(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061295
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20240425BHJP
F24F 11/83 20180101ALI20240425BHJP
【FI】
F24F5/00
F24F11/83
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169152
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】新井 勘
(72)【発明者】
【氏名】根岸 大輔
(72)【発明者】
【氏名】淵▲崎▼ 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】呉 光正
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB06
3L260BA41
3L260CA16
3L260CB40
3L260EA06
3L260FB25
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で効率的な熱交換によって大温度差を確保する。
【解決手段】空調システム(1)は、室内の空調条件に応じて空調空気を室内に供給する。空調システムには、屋外から導入した外気に対して空調処理を施して室内に供給する外調機(12)と、室内から導入した還気に対して空調処理を施して室内に供給する空調機(13)と、外調機及び空調機に循環系統(14)を通じて熱媒体を供給する熱源機(11)と、が設けられている。循環系統において外調機の下流に空調機が直列に接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の空調条件に応じて空調空気を室内に供給する空調システムであって、
屋外から導入した外気に対して空調処理を施して室内に供給する外調機と、
室内から導入した還気に対して空調処理を施して室内に供給する空調機と、
前記外調機及び前記空調機に循環系統を通じて熱媒体を供給する熱源機と、を備え、
前記循環系統において前記外調機の下流に前記空調機が直列に接続されていることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記外調機が空調処理として外気に対して潜熱処理を施し、
前記空調機が空調処理として還気に対して顕熱処理を施していることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記熱源機から前記外調機に向けて熱媒体を送り出す第1の搬送ポンプと、
前記外調機から前記空調機に向けて熱媒体を送り出す第2の搬送ポンプと、
前記空調機から前記熱源機に向けて熱媒体を送り出す第3の搬送ポンプと、
前記外調機を通過する熱媒体の流量を動的に制御する第1の流量制御弁と、
前記空調機を通過する熱媒体の流量を動的に制御する第2の流量制御弁と、を備え、
前記外調機の吹出温度に応じて前記第1の流量制御弁の開度及び前記第1の搬送ポンプの搬送動力が調節され、
室内温度に応じて前記第2の流量制御弁の開度及び前記第2の搬送ポンプの搬送動力が調節されることを特徴とする請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記循環系統には、熱媒体に前記外調機を迂回させる第1のバイパス流路と、熱媒体に前記空調機を迂回させる第2のバイパス流路と、が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の空調システム。
【請求項5】
複数の室内の空調条件に応じて空調空気が各室内に供給されており、
前記外調機が、外気に空調処理を施して各室内に供給する複数の外調機であり、
前記空調機が、還気に空調処理を施して各室内に供給する複数の空調機であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項6】
前記循環系統には、前記複数の外調機を並列に接続した第1の並列流路と、前記複数の空調機を並列に接続した第2の並列流路と、が形成され、
前記第1の並列流路の下流に前記第2の並列流路が直列に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調システムとして外調機と空調機を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の空調システムには中温冷水及び低温冷水を作り出す熱源機が設けられており、熱源機から外調機及び空調機のそれぞれに中温冷水用及び低温冷水用の冷水系統が延びている。冷房負荷等に応じて外調機及び空調機に対する中温冷水及び低温冷水の供給状態が切り替えられている。そして、外調機では屋外から導入された外気に対して空調処理が施されて室内に供給され、空調機では室内から導入された還気に対して空調処理が施されて室内に供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の空調システムでは、中温冷水及び低温冷水を作り出す熱源機とこれに対応する配管経路が必要となることから構成が複雑になる。また、熱源機から外調機及び空調機に対して個別に冷水が供給されているため省エネルギー化を図る上で改善の余地があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で熱媒体を有効活用して省エネルギー化を図ることができる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の空調システムは、室内の空調条件に応じて空調空気を室内に供給する空調システムであって、屋外から導入した外気に対して空調処理を施して室内に供給する外調機と、室内から導入した還気に対して空調処理を施して室内に供給する空調機と、前記外調機及び前記空調機に循環系統を通じて熱媒体を供給する熱源機と、を備え、前記循環系統において前記外調機の下流に前記空調機が直列に接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の空調システムは、熱源機から供給された熱媒体と屋外から導入された外気が外調機で熱交換され、外調機を通過した熱媒体と室内から導入された還気が空調機で熱交換される。外調機から空調機に熱媒体が送られることで、外調機の空調処理で生じた排熱が空調機の空調処理で利用されている。このため、熱媒体が有効活用されて空調システムの省エネルギー化が図られている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の空調システムの模式図である。
【
図2】第2の実施形態の空調システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<比較例1>
先ず、第1の実施形態の空調システムについて説明する前に、比較例1の空調システムについて説明する。
図3は、比較例1の空調システムの模式図である。また、以下の説明の空調条件、温度、湿度等は一例であり、空調条件、温度、湿度等は状況に応じて適宜変更可能である。
【0010】
図3に示すように、比較例1の空調システム90では、熱源機91、外調機92、空調機93が冷温水等の熱媒体の循環系統94を介して接続されている。熱源機91の下流では流路が2つに分岐しており、一方の流路には外調機92が設置されており、他方の流路には空調機93が設置されている。また、空調システム90には潜熱顕熱分離方式が採用されており、外調機92では屋外から導入した外気に対して潜熱処理が実施され、空調機93では室内から導入した還気に対して顕熱処理が実施されている。外調機92及び空調機93から空調処理後の空調空気が給気系統(不図示)を通じて室内に供給されている。
【0011】
この空調システム90の冷房時には、室内の空調条件が設定温度26℃、湿度50%に設定されている。熱源機91から外調機92及び空調機93に7℃の熱媒体が送られて、外調機92で温度35℃の外気から給気温度13℃、湿度90%の空調空気が作り出され、空調機93で温度26℃の還気から給気温度17℃、湿度90%の空調空気が作り出されている。外調機92及び空調機93の入口と出口の温度差が5℃に設定されているため、外調機92及び空調機93から熱源機91に12℃の熱媒体が戻されている。このため、熱媒体の往き還りの温度差が5℃になって大温度差を確保することができない。
【0012】
ところで、外調機92の潜熱処理と空調機93の顕熱処理では必要な熱媒体の温度が異なる。外調機92では外気の温度を単純に下げただけでは除湿できない。外気の温度を室内露点温度以下の13℃まで下げるために、熱源機91から外調機92に7℃(低温)の熱媒体を送る必要がある。一方で、空調機93では還気の給気温度を室内露点温度よりも高い17℃に調節すればよい。還気の給気温度を17℃まで下げるために、熱源機91から空調機93に7℃の熱媒体を送る必要はない。空調機93では、7℃以上(中温)の熱媒体でも還気の給気温度を17℃まで下げることができる。
【0013】
上記したように、外調機92の入口と出口の温度差が5℃であるため、外調機92からは12℃の熱媒体が排出されており、この12℃の熱媒体でも空調機93で還気の給気温度を17℃に調節できる。そこで、第1の実施形態では、外調機12や空調機13で個別に潜熱顕熱分離空調と大温度差空調を実現するという発想とは異なり、潜熱処理後の熱媒体が顕熱処理を行うことができるポテンシャルを有する点に着目し、外調機12の潜熱処理後の熱媒体を空調機13の顕熱処理に利用しつつ空調システム1で潜熱顕熱分離空調と大温度差空調を実現している(
図1参照)。これにより、複数の熱源機を設ける必要がなくなり、配管経路の複雑化を防止することができ、また、熱媒体を有効に活用することができるようになる。すなわち、簡易な構成で潜顕分離空調と大温度差空調を実現することができる。
【0014】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態の空調システムについて、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態の空調システムの模式図である。なお、以下の説明では、冷房時の空調について説明するが、暖房時の空調についても同様である。
【0015】
図1に示すように、空調システム1には、熱源機11から外調機12及び空調機13を通って熱源機11に熱媒体が循環する循環系統14が設けられている。熱源機11から循環系統14を通じて外調機12及び空調機13に熱媒体が供給されており、熱媒体が外調機12及び空調機13を通過することで、外調機12では外気に空調処理が施されて、空調機13では還気に空調処理が施されている。空調システム1では温度や湿度等の室内の空調条件に応じて、外調機12及び空調機13から空調処理後の外気及び還気等の空調空気が給気系統(不図示)を通じて室内に供給されている。
【0016】
外調機12には、給気ファン(不図示)及び熱交換コイル(不図示)が設けられている。給気ファンによって屋外から外調機12に外気が導入され、熱交換コイルを通過する熱媒体と外気が熱交換されることで外気が冷却される。空調機13にも給気ファンや熱交換コイルが設けられて外調機12と略同様に構成されている。外調機12では空調処理として外気に対して潜熱処理が施され、空調機13では空調処理として還気に対して顕熱処理が施されている。外調機12の潜熱処理によって外気が冷却除湿されて室内に供給され、空調機13の顕熱処理によって還気が冷却されて室内に供給される。
【0017】
循環系統14には、熱源機11と外調機12を接続する第1のメイン流路21A、21Bと、外調機12と空調機13を接続する第2のメイン流路22A、22Bと、空調機13と熱源機11を接続する第3のメイン流路23A、23Bとが設けられている。第1のメイン流路21A、21Bの間にはヘッダー25A、25Bが設けられており、ヘッダー25A、25Bの間には第1の搬送ポンプ31が設けられている。第2のメイン流路22A、22Bの間にはヘッダー25C、25Dが設けられており、ヘッダー25C、25Dの間には第2の搬送ポンプ32が設けられている。第3のメイン流路23A、23Bの間にはヘッダー25Eが設けられており、ヘッダー25Eの下流に第3の搬送ポンプ33が設けられている。
【0018】
第1の搬送ポンプ31によって熱源機11から外調機12に熱媒体が送り出され、第2の搬送ポンプ32によって外調機12から空調機13に熱媒体が送り出され、第3の搬送ポンプ33によって空調機13から熱源機11に熱媒体が送り出されている。ヘッダー25Bとヘッダー25Cは第1のバイパス流路27を介して接続されており、ヘッダー25Cとヘッダー25Eは第2のバイパス流路28を介して接続されている。第1のバイパス流路27によって熱媒体が外調機12を迂回可能になり、第2のバイパス流路28によって熱媒体が空調機13を迂回可能になっている。
【0019】
外調機12の出口付近には第1の流量制御弁35が設けられており、第1の流量制御弁35によって外調機12を通過する熱媒体の流量が制御されている。外調機12の吹出口付近には露点温度計41が設けられており、露点温度計41に測定された外調機12の吹出温度に応じて第1の流量制御弁35の開度が調節されている。吹出温度が目標温度に近づくと第1の流量制御弁35の開度が狭められて流量制限される。ヘッダー25Bには第1の圧力計45が設けられており、第1の圧力計45に検出された流路内の圧力上昇に応じて第1の搬送ポンプ31の搬送動力が調節されている。
【0020】
空調機13の出口付近には第2の流量制御弁36が設けられており、第2の流量制御弁36によって空調機13を通過する熱媒体の流量が制御されている。空調機13には室内温度計43が接続されており、室内温度計43に測定された室内温度に応じて第2の流量制御弁36の開度が調節される。室内温度が目標温度に近づくと第2の流量制御弁36の開度が狭められて流量制御されている。ヘッダー25Dには第2の圧力計46が設けられており、第2の圧力計46に検出された流路内の圧力上昇に応じて第2の搬送ポンプ32の搬送動力が調節されている。
【0021】
第1、第2の搬送ポンプ31、32としては、熱媒体の搬送量を変更可能なインバータポンプが用いられている。第1、第2の流量制御弁35、36の開度が小さくなると、第1、第2のメイン流路21B、22B内の圧力上昇が第1、第2の圧力計45、46に検出される。第1、第2の圧力計45、46の圧力上昇に基づいて第1、第2の搬送ポンプ31、32の搬送動力が低下されて外調機12及び空調機13への熱媒体の供給が抑えられている。第1、第2の搬送ポンプ31、32の搬送動力(ポンプ回転数)の調節量には限界があり、第1、第2の搬送ポンプ31、32の搬送動力を一定量以下に下げることができない。
【0022】
第1のバイパス流路27には第1のバイパス弁47が設けられている。第1の搬送ポンプ31の搬送動力が限界まで下がっても圧力上昇が検出される場合に、第1のバイパス弁47が開いて第1のバイパス流路27に熱媒体が逃がされる。ヘッダー25C、25Dの間には第2の搬送ポンプ32と並列に第2のバイパス弁48が設けられている。第2の搬送ポンプ32の搬送動力が限界まで下がっても圧力上昇が検出される場合に、第2のバイパス弁48が開いてヘッダー25D、25Cを通じて第2のバイパス流路28に熱媒体が逃がされる。第2のバイパス流路28は、いわゆるフリーになっている。
【0023】
循環系統14において外調機12の下流に空調機13が直列に接続されている。より詳細には外調機12の熱交換コイルの出口が、第2のメイン流路22A、22Bを通じて空調機13の熱交換コイルの入口に接続されている。外調機12には熱源機11から低温(例えば、7℃)の熱媒体が送られるため、外調機12の熱交換コイルを通過する低温の熱媒体と外気の間で熱交換されて外気が冷却除湿されている。空調機13には外調機12を通過した後の中温(例えば、12℃)の熱媒体が送られるため、空調機13の熱交換コイルを通過する中温の熱媒体と還気の間で熱交換されて還気が冷却される。
【0024】
上記したように、外調機12では室内露点温度以下に外気を冷却する必要があるが、空調機13では室内設定温度以下に還気を冷却できればよい。潜熱処理に必要な熱媒体の温度よりも顕熱処理に必要な熱媒体の温度が高いため、外調機12による潜熱処理後の熱媒体の温度を利用して空調機13で還気に対して顕熱処理を施すことができる。また、潜熱処理後の熱媒体が顕熱処理にも利用されることで、熱媒体の往き還りで大温度差が確保されている。このようにして、本実施形態の空調システム1では、潜熱顕熱分離空調と大温度差空調が実現されている。
【0025】
具体的には、空調システム1の冷房時には、室内の空調条件が設定温度26℃、湿度50%に設定されている。熱源機11から外調機12に7℃の熱媒体が送られている。外調機12では7℃の熱媒体と外気の熱交換によって外気に潜熱処理が施されて、温度35℃の外気から給気温度13℃、湿度90%の空調空気が作り出されて室内に供給されている。外調機12の入口と出口の温度差が5℃に設定されているため、外調機12を通過することで熱媒体が7℃から12℃に上昇して、外調機12の出口から空調機13に向けて12℃の熱媒体が送り出されている。
【0026】
空調機13では12℃の熱媒体と還気の熱交換によって還気に顕熱処理が施されて、温度26℃の還気から給気温度17℃、湿度90%の空調空気が作り出されて室内に供給されている。空調機13の入口と出口の温度差が5℃に設定されているため、空調機13を通過することで熱媒体が12℃から17℃に上昇して、空調機13の出口から熱源機11に向けて17℃の熱媒体が戻されている。このため、熱源機11から外調機12に向かう往きの熱媒体と空調機13から熱源機11に向かう還りの熱媒体の温度差が10℃になってシステム全体で大温度差が確保されている。
【0027】
以上のように、第1の実施形態の空調システム1によれば、熱源機11から供給された熱媒体と屋外から導入された外気が外調機12で熱交換され、外調機12を通過した熱媒体と室内から導入された還気が空調機13で熱交換される。外調機12から空調機13に熱媒体が送られることで、外調機12の空調処理で生じた排熱が空調機13の空調処理で利用されている。このため、熱媒体が有効活用されて空調システムの省エネルギー化が図られている。また、熱媒体の往きと還りで大温度差が確保されることで、熱媒体の流量を減らしても空調システム1で必要な熱量を維持することができる。よって、循環系統14の配管口径及び搬送動力を小さくすることができる。また、熱源機11、外調機12、空調機13等に既存の機器を使用することもできる。
【0028】
<比較例2>
続いて、第2の実施形態の空調システムについて説明する前に、比較例2の空調システムについて説明する。
図4は、比較例2の空調システムの模式図である。
【0029】
図4に示すように、比較例2の空調システム100は複数の室内に対応している。空調システム100では、熱源機101の下流で流路が4つに分岐しており、1つ目の流路に第1の外調機102Aが設置され、2つ目の流路に第1の空調機103Aが設置され、3つ目の流路に第2の外調機102Bが設置され、4つ目の流路に第2の空調機103Bが設置されている。第1、第2の外調機102A、102Bでは外気に対して潜熱処理が実施され、第1、第2の空調機103A、103Bでは還気に対して顕熱処理が実施されている。第1、第2の外調機102A、102B及び第1、第2の空調機103A、103Bから給気系統(不図示)を通じて2つの室内に空調空気が供給されている。
【0030】
この空調システム100の冷房時には、一方の室内の空調条件が設定温度26℃、湿度50%に設定され、他方の室内の空調条件が設定温度23℃、湿度50%に設定されている。熱源機101から第1、第2の外調機102A、102B、第1、第2の空調機103A、103Bに7℃の熱媒体が送られている。第1の外調機102Aで温度35℃の外気から給気温度13℃、湿度90%の空調空気が作り出され、第1の空調機103Aで温度26℃の還気から給気温度17℃、湿度90%の空調空気が作り出されている。第2の外調機102Bで温度35℃の外気から給気温度9℃、湿度90%の空調空気が作り出され、第2の空調機103Bで温度23℃の還気から給気温度14℃、湿度90%の空調空気が作り出されている。
【0031】
第1の外調機102A及び第1の空調機103Aの入口と出口の温度差が5℃に設定されているため、第1の外調機102A及び第1の空調機103Aから熱源機101に12℃の熱媒体が戻されている。第2の外調機102B及び第2の空調機103Bの入口と出口の温度差が5℃に設定されているため、第2の外調機102B及び第2の空調機103Bから熱源機101に12℃の熱媒体が戻されている。比較例2の空調システム100では室内毎の空調条件に合わせて各室内に空調空気が供給されるが、熱媒体を有効活用されておらず、熱媒体の往き還りの温度差が5℃になって大温度差を確保することができない。そこで、第2の実施形態の空調システム50では、複数の外調機の潜熱処理で生じた排熱を複数の空調機の顕熱処理に利用してシステム全体で大温度差を確保している。
【0032】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態の空調システムについて、添付図面を参照して詳細に説明する。
図2は、第2の実施形態の空調システムの模式図である。なお、第2の実施形態の空調システムは、複数の室内の空調を制御する点で、第1の実施形態の空調システムと相違している。したがって、第2の実施形態については、第1の実施形態と同様な構成については極力説明を省略する。
【0033】
図2に示すように、空調システム50には、熱源機51から第1、第2の外調機52A、52B及び第1、第2の空調機53A、53Bを通って熱源機51に熱媒体が循環する循環系統54が設けられている。熱媒体が第1、第2の外調機52A、52B及び第1、第2の空調機53A、53Bを通過することで、第1、第2の外調機52A、52Bでは外気に対して潜熱処理が施されて、第1、第2の空調機53A、53Bでは還気に対して顕熱処理が施されている。空調システム50では、第1、第2の外調機52A、52B及び第1、第2の空調機53A、53Bから給気系統(不図示)を通じて2つの室内に空調空気が供給されている。
【0034】
第1、第2の外調機52A、52Bの上流で第1のメイン流路61Bが2つに分岐しており、第1、第2の外調機52A、52Bの下流で第2のメイン流路62Aが2つに分岐している。第1の外調機52Aの入口には第1のメイン流路61Bの一方の流路が接続され、第1の外調機52Aの出口には第2のメイン流路62Aの一方の流路が接続されている。第2の外調機52Bの入口には第1のメイン流路61Bの他方の流路が接続され、第2の外調機52Bの出口には第2のメイン流路62Aの他方の流路が接続されている。循環系統54には、第1、第2の外調機52A、52Bを並列に接続した第1の並列流路58が形成されている。
【0035】
第1、第2の空調機53A、53Bの上流で第2のメイン流路62Bが2つに分岐しており、第1、第2の空調機53A、53Bの下流で第3のメイン流路63Aが2つに分岐している。第1の空調機53Aの入口には第2のメイン流路62Bの一方の流路が接続され、第1の空調機53Aの出口には第3のメイン流路63Aの一方の流路が接続されている。第2の空調機53Bの入口には第2のメイン流路62Bの他方の流路が接続され、第2の空調機53Bの出口には第3のメイン流路63Aの他方の流路が接続されている。循環系統54には、第1、第2の空調機53A、53Bを並列に接続した第2の並列流路59が形成されている。
【0036】
第1のメイン流路61A、61Bの間にはヘッダー65A、65Bが設けられており、ヘッダー65A、65Bの間には第1の搬送ポンプ71が設けられている。第2のメイン流路62A、62Bの間にはヘッダー65C、65Dが設けられており、ヘッダー65C、65Dの間には第2の搬送ポンプ72が設けられている。第3のメイン流路63A、63Bの間にはヘッダー65Eが設けられており、ヘッダー65Eの下流に第3の搬送ポンプ73が設けられている。ヘッダー65Bとヘッダー65Cは第1のバイパス流路67を介して接続されており、ヘッダー65Cとヘッダー65Eは第2のバイパス流路68を介して接続されている。
【0037】
第1、第2の外調機52A、52Bの出口付近には第1、第2の流量制御弁75A、75Bが設けられ、第1、第2の外調機52A、52Bの吹出口付近には第1、第2の露点温度計81A、81Bが設けられている。第1、第2の空調機53A、53Bの出口付近には第3、第4の流量制御弁76A、76Bが設けられ、第1、第2の空調機53A、53Bには第1、第2の室内温度計83A、83Bが接続されている。ヘッダー65Bには第1の圧力計85が設けられ、ヘッダー65Dには第2の圧力計86が設けられている。第1のバイパス流路67には第1のバイパス弁87が設けられ、ヘッダー65C、65Dの間には第2の搬送ポンプ72と並列に第2のバイパス弁88が設けられている。
【0038】
第2の実施形態においても、第1、第2の露点温度計81A、81Bや第1、第2の室内温度計83A、83Bの検出温度が目標温度に近づくと第1-第4の流量制御弁75A、75B、76A、76Bによって第2、第3のメイン流路62A、63Aが流量制限される。第1、第2の圧力計85、86の圧力上昇に基づいて第1、第2の搬送ポンプ71、72の搬送動力が低下されて第1、第2の外調機52A、52B、第1、第2の空調機53A、53Bへの熱媒体の供給が抑えられる。第1、第2の搬送ポンプ71、72の搬送動力で流量調整に限界がきたときに、第1、第2のバイパス弁87、88が開かれて第1、第2のバイパス流路67、68に熱媒体が逃がされる。
【0039】
循環系統54において第1の並列流路58の下流に第2の並列流路59が直列に接続されている。第1、第2の外調機52A、52Bの熱交換コイルの出口が、第2のメイン流路62A、62Bを通じて第1、第2の空調機53A、53Bの熱交換コイルの入口に接続されている。第1、第2の外調機52A、52Bには熱源機51から低温の熱媒体が送られ、第1、第2の空調機53A、53Bには第1、第2の外調機52A、52Bを通過した後の中温の熱媒体が送られる。第2の実施形態の空調システム50でも、潜熱処理後の熱媒体が顕熱処理にも利用されることで、熱媒体の往き還りで大温度差が確保されている。
【0040】
具体的には、空調システム50の冷房時には、一方の室内の空調条件が設定温度26℃、湿度50%に設定され、他方の室内の空調条件が設定温度23℃、湿度50%に設定されている。熱源機51から第1、第2の外調機52A、52Bに7℃の熱媒体が送られている。第1の外調機52Aで7℃の熱媒体と外気の熱交換によって外気に潜熱処理が施されて、温度35℃の外気から給気温度13℃、湿度90%の空調空気が作り出されて一方の室内に供給されている。第2の外調機52Bで7℃の熱媒体と外気の熱交換によって外気に潜熱処理が施されて、温度35℃の外気から給気温度9℃、湿度90%の空調空気が作り出されて他方の室内に供給されている。
【0041】
第1、第2の外調機52A、52Bの入口と出口の温度差が5℃に設定されている。このため、第1、第2の外調機52A、52Bを通過することで熱媒体が7℃から12℃に上昇して、第1、第2の外調機52A、52Bの出口から第1、第2の空調機53A、53Bに向けて12℃の熱媒体が送り出されている。第1の空調機53Aで12℃の熱媒体と還気の熱交換によって還気に顕熱処理が施されて、温度26℃の還気から給気温度17℃、湿度90%の空調空気が作り出されて一方の室内に供給されている。第2の空調機53Bで12℃の熱媒体と還気の熱交換によって還気に顕熱処理が施されて、温度23℃の還気から給気温度14℃、湿度90%の空調空気が作り出されて他方の室内に供給されている。
【0042】
第1、第2の空調機53A、53Bの入口と出口の温度差が5℃に設定されている。このため、第1、第2の空調機53A、53Bを通過することで熱媒体が12℃から17℃に上昇して、第1、第2の空調機53A、53Bの出口から熱源機51に向けて17℃の熱媒体が戻されている。このように、熱源機51から第1、第2の外調機52A、52Bに並列に熱媒体が供給された後に、第1、第2の空調機53A、53Bに並列に熱媒体が供給されて、室内毎に外気及び還気に対して空調処理が並列に施されている。そして、熱源機51から第1、第2の外調機52A、52Bに向かう往きの熱媒体と第1、第2の空調機53A、53Bから熱源機51に向かう還りの熱媒体の温度差が10℃になってシステム全体で大温度差が確保されている。
【0043】
以上のように、第2の実施形態の空調システム50によれば、各室内に求められる空調条件が異なっていても、第1、第2の外調機52A、52Bと第1、第2の空調機53A、53Bによって空調条件に応じた空調空気が各室内に供給される。第1、第2の外調機52A、52Bの潜熱処理で生じた排熱が第1、第2の空調機53A、53Bの顕熱処理で利用されて、熱源機51で大温度差を確保することができる。
【0044】
なお、第1、第2の実施形態では、外調機が外気に対して潜熱処理を施しているが、外調機は外気に対して空調処理を施すものであればよい。また、空調機が還気に対して顕熱処理を施しているが、空調機は還気に対して空調処理を施すものであればよい。
【0045】
また、第2の実施形態では、空調システムに第1、第2の外調機及び第1、第2の空調機が設けられているが、空調システムには3つ以上の外調機及び3つ以上の空調機が設けられていてもよい。
【0046】
以上の通り、第1態様は、室内の空調条件に応じて空調空気を室内に供給する空調システム(1)であって、屋外から導入した外気に対して空調処理を施して室内に供給する外調機(12)と、室内から導入した還気に対して空調処理を施して室内に供給する空調機(13)と、外調機及び空調機に循環系統(14)を通じて熱媒体を供給する熱源機(11)と、を備え、循環系統において外調機の下流に空調機が直列に接続されている。この構成によれば、熱源機から供給された熱媒体と屋外から導入された外気が外調機で熱交換され、外調機を通過した熱媒体と室内から導入された還気が空調機で熱交換される。外調機から空調機に熱媒体が送られることで、外調機の空調処理で生じた排熱が空調機の空調処理で利用されている。このため、熱媒体が有効活用されて空調システムの省エネルギー化が図られている。
【0047】
第2態様は、第1態様において、外調機が空調処理として外気に対して潜熱処理を施し、空調機が空調処理として還気に対して顕熱処理を施している。この構成によれば、外調機では室内露点温度以下に外気を冷却する必要があるが、空調機では室内設定温度以下に還気を冷却できればよい。潜熱処理に必要な熱媒体の温度よりも顕熱処理に必要な熱媒体の温度が高いため、潜熱処理後の熱媒体の温度を利用して還気に対して顕熱処理を施すことができる。
【0048】
第3態様は、第2態様において、熱源機から外調機に向けて熱媒体を送り出す第1の搬送ポンプ(31)と、外調機から空調機に向けて熱媒体を送り出す第2の搬送ポンプ(32)と、空調機から熱源機に向けて熱媒体を送り出す第3の搬送ポンプ(33)と、外調機を通過する熱媒体の流量を動的に制御する第1の流量制御弁(35)と、空調機を通過する熱媒体の流量を動的に制御する第2の流量制御弁(36)と、を備え、外調機の吹出温度に応じて第1の流量制御弁の開度及び第1の搬送ポンプの搬送動力が調節され、室内温度に応じて第2の流量制御弁の開度及び第2の搬送ポンプの搬送動力が調節される。この構成によれば、空調負荷が減少すると、第1、第2の流量制御弁の開度が小さくなって第2の搬送ポンプの搬送動力が抑えられる。
【0049】
第4態様は、第3態様において、循環系統には、熱媒体に外調機を迂回させる第1のバイパス流路(27)と、熱媒体に空調機を迂回させる第2のバイパス流路(28)と、が設けられている。この構成によれば、第1の搬送ポンプの搬送動力の限界がきたときに第1のバイパス流路に熱媒体を逃がし、第2の搬送ポンプの搬送動力の限界がきたときに第2のバイパス流路に熱媒体を逃がすことができる。
【0050】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1態様において、複数の室内の空調条件に応じて空調空気が各室内に供給されており、外調機が、外気に空調処理を施して各室内に供給する複数の外調機(第1、第2の外調機52A、52B)であり、空調機が、還気に空調処理を施して各室内に供給する複数の空調機(第1、第2の空調機53A、53B)である。この構成によれば、複数の室内に求められる空調条件が異なっていても、複数の外調機と複数の空調機によって空調条件に応じた空調空気が各室内に供給される。複数の外調機の空調処理で生じた排熱が複数の空調機の空調処理で利用されて、熱源機で大温度差を確保することができる。
【0051】
第6態様は、第5態様において、循環系統には、複数の外調機を並列に接続した第1の並列流路(58)と、複数の空調機を並列に接続した第2の並列流路と、が形成され、第1の並列流路の下流に第2の並列流路(59)が直列に接続されている。この構成によれば、熱源機から複数の外調機に並列に熱媒体が供給された後に複数の空調機に並列に熱媒体が供給されて、室内毎に外気及び還気に対して空調処理を並列に施すことができる。
【0052】
なお、本実施形態及び変形例を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0053】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0054】
1、50 :空調システム
11、51:熱源機
12 :外調機
13 :空調機
14、54:循環系統
27、67:第1のバイパス流路
28、68:第2のバイパス流路
31、71:第1の搬送ポンプ
32、72:第2の搬送ポンプ
33、73:第3の搬送ポンプ
52A :第1の外調機(複数の外調機)
52B :第2の外調機(複数の外調機)
53A :第1の空調機(複数の空調機)
53B :第2の空調機(複数の空調機)
58 :第1の並列流路
59 :第2の並列流路