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特開2024-61298給電制御装置、給電制御方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061298
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】給電制御装置、給電制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02H 5/04 20060101AFI20240425BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H02H5/04
B60R16/02 645Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169155
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】澤田 凌兵
(72)【発明者】
【氏名】小田 康太
(72)【発明者】
【氏名】榊原 弘紀
(57)【要約】
【課題】駆動用の電流値が異なる複数種類の負荷に対して、正しい電線温度の推定ができる給電制御装置、給電制御方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】負荷に接続された電線の温度推定結果に基づいて前記負荷への給電を制御する車両用の給電制御装置であって、前記負荷に応じて前記温度推定のパラメータを変更する変更部と、変更後のパラメータを用いて前記温度推定を行う推定部とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の温度推定結果に基づいて負荷への給電を制御する車両用の給電制御装置であって、
前記負荷に応じて前記温度推定のパラメータを変更する変更部と、
変更後のパラメータを用いて前記温度推定を行う推定部とを備える給電制御装置。
【請求項2】
前記パラメータに係る特定情報を取得する取得部を備え、
前記変更部は、前記取得部によって取得された前記特定情報に基づいて、前記パラメータを変更する請求項1に記載の給電制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、車両に設けられた受付部を介して車両の外部から前記特定情報を取得する請求項2に記載の給電制御装置。
【請求項4】
自装置と接続可能な複数種類の負荷夫々に対応する前記特定情報を記憶する記憶部を備え、
前記取得部が前記負荷に係る通信部から前記特定情報を取得し、
前記変更部は、前記通信部から取得された特定情報と前記記憶部の記憶内容とに基づいて、前記パラメータを変更する請求項2に記載の給電制御装置。
【請求項5】
前記特定情報は、少なくとも前記負荷を駆動するための電流値、前記給電をオンまたはオフするスイッチに係る電流値、前記電線に係る情報のいずれかである請求項2に記載の給電制御装置。
【請求項6】
前記特定情報は前記負荷を駆動するための電流値が含まれ、
自装置と接続可能な複数種類の負荷夫々の前記電流値を記憶する記憶部と、
自装置と前記負荷との初回通電時の電流値を検出する電流検出部とを備え、
前記変更部は、前記電流検出部から取得された取得電流値と、前記記憶部の記憶内容とに基づいて、前記パラメータを変更する請求項2に記載の給電制御装置。
【請求項7】
前記取得部は前記負荷に係る通信部を介して前記特定情報を取得し、
前記特定情報は前記負荷を駆動するための電流値が含まれ、
自装置と前記負荷との初回通電時の電流値を検出する電流検出部と、前記通信部との通信が可能か否かを判定する判定部とを備え、
前記取得部は、前記判定部の判定結果に応じて、前記通信部から前記特定情報を取得するか、又は、前記電流検出部から電流値を取得する請求項2に記載の給電制御装置。
【請求項8】
前記取得部は前記負荷に係る通信部を介して前記特定情報を取得し、
前記取得部は、前記受付部から前記特定情報を取得した場合、前記通信部から取得した特定情報を無効にする請求項3に記載の給電制御装置。
【請求項9】
前記給電をオンまたはオフする半導体スイッチを備えており、
前記半導体スイッチは、自装置と接続可能な複数種類の負荷の夫々を駆動するための電流値のうち最大電流値に対応するオン抵抗を有する請求項1から8のいずれか一項に記載の給電制御装置。
【請求項10】
電線の温度推定結果に基づいて負荷への給電を制御する車両用の給電制御装置による給電制御方法であって、
前記負荷に応じて前記温度推定のパラメータを変更し、
変更後のパラメータを用いて前記温度推定を行い、
前記温度推定の結果に基づいて前記給電をオンまたはオフする給電制御方法。
【請求項11】
電線の温度推定結果に基づいて負荷への給電を制御する車両用の給電制御装置にて給電を制御させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
前記負荷に応じて前記温度推定のパラメータを変更し、
変更後のパラメータを用いて前記温度推定を行い、
前記温度推定の結果に基づいて前記給電をオンまたはオフする処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は給電制御装置,給電制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両においてオン/オフを繰り返すようなショート電流によって電線の温度が上昇した場合に電線の発煙が発生することを防止するための技術が普及している。
【0003】
例えば、特許文献1には、通電時の電線の電流を検出して、その電流を用いて現在の電線の温度を推定し、現在の電線の温度と電線の許容される上限温度とを比較することによって、電線が発煙温度に達する前に通電電流を遮断して、電線の発煙を防止する給電制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-130944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、負荷によって駆動に用いられる電流値が異なることから、負荷に接続する給電用の電線も負荷に応じて変える必要がある。また、前記電線に応じて、上述した電線温度の推定に用いられるパラメータも変わるので、負荷毎にパラメータが異なる給電制御装置を予め用意する必要がある。即ち、給電制御装置の商品種類が増大するので、製造コストアップを招く。
【0006】
また、車両が出荷された後に負荷が変更又は追加されて、接続する電線が替えられた場合は、電線が替えられたにもかかわらず、電線温度の推定に用いられるパラメータは車両の出荷時のままであり、正しい電線温度の推定ができなくなるという問題がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1の給電制御装置は、このような問題に対して工夫しておらず、解決できない。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、駆動用の電流値が異なる複数種類の負荷に対して、正しい電線温度の推定ができる給電制御装置、給電制御方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施形態に係る給電制御装置は、電線の温度推定結果に基づいて負荷への給電を制御する車両用の給電制御装置であって、前記負荷に応じて前記温度推定のパラメータを変更する変更部と、変更後のパラメータを用いて前記温度推定を行う推定部とを備える。
【0010】
本開示の実施形態に係る給電制御方法は、電線の温度推定結果に基づいて負荷への給電を制御する車両用の給電制御装置による給電制御方法であって、前記負荷に応じて前記温度推定のパラメータを変更し、変更後のパラメータを用いて前記温度推定を行い、前記温度推定の結果に基づいて前記給電をオンまたはオフする。
【0011】
本開示の実施形態に係るコンピュータプログラムは、電線の温度推定結果に基づいて負荷への給電を制御する車両用の給電制御装置にて給電を制御させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに、前記負荷に応じて前記温度推定のパラメータを変更し、変更後のパラメータを用いて前記温度推定を行い、前記温度推定の結果に基づいて前記給電をオンまたはオフする処理を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、駆動用の電流値が異なる複数種類の負荷に対しても、正しい電線温度の推定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両に装着された実施形態1に係る給電制御装置と、給電制御装置に接続された負荷とを概略的に示す概念図である。
図2】給電制御装置のマイクロコンピュータの機能的プロセスを概念的に説明する機能ブロック図である。
図3】記憶部が記憶する記憶内容の一例を概念的に説明する図表である。
図4】実施形態1の給電制御装置が負荷側電線の推定温度に基づいて給電を制御する処理を説明するフローチャートである。
図5】車両に装着された実施形態2に係る給電制御装置と、給電制御装置に接続された負荷とを概略的に示す概念図である。
図6】車両に装着された実施形態3に係る給電制御装置と、給電制御装置に接続された負荷とを概略的に示す概念図である。
図7】実施形態4の給電制御装置における電線パラメータの変更の処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0015】
(1)本開示の実施形態に係る給電制御装置は、電線の温度推定結果に基づいて負荷への給電を制御する車両用の給電制御装置であって、前記負荷に応じて前記温度推定のパラメータを変更する変更部と、変更後のパラメータを用いて前記温度推定を行う推定部とを備える。
【0016】
本実施形態にあっては、例えば、負荷が取り替えられた場合、取り替え後の負荷に応じて前記変更部が前記温度推定のパラメータを変更し、変更後のパラメータを用いて前記推定部が前記温度推定を行う。従って、取り替えられた負荷の駆動用の電流値が異なるような場合であっても、正しい電線温度を推定できる。
【0017】
(2)本開示の実施形態に係る給電制御装置は、前記パラメータに係る特定情報を取得する取得部を備え、前記変更部は、前記取得部によって取得された前記特定情報に基づいて、前記パラメータを変更する。
【0018】
本実施形態にあっては、例えば、負荷が取り替えられた場合、取り替えられた負荷に対応する特定情報を前記取得部が取得し、前記変更部は、前記取得部によって取得された前記負荷情報に基づいて、前記パラメータを変更する。従って、負荷が取り替えられた場合であっても、正しい電線温度を推定できる。
【0019】
(3)本開示の実施形態に係る給電制御装置は、前記取得部は、車両に設けられた受付部を介して車両の外部から前記特定情報を取得する。
【0020】
本実施形態にあっては、例えば、負荷が取り替えられた場合、取り替えられた負荷に対応する特定情報を、前記取得部が前記受付部を介して車両の外部から取得し、前記変更部は、前記取得部によって取得された前記特定情報に基づいて、前記パラメータを変更する。従って、負荷が取り替えられた場合であっても、正しい電線温度を推定できる。
【0021】
(4)本開示の実施形態に係る給電制御装置は、自装置と接続可能な複数種類の負荷夫々に対応する前記特定情報を記憶する記憶部を備え、前記取得部が前記負荷に係る通信部から前記特定情報を取得し、前記変更部は、前記通信部から取得された特定情報と前記記憶部の記憶内容とに基づいて、前記パラメータを変更する。
【0022】
本実施形態にあっては、例えば、負荷が取り替えられた場合、取り替えられた負荷に対応する特定情報を、前記取得部が前記通信部から取得し、前記変更部は、前記取得部によって取得された前記特定情報と前記記憶部の記憶内容とに基づいて、前記パラメータを変更する。従って、負荷が取り替えられた場合であっても、正しい電線温度を推定できる。
【0023】
(5)本開示の実施形態に係る給電制御装置は、前記特定情報は、少なくとも前記負荷を駆動するための電流値、前記給電をオンまたはオフするスイッチに係る電流値、前記電線に係る情報のいずれかである。
【0024】
本実施形態にあっては、前記特定情報は、例えば、前記負荷を駆動するための電流値であっても良く、前記給電をオンまたはオフするスイッチに流れる電流値であっても良く、前記電線に係る情報(例えば、径)であっても良い。
【0025】
(6)本開示の実施形態に係る給電制御装置は、前記特定情報は前記負荷を駆動するための電流値が含まれ、自装置と接続可能な複数種類の負荷夫々の前記電流値を記憶する記憶部と、自装置と前記負荷との初回通電時の電流値を検出する電流検出部とを備え、前記変更部は、前記電流検出部から取得された取得電流値と、前記記憶部の記憶内容とに基づいて、前記パラメータを変更する。
【0026】
本実施形態にあっては、例えば、負荷が取り替えられた場合、取り替えられた負荷を駆動するための電流値を、前記取得部が前記電流検出部から取得し、前記変更部は、前記取得部によって取得された前記電流値と前記記憶部の記憶内容とに基づいて、前記パラメータを変更する。従って、負荷が取り替えられた場合であっても、正しい電線温度を推定できる。
【0027】
(7)本開示の実施形態に係る給電制御装置は、前記取得部は前記負荷に係る通信部を介して前記特定情報を取得し、前記特定情報は前記負荷を駆動するための電流値が含まれ、自装置と前記負荷との初回通電時の電流値を検出する電流検出部と、前記通信部との通信が可能か否かを判定する判定部とを備え、前記取得部は、前記判定部の判定結果に応じて、前記通信部から前記特定情報を取得するか、又は、前記電流検出部から電流値を取得する。
【0028】
本実施形態にあっては、例えば、負荷が取り替えられた場合、前記判定部が前記通信部との通信が可能か否かを判定し、通信が可能であると判定された場合は、前記取得部が前記通信部から前記特定情報を取得し、通信が不可能であると判定された場合は、前記取得部が前記電流検出部から電流値を取得する。従って、取り替えられた負荷に係る通信部が存在しない場合、又は、通信部は存在するものの、何らかの原因で取得部が通信部から特定情報を取得できない場合にも対応できる。
【0029】
(8)本開示の実施形態に係る給電制御装置は、前記取得部は前記負荷に係る通信部を介して前記特定情報を取得し、前記取得部は、前記受付部から前記特定情報を取得した場合、前記通信部から取得した特定情報を無効にする。
【0030】
本実施形態にあっては、例えば、負荷が取り替えられた場合、前記負荷に係る通信部を介して前記特定情報を取得し、また、前記受付部を介して作業者等から前記特定情報を取得した場合、前記取得部が前記通信部から取得した前記特定情報を無効にする。前記変更部は、前記受付部からの特定情報を用いてパラメータを変更し、前記推定部は、変更後のパラメータを用いて前記温度推定を行う。従って、温度推定の精度を高めることが出来る。
【0031】
(9)本開示の実施形態に係る給電制御装置は、前記給電をオンまたはオフする半導体スイッチを備えており、前記半導体スイッチは、自装置と接続可能な複数種類の負荷の夫々を駆動するための電流値のうち最大電流値に対応するオン抵抗を有する。
【0032】
本実施形態にあっては、前記半導体スイッチが前記最大電流値に対応するオン抵抗を有するので、前記半導体スイッチ及び前記出力電線が取り替えられる何れの負荷にも対応できる。
【0033】
(10)本開示の実施形態に係る給電制御方法は、電線の温度推定結果に基づいて負荷への給電を制御する車両用の給電制御装置による給電制御方法であって、前記負荷に応じて前記温度推定のパラメータを変更し、変更後のパラメータを用いて前記温度推定を行い、前記温度推定の結果に基づいて前記給電をオンまたはオフする。
【0034】
(11)本開示の実施形態に係るコンピュータプログラムは、電線の温度推定結果に基づいて負荷への給電を制御する車両用の給電制御装置にて給電を制御させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに、前記負荷に応じて前記温度推定のパラメータを変更し、変更後のパラメータを用いて前記温度推定を行い、前記温度推定の結果に基づいて前記給電をオンまたはオフする処理を実行させる。
【0035】
本実施形態にあっては、例えば、負荷が取り替えられた場合、取り替え後の負荷に応じて前記温度推定のパラメータが変更され、変更後のパラメータを用いて前記温度推定が行われる。従って、取り替えられた負荷の駆動用の電流値が異なるような場合であっても、正しい電線温度を推定できる。
【0036】
[本発明の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る給電制御装置、給電制御方法及びコンピュータプログラムを、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0037】
(実施形態1)
従来、車両には、バッテリなどの電源と、シート、ドア等の負荷との間に給電制御装置が介在している。給電制御装置は電源から負荷への給電を必要に応じてオンまたはオフする装置である。
【0038】
給電制御装置は、負荷への給電を遮断するヒューズを有しており、例えば、オン/オフを繰り返すようなショート電流によって電線の温度が過剰に上昇した場合、電線に発煙が生じることを防止すべく、斯かるヒューズが負荷への給電を遮断する。
【0039】
近年は、給電制御装置が、前記ヒューズとして半導体スイッチを備え、通電時の電線の温度を推定し、電線の推定温度と電線の許容される上限温度とを比較することによって、電線が発煙温度に達する前に斯かる半導体スイッチが給電を遮断する。
【0040】
通電時の電線の温度を推定する方法として、電線の発熱量及び放熱量の和から電線の温度を推定する方法が知られている。詳しくは、以下の式1を用い、通電時の電線の電流を検出して電線の温度を推定できる。
ΔTw = A×I2×{1-exp(-t/τ)}・・・式1
ΔTw:基準温度から電線の上昇温度(℃)
I:検出された電流値(A)
τ:電線の熱時定数(s)(固定値)
t:時間(s)
A:電線パラメータ
【0041】
ここで、Aは、給電制御装置に対応する負荷に接続された電線の特性である。即ち、電線パラメータAは、負荷に接続された電線によって変わる。例えば、電線パラメータAは、Rw(電線抵抗(Ω)及びRthw(電線熱抵抗(℃/W)に依存する固定値である。
【0042】
ところが、負荷の駆動に必要な駆動電流値によって負荷に接続される電線の種類、例えば電線の太さ(径)が定まる。即ち、駆動電流値が大きくなる程、大きい径の電線が必要になる。また、電線の種類によって電線の許容される上限温度が変わる。かつ、負荷がシートであるかドアであるかによっても駆動電流値が異なり、ひいては、同じシートであっても、USB(Universal Serial Bus)充電機能の有無、ヒーター機能の有無、パワーシート機能の有無等によって駆動電流値が異なる。
【0043】
以上の如く、負荷によって、電線の種類(電線径)が定まるので、車両に給電制御装置を装着する際、給電制御装置に接続する負荷に応じて斯かる給電制御装置の電線パラメータAの設定が定まる。
【0044】
また、接続が予想される負荷に応じて、負荷に接続される電線の径を異にする必要があるうえに、給電制御装置においても容量が異なる半導体スイッチを選択する必要がある。即ち、半導体スイッチの容量が異なる複数種類の給電制御装置を予め用意しておく必要があり、給電制御装置の商品種類が増大する問題がある。
【0045】
そして、車両に給電制御装置が装着された後、即ち、工場出荷後に、負荷の機能を追加する、又は、負荷自体を追加する等の場合が想定される。この場合、負荷機能の追加、又は、負荷自体の追加に伴い、前記駆動電流値が大きくなるので、電線径の大きい電線に変える必要がある。即ち、電線(電線径)が変わったことから、実際に上述の式1の電線パラメータAが変わったにもかかわらず、給電制御装置の電線パラメータAは出荷時に設定されたままであり、給電制御装置が電線の温度を正確に推定できなくなり、ひいては誤動作を起こすおそれがある。
【0046】
これに対して、以下で説明する本実施形態1の給電制御装置は、上述の問題を解決できるように構成されている。以下、詳しく説明する。
【0047】
図1は、車両Cに装着された実施形態1に係る給電制御装置10と、給電制御装置10に接続された負荷52とを概略的に示す概念図である。負荷52は、例えば、シート50に設けられた、USB充電機、ヒーター、パワーシートモータの少なくとも一つである。
【0048】
車両Cは、電源20と、給電制御装置10と、シート50とを備えている。シート50は負荷52を有しており、給電制御装置10は、電源20と負荷52との間に介在している。換言すれば、電源20は、給電制御装置10を介して負荷52と接続している。
【0049】
給電制御装置10と、シート50(負荷52)との間にはコネクタ40が介在している。給電制御装置10とコネクタ40とは給電用の電線L1(出力電線)によって接続されており、コネクタ40と負荷52とは給電用の電線L3によって接続されている。例えば、コネクタ40は、車両Cにおけるフロアとシート50との境界部分に配設されており、コネクタ40よりも上流側が電源20側であり、コネクタ40よりも下流が負荷側である。以下では、電線L1を電源側電線L1とも言い、電線L3を負荷側電線L3とも言う。
【0050】
負荷側電線L3の電線径は、電源側電線L1の電線径以下である。詳しくは、電源側電線L1は、給電制御装置10との接続が予想される全ての負荷のうち、駆動電流値が最も大きい負荷の駆動電流値に対応する電線径を有している。例えば、給電制御装置10に駆動電流値が異なる負荷1~負荷4が接続可能であり、負荷4の駆動電流値が最も大きい場合、電源側電線L1は負荷4の駆動電流値に対応する電線径を有している。
【0051】
よって、上述の如く、負荷機能の追加又は負荷自体の追加の際には、これに伴い、負荷側電線L3も取り替える必要があるものの、電源側電線L1を取り替える必要はない。
【0052】
また、給電制御装置10とコネクタ40とは通信線L2によって接続されている。以下、通信線L2を電源側通信線L2とも言う。
【0053】
電源側通信線L2には、車両Cの外部から負荷情報(特定情報)の入力を受け付ける受付部30が接続されている。ここで、負荷情報とは、電線パラメータAに係る情報であり、例えば、給電制御装置10に接続されている負荷52を特定する情報等である。負荷情報は、具体的には、負荷52の品番を表すデータであっても良く、負荷52に係る前記駆動電流値を表すデータであっても良く、斯かる駆動電流値に対応する負荷側電線L3の電線径を表すデータであっても良い。また、負荷情報は、Rw及びRthwを表すデータであっても良い。
【0054】
受付部30は、車両Cの出荷時に負荷情報の入力を受け付けるか、又は、ECUの交換等の車両Cの整備作業を担う正規ディーラ等を含む車両整備業者から負荷情報の入力を受け付ける。
また、受付部30が、通信部(図示せず)を有し、OTA(Over The Air)技術を用いて、車両Cの外部から無線通信にて負荷情報を受信できるように構成しても良い。
以下では、説明の便宜上、受付部30が車両整備業者から負荷情報の入力を受け付け、斯かる負荷情報は、負荷52に係る前記駆動電流値であるものとする。
【0055】
給電制御装置10は、マイクロコンピュータ11と、IPS(Intelligence Power Switch)13と、I/O(入出力インターフェース)12とを備える。IPS13は、電源20及びI/O12の間に介在している。
【0056】
I/O12は電源側電線L1及び電源側通信線L2と接続している。即ち、電源20からIPS13を介してI/O12に流れ込む電流は電源側電線L1に流れる。また、受付部30が受け付けた負荷情報は、電源側通信線L2を介してI/O12に送られ、I/O12からマイクロコンピュータ11に送られる。
【0057】
IPS13は、スイッチ素子131及び電流検出回路132を有している。
スイッチ素子131は、例えばnチャネルMOSFET等の半導体スイッチ素子であり、電源20から負荷52への電流、即ち、負荷52の通電時に電源20から負荷52に流れる電流(以下、通電電流Iと称する)をオンまたはオフする。スイッチ素子131は、マイクロコンピュータ11の指示に応じて、上述の通電電流Iのオンまたはオフを行う。
【0058】
また、上述の如く、電源側電線L1が予想される最も大きい負荷の駆動電流値に対応する電線径を有していることから、スイッチ素子131も予想される最も大きい負荷の駆動電流値に対応するオン抵抗を有している。
【0059】
また、電流検出回路132は、例えばセンスMOSFETであり、前記通電時に通電電流Iの電流値を検出してマイクロコンピュータ11に送る。
【0060】
図2は、給電制御装置10のマイクロコンピュータ11の機能的プロセスを概念的に説明する機能ブロック図である。
マイクロコンピュータ11は、記憶部111、推定部112、変更部113、取得部114、指示部115及び判定部116を備えている。換言すれば、マイクロコンピュータ11は、記憶部111、推定部112、変更部113、取得部114、指示部115及び判定部116の役割をなす処理回路を有している。
【0061】
記憶部111は、上述した、式1を記憶している。また、給電制御装置10と接続可能な複数種類の負荷と、負荷毎の前記負荷情報とを対応付けて記憶する。
図3は、記憶部111が記憶する記憶内容の一例を概念的に説明する図表である。
例えば、上述の如く、給電制御装置10に駆動電流値が異なる負荷1~負荷4が接続可能であるとする。この場合、記憶部111は、負荷1~負荷4の夫々に、駆動電流値の範囲及び電線パラメータAを対応付けて記憶している。以下では、電線パラメータAが「A = Rw×Rthw」の関係を有するものとする。即ち、電線パラメータAは負荷側電線の電線抵抗及び電線熱抵抗の積である。
また、記憶部111は、負荷1~負荷4の夫々に、上限温度を対応付けて記憶する。ここで上限温度は、負荷に応じて定まる各負荷側電線L3に許容される上限温度である。
【0062】
推定部112は、負荷側電線L3の温度推定を行う。即ち、推定部112は、上述の式1を用いて負荷側電線L3の温度を推定する。詳しくは、推定部112は、基準温度設定回路(図示せず)によって設定された、温度推定の開始時の基準温度及び式1を用いて負荷側電線L3の温度を推定する。
【0063】
より詳しくは、電流検出回路132が負荷側電線L3を介して負荷52へ供給される通電電流Iの電流値を所定時間毎に検出し、推定部112は検出された通電電流Iに起因する所定時間内の負荷側電線L3の基準温度からの上昇温度(ΔTw)を算出し、該上昇温度を前記基準温度に加算して負荷側電線L3の温度を推定する。
【0064】
取得部114は、給電制御装置10の外部から負荷52に係る負荷情報を取得する。取得部114はI/O12を監視し、受付部30から送られる負荷情報を取得する。例えば、受付部30が、車両整備業者から負荷52に係る駆動電流値を表すデータを受け付けた場合、受け付けた駆動電流値をI/O12に送信する。I/O12は受信した駆動電流値を取得部114に送る。
【0065】
変更部113は、負荷52に応じて、負荷側電線L3の温度推定に係るパラメータを変更する。例えば、変更部113は、取得部114が給電制御装置10の外部から負荷52に係る負荷情報を取得した場合、取得部114が取得した負荷情報と、記憶部111の記憶内容とに基づいて、電線パラメータAを変更する。変更部113によって電線パラメータAが変更された場合、推定部112は変更後の電線パラメータAを用いて負荷側電線L3の温度を推定する。
【0066】
判定部116は、推定部112によって推定された負荷側電線L3の温度(以下、負荷側電線L3の推定温度と称する)を記憶部111が記憶している前記上限温度と比較して、負荷側電線L3の推定温度が前記上限温度以上であるか否かを判定する。
【0067】
指示部115は、判定部116によって、負荷側電線L3の推定温度が前記上限温度以上であると判断された場合、IPS13のスイッチ素子131に通電電流Iのオフを指示する。
【0068】
シート50は、上述の如く、負荷側電線L3を介してコネクタ40と接続している。シート50は、スイッチ51及び負荷52を有している。スイッチ51は、コネクタ40及び負荷52の間に介在している。
【0069】
以下、車両Cにおいて負荷52が変更された場合の実施形態1の給電制御装置10の処理について説明する。
図4は、実施形態1の給電制御装置10が負荷側電線L3の推定温度に基づいて給電を制御する処理を説明するフローチャートである。
【0070】
例えば、車両整備業者が、必要に応じて、車両Cのシート50に設けられていた負荷52を、負荷1から、より駆動電流値が大きい負荷2に取り替えることがあり得る。車両整備業者は、先ず、スイッチ51をオフにしてから、負荷1を負荷2に取り替え、その後スイッチ51をオンにする。この場合、負荷52の変更に伴い、前記駆動電流値が大きくなるので、車両整備業者は、負荷側電線L3も電線径が大きい負荷側電線L3に変える。
【0071】
このように、電線(電線径)が変わったので、上述の式1の電線パラメータAも変更する必要がある。よって、車両整備業者は変更後の新たな負荷52の負荷情報を受付部30から入力する。例えば、車両整備業者は新たな負荷52に係る駆動電流値(データ)を入力し、受付部30が受け付ける。(ステップS101)。
【0072】
受付部30は、車両整備業者から新たな負荷52に係る駆動電流値を受け付けた場合、受け付けた駆動電流値をI/O12に送信し、取得部114はI/O12を介して斯かる駆動電流値を取得する(ステップS102)。
【0073】
このように、取得部114が新たな負荷52に係る駆動電流値を取得した場合、変更部113は、取得部114が取得した駆動電流値と、記憶部111の記憶内容とに基づいて、電線パラメータAを変更する(ステップS103)。
【0074】
本例においては、負荷1から負荷2に変更されたので、取得部114によって取得された駆動電流値は5Aから10Aの範囲内である。従って、変更部113は、記憶部111に記憶された図3の図表に基づいて、式1の電線パラメータAを、現在の負荷1対応の電線パラメータAから、負荷2対応の電線パラメータAに置き換える。
【0075】
この後、電流検出回路132が負荷側電線L3を介して負荷52へ供給される通電電流Iの電流値を検出し(ステップS104)、検出した通電電流Iの電流値をマイクロコンピュータ11に送信する。
【0076】
通電電流Iの電流値を受信した場合、推定部112は、該通電電流Iの電流値と、電線パラメータAが変更された上述の式1を用いて新たな負荷側電線L3の温度を推定する(ステップS105)。負荷側電線L3の温度の推定については、既に説明しており、詳しい説明を省略する。
【0077】
負荷側電線L3の温度が推定された場合、判定部116は、記憶部111に記憶している前記上限温度に基づいて、負荷側電線L3の推定温度が前記上限温度以上であるか否かを判定する(ステップS106)。判定部116によって負荷側電線L3の推定温度が前記上限温度未満であると判定された場合(ステップS106:NO)、処理はステップS104に戻る。例えば、判定部116によって負荷側電線L3の推定温度が前記上限温度未満であると判定された場合、所定時間の経過後に、処理がステップS104に戻るように構成しても良い。
【0078】
一方、判定部116によって負荷側電線L3の推定温度が前記上限温度以上であると判定された場合(ステップS106:YES)、指示部115はIPS13のスイッチ素子131に通電電流Iのオフを指示する(ステップS107)。
【0079】
以上の処理によって、実施形態1の給電制御装置10は、上述の如く、負荷52が変更された場合、新たな負荷52の負荷情報を用いて負荷側電線L3の温度が推定される。よって、負荷52が変更された場合であっても負荷側電線L3の温度を正確に推定できる。従って、工場出荷後に、車両Cの負荷52の機能が追加される、又は、負荷52自体を追加する等の場合にも、負荷側電線L3に発煙が発生することを未然に防止する。
【0080】
また、実施形態1の給電制御装置10は、上述の如く、負荷52が変更された場合、受付部30を介して給電制御装置10の外部から受け付けられる、新たな負荷52の負荷情報を用いて、既存の電線パラメータAを新たな負荷52に対応する電線パラメータAに変更する。
よって、異なる種類の負荷52への取り替えに対応でき、給電制御装置10と接続可能な複数種類の負荷52に対応する給電制御装置10を予め別々に用意しておく必要がなくなり、給電制御装置10の製造コストを低減できる。
【0081】
(実施形態2)
図5は、車両Cに装着された実施形態2に係る給電制御装置10と、給電制御装置10に接続された負荷52とを概略的に示す概念図である。実施形態1と同様、車両Cは、電源20と、給電制御装置10と、シート50とを備えているが、受付部30を備えていない。
【0082】
給電制御装置10は、電源20と負荷52との間に介在している。また、給電制御装置10とシート50との間にはコネクタ40が介在している。電源20、給電制御装置10及びコネクタ40は、実施形態1と同様であり、詳しい説明を省略する。
【0083】
一方、シート50は、給電用の負荷側電線L3を介してコネクタ40と接続している。また、シート50とコネクタ40とは通信線L4によって接続されている。即ち、実施形態2の給電制御装置10においては、コネクタ40よりも上流側は、電源側通信線L2によって給電制御装置10及びコネクタ40が接続され、コネクタ40よりも下流側は通信線L4によってコネクタ40及びシート50が接続されている。以下では、通信線L4を負荷側通信線L4とも称する。
【0084】
シート50は、ECU(Electronic Control Unit)53及び負荷52を有している。ECU53(通信部)は、コネクタ40及び負荷52の間に介在している。即ち、ECU53及びコネクタ40は、負荷側電線L3及び負荷側通信線L4によって接続されている。換言すれば、ECU53は、負荷側通信線L4、コネクタ40及び電源側通信線L2を介して給電制御装置10と通信可能である。
【0085】
ECU53は、負荷52への通電制御等を行う。また、ECU53は、負荷52を特定する負荷情報を記憶しており、後述の如く、給電制御装置10からの要求に応じて斯かる負荷情報を給電制御装置10に送信する。
【0086】
負荷情報は、例えば、負荷52の品番を表すデータであっても良く、負荷に係る前記駆動電流値を表すデータであっても良く、斯かる駆動電流値に対応する負荷側電線L3の電線径を表すデータであっても良く、Rw及びRthwを表すデータであっても良い。以下では、便宜上、負荷情報が駆動電流値を表すデータである場合を例に挙げて説明する。
【0087】
例えば、車両整備業者が、必要に応じて、車両Cのシート50に設けられていた負荷52を、負荷1から、より駆動電流値が大きい負荷2に取り替えることがあり得る。この場合、負荷52の変更に伴い、前記駆動電流値が大きくなるので、車両整備業者は負荷側電線L3も電線径の大きい負荷側電線L3に変える。
【0088】
以下、車両Cにおいて、上述の如く、負荷52が変更された場合の実施形態2の給電制御装置10の処理について説明する。
【0089】
負荷52が、負荷1から負荷2に取り替えられた場合、給電制御装置10のマイクロコンピュータ11は、シート50のECU53に、負荷52の負荷情報を送るよう要求する。これに応じて、ECU53は、負荷52の負荷情報を給電制御装置10に送信する。この際、ECU53は、自装置で記憶している負荷52の負荷情報(駆動電流値)を給電制御装置10に送信しても良く、自装置に流れている通電電流Iの電流値を検出して給電制御装置10に送信しても良い。
【0090】
シート50のECU53から、負荷52の駆動電流値を表すデータが送られた場合、給電制御装置10は、実施形態1と同様、図4のステップS102からステップS107までの処理を行う。
【0091】
即ち、取得部114はI/O12を介してECU53から駆動電流値を取得し、変更部113は、取得部114が取得した駆動電流値と、記憶部111の記憶内容とに基づいて、電線パラメータAを変更する。この後、電流検出回路132が負荷側電線L3を介して負荷52へ供給される通電電流Iの電流値を検出し、推定部112は、該通電電流Iの電流値と、電線パラメータAが変更された上述の式1とを用いて新たな負荷側電線L3の温度を推定する。そして、判定部116は、記憶部111に記憶している前記上限温度(図3の図表参照)に基づいて、負荷側電線L3の推定温度が前記上限温度以上であるか否かを判定し、判定部116によって負荷側電線L3の推定温度が前記上限温度以上であると判定された場合、指示部115はIPS13のスイッチ素子131に通電電流Iのオフを指示する。
【0092】
以上のような構成を有することから、実施形態2の給電制御装置10も、実施形態1と同様、工場出荷後に、車両Cの負荷52の機能が追加される、又は、負荷52自体を追加する等の場合であっても負荷側電線L3の温度を正確に推定できるので、負荷側電線L3に発煙が発生することを未然に防止する。
【0093】
また、負荷52が変更された場合、これに応じて、既存の電線パラメータAを新たな負荷52に対応する電線パラメータAに変更する。よって、異なる種類の負荷52への取り替えに対応でき、給電制御装置10と接続可能な複数種類の負荷52に対応する給電制御装置10を予め別々に用意しておく必要がなくなり、給電制御装置10の製造コストを低減できる。
【0094】
以上においては、実施形態2の給電制御装置10が、受付部30を有さず、ECU53からのみ負荷52の負荷情報を取得する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、受付部30も有するように構成しても良い。
【0095】
このように、給電制御装置10がECU53及び受付部30を共に有する場合は、受付部30を介した負荷情報の取得を優先的に行わるように構成する。例えば、給電制御装置10の取得部114は、受付部30を介して車両Cの外部から前記負荷情報を取得した場合、ECU53から取得した負荷情報を無効にする。
【0096】
即ち、負荷側電線L3の温度推定には、車両整備業者から受け付けた負荷情報、又は、OTAを用いて受け付けた負荷情報が優先的に用いられる。よって、温度推定の精度を高めることが出来る。
【0097】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0098】
(実施形態3)
図6は、車両Cに装着された実施形態3に係る給電制御装置10と、給電制御装置10に接続された負荷52とを概略的に示す概念図である。実施形態1と同様、車両Cは、電源20と、給電制御装置10と、シート50とを備えているが、受付部30を備えていない。他、実施形態1と同様であり、詳しい説明を省略する。
【0099】
例えば、車両整備業者が、必要に応じて、車両Cのシート50に設けられていた負荷52を、負荷1から、より駆動電流値が大きい負荷2に取り替えることがあり得る。この場合、負荷52の変更に伴い、前記駆動電流値が大きくなるので、車両整備業者は負荷側電線L3も電線径の大きい負荷側電線L3に変える。
【0100】
以下、車両Cにおいて、上述の如く、負荷52が変更された場合の実施形態3の給電制御装置10の処理について説明する。
【0101】
負荷1から負荷2への取り替えの場合、車両整備業者は、負荷1を負荷2に取り替えた後、スイッチ51をオンにする。これによって、電源20から負荷52への給電が可能になる。
【0102】
例えば、車両Cのエンジンが始動すると、電源20から負荷52へ通電電流Iが流れる。実施形態3の給電制御装置10は、自装置と、負荷52とが初めて通電するとき(以下、初回通電時)の通電電流Iの電流値と記憶部111の記憶内容に基づいて、電線パラメータAを変更する。
【0103】
即ち、給電制御装置10と、負荷52との初回通電時に、電流検出回路132が通電電流Iの電流値を検出し、検出した通電電流Iの電流値をマイクロコンピュータ11(取得部114)に送る。これによって、取得部114は、初回通電時の通電電流Iの電流値を負荷情報として取得する。以下、取得部114が取得した通電電流Iの電流値を取得通電電流I(取得電流値)と称する。
【0104】
電流検出回路132から取得通電電流Iが送られた場合、マイクロコンピュータ11は、実施形態1と同様、図4のステップS102からステップS107までの処理を行う。
【0105】
即ち、取得部114は電流検出回路132から取得通電電流Iを取得し、変更部113は、取得部114が取得した取得通電電流Iと、記憶部111の記憶内容とに基づいて、電線パラメータAを変更する。即ち、変更部113は、記憶部111の記憶内容(図3の図表参照)において、取得通電電流Iが属する駆動電流値の範囲に対応する電線パラメータAに、現在の電線パラメータAを置き換える。
【0106】
この後、推定部112は、取得通電電流Iと、電線パラメータAが変更された上述の式1とを用いて新たな負荷側電線L3の温度を推定する。そして、判定部116は、記憶部111に記憶している前記上限温度に基づいて、負荷側電線L3の推定温度が前記上限温度以上であるか否かを判定し、判定部116によって負荷側電線L3の推定温度が前記上限温度以上であると判定された場合、指示部115はIPS13のスイッチ素子131に通電電流Iのオフを指示する。
【0107】
以上のような構成を有することから、実施形態3の給電制御装置10も、実施形態1と同様、工場出荷後に、車両Cの負荷52が変更された場合であっても負荷側電線L3の温度を正確に推定できるので、負荷側電線L3に発煙が発生することを未然に防止する。
【0108】
また、負荷52が変更された場合、これに応じて、既存の電線パラメータAを新たな負荷52に対応する電線パラメータAに変更する。よって、給電制御装置10と接続可能な複数種類の負荷52に対応する給電制御装置10を予め別々に用意しておく必要がなくなり、給電制御装置10の製造コストを低減できる。
【0109】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0110】
(実施形態4)
上述の如く、実施形態2では、ECU53から負荷情報(駆動電流値)を取得して電線パラメータAを変更する例を説明しており、実施形態3では、初回通電時に電流検出回路132から負荷情報(取得通電電流I)を取得して電線パラメータAを変更する例を説明しているが、これらに限定されるものではない。例えば、場合に応じて、負荷情報の取得元を変更するように構成しても良い。
【0111】
図7は、実施形態4の給電制御装置10における電線パラメータAの変更の処理を説明するフローチャートである。
実施形態4の給電制御装置10においては、取得部114が、ECU53から負荷情報(駆動電流値)を取得でき、また、電流検出回路132から負荷情報(取得通電電流I)を取得できるように構成されている。即ち、実施形態4の給電制御装置10は、図5と同様、電流検出回路132を備えており、また、ECU53及び負荷52を有するシート50に接続されている。図5については既に説明しており、詳しい説明を省略する。
【0112】
例えば、車両整備業者が、必要に応じて、車両Cのシート50の負荷52を取り替え、負荷52の取り替えに伴って、負荷側電線L3も電線径の大きい負荷側電線L3に変えるとする。
【0113】
車両整備業者による負荷52の取り替えの完了後、給電制御装置10の判定部116は、負荷52のECU53と通信可能であるか否かを判定する(ステップS201)。換言すれば、判定部116は、負荷52のECU53の有無を判定する。
詳しくは、マイクロコンピュータ11が、シート50側に、応答を要求する信号を送信し、所定時間の間、斯かる要求に応じた応答信号が受信されるかI/O12を監視する。
【0114】
所定時間内に、前記応答信号が受信された場合、判定部116は、負荷52のECU53と通信可能であると判定し(ステップS201:YES)、マイクロコンピュータ11が、シート50のECU53に、負荷52の負荷情報を送るよう要求する。斯かる要求に応じて、ECU53は、負荷52の負荷情報を給電制御装置10に送信し、取得部114はI/O12を介してECU53から駆動電流値を取得する(ステップS205)。取得部114がECU53から駆動電流値を取得する処理については、実施形態2で既に説明しており、詳しい説明を省略する。以降、処理はステップS204に進む。
【0115】
一方、所定時間内に、前記応答信号が受信されなかった場合、判定部116は、負荷52のECU53と通信が不可能であると判定する(ステップS201:NO)。換言すれば、判定部116は、負荷52のECU53が存在しないと判定する。
【0116】
次いで、判定部116は、給電制御装置10と負荷52との間に前記初回通電があったか否かを判定する(ステップS202)。判定部116は、給電制御装置10と負荷52との間に前記初回通電がなかったと判定した場合(ステップS202:NO)、前記初回通電が発生するまで、待機する。
【0117】
また、判定部116が、給電制御装置10と負荷52との間に前記初回通電があったと判定した場合(ステップS202:YES)、電流検出回路132が通電電流Iの電流値を検出して検出した通電電流Iの電流値をマイクロコンピュータ11の取得部114に送り、これによって、取得部114は、初回通電時の通電電流Iの電流値を取得する(ステップS203)。取得部114が初回通電時の通電電流Iの電流値を取得する処理については、実施形態3で既に説明しており、詳しい説明を省略する。以降、処理はステップS204に進む。
【0118】
以上の処理によって、取得部114は新たな負荷52の負荷情報(駆動電流値又は通電電流Iの電流値)を取得できる。
次いで、変更部113は、取得部114が取得した負荷情報と、記憶部111の記憶内容とに基づいて、電線パラメータAを変更する(ステップS204)。電線パラメータAの変更については、既に説明しており、詳しい説明を省略する。
【0119】
以上のように、実施形態4の給電制御装置10は、場合に応じて、負荷情報の取得元を変更できる。従って、負荷52のECU53と通信が不可能である場合、又は、負荷52のECU53が存在しない場合にも負荷情報を取得できる。
【0120】
以上のような構成を有することから、実施形態4の給電制御装置10も、実施形態1と同様の効果を奏する。
【0121】
実施の形態1と同様の部分については詳細な説明を省略する。
【0122】
以上では、電線パラメータAがRw(電線抵抗)及びRthw(電線熱抵抗)の積である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電線パラメータAがRw又はRthwのいずれかであっても良い。
【0123】
また、以上では、給電制御装置10に1つの負荷52が接続された場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、給電制御装置10に複数の負荷52が接続された場合にも、同様の効果を奏する。この場合、給電制御装置10に接続された複数の負荷52の駆動電流値の和に応じて負荷側電線が定まるので、複数の負荷52の駆動電流値の和に対応する負荷側電線に係るRw及びRthwにて電線パラメータAを設定すれば良い。
【0124】
また、以上では、スイッチ素子131として、nチャネルMOSFETを使用する例を示したが、これに限定されない。例えば、スイッチ素子131として、pチャネルMOSFETを使用してもよいし、バイポーラトランジスタを使用してもよい。
【0125】
また、以上では、通電電流Iの電流値をセンスMOSFETである電流検出回路132によって検出する例を示したがこれに限定されない。例えば、シャント抵抗を用いて通電電流Iの電流値を検出するようにしてもよい。
【0126】
実施の形態1~4で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0127】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0128】
10 給電制御装置
11 マイクロコンピュータ
12 I/O
13 IPS
20 電源
30 受付部
40 コネクタ
50 シート
51 スイッチ
52 負荷
53 ECU
111 記憶部
112 推定部
113 変更部
114 取得部
115 指示部
116 判定部
131 スイッチ素子
132 電流検出回路
A 電線パラメータ
C 車両
I 通電電流
L1,L3 電線
L2,L4 通信線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7