(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061261
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】逆流抑止装置及びそれを備えた排水ます
(51)【国際特許分類】
E03F 5/10 20060101AFI20240425BHJP
E03F 7/04 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
E03F5/10 A
E03F7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169104
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 稔
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063DA03
2D063DA06
2D063DA07
2D063DA12
(57)【要約】
【課題】構造が簡単で信頼性が高く封水機能を備えることが可能な逆流抑止装置において、メンテナンスが容易で排水の異物等による詰まりが生じ難く、専用の設置スペースを設ける必要がない逆流抑止装置および該装置を備えた排水ますを提供する。
【課題を解決するための手段】本発明によれば、水平方向に開口した流出口と、鉛直方向下向きに開口した流入口と、鉛直方向上向きに開口した点検口とを備えたT字型の筒状体において、点検口には蓋部が着脱自在に取り付けられ、そして流入口には、下から上へ向けて流入口を通過する排水の流れを許容し、上からから下へ向けて流入口を通過する排水の流れを阻止する逆流抑止手段が取り付けられた逆流抑止装置および該装置を備えた排水ますが提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に開口した流出口と、
鉛直方向下向きに開口した流入口と、
鉛直方向上向きに開口した点検口とを備えたT字型の筒状体において、
前記点検口には、蓋部が着脱自在に取り付けられ、そして
前記流入口には、下から上へ向けて前記流入口を通過する排水の流れを許容し、上からから下へ向けて前記流入口を通過する排水の流れを阻止する逆流抑止手段が取り付けられている逆流抑止装置。
【請求項2】
前記逆流抑止手段は、弁体と、前記弁体を回動自在に支持する環状の取付部を備えており、そして
前記弁体は、水平方向に配置されたとき前記取付部の開口部を閉ざし、水平方向よりも上方に回動したとき前記取付部の開口部を開くことを特徴とする請求項1に記載の逆流抑止装置。
【請求項3】
前記取付部は、受口形状を有する第1の接続部と、前記第1の接続部の外周の全部または一部の外側に配置され、差口形状を有する第2の接続部とを有しており、
前記第1の接続部の中心軸と前記第2の接続部の中心軸とは、互いに平行且つ偏心して配置されていることを特徴とする請求項2に記載の逆流抑止装置。
【請求項4】
前記弁体は、水の比重よりも小さな浮力発生部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の逆流抑止装置。
【請求項5】
前記浮力発生部は、前記弁体の中に中空部を形成することにより構成されていることを特徴とする請求項4に記載の逆流抑止装置。
【請求項6】
上部および下部が開口した円筒形の立上り部と、
前記立上り部と連通し、前記立上り部の下部に設けられた有底且つ円筒形の貯留部と
を備えた排水ますにおいて、
前記立上り部の側壁には上流側排水管接続口および下流側排水管接続口とが形成されており、そして
前記下流側排水管接続口には、請求項1から5のいずれか1項の逆流抑止装置の流入口が接続されていることを特徴とする排水ます。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆流抑止装置および該装置を備えた排水ますに関し、特に流出口と流入口と蓋部を備えた点検口とを備えたT字型の筒状体において、下向きに開口した流入口には、該流入口を上へ向けて通過する排水の流れを許容し、該流入口を下へ向けて通過しようとする排水の流れを阻止する逆流抑止手段が取り付けられた逆流抑止装置及びそれを備えた排水ますに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に住宅などのトイレや風呂場、台所等の排水設備から排出される排水は、各排水設備に接続された排水管を経由して宅地内に設置された排水ますに集められ、そして該排水ますに集められた排水は公共ますやマンホールを経由して下水道本管へ流出される。また、建物の屋根等に降った雨水も宅地内の雨水ますに集められ、その後上記の排水経路へ合流される場合がある。
【0003】
そして、上述のような排水(含む雨水)には異物等が混在し異臭も発生することから、一般には、排水経路の途中に、例えば特開2006-112154号公報(特許文献1)に記載されているような排水トラップを設けたり、または特開平11-247281号公報(特許文献2)に記載されているような専用の排水トラップを備えた排水ますを設けることで下水道本管などの下流側排水設備で発生した異臭や逆流水の宅内への浸入防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-112154号公報
【特許文献2】特開平11-247281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載されているような排水トラップは、排水ますとは別個に排水経路の途中に配設しなければならないため、それ専用の設置スペースを確保しなければならないのみならず、排水経路が複雑化し施工の手間も掛かって高コストになるという問題があった。また、特許文献1に記載の排水トラップは逆止弁として球状のフロートを用いているため、フロートと該フロートが上下動する空間の壁面との間に異物が溜まり易く、延いてはフロート(逆止弁)が作動しなくなるという問題もあった。
【0006】
一方、特許文献2に記載の排水ますは排水トラップを内蔵しているため、特許文献1に記載の排水トラップのように専用の設置スペースを確保する必要がない。しかし、特許文献2に記載の排水トラップは下向きにU字型の排水トラップであるので、該トラップ内を頻繁に掃除等しなければ異物が沈降および堆積し、直ぐに詰りを生じてしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、構造が簡単で信頼性が高く封水機能を備えることが可能な逆流抑止装置において、メンテナンスが容易で排水の異物等による詰まりが生じ難く、そして特許文献1に記載の排水トラップのように専用の設置スペースを設ける必要がない逆流抑止装置および該装置を備えた排水ますを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、雨水ますや排水ます等の中に容易に取り付けることが可能な逆流抑止装置の構成や排水ますへの取付態様などについて鋭意検討を重ねた結果、流出口と流入口と蓋部を備えた点検口とを備えたT字型の筒状体において、下向きに開口した流入口には、流入口を上方へ向けて通過する排水の流れを許容し、流入口を下方へ向けて通過する排水の流れを阻止する逆止弁を水平に取り付けることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、水平方向に開口した流出口と、鉛直方向下向きに開口した流入口と、鉛直方向上向きに開口した点検口とを備えたT字型の筒状体において、点検口には蓋部が着脱自在に取り付けられ、そして流入口には、下から上へ向けて流入口を通過する排水の流れを許容し、上から下へ向けて流入口を通過する排水の流れを阻止する逆流抑止手段が取り付けられた逆流抑止装置が提供される。
【0010】
また、本発明において逆流抑止手段は、弁体と、弁体を回動自在に支持する環状の取付部を備え、そして弁体は水平方向に配置されたとき取付部の開口部を閉ざし、水平方向よりも上方に回動したときは取付部の開口部を開くように構成されていることが好ましい。
【0011】
本発明の逆流抑止装置では、逆止弁(弁体)がT字型の筒状体の下向きに開口した流入口へ水平方向に配置され、該弁体が水平位置とそれよりも上側の傾斜した位置との間で回動可能に構成されているので、流入口を上へ向けて通過する排水については弁体が上側に傾くように押圧されて「開」の状態となりその流れを許容する。一方、該流入口を下へ向けて通過しようとする排水については、弁体が水平に配置されるように押圧されて「閉」の状態となりその流れを確実に阻止することができる。
【0012】
本発明の逆流抑止装置では、逆流抑止機能を強化しながら順フロー排水の円滑な流れも保証するため、弁体は、水の比重よりも小さな浮力発生部(中空部)を備えており、下から上に向かって上昇する順フロー排水によって生じる浮力によりスムーズに開くように構成されている。なお、逆流水発生時、弁体の下流側の上面には逆流水が衝突し滞留するが、弁体の上流側の下面には基本的に排水が存在しなくなるので、浮力発生部によって弁体が開く方向に誤作動することがない。
【0013】
本発明において弁体は、取付部を介することなく直接に筒状体の流入口へ取り付けてもよいが、上述したように逆流抑止手段を弁体と取付部とから構成し、取付部を介して筒状体の流入口へ取り付けることにより弁体の着脱が容易となり逆流抑止手段のメンテナンス性が向上する。また、取付部は、筒状体の内部から取り付け取り外し可能に構成してもよく、この場合、逆流抑止装置の蓋部を外すことにより逆流抑止手段を容易にメンテナンスすることができるようになる。
【0014】
本発明の逆流抑止装置は、下部に貯留部を有する排水ますにおいて該装置の流出口を排水ますの流出口へ取り付け、該装置の流入口を貯留部の中に滞留した排水に浸漬するように配置することで容易且つ効果的に封水機能を発揮することもできる。この場合、逆流抑止装置内には下向きU字型の排水トラップのような異物の沈降および堆積を誘引する部分が存在しないので、異物による詰まりが防止されると共に逆流抑止装置内を掃除する手間や頻度も大幅に削減される。
【0015】
また、上述のように本発明の逆流抑止装置が取り付けられた排水ますでは、排水と共に排水ますの中へ流れ込む異物はその比重により該装置の流入口には流れず、排水ますの貯留部の中へ流れて沈降することになる。貯留部は逆流抑止装置よりも大きな空間を有しているので掃除等のメンテナンスが容易であり、さらに貯留部の中に予め取り出し可能なバケット等を準備しておけば、貯留部の中に堆積した異物を極めて簡単に除去することができる。
【0016】
本発明によれば、逆流抑止装置はその本体部分をT字型の筒状体で構成し、逆止弁はフロートタイプではなく単純な片持ち支持の開閉弁を採用しているので極めてシンプルな構造となり、耐久性に優れ、故障や誤作動が殆ど無い高い信頼性を得ることができる。また、T字型の筒状体の上部開口(点検口)には蓋部を着脱可能に配設しているので逆流抑止装置内のメンテナンスが容易になるばかりでなく、筒状体の中の排水の流れが下向きに開口した流入口と横向きに開口した流出口との間に単純化(一本化)され、上述した構造上の単純化による効果と相俟って逆流抑止装置内での詰りを強力に防止することができる。
【0017】
なお、本願明細書において「排水ます」とは汚水経路に用いられる排水ますのみならず、泥、枯葉等の異物が混入することもある雨水経路に用いられる雨水ますを含む概念で用いている。
【0018】
本発明において逆流抑止手段の取付部は、受口形状を有する第1の接続部と、第1の接続部の外周の全部または一部の外側に配置され、差口形状を有する第2の接続部とを有し、第1の接続部の中心軸と第2の接続部の中心軸とが互いに平行且つ偏心するように配置されていてもよい。
【0019】
本発明において逆流抑止手段の取付部を上述のように構成すると、受口形状を有する第1の接続部は弁体の外形(直径など)に合わせて一定の口径としておきながら、その外側の差口形状を有する第2の接続部は、直接に又は口径調節アダプタを介してT字型筒状体の流入口の任意の口径に合わせて接続(外挿)することができるようになる。また、取付部に第1の接続部があると、逆流抑止手段を筒状体の流入口に装着する際に持ち手となり便利である。
【0020】
さらに、筒状体の流入口に取り付けた取付部の第1の接続部に下向きに延びた短管を接続すると、短管内に排水が浸入したとき、液面の上昇により短管内の空気が圧縮されて圧力が高まるので弁体をより開き易くすることができる。また、第1の接続部にトラップ機能を有する部材を接続することで、封水形成による防臭機能を発揮させることもできる。
【0021】
また、第2の接続部は、弁体の外側に配置された差口であるので両端側から配管を接続(外挿)することができ、例えば第2の接続部の一の端部に第1の配管を接続(外挿)し他の端部には第2の配管を接続(外挿)することにより、本発明の逆流抑止装置を管継手として利用することもできる。
【0022】
本発明の逆流抑止装置が適用される排水ますとしては、上部および下部が開口した円筒形の立上り部と、立上り部と連通し立上り部の下部に設けられた有底且つ円筒形の貯留部とを備えており、そして立上り部の側壁には上流側排水管接続口および下流側排水管接続口とが形成されていることが好ましく、該下流側排水管接続口へ本発明の逆流抑止装置の流入口を接続することで、逆流抑止機能および封水機能を備えた排水ますとして利用することできる。
【0023】
本発明において、立上り部の側壁に設けられた上流側排水管接続口と下流側排水管接続口の向きは、それぞれの中心軸が平面視において90°以上270°以下離れていることが好ましく、円滑な排水の流れを促進するためには上流側排水管接続口と下流側排水管接続口とは互いに対向する位置に配置されていることがより好ましい。また、中心軸が上記の取付け範囲(角度)内にあれば、上流側排水管接続口は複数個所設けられていてもよい。
【0024】
また、本発明の逆流抑止装置を備えた排水ますは、成形や施工の容易性など考慮して、立上り部と貯留部とを互いに独立した別部品から構成してもよい。また、コストの低減や加工の容易性など考慮して、立上り部と貯留部とを互いに一体成形された同じ部品としてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、水平方向に開口した流出口と、鉛直方向下向きに開口した流入口と、鉛直方向上向きに開口した点検口とを備えたT字型の筒状体において、点検口には蓋部が着脱自在に取り付けられ、そして流入口には、下から上へ向けて流入口を通過する排水の流れを許容し、上からから下へ向けて流入口を通過する排水の流れを阻止する逆流抑止手段が取り付けられた逆流抑止装置が提供される。
【0026】
本発明の逆流抑止装置では、逆止弁(弁体)がT字型の筒状体の下向きに開口した流入口へ水平方向に配置され、該弁体が水平位置とそれよりも上側の傾斜した位置との間で回動可能に構成されているので、流入口を上へ向けて通過する排水については弁体が上側に傾くように押圧されて「開」の状態となり、一方、該流入口を下へ向けて通過しようとする排水については弁体が水平に配置されるように押圧されて「閉」の状態となり確実に逆流を阻止することができる。
【0027】
本発明の逆流抑止装置は、貯留部を有する排水ますにおいて該装置の流出口を排水ますの流出口へ取り付け、該装置の流入口を貯留部の中に滞留した排水に浸漬するように配置することで容易且つ効果的に封水機能を発揮することもできる。この場合、逆流抑止装置内には下向きU字型の排水トラップのような異物の沈降および堆積を誘引する部分が無いので異物による詰まりが防止されると共に、逆流抑止装置内を掃除する頻度も大幅に削減される。
【0028】
本発明の逆流抑止装置は、主としてT字型の筒状体と単純な片持ち支持の開閉弁から構成されているので極めてシンプルな構造となり、耐久性に優れ、故障や誤作動が殆ど無い高い信頼性を有している。また、T字型の筒状体の上部開口(点検口)には蓋部を着脱可能に配設しているのでメンテナンスが容易になるばかりでなく、排水の流れの単純化および集中化により装置内での詰りを強力に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本体の一部を透明にすることで本発明の逆流抑止装置の取付態様を示した本発明の排水ますの斜視図である。
【
図2】本体の一部を透明にした
図1に示される逆流抑止装置の斜視図である。
【
図3】
図2に示される逆流抑止装置をA-A断面で切り取った断面図である。
【
図4】
図2に示される逆流抑止装置の逆流抑止手段の斜視図である。
【
図5】
図4に示される逆流抑止手段をB-B断面で切り取った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る逆流抑止装置1及びそれを備えた排水ます6について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【0031】
<逆流抑止装置>
図1には、本体の一部を透明にすることで、本発明の一実施形態に係る逆流抑止装置1の取付態様を図示した本発明の一実施形態に係る排水ます6の斜視図が示されている。
図1に示されるように、本実施形態の逆流抑止装置1は、例えば上流側排水管接続口70と下流側排水管接続口71とを有している有底(底部80)の排水ます6などにおいて、その下流側排水管接続口71に取り付けられる。
【0032】
図2には、本体の一部を透明にした
図1に表された逆流抑止装置1の斜視図が示されており、
図3には、
図2に表された逆流抑止装置1をA-A断面で切り取った断面図が示されている。
図2及び
図3に示されるように、本実施形態の逆流抑止装置1はT字型の筒状体2と、蓋部3と、逆流抑止手段4とから構成されている。T字型の筒状体2は水平方向に開口した流出口20と、鉛直方向下向きに開口した流入口21と、鉛直方向上向きに開口した点検口22とを備えており、点検口22には上述した蓋部3が着脱自在に取り付けられ、流入口21には後述する逆流抑止装置1が取り付けられている。筒状体2、蓋部3、逆流抑止手段4から構成される逆流抑止装置1に用いられる材料には特に限定はないが、耐久性、成形性および加工性、コスト面などから塩化ビニル樹脂などのプラスチック材料を用いることが好ましい。
【0033】
ここで、本実施形態の逆流抑止装置1において「水平方向に開口」しているとは、流出口20の中心軸(図示せず)が略水平方向に延び、流出口20の端面が前記中心軸と直交する平面上に形成されている態様を意味している。また、「鉛直方向下向きに開口」しているとは、流入口21の中心軸(図示せず)が略鉛直方向に延び、流入口21の端面が前記中心軸と直交する平面上に下向きに形成されている態様を意味し、「鉛直方向上向きに開口」しているとは、点検口22の中心軸(図示せず)が略鉛直方向に延び、点検口22の端面が前記中心軸と直交する平面上に上向きに形成されている態様を意味している。
【0034】
本実施形態では、逆流抑止装置1の本体部分を構成するT字型の筒状体2の3つの開口部20,21,22のうち、通常点検口22には蓋部3が装着されて密閉されているので、筒状体2の中の流路は90°エルボのように下向きに開口した流入口21と横向きに開口した流出口20との間に単純化(一本化)される。そのため、筒状体2内の排水の流れも上記の流路に集約化され、構造上の単純化による効果と相俟って逆流抑止装置1内での詰りも強力に防止される。また、筒状体2は90°エルボとは異なり点検口22を備えているので、逆流抑止装置1を排水ます6の下流側排水管接続口71から取り外すことなく容易に下流側排水管の点検等を行うことができる。
【0035】
また、本実施形態の逆流抑止装置1は、90°エルボとは異なり点検口22を有しているので、蓋部3を外せば容易に逆流抑止手段4へアクセスすることができ容易にメンテナンスを行うことができる。特に本実施形態のように逆流抑止手段4の弁体40が逆流抑止装置1の内部へ向けて回動するような場合、90°エルボのような構造では弁体40の上面(下流側)に溜まった異物等を取り除くことが困難となるため、弁体40の上部に点検口22を設けることが極めて重要になる。
【0036】
蓋部3の着脱機構は、特に限定がなく公知の着脱機構を用いることができるが、蓋部3の着脱が容易であり、それでいて蓋部3を点検口22に装着したときは排水圧等による脱落を確実に防止できる観点などから、例えば蓋部3および点検口22に雄ネジ、雌ネジを切ることによるネジ止め機構やバヨネット機構などを用いることが好ましい。
【0037】
図4には
図2に表された逆流抑止装置1の逆流抑止手段4の斜視図が示されており、
図5には
図4に表された逆流抑止手段4をB-B断面で切り取った断面図が示されている。
図4及び
図5に示されるように、本実施形態の逆流抑止手段4は、弁体40と、弁体40を片持ちで回動自在に支持する環状の取付部41を備え、そして弁体40が水平に配置されるように、別言すれば弁体40と当接する取付部41の弁座部(開口部)410が水平に配置されるように逆流抑止装置1の流入口21に取り付けられている。
【0038】
本実施形態において弁体40は、取付部41を用いることなく直接に筒状体2の流入口21へ取り付けてもよいが(図示せず)、上述したように逆流抑止手段4を弁体40と取付部41とから構成し、取付部41を用いて筒状体2の流入口21へ取り付けるようにすることで弁体40の取付精度が向上し、また筒状体2からの着脱も容易となって逆流抑止手段4のメンテナンス性が向上する。また、図示しないが、取付部41は筒状体の内部から取り付け取り外し可能に構成してもよく、この場合、逆流抑止装置1の蓋部3を外すことにより逆流抑止手段4を容易にメンテナンスすることができるようになる。
【0039】
そして、本実施形態では、弁体40は、水平方向に配置されると取付部41の開口部(弁座部)410を閉ざし、水平方向よりも上方に回動すると取付部41の開口部(弁座部)410を開くように作動する。
【0040】
すなわち、本実施形態の逆流抑止装置1は、弁体40が筒状体2の下向きに開口した流入口21へ水平方向に配置され、弁体40が該水平位置とそれよりも上側の傾斜した位置との間で回動可能に取り付けられているので、流入口21を下から上へ向けて通過する順フローの排水については弁体40が上側に傾くように押圧されて「開」の状態となり、その流れを許容する。一方、流入口21を上から下へ向けて通過しようとする逆フローの排水については、弁体40が水平位置に配置されるように押圧されて「閉」の状態となり、その流れを確実に阻止することができる。
【0041】
このように、本実施形態の逆流抑止装置1では、その本体部分をT字型の筒状体2で構成し、逆止弁はフロートタイプではなく単純な片持ち支持の開閉弁体40を採用しているので、極めてシンプルな構造となり、耐久性に優れ故障や誤作動が殆ど無い信頼性の高い装置を得ることができる。
【0042】
本実施形態では、逆流抑止機能を強化する目的で、弁体40は、逆流水によって閉じる方向へ大きな押圧力を受けるようにその上面(下流側表面)を下向き(上流側)に凹ませた形状としている(
図3,5)。また、平常時の順フロー排水の円滑な流れを優先する場合、弁体40は、順フロー排水によって開く方向へ大きな押圧力を受けるようにその下面(上流側表面)を上向き(下流側)に凹ませた形状としてもよい。
【0043】
本実施形態では、逆流抑止機能を強化しながら順フロー排水の円滑な流れも保証するため、弁体40は、水の比重よりも小さな浮力発生部(中空部)400を備えており、下から上に向かって上昇する順フロー排水によって生じる浮力によりスムーズに開くように構成されている。浮力発生部400は、上述のように弁体40の中に中空部を形成することの他、弁体自体を水の比重よりも小さな樹脂材料から形成したり、或いは弁体40へ水の比重よりも小さな樹脂材料からなる浮力発生部を取り付けることによって構成してもよい。
【0044】
なお、逆流水発生時、弁体40の凹んだ下流側の上面には逆流水が衝突し滞留するが、弁体40の上流側の下面には基本的に排水が存在しなくなるので、浮力発生部400によって弁体40が開く方向に誤作動することがない。
【0045】
図5に示されるように、本実施形態では、逆流抑止手段4の取付部41は受口形状を有する第1の接続部411と、第1の接続部411の外周の全部または一部の外側に配置されそして差口形状を有する第2の接続部412とを備えており、第1の接続部411の中心軸aと第2の接続部412の中心軸bとは互いに平行且つ偏心するように配置されている。すなわち、第1の接続部411と第2の接続部412とは、弁体40の回動軸付近では互いに分離した二重管構造を形成しているが、回動軸から180°回転した対向領域では互いに一体となった一重管構造を形成している。
【0046】
また、図示しないが、第2の接続部は第1の接続部の外周の全部の外側に配置されていてもよく、第1の接続部の中心軸と第2の接続部の中心軸とは互いに同軸上に配置されていてもよい。この場合、第1の接続部と第2の接続部とは全周において互いに分離した二重管構造を形成している。
【0047】
逆流抑止手段4の取付部41は、上述のように第1の接続部411と第2の接続部412とを有しているので、受口形状を有する第1の接続部411は弁体40の外形(直径など)に合わせて一定の口径としておきながら、その外側で、差口形状を有する第2の接続部412は直接に又は口径調節アダプタ等を介してT字型筒状体2の流入口21に取り付けることが可能となる。このため、第2の接続部412は任意の口径の流入口21に対して容易に接続(内挿)することができるようになる。また、取付部41に第1の接続部411があると、逆流抑止手段4を筒状体2の流入口に21装着する際に持ち手となり便利である。
【0048】
さらに、筒状体2の流入口21に取り付けた取付部41の第1の接続部411に下向きに延びた短管(図示せず)を接続すると、短管内に排水が浸入したとき、液面の上昇により短管内の空気が圧縮されて圧力が高まるので弁体をより開き易くすることができる。また、第1の接続部411にトラップ機能を有する部材(図示せず)を接続することで、封水形成による防臭機能を発揮させることもできる。
【0049】
また、第2の接続部412は、弁体40の外側に配置された差口であるので両端側から配管を接続(外挿)することが可能であり、例えば第2の接続部412の一の端部に第1の配管を接続(外挿)し他の端部には第2の配管を接続(外挿)することにより逆流抑止装置1を管継手として利用することもできる。
【0050】
<逆流抑止装置を備えた排水ます>
本実施形態の逆流抑止装置1は、一般的な排水ます6の流出口(下流側排水管接続口71)へ該装置1の流出口20を取り付けることにより封水機能を発揮させることができる。具体的には、封水機能を発揮することが可能な本実施形態の排水ます6は、
図1に示されるように、上部および下部が開口した円筒形の立上り部7と、立上り部7と連通し立上り部7の下部に設けられた有底(底部80)且つ円筒形の貯留部8とを備え、そして立上り部7の側壁には上流側排水管接続口70および下流側排水管接続口71とが形成されている。立上り部7、貯留部8若しくはそれが一体成形された排水ます6に用いられる材料には特に限定はなく、塩化ビニル樹脂などのプラスチック材料またはコンクリート材料若しくはそれらの組み合わせ材料であってもよい。
【0051】
そして流出口(下流側排水管接続口71)へ上述した逆流抑止装置1の流出口20を接続し、該装置1の流入口21を排水ます6の貯留部8に溜まった排水に浸漬するように配置することにより、逆流防止機能および封水機能を発揮することが可能な本実施形態の排水ます6を構成することができる。
【0052】
このように、本実施形態の排水ます6では、貯留部8は、上流側排水管接続口70の底部および下流側排水管接続口71の底部よりも下方において排水を溜めることが可能な空間を有していればよい。そのため、貯留部8に溜まった排水に浸漬するように配置される逆流抑止装置1の流入口21は、その端面が上流側排水管接続口70の底部および下流側排水管接続口71の底部よりも下方に配置されている。また、通常排水は上流側排水管接続口70から排水ます6の中を通って下流側排水管接続口71へ流れるので、下流側排水管接続口71の底部は上流側排水管接続口70の底部と同じレベルか又はそれよりも低いレベルに配置されている。
【0053】
本実施形態の排水ます6では、貯留部8に溜まった排水が減少することで逆流抑止装置1の流入口21が排水に浸漬しなくなっても逆流抑止機能は維持され、さらに弁体40は自重により水平に配置されて閉じた状態となるので疑似封水による防臭機能も働いて、異物や悪臭等が下流側排水管から上流側排水管へ流れ込むのを効果的に防止することができる。
【0054】
一方、貯留部8に溜まった排水が増加すれば、本実施形態の排水ます6では、逆流抑止装置1の流入口21の端面は少なくとも下流側排水管接続口71の底部よりも下方に配置されているので再び排水に浸漬することになり、排水ます6本来の逆流防止機能および封水機能を発揮するようになる。
【0055】
このように、本実施形態の排水ます6では、逆流抑止装置1内に下向きU字型の排水トラップのような異物等の沈降および堆積を誘引する部分を有していないので、異物による詰まりが防止されると共に逆流抑止装置1内を掃除する手間や頻度も大幅に削減される。
【0056】
また、本実施形態の排水ます6では、排水と共に排水ます6の中へ流れ込む異物等はその比重により逆流抑止装置1の流入口21には流れず、流入口21の手前に配置された排水ます6の貯留部8の中へ流れて沈降することになる。貯留部8は逆流抑止装置1よりも大きな空間を有しているので掃除等のメンテナンスが容易であり、さらに貯留部8の中に予め取り出し可能なバケット等を準備しておけば、貯留部8の中に堆積した異物を容易に除去することができようになる。
【0057】
本実施形態において、立上り部7の側壁に設けられた上流側排水管接続口70と下流側排水管接続口71の向きは、それぞれの中心軸が平面視において90°以上270°以下離れていることが好ましく、円滑な排水の流れを促進するためには、
図2に示されるように上流側排水管接続口70と下流側排水管接続口71とは互いに対向する位置に配置されていることがより好ましい。また、中心軸が上記の取付け範囲(角度)内にあれば、上流側排水管接続口71は複数個所設けられていてもよい。
【0058】
また、本実施形態の逆流抑止装置1を備えた排水ます6は、成形や施工の容易性など考慮して立上り部7と貯留部と8を互いに独立した別部品から構成してもよい。また、コストの低減や加工の容易性など考慮して、立上り部7と貯留部8とを互いに一体成形された同じ部品としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1・・・・・逆流抑止装置
2・・・・・T字型の筒状体
20・・・・流出口
21・・・・流入口
22・・・・点検口
3・・・・・蓋部
4・・・・・逆流抑止手段
40・・・・弁体
400・・・浮力発生部
41・・・・取付部
410・・・弁座部(開口部)
411・・・第1の接続部
412・・・第2の接続部
6・・・・・排水ます
7・・・・・立上り部
70・・・・上流側排水管接続口
71・・・・下流側排水管接続口
8・・・・・貯留部
80・・・・底部
a・・・・・第1の接続部の中心軸
b・・・・・第2の接続部の中心軸