が操作不可能となることを防止することができる。
【0043】
また、織機30に接続されたホストコンピュータ20をさらに備え、ホストコンピュータ20は、機台停止理由設定部40と、機台停止理由検出部41と、更新プログラム検出部42とを有し、織機30は、運転状態判別部37と、更新プログラム実行部38とを有し、更新プログラム格納部は、配信サーバ21であるため、各織機30に対して更新プログラムを配信することができる。
【0044】
また、機台停止理由は、織機30の切り卸し、機揚がり及び品種変更の機台停止理由の少なくとも1つを含んでいるため、織機30の運転において必ず発生する機台停止状態の間に制御プログラムの更新を実施することができ、織機30の稼働率の低下を抑制しつつ、より効率的に織機30の制御プログラムを更新することができる。
【0045】
なお、本実施の形態1では、更新プログラムが存在することを更新プログラム検出部42が検出したときに、更新プログラム検出部42は配信サーバ21に対して更新対象の織機30への更新プログラムの配信を要求し、次に、配信サーバ21から更新対象の織機30に更新プログラムが配信され、織機30の主記憶部36に記憶された更新プログラムにより織機30の制御プログラムの更新が実施されていたが、これに限定されるものではなく、更新プログラムが存在することを更新プログラム検出部42が検出したときに、配信サーバ21に格納されている更新プログラムを、ネットワーク11を経由して織機30の更新プログラム実行部38が実行して、織機30の制御プログラムの更新を実施してもよい。
【0046】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。なお、以下の実施の形態において、図1図3の参照符号と同一の符号は、同一又は対応する構成要素であるため、その詳細な説明は省略する。本実施の形態2に係る織機のプログラム更新管理システムは、織機の主制御コントローラの制御プログラムに加えて、周辺装置の制御プログラムを更新するものである。
図2に示すように、織機30には周辺装置を構成する主制御コントローラ33以外にファンクションパネル32、送出制御コントローラ51、巻取制御コントローラ53及び緯入れ制御コントローラ55が設けられている。これらの周辺装置は、該周辺装置を制御するために用いられる周辺装置制御プログラムを有しており、適当なタイミングにおいて更新が必要である。
【0047】
本実施の形態2においては、周辺装置制御プログラムの更新プログラムについても、図3に示すようにステップS1において機台停止理由を設定し、ステップS2においてオペレータ指示要否の設定をすることで、織機30の主制御コントローラ33の更新プログラムと同様に更新を実施する。なお、ステップS1において設定される機台停止理由について、周辺装置の機台停止理由は、主制御コントローラ33の機台停止理由と同じ機台停止理由としてもよいし、主制御コントローラ33の機台停止理由とは異なる機台停止理由としてもよい。例えば、周辺装置の機台停止理由と主制御コントローラ33の機台停止理由を共に切り卸しとしてもよいし、周辺装置の機台停止理由を切り卸しとし、主制御コントローラ33の機台停止理由を機揚がりとしてもよい。また、周辺装置のうちファンクションパネル32の機台停止理由を切り卸しとし、送出制御コントローラ51、巻取制御コントローラ53及び緯入れ制御コントローラ55の機台停止理由を機揚がりとする等、周辺装置を構成する装置毎に異なる機台停止理由としてもよい。
【0048】
配信サーバ21は、織機30の、主制御コントローラ33の更新プログラムのプログラムバージョンと、周辺装置の更新プログラムとのプログラムバージョンとの好適な組み合わせのテーブルを有している。そして、配信サーバ21は、そのテーブルに従って好適な組み合わせとなるプログラムバージョンの織機30の更新プログラム及び周辺装置の更新プログラムを配信する。
【0049】
ステップS4において、ファンクションパネル32の更新プログラムが配信サーバ21から配信されるときには、主記憶部36に更新プログラムが記憶され、次に主記憶部36からファンクションパネル32に制御プログラムが送信されてファンクションパネル32の制御プログラムが更新される。また、送出制御コントローラ51の更新プログラムが配信サーバ21から配信されるときには、主記憶部36に更新プログラムが記憶され、次に主記憶部36から送出制御記憶部52に更新プログラムが送信され、送出制御記憶部52に記憶された更新プログラムにより送出制御コントローラ51の制御プログラムが更新される。また、巻取制御コントローラ53の更新プログラムが配信サーバ21から配信されるときには、主記憶部36に更新プログラムが記憶され、次に主記憶部36から巻取制御記憶部54に更新プログラムが送信され、巻取制御記憶部54に記憶された更新プログラムにより巻取制御コントローラ53の制御プログラムが更新される。また、緯入れ制御コントローラ55の更新プログラムが配信サーバ21から配信されるときには、主記憶部36に更新プログラムが記憶され、次に主記憶部36から緯入れ制御記憶部56に更新プログラムが送信され、緯入れ制御記憶部56に記憶された更新プログラムにより緯入れ制御コントローラ55の制御プログラムが更新される。
【0050】
このように、織機30に接続された周辺装置であるファンクションパネル32、送出制御コントローラ51、巻取制御コントローラ53及び緯入れ制御コントローラ55を更に備え、制御プログラムは、ファンクションパネル32、送出制御コントローラ51、巻取制御コントローラ53及び緯入れ制御コントローラ55の周辺装置制御プログラムを更に含み、更新プログラムは、周辺装置制御プログラムの更新プログラムを更に含むため、織機30の制御プログラムの更新と周辺装置であるファンクションパネル32、送出制御コントローラ51、巻取制御コントローラ53及び緯入れ制御コントローラ55の制御プログラムの機台停止理由を一括して管理することができる。
【0051】
なお、本実施の形態2では織機30の周辺装置としてファンクションパネル32、送出制御コントローラ51、巻取制御コントローラ53及び緯入れ制御コントローラ55が設けられていたが、周辺装置はこれに限定されるものではなく、織機30に接続可能な他の任意の周辺装置を含んでもよい。例えば、ファンクションパネル32と同様の操作が可能でオペレータが携帯可能なタブレット端末を含んでもよい。
【0052】
また、本実施の形態2では、送出制御コントローラ51、巻取制御コントローラ53及び緯入れ制御コントローラ55の更新プログラムが配信されるときには、更新プログラムが主記憶部36に記憶された後に送出制御記憶部52、巻取制御記憶部54及び緯入れ制御記憶部56にプログラムが送信されていたが、更新プログラムを主記憶部36に記憶することなく、送出制御記憶部52、巻取制御記憶部54及び緯入れ制御記憶部56に更新プログラムが直接配信されてもよい。
【0053】
また、本発明の実施の形態1及び2では、図3に示すステップS4で織機30の更新プログラム又は周辺装置の更新プログラムが存在するか否かを更新プログラム検出部42により確認し、更新プログラムが存在する場合には配信サーバ21から更新プログラムが配信されていたが、更新プログラムが存在する場合には、配信サーバ21が制御プログラムの更新工程の開始前に織機30に更新プログラムを配信し、織機30の主記憶部36に配信された更新プログラムが記憶されてもよい。この場合には、ステップS4では主記憶部36に織機30の更新プログラム又は周辺装置の更新プログラムが存在するか否かを更新プログラム検出部42により確認し、いずれか一方又は両方の更新プログラムが存在する場合には主記憶部36から更新プログラムを読み出すことで、主制御コントローラ33は、織機30の制御プログラム又は周辺装置の制御プログラムの更新を実施することができる。
【0054】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態3に係る織機のプログラム更新管理システムは、実施の形態1の配信サーバに代えて記憶媒体により更新プログラムを供給するものである。
図4は、本実施の形態3に係る織機30の主要構成要素の概略図である。織機30は、制御プログラムの更新を行うときに、図示しないUSBコネクタにUSBメモリ60を接続可能に構成されている。織機30の図示しないUSBコネクタにUSBメモリ60を接続すると、USBメモリ60と、織機30の主記憶部36とが接続される。このUSBメモリ60には、織機30の主制御コントローラ33の制御プログラムが記憶されている。なお、主記憶部36は更新プログラム格納部を構成し、USBメモリ60は、記憶媒体を構成している。また、本実施の形態3の織機30は、実施の形態1とは異なり通信部35を有しておらず、ホストコンピュータ20と接続されていない、スタンドアローン構成の織機である。すなわち、本実施の形態3では、織機30単独でプログラム更新管理システム10を構成している。
【0055】
織機30の主制御コントローラ33は、機台停止理由設定部40、機台停止理由検出部41、更新プログラム検出部42、オペレータ指示設定部43及びオペレータ指示確認部44を有している。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0056】
次に、本実施の形態3の織機30の制御プログラムの更新について説明する。図5は、実施の形態3の織機のプログラム更新管理システム10における、制御プログラムの更新工程のフローチャートである。ステップS2の、制御プログラムの更新に際してオペレータの更新指示を必要とするか否かの設定の後に、ステップS8の、USBメモリ接続が実施される。ステップS8において、オペレータは、織機30の主制御コントローラ33の制御プログラムの更新が必要なときには、更新プログラムが保存されているUSBメモリ60を、織機30のUSBコネクタに接続し、更新プログラムを主記憶部36にコピーして記憶させる。更新プログラムのコピーが終了した後、オペレータが織機30のUSBコネクタからUSBメモリ60を抜去する。
【0057】
次に、ステップS3に処理が進行する。ステップS3において、織機30の運転状態が機台停止理由設定部40により予め設定された機台停止理由による機台停止であることを機台停止理由検出部41が検出すると、ステップS4に処理が進行する。ステップS4においては、織機30の更新プログラム検出部42が、主記憶部36に更新プログラムが記憶されて、存在しているかを確認する。主記憶部36に更新プログラムが存在することを更新プログラム検出部42が検出した場合には、ステップS5へ処理が進行する。また、更新プログラムが主記憶部36に存在しないことを更新プログラム検出部42が検出した場合には、再度ステップS8に戻る。これ以外の運転動作は実施の形態1と同じである。
【0058】
このように、本実施の形態3では、織機30は、運転状態判別部37と、更新プログラム実行部38と、機台停止理由設定部40と、機台停止理由検出部41と、更新プログラム検出部42と、更新プログラムを記憶する主記憶部36とを有し、更新プログラム格納部は、主記憶部36であって、更新プログラムは、織機に接続されるUSBメモリ60から主記憶部36に格納されるため、スタンドアローン構成の織機30であっても、更新プログラムを更新することができる。
【0059】
なお、本実施の形態3ではUSBメモリ60には織機30の更新プログラムが記憶されていたが、実施の形態2と同様にUSBメモリ60に織機30の更新プログラム及び周辺装置更新プログラムの両方が記憶されていてもよい。
【0060】
また、本実施の形態3では主記憶部36が更新プログラム格納部として用いられていたが、実施の形態1のように織機30が通信部35を有し、配信サーバ21を併用してもよい。例えば、織機30の更新プログラム及び装置制御の更新プログラムのいずれか一方を配信サーバ21から供給し、他方をUSBメモリ60から主記憶部36にコピーして主記憶部36に格納してもよい。また例えば、一部の周辺装置の更新プログラムの一部をUSBメモリ60から主記憶部36にコピーして主記憶部36に格納し、他の周辺装置の更新プログラムを配信サーバ21から供給してもよい。さらに、例えば、定期的な織機30の更新プログラム又は周辺装置の更新プログラムの供給を配信サーバ21により実施し、突発的又は緊急的な織機30の更新プログラム又は周辺装置の更新プログラムはUSBメモリ60から主記憶部36に更新プログラムをコピーして主記憶部36に格納してもよい。
【0061】
また、本実施の形態3では記憶媒体としてUSBメモリ60が用いられていたが、例えば光ディスクや磁気ディスク等の他の記憶媒体が用いられてもよい。
【0062】
また、本実施の形態3では、ステップS2の後においてオペレータが織機30のUSBコネクタにUSBメモリ60を接続していたが、他の任意のタイミングでステップS2においてオペレータが織機30のUSBコネクタにUSBメモリ60を接続してもよい。
【0063】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態4において、織機システム1は、工場管理システムにより管理されており、図1に示す織機システム1において、各織機30のモニタリングが可能である。ホストコンピュータ20は、工場管理システムの工場管理システム端末を構成しており、モニタリング画面22を有している。このモニタリング画面22には、各織機30の稼働状態を示す配台表を含む工場管理情報を表示し、オペレータがその稼働状態を確認することができる。本実施の形態4ではこのような工場管理システムにより管理されている織機システム1において、下記の機能1~3を導入することが可能である。
【0064】
(機能1)プログラムの改修内容の詳細情報、是正した問題点の内容及び追加機能の内容を含む更新プログラムの更新情報を、ホストコンピュータ20のモニタリング画面22に表示し、オペレータによる制御プログラムの更新の要否判断を支援する機能を導入することができる。これにより、オペレータが織機30及び織機30の周辺装置の制御プログラムの更新の要否を判断することが容易となる。
【0065】
(機能2)ホストコンピュータ20のモニタリング画面22に表示される配台表に、各織機30及び各織機30の周辺装置の制御プログラムバージョンと機台停止理由の設定を表示することで、制御プログラムの更新進捗状況と、各織機30及び各織機30の周辺装置の制御プログラムの差異を確認可能にする機能を導入することができる。これにより、織機30のプログラム更新管理システム10の各織機30及び各織機30の周辺装置の制御プログラムの更新管理をより容易に実施することができる。
【0066】
(機能3)ホストコンピュータ20のモニタリング画面22の配台表にオペレータが次に作業する織機30を表示する機能である「次機台作業指示機能」に、制御プログラムの更新中であること又は制御プログラムの更新が終了したことを表示する機能を導入することができる。これにより、工場管理システムを用いて制御プログラムの更新状況をモニタリングすることができる。
【0067】
このように、織機のプログラム更新管理システム10はホストコンピュータ20を更に備え、ホストコンピュータ20は、織機30の制御プログラムの更新情報を表示するモニタリング画面22を有するため、オペレータが織機30の制御プログラムの更新管理をより容易に実施することができる。
【0068】
なお、本実施の形態4では、工場管理システムの工場管理システム端末はホストコンピュータ20により構成されていたが、これに限定されるものではない。工場管理システム端末は、例えばモニタリング画面を有しオペレータが携帯可能であるタブレット端末であってもよい。また、工場管理システム端末は、ホストコンピュータ20及びタブレット端末を併用するものであってもよい。
【0069】
また、本発明の実施の形態1~4では、制御プログラムの更新が開始されると、オペレータによるファンクションパネル32の操作が不可能となる。そのため、オペレータによるファンクションパネル32の操作が行われているときに制御プログラムの更新が開始されると、オペレータによる操作が中断されてしまう。このような操作の中断を防止するために、織機30は、制御プログラムの更新前の所定の時間に、オペレータに制御プログラムの更新開始時刻を通知してもよい。例えば、制御プログラムの更新10分前に、織機30の主制御コントローラ33がファンクションパネル32に「10分後に制御プログラムの更新を開始します。延期したい場合はボタンを押してください」とメッセージを表示し、制御プログラムの更新の延期の要否をオペレータに確認してもよい。これにより、オペレータの意に反してオペレータによるファンクションパネル32の操作が中断されることを防止することができる。
【0070】
また、オペレータが制御プログラムの更新を延期した場合には、次回の制御プログラムの更新時刻をオペレータに入力させてもよい。これにより、オペレータが制御プログラムの更新を失念してしまうことを防止することができる。また、上述したような制御プログラムの更新の延期の要否を確認するメッセージを表示する場合に、このメッセージに加えて更新プログラムのプログラム容量又は周辺装置の数量から計算された制御プログラムの更新の更新所用時間を表示してもよい。これにより、オペレータが制御プログラムの更新の延期の要否を判断することが容易となる。
【0071】
また、本発明の実施の形態1~4において、図3に示すステップS7の制御プログラムの更新中に、制御プログラムの更新中であることを示す信号を織機30に設けられた信号灯又はファンクションパネル32に表示してもよい。また、ステップS7の工程が開始されたときに、ホストコンピュータ20又は配信サーバ21に記録されたオペレータのメールアドレスに、ホストコンピュータ20又は配信サーバ21から制御プログラムの更新開始を通知するメールが送信されてもよい。これにより、織機30及び周辺装置において制御プログラムの更新中であることをオペレータが簡単に知ることができる。
【0072】
また、ステップS7の制御プログラムの更新が完了したときに、制御プログラムの更新が完了したことを示す信号を織機30に設けられた信号灯又はファンクションパネル32に表示してもよいし、オペレータのメールアドレスに、ホストコンピュータ20又は配信サーバ21から制御プログラムの更新が完了したことを通知するメールが送信されてもよい。これにより、オペレータが制御プログラムの更新が完了したか、又は更新が失敗したことを簡単に判別することができ、更新工程が終了した織機30に対して早期に操作及び織機30の運転再開をすることができる。
【0073】
また、実施の形態1~4の織機のプログラム更新管理システム10は、図3に示すステップS7の更新実施の前に、更新実施前の織機30及び周辺装置の設定値と製織データとを主記憶部36にバックアップとして保存し、制御プログラムの更新履歴と共にこのバックアップを参照して、制御プログラムの更新前の状態にロールバック可能であってもよい。これにより、制御プログラムの更新後に不具合が発生した場合であっても、ロールバックにより制御プログラムの更新前の状態に戻すことができる。なお、このバックアップは配信サーバ21や図示しないバックアップサーバ等、織機30の外部に保存してもよい。
【0074】
また、実施の形態1~4の織機のプログラム更新管理システム10は、図3のステップS1において設定した機台停止理由に基づいて制御プログラムを更新していたが、例えば織機30を改造したことにより制御プログラムの更新が必要な場合等、織機30の運転に制御プログラムの更新が必要である場合には、機台停止理由による機台停止状態以外のときに配信サーバ21が更新プログラムの配信を実施し、次に配信サーバ21が織機30を制御して機台停止状態として、制御プログラムの更新を実施してもよい。これにより、制御プログラムの更新が必要な場合に制御プログラムの更新を漏れなく実施することができる。
【0075】
また、実施の形態1~4の織機のプログラム更新管理システム10は、図3のステップS1において切り卸し、機揚がり及び品種変更の機台停止理由を、制御プログラムの機台停止理由として設定していたが、メンテナンス等の理由により一定以上の時間連続して織機30が機台停止するときを制御プログラムの機台停止理由として設定してもよい。これにより、時間を要する制御プログラムの更新を織機30の非稼働時に行うことができ、織機30の稼働率が向上する。
【0076】
また、実施の形態1~4の織機のプログラム更新管理システム10は、図3のステップS1において設定した機台停止理由による機台停止状態のときに制御プログラムを更新していたが、この所定の機台停止理由とは異なる機台停止状態に、制御プログラムの定期更新スケジュールを設定してもよい。これにより、織機30の稼働時間が短時間であってステップS1において設定した機台停止理由による機台停止状態がステップS3において機台停止理由検出部41により検出されない場合であっても、定期的に織機30又は織機30の周辺装置の制御プログラムの更新を実施することができる。
【0077】
また、実施の形態1~4の織機のプログラム更新管理システム10において、図3のフローチャートに示すステップS1の機台停止理由設定とステップS2のオペレータ指示要否設定との順番は逆であってもよいし、ステップS3の機台停止理由検出とステップS4の更新プログラム存在との順番は逆であってもよい。
【0078】
なお、本発明の実施の形態1~4に含まれる構成要素及びその変形例に含まれる構成要素は、適当に組み合わせて用いることができる。
【0079】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0080】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0081】
(付記1)
織機の運転状態及び機台停止中の場合は機台停止理由を判別する運転状態判別部と、
前記織機の制御プログラムを更新プログラムにより更新する、更新プログラム実行部と、
前記更新プログラム実行部が前記制御プログラムの更新を実施するときの機台停止理由を設定する、機台停止理由設定部と、
前記運転状態判別部により判別された前記織機の運転状態が前記機台停止理由設定部により設定された機台停止理由による機台停止であることを検出する機台停止理由検出部と、
前記更新プログラムを格納する更新プログラム格納部と、
前記更新プログラム格納部内の前記更新プログラムの有無を検出する更新プログラム検出部と
を備え、
前記機台停止理由検出部が、前記運転状態判別部により判別された前記織機の運転状態が前記機台停止理由による機台停止であることを検出し、且つ前記更新プログラム検出部が、前記更新プログラム格納部内に前記更新プログラムが有ることを検出した場合に、
前記更新プログラム実行部が、前記制御プログラムを前記更新プログラムにより更新する織機のプログラム更新管理システム。
(付記2)
前記制御プログラムの更新における、オペレータの更新指示の要否を設定するオペレータ指示設定部と、
前記オペレータの更新指示が必要な場合に、前記オペレータの更新指示を確認するオペレータ指示確認部と、を更に備え、
前記オペレータ指示設定部が前記オペレータの更新指示の要否を設定した後、
前記オペレータの更新指示が必要と設定されている場合には、前記オペレータの更新指示を受けるまで前記制御プログラムの更新を保留する付記1に記載の織機のプログラム更新管理システム。
(付記3)
前記織機に接続されたホストコンピュータをさらに備え、
前記ホストコンピュータは、
前記機台停止理由設定部と、
前記機台停止理由検出部と、
前記更新プログラム検出部と
を有し、
前記織機は、
前記運転状態判別部と、
前記更新プログラム実行部と
を有し、
前記更新プログラム格納部は、前記ホストコンピュータ及び前記織機に接続された配信サーバである付記1又は2に記載の織機のプログラム更新管理システム。
(付記4)
前記織機は、
前記運転状態判別部と、
前記更新プログラム実行部と、
前記機台停止理由設定部と、
前記機台停止理由検出部と、
前記更新プログラム検出部と、
前記織機は前記更新プログラムを記憶する記憶部と
を有し、
前記更新プログラム格納部は、前記記憶部であって、前記更新プログラムは、前記織機に接続される記憶媒体から前記記憶部に格納される付記1又は2に記載の織機のプログラム更新管理システム。
(付記5)
前記機台停止理由は、前記織機の切り卸し、機揚がり及び品種変更の機台停止理由の少なくとも1つを含む付記1~4のいずれか1項に記載の織機のプログラム更新管理システム。
(付記6)
前記織機の主制御部に接続された周辺装置を更に備え、
前記制御プログラムは、前記周辺装置の周辺装置制御プログラムを更に含み、
前記更新プログラムは、前記周辺装置制御プログラムの更新プログラムを更に含む、付記1~5のいずれか1項に記載の織機のプログラム更新管理システム。
(付記7)
工場管理システム端末を更に備え、
前記工場管理システム端末は、前記織機の前記制御プログラムの更新情報を表示するモニタリング画面を有する付記1~6のいずれか1項に記載の織機のプログラム更新管理システム。
【符号の説明】
【0082】
10 プログラム更新管理システム、20 ホストコンピュータ(工場管理システム端末)、21 配信サーバ(更新プログラム格納部)、22 モニタリング画面、30 織機、32 ファンクションパネル(周辺装置)、33 主制御コントローラ(主制御部)、36 主記憶部(記憶部、更新プログラム格納部)、37 運転状態判別部、38 更新プログラム実行部、40 機台停止理由設定部、41 機台停止理由検出部、42 更新プログラム検出部、43 オペレータ指示設定部、44 オペレータ指示確認部、51 送出制御コントローラ(周辺装置)、53 巻取制御コントローラ(周辺装置)、55 緯入れ制御コントローラ(周辺装置)、60 USBメモリ(記憶媒体)。
図1
図2
図3
図4
図5