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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061243
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】井水利用システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 27/00 20060101AFI20240425BHJP
   F24D 18/00 20220101ALI20240425BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20240425BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240425BHJP
   H01M 8/04029 20160101ALI20240425BHJP
   F24D 101/30 20220101ALN20240425BHJP
【FI】
F25B27/00 P
F24D18/00
F24H1/00 631A
H01M8/04 Z
H01M8/04029
H01M8/04 J
F24D101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169067
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】澤村 茂貴
(72)【発明者】
【氏名】加柴 敏男
(72)【発明者】
【氏名】島岡 宏秀
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩士
【テーマコード(参考)】
3L122
5H127
【Fターム(参考)】
3L122AA13
3L122AA23
3L122AA28
5H127AB21
5H127AB24
5H127AC15
5H127CC07
(57)【要約】
【課題】さらなる省エネルギー化が可能な井水利用システムを提供する。
【解決手段】本開示に係る井水利用システム10は、汲み上げられた井水を熱交換に利用する井水利用システムである。井水利用システム10は、汲み上げられた井水を熱交換に利用する第一熱交換器HEX1と、第一熱交換器HEX1と直列に接続された第二熱交換器HEX2と、を備える。第一熱交換器HEX1は、汲み上げ時の温度を有する井水を熱交換に利用し、第二熱交換器HEX2は、第一熱交換器HEX1を通過した後の温度上昇した井水を熱交換に利用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汲み上げられた井水を熱交換に利用する井水利用システムであって、
前記汲み上げられた井水を熱交換に利用する第一熱交換器と、
前記第一熱交換器と直列に接続された第二熱交換器と、を備え、
前記第一熱交換器は、汲み上げ時の温度を有する井水を熱交換に利用し、
前記第二熱交換器は、前記第一熱交換器を通過した後の温度上昇した井水を熱交換に利用する、
井水利用システム。
【請求項2】
前記第一熱交換器は、空調設備の循環流体と汲み上げられた井水とを熱交換し、
前記第二熱交換器は、熱源設備の循環流体と前記第一熱交換器を通過した後の温度上昇した井水とを熱交換する、
請求項1に記載の井水利用システム。
【請求項3】
前記第一熱交換器及び前記第二熱交換器と直列に接続された第三熱交換器をさらに備え、
前記第三熱交換器は、前記第二熱交換器を通過した後の温度上昇した井水を熱交換に利用し、燃料電池発電機の循環流体と前記第二熱交換器を通過した後の温度上昇した井水とを熱交換する、
請求項1又は2に記載の井水利用システム。
【請求項4】
前記第一熱交換器、前記第二熱交換器、及び前記第三熱交換器と直列に接続された第四熱交換器をさらに備え、
前記第四熱交換器は、前記第三熱交換器を通過した後の温度上昇した井水を熱交換に利用し、給湯設備の循環流体と前記第三熱交換器を通過した後の温度上昇した井水とを熱交換する、
請求項3に記載の井水利用システム。
【請求項5】
前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との接続を直列接続から並列接続に切り替える機構を有する、
請求項1又は2に記載の井水利用システム。
【請求項6】
前記第二熱交換器を通過した井水を、前記汲み上げられた井水に混ぜ合わせて第一熱交換器の熱交換に再利用する機構を有する、
請求項1又は2に記載の井水利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、井水利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー資源の無駄遣いを抑制するために、省エネルギー設備を導入する需要が高まっている。
例えば、特許文献1には、井水を有効利用し、省エネルギー化を実現する空調技術が開示されている。第一空調手段は、汲み上げた井水を熱交換に利用して空調する。第二空調手段は、井水を貯槽する貯水槽からの井水を熱交換に利用して空調する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-050890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示された空調技術では、対象空間を空調するために用いられている熱交換器が並列に接続されており、それぞれの負荷系統に合わせたエネルギーを要する。そのため、1つのエネルギーを充分に活用することができず、エネルギー節約が不十分であった。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みなされたものであって、さらなる省エネルギー化が可能な井水利用システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る井水利用システムは、汲み上げられた井水を熱交換に利用する井水利用システムであって、前記汲み上げられた井水を熱交換に利用する第一熱交換器と、前記第一熱交換器と直列に接続された第二熱交換器と、を備え、前記第一熱交換器は、汲み上げ時の温度を有する井水を熱交換に利用し、前記第二熱交換器は、前記第一熱交換器を通過した後の温度上昇した井水を熱交換に利用する。
【0007】
本開示に係る井水利用システムは、第一熱交換器が汲み上げた井水をそのまま熱交換に利用する。さらに、第一熱交換器と直列接続された第二熱交換器が第一熱交換器を通過して温度上昇した井水を熱交換に利用する。そのため、1つのエネルギーを2つ以上の設備に対して有効に活用できる。
【0008】
前記第一熱交換器は、空調設備の循環流体と汲み上げられた井水とを熱交換し、前記第二熱交換器は、熱源設備の循環流体と前記第一熱交換器を通過した後の温度上昇した井水とを熱交換してもよい。このような構成により、第一熱交換器により、汲み上げられた井水を利用して空調設備の循環流体の温度を下げることができる。さらに、第二熱交換器により、第一熱交換器を通過した後の温度上昇した井水を利用して熱源設備の循環流体の温度を下げることができる。
【0009】
前記第一熱交換器及び前記第二熱交換器と直列に接続された第三熱交換器をさらに備え、前記第三熱交換器は、前記第二熱交換器を通過した後の温度上昇した井水を熱交換に利用し、燃料電池発電機の循環流体と前記第二熱交換器を通過した後の温度上昇した井水とを熱交換してもよい。このような構成により、第三熱交換器により、第二熱交換器を通過した後の温度上昇した井水を利用して燃料電池発電機の循環流体の温度を下げることができる。
【0010】
前記第一熱交換器、前記第二熱交換器、及び前記第三熱交換器と直列に接続された第四熱交換器をさらに備え、前記第四熱交換器は、前記第三熱交換器を通過した後の温度上昇した井水を熱交換に利用し、給湯設備の循環流体と前記第三熱交換器を通過した後の温度上昇した井水とを熱交換してもよい。このような構成により、第四熱交換器により、第三熱交換器を通過した後の温度上昇した井水を利用して給湯設備の循環流体の温度を昇温又は冷却できる。
【0011】
前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との接続を直列接続から並列接続に切り替える機構を有してもよい。このような構成により、汲み上げ時の温度を有する井水を第二熱交換器に供給できるため、第二熱交換器の熱交換率を高めることができる。
【0012】
前記第二熱交換器を通過した井水を、前記汲み上げられた井水に混ぜ合わせて第一熱交換器の熱交換に再利用する機構を有してもよい。このような構成により、熱源設備F2の循環流体の温度と第二熱交換器HEX2を通過する井水の温度とがほぼ同等である場合に、井水を揚水槽T1に戻して再利用できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示により、さらなる省エネルギー化が可能な井水利用システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係る井水利用システム10の概要フロー図である。
図2】実施形態2に係る井水利用システム20の概要フロー図である。
図3】実施形態3に係る井水利用システム30の概要フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
なお、当然のことながら、図面に示したxy直交座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。
【0016】
(実施形態1)
<井水利用システム>
まず、図1を参照して、実施形態1に係る井水利用システムの構成を説明する。図1は実施形態1に係る井水利用システム10の概要フロー図である。図1に示した一点鎖線及び点線は、配管系統を示している。図1に示した例では、空調設備F1の循環流体が通過する配管系統PS1、熱源設備F2の循環流体が通過する配管系統PS2、燃料電池発電機F3の循環流体が通過する配管系統PS3、給湯設備F4の循環流体が通過する配管系統PS4、井水が通過する配管系統PS5が示されている。配管系統PS1-配管系統PS4を井水二次側系統と称する。配管系統PS5を井水系統と称する。
【0017】
配管系統PS1-配管系統PS5には、それぞれ少なくとも1つ以上のポンプが含まれている。しかし、これに限定されることはなく、例えば、重力や水道本管の圧力によって流体を供給する場合、配管系統PS1-配管系統PS5にはポンプを含まなくてもよい。
【0018】
図1に示した例では、配管系統PS1にはポンプP1が含まれている。配管系統PS2にはポンプP2が含まれている。配管系統PS3にはポンプP3が含まれている。配管系統PS4にはポンプP4が含まれている。配管系統PS5にはポンプP5、ポンプP6、ポンプP7が含まれている。ポンプP1-P4は、配管系統PS1-配管系統PS4において各設備F1-F4の循環流体が循環するように送水している。ポンプP6は、配管系統PS5において揚水井戸W1から井水を汲み上げ、揚水槽T1に送水している。ポンプP5は、配管系統PS5において揚水槽T1に貯水された井水を第一熱交換器HEX1以降に送水している。ポンプP7は、配管系統PS5において還元水槽T2から還元井戸W2に送水している。
ここで、ポンプP7は、還元水槽T2から河川放流する場合、配管系統PS5に含まれなくてもよい。
【0019】
図1における矢印は、配管系統PS1-PS5を通過する流体の流れる向きを示している。図1に示した例では、井水は揚水井戸W1において汲み上げられ、揚水井戸W1付近においてy軸正方向に向かって配管系統PS5を通過する。また、井水は、揚水槽T1付近においてx軸正方向に向かって配管系統PS5を通過する。さらに、井水は熱交換器HEX1-HEX4付近においてx軸正方向に向かって配管系統PS5を通過する。
【0020】
図1に示すように、熱交換器HEX1-HEX4を通過した井水は、還元水槽T2付近においてx軸正方向に向かって配管系統PS5を通過する。そして、井水は還元井戸W2付近においてy軸負方向に向かって配管系統PS5を通過する。このように、井水はポンプP5及びポンプP6により、配管系統PS5を通過して、揚水井戸W1から還元井戸W2に送水される。
【0021】
一方で、図1に示すように、空調設備F1の循環流体は、空調設備F1付近においてx軸正方向に向かって配管系統PS1を通過する。また、空調設備F1の循環流体は、熱交換器HEX1付近においてx軸負方向に向かって配管系統PS1を通過する。すなわち、配管系統PS1を通過する空調設備F1の循環流体は、ポンプP1により、空調設備F1と熱交換器HEX1との間を循環している。空調設備F1は、例えば、放射空調、外調機を含む。空調設備F1の循環流体は、例えば、空調設備F1の冷却水である。
【0022】
図1に示すように、熱源設備F2の循環流体は、熱源設備F2付近においてx軸正方向に向かって配管系統PS2を通過する。また、熱源設備F2の循環流体は、熱交換器HEX2付近においてx軸負方向に向かって配管系統PS2を通過する。すなわち、配管系統PS2を通過する熱源設備F2の循環流体は、ポンプP2により、熱源設備F2と熱交換器HEX2との間を循環している。熱源設備F2は、例えば、空冷ヒートポンプ、水冷ヒートポンプ、コンプレッサー、冷却塔を含む。熱源設備F2の循環流体は、例えば、熱源設備F2の冷却水である。
【0023】
図1に示すように、燃料電池発電機F3の循環流体は、燃料電池発電機F3付近においてx軸正方向に向かって配管系統PS3を通過する。また、燃料電池発電機F3の循環流体は、熱交換器HEX3付近においてx軸負方向に向かって配管系統PS3を通過する。すなわち、配管系統PS3を通過する燃料電池発電機F3の循環流体は、ポンプP3により、燃料電池発電機F3と熱交換器HEX3との間を循環している。燃料電池発電機F3の循環流体は、例えば、燃料電池発電機F3の冷却水である。また、燃料電池発電機F3の排熱は暖房に利用してもよい。夏季においては、燃料電池発電機F3の排熱を暖房に利用することが少ないため、燃料電池発電機F3の循環流体の温度が冬季に比べて大きくなる。
【0024】
図1に示すように、給湯設備F4の循環流体は、給湯設備F4付近においてx軸正方向に向かって配管系統PS4を通過する。また、給湯設備F4の循環流体は、熱交換器HEX4付近においてx軸負方向に向かって配管系統PS4を通過する。すなわち、配管系統PS4を通過する給湯設備F4の循環流体は、ポンプP4により、給湯設備F4と熱交換器HEX4との間を循環している。給湯設備F4の循環流体は、例えば、給湯設備F4を
保温するための循環水を昇温するための流体である。
【0025】
ここで、循環流体は、熱交換器を循環している流体に限定されず、熱交換器を循環せずに通過する流体でもよい。例えば、給湯設備F4と熱交換器HEX4との間を循環せずに熱交換器HEX4付近においてx軸負方向に向かって通過して給湯設備F4に供給される補給水でもよい。
【0026】
<熱交換器>
続いて、図1を参照して、実施形態1に係る井水利用システム10における熱交換器HEX1-HEX4について説明する。第一熱交換器HEX1-第四熱交換器HEX4は、揚水槽T1と還元水槽T2との間に設けられている。第一熱交換器HEX1-第四熱交換器HEX4は、第一熱交換器HEX1、第二熱交換器HEX2、第三熱交換器HEX3、第四熱交換器HEX4の順番に、配管系統PS5により直列に接続されている。すなわち、井水は、第一熱交換器HEX1、第二熱交換器HEX2、第三熱交換器HEX3、第四熱交換器HEX4の順番に配管系統PS5を通過する。
【0027】
ここで、実施形態1に係る井水利用システム10において、第一熱交換器HEX1側を前段、第四熱交換器HEX4側を後段と称する。例えば、第二熱交換器HEX2を基準とすると、第一熱交換器HEX1が前段、第三熱交換器HEX3及び第四熱交換器HEX4が後段に該当する。
【0028】
図1を参照しながら、第一熱交換器HEX1-第四熱交換器HEX4について、詳細に説明する。ここでは、揚水井戸W1及び揚水槽T1の井水温度が約15度として説明する。すなわち、汲み上げ時の井水の温度が約15度として説明する。しかし、これに限定されることはなく、汲み上げ時の井水の温度は15度を前後しても構わない。
【0029】
まず、第一熱交換器HEX1について説明する。図1に示すように、第一熱交換器HEX1は、配管系統PS1と配管系統PS5とが接続されている。すなわち、第一熱交換器HEX1は、配管系統PS1を循環している空調設備F1の循環流体と配管系統PS5を通過する汲み上げられた井水とを熱交換する。このとき、配管系統PS1を循環している空調設備F1の循環流体は、第一熱交換器HEX1を通過することにより、約24度から約16度に冷却される。一方で、配管系統PS5を通過する汲み上げられた井水は、熱交換器HEX1を通過することにより、約15度から約23度に昇温される。
【0030】
このように、第一熱交換器HEX1は、汲み上げ時の温度を有する井水を熱交換に利用するため、自然エネルギーをそのまま冷熱として利用できる。より具体的には、第一熱交換器HEX1は、空調設備F1の循環流体と汲み上げられた井水とを熱交換して、空調設備F1の循環流体の温度を下げることができる。
【0031】
次に、第二熱交換器HEX2について説明する。図1に示すように、第二熱交換器HEX2は、配管系統PS2と配管系統PS5とが接続されている。すなわち、第二熱交換器HEX2は、配管系統PS2を循環している熱源設備F2の循環流体と第一熱交換器HEX1を通過した後の井水とを熱交換する。このとき、配管系統PS2を循環している熱源設備F2の循環流体は、第二熱交換器HEX2を通過することにより、約34度から約24度に冷却される。一方で、第一熱交換器HEX1を通過した後の井水は、第二熱交換器HEX2を通過することにより、約23度から約33度に昇温される。
【0032】
このように、実施形態1に係る井水利用システム10は、第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2とが直列に接続されているため、1つのエネルギーを2つ以上の設備に対して有効に活用できる。
【0033】
また、第二熱交換器HEX2は、第一熱交換器HEX1を通過して温度上昇した井水を熱交換に利用する。より具体的には、第二熱交換器HEX2は、熱源設備F2の循環流体と前記第一熱交換器を通過した後の温度上昇した井水とを熱交換して、熱源設備F2の循環流体の温度を下げることができる。
【0034】
次に、第三熱交換器HEX3について説明する。図1に示すように、第三熱交換器HEX3は、配管系統PS3と配管系統PS5とが接続されている。すなわち、第三熱交換器HEX3は、配管系統PS3を循環している燃料電池発電機F3の循環流体と第二熱交換器HEX2を通過した後の井水とを熱交換する。このとき、配管系統PS3を循環している燃料電池発電機F3の循環流体は、第三熱交換器HEX3を通過することにより、約63度から約53度に冷却される。一方で、第二熱交換器HEX2を通過した後の井水は、第三熱交換器HEX3を通過することにより、約33度から約34.5度に昇温される。
【0035】
このように、第三熱交換器HEX3は、第二熱交換器HEX2を通過した後の温度上昇した井水を利用する。より具体的には、第三熱交換器HEX3は、燃料電池発電機F3の循環流体と第二熱交換器HEX2を通過した後の井水とを熱交換して、燃料電池発電機F3の循環流体の温度を下げることができる。
【0036】
次に、第四熱交換器HEX4について説明する。図1に示すように、第四熱交換器HEX4は、配管系統PS4と配管系統PS5とが接続されている。すなわち、第四熱交換器HEX4は、配管系統PS4を循環している給湯設備F4の循環流体と第三熱交換器HEX3を通過した後の井水とを熱交換する。このとき、配管系統PS4を循環している給湯設備F4の循環流体は、第四熱交換器HEX4を通過することにより冷却される。給湯設備F4の循環流体における温度は、例えば、成り行きで管理される。一方で、第三熱交換器HEX3を通過した後の井水は、第四熱交換器HEX4を通過することにより、昇温される。このとき、第三熱交換器HEX3を通過した後の井水における温度は、例えば、成り行きで管理される。
【0037】
ここでは、第四熱交換器HEX4通過後の井水の温度が上昇しているが、これに限定されることはなく、井水の温度帯に対応させて、第四熱交換器HEX4通過後の井水の温度が下がり、第四熱交換器HEX4通過後の循環流体の温度が上がる構成にしてもよい。
【0038】
このように、第四熱交換器HEX4は、第二熱交換器HEX3を通過した後の温度上昇した井水を利用する。より具体的には、第四熱交換器HEX4は、給湯設備F4の循環流体と第三熱交換器HEX3を通過した後の井水とを熱交換して、給湯設備F4の循環流体の温度を昇温又は冷却することができる。
【0039】
また、実施形態1に係る井水利用システム10は、第一熱交換器HEX1-第四熱交換器HEX4を直列に接続されているため、井水が熱交換器を通過する度に温度が上昇又は下降する。そのため、実施形態1に係る井水利用システム10は、井水の温度帯に対応する熱利用先を選択し、井水の熱ポテンシャルをムダなく活用できる構成としている。すなわち、後段の熱交換器に接続されている設備における循環流体の温度は、前段の熱交換器に接続されている設備における循環流体の温度よりも高く、かつ、前段を通過した井水の温度よりも高ければよい。また、後段の熱交換器に接続されている設備における循環流体の温度は、前段の熱交換器に接続されている設備における循環流体の温度よりも低く、かつ、前段を通過した井水の温度よりも低くてもよい。したがって、熱交換器に接続される設備は、図1に示した例に限定されることはない。
【0040】
例えば、図1に示した例では、第一熱交換器HEX1の接続先は空調設備である。しかし、これに限定されることはなく、第一熱交換器HEX1の接続先を熱源設備F2としてもよい。この場合、第一熱交換器HEX1の後段に該当する第二熱交換器HEX2の接続先は、燃料電池発電機F3、給湯設備F4でもよい。
【0041】
このように、実施形態1に係る井水利用システム10は、熱交換器が直列に接続されているため、井水が熱交換器を通過する度に、井水の温度が上昇又は下降する。よって、井水の温度帯に対応する熱利用先を選択し、井水の熱ポテンシャルをムダなく活用できる。そのため、さらなる省エネルギー化が可能となる。
【0042】
図1に示した、第一熱交換器HEX1-第四熱交換器HEX4による井水及び各設備F1-F4における循環流体の温度変化は、一例である。例えば、季節によって空調負荷が変化するため、空調設備F1の循環流体の温度は変化する。
【0043】
図1に示した例では、井水利用システム10は、第一熱交換器HEX1-第四熱交換器HEX4が直列に接続されている。しかし、これに限定されることはなく、井水利用システム10は、第三熱交換器HEX3及び第四熱交換器HEX4を含まず、第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2が直列に接続された構成でもよい。
【0044】
井水利用システム10は、マンションや高層ビルに限定されることはなく、複数のエネルギーを多く利用する建物、例えば、工場、データセンタに利用してもよい。
【0045】
(実施形態2)
<井水利用システム>
次に、図2を参照して、実施形態2に係る井水利用システムの構成を説明する。図2は実施形態2に係る井水利用システム20の概要フロー図である。図2に示した例では、井水利用システム20は、第三熱交換器HEX3及び第四熱交換器HEX4が省略されているが、第三熱交換器HEX3及び第四熱交換器HEX4が第二熱交換器HEX2の後段に接続されている(図1参照)。しかし、これに限定されることはなく、実施形態2に係る井水利用システム20は、第三熱交換器HEX3及び第四熱交換器HEX4を含まなくてもよい。
【0046】
実施形態2に係る井水利用システム20は、実施形態1に係る井水利用システム10と比べて、第一熱交換器HEX1付近が異なる。それ以外の構成は、実施形態1に係る井水利用システム10と同様であるため、説明を省略する。ここでは、第一熱交換器HEX1付近におけるバルブV1-バルブV3、配管系統PS51-PS54について説明する。
【0047】
図2に示すように、配管系統PS5は、第一熱交換器HEX1の直前で配管系統PS51と配管系統PS52とに分岐する。井水は、x軸正方向に向かって配管系統PS51又は配管系統PS52を通過する。すなわち、配管系統PS52は、汲み上げた井水が第一熱交換器HEX1を通過せず、第二熱交換器HEX2を通過するようにするためのバイパス配管系統である。
【0048】
また、図2に示すように、配管系統PS51は、第二熱交換器HEX2の直前で配管系統PS53と配管系統PS54とに分岐する。井水は、x軸正方向に向かって配管系統PS53又は配管系統PS54を通過する。すなわち、配管系統PS54は、第一熱交換器HEX1を通過した井水が第二熱交換器HEX2を通過せずに第三熱交換器HEX3(図2では図示を省略)を通過するようにするためのバイパス配管系統である。
【0049】
図2に示すように、バルブV1は、第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2との間における配管系統PS52に設けられている。バルブV2は、第一熱交換器HEX1と第三熱交換器HEX3(図2では図示を省略)との間における配管系統PS54に設けられている。バルブV3は、第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2との間における配管系統PS53に設けられている。
【0050】
次に、バルブV1-バルブV3を用いて、第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2との接続を直列接続から並列接続に切り替える機構について説明する。
第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2との接続が直列接続である場合、バルブV1、バルブV2は閉状態であり、バルブV3は開状態である。このとき、揚水槽T1からの井水は、配管系統PS51及び配管系統PS53を通過することで、第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2とを通過する。
【0051】
一方で、第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2との接続が並列接続である場合、バルブV1、バルブV2は開状態であり、バルブV3は閉状態である。このとき、揚水槽T1からの井水は、配管系統PS52及び配管系統PS53を通過することで、第一熱交換器HEX1を通過せず、第二熱交換器HEX2を通過する。また、揚水槽T1からの井水は、配管系統PS51及び配管系統PS54を通過することで、第一熱交換器HEX1を通過するが、第二熱交換器HEX2を通過しない。すなわち、第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2との接続が並列接続である場合、第一熱交換器HEX1を通過した井水と第二熱交換器HEX2を通過した井水とが合流して、第三熱交換器HEX3(図2では図示を省略)を通過する。
【0052】
換言すると、バルブV1-バルブV3の開閉状態を逆の状態にすることで、第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2との接続を直列接続から並列接続に切り替えることができる。つまり、バルブを設けることにより第一熱交換器HEX1を迂回(バイパス)する配管系統を設けることができる。これにより、揚水槽T1に貯水された井水を、第一熱交換器HEX1を通過せずに、第二熱交換器HEX2に供給できる。すなわち、汲み上げ時の温度を有する井水を第二熱交換器HEX2に供給できる。
【0053】
このように、実施形態2に係る井水利用システム20は、切替機構に備えられたバルブV1-バルブV3の開閉状態を逆の状態にすることで、第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2との接続を直列接続から並列接続に切り替えることができる。よって、汲み上げ時の温度を有する井水を第二熱交換器HEX2に供給できるため、第二熱交換器HEX2の熱交換率を高めることができる。
【0054】
図2に示した例では、井水が第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2との接続を直列接続から並列接続に切替できる切替機構を説明した。しかし、これに限定されることはなく、実施形態2に係る井水利用システム20は、井水が第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2と第三熱交換器HEX3(図2では図示を省略)とを通過する直列接続された配管系統から、第一熱交換器HEX1及び第二熱交換器HEX2を迂回して第三熱交換器HEX3(図2では図示を省略)を通過する配管系統と第一熱交換器HEX1及び第二熱交換器HEX2を通過するが、第三熱交換器HEX3(図2では図示を省略)を通過しない配管系統とが並列に接続された配管系統に切り替えることができる切替機構を備えてもよい。
【0055】
さらに、実施形態2に係る井水利用システム20は、井水が第一熱交換器HEX1と第二熱交換器HEX2との接続を直列接続から並列接続に切替できる第一の切替機構と、井水が第三熱交換器HEX3と第四熱交換器HEX4との接続を直列接続から並列接続に切替できる第二の切替機構と、を備えてもよい。
【0056】
(実施形態3)
<井水利用システム>
次に、図3を参照して、実施形態3に係る井水利用システムの構成を説明する。図3は実施形態3に係る井水利用システム30の概要フロー図である。図3に示した例では、井水利用システム30は、第三熱交換器HEX3及び第四熱交換器HEX4が省略されているが、第三熱交換器HEX3及び第四熱交換器HEX4が第二熱交換器HEX2の後段に接続されている(図1参照)。しかし、これに限定されることはなく、実施形態3に係る井水利用システム30は、第三熱交換器HEX3及び第四熱交換器HEX4を含まなくてもよい。
【0057】
実施形態3に係る井水利用システム30は、実施形態1に係る井水利用システム10における第二熱交換器HEX2付近が異なる。それ以外の構成は、実施形態1に係る井水利用システム10と同様であるため、説明を省略する。ここでは、第二熱交換器HEX2付近におけるバルブV5及びバルブV6、配管系統PS61及び配管系統PS62について説明する。
【0058】
図3に示すように、配管系統PS5は、第二熱交換器HEX2の直後で配管系統PS61と配管系統PS62とに分岐する。井水は、配管系統PS61又は配管系統PS62を通過する。井水は、x軸正方向に向かって配管系統PS62を通過する。一方で、井水は、x軸負方向に向かって配管系統PS61を通過する。すなわち、配管系統PS61は、第二熱交換器HEX2を通過した井水が揚水槽T1に戻る配管系統である。
【0059】
図3に示すように、バルブV5は、配管系統PS61において第二熱交換器HEX2と第三熱交換器HEX3(図3では図示を省略)との間に設けられている。一方で、バルブV6は、配管系統PS62において第二熱交換器HEX2と第三熱交換器HEX3(図3では図示を省略)との間に設けられている。
【0060】
次に、バルブV5及びバルブV6を用いて、配管系統PS61と配管系統PS62との切替について説明する。第二熱交換器HEX2を通過した井水は、配管系統PS62を通過することで、第三熱交換器HEX3(図3では図示を省略)を通過する。このとき、配管系統PS62におけるバルブV6は開状態である。一方で、配管系統PS61におけるバルブV5は閉状態である。
【0061】
第二熱交換器HEX2を通過した井水は、配管系統PS61を通過することで、第三熱交換器HEX3を通過せず、揚水槽T1に戻る。配管系統PS61におけるバルブV5を通過した井水は、第2熱交換器HEX2、及び第1熱交換器HEX1を通過せずに、揚水槽T1に戻る。このとき、配管系統PS62におけるバルブV6は閉状態である。一方で、配管系統PS61におけるバルブV5は開状態である。
【0062】
すなわち、バルブV5及びバルブV6の開閉状態を逆の状態にすることで、配管系統PS61と配管系統PS62とを切り替えることができる。このような切替機構を設けることにより、第二熱交換器HEX2を通過した井水を揚水槽T1に戻すことができる。これにより、熱源設備F2の循環流体の温度と第二熱交換器HEX2を通過する井水の温度とがほぼ同等である場合に、井水を揚水槽T1に戻して再利用できる。より具体的には、熱源設備F2が暖房運転などによって、循環流体の温度が低く、第二熱交換器HEX2を通過する井水を汲み上げ時の温度とほぼ同等まで下げる場合に、井水を揚水槽T1に戻して再利用できる。
【0063】
ここでは、第二熱交換器HEX2を通過した井水を揚水槽T1に戻す説明をしたが、これに限定されることはなく、第二熱交換器HEX2を通過した井水を配管系統PS5における第一熱交換器HEX1の直前に戻してもよい。
【0064】
このように、実施形態3に係る井水利用システム30は、第二熱交換器HEX2を通過した井水を揚水槽T1に戻すことができる切替機構が備えられている。よって、第二熱交換器HEX2を通過した井水は、第三熱交換器HEX3に向かって流れず、揚水槽T1に戻るので井水を再利用できる。換言すると、第二熱交換器を通過した井水を、汲み上げられた井水に混ぜ合わせて第一熱交換器の熱交換に再利用する機構を有する。
【0065】
図3に示した例では、第二熱交換器HEX2を通過した井水を揚水槽T1に戻すことができる切替機構を説明した。しかし、これに限定されることはなく、実施形態3に係る井水利用システム30は、第三熱交換器HEXを通過した井水を揚水槽T1に戻すことができる切替機構を備えてもよい。さらに、実施形態3に係る井水利用システム30は、第二熱交換器HEX2を通過した井水を揚水槽T1に戻すことができる第一の切替機構と、第三熱交換器HEX3を通過した井水を揚水槽T1に戻すことができる第二の切替機構と、を備えてもよい。
【0066】
上述の例において、井水利用システム10、20、30では、第一熱交換器HEX1、第二熱交換器HEX2、第三熱交換器HEX3、第四熱交換器HEX4の4つの熱交換器を含むが、これに限定されることはなく、4つ以上の熱交換器を含んでもよい。
【0067】
なお、本開示は、上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
10、20、30 井水利用システム
F1 空調設備
F2 熱源設備
F3 燃料電池発電機
F4 給湯設備
HEX1、HEX2、HEX3、HEX4 熱交換器
P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7 ポンプ
PS1、PS2、PS3、PS4、PS5、PS51、PS52、PS53、PS54、PS61、PS62 配管系統
T1 揚水槽
T2 還元水槽
V1、V2、V3、V5、V6 バルブ
W1 揚水井戸
W2 還元井戸
図1
図2
図3