(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061258
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】光学フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240425BHJP
B29C 55/02 20060101ALI20240425BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20240425BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240425BHJP
【FI】
G02B5/30
B29C55/02
H10K50/00
H10K50/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169098
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友寄 隆太
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】西條 幸雄
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F210
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149BA02
2H149BA12
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FB05
2H149FD17
2H149FD18
2H149FD21
2H149FD46
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC45
3K107EE26
3K107FF00
3K107FF16
3K107FF17
3K107GG28
4F210AG01
4F210AG03
4F210AH73
4F210QC01
4F210QD01
4F210QG01
(57)【要約】
【課題】 偏光子を含むフィルム原反に対して比較的短時間で加湿処理を完了できる方法を提供する。
【解決手段】 偏光子を含むフィルム原反1を加湿することにより、調湿された光学フィルムを製造する方法であって、前記偏光子を有するフィルム原反1に対して、35℃以上且つ80%RH以上の水蒸気を、0.5kPa以上の圧力で吹き付ける。例えば、前記水蒸気を吹付け部7の弧状面部711から前記フィルム原反1に吹き付けることにより、前記フィルム原反1の張力と前記水蒸気の吹き付け圧力が拮抗して、前記フィルム原反1は前記弧状面部711から離れつつ前記弧状面部711に沿って搬送される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子を含むフィルム原反を加湿することにより、調湿された光学フィルムを製造する方法であって、
前記偏光子を有するフィルム原反に対して、35℃以上且つ80%RH以上の水蒸気を、0.5kPa以上の圧力で吹き付ける、光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記偏光子が、染色され且つ延伸された親水性ポリマーフィルムである、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記フィルム原反が、前記偏光子と、前記偏光子に積層された保護フィルムと、を有する、請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記フィルム原反に対して前記圧力の水蒸気を吹き付ける時間が、10秒以上である、1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記フィルム原反を、所定の雰囲気温度に調整されたチャンバー内に導き、
前記チャンバー内において前記フィルム原反を搬送している間に、前記フィルム原反に対して前記圧力の水蒸気を吹き付ける、請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記チャンバー内の雰囲気温度が、前記水蒸気の温度-5℃以上且つ前記水蒸気の温度+20℃以下の範囲である、請求項5に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記フィルム原反に前記水蒸気を吹き付ける前まで、前記フィルム原反を前記チャンバー内において3秒以上搬送する、請求項6に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記チャンバー内に、複数の吐出孔が形成された弧状面部を有する吹付け部が配置され、
前記フィルム原反を緊張状態で前記弧状面部に沿って搬送している間に、前記吐出孔から前記水蒸気を前記フィルム原反に吹き付けることにより、前記フィルム原反の張力と前記水蒸気の吹き付け圧力が拮抗して、前記フィルム原反が前記弧状面部から離れつつ前記弧状面部に沿って搬送される、請求項5に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記チャンバー内に、複数の点状の吐出孔が形成された平坦面部を有する吹付け部が配置され、
前記フィルム原反を緊張状態で前記吹付け部に沿って搬送している間に、前記水蒸気を、前記吐出孔から前記フィルム原反の一方面に対して鉛直方向に吹き付ける、請求項5に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記フィルム原反が、前記偏光子と、前記偏光子の一方面及びその反対面にそれぞれ積層された第1フィルム及び第2フィルムと、を有し、
前記第1フィルムの透湿度が、前記第2フィルムの透湿度よりも高く、
前記水蒸気を、少なくとも前記第1フィルム側から吹き付ける、請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子を含む光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置や偏光サングラスなどの構成材料として、偏光子を含む光学フィルムが使用されている。前記光学フィルムとしては、例えば、偏光子に保護フィルムが積層された積層フィルム、偏光子に位相差フィルムが積層された積層フィルムなどが挙げられる。
前記光学フィルムは、偏光子を含むフィルム原反に対して任意の処理を施して製造されるが、その処理の1つとして、フィルム原反に加湿処理を行うことが知られている。
例えば、特許文献1には、フィルム原反(原料フィルム)の水分率を調整するため、前記フィルム原反を調湿炉の内部に導き、前記調湿炉内の加湿雰囲気下で前記フィルム原反を搬送することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
前記のように、フィルム原反に加湿処理を行うことにより、経時的に湾曲し難い光学フィルムを製造できる。
しかしながら、特許文献1の加湿方法にあっては、フィルム原反に所定量の水分を含有させるために、比較的長い時間が必要となる。加湿処理が長時間となると、光学フィルムの製造効率が悪くなるだけでなく、装置の大型化を招く。
また、加湿処理時に、偏光子を含むフィルム原反が結露すると、外観不良の光学フィルムが得られるおそれがある。
なお、特許文献1には、調湿炉の外壁面が結露することを防止する方法が開示されている。しかし、特許文献1には、フィルム原反が調湿炉内で結露することを防止するための方法については、一切開示又は示唆されていない。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、偏光子を含むフィルム原反に対して比較的短時間で加湿処理を行うことができる方法を提供することである。
本発明の第2の目的は、加湿処理時にフィルム原反が結露することを防止して、光学特性に優れた光学フィルムを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る光学フィルムの製造方法は、偏光子を含むフィルム原反を加湿することにより、調湿された光学フィルムを製造する方法であって、前記偏光子を有するフィルム原反に対して、35℃以上且つ80%RH以上の水蒸気を、0.5kPa以上の圧力で吹き付ける。
【0007】
本発明の第2の態様に係る光学フィルムの製造方法は、上記第1の態様に係る製造方法において、前記偏光子が、染色され且つ延伸された親水性ポリマーフィルムである。
本発明の第3の態様に係る光学フィルムの製造方法は、上記第1又は第2の態様に係る製造方法において、前記フィルム原反が、前記偏光子と、前記偏光子に積層された保護フィルムと、を有する。
本発明の第4の態様に係る光学フィルムの製造方法は、上記第1乃至第3のいずれかの態様に係る製造方法において、前記フィルム原反に対して前記圧力の水蒸気を吹き付ける時間が、10秒以上である。
【0008】
本発明の第5の態様に係る光学フィルムの製造方法は、上記第1乃至第4のいずれかの態様に係る製造方法において、前記フィルム原反を、所定の雰囲気温度に調整されたチャンバー内に導き、前記チャンバー内において前記フィルム原反を搬送している間に、前記フィルム原反に対して前記圧力の水蒸気を吹き付ける。
【0009】
本発明の第6の態様に係る光学フィルムの製造方法は、上記第5の態様に係る製造方法において、前記チャンバー内の雰囲気温度が、前記水蒸気の温度-5℃以上且つ前記水蒸気の温度+20℃以下の範囲である。
本発明の第7の態様に係る光学フィルムの製造方法は、上記第6の態様に係る製造方法において、前記フィルム原反に前記水蒸気を吹き付ける前まで、前記フィルム原反を前記チャンバー内において3秒以上搬送する。
【0010】
本発明の第8の態様に係る光学フィルムの製造方法は、上記第5の態様に係る製造方法において、前記チャンバー内に、複数の吐出孔が形成された弧状面部を有する吹付け部が配置され、前記フィルム原反を緊張状態で前記弧状面部に沿って搬送している間に、前記吐出孔から前記水蒸気を前記フィルム原反に吹き付けることにより、前記フィルム原反の張力と前記水蒸気の吹き付け圧力が拮抗して、前記フィルム原反が前記弧状面部から離れつつ前記弧状面部に沿って搬送される。
【0011】
本発明の第9の態様に係る光学フィルムの製造方法は、上記第5の態様に係る製造方法において、前記チャンバー内に、複数の点状の吐出孔が形成された平坦面部を有する吹付け部が配置され、前記フィルム原反を緊張状態で前記吹付け部に沿って搬送している間に、前記水蒸気を、前記吐出孔から前記フィルム原反の一方面に対して鉛直方向に吹き付ける。
【0012】
本発明の第10の態様に係る光学フィルムの製造方法は、上記第1乃至第9の態様に係る製造方法において、前記フィルム原反が、前記偏光子と、前記偏光子の一方面及びその反対面にそれぞれ積層された第1フィルム及び第2フィルムと、を有し、前記第1フィルムの透湿度が、前記第2フィルムの透湿度よりも高く、前記水蒸気を、少なくとも前記第1フィルム側から吹き付ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、偏光子を含むフィルム原反に対して比較的短時間で加湿処理を完了できる。得られた光学フィルムは、適量の水分を含み、経時的に湾曲変形し難い。
さらに、本発明の好ましい製造方法によれば、加湿処理中、フィルム原反に結露が生じることを防止できる。このため、得られた光学フィルムは、適切な光学特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】フィルム原反の更なる他の層構成例を示す図。
【
図6】第1実施形態の加湿装置の側面図であって、フィルム原反の搬送方向に沿ってチャンバーなどを切断した断面を含む側面図。
【
図8】
図7のVIII-VIII線に沿ってフィルム原反及び吹付け部を切断した拡大断面図。
【
図9】第1実施形態のチャンバー内のフィルム原反及び吹付け部を示す参考斜視図。
【
図10】(a)及び(b)は、それぞれ吹付け部の吐出孔の配置を表した参考平面図。
【
図11】第2実施形態の加湿装置の側面図であって、フィルム原反の搬送方向に沿ってチャンバーなどを切断した断面を含む側面図。
【
図12】同加湿装置のフィルム原反及び吹付け部を切断した拡大断面図。
【
図13】第2実施形態のチャンバー内のフィルム原反及び吹付け部を示す参考斜視図。
【
図14】第2実施形態の1つの変形例の吹付け部を示す参考斜視図。
【
図15】第2実施形態のもう1つの変形例の加湿装置の吹付け部を切断した拡大断面図。
【
図16】第3実施形態のチャンバー内のフィルム原反及び吹付け部を示す参考平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、下限値以上、上限値以下などの数値範囲が、別個に複数記載されている場合、任意の下限値又は任意の上限値を選択し、「任意の下限値以上」又は「任意の上限値以下」の数値範囲を設定できるものとする。本明細書において「略」は、本発明の属する技術分野において許容される範囲を意味する。本明細書において、用語の頭に、「第1」、「第2」を付す場合があるが、この第1などは、用語を区別するためだけに付加されたものであり、その順序や優劣などの特別な意味を持たない。
【0016】
[フィルム原反及び光学フィルム]
図1は、本発明のフィルム原反1の一部省略平面図である。
本発明の光学フィルムは、前記フィルム原反1に、少なくとも加湿処理を行うことによって得られる。従って、光学フィルムは、少なくとも加湿処理が施された、偏光子を含むフィルムである。必要に応じて、加湿処理を行う前後で、フィルム原反1に、加湿処理以外の任意の適切な処理を行うことによって、光学フィルムを製造してもよい。
処理対象であるフィルム原反1は、
図1に示すように、一般に、長尺帯状である。長尺帯状は、長手方向の長さが幅方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。
【0017】
フィルム原反1は、偏光子を含んでいる。
偏光子は、特定の1つの方向のみに振動する光(偏光)を透過し且つそれ以外の方向に振動する光を遮断する性質(この性質が偏光特性である)を有する光学素子をいう。偏光子としては、二色性物質で染色され且つ延伸された親水性ポリマーフィルムなどが挙げられる。かかる親水性ポリマーフィルムは、偏光特性を有する。
前記親水性ポリマーフィルムとしては、親水性ポリマーを成膜したフィルム;支持フィルムの一方面に親水性ポリマーを含む塗工液を塗布し且つその塗工液を乾燥することによって得られるフィルム;などが挙げられる。前記支持フィルムは、無色透明な樹脂フィルムを用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂などのエステル系樹脂フィルムなどを用いることができる。前記親水性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。好ましくは、親水性ポリマーフィルムとして、親水性ポリマーを成膜したフィルムが用いられる。
【0018】
図2乃至
図4は、フィルム原反1のいくつかの層構成を示す。
図2は、1つの層構成例に係るフィルム原反11を
図1の矢印II方向から見た図であり、
図3及び
図4も同様に、他の層構成例に係るフィルム原反12,13を
図1の矢印II方向から見た図である。
図2を参照して、1つの層構成例のフィルム原反11は、偏光子2と、前記偏光子2の一方面及びその反対面にそれぞれ積層された第1フィルム31及び第2フィルム32と、を有する。前記偏光子2と第1フィルム31の間には、両者を接合するための第1粘着剤層41が介在されており、前記偏光子2と第2フィルム32の間には、両者を接合するための第2粘着剤層42が介在されている。
図3を参照して、もう1つの層構成例のフィルム原反1は、偏光子2と、前記偏光子2の一方面に積層された第1フィルム31と、を有する。前記偏光子2と第1フィルム31の間には、両者を接合するための第1粘着剤層41が介在されている。
図4を参照して、もう1つの層構成例のフィルム原反1は、偏光子2のみからなる。
【0019】
第1フィルム31は、単層フィルムでもよく、或いは、2層以上のフィルムが積層された積層フィルムでもよい。第2フィルム32は、単層のフィルムでもよく、或いは、2層以上のフィルムが積層された積層フィルムでもよい。前記積層フィルムは、同一の機能を有するフィルムを2層以上積層したものでもよく、異なる機能を有するフィルムを2層以上積層したものでもよい。また、前記積層フィルムは、2層以上のフィルムが直接的に接合されていてもよく、或いは、2層以上のフィルムが粘着剤層を介して接合されていてもよい。
【0020】
図2のように偏光子2の両面に第1及び第2フィルム31,32が設けられているフィルム原反1において、第1フィルム31の透湿度及び第2フィルム32の透湿度は、それぞれ特に限定されない。ただし、透湿度が余りに低いと、第1フィルム31及び第2フィルム32によって水蒸気が遮断され、偏光子2を十分に加湿できないおそれがある。かかる観点から、第1及び第2フィルム31,32の各透湿度は、それぞれ独立して、50g/m
2・24h以上であり、好ましくは、100g/m
2・24h以上である。第1及び第2フィルム31,32の各透湿度の上限は特にないが、現実的な数値では、それぞれ900g/m
2・24h以下である。
【0021】
また、前記第1フィルム31の透湿度と第2フィルム32の透湿度は、同等でもよく、或いは、異なっていてもよい。1つの例では、前記第1フィルム31の透湿度は、前記第2フィルム32の透湿度よりも高い。前記第1フィルム31の透湿度が第2フィルム32の透湿度よりも高い場合、両者の透湿度の差は、特に限定されないが、水分を効果的に偏光子2に吸収させるため、比較的大きいことが好ましい。前記第1フィルム31の透湿度が第2フィルム32の透湿度よりも高い場合、両者の透湿度の差(第1フィルム31の透湿度-第2フィルム32の透湿度)は、例えば、50g/m2・24h以上700g/m2・24h以下であり、好ましくは、100g/m2・24h以上600g/m2・24h以下である。
ただし、前記透湿度は、65℃、相対湿度差90%の条件下で、JIS Z 0208-1976(アルミカップ法)によって測定できる。
【0022】
第1フィルム31としては、例えば、保護フィルム、光学機能フィルム、はく離ライナーなどを用いることができる。例えば、第1フィルム31が単層のフィルムである場合、第1フィルム31として、保護フィルム、光学機能フィルムなどを用いることができる。例えば、第1フィルム31が積層フィルムである場合、第1フィルム31として、保護フィルムと光学機能フィルムが積層された積層フィルム、はく離ライナーと保護フィルムが積層された積層フィルム、はく離ライナーと光学機能フィルムと保護フィルムが積層された積層フィルムなどを用いることができる。
【0023】
第2フィルム32としては、例えば、保護フィルム、光学機能フィルム、はく離ライナーなどを用いることができる。例えば、第2フィルム32が単層のフィルムである場合、第2フィルム32として、保護フィルム、光学機能フィルム、はく離ライナーなどを用いることができる。例えば、第2フィルム32が積層フィルムである場合、第2フィルム32として、はく離ライナーと保護フィルムが積層された積層フィルム、はく離ライナーと光学機能フィルムと保護フィルムが積層された積層フィルム、保護フィルムと光学機能フィルムが積層された積層フィルムなどを用いることができる。
【0024】
前記保護フィルムは、偏光子2などを保護するために用いられるフィルムである。保護フィルムとしては、典型的には、無色透明なフィルムが用いられる。
前記光学機能フィルムは、光学的な機能を付与するために用いられるフィルムである。前記光学機能フィルムとしては、位相差フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、防眩フィルム、光反射フィルムなどが挙げられる。位相差フィルムは、光学異方性を示すフィルムであり、代表的には、例えば、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂などの延伸フィルムなどが挙げられる。
はく離ライナーは、粘着剤層を保護するためのフィルムであり、通常、光学フィルムの使用時に引き剥がされる。はく離ライナーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム;紙;織布、不織布、網布などの多孔質フィルム;発泡樹脂フィルム;などが挙げられる。
【0025】
第1粘着剤層41及び第2粘着剤層42を構成する粘着剤としては、例えば、溶剤型粘着剤、非水系エマルジョン型粘着剤、水系粘着剤、ホットメルト粘着剤などを用いることができる。透明性や耐熱性に優れることから、アクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤が好ましく用いられる。なお、本明細書において、「粘着剤」は、一般に、接着剤と呼ばれるものを含んでいる。
透湿度の観点では、第1粘着剤層41は、第1フィルム31の透湿度と同等又はそれよりも高い透湿度を有する粘着剤を用いて形成される。同様に、第2粘着剤層42は、第2フィルム32の透湿度と同等又はそれよりも高い透湿度を有する粘着剤を用いて形成される。
なお、
図2及び
図3において、第1フィルム31は第1粘着剤層41を介して偏光子2に接合されているが、第1フィルム31が(粘着剤層を介在させずに)直接的に偏光子2に接合されていてもよい(図示せず)。
図2において、第2フィルム32は第2粘着剤層42を介して偏光子2に接合されているが、第2フィルム32が(粘着剤層を介在させずに)直接的に偏光子2に接合されていてもよい(図示せず)。
【0026】
[フィルム原反の加湿方法を含む光学フィルムの製造方法の第1実施形態]
本発明の製造方法は、偏光子を含むフィルム原反を加湿することにより、調湿された光学フィルムを製造する。本発明の1つの特徴は、35℃以上且つ80%RH以上の水蒸気を、フィルム原反に対して0.5kPa以上の圧力にて吹き付けることである。
【0027】
図5は、光学フィルムの製造システムの概略図である。
光学フィルムの製造システムAは、フィルム原反1を加湿する加湿ゾーンを有する。前記光学フィルムの製造システムAは、必要に応じて、偏光子2を含むフィルム原反1を製造する原反製造ゾーンや、得られた光学フィルムを巻き取って回収する回収ゾーンなどをさらに有していてもよい。ただし、本発明の方法は、前記製造システムAを用いて実施する場合に限定されるわけではない。
【0028】
図示例の製造システムAの原反製造ゾーンには、偏光子2を製造する偏光子製造装置Bが設けられ、必要に応じて、偏光子2に第1フィルム31及び/又は第2フィルム32を接合する積層装置Cがさらに設けられている。また、加湿ゾーンには、加湿装置Dが設けられている。回収ゾーンには、光学フィルム1aを巻き取る巻取り装置Eが設けられている。
【0029】
<偏光子の製造>
偏光子製造装置Bは、例えば、公知の方法により、ポリビニルアルコール系樹脂などの親水性ポリマーフィルム2aに偏光特性を付与する。偏光特性が付与された親水性ポリマーフィルム2aが偏光子である。例えば、偏光子製造装置Bは、湿式処理法により、親水性ポリマーフィルム2aを染色・延伸することによって偏光子を作製する。
【0030】
かかる湿式処理法によって偏光子を製造する装置は、従来公知である。簡単に説明する、偏光子製造装置Bは、上流側から順に、フィルム装填部51と、膨潤処理浴52と、染色処理浴53と、架橋処理浴54と、延伸処理浴55と、洗浄処理浴56と、乾燥部57と、を有する。なお、偏光子製造装置Bは、前記構成に限定されず、例えば、膨潤処理浴52を有さなくてもよく、或いは、延伸処理浴55を有さなくてもよい。延伸処理浴55を有さない場合、染色処理浴53などにおいて親水性ポリマーフィルム2aに対して延伸処理が行われる。また、偏光子製造装置Bは、調整処理浴などの別の処理浴を有していてもよい。なお、本明細書において、下流側は、フィルム原反1の搬送方向側(フィルム原反1の進行方向側)を指し、上流側は、その反対側を指す。また、各図の白抜き矢印は、フィルムの搬送方向を示す。
【0031】
次に、偏光子の製造工程を簡単に説明する。
図5を参照して、フィルム装填部51に装填された、ロールに巻かれた親水性ポリマーフィルム2aを巻き出す。その親水性ポリマーフィルム2aを膨潤処理浴52に搬送し、水又はヨウ化カリウム水溶液などの膨潤液にて膨潤させる(膨潤工程)。前記膨潤させた親水性ポリマーフィルム2aを、染色処理浴53に搬送し、ヨウ素などの二色性物質を含む染色液にて染色する(染色工程)。前記染色した親水性ポリマーフィルム2aを、架橋処理浴54に搬送し、ホウ素化合物水溶液などの架橋液にて架橋する(架橋工程)。前記親水性ポリマーフィルム2aを、延伸処理浴55に搬送し、延伸する(延伸工程)。染色・延伸した親水性ポリマーフィルム2aを、洗浄処理浴56に搬送し、水などの洗浄液にて洗浄する(洗浄工程)。前記洗浄した親水性ポリマーフィルム2aを、乾燥部57にて乾燥する(乾燥工程)。このように親水性ポリマーフィルム2aに各工程を施すことによって、その親水性ポリマーフィルム2aが偏光特性を生じる(つまり、偏光子2が得られる)。
【0032】
図5では、偏光子2の製造後に引き続いて、偏光子2を積層装置Cに搬送しているが(つまり、偏光子2の製造に続いてフィルムの積層を行なっているが)、これに限定されない。例えば、得られた偏光子2を一旦ロールに巻き取り、必要に応じて保管・運搬した後、このロールから偏光子2を巻き出して積層装置Cにて第1フィルム31などを積層してもよい(図示せず)。
【0033】
<フィルム原反の製造>
積層装置Cは、前記偏光子2に、第1フィルム31及び/又は第2フィルム32を積層する。
かかる積層装置Cは、従来公知である。簡単に説明すると、積層装置Cは、フィルム装填部611,612と、第1及び第2フィルム31,32に粘着剤を塗工する塗工部(図示せず)と、第1及び第2フィルム31,32を偏光子2に貼り合わせる貼り合わせ部613と、を有する。なお、予め粘着剤が塗工されている第1フィルム31及び第2フィルム32を使用する場合には、塗工部は省略される。
図5を参照して、フィルム装填部611に装填された、ロールに巻かれた第1フィルム31、及び、フィルム装填部612に装填された、第2フィルム32をそれぞれ巻き出す。それらを貼り合わせ部613に導き、第1及び第2フィルム31,32を偏光子2に接合する。なお、第1フィルム31が2層以上の積層フィルムからなる場合、貼り合わせ部を複数設け、1つのフィルムを偏光子2に接合した後、そのフィルムに重ねて他のフィルムを接合して、積層フィルムからなる第1フィルム31を形成してもよい。第2フィルム32が2層以上の積層フィルムからなる場合についても同様である。
このようにして、
図2に示すような、偏光子2の一方面に第1フィルム31が接合され且つ偏光子2の反対面(反対面は、一方面とは反対側の面)に第2フィルム32が接合されているフィルム原反11を得ることができる。
【0034】
図5では、フィルム原反1の製造後に引き続いて、前記フィルム原反1を加湿装置Dに搬送しているが(つまり、フィルム原反1の製造に続いて加湿を行なっているが)、これに限定されない。例えば、得られたフィルム原反1を一旦ロールに巻き取り、必要に応じて保管・運搬した後、このロールからフィルム原反1を巻き出して加湿装置Dにて加湿処理を行なってもよい(図示せず)。
なお、
図3に示すような層構成のフィルム原反12を作製する場合には、第1フィルム31のみを偏光子2に貼り合わせる。また、
図4に示すような偏光子2のみからなるフィルム原反13を作製する場合には、積層装置Cは省略される。
【0035】
<フィルム原反の加湿>
製造されたフィルム原反1は、加湿装置Dに搬送され、適量の水分を含むように加湿される。偏光子2の製造する際に加熱や乾燥などを行なうため、製造直後のフィルム原反1に含まれる偏光子2は、水分含有量が低くなっている。水分含有量が比較的低い偏光子2は、経時的に湾曲変形し易い傾向にある。このような偏光子2を含むフィルム原反1に加湿処理を行なって偏光子2の水分含有量を高めることにより、経時的に湾曲変形し難い光学フィルム1aを製造できる。
【0036】
図6は、
図5に示す第1実施形態の加湿装置Dを詳細に表した側面図である。ただし、
図6において、チャンバー62をフィルム原反1の搬送方向に沿って切断した断面で表し、さらに、各パイプとチャンバー62との連通状態を判り易くするために、パイプのチャンバー62に繋がる部分を断面で表している。
図7は、加湿装置Dの平面図(上方から下方に向かって見た図)である。
図8は、吹付け部7及びフィルム原反1を搬送方向に沿って切断した断面であって、水蒸気が吹き付けられているフィルム原反1が吹付け部7に沿って搬送されている状態を判り易く表した断面図である。
図9は、フィルム原反1が吹付け部7に沿って搬送されている状態を表した参考斜視図である。
図9において、フィルム原反1を仮想線(二点鎖線)で示している。
【0037】
図5乃至
図9を参照して、加湿装置Dは、搬送される長尺帯状のフィルム原反1(偏光子を含むフィルム原反)に対して、35℃以上且つ80%RH以上の水蒸気を、0.5kPa以上の圧力にて吹き付ける。第1実施形態の加湿装置Dは、水蒸気をフィルム原反1に吹き付ける吹付け部7が、弧状面部711を有する。
具体的には、加湿装置Dは、チャンバー62と、前記チャンバー62内に配置され且つ複数の吐出孔721が形成された弧状面部711を有する吹付け部7と、を有する。チャンバー62は、前記吹付け部7を取り囲み、フィルム原反1を搬送するのに十分な空間を有する室である。チャンバー62の上流側には、フィルム原反1をチャンバー62内に導入するための搬入口621が開口され、チャンバー62の下流側には、フィルム原反1をチャンバー62外に出すための搬出口622が開口されている。チャンバー62内には、フィルム原反1の搬送を案内するガイドローラ623が適宜な位置に配置されている。また、チャンバー62には、チャンバー62の雰囲気圧(チャンバー62内の気圧)を調整する圧力調整手段64と、チャンバー62の雰囲気温度(チャンバー62内の温度)を調整する温度調整手段65と、が設けられている。
【0038】
前記圧力調整手段64は、チャンバー62内の雰囲気圧を計測し、その計測値に基づいてチャンバー62内の雰囲気圧を調整する。
【0039】
前記温度調整手段65は、チャンバー62内の温度を計測し、その計測値に基づいてチャンバー62内の温度を調整する。
【0040】
吹付け部7は、複数の吐出孔721が形成された弧状面部711を有する中空状のケース体731と、前記ケース体731内に水蒸気を供給する供給口741と、を有する。前記弧状面部711は、側面視で弧状であり、その弧状がフィルム原反1の幅方向に連続的に延びて弧状面を成している。図示例では、弧状面部711は、略半円弧状面であるが、これに限定されず、略1/4円弧面などであってもよい。
【0041】
前記弧状面部711に形成された点状の吐出孔721は、例えば、平面視略円形の開口である。なお、点状の吐出孔721は、略円形の開口に限られず、平面視略四角形の開口などであってもよい。吐出孔721の大きさは、特に限定されないが、余りに小さいと目詰まりを生じるおそれがあり、余りに大きいと水蒸気の圧力にバラツキが生じるおそれがある。かかる観点から、吐出孔721の大きさは、吐出孔721が略円形である場合を基準にして、直径0.8mm以上4.0mm以下であり、好ましくは直径1.0mm以上3.0mm以下である。平面視略円形状でない場合の吐出孔721の大きさは、円相当径とする。
【0042】
図8及び
図9に示すように、複数の吐出孔721は、弧状面部711の周方向(フィルム原反1の搬送方向)に間隔をあけて形成されている。さらに、
図9に示すように、複数の吐出孔721は、フィルム原反1の幅方向に間隔を開けて形成されている。従って、複数の点状の吐出孔721は、弧状面部711の曲面に沿って形成され、且つ、その曲面に沿って形成された複数の吐出孔721が幅方向にも形成されている。
各吐出孔721は、等間隔で形成されていてもよく、或いは、ランダムな間隔で形成されていてもよい。フィルム原反1に水蒸気を略均一に吹き付けるために、複数の吐出孔721は等間隔で形成されていることが好ましい。
また、各吐出孔721の具体的な配置は、特に限定されず、適宜設定できる。
図10は、吐出孔721の配置の幾つかの例を参考的に表した平面図である。フィルム原反1の幅方向に沿って並んだ複数の吐出孔721を「列」と呼んだ場合、吐出孔721の列は、フィルム原反1の搬送方向(弧状面部711の周方向)に複数列配置されている。
図10(a)は、搬送方向で隣接する列の吐出孔721が、幅方向においてずれることなく配置されている場合を表している(以下、このような点状の吐出孔721の配置を格子状配置という)。
図10(b)は、奇数列の吐出孔721が、偶数列の吐出孔721に対して幅方向の左側(又は右側)にずれて配置されている場合を表している(以下、このような点状の吐出孔721の配置を千鳥状配置という)。
【0043】
単位面積当たりの吐出孔721の形成数は、特に限定されず、吐出孔721の大きさを考慮して適宜設定される。例えば、開口率が0.2%以上5.0%以下の範囲、好ましくは0.5%以上3.0%以下の範囲となるように、吐出孔721の大きさ及び形成数が設定される。ここで、前記開口率は、フィルム原反1に対面する弧状面部711の単位面積当たりの吐出孔721の総開口面積の割合であり、式:(吐出孔721の総開口面積/吹付け部7の弧状面部711の単位面積)×100、で求められる。例えば、フィルム原反1に対面する弧状面部711の任意の100mm2の範囲に、直径2mmの吐出孔721が10個形成されている場合には、開口率(%)=(1mm×1mm×π×10/100mm2)×100、となる。
【0044】
水蒸気が弧状面部711の径方向に吹き出るように(
図8参照)、前記各吐出孔721は弧状面部711に穿設されている。それぞれの吐出孔721から水蒸気が弧状面部711の径方向に吹き出ることにより、前記水蒸気を、前記弧状面部711に沿って搬送されるフィルム原反1の一方面に対して略鉛直方向(水蒸気をフィルム原反1の略厚み方向)に吹き付けることができる。
【0045】
前記吹付け部7の供給口741には、吹付け部7のケース体731内に水蒸気を供給する供給手段が設けられている。前記供給手段は、蒸気発生器81と、水蒸気を加熱する加熱部82と、水蒸気を所定の圧力で送出する送風機83と、パイプと、供給制御部84と、を有する。さらに、前記供給手段は、スチームトラップを有することが好ましい。また、前記供給手段は、必要に応じて、温度センサー、湿度センサー、速度センサーなどを有していてもよい。
【0046】
本実施形態の供給手段は、概略的に、チャンバー62内の水蒸気を回収し、必要に応じて新たに水蒸気を加え、この水蒸気を所定温度に加熱し、吹付け部7に供給する。
例えば、供給手段は、パイプと、第1スチームトラップ861と、蒸気発生器81と、電気ヒーターなどの加熱部82と、送風機83と、温度センサー87及び湿度センサー88と、第2スチームトラップ862と、供給制御部84と、を有する。供給手段は、通常、チャンバー62の外部に設けられるが、その一部又は全部がチャンバー62に設けられていてもよい。
【0047】
図5乃至
図7を参照して、パイプは、チャンバー62の任意の箇所(チャンバー62内の水蒸気取出し口)に連通された第1パイプ851と、吹付け部7の供給口741に連通された第2パイプ852と、第1パイプ851と第2パイプ852の間に接続された第3パイプ853と、を有する。第3パイプ853の経路中に、蒸気発生器81、加熱部82、送風機83、温度センサー87、湿度センサー88、第2スチームトラップ862などが設けられている。第1スチームトラップ861は、例えば、第1パイプ851の近くに配置される。第1スチームトラップ861は、第1パイプ851を通じて取り出されるチャンバー62内の水蒸気を、結露水を含めることなく第3パイプ853中へと通過させる。ここで、スチームトラップ(ドレントラップともいう)は、蒸気雰囲気の中から水蒸気を極力漏らすことなくドレン(結露水)を排出し、水蒸気を通過させる機器である。蒸気発生器81は、チャンバー62内から取り出され且つ第1スチームトラップ861を通過した水蒸気が少ない場合に、水蒸気を補充する。加熱部82は、前記水蒸気(チャンバー62内から取り出された水蒸気及び必要に応じて補充される蒸気発生器81からの水蒸気)を所定温度に加熱する。送風機83は、前記加熱された水蒸気を、第3パイプ853及び第2パイプ852を通じて吹付け部7の供給口741に送り出す。第2スチームトラップ862は、例えば、送風機83の出口に配置される。第2スチームトラップ862は、送風機83から送られる水蒸気を、結露水を含めることなく第2パイプ852中へと通過させる。温度センサー87及び湿度センサー88は、例えば、送風機83と吹付け部7の間の第3パイプ853の経路中のパイプ内に設けられている。供給制御部84は、温度センサー87及び湿度センサー88の計測情報に応じて、蒸気発生器81による水蒸気の補充量、加熱部82による水蒸気の加熱温度、送風機83による水蒸気の吹き付け圧力などを制御する。
【0048】
上記加湿装置Dを用いて、フィルム原反1を加湿する方法を説明する。ただし、本発明において、上記加湿装置Dを用いてフィルム原反1を加湿する場合に限定されるものではない。
前記チャンバー62内は、その雰囲気圧がチャンバー62の外部と略同圧又はチャンバー62の外部よりも少し高い圧力に調整される。チャンバー62の雰囲気圧をチャンバー62外と同等又はそれよりも正圧に調整することにより、チャンバー62外の空気が、搬入口621などからチャンバー62内に侵入することを防止できる。チャンバー62の雰囲気圧は、上記圧力調整手段64によって調整可能である。詳しくは、圧力調整手段64は、チャンバー62内の雰囲気圧を計測し、チャンバー62内の雰囲気圧が設定圧(設定圧は、外部と同等圧又は外部よりも正圧)に対する差異を判断し、吸排気量を操作して所望の雰囲気圧に調整する。
【0049】
また、チャンバー62内は、その雰囲気温度が水蒸気の温度-5℃以上且つ水蒸気の温度+20℃以下の範囲に調整される。前記水蒸気の温度-5℃は、フィルム原反1に吹き付ける水蒸気の温度よりも5℃低いという意味であり、前記水蒸気の温度+20℃は、同吹き付ける水蒸気の温度よりも20℃高いという意味である。好ましくは、チャンバー62の雰囲気温度は、水蒸気の温度以上且つ水蒸気の温度+10℃以下の範囲に調整される。チャンバー62の雰囲気温度を水蒸気の温度-5℃以上に調整することにより、フィルム原反1の結露を防止できる。チャンバー62の雰囲気温度を水蒸気の温度+20℃以下に調整することにより、光学特性の低下を抑制でき、また、フィルム原反1に吸収された水分がフィルム原反1から抜け出ることを防止できる。
【0050】
チャンバー62内の雰囲気温度は、上記温度調整手段65によって調整可能である。詳しくは、温度調整手段65は、チャンバー62内の雰囲気温度を計測し、所望の雰囲気温度になるように、温調器によって熱源ヒーターを制御する。
【0051】
吹付け部7の吐出孔721からフィルム原反1に水蒸気を吹き付ける。なお、前記水蒸気は、水蒸気を含んだ気体であり、例えば、水蒸気のみからなる気体でもよく、或いは、水蒸気と大気などを含む気体であってもよい。
【0052】
前記フィルム原反1に吹き付ける水蒸気の温度は、35℃以上であり、好ましくは37℃以上であり、より好ましくは40℃以上である。35℃以上の水蒸気を用いることにより、フィルム原反1の偏光子に水分を素早く吸収させることができる。前記水蒸気の温度の上限は、特にないが、余りに高すぎると、フィルム原反1が熱損傷を受けるおそれがあるため、例えば、80℃以下であり、好ましくは70℃以下である。
【0053】
また、前記フィルム原反に吹き付ける水蒸気の湿度(相対湿度%RH)は、80%RH以上であり、好ましくは95%RH以上であり、より好ましくは98%RH以上である。80%RH以上の水蒸気を用いることにより、フィルム原反1の偏光子に水分を素早く吸収させることができる。前記水蒸気の湿度の上限は、100%RH以下であり、好ましくは95%RH以下である。
【0054】
また、前記フィルム原反に吹き付ける水蒸気の圧力は、0.5kPa以上であり、好ましくは1.0kPa以上であり、より好ましくは1.5kPa以上である。吹き付け圧力が0.5kPa以上の水蒸気をフィルム原反1に吹き付けることにより、フィルム原反1の偏光子に水分を素早く吸収させることができる。前記水蒸気の圧力の上限は、特にないが、余りに高いと、フィルム原反1が破断するおそれがある。かかる観点から、水蒸気の圧力は、例えば、4.0kPa以下であり、好ましくは3.0kPa以下である。
ただし、前記水蒸気の温度及び湿度は、フィルム原反1の一方面(フィルム原反1の一方面は、吐出孔721から出た水蒸気がフィルム原反1に当たる部分)で測定される値をいう。
また、前記水蒸気の圧力は、フィルム原反1の一方面付近で測定される圧力とチャンバーの外部の圧力(大気圧)との差によって求められる値をいう。
【0055】
前記温度、湿度及び圧力の水蒸気は、供給手段によって吹付け部7に供給できる。
詳しくは、供給制御部84は、送風機83を作動させる。送風機83の作動により、第1パイプ851を通じてチャンバー62内の水蒸気が第1スチームトラップ861に入り、そのトラップ861にて結露水が除去される。特に、チャンバー62内の雰囲気温度がフィルム原反1に吹き付ける水蒸気の温度よりも高い場合には、前記チャンバー62内から取り出した水蒸気の一部が結露し易い傾向にある。チャンバー62の水蒸気取出し口の付近に第1スチームトラップ861を配置することにより、前記水蒸気のみを送風機83を介して吹付け部7に送ることができる。
【0056】
前記第1スチームトラップ861を通過した水蒸気は、第3パイプ853を通じて送風機83に吸引される。前記チャンバー62から取り出した水蒸気だけでは湿度が低い場合には、供給制御部84は、蒸気発生器81を作動させて水蒸気を前記第3パイプ853中に補充する。補充された水蒸気は、前記チャンバー62内から取り出された水蒸気と第3パイプ853中で合流する。チャンバー62内の水蒸気を取り出して再び使用することにより、水蒸気の有効利用を図ることができ、さらに、加湿装置Dを安定的に稼働させることができる。
【0057】
供給制御部84は、加熱部82を作動させて前記第3パイプ853中を流れる前記水蒸気を所定の温度に加熱する。加熱された水蒸気は、送風機83によって第2パイプ852及び供給口741を通じて吹付け部7のケース体731内に送られ、弧状面部711の吐出孔721から吹き出る。供給制御部84は、温度センサー87の温度計測情報に応じて、加熱部82による加熱を制御し、吐出孔721から出る水蒸気が上記温度となるように調整する。また、供給制御部84は、湿度センサー88の湿度計測情報に応じて、蒸気発生器81による水蒸気の補充量を制御し、吐出孔721から出る水蒸気が上記湿度となるように調整する。なお、水蒸気の圧力は、加湿装置Dの稼働中、大きく変動し難いので、水蒸気の圧力が当初から上記圧力となるように送風機83を設定しておけばよい。もっとも、流量計などのセンサーを第3パイプ853などに設置してもよい。供給制御部84が前記センサーの計測情報に応じて、送風機83の強弱を制御し、吐出孔721から出る水蒸気が上記圧力となるように調整してもよい。
【0058】
なお、加湿装置Dの試運転により、加湿装置Dの稼働中の水蒸気の温度、湿度及び/又は圧力の変化に関するデータを取得してもよい。このデータに基づいてプログラミングされた供給制御部84が加熱部82などを制御して水蒸気の温度や圧力などを調整することもできる。この場合、前記温度センサー87や湿度センサー88などを省略してもよい。
【0059】
チャンバー62内に、長尺帯状のフィルム原反1を導入する。前記チャンバー62の搬入口621からチャンバー62内に導入されたフィルム原反1は、水蒸気を吹き付ける吹付け部7の弧状面部711に沿って搬送され、搬出口622からチャンバー62の外部に出る。フィルム原反1の搬送速度は、特に限定されないが、例えば、2m/分以上35m/分以下である。
【0060】
前記フィルム原反1に前記水蒸気を吹き付ける前まで、フィルム原反1をチャンバー62内において3秒以上搬送することが好ましい。つまり、チャンバー62に入ったフィルム原反1が、水蒸気を吹き付けることを開始する箇所X(以下、「吹付け開始点X」という)にまで到達する時間(以下、「養生時間」という)が3秒以上であることが好ましい。前記養生時間は、5秒以上であることがより好ましく、10秒以上であることがさらに好ましい。
前記養生時間は、例えば、搬送されるフィルム原反1の一部分に目印を付け、その目印が搬入口621を通過した時から吹付け開始点Xを通過した時までを計測することによって測定できる。吹き付ける水蒸気の温度-5℃以上に調整されたチャンバー62において、フィルム原反1を前記養生時間搬送することにより、フィルム原反1に結露が生じることを効果的に防止できる。
前記搬入口621から吹付け開始点Xまでのフィルム原反1のパス長は、前記養生時間とフィルム原反1の搬送速度から求めることができる。なお、本明細書において、パス長は、ある箇所からある箇所までのフィルム原反の搬送長さをいう。
【0061】
図6及び
図8に示すように、フィルム原反1を弧状面部711に沿って搬送している間に、前記弧状面部711の吐出孔721からフィルム原反1の一方面に水蒸気が吹き付けられる。なお、
図6及び
図8の細矢印は、水蒸気の吹き出し向きを示している(以下、他の図に示される細矢印も同様)。水蒸気をフィルム原反1に吹き付けることにより、偏光子に水分を吸収させることができる。
図8では、フィルム原反1が
図2に示すような第1フィルム31/偏光子2/第2フィルム32を有する積層物である場合を例示している。前記第1フィルム31の透湿度が前記第2フィルム32の透湿度よりも高い場合には、
図8に示すように、前記水蒸気を、第1フィルム31側から吹き付けることが好ましい。透湿度が高い第1フィルム31側から水蒸気を吹き付けることにより、偏光子に水分を効果的に吸収させることができる。
なお、
図3又は
図4に示す層構成のフィルム原反1に対して加湿する場合には、そのフィルム原反1の偏光子2側から水蒸気を吹き付けることにより、偏光子2に直接的に水分を吸収させることができる。
【0062】
フィルム原反1は、チャンバー62内において所定の張力が架けられた状態で搬送される。フィルム原反1に加えられる張力は、特に限定されず、例えば、50N/m以上300N/m以下であり、好ましくは100N/m以上200N/m以下である。張力によって緊張状態となったフィルム原反1は、弧状面部711に沿って側面視弧状に湾曲しながら搬送される。フィルム原反1を前記吹付け部7の弧状面部711に沿って搬送している間において、前記フィルム原反1の張力と前記水蒸気の吹き付け圧力が拮抗して、前記フィルム原反1は弧状面部711から離れつつ弧状面部711に沿って搬送される。このように張力と吹き付け圧力が拮抗してフィルム原反1が弧状に湾曲することにより、フィルム原反1は、弧状面部711から略一定の距離L(距離を表す符号Lは、
図8参照)を離れた状態で弧状面に沿って搬送される。このため、弧状面部711の吐出孔721からの水蒸気を、フィルム原反1の一方面に略均等に吹き付けることができ、偏光子に水分を効果的に吸収させることができる。
【0063】
本発明によれば、偏光子に水分を効果的に吸収させることができるので、フィルム原反1に対して比較的短時間で加湿処理を完了できる。例えば、フィルム原反1に対して水蒸気を吹き付ける時間(以下、「吹付け時間」という)は、10秒以上90秒以下であり、好ましくは30秒以上60秒以下である。
前記吹付け時間は、吹付け開始点Xから水蒸気を吹き付けることを終了する箇所Y(吹付け終了点Y)までのフィルム原反1の搬送時間をいう。前記吹付け時間は、例えば、搬送されるフィルム原反1の一部分に目印を付け、その目印が吹付け開始点Xを通過した時から吹付け終了点Yを通過した時までを計測することによって測定できる。また、前記吹付け開始点Xから吹付け終了点Yまでのフィルム原反1のパス長は、前記吹付け時間とフィルム原反1の搬送速度から求めることができる。
【0064】
フィルム原反1に対して上述の加湿処理を行なうことによって、調湿された光学フィルム1aが得られる。吹付け終了点Yを通過したフィルム原反1(光学フィルム1a)は、搬出口622からチャンバー62外に搬送される。得られた光学フィルム1aは、巻取り装置Eに巻き取られる。なお、必要に応じて、加湿処理後、巻取り装置Eに巻き取る前に、光学フィルム1aに任意の適切な処理を行なってもよい。
【0065】
以下、本発明の他の実施形態を説明するが、その説明に於いては、主として上述の実施形態と異なる構成及び効果について説明し、同様の構成などについては、用語又は符号をそのまま援用し、その構成の説明を省略する場合がある。
【0066】
[第2実施形態]
上記第1実施形態の加湿装置Dは、弧状面部711を有する吹付け部7を有するが、吹付け部7は、これに限定されず、様々に設計変更できる。
図11は、第2実施形態の加湿装置Dを詳細に表した側面図であり、
図6と同様に、チャンバー62及びパイプの一部を断面で表している。
図12は、第2実施形態の加湿装置Dの吹付け部7及びフィルム原反1を搬送方向に沿って切断した断面である。
図13は、第2実施形態の加湿装置Dにおいて、フィルム原反1が吹付け部7に沿って搬送されている状態を表した参考斜視図である。
図13において、フィルム原反1を仮想線(二点鎖線)で表している。
【0067】
図11乃至
図13において、本実施形態の加湿装置Dの吹付け部7は、スリット状の吐出孔722を有する。具体的には、吹付け部7は、複数の吐出孔722が形成された平坦面部712を有する中空状のケース体732と、前記ケース体732内に水蒸気を供給する供給口742と、を有する。前記平坦面部712は、側面視で直線状である。
前記平坦面部712に形成された吐出孔722は、例えば、細長い平面視スリット状の開口である。図示例では、吐出孔722は、フィルム原反1の幅方向に延びる細長いスリット状である(
図13参照)。
【0068】
前記吐出孔722の大きさは、特に限定されないが、余りに小さいと目詰まりを生じるおそれがあり、余りに大きいと水蒸気の圧力にバラツキが生じるおそれがある。かかる観点から、前記吐出孔722の幅は、例えば、0.8mm以上5.0mm以下であり、好ましくは2mm以上4mm以下である。単位面積当たりの吐出孔722の形成数は、特に限定されず、吐出孔722の大きさを考慮して適宜設定される。例えば、0.2%以上5.0%以下の範囲、好ましくは0.5%以上3.0%以下の範囲となるように、吐出孔722の大きさ及び形成数が設定される。ここで、前記開口率は、フィルム原反1に対面する平坦面部712の単位面積当たりの吐出孔722の総開口面積の割合であり、式:(吐出孔722の総開口面積/吹付け部7の平坦面部712の単位面積)×100、で求められる。
【0069】
水蒸気が平坦面部712の鉛直方向に吹き出るように、前記各吐出孔722は平坦面部712に穿設されている。それぞれの吐出孔722から水蒸気が平坦面部712の鉛直方向に吹き出ることにより、前記水蒸気を、フィルム原反1の一方面に対して略鉛直方向(水蒸気をフィルム原反1の略厚み方向)に吹き付けることができる。
なお、吹付け部7の上流側及び下流側には、フィルム原反が吹き付けられる水蒸気によってバタつかないように、搬送ニップローラ624が配置されている
第2実施形態の加湿装置Dのその他の構成は、第1実施形態と同様な構成を採用できる。
【0070】
本実施形態の加湿装置Dについても、第1実施形態と同様に、所定の雰囲気温度に調整されたチャンバー62内にフィルム原反1を搬送し、吹付け部7において、35℃以上且つ80%RH以上、吹き付け圧力0.5kPa以上の水蒸気をフィルム原反1に吹き付ける。本実施形態でも、比較的短時間で偏光子への加湿処理が完了し、適量の水分を含む調湿された光学フィルム1aを得ることができる。
【0071】
[第2実施形態の変形例]
上記第2実施形態の吐出孔722は、フィルム原反1の幅方向に延びる細長いスリット状であるが、これに限定されず、例えば、
図14に示すように、吐出孔722がフィルム原反1の搬送方向に延びる細長いスリット状であってもよい。また、特に図示しないが、スリット状の吐出孔722が、フィルム原反1の搬送方向に対して傾斜する方向に延びるように形成されていてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、フィルム原反1の一方面側のみから水蒸気を吹き付けているが、フィルム原反1の一方面側及びその反対面側からそれぞれ水蒸気を吹き付けてもよい。例えば、
図15に示すように、チャンバー62内に搬送されるフィルム原反1の一方面側に吹付け部7を配置し、且つ前記フィルム原反1の反対面側に吹付け部7を配置することにより、フィルム原反1の両面側から水蒸気を吹き付けることができる。
【0073】
[第3実施形態]
図16は、第3実施形態の加湿装置Dにおいて、フィルム原反1が吹付け部7に沿って搬送されている状態を表した参考平面図である。
図16において、フィルム原反1を仮想線(二点鎖線)で表している。
【0074】
図16において、本実施形態の加湿装置Dの吹付け部7は、点状の吐出孔723が形成された平坦面部713を有する。具体的には、吹付け部7は、複数の点状の吐出孔723が形成された平坦面部713を有する中空状のケース体733と、前記ケース体733内に水蒸気を供給する供給口743と、を有する。前記平坦面部713は、第2実施形態の平坦面部712と同様に、側面視で直線状である。また、第3実施形態の吹付け部7は、吐出孔723を除いて、第2実施形態と略同様である。
前記平坦面部713に形成された吐出孔723は、例えば、平面視略円形の開口である。点状の吐出孔723は、略円形の開口に限られず、平面視略四角形の開口などであってもよい。また、
図16において、複数の点状の吐出孔723の配置は、千鳥配置とされている。吐出孔723の配置は、千鳥配置に限られず、格子配置でもよく、或いは、その他の配置であってもよい。第3実施形態の吐出孔723の形状、大きさ、形成数及び開口率などは、第1実施形態の吐出孔721の形状などを適用できる。
【0075】
水蒸気が平坦面部713の鉛直方向に吹き出るように、前記各吐出孔723が平坦面部713に穿設されている。それぞれの吐出孔723から水蒸気が平坦面部713の鉛直方向に吹き出ることにより、前記水蒸気を、フィルム原反1の一方面に対して略鉛直方向に吹き付けることができる。
なお、フィルム原反のバタつきを防止するため、第3実施形態の吹付け部7の上流側及び下流側に、第2実施形態と同様に、搬送ニップローラが配置されている(図示せず)。
第3実施形態の加湿装置Dのその他の構成は、第1実施形態と同様な構成を採用できる。
【0076】
第3実施形態の加湿装置Dについても、第1実施形態と同様に、所定の雰囲気温度に調整されたチャンバー62内にフィルム原反1を搬送し、吹付け部7において、35℃以上且つ80%RH以上、吹き付け圧力0.5kPa以上の水蒸気をフィルム原反1に吹き付ける。本実施形態でも、比較的短時間で偏光子への加湿処理が完了し、適量の水分を含む調湿された光学フィルム1aを得ることができる。
【0077】
[第4実施形態]
上記各実施形態では、偏光子に第1フィルム及び/又は第2フィルムを積層した後のフィルム原反に対して加湿を行なったが、偏光子そのものをフィルム原反として加湿を行ない、加湿後のフィルム原反(偏光子)に第1フィルム及び/又は第2フィルムを積層してもよい(図示せず)。
【0078】
[光学フィルムの用途など]
本発明の偏光子を含む光学フィルムの用途は、特に限定されない。本発明の光学フィルムは、経時的に湾曲変形し難いので、液晶表示装置や有機表示装置などのディスプレイの光学フィルムとして好適に使用できる。
また、本発明の光学フィルムは、前述のディスプレイに使用される場合に限定されず、ディスプレイ以外の用途に使用することもできる。ディスプレイ以外の用途としては、光学機器、建築物、医療・食品分野などが挙げられる。光学フィルムが光学機器に使用される場合には、その光学フィルムは、例えば、偏光レンズ、透明電波遮断フィルムなどに加工される。光学フィルムが電子デバイスに使用される場合には、その光学フィルムは、例えば、調光窓用フィルムなどに加工される。光学フィルムが医療・食品分野に使用される場合には、その光学フィルムは、例えば、光劣化防止フィルムなどに加工される。
【実施例0079】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0080】
[使用したフィルム原反]
厚み18μmの偏光子(株式会社クラレ製の商品名「VF-PE#4500」)の一方面に、粘着剤を介して、厚み40μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカミノルタ株式会社製の商品名「KC4CT」)が積層され、且つ偏光子の反対面に、粘着剤を介して、厚み40μmの環状オレフィン(COP)フィルム(日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオノアフィルムZF-16」)が積層されている長尺帯状のフィルム原反を使用した。
このTACフィルムの透湿度は、620g/m2・24hで、COPフィルムの透湿度は、1.2g/m2・24hであった。透湿度は、65℃、相対湿度差90%の条件下で、JIS Z 0208-1976(アルミカップ法)によって測定した。
【0081】
[加湿装置]
図6乃至
図9に示すような、複数の吐出孔721が形成された弧状面部711を有する吹付け部7を備えた加湿装置Dを準備した。
吐出孔721は、直径400mmの円形であり、開口率は、1.0%であった。
【0082】
[水蒸気の温度、湿度及び圧力の測定方法]
水蒸気の温度及び湿度は、吹付け部の吐出孔の出口付近において測定した。水蒸気の温度及び湿度は、VAISALA社製の商品名「HM70湿度温度計」を用いて測定した。
吹付け部の吐出孔の出口付近(フィルム原反の一方面付近と略同じ)において測定される圧力とチャンバーの外部の圧力(大気圧)との差を、水蒸気の圧力とした。前記吹付け部の吐出孔付近の圧力は、株式会社山本電機製作所製の商品名「マノスターゲージ」を用いて測定した。
ただし、水蒸気の温度、湿度及び圧力は、運転開始後、概ね30分後(運転が安定した後)に測定した。
[チャンバー内の雰囲気温度及び湿度の測定方法]
チャンバー内に配置した温度センサー及び湿度センサーを用いて測定した。
ただし、チャンバー内の温度及び湿度は、運転開始後、概ね30分後(運転が安定した後)に測定した。
【0083】
[吸光度の増加量の測定方法]
吸光度は、クラボウ株式会社製の商品名「RX200」を用いて測定した。
加湿処理を行なう前のフィルム原反の吸光度を測定し、さらに、加湿処理を行なった後の吸光度を測定し、下記式から吸光度の増加量を算出した。
式:吸光度の増加量=加湿処理後の吸光度-加湿処理前の吸光度。
【0084】
[実施例1]
下記に示す加湿条件で、加湿装置のチャンバー内に、フィルム原反を搬送し、フィルム原反を加湿した。なお、TACフィルム側に水蒸気が直接吹き付けられるようにして、フィルム原反を搬送した。
<加湿条件>
吹付け部の吐出孔から出た水蒸気の温度:35℃。
吹付け部の吐出孔から出た水蒸気の湿度:35%RH。
吹付け部の吐出孔から出た水蒸気の圧力:0.8kPa。
チャンバー内の雰囲気温度:32℃。
チャンバー内の雰囲気湿度:32%RH。
養生時間:約10秒。
吹付け時間:約15秒。
フィルム原反の搬送速度:3m/分。
【0085】
実施例1で得られた加湿処理後のフィルム原反の水分含有量の増加程度を確認するため、吸光度の増加量を測定した。その結果を表1に示す。
また、加湿処理後のフィルム原反の外観を、目視で観察した。その結果を表1に示す。
ただし、表1の外観の欄の「A」は、フィルム原反に結露水が付着していなかったことを表し、「B」は、フィルム原反の一部分に結露水が付着していたことを表し、「C」は、フィルム原反の略全体に結露水が付着していたことを表す。
【0086】
【0087】
[実施例2乃至7、比較例1及び2]
表1に示す加湿条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム原反を加湿した。
実施例2乃至7、比較例1及び2も、それぞれ、実施例1と同様に、フィルム原反の吸光度の増加量を測定し、加湿処理後の外観を観察した。それらの結果を表1に示す。
【0088】
[比較例3]
水蒸気の吹付け部を有さないチャンバー内にフィルム原反を搬送して加湿処理を行なったこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム原反を加湿した。つまり、吹付け部から水蒸気を吹付けず、表1に示す温度及び湿度のチャンバー内にフィルム原反を搬送することによって、フィルム原反を加湿した。
比較例3も、実施例1と同様に、フィルム原反の吸光度の増加量を測定し、加湿処理後の外観を観察した。それらの結果を表1に示す。
【0089】
[評価]
実施例1乃至7は、比較例1及び2と同じ吹付け時間でありながら、十分な量の水分をフィルム原反に含ませることができたことが判る。水蒸気の圧力が0.45kPaである比較例1では、十分な量の水分を含ませるためには、吹付け時間を増やさなければならないことが判る。また、水蒸気の温度が30℃且つ湿度が70%RHである比較例2についても、十分な量の水分を含ませるためには、吹付け時間を増やさなければならないことが判る。
また、水蒸気の湿度が95%RHである実施例4乃至7は、水蒸気の湿度が80%RHである実施例1乃至3に比して、フィルム原反に水分を含ませる効果がより高いことが判る。