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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061231
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/15 20060101AFI20240425BHJP
   E04D 13/064 20060101ALI20240425BHJP
   E04D 13/04 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
E04D13/15 301Z
E04D13/064 F
E04D13/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169041
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】早川 創
(72)【発明者】
【氏名】秦 智博
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 博英
(72)【発明者】
【氏名】榎本 敦子
(57)【要約】
【課題】 陸屋根が形成される建築物であって、比較的コストを抑えつつ意匠性に優れた建築物を提供する。
【解決手段】建築物1aは、外壁面の一部が屋外方向へ突出して突出壁部10a,10bが形成されるとともに、陸屋根2が形成される建築物1aであって、前記陸屋根2の外周の一部に形成され、屋根面3よりも上方に突出するパラペット4が形成された外周立ち上がり部5と、前記陸屋根の外周の前記パラペット4が設けられていない位置に形成され、前記陸屋根2を流れる水を受ける軒樋7が形成された軒樋形成部6と、を備え、前記外周立ち上がり部5は、前記軒樋形成部6よりも屋外方向に突き出して形成されており、当該外周立ち上がり部5は、少なくとも一部が前記突出壁部10a,10bから上方に連続して形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁面の一部が屋外方向へ突出して突出壁部が形成されるとともに、陸屋根が形成される建築物であって、
前記陸屋根の外周の一部に形成され、屋根面よりも上方に突出する立ち上がり壁が形成された外周立ち上がり部と、
前記陸屋根の外周の前記立ち上がり壁が設けられていない位置に形成され、前記陸屋根を流れる水を受ける軒樋が形成された軒樋形成部と、を備え、
前記外周立ち上がり部は、前記軒樋形成部よりも屋外方向に突き出して形成されており、当該外周立ち上がり部は、少なくとも一部が前記突出壁部から上方に連続して形成されることを特徴とする建築物。
【請求項2】
前記外周立ち上がり部と前記軒樋形成部との接続位置に、前記立ち上がり壁に隣接して、前記陸屋根の屋根面よりも高く、且つ、前記立ち上がり壁よりも低く形成され、前記陸屋根の屋根面を流れる水を前記軒樋に導く導水部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記突出壁部は、前記外壁面に対して垂直な一対の側壁体と、当該側壁体の屋外側の端部にそれぞれ形成され、前記外壁面に対して平行な前壁体と、を備え、
前記立ち上がり壁は、前記陸屋根の外周縁に沿って形成されるパラペットであり、
当該パラペットは、前記前壁体を上方に延長して形成され、前記一対の側壁体の上端同士を繋ぐように形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建築物。
【請求項4】
前記突出壁部は前記外壁面に対して垂直な袖壁であり、前記立ち上がり壁は当該袖壁を上方に延長して形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建築物。
【請求項5】
前記袖壁は互いに距離を開けて平行に複数形成されており、
前記袖壁の間であり、且つ前記陸屋根の屋根面よりも低い位置に庇が屋外方向へ突出して形成されることを特徴とする請求項4に記載の建築物。
【請求項6】
前記突出壁部及び前記外周立ち上がり部が同一の模様又は色彩で形成されるとともに、外壁面の他の部分が異なる模様又は色彩で形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸屋根が形成される建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に陸屋根の屋根構造においては外周にパラペットが形成されており、雨水が外壁を伝って流出することを防止するとともに、軒樋が設けられないことによる意匠性の向上や転落防止の役割を果たす場合がある。また、例えば切妻や寄棟などの勾配屋根と陸屋根とが組み合わせられた屋根構造が知られており、このような屋根構造においては、陸屋根の外周縁にはパラペットが形成され、勾配屋根の水下側となる外周縁には軒樋が配置される構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、例えば下屋の屋根の妻を母屋の外壁に直角に突き合わせた形状の住宅において、母屋の外壁の近傍で下屋の屋根を流れる水が、軒先に設けられた軒樋に流れ込むように導く板金役物が種々提案されている(例えば特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-117137号公報
【特許文献2】特開平06-35466号公報
【特許文献3】特開平09-060223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、陸屋根の外周縁をパラペットで囲う場合、パラペットを設けずに外周に軒樋を配置した屋根に比べてコストがかかる。また、パラペットを設けることで建築物の外周がより高くなるので、斜線制限への対応としてセットバックする必要が生じる場合がある。一方、パラペットを設けずに軒樋を配置した場合には、単調な意匠となりやすい問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、陸屋根が形成される建築物であって、比較的コストを抑えつつ意匠性に優れた建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建築物は、外壁面の一部が屋外方向へ突出して突出壁部が形成されるとともに、陸屋根が形成される建築物であって、前記陸屋根の外周の一部に形成され、屋根面よりも上方に突出する立ち上がり壁が形成された外周立ち上がり部と、前記陸屋根の外周の前記立ち上がり壁が設けられていない位置に形成され、前記陸屋根を流れる水を受ける軒樋が形成された軒樋形成部と、を備え、前記外周立ち上がり部は、前記軒樋形成部よりも屋外方向に突き出して形成されており、当該外周立ち上がり部は、少なくとも一部が前記突出壁部から上方に連続して形成されることを特徴としている。
【0008】
本発明の建築物は、前記外周立ち上がり部と前記軒樋形成部との接続位置に、前記立ち上がり壁に隣接して、前記陸屋根の屋根面よりも高く、且つ、前記立ち上がり壁よりも低く形成され、前記陸屋根の屋根面を流れる水を前記軒樋に導く導水部が形成されることを特徴としている。
【0009】
本発明の建築物は、前記突出壁部は、前記外壁面に対して垂直な一対の側壁体と、当該側壁体の屋外側の端部にそれぞれ形成され、前記外壁面に対して平行な前壁体と、を備え、前記立ち上がり壁は、前記陸屋根の外周縁に沿って形成されるパラペットであり、当該パラペットは、前記前壁体を上方に延長して形成され、前記一対の側壁体の上端同士を繋ぐように形成されることを特徴としている。
【0010】
前記突出壁部は前記外壁面に対して垂直な袖壁であり、前記立ち上がり壁は当該袖壁を上方に延長して形成されることを特徴としている。
【0011】
本発明の建築物は、前記袖壁は互いに距離を開けて平行に複数形成されており、前記袖壁の間であり、且つ前記陸屋根の屋根面よりも低い位置に庇が屋外方向へ突出して形成されることを特徴としている。
【0012】
本発明の建築物は、前記突出壁部及び前記外周立ち上がり部が同一の模様又は色彩で形成されるとともに、外壁面の他の部分が異なる模様又は色彩で形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の建築物によると、陸屋根の外周の一部に外周立ち上がり部が設けられており、陸屋根の外周の他の部分には立ち上がり壁がない軒樋形成部が形成されているので、必要に応じて外周立ち上がり部と軒樋形成部とを選択して配置することで、外周の全部に立ち上がり壁を形成する場合に比べて陸屋根の建築コストを下げることができる。また、斜線規制などの必要に応じて立ち上がり壁を設けない軒樋形成部を適切に配置することで、セットバックすることなく法規に対応することができる。また、外周立ち上がり部を軒樋形成部よりも屋外方向に突き出して形成するとともに、当該外周立ち上がり部を少なくとも一部が突出壁部の上方に連続して形成することで、地上から見たときに外周立ち上がり部及び突出壁部が、下方から陸屋根よりも高い位置にまで繋がったアクセントとなって建築物の意匠性を高めることができる。
【0014】
本発明の建築物によると、外周立ち上がり部と軒樋形成部との接続位置に形成される導水部が、陸屋根の屋根面よりも高く形成されることで、陸屋根の屋根面を流れる水を堰き止めて、軒樋に導くことができる。また、導水部が立ち上がり部よりも低く形成されているので、地面から見た場合に、視認できないか、又は、目立たないように形成されることとなり、意匠性を低下させることなく、外周立ち上がり部と軒樋形成部との接続位置における水を軒樋に導くことができる。
【0015】
本発明の建築物によると、突出壁部が外壁面に垂直な一対の側壁体と、当該側壁体の屋外側の端部に形成される外壁面に対して平行な前壁体と、を備えており、陸屋根の外周縁に沿って形成されるパラペットが、前壁体を上方に延長して形成され、一対の側壁体の上端同士を繋ぐように形成されるので、前壁体とパラペットとが繋がった統一感あるデザインとなって意匠性を向上することができるとともに、一対の側壁体の間の屋外空間がパラペットの下方に形成されるので、例えばエントランスポーチ、テラス、ベランダなどの用途に用いることができる。
【0016】
本発明の建築物によると、突出壁部が外壁面に対して垂直な袖壁であり、立ち上がり壁は袖壁を上方に延長して形成されるので、袖壁が、鉛直方向に陸屋根よりも高く伸びることとなり、鉛直方向に強調されたデザインの建築物とすることができる。
【0017】
本発明の建築物によると、袖壁が互いに距離を開けて平行に複数形成されることで、鉛直方向により強調されたデザインとすることができ、袖壁の間で、且つ陸屋根の屋根面よりも低い位置に庇が設けられることで、地上から見上げた場合に、庇に隠されて陸屋根の外周縁が視認されにくくなり、建築物の意匠性を高めることができる。さらに、陸屋根よりも低い庇が設けられていることで、袖壁の上端の高さがより強調されることとなり、より鉛直方向に強調されたデザインの建築物とすることができる。
【0018】
本発明の建築物によると、突出壁部及び前記外周立ち上がり部が同一の模様又は色彩で形成され、他の部分が異なる模様又は色彩で形成されることにより、突出壁部及び外周立ち上がり部の統一感が強調され、建築物の意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第一の実施形態の建築物の陸屋根を説明する屋根伏図。
図2】外周立ち上がり部と軒樋形成部との接続部分を説明する図1におけるα部分拡大図。
図3】外周立ち上がり部と軒樋形成部との接続部分を説明する鉛直断面図。
図4】防水役物の構成を説明する斜視図。
図5】外周立ち上がり部と軒樋形成部との接続部に防水役物を取り付けた状態を説明する斜視図。
図6】パラペットの構造を説明する鉛直断面図。
図7】(A)は第一の実施形態の建築物の1階の間取りを説明する断面図であり、(B)は2-3階の間取りを説明する断面図。
図8】第一の実施形態の建築物の外観を説明する斜視図。
図9】第二の実施形態の建築物の陸屋根を説明する屋根伏図。
図10】外周立ち上がり部と軒樋形成部との接続部分を説明する図9におけるβ部分拡大図。
図11】外周立ち上がり部と軒樋形成部との接続部分を説明する図9におけるγ部分拡大図。
図12】(A)は第二の実施形態の建築物の1階の間取りを説明する断面図であり、(B)は第二の実施形態の建築物の2階の間取りを説明する断面図であり、(C)は第二の実施形態の建築物の3階の間取りを説明する断面図。
図13】第二の実施形態の建築物の外観を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第一の実施形態〕
以下、本発明の建築物の第一の実施形態について、図1から図8を参照しつつ説明する。本実施形態における建築物1aは、例えば3階建て鉄骨造の集合住宅である。図1に示すように、建築物1aの屋根は陸屋根2となっており、陸屋根2の外周縁の一部は、屋根面3よりも上方に突出する立ち上がり壁が形成された外周立ち上がり部5となっている。本実施形態においては、立ち上がり壁は、陸屋根2の外周縁に沿って形成されるパラペット4である。また、陸屋根2の外周縁の他の部分は、立ち上がり壁としてのパラペット4が形成されておらず、外周縁に沿って軒樋が配置がれる軒樋形成部6となっている。外周立ち上がり部5と軒樋形成部6との接続位置は、軒樋がパラペット4に対して負ける納まりとなっており、外周立ち上がり部5と軒樋形成部6との接続位置における陸屋根2の外周縁には、図5から図8に示すように、軒樋7に水を導く導水部9を形成する防水役物8が配置される。詳しくは後述する。また、本実施形態の建築物1aは、図2及び図3に示すように、建築物1aの外壁には外壁面から屋外側に突出して形成された突出壁部10a,10bが設けられている。突出壁部10a,10bは突出する端部がパラペット4の屋外側の面と面一に連続して形成されている。
【0021】
本実施形態の建築物1aは、図2(A)に示すように、1階にエントランスポーチ11、風除室12、エントランスロビー13が一列に並んで配置されており、エントランスロビー13の屋内側に共用の内廊下14が設けられている。内廊下14は3つの住戸15の玄関が形成されるとともに、階段室16及びエレベータ室17に接続されている。3つの住戸15に設けられてた開口部の屋外側にはそれぞれベランダ18が設けられている。そして、図2(B)に示すように、2階及び3階には階段室16及びエレベータ室17に接続されて内廊下14が設けられており、1階における各住戸15の上に重なるように3つの住戸15がそれぞれ形成されている。2階及び3階には、更に、一階において、エントランスポーチ11、風除室12、及びエントランスロビー13が設けられた位置にもそれぞれ重なるように住戸15が形成されている。なお、建築物1aの2階及び3階の間取りはほぼ同一であるので、図2(B)に2階の間取りを示し3階の間取りは図示しない。
【0022】
本実施形態の建築物1aは2つの突出壁部10a,10bを有する。第一の突出壁部10aは、1階においてエントランスポーチ11を囲う壁面を形成し、2階及び3階にそのまま鉛直に延びて形成されている。エントランスポーチ11は、建築物1aの1隅に形成されており、外壁面に対して垂直な一対の側壁体19と、当該一対の側壁体19の屋外側の端部に形成され、外壁面に対して平行な前壁体20と、に囲まれた空間である。当該側壁体19及び前壁体20が第一の突出壁部10aを形成する。なお、エントランスポーチ11は出隅部に形成されているので、一方の側壁体19は、一方の外壁面に対しては垂直で、他方の外壁面に対しては面一に配置されているが、「外壁面に対して垂直」とは、互いに平行に配置される一対の側壁体19の両方が接続されている外壁面に対して垂直であることをいう。また、一対の側壁体19の屋外側の端部にそれぞれ形成される前壁体20は、互いに接近する方向に延びて形成されており、2つの前壁体20の間からエントランスポーチ11に入ることができるように形成されている。
【0023】
1階に設けられる3つの住戸15のうち、エントランスポーチ11から最も離れた住戸15のベランダ18aは、外壁面に対して垂直な一対の側壁体19と、当該一対の側壁体19の屋外側の端部に形成され、外壁面に対して平行な前壁体20と、に囲まれて形成されており、これらの側壁体19及び前壁体20が第二の突出壁部10bを形成している。第二の突出壁部10bを形成する側壁体19及び前壁体20は上方に延びており、1階において第二の突出壁部10bに囲まれて形成されるベランダ18aに重なって、2階及び3階に形成されるベランダ18aは、同様に一対の側壁体19、及び、前壁体20に囲まれて配置される。
【0024】
第一の突出壁部10a及び第二の突出壁部10bは、云わば建築物1aの外壁から前方に開口を有する中空の箱状に突出して形成されており、一対の側壁体19、及び前壁体20の外側を向く面が、陸屋根2の外周縁に形成されるパラペット4と面一に形成されている。また、第一の突出壁部10a及び第二の突出壁部10bとパラペット4とは同一の模様及び色彩を有する外装材で形成されており、外壁面の第一の突出壁部10a及び第二の突出壁部10bとは異なる部分は異なる模様及び色彩を有する外装材で形成されている。ここで、「同一の模様及び色彩」とは、外装材の凹凸模様や色の変化による模様、及び外装材の屋外側の色彩が同じ外装材であると認識できる程度に似ていることをいう。また、「異なる模様及び色彩」とは、外装材の凹凸模様や色の変化による模様、及び外装材の屋外側の色彩が異なる外装材であると認識できる程度に相違していることをいう。
【0025】
このように、一対の側壁体19、及び前壁体20がパラペット4と面一に形成されることで、陸屋根2の外周縁に沿って形成されるパラペット4は、前壁体20を上方に延長して形成され、一対の側壁体19の上端同士を繋ぐように配置されることで、前壁体20とパラペット4とが繋がった統一感あるデザインとなって意匠性を向上することができる。また、第一の突出壁部10a又は第二の突出壁部10bと、パラペット4とが、建築物1aの外壁面から箱状に突出し、当該箱状に突出した部分が屋根面3よりも高く形成されるデザインとなることで、第一の突出壁部10a及び第二の突出壁部10bとパラペット4とを上下方向に繋がった統一感のあるデザインとすることができる。第一の突出壁部10a及び第二の突出壁部10bとパラペット4とは同一の模様及び色彩を有する外装材で形成されることで、2つの突出壁部10a,10b及び外周立ち上がり部5の統一感をより強調することができる。このとき、陸屋根2の外周縁にパラペット4が形成されない軒樋形成部6が設けられていることで、より一層パラペット4が強調されて、当該パラペット4と第一の突出壁部10a及び第二の突出壁部10bとが繋がった意匠性を向上させることができる。
【0026】
そして、第一の突出壁部10a及び第二の突出壁部10bが前方に開口を有する中空の箱状であることで、その内側に形成されるエントランスポーチ11、テラス、又はベランダ18aを外部の視線や風雨などの外部環境からある程度、遮断することができる空間とすることができる。
【0027】
第一の突出壁部10a及び第二の突出壁部10bの間には、当該第一の突出壁部10a及び第二の突出壁部10bに隣接してL字状にベランダ18が1階から3階までのそれぞれに形成されている。ベランダ18は、外壁から突出して形成されるが、第一の突出壁部10a及び第二の突出壁部10bはL字状のベランダ18よりもさらに屋外側に突出して形成されている。
【0028】
陸屋根2は、ALC22の上に水勾配を形成する勾配断熱材21を配置し、その上に防水シート23を貼り付けて形成されている。陸屋根2に形成される外周立ち上がり部5は、第一の突出壁部10aの上方と、第二の突出壁部10bの上方と、を含んで形成されている。具体的には、図1及び図2に示すように、外周立ち上がり部5を形成するパラペット4は、第一の突出壁部10aを構成する一対の側壁体19及び前壁体20の上方に形成されているとともに、当該前壁体20の間にも形成され、更に、一方の側壁体19に連続して面一に形成されている外壁面の上方にも形成されている。また、パラペット4は、第二の突出壁部10bを構成する一方の側壁体19の上方、2つの前壁体20の上方、及び前壁体20の間に形成されている。
【0029】
パラペット4は、図8に示すように、屋根を支持するH形鋼の構造躯体24の上に固定されるフレーム25と、フレーム25の外側面に固定され、パラペット4の外側面を形成する外装材26と、フレーム25の内側面に固定される下地面材27と、外装材26の上端と下地面材27の上端との間を覆うとともに、パラペット4の両側面に沿って垂れ下がる水切材28と、水切材28を覆うように形成されパラペット4の上面を構成する笠木29と、を有する。
【0030】
軒樋形成部6は、陸屋根2の外周縁のうち、外周立ち上がり部5が形成されていない位置に形成される。軒樋形成部6と外周立ち上がり部5との接続位置は、パラペット4の側面に軒樋7が直交するように、云わばパラペット4勝ち、軒樋7負けの納まりとなっている。軒樋形成部6は、図6に示すように、外壁面よりも外側に突出して形成されており、軒樋形成部6の下方に軒樋7が固定されている。
【0031】
外周立ち上がり部5と軒樋形成部6との接続位置における陸屋根2の外周縁に、配置される防水役物8は、図4に示すように、屋根面3に固定される屋根固定部30と、パラペット4の側壁に固定される壁固定部31と、陸屋根2上を流れる水を軒樋7に誘導する導水部9と、を有する。屋根固定部30は、図4から図7に示すように、屋根面3に沿って平板状に形成されており、複数のビス孔が形成されており、陸屋根2の下地材にビス固定される。また、壁固定部31は、パラペット4の軒樋形成部6との接続位置に沿うように、当該パラペット4の側壁の角に当接して固定される。壁固定部31は、図8に示すように、上端がパラペット4の水切材28を覆うように配置される。屋根面3に貼り付けられた防水シート23は、防水役物8にも貼り付けられており、当該防水シート23はパラペット4の笠木29と水切材28の間にまで貼り付けられて陸屋根2の防水性を保持している。
【0032】
防水役物8の導水部9は、図4及び図5に示すように、パラペット4に隣接して陸屋根2の外周縁に形成され、陸屋根2を流れる水がパラペット4に隣接した位置から陸屋根2の下に流れ出さないように堰き止める導水堰部32と、導水堰部32に隣接し当該導水堰部32に堰き止められた水を軒樋7に導く周縁勾配部33と、を有する。導水堰部32は、パラペット4に隣接して、陸屋根2の屋根面3よりも高く、且つ、パラペット4よりも低く形成されいている。また、周縁勾配部33は陸屋根2の勾配よりも急勾配に形成されている。軒樋形成部6が設けられる位置の陸屋根2の周縁はこの周縁勾配部33と同様の勾配に形成されている。
【0033】
軒樋7は、上方に向かって開口される溝状であり、図5及び図6に示すように、軒樋形成部6の外縁に沿って、軒樋形成部6よりも下方に形成されている。軒樋7の開口は軒樋形成部6の外縁よりも屋内側から屋外側に亘って形成されており、屋根面3を流れた水が、軒樋形成部6の外縁から下方に流出するときに、当該流出した水を軒樋7が受けることができる。軒樋7は図5及び図7に示すように、その端部がパラペット4の側面から離れているが、軒樋形成部6の導水堰部32によりパラペット4に隣接する位置の屋根面3を流れる水が堰き止められて、周縁勾配部33側に流されるので、パラペット4と軒樋7との間から水が流出することを防止できる。
【0034】
軒樋7の下方には庇34が屋外方向に突出して形成されている。建築物1aの屋外の地面から見ると、軒樋7は庇34に隠されて視認できず、軒樋7によって建築物1aの意匠性が阻害されることを防止できる。庇34の先端側の上面には、庇34の上を流れる水を受ける樋溝46が形成されている
【0035】
このように、本実施形態の建築物1aは、陸屋根2の外周の一部に外周立ち上がり部5が設けられ、陸屋根2の外周の他の部分にはパラペット4がない軒樋形成部6が形成されることで、外観意匠上の必要性に応じて外周立ち上がり部5と軒樋形成部6とを選択して設けることができるので、外周の全部にパラペット4を形成する場合に比べて陸屋根2の建築コストを下げることができる。また、軒樋形成部6は外周立ち上がり部5に比べて高さが低いので、斜線規制などの必要に応じてパラペット4を設けない軒樋形成部6を配置することで、例えばセットバックなどによって床面積を減らすことなく斜線規制に対応することができる。なお、本実施形態においては、第一の突出壁部10a及び第二の突出壁部10bが設けられて、当該2つの突出壁部10a,10bの上方にそれぞれ外周立ち上がり部5が形成されているが、建築物1aは、斜線規制などの必要に応じて、第一の突出壁部10a又は第二の突出壁部10bを設けずに、突出壁部10a,10b及び外周立ち上がり部5を1つずつ設けるものであってもよい。
【0036】
〔第二の実施形態〕
次に、本発明の建築物1bの第二の実施形態について、図9から図13を参照しつつ説明する。第一の実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。第二の実施形態における建築物1bは、第一の実施形態と同様に、例えば3階建て鉄骨造の集合住宅であり、図9に示すように、建築物1bの屋根は陸屋根2となっており、陸屋根2の外周縁の一部に、屋根面3よりも上方に突出する立ち上がり壁35が形成された外周立ち上がり部5となっている。本実施形態における立ち上がり壁35は、本実施形態においては外壁面に対して垂直に形成される袖壁36を上方に延長させて形成されている。なお、本発明における「突出壁部」は本実施形態においては袖壁36がこれに相当する。図9及び図12に示すように、袖壁36は建築物1bのファサード面に等間隔で5本並べて形成されている。両端の袖壁36は、建築物1bの両側の外壁面と面一となっており、両端の袖壁36を上方に延長させて形成される立ち上がり壁35は、当該両側の外壁面に沿ったパラペット40が当該立ち上がり壁35に連続して形成されている。
【0037】
また、陸屋根2の外周縁の他の部分は、立ち上がり壁35及びパラペット40が形成されておらず、外周縁に沿って軒樋7が配置がれる軒樋形成部6となっている。具体的には、等間隔で形成される立ち上がり壁35の間の陸屋根2の外周縁が軒樋形成部6となっているとともに、ファサード面と反対側における陸屋根2の外周縁がパラペット40に挟まれた軒樋形成部6となっている。立ち上がり壁35は軒樋形成部6よりも突出して形成されており、立ち上がり壁35が形成される外周立ち上がり部5と軒樋形成部6との接続位置は、軒樋7がパラペット40に対して負ける納まりとなっている。また、外周立ち上がり部5と軒樋形成部6との接続位置における陸屋根2の外周縁には、図12に示すように、軒樋7に水を導く導水部9を形成する防水役物8が配置される。防水役物8の構成は、第一の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0038】
第二の実施形態の建築物1bは、図10(A)に示すように、1階の両側に長方形状の住戸37が設けられ、2つの住戸37の間にもう一つの住戸37が設けられ、当該住戸37に沿ってL字状に、エントランスポーチ38、エントランスロビー39、及び共用の内廊下41が設けられる。また、内廊下41にアクセス可能に階段室16及びエレベータ室17に接続されている。両側の住戸37を形成する外壁42及び界壁43から図面における下側に突出するように袖壁36が形成されており、中央の住戸37からも外側に袖壁36が突出して形成されている。なお、5つの袖壁36は本実施形態においてはファサード面から突出して形成されている。そして、図10(B)に示すように、2階には、3つの住戸37が内廊下41にアクセス可能に形成されており、図10(C)に示すように、3階には4つの住戸37が内廊下41にアクセス可能に形成されている。
【0039】
各階の袖壁36の間にはベランダ44がそれぞれ形成されている。袖壁36は、1階から3階まで連続して形成されており、そのまま上方に延長されて陸屋根2よりも上に立ち上がり壁35を形成している。袖壁36の外壁面から突出した屋外側の面及び、袖壁36の両側面は、いずれも立ち上がり壁35と面一に形成されている。袖壁36及び立ち上がり壁35は、第一の実施形態と同様に同一の模様及び色彩を有する外装材で形成されており、外壁面の袖壁36とは異なる部分は異なる模様及び色彩を有する外装材で形成されている。
【0040】
また、図12に示すように、互いに距離を開けて平行に5つ形成されている袖壁36の間で、且つ、陸屋根2の屋根面3よりも低い位置には庇34が屋外方向へ突出して形成されている。陸屋根2は第一の実施形態と同様の構成であるので説明を省略する。そして、外周立ち上がり部5と軒樋形成部6との接続位置における陸屋根2の外周縁に、防水役物8が配置される。図10及び図11に示すように、第一の実施形態と同様に、防水役物8の導水部9は、立ち上がり壁35に隣接して陸屋根2の外周縁に形成され、陸屋根2を流れる水が立ち上がり壁35に隣接した位置から陸屋根2の下に流れ出さないように堰き止める導水堰部32と、導水堰部32に隣接し当該導水堰部32に堰き止められた水を軒樋7に導く周縁勾配部33と、を有する。図10に示すように、両端の袖壁36を上方に延長させて形成される立ち上がり壁35には、軒樋形成部6との接続位置に1つの防水役物8が設けられており、図11に示すように、中間の3つの袖壁36を上方に延長させて形成される立ち上がり壁35は、両側面に軒樋形成部6が接続されるので、それそれの接続位置に2つの防水役物8が設けられている。防水役物8は、その壁固定部31が、立ち上がり壁35の軒樋形成部6との接続位置に沿うように、立ち上がり壁35の角に当接して固定される。
【0041】
軒樋7は、上方に向かって開口される溝状であり、軒樋7の開口が軒樋形成部6の外縁よりも屋内側から屋外側に亘って形成されており、屋根面3を流れた水が、軒樋形成部6の外縁から流出し、軒樋7で受ける。軒樋7は、図13に示すように、その端部が立ち上がり壁35から離れているが、軒樋形成部6の導水堰部32で堰き止めて周縁勾配部33側に流すことで、立ち上がり壁35と軒樋7との間からの水が流出を防いでいる。
【0042】
軒樋7の下方であり、袖壁36の間に庇34が屋外方向に突出して形成されている。建築物1bの屋外の地面から見ると、軒樋7は庇34に隠されて視認できず、軒樋7によって建築物1bの意匠性が阻害されることを防止している。袖壁36と立ち上がり壁35が連続して形成されており、陸屋根2よりも低い位置に庇34が設けられることで、建築物1bの屋外側の地面から見たときに、陸屋根2は見えず庇34が陸屋根2の外周縁のように見えるので、立ち上がり壁35の高さがより際立ち、建築物1bの意匠性を向上させることができる。また、袖壁36の間にパラペット40が設けられていないことから、外観意匠の向上とともに、外周立ち上がり部5と軒樋形成部6とを選択して設けることで陸屋根2の建築コストを下げることができる。また、例えばファサード面以外を軒樋形成部6にするなどすれば、斜線規制にも対応することができる。
【0043】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る建築物1a,1bは、例えば集合住宅として好適である。
【符号の説明】
【0045】
1a,1b 建築物
2 陸屋根
3 屋根面
4 パラペット
5 外周立ち上がり部
6 軒樋形成部
7 軒樋
9 導水部
10a,10b 突出壁部
19 側壁体
20 前壁体
34 庇
35 立ち上がり壁
36 袖壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13