(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061285
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/38 20060101AFI20240425BHJP
H02K 3/52 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H02K3/38 A
H02K3/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169139
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】二宮 祐太
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604DB26
5H604PB04
5H604QB04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイルとハウジングとの絶縁を確保しつつ、径方向に大型化することを抑制できる回転電機を提供する。
【解決手段】ロータの径方向外側に配置されるステータと、絶縁性を有する帯状のシート部材60と、ロータ、ステータおよびシート部材を収容するハウジングと、を備える。ステータは、ステータコア31と、環状の環状部34を有するインシュレータと、収容部39とを有する。環状部の大径部の外径34aは、ステータコアの外径よりも小さく、小径部34dの外径よりも大きい。収容部は、小径部の径方向外側向く面、大径部の軸方向を向く面のうちステータコアと対向する面、およびステータコアの軸方向を向く面のうち大径部と対向する面によって構成される。シート部材の一部は、大径部の外周面に周方向に沿って巻き付けられ、シート部材の少なくとも一部は、収容部の内部に収容可能である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転可能なロータと、
前記ロータの径方向外側に配置され、前記ロータと径方向に隙間を介して対向するステータと、
絶縁性を有する帯状のシート部材と、
前記ロータ、前記ステータおよび前記シート部材を内部に収容するハウジングと、
を備え、
前記ステータは、
前記ハウジングに外周面を固定されるステータコアと、
前記ステータコアの少なくとも一部を軸方向に覆う環状の環状部を有するインシュレータと、
収容部と、
を有し、
前記環状部は、前記中心軸を中心とする環状の大径部と、軸方向において前記大径部と前記ステータコアとの間に配置され、前記中心軸を中心とする環状の小径部と、を有し、
前記小径部は、前記大径部と軸方向に繋がり、
前記大径部の外径は、前記ステータコアの外径よりも小さく、かつ、前記小径部の外径よりも大きく、
前記収容部は、前記小径部の径方向外側向く面、前記大径部の軸方向を向く面のうち前記ステータコアと対向する面、および前記ステータコアの軸方向を向く面のうち前記大径部と対向する面によって構成され、
前記シート部材の一部は、前記大径部の外周面に周方向に沿って巻き付けられ、前記シート部材の少なくとも一部は、前記収容部の内部に収容可能な回転電機。
【請求項2】
前記環状部の軸方向一方側に配置され、前記中心軸と直交する方向に広がる第1回路基板を備え、
前記第1回路基板は、前記ハウジングの内部に収容され、
前記ステータは、前記インシュレータに装着される複数のコイル本体部と、前記コイル本体部から軸方向一方側に引き出され、前記第1回路基板と接続されるコイル引出線と、を有するコイル部を有し、
前記シート部材は、前記第1回路基板の外周面に巻き付けられ、
前記シート部材は、前記コイル引出線を径方向外側から囲む、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記第1回路基板は、前記中心軸を中心とする円形状であり、
前記第1回路基板は、前記大径部の外径の寸法と同じ寸法である、請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
軸方向において、前記ステータコアと前記第1回路基板の間に配置され、前記中心軸を中心とする円板状の第2回路基板を備え、
前記第2回路基板の外径の寸法は、前記大径部の外径の寸法と同じ寸法であり、
前記シート部材は、前記第2回路基板の外周面に巻き付けられる、請求項2に記載の回転電機。
【請求項5】
前記大径部は、前記大径部の径方向外側を向く面から径方向内側に窪む溝部を有し、
前記溝部の内部には、電気を通す接続線が配置され、
前記シート部材は、前記接続線と径方向外側から対向する、請求項1から4のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記シート部材は、絶縁性を有するシート状の基材部と、前記基材部の内周面に設けられる接着層と、を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項7】
前記シート部材は、互いに径方向に重なって配置される複数の前記基材部によって構成され、
前記複数の基材部同士は、前記接着層を介して固定される、請求項6に記載の回転電機。
【請求項8】
前記収容部の径方向の寸法は、前記シート部材の厚さよりも大きい、請求項1から4のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項9】
前記収容部の軸方向の寸法は、前記シート部材の厚さの2倍以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
ステータに装着される複数のコイル本体部同士を渡り線(接続線)によって接続する構成のモータが知られている。例えば、特許文献1には、樹脂製の渡り線絶を、ステータの外周に圧入した支持壁の外周に這わせた渡り線とハウジングとの間に配置して、渡り線とハウジングとの絶縁を確保する構成のモータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモータにおいては、渡り線絶が樹脂成型によって成形されるため、渡り線絶の径方向の寸法が大きくなり易い。したがって、ハウジングが径方向に大型化し易くなるため、回転電機が径方向に大型化する虞があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、コイルとハウジングとの絶縁を確保しつつ、径方向に大型化することを抑制できる回転電機を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転電機の一つの態様は、中心軸を中心として回転可能なロータと、前記ロータの径方向外側に配置され、前記ロータと径方向に隙間を介して対向するステータと、絶縁性を有する帯状のシート部材と、前記ロータ、前記ステータおよび前記シート部材を内部に収容するハウジングと、を備える。前記ステータは、前記ハウジングに外周面を固定されるステータコアと、前記ステータコアの少なくとも一部を軸方向に覆う環状の環状部を有するインシュレータと、収容部と、を有する。前記環状部は、前記中心軸を中心とする環状の大径部と、軸方向において前記大径部と前記ステータコアとの間に配置され、前記中心軸を中心とする環状の小径部と、を有する。前記小径部は、前記大径部と軸方向に繋がる。前記大径部の外径は、前記ステータコアの外径よりも小さく、かつ、前記小径部の外径よりも大きい。前記収容部は、前記小径部の径方向外側向く面、前記大径部の軸方向を向く面のうち前記ステータコアと対向する面、および前記ステータコアの軸方向を向く面のうち前記大径部と対向する面によって構成される。前記シート部材の一部は、前記大径部の外周面に周方向に沿って巻き付けられ、前記シート部材の少なくとも一部は、前記収容部の内部に収容可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、回転電機において、コイルとハウジングとの絶縁を確保しつつ、径方向に大型化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の回転電機を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のステータコアを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の回転電機の一部分を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のインシュレータを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の回転電機の一部を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態のテープ部材を示す断面図である。
【
図7A】
図7Aは、第1実施形態の回転電機の巻付工程を示す斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、第1実施形態の回転電機の巻付工程を示す第1の断面図である。
【
図7C】
図7Cは、第1実施形態の回転電機の巻付工程を示す第2の断面図である。
【
図7D】
図7Dは、第1実施形態のステータ固定工程を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の回転電機の一部を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の回転電機の他の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る回転電機について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0010】
以下の説明において図には、適宜、Z軸を示す。Z軸は、回転電機1の中心軸Jが延びる方向を示す。各図に示す中心軸Jは、仮想軸線である。以下の説明において、中心軸Jが延びる方向、つまりZ軸と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)を「軸方向一方側」または「上側」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「軸方向他方側」または「下側」と呼ぶ。なお、上側および下側は、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
周方向は、各図において矢印θで示されている。周方向のうち矢印θが向く側(+θ側)を「周方向一方側」と呼ぶ。周方向のうち矢印θが向く側と逆側(-θ側)を「周方向他方側」と呼ぶ。周方向一方側は、上側から見て中心軸J回りに反時計回りに進む側である。周方向他方側は、上側から見て中心軸J回りに時計回りに進む側である。
【0012】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の回転電機1は、車両に搭載される機器等に取り付けられるモータである。回転電機1が取り付けられる機器は、自動変速機であってもよいし、車両の車軸を駆動する駆動装置であってもよい。本実施形態の回転電機1は、インナーロータ型の三相ブラシレスDCモータである。回転電機1は、ハウジング11と、ロータ20と、ステータ30と、制御装置70と、シート部材60と、を備える。
【0013】
ハウジング11は、ロータ20、ステータ30、制御装置70、およびシート部材60を内部に収容する。本実施形態において、ハウジング11は、金属製である。ハウジング11は、導電性を有する。ハウジング11は、ハウジング部材12と、蓋部材13と、を有する。
【0014】
ハウジング部材12は、ロータ20、ステータ30、制御装置70、およびシート部材60を内部に収容する。ハウジング部材12は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。ハウジング部材12の上側の端部には、上側に開口する開口部12dが設けられる。ハウジング部材12は、周壁部12aと、底壁部12bと、第2ベアリング保持部12cと、を有する。
【0015】
周壁部12aは、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。周壁部12aは、ロータ20、ステータ30、制御装置70、およびシート部材60を径方向外側から囲む。周壁部12aの内周面には、ステータ30が固定される。周壁部12aの内周面には、上側を向く段差面12fが設けられる。
【0016】
底壁部12bは、中心軸Jを中心とする円環板状である。底壁部12bの板面は、軸方向を向く。底壁部12bの径方向外縁は、周壁部12aの下端と繋がる。底壁部12bには、軸方向に貫通する孔部12eが設けられる。孔部12eは、中心軸Jを中心とする円形状の孔である。第2ベアリング保持部12cは、底壁部12bから上側に突出する中心軸Jを中心とする円環状である。
【0017】
蓋部材13は、ハウジング部材12の上端に固定される。蓋部材13は、開口部12dを上側から塞ぐ。蓋部材13は、蓋本体部13aと、第1ベアリング保持部13bと、を有する。
【0018】
蓋本体部13aは、中心軸Jを中心とする円板状である。蓋本体部13aの板面は、軸方向を向く。蓋本体部13aの径方向外縁は、ハウジング部材12の上端と固定される。第1ベアリング保持部13bは、蓋本体部13aから下側に突出する中心軸Jを中心とする円環状である。
【0019】
ロータ20は、中心軸Jを中心として回転可能である。ロータ20は、ロータコア21と、シャフト22と、図示しない複数の磁石と、第1ベアリング91と、第2ベアリング92と、を有する。
【0020】
ロータコア21は、中心軸Jを中心とする円環状である。ロータコア21の内部には、シャフト22が軸方向に通される。ロータコア21の内周面には、シャフト22が固定される。図示しない複数の磁石は、ロータコア21に固定される。複数の磁石は、それぞれ、周方向に沿って間隔をあけて配置される。
【0021】
シャフト22は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。シャフト22の上側の部分は、ロータコア21よりも上側に延び、第1ベアリング91に支持される。シャフト22の下側の部分は、ロータコア21よりも下側に延び、孔部12eを介して、ハウジング11の外部に突出する。シャフト22の下側の部分は、第2ベアリング92に支持される。
【0022】
第1ベアリング91は、シャフト22のうちロータコア21よりも上側の部分を中心軸J回りに回転可能に支持する。第1ベアリング91は、第1ベアリング保持部13bに保持される。第2ベアリング92は、シャフト22のうちロータコア21よりも下側の部分を中心軸J回りに回転可能に支持する。第2ベアリング92は、第2ベアリング保持部12cに保持される。これらにより、ロータ20は中心軸Jを中心として回転可能である。本実施形態において、第1ベアリング91および第2ベアリング92は、ボールベアリングである。第1ベアリング91および第2ベアリング92は、すべり軸受であってもよい。
【0023】
ステータ30は、ロータ20の径方向外側に配置される。ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向する。ステータ30は、ステータコア31と、インシュレータ32と、コイル部38と、収容部39と、を有する。ステータ30は、コイル部38に電流が流れることで磁場を発生させる。ステータ30に発生する磁場の磁極と、ロータ20が有する図示しない複数の磁石との磁気力によって、ロータ20に回転トルクが発生する。
【0024】
ステータコア31は、中心軸Jを中心とする環状である。ステータコア31は、ロータコア21を径方向外側から囲む。ステータコア31の外周面は、周壁部12aに固定される。すなわち、ステータコア31の外周面は、ハウジング11に固定される。ステータコア31の下側を向く面の径方向外縁は、ハウジング部材12の段差面12fと軸方向に接触する。これにより、ハウジング11に対するステータ30の軸方向の位置が決まる。
図2に示すように、ステータコア31は、コアバック部31aと、複数のティース部31bと、を有する。
【0025】
コアバック部31aは、中心軸Jを中心とする環状である。
図1に示すように、コアバック部31aの外周面は、周壁部12aの内周面に固定される。これにより、ステータ30は、ハウジング11に固定される。
図2に示すように、コアバック部31aは、径方向内側を向く複数の第1内側面31cを有する。軸方向に見て、複数の第1内側面31cのそれぞれは、円弧状である。複数の第1内側面31cは、周方向に沿って略等間隔をあけて配置される。本実施形態において、第1内側面31cは、12個設けられる。
【0026】
複数のティース部31bのそれぞれは、コアバック部31aの内周面から径方向内側に突出する。複数のティース部31bは、コアバック部31aの内周面に沿って並んで配置される。本実施形態において、ティース部31bは、12個設けられる。
図1に示すように、各ティース部31bの径方向内側を向く面は、ロータコア21の外周面と径方向に間隔をあけて対向する。
【0027】
インシュレータ32は、ステータコア31とコイル部38とを絶縁する。
図3および
図4に示すように、インシュレータ32は、インシュレータ本体部33と、環状部34と、複数の柱状部35と、を有する。なお、インシュレータ32は、詳細な図示を省略するが、インシュレータ本体部33の軸方向中程で分離する2部材から構成される。インシュレータ32の2部材は、ステータコア31に対し軸方向一方側、および他方側からそれぞれ装着され、ステータコア31の軸方向中程で対向する。
【0028】
インシュレータ本体部33は、ステータコア31の一部を囲む。
図4に示すように、インシュレータ本体部33は、壁部33bと、ティース収容部33cと、を有する。
【0029】
壁部33bは、軸方向に延びる板状である。壁部33bの板面は、径方向を向く。軸方向に見て、壁部33bは、円弧状である。壁部33bは、周方向に沿って略等間隔をあけて複数配置される。本実施形態において、壁部33bは、12個設けられる。各壁部33bのそれぞれは、
図2に示すステータコア31の第1内側面31cの径方向内側に配置される。これにより、コイル部38とコアバック部31aとが絶縁される。
【0030】
図4に示すように、ティース収容部33cは、壁部33bから、径方向内側に突出する中空の略直方体状である。ティース収容部33cは、周方向に沿って等間隔をあけて複数配置される。本実施形態において、ティース収容部33cは、12個設けられる。図示は省略するが、各ティース収容部33cのそれぞれは、各ティース部31bのそれぞれを内部に収容する。各ティース収容部33cのそれぞれは、各ティース部31bのそれぞれに装着される。これにより、コイル部38とティース部31bとが絶縁される。
【0031】
環状部34は、中心軸Jを中心とする環状である。
図5に示すように、環状部34の径方向内縁は、ティース収容部33cの径方向外縁と径方向に繋がる。環状部34は、ステータコア31の上側に配置される。環状部34は、ステータコア31の上側、すなわち軸方向一方側(+Z側)の少なくとも一部を覆う。すなわち、環状部34は、ステータコア31の少なくとも一部を軸方向に覆う。本実施形態において、環状部34の下端は、ステータコア31の上側を向く面と軸方向に接触する。なお、環状部34は、ステータコア31と軸方向に離れて配置されてもよい。環状部34は、大径部34aと、小径部34dと、を有する。
【0032】
大径部34aは、中心軸Jを中心とする環状である。大径部34aは、環状部34のうち上側の部分である。大径部34aの外径は、ステータコア31の外径よりも小さい。大径部34aの外周面は、ステータコア31の外周面よりも径方向内側に位置する。大径部34aには、溝部34bが設けられる。溝部34bは、大径部34aの外周面、すなわち径方向外側を向く面から径方向内側に窪む。
図4に示すように、溝部34bは、大径部34aの外周面に沿って周方向一周に亘って設けられる。
【0033】
小径部34dは、中心軸Jを中心とする環状である。
図5に示すように、軸方向において、小径部34dは、大径部34aとステータコア31との間に配置される。小径部34dは、大径部34aの下側、すなわち軸方向他方側(-Z側)の端部と軸方向に繋がる。小径部34dは、環状部34のうち下側の部分である。小径部34dの外径は、大径部34aの外径よりも小さい。すなわち、大径部34aの外径は、小径部34dの外径よりも大きい。小径部34dの外径は、ステータコア31の外径よりも小さい。小径部34dの下側を向く面は、ステータコア31の上側、すなわち軸方向一方側(+Z側)を向く面と対向する。本実施形態において、小径部34dの下側を向く面は、ステータコア31の上側を向く面と接触する。なお、小径部34dの下側を向く面は、ステータコア31の上側を向く面と間隔をあけて配置されてもよい。
【0034】
収容部39は、小径部34dの径方向外側を向く面、大径部34aの下側、すなわち軸方向他方側(-Z側)を向く面、およびステータコア31の上側、すなわち軸方向一方側(+Z側)を向く面によって構成される。すなわち、収容部39は、小径部34dの径方向外側を向く面、大径部34aの軸方向を向く面のうちステータコア31と対向する面、およびステータコア31の軸方向を向く面のうち大径部34aと対向する面によって構成される。収容部39は、大径部34aの外周面およびステータコア31の外周面よりも径方向内側に位置する。収容部39は、径方向内側に窪む穴状である。収容部39は、周方向一周に亘って構成される。
【0035】
図4に示すように、複数の柱状部35のそれぞれは、環状部34から上側に延びる柱状である。
図1に示すように、複数の柱状部35のそれぞれは、制御装置70の後述する第2回路基板72を保持する。
図4に示すように、複数の柱状部35のそれぞれは、周方向に沿って略等間隔をあけて配置される。本実施形態において、柱状部35は、12個設けられる。複数の柱状部35は、複数の第1柱状部36と、複数の第2柱状部37と、を含む。
【0036】
本実施形態において、第1柱状部36は、8個設けられる。各第1柱状部36は、略直方体状である。本実施形態において、第2柱状部37は、4個設けられる。各第2柱状部37は、周方向に沿って略等間隔をあけて配置される。各第2柱状部37の上端は、第1柱状部36の上端よりも上側に位置する。各第2柱状部37は、爪部37aを有する。爪部37aは、第2柱状部37の上側の端部に位置し、径方向内側に突出する。
【0037】
コイル部38は、制御装置70と電気的に接続され、制御装置70から電流が供給される。
図3に示すように、コイル部38は、複数のコイル本体部38aと、複数のコイル引出線38bと、複数の接続線38cと、を有する。
【0038】
複数のコイル本体部38aのそれぞれは、各ティース収容部33cに装着される。すなわち、複数のコイル本体部38aのそれぞれは、インシュレータ32に装着される。これにより、複数のコイル本体部38aのそれぞれは、ティース収容部33cを介してティース部31bに装着される。
【0039】
コイル引出線38bは、コイル本体部38aから上側、すなわち軸方向一方側(+Z側)に引き出される。本実施形態において、コイル引出線38bは、3個設けられる。各コイル引出線38bの上端は、制御装置70の後述する第1回路基板71と接続される。これにより、制御装置70とコイル部38とが電気的に接続される。
【0040】
複数の接続線38cのそれぞれは、1対のコイル本体部38a同士を繋ぐ。各接続線38cには、電流が流れる。これにより、複数のコイル本体部38a同士が電気的に接続される。各接続線38cは、柱状部35の径方向外側を周方向に通される。
図5に示すように、各接続線38cのうち、柱状部35よりも径方向外側の部分は、環状部34の溝部34bの内部に配置される。
【0041】
制御装置70は、図示しない外部電源と電気的に接続され、コイル部38に供給する電流を制御する。
図1に示すように、制御装置70は、ハウジング11の内部に収容される。制御装置70は、ステータ30の上側に配置される。制御装置70は、第1回路基板71と、第2回路基板72と、接続部材75と、を有する。
【0042】
第1回路基板71は、環状部34の上側、すなわち軸方向一方側(+Z側)に配置される。第1回路基板71は、ハウジング11の内部に収容される。第1回路基板71には、図示しない複数の電子部品が取り付けられる。
図3に示すように、第1回路基板71は、中心軸Jと直交する方向に広がる板状である。本実施形態において、第1回路基板71は、軸方向に見て中心軸Jを中心とする円形状である。第1回路基板71は、軸方向に見て六角形状および楕円形状等の他の形状であってもよい。
図5に示すように、本実施形態において、第1回路基板71の外径の寸法は、大径部34aの外径の寸法と同じ寸法である。
図3に示すように、第1回路基板71には、第1貫通孔71aおよび複数の第1接続孔部71bが設けられる。
【0043】
図1に示すように、第1貫通孔71aは、第1回路基板71を軸方向に貫通する孔である。軸方向に見て、第1貫通孔71aは、中心軸Jを中心とする略円形状である。第1貫通孔71aには、シャフト22が軸方向に通される。
【0044】
図3に示すように、複数の第1接続孔部71bのそれぞれは、第1回路基板71を軸方向に貫通する孔である。第1接続孔部71bは、3個設けられる。各第1接続孔部71bは、第1回路基板71の外周面から径方向内側に向かうにしたがって、周方向に傾斜して延びる。各第1接続孔部71bには、コイル引出線38bが軸方向に通される。これにより、各コイル引出線38bを第1回路基板71の外周面よりも径方向内側に配置できる。各第1接続孔部71bと各コイル引出線38bとは、はんだによって固定される。これにより、制御装置70は、各コイル引出線38bと接続される。本実施形態では、制御装置70と各コイル引出線38bとが、例えば、バスバーなどの中間部材を用いることなく、直接接続される。そのため、回転電機1の部品点数および製造工数が増大することを抑制できる。
【0045】
図1に示すように、第2回路基板72は、軸方向において、環状部34と第1回路基板71との間に配置される。第2回路基板72は、ハウジング11の内部に収容される。第2回路基板72には、図示しない複数の電子部品が取り付けられる。
図3に示すように、第2回路基板72は、中心軸Jと直交する方向に広がる円板状である。第2回路基板72は、軸方向に見て六角形状および楕円形状等の他の形状であってもよい。
図5に示すように、本実施形態において、第2回路基板72の外径の寸法は、大径部34aの外径の寸法と同じ寸法である。
図3に示すように、第2回路基板72には、第2貫通孔72a、複数の第1凹部72b、および複数の第2凹部72eが設けられる。
【0046】
図1に示すように、第2貫通孔72aは、第2回路基板72を軸方向に貫通する孔である。軸方向に見て、第2貫通孔72aは、中心軸Jを中心とする略円形状である。第2貫通孔72aには、シャフト22が軸方向に通される。
【0047】
図3に示すように、複数の第1凹部72bは、第2回路基板72の外周面から径方向内側に窪む。図示は省略するが、本実施形態において、第1凹部72bは、3個設けられる。各第1凹部72bの内部には、各コイル引出線38bが軸方向に通される。これにより、各コイル引出線38bを、第2回路基板72の外周面よりも径方向内側に配置できる。
【0048】
複数の第2凹部72eは、第2回路基板72の外周面から径方向内側に窪む。図示は省略するが、本実施形態において、第2凹部72eは、4個設けられる。各第2凹部72eの内部には、第2柱状部37が軸方向に通される。第2回路基板72の上側を向く面は、各第2柱状部37の爪部37aの下側を向く面と接触する。また、第2回路基板72の下側を向く面は、各第1柱状部36の上側を向く面と接触する。これらにより、第2回路基板72の軸方向の位置が決まる。また、各第2凹部72eの径方向外側を向く面は、各第2柱状部37の径方向内側を向く面と接触する。これにより、第2回路基板72の径方向の位置が決まる。
【0049】
複数の接続部材75のそれぞれは、第1回路基板71と第2回路基板72の間に配置される。図示は省略するが、本実施形態において、接続部材75は、3個設けられる。各接続部材75の上端は、第1回路基板71に固定される。各接続部材75の下端は、第2回路基板72に固定される。これらにより、第2回路基板72に対する第1回路基板71の軸方向の位置が決まる。本実施形態において、接続部材75は、第1回路基板71と第2回路基板72とを電気的に接続する基板間コネクタである。第1回路基板71と第2回路基板72との間における信号の送受信は、各接続部材75を介して行われる。つまり、本実施形態において、各接続部材75は、第1回路基板71と第2回路基板72とを電気的に接続する役割を担うとともに、第1回路基板71を保持する役割を担う。したがって、本実施形態では、第1回路基板71をインシュレータ32やハウジング11等に固定するための、固定部材やねじなどの別途の部材を設ける必要が無いため、回転電機1の部品点数および製造工数が増大することを抑制できる。
【0050】
シート部材60は、絶縁性を有する帯状である。
図1に示すように、径方向において、シート部材60は、環状部34、第1回路基板71、および第2回路基板72と、ハウジング11の周壁部12aとの間に配置される。
図5に示すように、シート部材60は、大径部34a、第2回路基板72、および第1回路基板71それぞれの外周面に周方向に沿って巻き付けられる。シート部材60は、大径部34a、第2回路基板72、および第1回路基板71それぞれの外周面に固定される。シート部材60の上端は、第1回路基板71の外周面に巻き付けられる。シート部材60の下端は、環状部34の外周面に巻き付けられる。なお、以下の説明では、「大径部34a、第1回路基板71、および第2回路基板72」を「大径部34a等」と呼ぶ場合がある。
【0051】
図5に示すように、シート部材60は、インシュレータ32の溝部34bに収容される接続線38cを径方向外側から囲む。つまり、本実施形態によれば、シート部材60は、接続線38cと径方向外側から対向する。よって、シート部材60を、接続線38cとハウジング11との間に配置できるため、シート部材60によって、接続線38cとハウジング11との絶縁を確保できる。
【0052】
また、本実施形態によれば、シート部材60は、コイル引出線38bを径方向外側から囲む。よって、シート部材60を、コイル引出線38bとハウジング11との間に配置できるため、シート部材60によって、コイル引出線38bとハウジング11との絶縁を確保できる。
【0053】
図6に示すように、本実施形態において、シート部材60は、絶縁性を有するシート状の基材部60bと、基材部60bの内周面に設けられる接着層60cと、を有する絶縁シート60aが径方向に重なって構成される。すなわち、シート部材60は、径方向に互いに重なって配置される複数の基材部60bによって構成される。複数の基材部60b同士は、接着層60cを介して互いに固定される。本実施形態において、シート部材60は、3枚の基材部60bが径方向に互いに重なって配置される。径方向に重なって配置される基材部60bの枚数は3枚に限定されず、1枚または2枚であってもよいし、4枚以上であってもよい。
【0054】
よって、本実施形態によれば、シート部材60は、径方向に互いに重なって配置される複数の基材部60bによって構成されるため、シート部材60の絶縁性能を高めることができる。したがって、シート部材60によって、コイル引出線38bおよび接続線38cとハウジング11との絶縁をより好適に確保できる。また、本実施形態によれば、上述のように、複数の基材部60b同士は、接着層60cを介して互いに固定されるため、例えば、最も径方向外側に配置される基材部60bが剥がれることを抑制できる。したがって、シート部材60の絶縁性能が低下することを抑制できるため、コイル引出線38bおよび接続線38cとハウジング11との絶縁をより好適に確保できる。
【0055】
本実施形態によれば、上述のように、シート部材60は、絶縁性を有するシート状の基材部60bと、基材部60bの内周面に設けられる接着層60cと、を有する。よって、シート部材60の内周面には接着層60cが露出するため、シート部材60を大径部34a等の外周面に接着によって固定できる。したがって、シート部材60を、コイル引出線38bおよび接続線38cとハウジング11との間に安定して配置できるため、コイル引出線38bおよび接続線38cとハウジング11との絶縁をより好適に確保できる。
【0056】
本実施形態において、基材部60bは、樹脂製である。より詳細には、基材部60bは、ポリエチレン(PE)製である。基材部60bを構成する材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリプロピレン(PP)等の他の絶縁性を有する樹脂材料であってもよい。本実施形態において、基材部60bの厚さは、25μm程度である。本実施形態において、接着層60cは、アクリル系接着剤によって構成される。接着層60cは、ウレタン系接着剤およびシリコーン系接着剤等の他の接着剤によって構成されてもよい。接着層60cの厚さは、5μm程度である。つまり、本実施形態において、シート部材60の厚さは100μm程度の薄い帯状である。よって、本実施形態によれば、径方向において、インシュレータ32、第1回路基板71、および第2回路基板72のそれぞれと、ハウジング11との間に配置され、コイル引出線38bおよび接続線38cとハウジング11との絶縁を確保するシート部材60が薄い帯状であるため、インシュレータ32、第1回路基板71、および第2回路基板72のそれぞれと、ハウジング11との間の径方向の隙間の寸法を小さくできる。そのためハウジング11が径方向に大型化することを抑制できる。したがって、コイル部38とハウジング11との絶縁を確保しつつ、回転電機1が径方向に大型化することを抑制できる。
【0057】
なお、本実施形態では、収容部39の径方向の寸法は、シート部材60の厚さよりも大きい。また、収容部39の軸方向の寸法は、シート部材60の厚さの2倍以上である。例えば、大径部34a等の外周面に、厚さ100μmの絶縁シート60aを3周に亘って巻き付ける場合、収容部39の軸方向の寸法は、600μm以上である。
【0058】
次に、本実施形態において、大径部34a等の外周面に、シート部材60を巻き付ける巻付工程Pwについて説明する。巻付工程Pwは、回転電機1の製造工程の一部である。本実施形態の巻付工程Pwは、絶縁シート60aを、大径部34a、第1回路基板71、および第2回路基板72それぞれの外周面に巻き付ける第1工程と、シート部材60の下側の端部の少なくとも一部を収容部39の内部に収容する第2工程と、を有する。なお、以下の説明において、「作業者等」とは、各作業を行う作業者および組立装置等を含む。各作業は、作業者のみによって行われてもよいし、組立装置のみによって行われてもよいし、作業者と組立装置とによって行われてもよい。
【0059】
第1工程では、作業者等は、インシュレータ32の大径部34a等の外周面に、絶縁シート60aを巻き付ける。
図7Aに示すように、作業者等は、絶縁シート60aを、大径部34a等の外周面に周方向に沿って巻き付ける。本実施形態では、作業者等は、絶縁シート60aを、大径部34a等の外周面に3周に亘って巻き付ける。これにより、上述のように、シート部材60は3枚の基材部60bが径方向に互いに重なって構成される(
図6参照)。絶縁シート60aの上側の端部は、第1回路基板71の外周面に接着される。なお、
図7Aでは、絶縁シート60aのロールをステータ30の外周面に沿って移動させる矢印を図示している。この矢印は、ステータ30に対する絶縁シート60aのロールの相対的な移動方向を示すものであり、絶縁シート60aのロールの位置を固定しステータ30を中心軸J周りに回転させることで、絶縁シート60aを大径部34a等の外周面に周方向に沿って巻き付けてもよい。
【0060】
また、
図7Bに示すように、絶縁シート60aの下側の端部は、大径部34aよりも下側に位置する。これにより、大径部34aの外周面全域に絶縁シート60aを接着でき、シート部材60と大径部34aの外周面との接着強度を高めることができる。作業者等が、大径部34a等の外周面に例えば3周に亘って絶縁シート60aを巻き付けて、シート部材60が大径部34a等の外周面に固定されると、第1工程は終了する。
【0061】
本実施形態によれば、第1回路基板71は、中心軸Jを中心とする円形状であり、第1回路基板71の外径の寸法は、大径部34aの外径の寸法と同じ寸法である。よって、第1工程において、絶縁シート60aを大径部34aの外周面および第1回路基板71の外周面に同時に巻き付け易いため、第1工程の作業効率を高めることができる。したがって、巻付工程Pwの作業工数が増大することを抑制できる。
【0062】
本実施形態によれば、第2回路基板72は、中心軸Jを中心とする円板状であり、第2回路基板72の外径の寸法は、大径部34aの外径の寸法と同じ寸法であり、シート部材60は、第2回路基板72の外周面に巻き付けられる。よって、第1工程において、絶縁シート60aを大径部34aの外周面および第2回路基板72の外周面に同時に巻き付け易いため、第1工程の作業効率を高めることができる。したがって、巻付工程Pwの作業工数が増大することを抑制できる。
【0063】
第2工程では、シート部材60の下側、すなわち軸方向他方側(-Z側)の端部の少なくとも一部を、収容部39の内部に収容する。上述のように、絶縁シート60aを巻き付ける際に、絶縁シート60aの下側の端部は、大径部34aよりも下側に位置する。そのため、
図7Bに示すように、シート部材60の下側の端部の一部が、ステータコア31の外周面に達する場合がある。作業者等は、
図7Cに示すように、シート部材60のうち大径部34aよりも下側の部分を収容部39の内部に押し込む。これにより、シート部材60の下側の端部を含む大径部34aよりも下側の部分が、収容部39の内部に収容される。
【0064】
本実施形態によれば、収容部39の径方向の寸法は、シート部材60の厚さよりも大きい。そのため、シート部材60を収容部39の内部に収容可能である。
【0065】
本実施形態によれば、収容部39の軸方向の寸法は、シート部材60の厚さの2倍以上である。よって、
図7Cに示すように、シート部材60を軸方向に折り曲げ、軸方向に重ねて収容部39の内部に収容できるため、収容部39に収容可能なシート部材60の軸方向の寸法を大きくできる。より詳細には、収容部39に収容可能なシート部材60の軸方向の寸法を、収容部39の径方向の寸法の2倍程度の長さにできる。したがって、第2工程において、シート部材60の下側の端部を容易に収容部39の内部に収容できるため、巻付工程Pwの作業工数が増大することを抑制できる。
【0066】
なお、シート部材60のうち収容部39の内部に収容される部分の内周面と、収容部39の内側面とを接触させて、接着層60cを介して固定してもよい。これにより、シート部材60のうち収容部39の内部に収容される部分が、収容部39の外部に移動することを抑制できる。
【0067】
作業者等が、シート部材60の下側の端部の少なくとも一部を収容部39の内部に収容すると、第2工程は終了し、巻付工程Pwは終了する。
【0068】
次に、シート部材60を巻き付けたステータ30を、ハウジング11のハウジング部材12に固定するステータ固定工程Psについて説明する。ステータ固定工程Psは、回転電機1の製造工程の一部である。作業者等は、
図7Dに示すように、治具等に固定されたハウジング部材12の開口部12dを介して、ステータ30をハウジング部材12の内部に挿入する。このとき、ステータコア31の外周面がハウジング部材12の周壁部12aの内周面と接触しつつ、ステータ30はハウジング部材12の内部に挿入される。
図1に示すように、ステータコア31の下側を向く面の径方向外縁がハウジング部材12の段差面12fと軸方向に接触するまで、ステータ30をハウジング部材12の内部に挿入すると、ステータ固定工程Psは終了する。
【0069】
本実施形態によれば、シート部材60の一部は、大径部34aの外周面に周方向に沿って巻き付けられ、シート部材60の下側、すなわち軸方向他方側(-Z側)の端部の少なくとも一部は、収容部39の内部に収容可能である。よって、ステータ固定工程Psにおいて、ハウジング部材12にステータ30を挿入する際に、ステータコア31の外周面と周壁部12aの内周面との間にシート部材60が挟み込まれることを抑制できる。したがって、ハウジング部材12の内部にステータ30を挿入する際にステータ30に加える押込み力が増大することを抑制できるため、ハウジング部材12の内部にステータ30を容易に挿入でき、ステータ固定工程Psの作業工数が増大することを抑制できる。また、ステータコア31と周壁部12aとの間にシート部材60が挟み込まれることを抑制できるため、ハウジング11に対するステータコア31の径方向の位置精度を高めることができ、回転電機1の動作の安定化を図ることができる。
【0070】
また、本実施形態では、シート部材60の下側の端部の少なくとも一部は、収容部39の内部に収容可能である。そのため、ステータ固定工程Psにおいて、ハウジング部材12にステータ30を挿入する際に、シート部材60の下側の端部が周壁部12aの上側の端部および周壁部12aの内周面に引っ掛かることにより、シート部材60が大径部34a等から剥がれることを抑制できる。よって、シート部材60をコイル引出線38bおよび接続線38cのそれぞれと、ハウジング11との間に安定的に配置できるため、コイル引出線38bおよび接続線38cのそれぞれとハウジング11との絶縁を安定的に確保できる。
【0071】
また、本実施形態では、シート部材60を大径部34a等の外周面に巻き付ける巻付工程Pwの第1工程において、シート部材60の下側の端部がステータコア31の外周面まで達しても、第2工程において、シート部材60の下側の端部を収容部39に収容できる。したがって、第1工程において、ステータコア31に対するシート部材60の下側の端部の位置を高い精度で決める必要が無いため、第1工程の作業の簡易化を図ることができる。そのため、巻付工程Pwの作業工数が増大することを抑制できる。
【0072】
また、本実施形態では、
図5に示すように、大径部34aの外周面と、大径部34aの下側を向く面とが繋がる部分であるエッジ部34fに、シート部材60を引掛けることができる。これにより、シート部材60がエッジ部34fから離れづらくなるため、シート部材60がインシュレータ32から剥がれることをより好適に抑制できる。
【0073】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態の回転電機201の一部を示す断面図である。
図9は、第2実施形態の回転電機201の他の一部を示す断面図である。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
図9に示すように、本実施形態のインシュレータ232は、第2環状部(環状部)234を有する。本実施形態において、第2環状部234の形状は、
図8に示す環状部34の形状と中心軸Jと直交する面を対称面として面対称の形状である。すなわち、本実施形態のインシュレータ232は、ステータコア31の上側(+Z側)に環状部34を、ステータコア31の下側(-Z側)に第2環状部234を有する。以下の説明において、第2環状部234に対応させて、上側の環状部34を、第1環状部34と呼ぶ場合がある。また、これに倣って、第1環状部34の各部は、第1大径部34a、第1小径部34d、第1収容部39と呼ぶことができる。さらに、第1大径部34aに巻き付けられるシート部材60は、第1シート部材60と呼ぶことができる。
【0075】
第2環状部234は、中心軸Jを中心とする環状である。第2環状部234は、ステータコア31の下側に配置される。第2環状部234は、ステータコア31の下側の少なくとも一部を覆う。すなわち、第2環状部234は、ステータコア31の少なくとも一部を軸方向に覆う。第2環状部234の上端は、ステータコア31の下側を向く面と軸方向に接触する。第2環状部234は、第2大径部234aと、第2小径部234dと、を有する。
【0076】
第2大径部(大径部)234aは、中心軸Jを中心とする環状である。第2大径部234aには、溝部234bが設けられる。溝部234bは、第2大径部234aの外周面から径方向内側に窪む。溝部234bは、第2大径部234aの外周面に沿って周方向一周に亘って設けられる。
【0077】
第2小径部(小径部)234dは、中心軸Jを中心とする環状である。軸方向において、第2小径部234dは、第2大径部234aとステータコア31との間に配置される。第2小径部234dは、第2大径部234aの上側の端部と軸方向に繋がる。第2小径部234dの上側を向く面は、ステータコア31の下側を向く面と接触する。
【0078】
本実施形態のコイル部238が有する複数の接続線238cは、ステータコア31よりも下側に配置される。各接続線238cは、1対のコイル本体部38a同士を繋ぐ。接続線238cには、電流が流れる。各接続線238cは、第2環状部234の溝部234bの内部に配置される。なお、
図8に示すように、本実施形態において、接続線238cは、ステータコア31の上側には設けられない。上述の第1実施形態と同様に、本実施形態において、シート部材60は、コイル引出線38bを径方向外側から囲む。よって、シート部材60によって、コイル引出線38bとハウジング11との絶縁を確保できる。
【0079】
図9に示すように、本実施形態のステータ230は、第2収容部(収容部)239を有する。第2収容部239は、第2小径部234dの径方向外側を向く面、第2大径部234aの上側を向く面、およびステータコア31の下側を向く面によって構成される。すなわち、第2収容部239は、第2小径部234dの径方向外側を向く面、第2大径部234aの軸方向を向く面のうちステータコア31と対向する面、およびステータコア31の軸方向を向く面のうち第2大径部234aと対向する面によって構成される。第2収容部239は、径方向内側に窪む穴状である。第2収容部239は、周方向一周に亘って構成される。なお、本実施形態の第2収容部239の径方向の寸法および軸方向の寸法は、上述の第1実施形態の収容部39の径方向の寸法および軸方向の寸法と同じ寸法である。
【0080】
本実施形態の回転電機201は、第2シート部材(シート部材)260を有する。第2シート部材260は、絶縁性を有する帯状である。図示は省略するが、径方向において、第2シート部材260は、第2環状部234と、ハウジング11の周壁部12aとの間に配置される。第2シート部材260は、第2大径部234aの外周面に周方向に沿って巻き付けられる。第2シート部材260は、第2大径部234aの外周面に固定される。第2シート部材260の上側の端部を含む第2大径部234aよりも上側の部分の少なくとも一部は、第2収容部239の内部に収容される。第2シート部材260の軸方向の寸法を除くその他の構成は、上述の第1実施形態のシート部材60の軸方向の寸法を除くその他の構成と同様である。
【0081】
本実施形態によれば、第2シート部材(シート部材)260は、インシュレータ232の溝部234bに収容される接続線238cと径方向外側から対向する。よって、第2シート部材260を、接続線238cとハウジング11との間に配置できるため、第2シート部材260によって、接続線238cとハウジング11との絶縁を確保できる。
【0082】
上述の第1実施形態のシート部材60と同様に、本実施形態の第2シート部材260は、厚さが100μm程度の薄い帯状である。よって、本実施形態によれば、径方向において、インシュレータ232と、ハウジング11との間に配置され、接続線238cとハウジング11との絶縁を確保する第2シート部材260が薄い帯状であるため、インシュレータ232と、ハウジング11との間の径方向の隙間の寸法を小さくできる。そのため、ハウジング11が径方向に大型化することを抑制できる。したがって、コイル部238とハウジング11との絶縁を確保しつつ、回転電機201が径方向に大型化することを抑制できる。
【0083】
本実施形態によれば、ステータ230は、第1収容部39と第2収容部239とを有する。また、インシュレータ32は、第1環状部34と第2環状部234とを有する。第1環状部34は、第1小径部34dおよび第1大径部34aを有する。第2環状部234は、第2小径部234dおよび第2大径部234aを有する。第1収容部39は、第1小径部34dの径方向外側向く面、第1大径部34aの軸方向他方側(-Z側)を向く面、およびステータコア31の軸方向一方側(+Z側)を向く面によって構成される。第2収容部239は、第2小径部234dの径方向外側向く面、第2大径部234aの軸方向一方側を向く面、およびステータコア31の軸方向他方側を向く面によって構成される。第1シート部材60の軸方向他方側の端部は、第1収容部39に収容可能であり、第2シート部材260の軸方向一方側の端部は、第2収容部239に収容可能である。本実施形態によれば、ステータコア31の軸方向両側において、コイル部238とハウジング11との絶縁を確保するためにシート部材60,260を巻き付ける場合に、シート部材60,260のそれぞれが、ステータコア31の外周面と周壁部12aの内周面との間に挟み込まれることを抑制できる。
【0084】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。例えば、収容部は環状部の外周面から径方向内側に窪む凹部であってもよい。また、収容部は、周方向に沿って一周設けられる必要は無く、接続線を収容する部分にのみ設けられてもよい。
【0085】
シート部材を巻き付けることができるならば、第1回路基板の外径の寸法および第2回路基板の外径の寸法は、大径部の外径の寸法と同じ寸法でなくてもよい。第1回路基板の外径および第2回路基板の外径は、大径部の外径よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。また、シート部材は、第2回路基板の外周面に巻き付けられなくてもよい。
【0086】
接続部をシート部材の径方向内側に配置できるならば、接続部は、溝部の内部に配置されなくてもよい。この場合、溝部は設けられなくてもよい。
【0087】
シート部材の構成は上記の実施形態の構成に限定されず、例えば、接着層は設けられなくてもよい。この場合、大径部、第1回路基板、および第2回路基板それぞれの外周面に接着剤を塗布し、接着剤を介して、シート部材を大径部、第1回路基板、および第2回路基板のそれぞれに固定してもよい。
【0088】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、本発明が適用される回転電機の用途は、特に限定されない。回転電機は、モータに限られず、発電機であってもよい。本発明の実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。
【0089】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 中心軸を中心として回転可能なロータと、前記ロータの径方向外側に配置され、前記ロータと径方向に隙間を介して対向するステータと、絶縁性を有する帯状のシート部材と、前記ロータ、前記ステータおよび前記シート部材を内部に収容するハウジングと、を備え、前記ステータは、前記ハウジングに外周面を固定されるステータコアと、前記ステータコアの少なくとも一部を軸方向に覆う環状の環状部を有するインシュレータと、収容部と、を有し、前記環状部は、前記中心軸を中心とする環状の大径部と、軸方向において前記大径部と前記ステータコアとの間に配置され、前記中心軸を中心とする環状の小径部と、を有し、前記小径部は、前記大径部と軸方向に繋がり、前記大径部の外径は、前記ステータコアの外径よりも小さく、かつ、前記小径部の外径よりも大きく、前記収容部は、前記小径部の径方向外側向く面、前記大径部の軸方向を向く面のうち前記ステータコアと対向する面、および前記ステータコアの軸方向を向く面のうち前記大径部と対向する面によって構成され、前記シート部材の一部は、前記大径部の外周面に周方向に沿って巻き付けられ、前記シート部材の少なくとも一部は、前記収容部の内部に収容可能な回転電機。
(2) 前記環状部の軸方向一方側に配置され、前記中心軸と直交する方向に広がる第1回路基板を備え、前記第1回路基板は、前記ハウジングの内部に収容され、前記ステータは、前記インシュレータに装着される複数のコイル本体部と、前記コイル本体部から軸方向一方側に引き出され、前記第1回路基板と接続されるコイル引出線と、を有するコイル部を有し、前記シート部材は、前記第1回路基板の外周面に巻き付けられ、前記シート部材は、前記コイル引出線を径方向外側から囲む、(1)に記載の回転電機。
(3) 前記第1回路基板は、前記中心軸を中心とする円形状であり、前記第1回路基板は、前記大径部の外径の寸法と同じ寸法である、(2)に記載の回転電機。
(4) 軸方向において、前記ステータコアと前記第1回路基板の間に配置され、前記中心軸を中心とする円板状の第2回路基板を備え、前記第2回路基板の外径の寸法は、前記大径部の外径の寸法と同じ寸法であり、前記シート部材は、前記第2回路基板の外周面に巻き付けられる、(2)または(3)に記載の回転電機。
(5) 前記大径部は、前記大径部の径方向外側を向く面から径方向内側に窪む溝部を有し、前記溝部の内部には、電気を通す接続線が配置され、前記シート部材は、前記接続線と径方向外側から対向する、(1)から(4)のいずれか一項に記載の回転電機。
(6) 前記シート部材は、絶縁性を有するシート状の基材部と、前記基材部の内周面に設けられる接着層と、を有する、(1)1から(5)のいずれか一項に記載の回転電機。
(7) 前記シート部材は、互いに径方向に重なって配置される複数の前記基材部によって構成され、前記複数の基材部同士は、前記接着層を介して固定される、(6)に記載の回転電機。
(8) 前記収容部の径方向の寸法は、前記シート部材の厚さよりも大きい、(1)から(7)のいずれか一項に記載の回転電機。
(9) 前記収容部の軸方向の寸法は、前記シート部材の厚さの2倍以上である、(1)から(8)のいずれか一項に記載の回転電機。
【符号の説明】
【0090】
1,201…回転電機、11…ハウジング、20…ロータ、30,230…ステータ、31…ステータコア、31a…コアバック部、31b…ティース部、32,232…インシュレータ、33c…ティース収容部、34…環状部、234…第2環状部(環状部)、34a…大径部、234a…第2大径部(大径部)、34b,234b…溝部、34d…小径部、234d…第2小径部(小径部)、38,238…コイル部、38a…コイル本体部、38b…コイル引出線、38c,238c…接続線、39…収容部、239…第2収容部(収容部)、60…シート部材、260…第2シート部材(シート部材)、60b…基材部、60c…接着層、71…第1回路基板、72…第2回路基板、J…中心軸