(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061315
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】温度測定用装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01K 1/14 20210101AFI20240425BHJP
【FI】
G01K1/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169178
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】519010282
【氏名又は名称】亀井 謙治
(71)【出願人】
【識別番号】307039857
【氏名又は名称】株式会社SCREEN SPE サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】亀井 謙治
(72)【発明者】
【氏名】夏見 豊志
(72)【発明者】
【氏名】安川 晃司
(72)【発明者】
【氏名】森本 勝利
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 幸夫
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056CE10
(57)【要約】
【課題】基板の温度を正確に検出することができるとともに、熱膨張により剥離しがたく、比較的安価で修理交換することができる。
【解決手段】温度センサ7が側面の少なくとも一部と、凹部5の側面swの少なくとも一部とが熱伝導可能な状態で接触するように固定板9で固定されている。したがって、温度センサ7と凹部5の側面swとの間には押しつけられる力が加わり、熱伝導がさらに改善されるので、温度測定用基板3の温度を温度センサ7で正確に検出することができる。また、温度センサ7は、固定板9で凹部5に固定されるので、熱膨張により剥離しがたく、比較的安価で修理交換することができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を熱処理雰囲気に配置して、前記基板に対して熱処理を行う基板処理装置内の温度を測定する温度測定装置において、
前記基板処理装置の熱処理雰囲気内に配置される温度測定用基板と、
前記温度測定用基板の一方面に開口し、平面視において一端の幅より他端の幅が狭くなるくさび形を呈する凹部と、
前記凹部にて前記他端に向けて取り付けられる温度センサと、
前記温度センサの側面の少なくとも一部と、前記凹部の側面の少なくとも一部とが熱伝導可能な状態で接触するように、前記温度センサの側面と前記凹部の側面との間に配置され、前記温度センサを前記凹部に固定する固定部材と、
を備えていることを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度測定用装置において、
前記温度センサは、平面視における形状が矩形状であって、一辺が前記凹部の他端の幅より大きく、かつ、前記凹部の一端の幅より小さいことを特徴とする温度測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の温度測定用装置において、
前記温度センサは、前記凹部の底面側に位置するベース部と、前記ベース部のうち、前記凹部の底面とは反対側の面に形成され、温度を検出する感温部とを備え、
前記感温部は、前記凹部の側面に臨むように形成されていることを特徴とする温度測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の温度測定装置において、
前記温度センサは、外部からの信号線が接続されるリード端子を備え、
前記凹部は、前記リード端子のうち、前記温度センサに接続された基端部が前記温度測定用基板の一方面以下となる深さを有することを特徴とする温度測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の温度測定装置において、
前記固定部材は、熱伝導性及び弾性を有する金属部材であることを特徴とする温度測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の温度測定装置において、
前記固定部材は、一端部から他端部の途中に少なくとも一箇所の屈曲部を有するくの字形状を呈し、
前記一端部を前記凹部の前記他端に当接させ、前記他端部を前記凹部の一端に向けて配置し、前記屈曲部から前記他端部の少なくとも一部を前記凹部の側面と前記温度センサの側面とに位置させることを特徴とする温度測定装置。
【請求項7】
請求項5に記載の温度測定装置において、
前記固定部材は、一端部から他端部の途中に二箇所の屈曲部を有し、前記各屈曲部を結ぶ直線状の先端部を有する平面視コの字形状を呈し、かつ、前記先端部の幅が前記凹部の他端より広く形成されており、
前記先端部を前記凹部の前記他端に向けた状態とし、前記一端部と前記他端部とを前記凹部の側面と温度センサの側面の間に位置させることを特徴とする温度測定装置。
【請求項8】
請求項1に記載の温度測定装置において、
前記固定部材は、熱伝導性を有する接着剤であることを特徴とする温度測定装置。
【請求項9】
請求項1から3のいずれかに記載の温度測定装置において、
前記温度測定用基板は、シリコンで構成され、
前記温度センサは、シリコンの粉末を混入した耐熱性無機接着剤によって前記凹部に固定されることを特徴とする温度測定装置。
【請求項10】
請求項4に記載の温度測定装置において、
前記信号線と前記リード端子とを接続する端子台をさらに備え、
前記端子台を前記温度センサの上部に固定することを特徴とする温度測定装置。
【請求項11】
請求項10に記載の温度測定装置において、
前記信号線は、シリコンの粉末を含まない接着剤で前記端子台に固定されることを特徴とする温度測定装置。
【請求項12】
基板を熱処理雰囲気に配置して、前記基板に対して熱処理を行う基板処理装置内の温度を測定する温度測定装置の製造方法において、
前記基板処理装置の熱処理雰囲気内に載置される温度測定用基板の一方面に開口し、平面視において一端の幅より他端の幅が狭くなるくさび形を呈する凹部を形成する工程と、
前記凹部内に温度センサを配置し、前記他端に向けて温度センサを前記凹部の底面に沿って移動させるとともに、前記温度センサの側面の少なくとも一部と、前記凹部の側面の少なくとも一部とが熱伝導可能な状態で接触するように、前記温度センサを前記凹部に固定する固定部材を取り付ける工程と、
を有することを特徴とする温度測定用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、液晶表示用や有機EL(Electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板に対して、半導体製造プロセスにおいて加熱処理する際に、基板における実際の温度を測定する温度測定用装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の第1の装置として、温度測定用基板と、温度センサと、凹部と、低熱容量帯とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。凹部は、温度測定用基板の上面に形成されている。凹部は、平面視で略円形であり、矩形状の温度センサの外形より大きく形成されている。温度センサは、接合剤で凹部に接合されている。凹部に接合された温度センサは、封止材でポッティングされている。
【0003】
また、この種の第2の装置として、温度測定用基板と、温度センサと、センサ用孔とを備えたものがある(例えば、特許文献2参照)。センサ用孔は、温度測定用基板に形成されている。センサ用孔は、温度センサの感温部の外形よりも大きく形成されている。温度センサの感温部は、センサ用孔に挿入されている。センサ用孔には、接着剤が流し込まれる。温度センサの感温部は、接着剤でセンサ用孔に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-128081号公報
【特許文献2】特開2002-257635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の第1の装置及び第2の装置は、温度センサを凹部やセンサ用孔に配置して、接合剤や接着剤で接着して固定する。半導体製造プロセスの加工対象であるシリコンウエハ等の半導体基板や、ガラス、石英等の基板は、一般に0.5mm~1mm程度と非常に薄く、温度センサを基板表面に密着させることが困難で、接着剤で貼り付ける等の方法が一般的に用いられている。しかしながら、温度センサの感温部分が基板に密着せず、希望する部分の温度が測定できなくなることや、温度センサが熱膨張により簡単に剥離したりする等の問題がある。また、温度センサをシリコン表面に溶接するなどの方法もあるが、これには価格が高価となることや、センサの修理交換が困難となる等の問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、基板の温度を正確に検出することができるとともに、熱膨張により剥離し難く、比較的安価で修理交換することができる温度測定用装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、基板を熱処理雰囲気内に配置して、前記基板に対して熱処理を行う基板処理装置内の温度を測定する温度測定装置において、前記基板処理装置の熱処理雰囲気に配置される温度測定用基板と、前記温度測定用基板の一方面に開口し、平面視において一端の幅より他端の幅が狭くなるくさび形を呈する凹部と、前記凹部にて前記他端に向けて取り付けられる温度センサと、前記温度センサの側面の少なくとも一部と、前記凹部の側面の少なくとも一部とが熱伝導可能な状態で接触するように、前記温度センサの側面と前記凹部の側面との間に配置され、前記温度センサを前記凹部に固定する固定部材と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、温度センサは、温度センサの側面の少なくとも一部と、凹部の側面の少なくとも一部とが熱伝導可能な状態で接触するように固定部材で凹部に固定される。したがって、温度センサと凹部の側面との間には押しつけられる力が加わり、熱伝導がさらに改善されるので、温度測定用基板の温度を温度センサで正確に検出することができる。温度センサは、くさび形の凹部のうち、幅が狭くなる他端に向けて取り付けられるので、温度センサの凹部における位置を一定化することができる。したがって、温度センサの配置位置のバラツキを小さくすることができる。また、温度センサは、固定部材で凹部に固定されるので、熱膨張により剥離しがたく、比較的安価で修理交換をすることができる。
【0009】
また、本発明において、前記温度センサは、平面視における形状が矩形状であって、一辺が前記凹部の他端の幅より大きく、かつ、前記凹部の一端の幅より小さいことが好ましい(請求項2)。
【0010】
温度センサの一辺が凹部の他端の幅より大きいので、幅が狭くなる他端に向けて温度センサを取り付けることで、温度センサの一部を凹部の側面に密着させることができる。したがって、温度測定の精度を高めることができる。
【0011】
また、本発明において、前記温度センサは、前記凹部の底面側に位置するベース部と、前記ベース部のうち、前記凹部の底面とは反対側の面に形成され、温度を検出する感温部とを備え、前記感温部は、前記凹部の側面に臨むように形成されていることが好ましい(請求項3)。
【0012】
感温部が凹部の側面に臨むように形成されているので、温度測定用基板の温度を凹部の側面を介して正確に検出することができる。ここで、感温部が凹部の側面に臨むとは、次のような状態を表す。ベース部の側面に一致するように感温部が形成されている。
【0013】
また、本発明において、前記温度センサは、外部からの信号線が接続されるリード端子を備え、前記凹部は、前記リード端子のうち、前記温度センサに接続された基端部側が前記温度測定用基板の一方面以下となる深さを有することが好ましい(請求項4)。
【0014】
温度測定用基板は、加熱源に最も近い熱処理雰囲気に他方面が配置される。そのため、温度測定用基板の温度は、凹部から一方面の上方にある空間の温度よりも高いのが一般的である。そのため、温度センサから延出されたリード端子のうち、温度センサに接続された基端部側が、凹部から温度測定用基板の一方面よりも上方に突出すると、リード端子の基端部側から温度センサに低い温度が伝わる。そのため、検出温度が温度測定用基板の温度より低くなることがある。そこで、凹部は、リード端子の基端部側が温度測定用基板の一方面以下となる深さとすることで、リード端子の基端部側が温度測定用基板の一方面から突出しないようにすることができる。そのため、温度センサで正確に基板の温度を測定することができる。
【0015】
また、本発明において、前記固定部材は、熱伝導性及び弾性を有する金属部材であることが好ましい(請求項5)。
【0016】
金属部材は、熱伝導性及び弾性を有する。したがって、金属部材は、温度センサによる温度検出を妨げず、温度センサを凹部に固定するものとして好適である。例えば 、金属部材は、0.1mm程度の金属の薄板を幅0.5mm、長さ3mm程度の長方形に切り出した物を使用することができる。
【0017】
また、本発明において、前記固定部材は、一端部から他端部の途中に少なくとも一箇所の屈曲部を有するくの字形状を呈し、前記一端部を前記凹部の前記他端に当接させ、前記他端部を前記凹部の一端に向けて配置し、前記屈曲部から前記他端部の少なくとも一部を前記凹部の側面と前記温度センサの側面とに位置させることが好ましい(請求項6)。
【0018】
くの字形状を呈する固定部材の一端部を凹部の他端に当接させて長手方向へのバネをつかって圧力をかける。くの字形状を呈する固定部材の屈曲部から他端部の少なくとも一部を凹部の側面と温度センサの側面とに位置させることで、温度センサを凹部の側面へ押圧して位置を固定する。接着剤だけで固定する従来例に比較して、熱膨張や熱収縮により温度センサが剥がれることを防止することができる。また、凹部に挿入する際に、倒れにくくすることができ、作業性を向上することができる。
【0019】
また、本発明において、前記固定部材は、一端部から他端部の途中に二箇所の屈曲部を有し、前記各屈曲部を結ぶ直線状の先端部を有する平面視コの字形状を呈し、かつ、前記先端部の幅が前記凹部の他端より広く形成されており、前記先端部を前記凹部の前記他端に向けた状態とし、前記一端部と前記他端部とを前記凹部の側面と温度センサの側面の間に位置させることが好ましい(請求項7)。
【0020】
固定部材がコの字形状であるので、予め固定部材を温度センサに容易に取り付けることができる。したがって、温度センサを温度測定用基板の凹部に取り付ける作業を効率的に行うことができる。
【0021】
また、本発明において、前記固定部材は、熱伝導性を有する接着剤であることが好ましい(請求項8)。
【0022】
このような接着剤を固定部材としても、温度センサによる温度検出を妨げず、温度センサを凹部に固定するものとして好適である。
【0023】
また、本発明において、前記温度測定用基板は、シリコンで構成され、前記温度センサは、シリコンの粉末を混入した耐熱性無機接着剤によって前記凹部に固定されることが好ましい(請求項9)。
【0024】
温度測定用基板がシリコン製であれば、耐熱性無機接着剤にシリコンの粉末を混合すると、耐熱性無機接着剤の熱膨張率を温度測定用基板に近づけることができる。したがって、熱膨張や熱収縮により温度センサが温度測定用基板から剥がれることを防止することができる。
【0025】
また、本発明において、前記信号線と前記リード端子とを接続する端子台をさらに備え、前記端子台を前記温度センサの上部に固定することが好ましい(請求項10)。
【0026】
端子台が固定された温度センサを固定部材により凹部に固定する。したがって、端子台ごと温度センサを凹部に取り付けることができる。一般的に端子台は、温度センサより大きい。したがって、作業性を良好にして温度センサを凹部に取り付けることができる。
【0027】
また、本発明において、前記信号線は、シリコンの粉末を含まない接着剤で前記端子台に固定されることが好ましい(請求項11)。
【0028】
端子台はセラミックでできており、温度測定基板より熱伝導率が低いため、中継用の配線をセラミック端子台に固定することにより、中継用の信号線が温度センサに及ぼす影響を軽減することができる。この端子台は、耐熱性と絶縁性を満足するなら、ポリイミド樹脂、PEEK樹脂等でできていても良い。端子台を温度測定用基板に接着する接着剤は、シリコンの粉末を含まないので、接着剤も一般的なものでよい。よって、コストの抑制に貢献することができる。
【0029】
また、請求項12に記載の発明は、基板を熱処理雰囲気に配置して、前記基板に対して熱処理を行う基板処理装置内の温度を測定する温度測定装置の製造方法において、前記基板処理装置の熱処理雰囲気内に載置される温度測定用基板の一方面に開口し、平面視において一端の幅より他端の幅が狭くなるくさび形を呈する凹部を形成する工程と、前記凹部内に温度センサを配置し、前記他端に向けて温度センサを前記凹部の底面に沿って移動させるとともに、前記温度センサの側面の少なくとも一部と、前記凹部の側面の少なくとも一部とが熱伝導可能な状態で接触するように、前記温度センサを前記凹部に固定する固定部材を取り付ける工程と、を有することを特徴とするものである。
【0030】
[作用・効果]請求項12に記載の発明によれば、温度測定用基板の一方面に開口したくさび形を呈する凹部を形成する。次に、凹部内に温度センサを配置し、他端に向けて温度センサを凹部の底面に沿って移動させる。このとき、温度センサの側面の少なくとも一部と、凹部の側面の少なくとも一部とが熱伝導可能な状態で接触するように、温度センサを凹部に固定する固定部材を取り付ける。したがって、温度センサと凹部の側面との間には押しつけられる力が加わり、熱伝導がさらに改善されるので、温度測定用基板の温度を温度センサで正確に検出することができる温度測定装置を製造することができる。また、温度センサは、固定部材で凹部に固定されるので、熱膨張により剥離しがたく、比較的安価で修理交換することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る温度測定装置によれば、温度センサは、温度センサの側面の少なくとも一部と、凹部の側面の少なくとも一部とが熱伝導可能な状態で接触するように固定部材で凹部に固定される。したがって、温度センサと凹部の側面との間には押しつけられる力が加わり、熱伝導がさらに改善されるので、温度測定用基板の温度を温度センサで正確に検出することができる。温度センサは、くさび形の凹部のうち、幅が狭くなる他端に向けて取り付けられるので、温度センサの凹部における位置を一定化することができる。したがって、温度センサの配置位置のバラツキを小さくすることができる。また、温度センサは、固定部材で凹部に固定されるので、熱膨張により剥離しがたく、比較的安価で修理交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施例1に係る温度測定装置を示す斜視図である。
【
図8】温度測定装置の凹部付近を拡大した斜視図である。
【
図11】実施例2に係る温度測定装置の固定板を示す斜視図である。
【
図13】温度測定装置の凹部付近を拡大した斜視図である。
【
図14】実施例3に係る温度測定装置の固定板の斜視図である。
【
図16】温度測定装置の凹部付近を拡大した斜視図である。
【
図17】製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図18】第1の製造方法に係る温度測定装置の製造過程を示す斜視図である。
【
図19】第2の製造方法に係る温度測定装置の製造過程を示す斜視図である。
【
図20】凹部に関する第1の変形例を示す平面図である。
【
図21】凹部に関する第2の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、温度測定装置について例を挙げて説明する。
【実施例0034】
以下、図面を参照して本発明の実施例1について説明する。
図1は、実施例1に係る温度測定装置を示す斜視図である。
図2は、凹部の平面図である。
図3は、凹部の長軸における断面図である。
【0035】
温度測定装置1は、例えば、基板熱処理装置で用いられる。基板熱処理装置は、例えば、基板を熱処理雰囲気に配置して、基板に対して、または、基板に被着されている膜に対して所定の加熱処理を行う。より具体的には、基板をホットプレートに載置して加熱処理を行う。このときの加熱温度は、施したい処理に応じて、例えば、150~1000℃の範囲で設定される。
【0036】
温度測定装置1は、温度測定用基板3と、凹部5と、温度センサ7と、固定板9と、セラミック端子台11と、信号線13とを備えている。
【0037】
温度測定用基板3は、基板熱処理装置で処理対象とされる基板と同等の大きさ(直径及び厚さ)及び材質である。本実施例では、熱処理の対象である基板がシリコン製であるとする。本実施例では、熱処理の対象である基板が平面視で円形状を呈するものとする。したがって、温度測定用基板3は、シリコン製である。温度測定用基板3は、平面視で円形状を呈する。
【0038】
温度測定用基板3は、平面視における中央部に凹部5を形成されている。温度測定用基板3における凹部5の位置は、基板処理装置において所望する測定位置に応じて決められる。例えば、基板熱処理装置において、処理対象の基板がホットプレートに載置されて熱処理される場合に、ホットプレートで加熱される基板の中央部における温度を測定したい場合には、中央部に凹部5を形成する。なお、複数箇所の温度を測定する場合には、凹部5を複数箇所に形成すればよい。複数箇所に凹部5を形成する場合には、例えば、中央部と、周縁部に近い領域上とに形成する。
【0039】
凹部5は、温度測定用基板3の一方面である上面に形成されている。一方面は、温度測定用基板3がホットプレートに接しない面である。凹部5は、平面視でくさび形を呈する。詳細には、凹部5は、長軸LAと、短軸SAとを有する。換言すると、凹部5は、細長い形状を呈する。凹部5は、長軸LAにおける一端LA1の幅W1と、他端LA2の幅W2とが異なる。具体的には、一端LA1の幅W1より他端LA2の幅W2が長軸LAに沿って徐々に狭くなっている。凹部5は、一端LA1が幅W1を直径とする円弧を描くように形成されている。凹部5は、他端LA2が幅W2を直径とする円弧を描くように形成されている。換言すると、凹部5は、平面視において、横向きの台形であって、その上底と下底とが外向きに突出した円弧状の形状を呈する。
【0040】
凹部5は、温度測定用基板3の上面から下面に向かって深さdpの深さで形成されている。凹部5は、有底である。この深さdpは、後述するように温度センサ7に接続されているリード端子19のうち基端部側を収容することができる深さである。換言すると、深さdpは、温度センサ7のリード端子のうち、感温部に接続されている基端部側が温度測定用基板3の上面から上方へ突出しない深さである。凹部5は、長軸LAに沿って深さdpで一定に形成されている。換言すると、凹部5は、温度測定用基板3の上面または下面に平行に底面btが形成されている。凹部5は、底面btからほぼ鉛直に立ち上がった側面swを備えている。側面swは、短軸SA方向において対向している。各々の側面swは、平面視で直線状を呈する。
【0041】
温度測定用基板3は、基板処理装置の加熱源に最も近い熱処理雰囲気に配置される。そのため、温度測定用基板3の温度は、凹部5から一方面の上方に存在する空間の温度よりも高いのが一般的である。換言すると、凹部5から上方へ突出した空間における温度は、温度測定用基板3よりも低い。これにより、温度センサ7から延出されたリード端子19のうち、温度センサ7に接続された基端部側が、凹部5から温度測定用基板3の一方面よりも上方に突出すると、リード端子19の基端部側から温度センサ7に低い温度が伝わる。そのため、温度センサ7による検出温度が温度測定用基板3の温度より低くなることがある。
【0042】
そこで、凹部5は、リード端子19の基端部側が温度測定用基板3の一方面以下となるdpとすることで、リード端子19の基端部側が温度測定用基板3の一方面から突出しないようにすることができる。これにより、リード端子19の基端部側からの悪影響を温度センサ7が受けて不正確な温度となることを防止することができる。つまり、温度センサ7で温度測定用基板3の温度を正確に測定することができる。
【0043】
ここで、
図4及び
図5を参照する。
図4は、温度センサの平面図である。
図5は、温度センサの側面図である。
【0044】
温度センサ7は、温度を検出する。温度センサ7は、セラミック基板15と、感温部17と、リード端子19と、保護部21とを備えている。
【0045】
温度センサ7の具体的な寸法は、例えば、次のとおりである。温度センサ7の短辺は、約1.2mmである。温度センサ7のうち、リード端子19を除いた長辺は、約1.6mmである。温度センサ7の保護部21を含む高さは、約0.25mmである。
【0046】
セラミック基板15は、平面視で矩形状を呈する。詳細には、長方形の形状を呈する。セラミック基板15は、温度センサ7の基台を構成する。セラミック基板15は、短辺の長さが凹部5における他端の幅W2よりも長い。セラミック基板15は、長辺の長さが凹部5における長軸LAより短い。より具体的には、セラミック基板15の長辺は、凹部5における円弧部分を除いた長軸LAの長さより短い。換言すると、セラミック基板15は、平面視にて凹部15の内部に収容可能な外形寸法を有する。セラミック基板15は、例えば、熱伝導率がシリコン製の温度測定用基板3の1/10程度である。
【0047】
セラミック基板15の一方面には、感温部17が形成されている。感温部17は、温度に応じて電気的特性が変化する。感温部17は、例えば、薄膜抵抗体で構成されている。具体的には、感温部17は、白金薄膜で構成されている。白金薄膜の厚みは、例えば、0.1~数十μmである。感温部17は、セラミック基板15の長手方向のうち、2/3ほどが露出している。
【0048】
リード端子19は、感温部17の一方から側方に伸びている。リード端子19は、感温部17における電気的特性の変化を外部から計測するためのものである。リード端子19は、感温部17に接続されている。リード端子19の基端部側は、保護部21から側方に伸びている。保護部21は、感温部17とリード端子19との接続部分を外部から保護する。リード端子19は、基端部側から先端部側まで直線状に形成されている。リード端子19は、導体であり、熱伝導性を有する。
【0049】
感温部17は、保護部21を除いた三箇所の側面及び上面が外部に臨んでいる。感温部17は、外部に臨む面に熱が伝わることにより、その熱に応じて電気的特性が変化し、その電気的特性がリード端子19を介して計測される。
【0050】
上述した構成の温度センサ7は、感温部17が側面及び上面に臨んでいる。そのため、温度センサ7は、上面及び側面における温度検出の感度が高い。上述した構成の温度センサ7は、セラミック基板15の上面に感温部17が形成されている。そのため、温度センサ7は、下面における温度検出の感度が最も低い。
【0051】
なお、上述したセラミック基板15が本発明における「ベース部」に相当する。
【0052】
ここで、
図6及び
図7を参照する。
図6は、固定板の斜視図である。
図7は、固定板の側面図である。
【0053】
固定板9は、温度センサ7を凹部5に熱伝導可能な状態で接触させる。固定板9は、温度センサ7を凹部5にて固定する。固定板9は、金属製である。固定板9は、耐熱性を有し、かつ、熱伝導率が高く、かつ、弾性変形しやすいものが好ましい。固定板9は、例えば、無酸素銅、銅合金、銀、金などが好ましい。
【0054】
固定板9は、一端部23から他端部25の途中に1つの屈曲部27が形成されている。
図7に示すように、固定板9を側面視すると、くの字形状を呈する。固定板9は、この形状的にも温度センサ7を押圧する押圧力を生じさせることができる。また、凹部5に固定板9を挿入する際に、倒れにくくすることができ、作業性を向上することができる。
【0055】
上述した固定板9が本発明における「固定部材」及び「金属部材」に相当する。
【0056】
ここで、
図8~
図10を参照する。
図8は、温度測定装置の凹部付近を拡大した斜視図である。
図9は、温度測定装置の平面図である。
図10は、
図9のA-A矢視断面図である。なお、
図8では、セラミック端子台11を取り外した状態を示す。
【0057】
温度センサ7は、例えば、
図8に示すように、リード端子19の基端部側とは反対側の先端部が上方に曲げ加工されている。
図1及び
図9に示すように、リード端子19の先端部側には、セラミック端子台11が配置されている。セラミック端子台11は、リード端子19と信号線13とを接続する。セラミック端子台11は、リード端子19と信号線13とを中継する。
【0058】
セラミック端子台11は、セラミック製の基台31と、信号線接続部33と、リード端子接続部35とを有する。信号線接続部33とリード端子接続部35とは、導通している。信号線接続部33は、信号線13が導通した状態で接続されている。リード端子接続部35は、リード端子19の先端部側が上方へ曲げられ、リード端子19が導通した状態で接続されている。したがって、温度センサ7のリード端子19は、セラミック端子台11において信号線13と導通している。信号線13は、耐熱性を有する。具体的には、例えば、導線がポリイミド樹脂で被覆されている。
【0059】
セラミック端子台11は、例えば、商品名:マセライト(登録商標)というセラミックで構成することが好ましい。このセラミックは、熱伝導率が低く、かつ熱膨張係数が温度測定用基板3を構成するシリコンに近い。したがって、温度測定用基板3に接着しても熱の影響による剥離が生じ難くすることができる。その結果、長期間にわたって温度測定用基板1の性能を維持することができる。なお、熱膨張係数が温度測定用基板3を構成する材料に近ければ、上記のセラミック以外であっても使用することができる。
【0060】
温度センサ7は、固定板9及びセラミック端子台11とともに凹部5に配置されている。固定板9は、先端部23を凹部5の他端に向け、屈曲部27を凹部5の一方の側面swに当接させた状態で配置される。温度センサ7は、凹部5の他端に向けて取り付けられている。温度センサ7は、凹部5の他端に向かって水平移動され、固定板9とともに凹部5の二つの側面swで挟持されている。温度センサ7は、温度センサ7の側面の少なくとも一部と、凹部5の側面swの少なくとも一部とが熱伝導可能な状態で接触するように固定板9で固定される。
【0061】
温度センサ7には、
図8に示すように、固定板9の弾性力及び屈曲部27が側方へ戻ろうとする力によって押圧力Fが作用する。そのため、温度センサ7は、感温部17の一方の側面が押圧されて、凹部5の一方の側面swに直接的に接触する。温度センサ7は、感温部17の他方の側面が凹部5の他方の側面swに固定板9を介して間接的に接触している。感温部17には、凹部5の二つの側面swを介して温度測定用基板3の温度が伝達する。換言すると、感温部17は、押圧力Fが作用する中で、両側面が凹部5の二つの側面swに対して、間接的または直接的に線状で接触している。したがって、温度測定装置1は、温度検出用基板3の温度を温度センサ7で正確に測定することができる。
【0062】
温度センサ7は、凹部5を覆うように接着剤37を盛られて温度測定用基板3に固定されている。セラミック端子台11は、温度センサ7の上部に接着剤39で固定されている。セラミック端子台11は、接着剤39で温度測定用基板3の一方面に固定されている。
【0063】
接着剤37は、温度測定用基板3を構成する材料の粉末を混合したものであることが好ましい。具体的には、接着剤37は、温度測定用基板3がシリコン製である場合には、シリコンの粉末を混入する。接着剤37に対して混入するシリコンの粉末の量は、接着剤37の接着力が低下しない程度である。接着剤39は、通常の接着剤である。つまり、接着剤39は、接着剤37のよう温度測定用基板3を構成する材料の粉末を含まない。したがって、接着剤39は、耐熱性のある一般的なものである。よって、コストの抑制に貢献することができる。
【0064】
上述した接着剤37は、例えば、耐熱性を有する。好ましい接着剤37としては、例えば、商品名:アロンセラミック(登録商標)のような耐熱性無機接着剤が挙げられる。
【0065】
上述した実施例1に係る温度測定装置1は、温度センサ7が側面の少なくとも一部と、凹部5の側面swの少なくとも一部とが熱伝導可能な状態で接触するように固定板9で固定されている。したがって、温度センサ7と凹部5の側面swとの間には押しつけられる力が加わり、熱伝導がさらに改善されるので、温度測定用基板3の温度を温度センサ7で正確に検出することができる。温度センサ7は、くさび形の凹部5のうち、幅が狭くなる他端LA2に向けて取り付けられるので、温度センサ7の凹部5における位置を一定化することができる。したがって、温度センサ7の配置位置のバラツキを小さくすることができる。また、温度センサ7は、固定板9で凹部5に固定されるので、熱膨張により剥離しがたく、比較的安価で修理交換することができる。
【0066】
実施例1による温度測定装置1は、温度センサ7を接着だけで固定せず、固定板9を用いて固定している。したがって、固定板9による押圧力を利用しているので、熱膨張によって接着が破壊されることにより温度センサ7が脱落することを防止することができる。
実施例2に係る温度測定装置1Aにおける固定板9Aは、一端部23から他端部25の途中に二つの屈曲部27が形成されている。固定板9Aは、二つの屈曲部27を結ぶ直線状の先端部41を備えている。先端部41は、凹部5の他端の幅W2より幅が広い。先端部41は、凹部5の一端の幅W1より幅が狭い。先端部41の内側の幅は、温度センサ7の幅とほぼ同じか、若干広い。
温度センサ7は、感温部17及びセラミック基板15の側面に固定板9Aを取り付けられることができる。固定板9Aは、仮止めとして接着剤などにより温度センサ7に取り付けられてもよい。その場合、接着剤は、感温部17に塗布される。接着剤はシリコン粉末を混入しても良い。これによりさらに接着剤の熱伝導率を改善することができる。なお、接着剤は、感温部17に塗布されず、セラミック基板15にのみ塗布されてもよい接着剤は、感温部17に塗布されず、セラミック基板15にのみ塗布されてもよい。
固定板9Aがコの字形状であるので、予め固定板9Aを温度センサ7に容易に取り付けることができる。したがって、固定板9Aとともに温度センサ7を温度測定用基板3の凹部5に取り付ける作業を効率的に行うことができる。
また、強度的に脆いセラミック基板15や感温部17の側面部を固定板9Aで保護することができる。したがって、固定板9Aを取り付けた温度センサ7を凹部5の他端に向けて取り付ける際に温度センサ7のセラミック基板15や感温部17の破損を防止することができる別異の効果も奏する。