(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061208
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ラジエータ
(51)【国際特許分類】
F28F 1/40 20060101AFI20240425BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20240425BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
F28F1/40 N
F28F1/02 A
F28D1/053 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168997
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000220217
【氏名又は名称】東京ラヂエーター製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉光 真幸
(72)【発明者】
【氏名】大高 厳
(72)【発明者】
【氏名】西本 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢真
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA17
3L103AA35
3L103BB16
3L103BB37
3L103CC01
3L103CC22
3L103DD08
3L103DD32
3L103DD42
(57)【要約】
【課題】熱交換性能の向上と通水抵抗の低減を両立したラジエータを提供する。
【解決手段】本発明のラジエータは、一対のタンクと、液体と空気との間で熱交換を行うコア部と、を備え、コア部は、内部に液体を導入可能なチューブ11を備える。チューブ11は、扁平なアウターチューブ21と、インナーフィン22と、を有している。アウターチューブ21の内面は、対向する1対の平面部21aを含む。インナーフィン22は、チューブ11の横断面視において、アウターチューブ21の一方の平面部21aと他方の平面部21aとに交互に接触するように設けられる複数の熱交換部22aと、複数の熱交換部22aの間をつなぐ渡し部22bと、を備える。1つの熱交換部22aにおける平面部21aに対する接触長さをl、対向する平面部21a同士の距離をhとすると、l/hは0.5以上 2.75以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象である液体を内部で溜めることが可能な一対のタンクと、
前記タンクの間に設けられ、該液体と空気との間で熱交換を行うコア部と、
を備え、
前記コア部は、それぞれの前記タンクの内部と液密に接合されていて、内部に該液体を導入可能なチューブを備え、
前記チューブは、
扁平な形状で、外面が空気に面しているアウターチューブと、
前記アウターチューブの内部に挿入され、前記アウターチューブに対して固定されるインナーフィンと、
を有しており、
前記アウターチューブの内面は、対向する1対の平面部を含んで形成されており、
前記インナーフィンは、前記チューブの横断面視において、
前記アウターチューブの一方の前記平面部と他方の前記平面部とに交互に接触するように設けられる複数の熱交換部と、
前記アウターチューブの一方の前記平面部に接触している前記熱交換部と他方の前記平面部に接触している前記熱交換部との間をつなぐ渡し部と、
を備え、
1つの前記熱交換部における前記平面部に対する接触長さをl、対向する前記平面部同士の距離をhとすると、l/hは0.5以上2.75以下である、
ラジエータ。
【請求項2】
前記アウターチューブの一方の前記平面部に隣り合って接触している2つの前記熱交換部における、前記チューブの横断面視における中心間距離をピッチPとすると、0.48≦l/P≦0.5である、
請求項1に記載のラジエータ。
【請求項3】
前記チューブの横断面視における、前記アウターチューブの扁平した厚さ方向に直交する幅方向の内面間距離をWとすると、0.02≦h/W≦0.15である、
請求項1に記載のラジエータ。
【請求項4】
前記渡し部は、平坦な平板で構成されている、
請求項1に記載のラジエータ。
【請求項5】
前記渡し部と、前記熱交換部が接触する前記平面部に対する垂線と、がなす角θは、0°≦θ≦5°である、
請求項4に記載のラジエータ。
【請求項6】
前記平面部同士の距離hは0.6mm以上である、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のラジエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のラジエータが知られている。また、特許文献2に記載の熱交換器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-100674号公報
【特許文献2】特開2019-015492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のラジエータは、冷却対象である液体を導入可能な一対のタンクと、一対のタンクの間に設けられ、冷却対象である液体と空気との間で熱交換を行うコア部を有している。コア部は、一対のタンクとそれぞれ液密に接合されていて、内部に該液体が導入される複数のチューブを備える。
【0005】
ところで、特許文献2において開示されているように、熱交換器においては、熱交換をより促進するために、チューブの内部に挿入して接合されるフィンが設けられることがある。しかし、ラジエータに適用するためには、特許文献2に記載されているようなフィンは、冷却性能を十分に発揮するために、クーラント液を送液するポンプの送液性能を過剰に高める必要があった。
【0006】
本発明は、熱交換性能の向上と通水抵抗の低減を両立したラジエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るラジエータは、
冷却対象である液体を内部で溜めることが可能な一対のタンクと、
前記タンクの間に設けられ、該液体と空気との間で熱交換を行うコア部と、
を備え、
前記コア部は、それぞれの前記タンクの内部と液密に接合されていて、内部に該液体を導入可能なチューブを備え、
前記チューブは、
扁平な形状で、外面が空気に面しているアウターチューブと、
前記アウターチューブの内部に挿入され、前記アウターチューブに対して固定されるインナーフィンと、
を有しており、
前記アウターチューブの内面は、対向する1対の平面部を含んで形成されており、
前記インナーフィンは、前記チューブの横断面視において、
前記アウターチューブの一方の前記平面部と他方の前記平面部とに交互に接触するように設けられる複数の熱交換部と、
前記アウターチューブの一方の前記平面部に接触している前記熱交換部と他方の前記平面部に接触している前記熱交換部との間をつなぐ渡し部と、
を備え、
1つの前記熱交換部における前記平面部に対する接触長さをl、対向する前記平面部同士の距離をhとすると、l/hは0.5以上2.75以下である。
【0008】
本発明によれば、熱交換性能の向上と通水抵抗の低減を両立したラジエータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るラジエータの斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るチューブの断面図である。
【
図4】
図4は、通水断面積および通水抵抗とl/h比との関係を示した図である。
【
図5】
図5は、クーラント液の流量条件ごとの放熱量と、l/h比との関係を示した図である。
【
図6】
図6は、l/h比を変化させた際の放熱量とクーラント液の流量との関係の違いを示した図である。
【
図7】
図7は、h/W比を変化させた際の放熱量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」について適宜言及する。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。以降に説明する図中に示した符号Uは上方向を示す。符号Dは下方向を示す。符号Fは前方向を示す。符号Bは後方向を示す。符号Lは左方向を示す。符号Rは右方向を示す。なお、ラジエータを車両に取り付けたときにこれらの方向が車両について設定される各々の方向と一致するとは限らない。
【0012】
図1は、本実施形態に係るラジエータ1の斜視図である。
図1に示すように、ラジエータ1は一対の第一タンク2および第二タンク3とコア部10を有する。第一タンク2および第二タンク3は、冷却対象の液体(以後、クーラント液と呼ぶ)を内部で溜めることが可能に構成されている。第一タンク2および第二タンク3は、コア部10を左右に挟むように接続して配置されている。コア部10と接続する第一タンク2および第二タンク3の面は開口している。
【0013】
第一タンク2は、内燃機関、電気自動車用バッテリー、燃料電池スタック等の発熱機器を介して温められたクーラント液を溜めることができる。第一タンク2は、温められたクーラント液を内部に導入する導入口2aが設けられている。
【0014】
第二タンク3は、コア部10で冷却されたクーラント液を溜めることができる。第二タンク3は、冷却されたクーラント液を排出する排出口3aが設けられている。冷却されたクーラント液は、再び発熱機器に循環される。
【0015】
コア部10は、クーラント液と空気との間で熱交換を行うことで、クーラント液を冷却する。コア部10は、チューブ11と、エンドプレート12と、フィン13と、を備える。
チューブ11は、左右方向に延びる中空部材であり、その断面は前後方向に扁平である(
図2参照)。コア部10には、複数のチューブ11が、上下方向に整列して配置されている。
【0016】
エンドプレート12は、コア部10の左右両端に設けられている。チューブ11は、コア部10の両端に設けられた一対のエンドプレート12の開口部に挿入されることで、コア部10の内部に支持されている。エンドプレート12の開口部は、チューブ11の断面形状に対応している。
【0017】
エンドプレート12の開口にチューブ11が挿入された状態で、コア部10と第一タンク2とがエンドプレート12を介して接合されることで、第一タンク2とチューブ11を液密に接続することができる。エンドプレート12の開口にチューブ11が挿入された状態で、コア部10と第二タンク3とがエンドプレート12を介して接合されることで、第二タンク3とチューブ11を液密に接続することができる。
【0018】
クーラント液は、チューブ11の内部を通って、第一タンク2から第二タンク3に向かって送られる。クーラント液を冷却する空気は、隣り合う2つのチューブ11と一対のエンドプレート12とで区画される空間を通過する。
【0019】
フィン13は、複数のチューブ11の間の空間に設けられている。換言すれば、チューブ11とフィン13は上下方向に交互に配列されている。フィン13は、2つのチューブ11間を流れる空気の流れを乱流にすることで、コア部10における空気とクーラント液との間の熱交換を促進させる。
【0020】
次に、チューブ11の構造について説明する。
図2は、チューブ11の断面図である。
図3は、
図2に示すチューブ11の部分拡大図である。
図2および
図3に示すように、チューブ11は、アウターチューブ21とインナーフィン22を有する。
アウターチューブ21は、チューブ11の外面を形成している、中空の部材である。つまり、アウターチューブ21の外面は、クーラント液と熱交換する空気に面している。アウターチューブ21は、一対の平面部21aと一対の曲面部21bを備える。平面部21aは、アウターチューブ21の上面と下面を形成している。以後、アウターチューブ21の上面を成す平面部を上平面部21a1、アウターチューブ21の下面を成す平面部を下平面部21a2と呼ぶ。曲面部21bは、アウターチューブ21の前後端部に設けられて、アウターチューブ21の上平面部21a1と下平面部21a2とをなだらかに接続している。
【0021】
インナーフィン22は、アウターチューブ21の内部に挿入されて固定される。インナーフィン22は、熱交換部22aと渡し部22bを交互に備えている。熱交換部22aは、平面部21aと接触している部位である。熱交換部22aは、上平面部21a1と下平面部21a2とに交互に接触するように複数設けられている。熱交換部22aは、アウターチューブ21に対して接触面積を大きく確保するために平板状に形成されている。
図2に示すような断面視において、一つの熱交換部22aの平面部21aとの接触長さをl(=l1,l2,…ln、nは2以上の整数)とし、上平面部21a1と下平面部21a2との距離(対向する平面部21a同士の距離)をhとすると、次式を満たしている。
0.5≦l/h≦2.75
【0022】
なお、接触長さをlとして、l=l1=l2=…=lnを満たすことが望ましい。このとき、上平面部21a1と接触する、隣り合う2つの熱交換部22aの幅方向における中心22a1同士の距離を、ピッチPとする。換言すれば、幅方向における1ピッチ間において、熱交換部2つ分と渡し部2つとが形成されている。このとき、ピッチPに対する1つの熱交換部22aの接触長さlの割合は、0.48≦l/P≦0.5であることが望ましい。
さらに、アウターチューブ21の前後方向(厚さ方向(上下方向)に直交する幅方向の一例)の内面間距離をWとすると、本実施形態においては、0.02≦h/W≦0.15を満たしている。
【0023】
また、上平面部21a1と下平面部21a2との距離hについて、h≧0.6mmであることが望ましい。
【0024】
渡し部22bは、上平面部21a1と下平面部21a2とに交互に接触するように設けられる複数の熱交換部22aの間をつないでいる。
本実施形態において渡し部22bは、平坦な平板で構成されている。また、
図3に示すように、平面部21aの垂線と渡し部22bとがなす角θは、次式を満たすことが望ましい。
0°≦θ≦5°
【0025】
近年、ラジエータが搭載される車両として電気自動車(EV)が採用されることが増加している。EVにおいてラジエータに冷却水を送液するポンプは電動式が採用されることがある。電動式のポンプは、機械式のポンプと比較して、送液能力が低い傾向にある。このため、ラジエータにおいては、通水抵抗はなるべく低いことが好ましい。
【0026】
一方、ラジエータの冷却対象であるクーラント液は、空気または油を比較すると、比熱が大きい。よって、空気または油を冷却する場合と比べると、クーラント液の方が冷えにくい。
【0027】
特許文献1のラジエータに、特許文献2のインナーフィンを適用すると、インナーフィンがアウタ―チューブと接触することによって熱交換が行われる。しかし、インナーフィンの渡し部間の距離が小さいので、通水抵抗が増大し、チューブ内で冷却水が十分に通過できないことがある。特に、特許文献2のインナーフィンには、冷却水が通る流路に幅狭な領域と幅広の領域とが存在する。幅広の領域よりも幅狭な領域は流体が通りにくく、ラジエータにおける通水抵抗の増大の一因となっていた。
【0028】
このように、ラジエータには、通水抵抗の低減と熱交換性能の向上という背反しやすい性能が求められている。この点について、本発明者は、通水抵抗の低減と熱交換性能の向上という2つの要求を両立するラジエータの構成を見出した。
【0029】
本実施形態のラジエータ1において、インナーフィン22は、熱交換部22aと渡し部22bとを備える。熱交換部22aは、アウターチューブ21の一方の平面部21aとアウターチューブ21の他方の平面部21aとに交互に接触している。このとき、1つの熱交換部22aと平面部21aとの接触長さl(=l1,l2,…)と対向する平面部21a同士の距離hとの比が0.5以上2.75以下である。
このような構成のラジエータ1であれば、液体と空気との熱交換を行う熱交換部22aを十分広く備えている。換言すれば、渡し部22b間の距離が十分に離れている。冷却水の流路においてどの領域でも十分な流路幅を確保できるので、冷却水が部分的に流れにくい領域の発生が抑制される。これにより、インナーフィン22を設けることによる通水抵抗を低減できる。これにより、熱交換性能の向上と通水抵抗の低減を両立したラジエータ1を提供できる。
【0030】
さらに、渡し部22bは、熱交換部22a同士をつなぐために、アウターチューブ21の断面視においてアウターチューブ21の厚さ方向(上下方向)に延びている。アウターチューブ21は、その形状から厚さ方向(上下方向)が最も剛性的に弱いので、アウターチューブ21に働きうる厚さ方向(上下方向)の力に耐えられるように設計される必要がある。本実施形態のインナーフィンは、アウターチューブ21の厚さ方向(上下方向)に延びる渡し部22bを備えるので、アウターチューブの厚さ方向(上下方向)の強度を向上させることができ、チューブ11の耐圧性が向上する。
【0031】
本実施形態のラジエータ1は、ピッチPに対する1つの熱交換部22aの接触長さlの割合は、0.48≦l/P≦0.5となるように構成されている。
【0032】
本実施形態のラジエータ1は、さらに、アウターチューブ21の内面間距離Wに対する平面部21a同士の距離hの比が、0.02≦h/W≦0.15となるように構成されている。内面間距離Wに対して平面部21a同士の距離hが小さくなりすぎると、通水抵抗が増大する。内面間距離Wに対して平面部21a同士の距離hが大きくなりすぎると、熱交換性能が低下する。これにより、内面間距離Wと平面部21a同士の距離hとの割合を上記の範囲内とすることによって、通水抵抗の低減と熱交換性能の向上をバランスよく実現できる。
【0033】
本実施形態のラジエータ1において、さらに、渡し部22bは平坦な平板で構成されている。渡し部22bは直線的に延びるので、渡し部22bを伝わる熱の伝導する距離が短くなる。これにより、ラジエータ1の熱交換性能が向上する。
【0034】
図3に示すように、本実施形態のラジエータ1において、渡し部22bと、平面部21aに対する垂線と、がなす角θは、0°≦θ≦5°である。このとき、角θが十分に小さいので、アウターチューブ21内における流路幅がほぼ均一となる。これにより、アウターチューブ21の厚さ方向(上下方向)におけるどの領域であっても、冷却水は流れやすい。これにより、ラジエータ1の通水抵抗はより低減される。また、それぞれの渡し部22bが延びる距離を小さくできるので、渡し部22bを伝わる熱の伝導する距離が短くなるので、熱交換性能も向上する。
【0035】
本実施形態のラジエータ1において、平面部21a同士の距離hは0.6mm以上である。このとき、ラジエータ1の通水抵抗をさらに低減できる。
【0036】
なお、本実施形態のラジエータ1は、特に燃料電池車および電気自動車向けのラジエータ1に適用すると効果的である。
従来のラジエータにおいては、アウターチューブの内部にディンプルが設けられることがある。ディンプルが設けられることで、アウターチューブの内部を流れる冷却水は乱流になりやすく、熱交換が促進されやすくなる効果がある。
【0037】
ディンプルを備えるアウターチューブは、ディンプル加工された平板を折り曲げて、フラックスを用いてろう付け接合することによって形成される。フラックスはチューブの酸化被膜を除去して接合しやすくする利点がある一方で、化学反応により、イオンの溶出を起こしやすい。特に燃料電池車および電気自動車向けラジエータにおいては、燃料電池による発電によって得られた電気や運転中の事故等により漏れ出た電気が、冷却水を介してラジエータに伝わり、インナーフィンおよびアウターチューブ等の材料によっては、ラジエータの腐食の原因となる可能性があった。
【0038】
本実施形態に係るラジエータ1は、ディンプルを設けなくても、熱交換を促進できる。つまり、フラックスの使用量を低減できるので、ラジエータ1の腐食が起きにくい。
【0039】
次に、インナーフィンの違いによるラジエータの性能について解析した解析結果1~4について説明する。なお、すべての熱交換部の接触長さlは同じ長さとし、また、渡し部と、平面部に対する垂線と、がなす角θは1.5°として解析している。また、平面部間の距離hに対する接触長さlとの比をl/h比と呼ぶ。アウターチューブの内面間距離Wに対する平面部間の距離hの比をh/W比と呼ぶ。
【0040】
(解析結果1)
図4は、通水断面積および通水抵抗とl/h比との関係を示した図である。なお、実線のグラフは通水断面積とl/h比との関係を示している。二点鎖線のグラフはクーラント液の流量Q1における通水抵抗とl/h比との関係を示している。一点鎖線のグラフはクーラント液の流量Q2における通水抵抗とl/h比との関係を示している。ただし、Q1>Q2である。
図4に示すように、l/h比が増大すると通水断面積も増大し、これに伴い、流量Q1においても、流量Q2においても、通水抵抗は減少する。逆に言えばl/h比が低い場合、通水抵抗は増大する。このため、l/h比は大きい方が望ましい。
ただし、l/h比は過剰に大きい場合、通水断面積が増大しても、通水抵抗は低減しにくくなる。
【0041】
(解析結果2)
図5は、クーラント液の流量条件ごとの放熱量と、l/h比との関係を示した図である。
図5ではクーラント液の流量Q1~Q4の4条件について比較しており、Q1>Q2>Q3>Q4である。
図5に示すように、どの流量条件においてもl/h比が増大すると放熱量は減少する。また、流量が増大するほど放熱量も増大する。流量が大きい条件では、l/h比を増大させても放熱量の減少率が小さいが、流量が低い条件では、l/h比を増大させたときの放熱量の減少率が大きい。
【0042】
(解析結果3)
図6は、l/h比を変化させた際の放熱量とクーラント液の流量との関係の違いを示した図である。
図6のグラフは、l/h比がそれぞれ0.9,1.8,9.9の場合について例示している。
図6に示すように、l/h比に関わらず、流量が減少すると放熱量も減少している。また、l/h比が増大すると、流量の減少に伴う放熱量の低下量が増大する。例えば、l/h比0.9の場合とl/h比9.9の場合とを比較する。このとき、流量をQ1からQ4に低下させると、l/h比9.9の場合の放熱量の低下量は、l/h比0.9の場合の放熱量の低下量の略2倍である。
ラジエータは、クーラント液の流量が低い状態で使用されることがあるので、流量が小さい場合の放熱能力は重要である。解析結果2および3から、放熱面については、l/h比は小さいことが望ましい。
【0043】
解析結果1~3において示した通り、l/h比が小さすぎると通水抵抗が増大し、l/h比が大きすぎると、放熱量が低下する。また、l/h比が小さすぎると、製造が難しくなり、製造コストが増大する。総合的に考慮して、発明者はl/h比を0.5以上2.75以下とすることが望ましいことを見出した。
【0044】
(解析結果4)
図7は、放熱量とh/W比との関係を示した図である。h=h1の解析結果は丸印で、h=h2の解析結果は三角印で、h=h3の解析結果は四角印で示されている。ただし、h1<h2<h3である。また、グループG1はW=W1の解析結果を、グループG2はW=W2の解析結果を、グループG3はW=W3の解析結果を、グループG4はW=W4の解析結果を、それぞれまとめたグループである。ただし、W1>W2>W3>W4である。
【0045】
図7に示すように、h/W比は低いほど放熱量が高くなることが確認された。ところで、h/W比が小さい場合、hを小さくするか、Wを大きくすることが考えられる。ここで、hが小さすぎる場合は、通水抵抗が増大し、Wが大きすぎる場合は、アウターチューブの厚さ方向への剛性が低下する。また、hは製造限界により低減できる限界値が存在する。したがって、h/W比の下限は0.02であることが望ましい。
一方、h/W比は高いほど放熱量が低くなることが確認された。ラジエータの熱交換性能を向上させるため、h/W比の上限は0.15であることが望ましい。
【0046】
このように、通水抵抗および製造限界と放熱量とのバランスをとる観点から、h/W比の範囲が0.02以上0.15以下となるようにアウターチューブおよびインナーフィンが構成されることが望ましい。
【0047】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明した。本実施形態は本開示の一例であって、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を開示できるものであれば任意であり、限定されない。
【0048】
チューブの内部に挿入されるインナーフィンは、熱交換部および渡し部が、チューブの長手方向において、適宜幅方向にずれて形成されてもよい。
【0049】
本実施形態ではコア部10において、第一タンク2から第二タンク3の一方向にクーラント液が流れるラジエータ1について説明したが、第一タンクに導入口と排出口の両方が設けられていて、クーラント液がまず第一タンクからコア部を通って第二タンクに流れ、その後、クーラント液が第二タンクからコア部を通って第一タンクに向かって流れるように構成されたラジエータに適用されてもよい。
【0050】
また、コア部の内部に、チューブは前後方向に1列だけ設けられていてもよく、チューブが前後方向に2列以上並んで設けられていてもよい。
【0051】
さらに、チューブには、一枚の平板を折り曲げて2列のクーラント液の流路を形成する、所謂B型チューブが採用されてもよい。
【0052】
以下に列挙される構成もまた、本開示の一部を構成する。
(1):
冷却対象である液体を内部で溜めることが可能な一対のタンクと、
前記タンクの間に設けられ、該液体と空気との間で熱交換を行うコア部と、
を備え、
前記コア部は、それぞれの前記タンクの内部と液密に接合されていて、内部に該液体を導入可能なチューブを備え、
前記チューブは、
扁平な形状で、外面が空気に面しているアウターチューブと、
前記アウターチューブの内部に挿入され、前記アウターチューブに対して固定されるインナーフィンと、
を有しており、
前記アウターチューブの内面は、対向する1対の平面部を含んで形成されており、
前記インナーフィンは、前記チューブの横断面視において、
前記アウターチューブの一方の前記平面部と他方の前記平面部とに交互に接触するように設けられる複数の熱交換部と、
前記アウターチューブの一方の前記平面部に接触している前記熱交換部と他方の前記平面部に接触している前記熱交換部との間をつなぐ渡し部と、
を備え、
1つの前記熱交換部における前記平面部に対する接触長さをl、対向する前記平面部同士の距離をhとすると、l/hは0.5以上 2.75以下である、
ラジエータ。
(2):
前記アウターチューブの一方の前記平面部に隣り合って接触している2つの前記熱交換部における、前記チューブの横断面視における中心間距離をピッチPとすると、0.48≦l/P≦0.5である、
(1)に記載のラジエータ。
(3):
前記チューブの横断面視における、前記アウターチューブの扁平した厚さ方向に直交する幅方向の内面間距離をWとすると、0.02≦h/W≦0.15である、
(1)または(2)に記載のラジエータ。
(4):
前記渡し部は、平坦な平板で構成されている、
(1)または(3)に記載のラジエータ。
(5):
前記渡し部と、前記熱交換部が接触する前記平面部に対する垂線と、がなす角θは、0°≦θ≦5°である、
(4)に記載のラジエータ。
(6):
前記平面部同士の距離hは0.6mm以上である、
(1)から(5)のいずれかに記載のラジエータ。
【符号の説明】
【0053】
1 ラジエータ
2 第一タンク
2a 導入口
3 第二タンク
3a 排出口
10 コア部
11 チューブ
12 エンドプレート
13 フィン
21 アウターチューブ
21a 平面部
21a1 上平面部
21a2 下平面部
21b 曲面部
22 インナーフィン
22a 熱交換部
22b 渡し部