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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061320
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】血圧計用腕帯
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
A61B5/022 300A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169185
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507351883
【氏名又は名称】シチズン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 庸平
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AB01
4C017AD25
4C017AD30
4C017EE01
4C017FF17
(57)【要約】
【課題】血圧測定機能へ与える影響を抑えつつ、丸めによるコンパクトな収納形態としながらも空気袋の幅方向両端部に皺が発生するのを軽減する血圧計用腕帯を提供すること。
【解決手段】腕帯カバー20と空気袋40を備える血圧計用腕帯10において、空気袋40は、幅方向の両側端縁に形成された袋直線部に沿った内面の位置に、巻き付け方向Pの長さが幅方向Dに対して長い帯状の補強シート50を一対備える。補強シート50は、巻き付け方向Pに延びるシート面領域を、幅方向内側領域IAと幅方向外側領域OAに分け、幅方向内側領域IAを空気袋40の内面に固定する固定領域に設定し、幅方向外側領域OAを空気袋40の内面に固定しないフリー領域に設定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に巻き付けられる巻き付け方向の長さが幅方向に対して長い帯状の腕帯カバーと、
前記腕帯カバーの内部に収容され、空気の供給によって膨張し、空気の排出によって前記腕帯カバーの形状に沿って収縮する空気袋と、を備える血圧計用腕帯において、
前記空気袋は、前記幅方向の両側端縁に形成された袋直線部に沿った内面の位置に、巻き付け方向の長さが幅方向に対して長い帯状の補強シートを一対備え、
前記補強シートは、前記巻き付け方向に延びるシート面領域を、幅方向内側領域と幅方向外側領域に分け、前記幅方向内側領域を前記空気袋の内面に固定する固定領域に設定し、前記幅方向外側領域を前記空気袋の内面に固定しないフリー領域に設定する
ことを特徴とする血圧計用腕帯。
【請求項2】
前記補強シートは、シート素材を、少なくとも前記空気袋に用いる袋素材と同等の柔軟性を有する素材とする
ことを特徴とする請求項1に記載の血圧計用腕帯。
【請求項3】
前記補強シートにおける前記幅方向内側領域の幅に符合する幅寸法を有する両面テープを備え、
前記両面テープの片面が前記幅方向内側領域に貼りつけられ、前記両面テープの他の片面が前記空気袋の前記袋直線部に沿った端縁領域に貼りつけられて、前記補強シートが前記空気袋の内面に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の血圧計用腕帯。
【請求項4】
前記空気袋は、前記腕帯カバーを丸めた状態で外周側に配置される外周側袋体と、前記外周側袋体の内周側に配置され、互いに内部連通する内周側袋体と、を積み重ねて一体化した積層構造とし、
前記補強シートは、前記内周側袋体の内面の位置に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の血圧計用腕帯。
【請求項5】
前記被検体よりも細い内径の略円筒形状であって弾性を有するコアを備え、
前記腕帯カバーは、丸めた状態で外周側の表布から内周側の裏布に向かって順に、前記コアと、前記空気袋と、前記補強シートと、をカバー内部に収容する
ことを特徴とする請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の血圧計用腕帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧計用腕帯に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧計は、血圧を計測する際に、腕、手首、指等の被検体に巻き付けられる血圧計用腕帯(血圧測定用カフともいう)を備えるものがある。血圧計用腕帯は、収容する空気袋の膨らみで被検体を適切に圧迫するために被検体に装着される。
【0003】
血圧測定用カフとしては、外装袋を腕に巻き付ける際の、腕側に位置する空気袋の面とこの空気袋の面と対向する外装袋の面の間に固定的に設けられ、少なくとも一層以上であり、腕に巻き付けた際に皺が発生せずにR状を保持すると共に、折れた後にも皺が残存することなく折れ癖が生じ難い素材である面状ファスナーにより構成されたシートを具備するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4899163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コアを有する血圧計用腕帯は、収納するときにできる限りコンパクトなサイズにする必要があるため、丸められた状態とされる。このとき、空気が抜かれることで平板状に潰れた状態の空気袋は、血圧計用腕帯に有するコアの内周に沿って丸まっている。しかし、空気袋がコアの内周に沿って丸まると、空気袋が開いているときの袋周長に比べて袋周長が短縮されることにより空気袋がだぶつき、空気袋の幅方向両端部に皺が発生する。この皺は、頂部角度が小さくて鋭い山形状と谷形状が周方向に連なる波形状になる。よって、長期間使用した際に、波形状による皺が伸び縮みを繰り返すことで、繰り返し応力を受ける山形状頂部のシート素材が脆弱になり、山形状頂部の位置に孔が開いて空気が漏れる、という課題がある。
【0006】
これに対し、特許文献1に記載された血圧測定用カフの場合、外装袋を腕に巻き付けて血圧を測定する際に腕の皮膚を挟むことのある皺の発生を抑えることを目的とし、空気袋の内側(生体側)の全面に面状ファスナーが設けられている。このため、収納するときに丸めようとしても、全面に設けられた面状ファスナーによって曲げ変形が抑えられることで、丸め径が大きくなる。加えて、外装袋を腕に巻き付けて血圧を測定する際、空気袋と腕との間に面状ファスナーが介在することになる。このため、空気袋の膨張により腕を圧迫したとき、面状ファスナーが血管の振動情報を精度良く取得するのを阻害する。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、血圧測定機能へ与える影響を抑えつつ、丸めによるコンパクトな収納形態としながらも空気袋の幅方向両端部に皺が発生するのを軽減する血圧計用腕帯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の血圧計用腕帯は、被検体に巻き付けられる巻き付け方向の長さが幅方向に対して長い帯状の腕帯カバーと、前記腕帯カバーの内部に収容され、空気の供給によって膨張し、空気の排出によって前記腕帯カバーの形状に沿って収縮する空気袋と、を備える。前記空気袋は、前記幅方向の両側端縁に形成された袋直線部に沿った内面の位置に、巻き付け方向の長さが幅方向に対して長い帯状の補強シートを一対備える。前記補強シートは、前記巻き付け方向に延びるシート面領域を、幅方向内側領域と幅方向外側領域とに分け、前記幅方向内側領域を前記空気袋の内面に固定する固定領域に設定し、前記幅方向外側領域を前記空気袋の内面に固定しないフリー領域に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の血圧計用腕帯によれば、血圧測定機能へ与える影響を抑えつつ、丸めによるコンパクトな収納形態としながらも空気袋の幅方向両端部に皺が発生するのを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の血圧計用腕帯が被検者の腕(被検体)に巻き付けられている様子を示す模式図である。
図2】実施例1の血圧計用腕帯が巻き付け方向に丸まった状態を示す斜視図である。
図3】実施例1の血圧計用腕帯が被検者の腕(被検体)に巻き付けられているときに巻き付け方向と平行な面で切断した状態を示す断面図である。
図4】実施例1の血圧計用腕帯の丸まった部分に配置されているコアの一例を示す斜視図である。
図5】実施例1の血圧計用腕帯においてコアの弾性力に逆らって丸まりを開いた状態を示す斜視図である。
図6】実施例1の血圧計用腕帯に内装されている空気袋(内周側袋体)を一対の補強シートを備える内面側から視た構成を示す全体図である。
図7】実施例1の血圧計用腕帯に内装されている空気袋(内周側袋体)に対して両面テープにより補強シートを固定する様子を示す部分拡大図である。
図8】実施例1の血圧計用腕帯に内装されている外周側袋体と内周側袋体と補強シートを含む腕帯断面構成を示す図6のB-B線による幅方向断面図である。
図9】比較例の血圧計用腕帯において長期間使用した際に空気袋(内周側袋体)に孔が開く様子を示す説明図である。
図10】比較例の血圧計用腕帯において長期間使用により孔が開いた空気袋(内周側袋体)の端縁を示す図9のC部拡大図である。
図11】実施例1の血圧計用腕帯において補強シートに皺の発生を分担させることで空気袋(内周側袋体)に発生する皺を軽減させる様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の血圧計用腕帯を実施するための形態は、図面に示す実施例1に基づいて、以下のように説明される。
【実施例0012】
実施例1の血圧計用腕帯10は、上腕用ハードカフと呼ばれ、被検体の上腕部(以下、「腕A」という。)に装着して巻き付け、血圧(最高血圧、最低血圧)や心拍数を計測する上腕式の電子血圧計(血圧計の一例)に適用される。実施例1の説明において、腕Aに巻き付けられる方向を「巻き付け方向P」とし、巻き付け方向Pに直交する方向(巻き付けられた状態における腕Aに沿う方向)を「幅方向D」とする。
【0013】
まず、血圧計用腕帯10の構成は、図1図8を参照して、以下のように説明される。
血圧計用腕帯10は、腕帯カバー20と、コア30と、外周側袋体41と内周側袋体42との2層構造による空気袋40と、補強シート50と、両面テープ60と、を備えている。
【0014】
血圧計用腕帯10は、図1に示すように、エアチューブ70により血圧計本体80に接続されている。エアチューブ70は、図1に示すように、一端が血圧計本体80に接続され、図2に示すように、他端が血圧計用腕帯10の空気袋40に接続される。血圧計本体80は、本体ケース81と、腕帯収納ケース82と、を備えている。
【0015】
本体ケース81は、ケース前面に、血圧測定値(最高値及び最低値)や脈拍数等を表示する液晶パネル等による表示部81aが配置され、表示部81aの下部に、各種の指令を入力する操作スイッチ部81bが配置される。本体ケース81のケース側面には、エアチューブ70の一端が接続されるエアチューブ接続部81cが配置される。本体ケース81には、図示を省略しているが、空気袋40に空気を供給するエアポンプ、空気袋40の圧力を検出する圧力センサ、ポンプ作動制御や圧力検出値から血圧値等の算出処理を行う制御部、必要データを記憶する記憶部、等の各種機器が内蔵されている。腕帯収納ケース82は、血圧計用腕帯10を使わないとき、血圧計用腕帯10を円筒形状に丸めた収納形態にし、丸めた血圧計用腕帯10を差し込んで収納する。
【0016】
腕帯カバー20は、図2に示すように、腕Aに巻き付けられる巻き付け方向Pの長さが幅方向Dに対して長い帯状であり、表布21と裏布22とを有する。表布21は、腕Aに巻き付けられた状態で外周側に配置され、裏布22は、腕Aに巻き付けられた状態で内周側に配置される。表布21は、屈曲自在な材料であるが所定の曲げ剛性を有する厚い布や樹脂コート布等が用いられる。一方、裏布22は、屈曲自在な材料であり腕Aと接触する際に刺激を与えることなく密着する薄くて柔らかい布等が用いられる。表布21と裏布22は、周縁の全周に亘って周縁生地23によって縫合される。これにより、腕帯カバー20は、表布21と裏布22との間にコア30や空気袋40等を収容する収容空間が形成される。
【0017】
腕帯カバー20は、面的に着脱できるファスナーである雌型面ファスナー24と雄型面ファスナー25を備える。雌型面ファスナー24は、ループ状の起毛が密集して面全体に形成されていて、図2に示すように、腕帯カバー20のうちカバー内面(裏布22側の面)に、コア30及び空気袋40の収容範囲を除いたカバー端部域までの広い範囲で設けられている。雄型面ファスナー25は、フック状の起毛が面全体に形成されていて、図2に示すように、腕帯カバー20のうちコア30及び空気袋40の収容範囲に対応するカバー外周面(表布21側の面)の一部の領域に設けられている。血圧を測定する際、腕帯カバー20が腕Aに巻き付けられ、この状態で雌型面ファスナー24が雄型面ファスナー25に対して面係合により貼り付けられる。このように、雌型面ファスナー24を雄型面ファスナー25に貼り付けることで、腕帯カバー20の巻き付け方向Pの周長が固定され、空気袋40の膨張に対して腕帯カバー20が外方に拡大するのが抑えられる。
【0018】
ここで、裏布22と雌型面ファスナー24とは、腕帯カバー20のみを製造する工程において、巻き付け方向Pの中央部の位置で一部をオーバーラップさせた状態とされる。そして、コア30や空気袋40の挿入工程において、三方向外周を周縁生地23により閉じられた裏布22によるポケット状の開口端部からコア30や空気袋40を挿入する。その後、オーバーラップ部分を縫合することでコア30や空気袋40の位置決めをしている。なお、表布21には、図2に示すように、空気袋40のうち外周側袋体41に固定された給被排気ノズル43を挿入する孔26が形成されている。給被排気ノズル43には、エアチューブ70の他端が接続される。
【0019】
腕帯カバー20は、図3に示すように、表布21と裏布22による収容空間に仕切りシート27が配置されている。仕切りシート27は、収容空間を、外側すなわち表布21側と、内側すなわち裏布22側とに仕切るものであり、表布21および裏布22と平行に配置されて互いに縫合されている。このため、収容空間は、表布21と仕切りシート27との間に位置される外側収容空間と、裏布22と仕切りシート27との間に位置される内側収容空間と、に区画される。そして、収容空間のうち外側収容空間がコア30を収容し、内側収容空間が空気袋40を収容している。よって、腕Aに巻き付けられた状態の腕帯カバー20は、図3に示すように、外周側の表布21から内周側の裏布22に向かって順に、コア30と、仕切りシート27と、空気袋40と、補強シート50と、をカバー内部に収容する。
【0020】
コア30は、図4に示すように、被検体である腕Aよりも細い内径の略円筒形状であって弾性を有する芯材である。コア30の素材としては、ポリプロピレン(PP)等の樹脂材が用いられ、樹脂板を略円筒形状に成形している。ここで、コア30は、巻き付け方向の長さが幅方向に対して長い矩形の板状体であり、この矩形の板状体を、巻き付け方向が周方向となるように丸めた状態の癖をつけたことで、無負荷の状態で略円筒状になっている。なお、コア30の素材としては、樹脂材に限られるものではなく、図5に示すように略円筒状を平板状に開くような荷重を作用させても、その荷重を取り除けば、図4に示すように元の略円筒状に復元する弾性を有する素材であれば良い。例えば、樹脂材による平板以外に、金属板や複合材による平板等を用いることもできる。
【0021】
腕帯カバー20の外側収容空間に収容したコア30によって、図2に示す略円筒状に丸まった左端側の範囲の腕帯カバー20(裏布22)の内径は、一般成人の腕Aの太さより細く形成されている。これにより、コア30によって丸まった血圧計用腕帯10の左端側を開いて腕Aに血圧計用腕帯10を巻き付けて装着した状態で、血圧計用腕帯10は、コア30の弾性力によって腕Aを半径方向内側に圧迫するように荷重(垂直荷重)が作用する。そして、この荷重により、裏布22と腕Aの表面との間に腕Aの周方向には摩擦力が生じる。よって、被検者が自身の一方の腕Aに血圧計用腕帯10の丸まった部分を装着して、他方の手で血圧計用腕帯10の残り部分を巻き付ける際に、既に装着した部分(血圧計用腕帯10の丸まった部分)と腕Aとの間の周方向に沿った摩擦力が生じる。この摩擦力により、一方の手で血圧計用腕帯10を押さえなくても、装着した部分が腕Aに対して空回りするのを防止し、被検者自身での装着を容易にしている。
【0022】
空気袋40は、腕帯カバー20の内部に収容され、空気の供給によって膨張し、空気の排出によって腕帯カバー20の形状に沿って収縮する袋である。実施例1では、図6図8に示すように、外周側袋体41と内周側袋体42による2つの袋体を積み重ねて一体化した積層構造であり、袋体形状を略矩形形状(或いは台形形状)とした空気袋40を採用している。外周側袋体41と内周側袋体42の素材は、厚みが0.3mmのポリ塩化ビニル(PVC)製としている。
【0023】
外周側袋体41と内周側袋体42は、図8に示すように、2つの円筒状シートのそれぞれに同形状の穴44と穴45を形成しておき、両穴44,45を位置合せした状態とし、位置合せ状態で両穴44,45の全外周部分に重ね方向溶着部46を設ける。これにより、外周側袋体41と内周側袋体42は、積み重ねた状態で一体に形成されると共に、両穴44,45によって互いに内部空間が連通される。そして、外周側袋体41と内周側袋体42の巻き付け方向Pの両端部に、図6に示すように、巻き付け方向溶着部47を設けることで、空気漏れが無いように全周が閉じられた袋体を形成している。よって、空気袋40の外周側袋体41は、図3に示すように、腕帯カバー20がコア30により丸められた状態で外周側(表布21側)に配置され、外周側袋体41の内周側(裏布22側)に内周側袋体42が配置される。
【0024】
補強シート50は、巻き付け方向Pの長さが幅方向Dに対して長い帯状のシートであり、図6に示すように、内周側袋体42の内面42aの位置であって、内周側袋体42の幅方向Dの両側端縁に形成された袋直線部42b,42cに沿った位置に一対備えている。補強シート50のシート素材は、空気袋40の袋素材と同じ厚みで同じ種類の樹脂材料であり、厚みが0.3mmのポリ塩化ビニル(PVC)製としている。
【0025】
一対の補強シート50,50のそれぞれは、図8に示すように、巻き付け方向Pに延びるシート面領域を幅方向内側領域IAと幅方向外側領域OAに分けている。実施例1においては、補強シート50の幅寸法を20mmとしていて、これを半分に分けて10mm幅の幅方向内側領域IAと、10mm幅の幅方向外側領域OAとを設定している。そして、幅方向内側領域IAを内周側袋体42の内面42aに固定する固定領域に設定し、幅方向外側領域OAを内周側袋体42の内面42aに固定しないフリー領域に設定している。なお、補強シート50は、袋直線部42b,42cに沿って幅方向Dにおいて離れた位置に一対備えていることで、図8に示すように、一対の補強シート50,50の間のシート間領域SAを、補強シート50が介在しない補強シートフリー領域に設定している。
【0026】
補強シート50の内周側袋体42への固定は、以下のように行われる。まず、補強シート50における幅方向内側領域IAの幅に符合する幅寸法を有する両面テープ60が用意される。次いで、図7に示すように、両面テープ60の片面が補強シート50の幅方向内側領域IAに貼りつけられ、両面テープ60の他の片面が内周側袋体42の内面42aの位置であって、袋直線部42b,42cに沿った端部位置に貼りつけられる。これにより、補強シート50は、内周側袋体42に固定される。このとき、一対の補強シート50,50のそれぞれは、図8に示すように、シート外側端縁50b,50cの幅方向Dの位置を、内周側袋体42の袋直線部42b,42cの幅方向Dの位置に一致させるように設定している。ここで、外周側袋体41の袋直線部41b,41cは、内周側袋体42の袋直線部42b,42cの幅方向Dの位置に一致させている。よって、補強シート50,50のシート外側端縁50b,50cの幅方向Dの位置は、図8に示すように、外周側袋体41の袋直線部41b,41cの幅方向Dの位置、及び、内周側袋体42の袋直線部42b,42cの幅方向Dの位置に略一致する設定とされる。
【0027】
次に、比較例の血圧計用腕帯において丸められた状態の空気袋に皺が発生する皺発生作用は、図9及び図10を参照して、以下のように説明される。ここで、実施例1の血圧計用腕帯10において一対の補強シート50,50が無い構成の腕帯を比較例の血圧計用腕帯とする。
【0028】
コアを有する血圧計用腕帯は、収納するときにできる限りコンパクトなサイズにする必要があるため、コアの外周に巻き付けられ、円筒形状に丸められた状態とされる。このとき、内外面から押し力が作用する空気袋からは空気が抜かれることで、平板状に潰れた状態の空気袋は、血圧計用腕帯に有するコアの内周に沿って丸まっている。
【0029】
しかし、空気袋がコアの内周に沿って丸まると、空気袋が開いているときの袋周長に比べて袋周長が短縮されることにより空気袋がだぶつき、図9に示すように、空気袋の幅方向両端部に皺が発生する。この皺は、頂部角度が小さくて鋭い山形状と谷形状が周方向に連なる波形状になる。一方、血圧測定時には、収納時に比べて血圧計用腕帯の丸みが延ばされることで頂部角度が大きくなり、緩やかな山形状と谷形状が周方向に連なる波形状、或いは、波が消えた円周形状になる。このように、血圧計用腕帯は、コンパクトなサイズでの収納にすると、収納時と血圧測定時とで波形状の変化幅が大きくなる。
【0030】
よって、長期間使用した際に、波形状による皺が伸び縮みを繰り返すことで、繰り返し応力を受ける山形状頂部のシート素材が疲労によって脆弱になり、図10に示すように、山形状頂部の位置に孔Hが開いて空気が漏れる。特に、空気袋が、外周側袋体と内周側袋体とを積層させた構造である場合には、図10に示すように、内周側袋体に孔Hが開いてしまう。これは、外側配置になる外周側袋体のだぶつき量に比べ、内側配置になる内周側袋体のだぶつき量が大きくなることによる。
【0031】
これに対し、先行技術として特許文献1(特許第4899163号公報)に記載された血圧測定用カフが提案されている。先行技術の血圧測定用カフの場合、外装袋を腕に巻き付けて血圧を測定する際に腕の皮膚を挟むことのある皺の発生を抑えることを目的とし、空気袋の内側(生体側)の全面に面状ファスナーが設けられている。よって、面状ファスナーにより空気袋の全体が補強され、空気袋に折れ曲がりが生じにくく、折れても折れ癖が生じにくくなる。
【0032】
しかし、先行技術の血圧測定用カフは、収納するときに丸めようとしても、全面に設けられた面状ファスナーによって曲げ変形が抑えられることで、丸め径が大きくなりコンパクトなサイズによる収納形態にすることができない。加えて、外装袋(腕帯カバー)を腕に巻き付けて血圧を測定する際、空気袋と腕との間に面状ファスナーが介在することになる。このため、空気袋の膨張により腕を圧迫したとき、面状ファスナーが血管の振動情報を精度良く取得するのを阻害し、皺の発生を抑える面状ファスナーが血圧測定機能に対して影響を与えることになる。
【0033】
本発明者は、比較例や先行技術に対して、実際の空気袋より内側に「ダミーの空気袋」を配置すると、皺の発生を「ダミーの空気袋」に分担させることができる点に着目し、「ダミーの空気袋」として補強シート50を一対備える下記の解決手段を採用した。
【0034】
血圧計用腕帯10において、空気袋40の内周側袋体42は、内面42aの位置であって、幅方向Dの両側端縁に形成された袋直線部42b,42cに沿った位置に、巻き付け方向Pの長さが幅方向Dに対して長い帯状の補強シート50を一対備える。補強シート50は、巻き付け方向Pに延びるシート面領域を、幅方向内側領域IAと幅方向外側領域OAとに分ける。幅方向内側領域IAを空気袋40の内面に固定する固定領域に設定し、幅方向外側領域OAを空気袋40の内面に固定しないフリー領域に設定することを特徴とする。
【0035】
上記血圧計用腕帯10におけるコンパクトなサイズでの丸め収納作用は、図6を参照して、以下のように説明される。空気袋40の内周側袋体42は、図6に示すように、内面42aの位置であって、幅方向Dの両側端縁に形成された袋直線部42b,42cに沿った位置に、巻き付け方向Pの長さが幅方向Dに対して長い帯状の補強シート50を一対備える。このように、内周側袋体42の内面42aには、一部が固定された一対の補強シート50,50を有するのみで、一対の補強シート50,50が血圧計用腕帯10の曲げ変形を制約することはない。このため、血圧計用腕帯10を収納するのに備えて丸めるとき、コア30の形状に沿って空気袋40と共に一対の補強シート50,50が丸められる。よって、空気袋の全体を補強する先行技術に比べ、血圧計用腕帯10の丸め径が小さくなり、コンパクトなサイズによる収納形態にすることができる。
【0036】
次に、実施例1の血圧計用腕帯10において血圧測定機能への影響抑制作用は、図8を参照して、以下のように説明される。補強シート50は、袋直線部42b,42cに沿って幅方向Dにおいて離れた位置に一対備えていることで、図8に示すように、一対の補強シート50,50の間のシート間領域SAが、補強シート50が介在しない補強シートフリー領域に設定される。このように、シート間領域SAにおいて、内周側袋体42の内面42aと腕Aとの間に補強シート50が介在することが無い。このため、腕帯カバー20を腕Aに巻き付けて血圧を測定する際、外周側袋体41と内周側袋体42の膨張により腕Aを圧迫したとき、補強シート50が血管の振動情報を精度良く取得するのを阻害しない。よって、空気袋40の皺の発生を抑える補強シート50が、本来の血圧測定機能に対して影響を与えるのが抑制される。
【0037】
次に、実施例1の血圧計用腕帯10において空気袋40に発生する皺を軽減する皺発生軽減作用は、図11を参照して、以下のように説明される。一対の補強シート50,50は、巻き付け方向Pに延びるシート面領域を、幅方向内側領域IAと幅方向外側領域OAとに分けている。そして、幅方向内側領域IAを内周側袋体42の内面42aに固定する固定領域に設定し、幅方向外側領域OAを内周側袋体42の内面42aに固定しないフリー領域に設定している。ここで、フリー領域とは、補強シート50への作用力にしたがって容易に弾性変形することが可能な領域をいう。
【0038】
まず、空気袋40を丸めた際に発生する皺は、一番内側の部分、つまり、内径が小さくなって袋周長が最も短縮される部分に発生する。これに対し、血圧計用腕帯10は、補強シート50を内周側袋体42の内面42aに設けている。つまり、空気袋40を丸めた際に一番内側の位置に補強シート50を配置することで、図11に示すように、主な皺の発生を補強シート50が分担することになる。この分担作用により、補強シート50の幅方向外側領域OA(フリー領域)に、頂部角度が小さくて鋭い山形状と谷形状が周方向に連なる振幅が大きな波形状の皺が発生する。すなわち、一番内側に配置された補強シート50の幅方向外側領域OAが、「ダミーの空気袋」の役割を果たして振幅が大きな波形状の皺が発生する。
【0039】
そして、一番内側に配置された補強シート50の幅方向外側領域OAが主な皺の発生を分担する作用により、内周側袋体42に発生する皺の波形が緩やかになる。さらに、補強シート50の幅方向外側領域OAに発生した振幅が大きな波形状の皺が、内周側袋体42に発生する波形状の皺を内側から外側に向かって押す作用により、内周側袋体42に発生する緩やかな波形の皺の頂部角度をより鈍い角度へと変化させる。よって、丸めによるコンパクトな収納形態としながらも、内周側袋体42の幅方向両端部に、孔開きの原因となる振幅の大きな波形状の皺が発生するのが軽減されることになる。
【0040】
このように、血圧計用腕帯10によれば、血圧測定機能へ与える影響を抑えつつ、丸めによるコンパクトな収納形態としながらも内周側袋体42の幅方向両端部に皺が発生するのを軽減できる。そして、血圧計用腕帯10は、長期間使用した際に、内周側袋体42に発生する波形状による皺が伸び縮みを繰り返しても、伸び量と縮み量の変化幅が小さく抑えられることで、山形状頂部の位置に孔が開きにくくなる。この結果、血圧計用腕帯10を長期間使用しても空気の漏れが発生しにくくなり、血圧計用腕帯10の製品寿命を延ばす延命効果に繋がる。
【0041】
以上説明したように、実施例1の血圧計用腕帯10にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
【0042】
(1)被検体(腕A)に巻き付けられる巻き付け方向Pの長さが幅方向Dに対して長い帯状の腕帯カバー20と、腕帯カバー20の内部に収容され、空気の供給によって膨張し、空気の排出によって腕帯カバー20の形状に沿って収縮する空気袋40と、を備える。この血圧計用腕帯10において、空気袋40は、幅方向Dの両側端縁に形成された袋直線部に沿った内面の位置に、巻き付け方向Pの長さが幅方向Dに対して長い帯状の補強シート50を一対備える。補強シート50は、巻き付け方向Pに延びるシート面領域を、幅方向内側領域IAと幅方向外側領域OAに分け、幅方向内側領域IAを空気袋40の内面に固定する固定領域に設定し、幅方向外側領域OAを空気袋40の内面に固定しないフリー領域に設定する。このため、血圧測定機能へ与える影響を抑えつつ、丸めによるコンパクトな収納形態としながらも空気袋40の幅方向両端部に皺が発生するのを軽減する血圧計用腕帯10を提供することができる。
【0043】
(2)補強シート50は、シート素材を、少なくとも空気袋40に用いる袋素材と同等の柔軟性を有する素材とする。このため、丸めた収納状態で補強シート50が主な皺の発生を分担するとき、柔軟な変形性による山形状と谷形状が周方向に連なる波形状の皺が補強シート50に形成され、空気袋40の幅方向両端部に皺が発生するのを有効に軽減することができる。なお、丸めた収納状態では、補強シート50の幅方向外側領域OAが一番内周に配置される「ダミーの空気袋」の役割を果たす。
【0044】
(3)補強シート50における幅方向内側領域IAの幅に符合する幅寸法を有する両面テープ60を備える。両面テープ60の片面が幅方向内側領域IAに貼りつけられ、両面テープ60の他の片面が空気袋40の袋直線部に沿った端縁領域に貼りつけられて、補強シート50は、補強シート50が空気袋40の内面に固定されている。このため、両面テープ60を用意するだけで、幅方向内側領域IAが固定され、幅方向外側領域OAが固定されない補強シート50を、空気袋40の内面に対して容易に設定することができる。
【0045】
(4)空気袋40は、腕帯カバー20を丸めた状態で外周側に配置される外周側袋体41と、外周側袋体41の内周側に配置され、互いに内部連通する内周側袋体42と、を積み重ねて一体化した積層構造とする。補強シート50は、内周側袋体42の内面42aの位置に備える。このため、外周側袋体41と内周側袋体42を積み重ねて一体化した積層構造の空気袋40を備える血圧計用腕帯10において、皺が発生し易い内周側袋体42の幅方向両端部に孔Hが開く原因になる振幅の大きな波形状による皺が発生するのを軽減できる。なお、積層構造の空気袋40の場合、外周側袋体41の内側に内周側袋体42が配置されるため、例えば、単層構造による空気袋に比べ、内周側袋体42に孔Hが開く原因になる振幅の大きな波形状による皺が発生し易くなる。
【0046】
(5)被検体(腕A)よりも細い内径の略円筒形状であって弾性を有するコア30を備え、腕帯カバー20は、丸めた状態で外周側の表布21から内周側の裏布22に向かって順に、コア30と、空気袋40と、補強シート50と、をカバー内部に収容する。このため、コア30により規定されたコンパクトな丸め径による収納形態としながらも、空気袋40の幅方向両端部に皺が発生するのを軽減することができる。
【0047】
以上のように、本発明の血圧計用腕帯は、実施例1に基づいて説明された。しかし、本発明の血圧計用腕帯の具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0048】
実施例1では、補強シート50として、巻き付け方向Pに延びるシート面領域を、幅方向内側領域IAと幅方向外側領域OAに2等分により分け、幅方向内側領域IAを固定領域に設定し、幅方向外側領域OAをフリー領域に設定する例を示した。しかし、補強シートとして、巻き付け方向に延びるシート面領域を、幅方向内側領域と幅方向外側領域に2等分により分けることに限定されない。例えば、補強シートへの作用力にしたがって容易に弾性変形することが可能なフリー領域が確保され、フリー領域が主な皺の発生を分担する作用を発揮できれば、適宜設定した比率により分けることが許容される。
【0049】
実施例1では、補強シート50のシート素材として、空気袋40に用いる袋素材(厚み0.3mmのポリ塩化ビニル)と同じ厚みで同じ樹脂材料を用いる例を示した。しかし、補強シートのシート素材としては、少なくとも空気袋に用いる袋素材と同等の柔軟性や変形性を有する素材であれば、厚み0.3mmのポリ塩化ビニルに限られず、様々な厚みと様々な樹脂材料を選択することができる。
【0050】
実施例1では、補強シート50を内周側袋体42に固定するとき、両面テープ60を用意し、両面テープ60の片面を幅方向内側領域IAに貼りつけ、両面テープ60の他の片面を内周側袋体42の内面42aに貼りつけて固定する例を示した。しかし、補強シートを空気袋(内周側袋体)に固定する手法は、両面テープを用いる実施例1に限られることはない。例えば、接着剤を用いて補強シートを空気袋に固定しても良い。また、部分溶着により補強シートを空気袋に固定しても良い。さらに、空気袋に対して補強シートを一体に形成し、空気袋との接続部分を固定部としても良い。
【0051】
実施例1では、空気袋40として、外周側袋体41と内周側袋体42を積み重ねて一体化した2層構造の空気袋の例を示した。しかし、空気袋としては、2層構造の空気袋に限られない。例えば、単一の空気袋体による空気袋としても良い。また、3層以上の蛇腹構造による空気袋としても良い。
【0052】
実施例1では、血圧計用腕帯10として、コア30を有するハードカフに適用する例を示した。しかし、血圧計用腕帯としては、コアを有するハードカフへの適用に限られず、コアを有さないソフトカフに対しても適用することができる。ソフトカフによる血圧計用腕帯の場合も円筒状に丸めたコンパクトなサイズによる収納形態にされる。
【0053】
実施例1では、本発明の血圧計用腕帯10を、被検体の上腕部に装着して巻き付け、血圧や心拍数を計測する上腕式の電子血圧計に適用する例を示した。しかし、本発明の血圧計用腕帯は、被検体の手首に装着して巻き付け、血圧や心拍数を計測する手首式の電子血圧計に適用することもできる。
【符号の説明】
【0054】
10 血圧計用腕帯
20 腕帯カバー
21 表布
22 裏布
30 コア
40 空気袋
41 外周側袋体
42 内周側袋体
50 補強シート
60 両面テープ
A 腕(被検体)
P 巻き付け方向
D 幅方向
IA 幅方向内側領域
OA 幅方向外側領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11