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特開2024-61330ファイバセンシングシステム、中継装置、ファイバセンシング方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061330
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ファイバセンシングシステム、中継装置、ファイバセンシング方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20240425BHJP
   H04B 10/071 20130101ALI20240425BHJP
   H04B 10/29 20130101ALI20240425BHJP
【FI】
G01H9/00 E
H04B10/071
H04B10/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169207
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】江村 真史
(72)【発明者】
【氏名】澤井 佑太
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 稔
【テーマコード(参考)】
2G064
5K102
【Fターム(参考)】
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BC12
2G064BD02
2G064DD02
5K102AB06
5K102AD01
5K102AL11
5K102LA06
5K102LA11
5K102LA21
5K102LA31
5K102LA52
5K102MH02
5K102MH15
5K102MH22
5K102PA01
5K102PH11
5K102PH31
5K102RC03
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】海中で高い周波数帯域の振動を表すDASデータを取得すること。
【解決手段】本開示に係るファイバセンシングシステムは、海底ケーブル60と、海底ケーブル60を介して相互に直列に接続された複数の中継装置70と、を含む。中継装置70は、海底ケーブル60内のセンシング用光ファイバ61を介して後段の中継装置70に接続されたDASインテロゲータ71と、センシング用光ファイバ61を介して前段の中継装置70に接続された終端器72と、を含む。DASインテロゲータ71は、センシング用光ファイバ61にプローブ光を出力する。終端器72は、前段の中継装置70内のDASインテロゲータ71からセンシング用光ファイバ61に出力されたプローブ光を終端させる。DASインテロゲータ71は、センシング用光ファイバ61から、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光からDASデータを取得する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底ケーブルと、
前記海底ケーブルを介して相互に直列に接続された複数の中継装置と、を含み、
前記海底ケーブルは、センシング用光ファイバを含み、
前記複数の中継装置の各々は、
前記センシング用光ファイバを介して後段の中継装置に接続されたDAS(Distributed acoustic sensing)インテロゲータと、
前記センシング用光ファイバを介して前段の中継装置に接続された終端器と、を含み、
前記DASインテロゲータは、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバにプローブ光を出力し、
前記終端器は、前記前段の中継装置内の前記DASインテロゲータから、前記前段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに出力されたプローブ光を、該センシング用光ファイバの端部で反射しないように、終端させ、
前記DASインテロゲータは、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバから、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光から、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すDASデータを取得する、
ファイバセンシングシステム。
【請求項2】
前記海底ケーブルは、通信用光ファイバをさらに含み、
前記複数の中継装置の各々は、前記通信用光ファイバに接続され、前記通信用光ファイバを介して所定の宛先に前記DASデータを送信するネットワークスイッチをさらに含む、
請求項1に記載のファイバセンシングシステム。
【請求項3】
前記複数の中継装置の各々は、前記DASデータを取得するよう前記DASインテロゲータを制御し、前記DASインテロゲータにより取得された前記DASデータを一時的に保存する制御部をさらに含み、
前記ネットワークスイッチは、一時的に保存された前記DASデータを前記所定の宛先に送信する、
請求項2に記載のファイバセンシングシステム。
【請求項4】
前記DASデータは、水中無人機に搭載された水中通信機から搬送波として送信された音響信号に起因して、前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すデータである、
請求項1に記載のファイバセンシングシステム。
【請求項5】
海底ケーブルを介して相互に直列に接続された複数の中継装置のうちの1つの中継装置であって、
前記海底ケーブルに含まれるセンシング用光ファイバを介して後段の中継装置に接続されたDAS(Distributed acoustic sensing)インテロゲータと、
前記センシング用光ファイバを介して前段の中継装置に接続された終端器と、を含み、
前記DASインテロゲータは、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバにプローブ光を出力し、
前記終端器は、前記前段の中継装置内の前記DASインテロゲータから、前記前段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに出力されたプローブ光を、該センシング用光ファイバの端部で反射しないように、終端させ、
前記DASインテロゲータは、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバから、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光から、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すDASデータを取得する、
中継装置。
【請求項6】
前記海底ケーブルに含まれる通信用光ファイバに接続され、前記通信用光ファイバを介して所定の宛先に前記DASデータを送信するネットワークスイッチをさらに含む、
請求項5に記載の中継装置。
【請求項7】
前記DASデータを取得するよう前記DASインテロゲータを制御し、前記DASインテロゲータにより取得された前記DASデータを一時的に保存する制御部をさらに含み、
前記ネットワークスイッチは、一時的に保存された前記DASデータを前記所定の宛先に送信する、
請求項6に記載の中継装置。
【請求項8】
前記DASデータは、水中無人機に搭載された水中通信機から搬送波として送信された音響信号に起因して、前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すデータである、
請求項5に記載の中継装置。
【請求項9】
海底ケーブルを介して相互に直列に接続された複数の中継装置のうちの1つの中継装置により実行されるファイバセンシング方法であって、
前記中継装置は、
前記海底ケーブルに含まれるセンシング用光ファイバを介して後段の中継装置に接続されたDAS(Distributed acoustic sensing)インテロゲータと、
前記センシング用光ファイバを介して前段の中継装置に接続された終端器と、を含み、
前記ファイバセンシング方法は、
前記DASインテロゲータにより、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバにプローブ光を出力することと、
前記終端器により、前記前段の中継装置内の前記DASインテロゲータから、前記前段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに出力されたプローブ光を、該センシング用光ファイバの端部で反射しないように、終端させることと、
前記DASインテロゲータにより、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバから、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光から、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すDASデータを取得することと、を含む、
ファイバセンシング方法。
【請求項10】
海底ケーブルを介して相互に直列に接続された複数の中継装置のうちの1つの中継装置にファイバセンシング方法を実行させるためのプログラムであって、
前記中継装置は、
前記海底ケーブルに含まれるセンシング用光ファイバを介して後段の中継装置に接続されたDAS(Distributed acoustic sensing)インテロゲータと、
前記センシング用光ファイバを介して前段の中継装置に接続された終端器と、を含み、
前記ファイバセンシング方法は、
前記DASインテロゲータにより、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバにプローブ光を出力することと、
前記終端器により、前記前段の中継装置内の前記DASインテロゲータから、前記前段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに出力されたプローブ光を、該センシング用光ファイバの端部で反射しないように、終端させることと、
前記DASインテロゲータにより、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバから、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光から、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すDASデータを取得することと、を含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファイバセンシングシステム、中継装置、ファイバセンシング方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバの環境を表す環境情報を取得するDAS(Distributed acoustic sensing)インテロゲータを利用したファイバセンシングシステムが研究及び開発されている。具体的には、DASインテロゲータは、光ファイバ中の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光を利用して、光ファイバに加わった振動(音響を含む。以下、同じ)を表すDASデータを環境情報として取得する。
【0003】
また、最近は、光ファイバの感度が向上しているため、DASインテロゲータを利用したファイバセンシングシステムを、陸上向けの環境監視システムとして実用化する研究が進んでいる。
【0004】
また、DASインテロゲータを利用したファイバセンシングシステムを、海中へ適用する研究も進んでいる(例えば、特許文献1)。この場合、DASインテロゲータは、海底ケーブルに含まれる光ファイバ中の後方散乱光を利用して、DASデータを取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/153142号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、DASインテロゲータを利用したファイバセンシングシステムを海中へ適用し、水中生物の鳴音や海上交通の騒音等をモニタリングする場合、より高い周波数帯域に存在する特徴素を利用することで、高い精度でモニタリングを実施することができる。
【0007】
しかし、ファイバセンシングの原理により、DASインテロゲータがDASデータを取得する海底ケーブルの区間を長くすると、高い周波数帯域の振動を表すDASデータを取得できないという制限があった。また、海中では、DASインテロゲータを設置する場所にも制限があった。そのため、関連技術に係るファイバセンシングシステムでは、海中で取得可能なDASデータに周波数の制限があるという問題があった。
【0008】
そこで本開示の目的は、上述した課題を鑑み、海中で高い周波数帯域の振動を表すDASデータを取得することが可能なファイバセンシングシステム、中継装置、ファイバセンシング方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様によるファイバセンシングシステムは、
海底ケーブルと、
前記海底ケーブルを介して相互に直列に接続された複数の中継装置と、を含み、
前記海底ケーブルは、センシング用光ファイバを含み、
前記複数の中継装置の各々は、
前記センシング用光ファイバを介して後段の中継装置に接続されたDAS(Distributed acoustic sensing)インテロゲータと、
前記センシング用光ファイバを介して前段の中継装置に接続された終端器と、を含み、
前記DASインテロゲータは、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバにプローブ光を出力し、
前記終端器は、前記前段の中継装置内の前記DASインテロゲータから、前記前段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに出力されたプローブ光を、該センシング用光ファイバの端部で反射しないように、終端させ、
前記DASインテロゲータは、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバから、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光から、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すDASデータを取得する。
【0010】
一態様による中継装置は、
海底ケーブルを介して相互に直列に接続された複数の中継装置のうちの1つの中継装置であって、
前記海底ケーブルに含まれるセンシング用光ファイバを介して後段の中継装置に接続されたDAS(Distributed acoustic sensing)インテロゲータと、
前記センシング用光ファイバを介して前段の中継装置に接続された終端器と、を含み、
前記DASインテロゲータは、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバにプローブ光を出力し、
前記終端器は、前記前段の中継装置内の前記DASインテロゲータから、前記前段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに出力されたプローブ光を、該センシング用光ファイバの端部で反射しないように、終端させ、
前記DASインテロゲータは、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバから、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光から、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すDASデータを取得する。
【0011】
一態様によるファイバセンシング方法は、
海底ケーブルを介して相互に直列に接続された複数の中継装置のうちの1つの中継装置により実行されるファイバセンシング方法であって、
前記中継装置は、
前記海底ケーブルに含まれるセンシング用光ファイバを介して後段の中継装置に接続されたDAS(Distributed acoustic sensing)インテロゲータと、
前記センシング用光ファイバを介して前段の中継装置に接続された終端器と、を含み、
前記ファイバセンシング方法は、
前記DASインテロゲータにより、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバにプローブ光を出力することと、
前記終端器により、前記前段の中継装置内の前記DASインテロゲータから、前記前段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに出力されたプローブ光を、該センシング用光ファイバの端部で反射しないように、終端させることと、
前記DASインテロゲータにより、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバから、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光から、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すDASデータを取得することと、を含む。
【0012】
一態様によるプログラムは、
海底ケーブルを介して相互に直列に接続された複数の中継装置のうちの1つの中継装置にファイバセンシング方法を実行させるためのプログラムであって、
前記中継装置は、
前記海底ケーブルに含まれるセンシング用光ファイバを介して後段の中継装置に接続されたDAS(Distributed acoustic sensing)インテロゲータと、
前記センシング用光ファイバを介して前段の中継装置に接続された終端器と、を含み、
前記ファイバセンシング方法は、
前記DASインテロゲータにより、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバにプローブ光を出力することと、
前記終端器により、前記前段の中継装置内の前記DASインテロゲータから、前記前段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに出力されたプローブ光を、該センシング用光ファイバの端部で反射しないように、終端させることと、
前記DASインテロゲータにより、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバから、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光から、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すDASデータを取得することと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
上述した態様によれば、海中で高い周波数帯域の振動を表すDASデータを取得することが可能なファイバセンシングシステム、中継装置、ファイバセンシング方法、及びプログラムを提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1に係るファイバセンシングシステムの構成例を示す図である。
図2】実施の形態1に係る海底ケーブル及び光増幅中継装置の構成例を示す図である。
図3】実施の形態1に係るファイバセンシングシステムにおける、ファイバセンシングに係る通信に利用される構成要素の構成例を示す図である。
図4】実施の形態1に係る地上局内の情報処理装置で実行される信号処理及び情報処理の例を示す図である。
図5】実施の形態1に係る地上局内の情報処理装置に表示される、DASデータの取得区間を設定するための設定画面の例を示す図である。
図6】実施の形態1に係る光増幅中継装置の概略的な動作の流れの例を示すフローチャートである。
図7】実施の形態2に係るファイバセンシングシステムの構成例を示す図である。
図8】実施の形態3に係るファイバセンシングシステムの構成例を示す図である。
図9】実施の形態1~3に係る光増幅中継装置及び中継装置を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0016】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態1に係るファイバセンシングシステムの構成例を示す図である。
本実施の形態1に係るファイバセンシングシステムは、海底ケーブル10と、複数の光増幅中継装置20-1~20-N(Nは2以上の自然数)と、地上局30-1,30-2と、を含む。なお、以下では、どの光増幅中継装置20-1~20-Nであるかを特定しない場合は、単に「光増幅中継装置20」と適宜称する。同様に、地上局30-1,30-2は、単に「地上局30」と適宜称する。また、以下の各図面において、光増幅中継装置20-1~20-Nは、それぞれ、光増幅中継装置#1~#Nと適宜表記する。
【0017】
海底ケーブル10及び光増幅中継装置20-1~20-Nは、海中に、より具体的には海底に設置される。
光増幅中継装置20-1~20-Nは、海底ケーブル10を介して相互に直列に接続される。また、光増幅中継装置20-1~20-Nは、海底ケーブル10の一定距離毎に設置される。
海底ケーブル10の一端には地上局30-1が接続され、海底ケーブル10の他端には地上局30-2が接続される。
【0018】
海底ケーブル10は、後述するように、通信用光ファイバ、センシング用光ファイバ、及び電力線等を含む、多芯のケーブルである。
光増幅中継装置20-1~20-Nは、後述するように、関連技術に係る光増幅中継装置にも搭載されていた光増幅器の他に、ファイバセンシング用の構成要素やファイバセンシングに係る通信用の構成要素が搭載されている。
【0019】
図2は、本実施の形態1に係る海底ケーブル10及び光増幅中継装置20-1~20-Nの構成例を示す図である。
【0020】
まず、海底ケーブル10の構成例について説明する。
海底ケーブル10は、上述したよう、多芯のケーブルである。海底ケーブル10は、地上局30-1,30-2間の通信に利用される通信用光ファイバ11と、電源供給用の電力線12と、地上局30-1,30-2と光増幅中継装置20-1~20-N間の、ファイバセンシングに係る通信に利用される通信用光ファイバ13と、ファイバセンシングに利用されるセンシング用光ファイバ14と、を含む、
【0021】
センシング用光ファイバ14は、通信用光ファイバ11,13と同様の光通信用の光ファイバを利用することができる。その他にも、センシング用光ファイバ14は、不純物を添加して感度を高めたファイバセンシング専用のファイバを利用することもできる。
【0022】
続いて、光増幅中継装置20-1~20-Nの構成例について説明する。
以下では、光増幅中継装置20-2の構成について説明するが、他の光増幅中継装置20-1,20-3~20-Nも、光増幅中継装置20-2と同様の構成になっている。
【0023】
光増幅中継装置20-2は、光増幅器21と、電源装置22と、ネットワークスイッチ23と、DAS制御・データ処理装置24と、終端器25と、DASインテロゲータ26と、を含む。
【0024】
光増幅器21は、海底ケーブル10内の通信用光ファイバ11に接続される。光増幅器21は、通信用光ファイバ11を介して伝送される信号を増幅する。
【0025】
電源装置22は、海底ケーブル10内の電力線12に接続される。電源装置22は、電力線12を介して供給される電源を、光増幅中継装置20-2内の各構成要素に供給する。
【0026】
ネットワークスイッチ23は、海底ケーブル10内の通信用光ファイバ13に接続される。ネットワークスイッチ23は、DASインテロゲータ26により取得されたDASデータ(後述する)を、通信用光ファイバ13を介して、地上局30-1又は30-2に送信する。また、ネットワークスイッチ23は、地上局30-1又は30-2から、通信用光ファイバ13を介して、DAS制御・データ処理装置24を制御するための制御情報を受信し、受信された制御情報をDAS制御・データ処理装置24に出力する。なお、ファイバセンシングシステム中の光増幅中継装置20の設置数が多い場合は、ネットワークスイッチ23は、光波長多重通信を行うことにより、DASデータ等の通信量を増加させることができる。
【0027】
DAS制御・データ処理装置24は、ネットワークスイッチ23及びDASインテロゲータ26に接続される。DAS制御・データ処理装置24は、地上局30-1又は30-2からの制御情報に基づいて、DASインテロゲータ26を制御する。具体的には、DAS制御・データ処理装置24は、光増幅中継装置20-2,20-3間の海底ケーブル10がDASデータの取得区間であることが、制御情報により通知されている場合には、DASデータを取得するようDASインテロゲータ26を制御する。このとき、DAS制御・データ処理装置24は、DASインテロゲータ26の動作状態を制御すると共に、DASインテロゲータ26の動作に必要な基準クロックの生成等を行う。また、DAS制御・データ処理装置24は、DASインテロゲータ26により取得されたDASデータを、一時的に保存した後、ネットワークスイッチ23に出力する。なお、DAS制御・データ処理装置24は、必要に応じて、DASデータを、圧縮及び暗号化した上で、ネットワークスイッチ23に出力することができる。
【0028】
終端器25は、海底ケーブル10内のセンシング用光ファイバ14に接続される。具体的には、終端器25は、センシング用光ファイバ14を介して前段の光増幅中継装置20-1内のDASインテロゲータ26に接続される。ここで、光増幅中継装置20-1,20-2間の海底ケーブル10がDASデータの取得区間である場合、前段の光増幅中継装置20-1内のDASインテロゲータ26からセンシング用光ファイバ14にプローブ光が出力される。この場合、終端器25は、センシング用光ファイバ14に出力されたプローブ光を、センシング用光ファイバ14のファイバ端で反射しないように、終端させる。
【0029】
DASインテロゲータ26は、海底ケーブル10内のセンシング用光ファイバ14に接続される。具体的には、DASインテロゲータ26は、センシング用光ファイバ14を介して後段の光増幅中継装置20-3内の終端器25に接続される。ここで、光増幅中継装置20-2,20-3間の海底ケーブル10がDASデータの取得区間である場合、DASインテロゲータ26は、センシング用光ファイバ14にプローブ光を出力し、プローブ光の後方散乱光をセンシング用光ファイバ14から受信し、受信された後方散乱光から、センシング用光ファイバ14に加わる振動を表すDASデータを取得する。また、DASインテロゲータ26は、後方散乱光から取得されたDASデータをDAS制御・データ処理装置24へ出力する。
【0030】
なお、光増幅中継装置20-1においては、終端器25は、海底ケーブル10内のセンシング用光ファイバ14を介して地上局30-1と接続される。
また、光増幅中継装置20-Nにおいては、DASインテロゲータ26は、海底ケーブル10内のセンシング用光ファイバ14を介して地上局30-2と接続される。
【0031】
図3は、本実施の形態1に係るファイバセンシングシステムにおける、ファイバセンシングに係る通信に利用される構成要素の構成例を示す図である。
光増幅中継装置20-1~20-Nは、ファイバセンシングに係る通信に利用される構成要素として、ネットワークスイッチ23及びDAS制御・データ処理装置24を含む。なお、図3においては、図2に示されていた光増幅中継装置20-1~20-Nの構成要素のうち、その他の構成要素は省略されている。
【0032】
以下では、地上局30-1の構成について説明するが、地上局30-2も、地上局30-1と同様の構成になっている。
地上局30-1は、情報処理装置31と、NTP(Network Time Protocol)サーバ32と、DAS制御・データ処理装置33と、ネットワークスイッチ34と、を含む。
【0033】
情報処理装置31は、地上局30-1内のDAS制御・データ処理装置33及び光増幅中継装置20-1~20-N内のDAS制御・データ処理装置24を制御するための制御情報を生成する。この制御情報は、ネットワークスイッチ34を介して、地上局30-1内のDAS制御・データ処理装置33及び光増幅中継装置20-1~20-N内のDAS制御・データ処理装置24に送信される。また、情報処理装置31は、光増幅中継装置20-1~20-N内のDAS制御・データ処理装置24に一時的に保存されたDASデータを、ネットワークスイッチ34を介して、受信し、受信されたDASデータに対する信号処理及び情報処理を行う。
【0034】
NTPサーバ32は、地上局30-1内のDAS制御・データ処理装置33及び光増幅中継装置20-1~20-N内のDAS制御・データ処理装置24の時刻整合を行うための時刻サーバである。
【0035】
ネットワークスイッチ34は、海底ケーブル10内の通信用光ファイバ13に接続される。具体的には、ネットワークスイッチ34は、通信用光ファイバ13を介して、光増幅中継装置20-1~20-N内のネットワークスイッチ23の各々に接続される。
【0036】
図4は、本実施の形態1に係る地上局30-1又は30-2内の情報処理装置31で実行される信号処理及び情報処理の例を示す図である。
図4において、DASデータ40-1~40-(N-1)は、光増幅中継装置20-1~20-(N-1)内のDAS制御・データ処理装置24の各々に一時的に保存されたDASデータである。これらDASデータ40-1~40-(N-1)は、ネットワークスイッチ34を介して、情報処理装置31により取得される。
【0037】
情報処理装置31は、DASデータ40-1に対して、音響信号生成処理41、音響信号処理42、及び検出処理43を行う。
音響信号生成処理41は、DASデータ40-1から音響信号を生成する処理である。
音響信号処理42及び検出処理43は、音響信号生成処理41により生成された音響信号に対して周波数分析及びパターンパッチングを行うことで、対象とする目標を検出する処理である。
また、情報処理装置31は、DASデータ40-2~40-(N-1)に対しても同様に、音響信号生成処理41、音響信号処理42、及び検出処理43を行う。
【0038】
その後、情報処理装置31は、DASデータ40-1~40-(N-1)の各々に対する検出処理43により得られた検出処理結果を統合する統合情報処理44を行う。そして、情報処理装置31は、ファイバセンシングシステム全体で検出された信号の特徴や検出された目標の位置に関する情報を出力する。
【0039】
図5は、本実施の形態1に係る地上局30-1又は30-2内の情報処理装置31に表示される、DASデータの取得区間を設定するための設定画面の例を示す図である。
本実施の形態1では、DASインテロゲータ26と終端器25とで区切られた海底ケーブル10毎に、DASデータの取得の有無を選択することができる。図5の例では、光増幅中継装置20-1,20-2間の海底ケーブル10及び光増幅中継装置20-2,20-3間の海底ケーブル10が、DASデータの取得区間に設定されている。
【0040】
図6は、本実施の形態1に係る光増幅中継装置20の概略的な動作の流れの例を示すフローチャートである。なお、図6は、地上局30-1が送信済みの制御情報に基づいて動作している光増幅中継装置20-1~20-Nのうち、光増幅中継装置20-2の動作例を示している。また、図6では、地上局30-1が送信済みの制御情報は、光増幅中継装置20-1,20-2間の海底ケーブル10及び光増幅中継装置20-2,20-3間の海底ケーブル10が、DASデータの取得区間に設定されていること、及び、DASデータを地上局30-1に送信すべきこと、を通知するものであるとする。
【0041】
ここでは、光増幅中継装置20-2,20-3間の海底ケーブル10がDASデータの取得区間になっている。
そこで、DAS制御・データ処理装置24は、光増幅中継装置20-2,20-3間の海底ケーブル10内のセンシング用光ファイバ14を利用して、DASデータを取得するようDASインテロゲータ26を制御する。
【0042】
具体的には、DASインテロゲータ26は、DAS制御・データ処理装置24による制御の下で、センシング用光ファイバ14にプローブ光を出力し(ステップS11)、プローブ光の後方散乱光をセンシング用光ファイバ14から受信し(ステップS12)、受信された後方散乱光から、センシング用光ファイバ14に加わる振動を表すDASデータを取得する(ステップS13)。
【0043】
DAS制御・データ処理装置24は、DASインテロゲータ26により取得されたDASデータを一時的に保存した後、ネットワークスイッチ23から通信用光ファイバ13を介して、地上局30-1に送信する(ステップS14)。
【0044】
その一方、光増幅中継装置20-1,20-2間の海底ケーブル10もDASデータの取得区間になっている。そのため、前段の光増幅中継装置20-1内のDASインテロゲータ26からは、光増幅中継装置20-1,20-2間の海底ケーブル10内のセンシング用光ファイバ14にプローブ光が出力される。
【0045】
そのため、終端器25は、前段の光増幅中継装置20-1内のDASインテロゲータ26からセンシング用光ファイバ14に出力されたプローブ光を、センシング用光ファイバ14のファイバ端で反射しないように、終端させる(ステップS15)。
【0046】
上述したように、本実施の形態1によれば、複数の光増幅中継装置20の各々は、終端器25及びDASインテロゲータ26を含む。DASインテロゲータ26は、センシング用光ファイバ14を介して後段の光増幅中継装置20内の終端器25に接続され、終端器25は、センシング用光ファイバ14を介して前段の光増幅中継装置20内のDASインテロゲータ26に接続される。DASインテロゲータ26は、センシング用光ファイバ14にプローブ光を出力する。プローブ光は後段の光増幅中継装置20内の終端器25で終端され、プローブ光の後方散乱光がDASインテロゲータ26で受信される。DASインテロゲータ26は、受信された後方散乱光から、センシング用光ファイバ14に加わる振動を示すDASデータを取得する。
【0047】
すなわち、本実施の形態1によれば、DASインテロゲータ26と終端器25とでセンシング用光ファイバ14を区切った上で、DASインテロゲータ26は、ファイバセンシングを行う。これにより、ファイバセンシングシステム全体の海底ケーブル10のケーブル長が長大な場合でも、光増幅中継装置20の設置間隔に対応した高い周波数帯域の振動を表すDASデータを取得することができる。
【0048】
また、本実施の形態1によれば、複数の光増幅中継装置20の各々は、通信用光ファイバ13を介して、地上局30にDASデータを送信するネットワークスイッチ23を含む。これにより、光増幅中継装置20内のDASインテロゲータ26により取得されたDASデータを地上局30に送信することができる。また、複数の光増幅中継装置20内のDASインテロゲータ26により取得されたDASデータを地上局30に集約させることができる。
【0049】
また、本実施の形態1によれば、複数の光増幅中継装置20の各々は、DASインテロゲータ26を制御し、DASインテロゲータ26により取得されたDASデータを一時的に保存するDAS制御・データ処理装置24を含む。これにより、地上局30からDASインテロゲータ26に対する同期を取る必要がなくなるため、冗長性の高いファイバセンシングシステムを構築することができる。
【0050】
また、本実施の形態1によれば、DAS制御・データ処理装置24は、必要に応じて、DASデータを圧縮し、ネットワークスイッチ23は、通信用光ファイバ13を介して、圧縮されたDASデータを送信する。これにより、ファイバセンシングシステム中のDASインテロゲータ26の数が増えた場合でも、通信用光ファイバ13の芯数を増やすことなく、DASデータを送信することができる。
【0051】
また、本実施の形態1によれば、センシング用光ファイバ14は、通信用光ファイバ11と分離して設けられている。そのため、センシング用光ファイバ14として、不純物を添加して感度を高めた、ファイバセンシング専用のファイバを利用することができる。
【0052】
また、本実施の形態1によれば、センシング用光ファイバ14は、通信用光ファイバ11,13と同様の光通信用の光ファイバを利用することもできる。この場合、既存の光通信用の海底ケーブルを活用して、ファイバセンシングシステムを構築することができる。
【0053】
また、本実施の形態1によれば、地上局30は、複数の光増幅中継装置20内のDASインテロゲータ26により取得されたDASデータに対する信号処理及び情報処理を行う情報処理装置31を含む。このように、負荷の高い処理を地上局30に集約させている。これにより、海中に設置され、メンテナンス性が悪い光増幅中継装置20の規模を小さくすることができる。
【0054】
また、本実施の形態1によれば、情報処理装置31は、DASインテロゲータ26と終端器25とで区切られた海底ケーブル10毎に、DASデータの取得の有無を選択させることができる。これにより、例えば、海底ケーブル10のケーブル全長が長大で、DASデータのデータ量が通信用光ファイバ13による通信を圧迫する場合は、任意の区間のDASデータの取得を中止することができる。その結果、ネットワーク輻輳によるデータ抜けを防ぐことができる。
【0055】
<実施の形態2>
本実施の形態2は、ファイバセンシングシステムを水中音響通信に利用する例である。
図7は、本実施の形態2に係るファイバセンシングシステムの構成例を示す図である。なお、本実施の形態2に係るファイバセンシングシステムの構成自体は、上述した実施の形態1に係るファイバセンシングシステムと同様である。
【0056】
水中無人機51は、水中通信器52を搭載しており、水中無人機51内のデータを、水中通信器52を利用して送信する。
水中通信器52は、音響信号を搬送波として水中音響通信を行う装置である。水中音響通信は、海中の温度勾配の状況により通信距離が大きく変化するという特徴がある。
【0057】
光増幅中継装置20内のDASインテロゲータ26は、水中無人機51から搬送波として送信された音響信号に起因して、センシング用光ファイバ14に加わる振動を表すDASデータを取得する。地上局30内の情報処理装置31は、DASデータに対する信号処理及び情報処理を行うことで、水中無人機51から送信された音響信号を検出する。
【0058】
上述したように、本実施の形態2によれば、海底ケーブル10の近傍で、水中無人機51から音響信号が送信された場合には、その音響信号を検出することができる。そのため、水中音響通信には、海中の温度勾配の状況により通信距離が大きく変化するという特徴があるものの、水中無人機51が海底ケーブル10の近傍に位置していれば、水中無人機51との間で水中音響通信を行うことができる。
その他の効果は、上述した実施の形態1と同様である。
【0059】
<実施の形態3>
本実施の形態3は、上述した実施の形態1,2を上位概念化した実施の形態に相当する。
図8は、本実施の形態3に係るファイバセンシングシステムの構成例を示す図である。
本実施の形態3に係るファイバセンシングシステムは、海底ケーブル60と、複数の中継装置70-1~70-N(Nは2以上の自然数)と、を含む。なお、以下では、どの中継装置70-1~70-Nであるかを特定しない場合は、単に「中継装置70」と適宜称する。
【0060】
海底ケーブル60及び中継装置70-1~70-Nは、海中に、より具体的には海底に設置される。
中継装置70-1~70-Nは、海底ケーブル60を介して相互に直列に接続される。また、中継装置70-1~70-Nは、海底ケーブル10の一定距離毎に設置される。
【0061】
海底ケーブル60は、センシング用光ファイバ61を含む。
以下では、中継装置70-2の構成について説明するが、他の中継装置70-1,70-3~70-Nも、中継装置70-2と同様の構成になっている。
【0062】
中継装置70-2は、DASインテロゲータ71と、終端器72と、を含む。
DASインテロゲータ71は、海底ケーブル60内のセンシング用光ファイバ61に接続される。具体的には、DASインテロゲータ71は、センシング用光ファイバ61を介して後段の中継装置70-3(より詳細には、中継装置70-3内の終端器72)に接続される。
【0063】
終端器72は、海底ケーブル60内のセンシング用光ファイバ61に接続される。具体的には、終端器72は、センシング用光ファイバ61を介して前段の中継装置70-1(より詳細には、中継装置70-1内のDASインテロゲータ71)に接続される。
【0064】
ここで、DASインテロゲータ71は、後段の中継装置70-3に接続されたセンシング用光ファイバ61にプローブ光を出力する。
終端器72は、前段の中継装置70-1内のDASインテロゲータ71から、前段の中継装置70-1に接続されたセンシング用光ファイバ61に出力されたプローブ光を、そのセンシング用光ファイバ61の端部で反射しないように、終端させる。
【0065】
DASインテロゲータ71は、後段の中継装置70-3に接続されたセンシング用光ファイバ61から、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光から、後段の中継装置70-3に接続されたセンシング用光ファイバ61に加わる振動を表すDASデータを取得する、
【0066】
すなわち、本実施の形態3によれば、DASインテロゲータ71と終端器72とでセンシング用光ファイバ61を区切った上で、DASインテロゲータ71は、ファイバセンシングを行う。これにより、ファイバセンシングシステム全体の海底ケーブル60のケーブル長が長大な場合でも、中継装置70-1~70-Nの設置間隔に対応した高い周波数帯域の振動を表すDASデータを取得することができる。
【0067】
なお、海底ケーブル60は、通信用光ファイバをさらに含んでも良い。また、中継装置70は、通信用光ファイバに接続され、通信用光ファイバを介して所定の宛先にDASデータを送信するネットワークスイッチをさらに含んでも良い。所定の宛先は、例えば、上述した実施の形態1,2に係る地上局30としても良い。
【0068】
また、中継装置70は、DASデータを取得するようDASインテロゲータ71を制御し、DASインテロゲータ71により取得されたDASデータを一時的に保存する制御部をさらに含んでも良い。この場合、ネットワークスイッチは、一時的に保存されたDASデータを所定の宛先に送信しても良い。
【0069】
また、センシング用光ファイバ61は、不純物を添加して感度を高めた光ファイバであっても良い。
また、DASデータは、水中無人機に搭載された水中通信機から搬送波として送信された音響信号に起因して、センシング用光ファイバ61に加わる振動を表すデータであっても良い。
【0070】
<実施の形態に係る位置評価装置のハードウェア構成>
図9は、上述した実施の形態1~3に係る光増幅中継装置20及び中継装置70を実現するコンピュータ90のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0071】
コンピュータ90は、プロセッサ91、メモリ92、ストレージ93、入出力インタフェース(入出力I/F)94、及び通信インタフェース(通信I/F)95などを備えている。プロセッサ91、メモリ92、ストレージ93、入出力インタフェース94、及び通信インタフェース95は、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路で接続されている。
【0072】
プロセッサ91は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理装置である。メモリ92は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリである。ストレージ93は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はメモリカードなどの記憶装置である。また、ストレージ93は、RAMやROMなどのメモリであっても良い。
【0073】
ストレージ93には、プログラムが記憶される。このプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、上述した光増幅中継装置20及び中継装置70における1又はそれ以上の機能をコンピュータ90に行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。上述した光増幅中継装置20及び中継装置70における構成要素は、プロセッサ91がストレージ93に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより実現されても良い。また、上述した光増幅中継装置20及び中継装置70における記憶機能は、メモリ92又はストレージ93により実現されても良い。
【0074】
また、上述したプログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されても良い。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、SSD又はその他のメモリ技術、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されても良い。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0075】
入出力インタフェース94は、表示装置941、入力装置942、音出力装置943などと接続される。表示装置941は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、モニタのような、プロセッサ91により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置942は、オペレータの操作入力を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、及びタッチセンサなどである。表示装置941及び入力装置942は一体化され、タッチパネルとして実現されていても良い。音出力装置943は、スピーカのような、プロセッサ91により処理された音響データに対応する音を音響出力する装置である。
【0076】
通信インタフェース95は、外部の装置との間でデータを送受信する。例えば、通信インタフェース95は、有線通信路又は無線通信路を介して外部装置と通信する。
【0077】
なお、以上の説明では、上述した実施の形態1~3に係る光増幅中継装置20及び中継装置70を、図9に示されるコンピュータ90によって実現する例について説明した。ただし、これには限定されず、上述した実施の形態1,2に係る地上局30も、図9に示されるコンピュータ90によって実現されても良い。
【0078】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。例えば、上述した実施の形態は、一部又は全部を相互に組み合わせて用いても良い。
【0079】
また、上述した実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
海底ケーブルと、
前記海底ケーブルを介して相互に直列に接続された複数の中継装置と、を含み、
前記海底ケーブルは、センシング用光ファイバを含み、
前記複数の中継装置の各々は、
前記センシング用光ファイバを介して後段の中継装置に接続されたDAS(Distributed acoustic sensing)インテロゲータと、
前記センシング用光ファイバを介して前段の中継装置に接続された終端器と、を含み、
前記DASインテロゲータは、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバにプローブ光を出力し、
前記終端器は、前記前段の中継装置内の前記DASインテロゲータから、前記前段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに出力されたプローブ光を、該センシング用光ファイバの端部で反射しないように、終端させ、
前記DASインテロゲータは、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバから、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光から、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すDASデータを取得する、
ファイバセンシングシステム。
(付記2)
前記海底ケーブルは、通信用光ファイバをさらに含み、
前記複数の中継装置の各々は、前記通信用光ファイバに接続され、前記通信用光ファイバを介して所定の宛先に前記DASデータを送信するネットワークスイッチをさらに含む、
付記1に記載のファイバセンシングシステム。
(付記3)
前記複数の中継装置の各々は、前記DASデータを取得するよう前記DASインテロゲータを制御し、前記DASインテロゲータにより取得された前記DASデータを一時的に保存する制御部をさらに含み、
前記ネットワークスイッチは、一時的に保存された前記DASデータを前記所定の宛先に送信する、
付記2に記載のファイバセンシングシステム。
(付記4)
前記センシング用光ファイバは、不純物を添加して感度を高めた光ファイバである、
付記1に記載のファイバセンシングシステム。
(付記5)
前記DASデータは、水中無人機に搭載された水中通信機から搬送波として送信された音響信号に起因して、前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すデータである、
付記1に記載のファイバセンシングシステム。
(付記6)
海底ケーブルを介して相互に直列に接続された複数の中継装置のうちの1つの中継装置であって、
前記海底ケーブルに含まれるセンシング用光ファイバを介して後段の中継装置に接続されたDAS(Distributed acoustic sensing)インテロゲータと、
前記センシング用光ファイバを介して前段の中継装置に接続された終端器と、を含み、
前記DASインテロゲータは、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバにプローブ光を出力し、
前記終端器は、前記前段の中継装置内の前記DASインテロゲータから、前記前段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに出力されたプローブ光を、該センシング用光ファイバの端部で反射しないように、終端させ、
前記DASインテロゲータは、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバから、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光から、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すDASデータを取得する、
中継装置。
(付記7)
前記海底ケーブルに含まれる通信用光ファイバに接続され、前記通信用光ファイバを介して所定の宛先に前記DASデータを送信するネットワークスイッチをさらに含む、
付記6に記載の中継装置。
(付記8)
前記DASデータを取得するよう前記DASインテロゲータを制御し、前記DASインテロゲータにより取得された前記DASデータを一時的に保存する制御部をさらに含み、
前記ネットワークスイッチは、一時的に保存された前記DASデータを前記所定の宛先に送信する、
付記7に記載の中継装置。
(付記9)
前記DASデータは、水中無人機に搭載された水中通信機から搬送波として送信された音響信号に起因して、前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すデータである、
付記6に記載の中継装置。
(付記10)
海底ケーブルを介して相互に直列に接続された複数の中継装置のうちの1つの中継装置により実行されるファイバセンシング方法であって、
前記中継装置は、
前記海底ケーブルに含まれるセンシング用光ファイバを介して後段の中継装置に接続されたDAS(Distributed acoustic sensing)インテロゲータと、
前記センシング用光ファイバを介して前段の中継装置に接続された終端器と、を含み、
前記ファイバセンシング方法は、
前記DASインテロゲータにより、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバにプローブ光を出力することと、
前記終端器により、前記前段の中継装置内の前記DASインテロゲータから、前記前段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに出力されたプローブ光を、該センシング用光ファイバの端部で反射しないように、終端させることと、
前記DASインテロゲータにより、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバから、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光から、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すDASデータを取得することと、を含む、
ファイバセンシング方法。
(付記11)
海底ケーブルを介して相互に直列に接続された複数の中継装置のうちの1つの中継装置にファイバセンシング方法を実行させるためのプログラムであって、
前記中継装置は、
前記海底ケーブルに含まれるセンシング用光ファイバを介して後段の中継装置に接続されたDAS(Distributed acoustic sensing)インテロゲータと、
前記センシング用光ファイバを介して前段の中継装置に接続された終端器と、を含み、
前記ファイバセンシング方法は、
前記DASインテロゲータにより、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバにプローブ光を出力することと、
前記終端器により、前記前段の中継装置内の前記DASインテロゲータから、前記前段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに出力されたプローブ光を、該センシング用光ファイバの端部で反射しないように、終端させることと、
前記DASインテロゲータにより、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバから、プローブ光の後方散乱光を受信し、受信された後方散乱光から、前記後段の中継装置に接続された前記センシング用光ファイバに加わる振動を表すDASデータを取得することと、を含む、
プログラム。
【符号の説明】
【0080】
10 海底ケーブル
11 通信用光ファイバ
12 電力線
13 通信用光ファイバ
14 センシング用光ファイバ
20-1~20-N 光増幅中継装置
21 光増幅器
22 電源装置
23 ネットワークスイッチ
24 DAS制御・データ処理装置
25 終端器
26 DASインテロゲータ
30-1,30-2 地上局
31 情報処理装置
32 NTPサーバ
33 DAS制御・データ処理装置
34 ネットワークスイッチ
40-1~40-(N-1) DASデータ
41 音響信号生成処理
42 音響信号処理
43 検出処理
44 統合情報処理
51 水中無人機
52 水中通信器
60 海底ケーブル
61 センシング用光ファイバ
70-1~70-N 中継装置
71 DASインテロゲータ
72 終端器
90 コンピュータ
91 プロセッサ
92 メモリ
93 ストレージ
94 入出力インタフェース
941 表示装置
942 入力装置
943 音出力装置
95 通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9