(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061250
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/25 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
G01B5/25
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169081
(22)【出願日】2022-10-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】300033267
【氏名又は名称】ダイセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 亮
(72)【発明者】
【氏名】森口 剛介
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA01
2F062AA76
2F062CC22
2F062EE66
2F062GG18
2F062GG41
2F062GG51
(57)【要約】
【課題】内周面の仮想中心と複数の溝部の仮想中心との
同芯度を容易に測定することが可能な測定装置を提供する。
【解決手段】測定装置100は、内周面を測定するための複数の変位センサ2と、溝部を測定するための複数の変位センサ3と、変位センサ2および3が設けられる本体部1とを備える。変位センサ2が周方向に間隔を隔てて配置されるとともに、変位センサ3が周方向に間隔を隔てて配置されており、変位センサ2および3が周方向において交互に配置されている。本体部1は、外輪が嵌め合わされるヘッド1aを有する。測定装置100は、ヘッド1aに外輪が嵌め合わされた状態で、変位センサ2による測定が行われるとともに、変位センサ3による測定が行われるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
等速ジョイントの外輪の内周面を複数箇所で測定するとともに、前記内周面に形成された複数の溝部を測定して、前記内周面の仮想中心と前記複数の溝部の仮想中心との同芯度を測定するための測定装置であって、
前記内周面を測定するための複数の第1変位センサと、
前記溝部を測定するための複数の第2変位センサと、
前記複数の第1変位センサおよび前記複数の第2変位センサが設けられる本体部とを備え、
前記複数の第1変位センサが周方向に間隔を隔てて配置されるとともに、前記複数の第2変位センサが周方向に間隔を隔てて配置されており、前記第1変位センサと前記第2変位センサとが周方向において交互に配置され、
前記本体部は、前記外輪が嵌め合わされる嵌合軸部を有し、
前記嵌合軸部に前記外輪が嵌め合わされた状態で、前記複数の第1変位センサによる測定が行われるとともに、前記複数の第2変位センサによる測定が行われるように構成されていることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置において、
前記複数の第2変位センサのそれぞれに対応するように球体およびレバーが設けられ、
前記球体は、前記嵌合軸部に径方向に移動可能に設けられ、
前記レバーは前記本体部に傾動可能に設けられており、前記レバーの上端部が前記球体の径方向内側に配置され、前記レバーの下端部が前記第2変位センサの径方向内側に配置され、
前記第1変位センサが前記嵌合軸部に配置され、前記第2変位センサが前記嵌合軸部の下方に配置されていることを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測定装置において、
前記レバーは、板ばねを介して前記本体部に取り付けられていることを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の測定装置において、
前記レバーは、上端部と下端部との間の中間位置に傾動支点が配置されていることを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の測定装置において、
前記複数の第1変位センサの測定結果から前記内周面の仮想中心を算出するとともに、前記複数の第2変位センサの測定結果から前記複数の溝部の仮想中心を算出するコンピュータを備え、
前記コンピュータは、算出された内周面の仮想中心と複数の溝部の仮想中心とに基づいて同芯度を測定するように構成されていることを特徴とする測定装置。
【請求項6】
等速ジョイントの外輪の内周面を複数箇所で測定するとともに、前記内周面に形成された複数の溝部を測定して、前記内周面の仮想中心と前記複数の溝部の仮想中心との同芯度を測定する測定方法であって、
測定装置の嵌合軸部に前記外輪を嵌め合わせるステップと、
前記嵌合軸部に前記外輪が嵌め合わされた状態で、前記測定装置に周方向に間隔を隔てて設けられた複数の第1変位センサにより前記内周面を測定するとともに、前記測定装置に周方向に間隔を隔てて前記第1変位センサと交互に設けられた複数の第2変位センサにより前記複数の溝部を測定するステップと、
前記測定装置のコンピュータにより、前記複数の第1変位センサの測定結果から前記内周面の仮想中心を算出するとともに、前記複数の第2変位センサの測定結果から前記複数の溝部の仮想中心を算出するステップと、
前記コンピュータにより、算出された内周面の仮想中心と複数の溝部の仮想中心とに基づいて同芯度を測定するステップとを備えることを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、等速ジョイントの外輪を測定する測定装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の測定装置は、ダイヤルゲージを外輪の内部に挿入して、外輪の内部寸法を測定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記した従来の測定装置では、外輪の複数箇所を測定しようとすると、ダイヤルゲージの向きを変更させる必要があり、測定作業が煩雑になることが考えられる。また、外輪の内周面の仮想中心と、外輪の内周面に形成された複数の溝部の仮想中心との同芯度を測定可能な測定装置が望まれている。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、内周面の仮想中心と複数の溝部の仮想中心との同芯度を容易に測定することが可能な測定装置および測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による測定装置は、等速ジョイントの外輪の内周面を複数箇所で測定するとともに、内周面に形成された複数の溝部を測定して、内周面の仮想中心と複数の溝部の仮想中心との同芯度を測定するためのものである。測定装置は、内周面を測定するための複数の第1変位センサと、溝部を測定するための複数の第2変位センサと、複数の第1変位センサおよび複数の第2変位センサが設けられる本体部とを備える。複数の第1変位センサが周方向に間隔を隔てて配置されるとともに、複数の第2変位センサが周方向に間隔を隔てて配置されており、第1変位センサと第2変位センサとが周方向において交互に配置されている。本体部は、外輪が嵌め合わされる嵌合軸部を有する。測定装置は、嵌合軸部に外輪が嵌め合わされた状態で、複数の第1変位センサによる測定が行われるとともに、複数の第2変位センサによる測定が行われるように構成されている。
【0008】
このように構成することによって、嵌合軸部に外輪が嵌め合わされることにより、内周面の複数箇所が測定されるとともに、複数の溝部が測定されるので、内周面の仮想中心と複数の溝部の仮想中心との同芯度を容易に測定することができる。
【0009】
上記測定装置において、複数の第2変位センサのそれぞれに対応するように球体およびレバーが設けられ、球体は、嵌合軸部に径方向に移動可能に設けられ、レバーは本体部に傾動可能に設けられており、レバーの上端部が球体の径方向内側に配置され、レバーの下端部が第2変位センサの径方向内側に配置され、第1変位センサが嵌合軸部に配置され、第2変位センサが嵌合軸部の下方に配置されていてもよい。
【0010】
上記レバーが設けられる測定装置において、レバーは、板ばねを介して本体部に取り付けられていてもよい。
【0011】
上記板ばねが設けられる測定装置において、レバーは、上端部と下端部との間の中間位置に傾動支点が配置されていてもよい。
【0012】
上記測定装置において、複数の第1変位センサの測定結果から内周面の仮想中心を算出するとともに、複数の第2変位センサの測定結果から複数の溝部の仮想中心を算出するコンピュータを備え、コンピュータは、算出された内周面の仮想中心と複数の溝部の仮想中心とに基づいて同芯度を測定するように構成されていてもよい。
【0013】
本発明による測定方法は、等速ジョイントの外輪の内周面を複数箇所で測定するとともに、内周面に形成された複数の溝部を測定して、内周面の仮想中心と複数の溝部の仮想中心との同芯度を測定するものである。測定方法は、測定装置の嵌合軸部に外輪を嵌め合わせるステップと、嵌合軸部に外輪が嵌め合わされた状態で、測定装置に周方向に間隔を隔てて設けられた複数の第1変位センサにより内周面を測定するとともに、測定装置に周方向に間隔を隔てて第1変位センサと交互に設けられた複数の第2変位センサにより複数の溝部を測定するステップと、測定装置のコンピュータにより、複数の第1変位センサの測定結果から内周面の仮想中心を算出するとともに、複数の第2変位センサの測定結果から複数の溝部の仮想中心を算出するステップと、コンピュータにより、算出された内周面の仮想中心と複数の溝部の仮想中心とに基づいて同芯度を測定するステップとを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の測定装置および測定方法によれば、内周面の仮想中心と複数の溝部の仮想中心との同芯度を容易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の測定装置を示した斜視図である。
【
図2】
図1の測定装置において変位センサ3を含む面で切断した断面図である。
【
図3】
図1の測定装置において変位センサ2を含む面で切断した断面図である。
【
図4】
図1の測定装置のレバーを説明するための分解斜視図である。
【
図5】
図1の測定装置により測定される等速ジョイントの外輪を軸方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0017】
まず、
図1~
図5を参照して、本発明の一実施形態による測定装置100の構造について説明する。
【0018】
測定装置100は、等速ジョイントの外輪150(
図5参照)を測定するものである。外輪150は、
図5に示すように、円筒状に形成され、内周面151を有する。内周面151には、6個の溝部152が形成されている。6個の溝部152は、軸方向に延びるように形成され、周方向に間隔を隔てて配置されている。そして、測定装置100は、内周面151を6箇所で測定するとともに、6個の溝部152を測定して、内周面151の仮想中心と6個の溝部152の仮想中心との同芯度を測定するように構成されている。
【0019】
測定装置100は、
図1に示すように、本体部1と、6個の変位センサ2と、6個の変位センサ3と、コンピュータ(図示省略)とを備えている。6個の変位センサ2および3が本体部1に設けられ、6個の変位センサ2および3の測定結果がコンピュータに入力されるようになっている。なお、変位センサ2および3は、それぞれ、本発明の「第1変位センサ」および「第2変位センサ」の一例である。
【0020】
本体部1は、台座11と、軸部材12(
図2および
図3参照)と、ヘッド下側部材13と、ヘッド上側部材14と、円筒部材15とを含んでいる。台座11は、円板状に形成されている。軸部材12は、
図2および
図3に示すように、台座11の中央に取り付けられ、台座11から上方に延びるように形成されている。ヘッド下側部材13は、軸部材12の上端部に取り付けられている。ヘッド上側部材14は、ヘッド下側部材13の上側に組み付けられている。ヘッド下側部材13およびヘッド上側部材14は、測定時に外輪150が嵌め合わされる円柱状のヘッド1aを構成している。円筒部材15は、台座11に取り付けられ、軸部材12を取り囲むように配置されている。なお、ヘッド1aは、本発明の「嵌合軸部」の一例である。
【0021】
図1および
図3に示すように、6個の変位センサ2は、内周面151を測定するために設けられている。具体的に、6個の変位センサ2は、内周面151における溝部152間の6箇所の位置情報D1(
図5参照)を算出するために設けられている。すなわち、6個の変位センサ2は、内周面151の6箇所の内径(半径)の寸法を測るために設けられている。6個の変位センサ2は、ヘッド1aに配置され、周方向に間隔を隔てて配置されている。各変位センサ2は、測定子2aが径方向外側を向くように配置され、各測定子2aは、ヘッド1aの外周から径方向外側に張り出すように配置されている。各変位センサ2としては、たとえば、差動トランス式電気マイクロ検出器やリニアゲージを使用可能である。
【0022】
図1および
図2に示すように、6個の変位センサ3は、溝部152を測定するために設けられている。具体的に、6個の変位センサ3は、6個の溝部152に後述する6個の球体31が嵌合されたときの中心の位置情報D2(
図5参照)を算出するために設けられている。すなわち、6個の変位センサ3は、6個の球体31の中心までの距離を測るために設けられている。6個の変位センサ3は、ヘッド1aの下方に配置され、周方向に間隔を隔てて配置されている。また、変位センサ2および3は、周方向において交互に配置されている。各変位センサ3としては、たとえば、差動トランス式電気マイクロ検出器やリニアゲージを使用可能である。
【0023】
ここで、6個の変位センサ3のそれぞれに対応するように球体31およびレバー32が設けられている。球体31は、レバー32と別体であり、レバー32と連結されていない。球体31は、
図2に示すように、収容室16に径方向に移動可能に設けられている。収容室16は、ヘッド1aに形成され、周方向において変位センサ2と交互に設けられている。収容室16の径方向外側が開放されており、その開口から球体31が露出されている。この開口から露出される球体31は、変位センサ2の測定子2aよりも径方向外側に配置されている。開口の下部には、球体31の脱落防止用の爪部16aが形成されている。また、収容室16の径方向内側は、ヘッド下側部材13に形成された挿通孔13aと連通されている。挿通孔13aは、ヘッド下側部材13を上下方向に貫通するように形成されている。
【0024】
レバー32は、上下方向に延びる棒状に形成され、球体31の変位を変位センサ3に伝達するために設けられている。レバー32は、板ばね33を介して軸部材12に取り付けられ、傾動可能に構成されている。具体的には、
図4に示すように、軸部材12に取付面12aが形成されている。取付面12aは、周方向に連なるように6個設けられている。板ばね33は、固定片33aおよび可動片33bを有し、可動片33bが固定片33aの上方に配置されている。板ばね33では、固定片33aおよび可動片33bの境界部が傾動支点33cとなる。なお、板ばね33の変形前の状態では、固定片33aおよび可動片33bが真っ直ぐに連なるように形成されている。
【0025】
固定片33aは、固定部材34により取付面12aに固定されている。固定部材34は、ボルト34aによって取付面12aに締結されている。すなわち、ボルト34aの軸部が取付面12aのボルト孔に締め付けられることにより、固定片33aおよび固定部材34がボルト34aの頭部と取付面12aとの間に挟持されている。また、位置決めピン34bにより、取付面12aに対する固定片33aおよび固定部材34の位置が決められている。可動片33bは、ボルト35aおよび板ナット35を用いてレバー32に取り付けられている。すなわち、ボルト35aの軸部が板ナット35のボルト孔に締め付けられることにより、可動片33bおよびレバー32がボルト35aの頭部と板ナット35との間に挟持されている。
【0026】
そして、
図2に示すように、レバー32の上部側は挿通孔13aに挿通され、レバー32の上端部32aが収容室16に配置されている。レバー32の上端部32aは、球体31の径方向内側に配置され、基準位置の球体31と当接されている。基準位置は、測定が行われていないときに球体31が位置する位置であり、球体31の径方向に移動可能な範囲における最も径方向外側の位置である。このとき、板ばね33は、弾性変形されていない。すなわち、球体31は、付勢されておらず、レバー32と隙間なく設けられている。上端部32aの径方向内側には、空間S1が形成されている。空間S1は、レバー32が傾動される際に上端部32aを逃がすために設けられている。
【0027】
レバー32の下部側は、軸部材12と円筒部材15との間に配置されている。レバー32の下端部32bは、変位センサ3の径方向内側に配置されている。変位センサ3は、円筒部材15の切欠き15aに配置され、測定子3aが径方向内側を向くように配置されている。測定子3aには、レバー32の下端部32bが当接されている。下端部32bの径方向外側には、空間S2が形成されている。空間S2が設けられることにより、レバー32が傾動される際に下端部32bによって測定子3aを押すことが可能である。
【0028】
また、レバー32は、上端部32aと下端部32bとの間の中間位置に傾動支点33c(
図4参照)が配置されている。すなわち、レバー32が球体31と接触する高さ位置と傾動支点33cの高さ位置との距離、および、レバー32が変位センサ3と接触する高さ位置と傾動支点33cの高さ位置との距離が同じになるように設定されている。このため、レバー32が傾動される際における上端部32aの変位量と下端部32bの変位量とが同じになるようにされている。
【0029】
コンピュータは、変位センサ2を用いて内周面151の内径寸法を測定し、その内径寸法に基づいて内周面151の仮想中心を算出するように構成されている。すなわち、コンピュータは、6個の変位センサ2の測定結果から内周面151の仮想中心を算出するように構成されている。具体的には、変位センサ2の角度(測定装置100における配置位置)およびその変位センサ2の測定結果(測定装置100の基準位置(たとえば軸中心)から内周面151までの距離)に基づいて、内周面151の位置情報D1(
図5参照)が算出される。この位置情報D1の算出が6個の変位センサ2毎に行われ、その6個の位置情報D1を用いて内周面151の仮想中心(6個の位置情報D1を通る円の中心位置)が算出される。なお、位置情報D1は、ヘッド1aの軸方向と直交する平面内における二次元の位置情報である。
【0030】
また、コンピュータは、変位センサ3を用いて溝径ボール中心寸法を測定し、その溝径ボール中心寸法に基づいて溝部152の仮想中心を算出するように構成されている。すなわち、コンピュータは、6個の変位センサ3の測定結果から6個の溝部152の仮想中心を算出するように構成されている。具体的には、変位センサ3の角度(測定装置100における配置位置)およびその変位センサ3の測定結果(測定装置100の基準位置(たとえば軸中心)から球体31の中心までの距離)に基づいて、溝部152に関する位置情報D2(
図5参照)が算出される。この位置情報D2の算出が6個の変位センサ3毎に行われ、その6個の位置情報D2を用いて6個の溝部152の仮想中心(6個の位置情報D2を通る円の中心位置)が算出される。なお、位置情報D2は、ヘッド1aの軸方向と直交する平面内における二次元の位置情報である。
【0031】
そして、コンピュータは、算出された内周面151の仮想中心と6個の溝部152の仮想中心とに基づいて同芯度を測定するように構成されている。内周面151の仮想中心と6個の溝部152の仮想中心との同芯度は、たとえば、溝部152の加工精度を評価するのに用いられる。
【0032】
-測定方法-
次に、
図1~
図5を参照して、本実施形態の測定装置100の動作(測定方法)について説明する。
【0033】
まず、測定装置100のヘッド1a(
図1参照)に等速ジョイントの外輪150(
図5参照)が嵌め合わされる。これにより、外輪150の内周面151が6箇所で測定されるとともに、外輪150の6個の溝部152が測定される。
【0034】
具体的には、ヘッド1aに外輪150が嵌め合わされると、内周面151が変位センサ2の測定子2a(
図3参照)に当接され、内周面151によって測定子2aが径方向内側に変位される。
【0035】
また、ヘッド1aに外輪150が嵌め合わされると、溝部152が球体31(
図2参照)に当接され、溝部152によって球体31が基準位置から径方向内側に変位される。この球体31の移動により、板ばね33(
図4参照)の付勢力に抗してレバー32(
図2参照)が傾動される。すなわち、上端部32aが径方向内側に移動するとともに、下端部32bが径方向外側に移動するように、傾動支点33cを支点としてレバー32が傾動される。このため、レバー32の下端部32bによって測定子3a(
図2参照)が径方向外側に変位される。
【0036】
そして、測定子2aの変位に基づき内周面151が測定されるとともに、測定子3aの変位に基づき溝部152(球体31の中心)が測定される。その変位センサ2および3の測定結果がコンピュータ(図示省略)に入力される。
【0037】
コンピュータでは、変位センサ2の角度および測定結果に基づいて、内周面151の位置情報D1(
図5参照)が算出される。この位置情報D1の算出は6個の変位センサ2毎に行われ、その6個の位置情報D1を用いて内周面151の仮想中心が算出される。
【0038】
また、コンピュータでは、変位センサ3の角度および測定結果に基づいて、溝部152に関する位置情報D2(
図5参照)が算出される。この位置情報D2の算出は6個の変位センサ3毎に行われ、その6個の位置情報D2を用いて6個の溝部152の仮想中心が算出される。
【0039】
次に、コンピュータでは、内周面151の仮想中心と6個の溝部152の仮想中心とに基づいて同芯度が測定される。たとえば、同芯度が高い場合には、溝部152の加工精度が高いと判定され、同芯度が低い場合には、溝部152の加工精度が低いと判定される。
【0040】
なお、測定が行われた後に、外輪150がヘッド1aから抜き取られると、板ばね33の付勢力により球体31が基準位置に戻される。また、測定子2aおよび3aも元の位置に戻される。
【0041】
-効果-
本実施形態では、上記のように、ヘッド1aに外輪150が嵌め合わされることによって、内周面151の6箇所が測定されるとともに、6個の溝部152が測定されるので、内周面151の仮想中心と6個の溝部152の仮想中心との同芯度を容易に測定することができる。また、内周面151の測定と溝部152の測定とが同時に行われるので、同芯度の測定精度の向上を図ることができる。
【0042】
また、本実施形態では、球体31およびレバー32が設けられることによって、変位センサ3をヘッド1aの下方に配置することができる。
【0043】
また、本実施形態では、レバー32が板ばね33を介して軸部材12に取り付けられることによって、球体31を容易に基準位置に戻すことができる。
【0044】
また、本実施形態では、レバー32の傾動支点33cが中間位置に配置されることによって、球体31が変位した分だけ測定子3aを変位させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、球体31がレバー32と連結されていないことによって、球体31が溝部152の断面形状に倣って嵌りやすくなり、球体31を溝部152に対して二点で適切に接触させやすくすることができる。
【0046】
-他の実施形態-
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0047】
たとえば、上記実施形態では、外輪150の内周面151に6個の溝部152が形成される例を示したが、これに限らず、外輪の内周面に形成される溝部の数は複数であればいくつであってもよい。また、内周面を測定するための変位センサの数も複数であればいくつであってもよく、溝部を測定するための変位センサの数も複数であればいくつであってもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、溝部152を測定するための変位センサ3がヘッド1aの下方に配置される例を示したが、これに限らず、溝部を測定するための変位センサがヘッドに配置されていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、内周面151を測定するための変位センサ2がヘッド1aに配置される例を示したが、これに限らず、内周面を測定するための変位センサがヘッドの下方に配置されていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、レバー32が板ばね33を介して本体部1に取り付けられる例を示したが、これに限らず、レバーが本体部に回動可能に設けられ、そのレバーが付勢部材(図示省略)によって付勢されるようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、球体31の変位をそのまま変位センサ3に伝達するようにレバー32が構成される例を示したが、これに限らず、球体の変位を増加または減少させて変位センサに伝達するようにレバーが構成されていてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、球体31とレバー32とが連結されていない例を示したが、これに限らず、球体とレバーとが連結されていてもよい。この場合、複数組の球体およびレバーのうちの全部が連結されていてもよいし、複数組の球体およびレバーのうちの一部のみが連結されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、等速ジョイントの外輪を測定する測定装置および測定方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 本体部
1a ヘッド(嵌合軸部)
2 変位センサ(第1変位センサ)
3 変位センサ(第2変位センサ)
31 球体
32 レバー
33 板ばね
33c 傾動支点
100 測定装置
150 外輪
151 内周面
152 溝部