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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061336
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ルーフモールの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/04 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
B60R13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169221
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅美
(72)【発明者】
【氏名】榎本 聡
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023AA01
3D023AB01
3D023AC08
3D023AD02
3D023AD26
(57)【要約】
【課題】ルーフモールの断面形状に関係なく、ルーフモールをルーフ溝に追従させて取付可能なルーフモールの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のルーフモール20は、準備工程、ルーフモール配置工程、ルーフモール湾曲工程及び押圧部移動工程を経て製造される。準備工程ではルーフモール20を準備し、ルーフモール配置工程では、押圧部51と支持部61との間にルーフモール20を配置する。ルーフモール湾曲工程では、押圧部51でルーフモール20を幅方向に押圧し、支持部61でルーフモール20を押さえることにより、ルーフモール20の押圧部分を設定曲率よりも大きな曲率となるように湾曲させる。押圧部移動工程では、押圧部51をルーフモール20から離間させる。そして、ルーフモール20をルーフ溝12に装着するときに、ルーフモール20をルーフ溝12の湾曲に対応した設定曲率にする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のルーフに設けられ前記車体の幅方向に湾曲したルーフ溝に装着されるルーフモールを製造する方法であって、
前記ルーフモールは、長尺状をなし、前記ルーフ溝を覆う頭部と、前記頭部の裏面側から突出する脚部と、前記脚部の先端部の少なくとも一方の側面から前記ルーフモールの幅方向外側に突出するリップ部とを備えており、
前記ルーフモールを準備する準備工程と、
前記ルーフモールを幅方向に押圧可能な押圧部と、前記ルーフモールの長手方向において前記押圧部の両側に配置された支持部とを有する製造装置における前記押圧部と前記支持部との間に、前記ルーフモールを配置するルーフモール配置工程と、
前記押圧部によって前記ルーフモールを幅方向に押圧するとともに、前記支持部によって前記ルーフモールを押さえることにより、前記ルーフモールの押圧部分を、設定曲率よりも大きな曲率となるように湾曲させるルーフモール湾曲工程と、
前記押圧部を前記ルーフモールから離間する方向に移動させる押圧部移動工程と
を含み、
前記ルーフモールを前記ルーフ溝に装着するときに、前記ルーフモールが前記ルーフ溝の湾曲に対応した前記設定曲率になるようにする
ことを特徴とするルーフモールの製造方法。
【請求項2】
前記ルーフモールは、押出成形された押出成形部と、前記押出成形部の長手方向における端部に射出成形された射出成形部とを有し、
前記ルーフモール湾曲工程では、前記押出成形部に前記押圧部を当接させて曲げることにより、少なくとも押出成形部を湾曲させる
ことを特徴とする請求項1に記載のルーフモールの製造方法。
【請求項3】
前記ルーフモール湾曲工程及び前記押圧部移動工程を経て前記押出成形部が前記設定曲率となるように湾曲したときに、前記押出成形部の側縁と前記射出成形部の側縁とが連続した湾曲形状となるように、前記射出成形部は予め幅方向に湾曲した形状に射出成形されることを特徴とする請求項2に記載のルーフモールの製造方法。
【請求項4】
前記ルーフモール湾曲工程において、
前記ルーフモールにおいて前記押圧部が当接する側とは反対側の側面に、前記ルーフモールよりも軟質な材料からなる長尺帯を当接させ、
前記支持部は、前記長尺帯を介して前記ルーフモールを押さえる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のルーフモールの製造方法。
【請求項5】
前記支持部は、ローラーを含んで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のルーフモールの製造方法。
【請求項6】
前記ルーフモールは、前記頭部の幅方向における両端部の少なくとも一方から裏面側に突出する突出部を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のルーフモールの製造方法。
【請求項7】
車体のルーフに設けられ前記車体の幅方向に湾曲したルーフ溝に対応した設定曲率にルーフモールを湾曲させるルーフモールの製造装置であって、
前記ルーフモールを載置するルーフモール載置部と、
前記ルーフモール載置部の側方に配置され、前記ルーフモールを幅方向に押圧可能な押圧部と、
前記ルーフモール載置部を介して前記押圧部の反対側に配置され、前記ルーフモールの長手方向において前記押圧部の両側に位置する支持部と
を備え、
前記押圧部及び前記支持部が、相対的に接近または離間する方向に移動可能に構成されており、
前記押圧部は、設定曲率よりも大きな曲率を有する押圧面を有している
ことを特徴とするルーフモールの製造装置。
【請求項8】
前記ルーフモールにおいて前記押圧部が当接する側とは反対側の側面に対向する位置に、前記ルーフモールよりも軟質な材料からなる長尺帯を有し、
前記支持部は、前記長尺帯を介して前記ルーフモールを押さえる
ことを特徴とする請求項7に記載のルーフモールの製造装置。
【請求項9】
前記支持部は、ローラーを含んで構成されていることを特徴とする請求項7または8に記載のルーフモールの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のルーフに設けられたルーフ溝に装着されるルーフモールの製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車体のルーフにおいては、ルーフパネルとルーフサイドパネルとの接合部に設けられたルーフ溝にルーフモールを取り付けることにより、接合部が隠蔽されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1に記載の従来技術では、ルーフモールに形成した当接用リブをルーフ溝の内壁面に当接させることにより、ルーフモールをルーフ溝に追従させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-154555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ルーフ溝は、車体の幅方向に若干湾曲して形成されることがある。また、特許文献1に記載のルーフモールは、ルーフ溝を覆う頭部や、頭部の中央部から裏面側に突出する脚部等を備えており、仮に頭部の両端部から裏面側に突出する突出部を設けた場合には、剛性を有する断面形状となる。従って、ルーフモールを押出成形によって直線状に形成すると、ルーフモールを車体の幅方向に湾曲したルーフ溝に追従させて取り付けることができないという問題がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ルーフモールの断面形状に関係なく、ルーフモールをルーフ溝に追従させて取付可能なルーフモールの製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、車体のルーフに設けられ前記車体の幅方向に湾曲したルーフ溝に装着されるルーフモールを製造する方法であって、前記ルーフモールは、長尺状をなし、前記ルーフ溝を覆う頭部と、前記頭部の裏面側から突出する脚部と、前記脚部の先端部の少なくとも一方の側面から前記ルーフモールの幅方向外側に突出するリップ部とを備えており、前記ルーフモールを準備する準備工程と、前記ルーフモールを幅方向に押圧可能な押圧部と、前記ルーフモールの長手方向において前記押圧部の両側に配置された支持部とを有する製造装置における前記押圧部と前記支持部との間に、前記ルーフモールを配置するルーフモール配置工程と、前記押圧部によって前記ルーフモールを幅方向に押圧するとともに、前記支持部によって前記ルーフモールを押さえることにより、前記ルーフモールの押圧部分を、設定曲率よりも大きな曲率となるように湾曲させるルーフモール湾曲工程と、前記押圧部を前記ルーフモールから離間する方向に移動させる押圧部移動工程とを含み、前記ルーフモールを前記ルーフ溝に装着するときに、前記ルーフモールが前記ルーフ溝の湾曲に対応した前記設定曲率になるようにすることを特徴とするルーフモールの製造方法をその要旨とする。
【0007】
従って、手段1に記載の発明によると、ルーフモールが剛性を有する断面形状をなしていたとしても、押圧部分の曲率が設定曲率となるようにルーフモールを湾曲させることができる。これにより、ルーフモールの断面形状に関係なく、ルーフモールをルーフ溝に追従させやすい形状にすることができる。
【0008】
ここで、ルーフモールを形成するための材料としては、例えば、熱可塑性エラストマーやゴムなどの材料を挙げることができる。熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC、TPS)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(PAE)、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)等が好適に使用される。また、ゴムとしては、天然ゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等が好適に使用される。
【0009】
手段2に記載の発明は、手段1において、前記ルーフモールは、押出成形された押出成形部と、前記押出成形部の長手方向における端部に射出成形された射出成形部とを有し、前記ルーフモール湾曲工程では、前記押出成形部に前記押圧部を当接させて曲げることにより、少なくとも押出成形部を湾曲させることをその要旨とする。
【0010】
従って、手段2に記載の発明によると、ルーフモールの押圧部分が直線状に押出成形された押出成形部であっても、湾曲した形状にすることができる。このため、射出成形部と押出成形部との位置の自由度が高くなる。
【0011】
手段3に記載の発明は、手段2において、前記ルーフモール湾曲工程及び前記押圧部移動工程を経て前記押出成形部が前記設定曲率となるように湾曲したときに、前記押出成形部の側縁と前記射出成形部の側縁とが連続した湾曲形状となるように、前記射出成形部は予め幅方向に湾曲した形状に射出成形されることをその要旨とする。
【0012】
従って、手段3に記載の発明によると、押出成形部の側縁と射出成形部の側縁とが連続した湾曲形状となるため、見栄えが良くなる。
【0013】
手段4に記載の発明は、手段1乃至3のいずれか1つにおいて、前記ルーフモール湾曲工程において、前記ルーフモールにおいて前記押圧部が当接する側とは反対側の側面に、前記ルーフモールよりも軟質な材料からなる長尺帯を当接させ、前記支持部は、前記長尺帯を介して前記ルーフモールを押さえることをその要旨とする。
【0014】
従って、手段4に記載の発明によると、支持部がルーフモールに当たってルーフモールが傷付くことを防止できる。
【0015】
手段5に記載の発明は、手段1乃至3のいずれか1つにおいて、前記支持部は、ローラーを含んで構成されていることをその要旨とする。
【0016】
従って、手段5に記載の発明によると、ルーフモールを押圧部で押圧した際にローラーが回転することにより、ルーフモールが押圧部で押圧した方向に変形しやすくなる。しかも、ルーフモールを押圧する力を小さくすることもできる。
【0017】
手段6に記載の発明は、手段1乃至3のいずれか1つにおいて、前記ルーフモールは、前記頭部の幅方向における両端部の少なくとも一方から裏面側に突出する突出部を備えていることをその要旨とする。
【0018】
従って、手段6に記載の発明によると、突出部が形成されることにより、ルーフモールの剛性が高くなり、ルーフモールを幅方向に曲げにくい状態になったとしても、本発明の製造方法により、ルーフモールを確実に曲げることができる。
【0019】
手段7に記載の発明は、車体のルーフに設けられ前記車体の幅方向に湾曲したルーフ溝に対応した設定曲率にルーフモールを湾曲させるルーフモールの製造装置であって、前記ルーフモールを載置するルーフモール載置部と、前記ルーフモール載置部の側方に配置され、前記ルーフモールを幅方向に押圧可能な押圧部と、前記ルーフモール載置部を介して前記押圧部の反対側に配置され、前記ルーフモールの長手方向において前記押圧部の両側に位置する支持部とを備え、前記押圧部及び前記支持部が、相対的に接近または離間する方向に移動可能に構成されており、前記押圧部は、設定曲率よりも大きな曲率を有する押圧面を有していることを特徴とするルーフモールの製造装置をその要旨とする。
【0020】
従って、手段7に記載の発明によると、ルーフモールが剛性を有する断面形状をなしていたとしても、押圧部分の曲率が設定曲率となるようにルーフモールを湾曲させることができる。これにより、ルーフモールの断面形状に関係なく、ルーフモールをルーフ溝に追従させやすい形状にすることができる。
【0021】
手段8に記載の発明は、手段7において、前記ルーフモールにおいて前記押圧部が当接する側とは反対側の側面に対向する位置に、前記ルーフモールよりも軟質な材料からなる長尺帯を有し、前記支持部は、前記長尺帯を介して前記ルーフモールを押さえることをその要旨とする。
【0022】
従って、手段8に記載の発明によると、支持部がルーフモールに当たってルーフモールが傷付くことを防止できる。
【0023】
手段9に記載の発明は、手段7または8において、前記支持部は、ローラーを含んで構成されていることをその要旨とする。
【0024】
従って、手段9に記載の発明によると、ルーフモールを押圧部で押圧した際にローラーが回転することにより、ルーフモールが押圧部で押圧した方向に変形しやすくなる。しかも、ルーフモールを押圧する力を小さくすることもできる。
【発明の効果】
【0025】
以上詳述したように、請求項1~9に記載の発明によると、ルーフモールの断面形状に関係なく、ルーフモールをルーフ溝に追従させて取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態において、ルーフモールが装着された車体を部分的に示す斜視図。
図2】ルーフモールの端末部分を示す平面図。
図3図2のIII-III線断面図。
図4図2のIV-IV線断面図。
図5】(a)はルーフモールの製造装置を示す平面図、(b)はルーフモールの製造装置を示す側面図。
図6】(a)は、ルーフモール配置工程を説明するための平面図、(b)は、ルーフモール配置工程を説明するための製造装置の概略側面図。
図7】(a)は、ルーフモール湾曲工程を説明するための平面図、(b)は、ルーフモール配置工程を説明するための製造装置の概略側面図。
図8】(a)は湾曲前のルーフモールを示す平面図、(b)は湾曲後のルーフモールを示す平面図。
図9図1のA部の問題点を示す拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0028】
図1に示されるように、車体10のルーフ11の左右両側部には、車体10の前後方向に延びる一対のルーフ溝12が設けられている。各ルーフ溝12は、ルーフパネル13とルーフサイドパネル14との接合部に形成され、車体10の幅方向に湾曲した凹溝である。そして、各ルーフ溝12には、長尺状をなすルーフモール20と、同じく長尺状をなすAピラーガーニッシュ15の一部とが装着されている。これにより、ルーフパネル13とルーフサイドパネル14との接合部が隠蔽される。
【0029】
図2に示されるように、ルーフモール20は、押出成形された押出成形部21と、押出成形部21の長手方向における端部(図2では下端部)に射出成形された射出成形部31とを有している。なお、本実施形態のルーフモール20は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)やオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等を用いて形成されている。但し、押出成形部21及び射出成形部31は、両者の接合を容易にするために、同じ材料を用いて形成されることがよい。
【0030】
図3に示されるように、射出成形部31は、押出成形部21の端末に形成され、射出成形部31の裏面32全体には、インサート品33が接合されている。インサート品33には、ルーフ溝12の底部16側に突出する凸部34が設けられ、凸部34の側面34aには、底部16に取り付けられたクリップ17が係止する被係止部(図示略)が設けられている。なお、射出成形部31は、例えば、JIS K6253で定義されているデュロメータ硬さ(タイプA)が95度の弾性ポリマー材料で形成されている。また、インサート品33は、例えば、ポリアセタール樹脂(POM)を用いて形成されている。
【0031】
図4に示されるように、本実施形態の押出成形部21は、ルーフ溝12を覆う頭部22と、頭部22の裏面22a側から突出する脚部23と、脚部23の先端部の両側面からルーフモール20の幅方向外側にそれぞれ突出するリップ部24とを備えている。さらに、ルーフモール20は、頭部22の幅方向における両端部から裏面22a側にそれぞれ突出する突出部25を備えている。また、脚部23には、ルーフモール20の線膨張を抑えるために、帯板状に形成された金属製の芯材26がルーフモール20の長手方向に沿って埋設されている。
【0032】
なお、頭部22、脚部23及び突出部25は、例えば、JIS K6253で定義されているデュロメータ硬さ(タイプA)が90度の弾性ポリマー材料で形成されている。また、リップ部24は、例えば、JIS K6253で定義されているデュロメータ硬さ(タイプA)が75度の弾性ポリマー材料で形成されている。なお、ルーフモール20の製品寿命を向上させるために、頭部22の表面には、耐候性及び耐摩耗性に優れるポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー等の弾性体からなるカバー層が設けられていてもよい。
【0033】
次に、ルーフモール20の製造装置40について説明する。
【0034】
図5に示されるように、製造装置40は、ベース41、押圧板51(押圧部)及び一対の支持部61を備えている。ベース41は、ルーフモール20を載置するルーフモール載置板42(ルーフモール載置部)を有している。ルーフモール載置板42は、ベース41上に設けられた一対の載置板支持ビーム43,44によって支持されている。両載置板支持ビーム43,44は、互いに平行に配置された棒状部材である。そして、一方の支持ビーム44上には、ルーフモール載置板42上に搬送されてきたルーフモール20の端面(射出成形部31側の端面)に当接することにより、ルーフモール20を位置決めするモール位置決め部材45が設けられている。
【0035】
また、ベース41上には、アクチュエータ46(本実施形態では、エアシリンダ)が設置されている。アクチュエータ46は、レール部47を備えており、レール部47には、同レール部47の延出方向に移動するスライダ部48が設けられている。アクチュエータ46は、レール部47を、同レール部47の両端部に設けられた一対(図5(b)では片側だけ図示)の支持柱49を介してベース41に支持させた構造を有している。なお、アクチュエータ46は、制御装置(図示略)のCPUによって制御される。
【0036】
そして、図5に示されるように、アクチュエータ46のスライダ部48上には、押圧板51が取り付けられている。押圧板51は、ルーフモール載置板42の上方かつ側方(図5(b)では右方)に配置され、ルーフモール20の脚部23を幅方向に押圧可能となっている(図6(b),図7(b)参照)。なお、押圧板51は、平面視略矩形状をなし、ルーフモール載置板42側の面(辺)が、ルーフモール20を押圧する押圧面である凸状湾曲面51aとなっている。また、凸状湾曲面51aは、ルーフモール20の押圧部分の曲率として予め設定された設定曲率(本実施形態では、曲率半径R=1000mm)よりも大きな曲率(本実施形態では、曲率半径R=150mm)を有している。
【0037】
そして、一対の支持部61は、ルーフモール載置板42のルーフモール載置部42aを介して押圧板51の反対側に配置されている。また、両支持部61は、ルーフモール載置部42aに載置されたルーフモール20の長手方向(即ち、押圧板51の幅方向)において、押圧板51の両側(図5(a)では左側及び右側)に配置されている。具体的に言うと、各支持部61は、ローラー62を含んで構成されている。ローラー62は、円柱状をなしており、垂直方向に延びる回転軸63を中心として回転するようになっている。なお、回転軸63の下端部がルーフモール載置板42に接続され、回転軸63の上端部が押さえ板64に接続されているため、各支持部61は移動不能となっている。そして、押圧板51を前進(図5(a)では下側に移動)または後退(図5(a)では上側に移動)させれば、押圧板51及び支持部61が、相対的に接近または離間する方向に移動可能となる。
【0038】
図5に示されるように、ルーフモール20において押圧板51が当接する側とは反対側の側面20aに対向する位置には、長尺帯71が設けられている。長尺帯71は、ルーフモール20よりも軟質な樹脂材料からなっている。また、長尺帯71の長さは、一対のローラー62間の間隔よりも長くなっている。さらに、長尺帯71の幅(高さ)は、ローラー62の高さと等しくなっている。なお、両ローラー62(両支持部61)は、長尺帯71を介してルーフモール20を押さえるようになっている。また、長尺帯71の上部中央部は、押さえ板64の一端縁(押圧板51側の端縁)から下方に延びる長尺帯保持部材65によって保持されている。
【0039】
次に、ルーフモール20の製造方法を説明する。
【0040】
まず、準備工程を行い、ルーフモール20を準備する。具体的には、まず、押出成形部21を押出成形した後、射出成形型(図示略)のキャビティ内に押出成形部21とインサート品33とをセットする。次に、射出成形型を閉じた後、射出成形型に設けられたゲート部(図示略)を介して、キャビティ内に、溶融した射出成形部31の形成材料(EPDMやTPO等)を射出し、キャビティ内に射出成形部31の形成材料を充填する。その結果、押出成形部21の一端部に射出成形部31が射出成形され、インサート品33と押出成形部21とが射出成形部31で接合されたルーフモール20が形成される。そして、射出成形型を開いた後、キャビティからルーフモール20が取り外される。
【0041】
なお、射出成形部31は、予め幅方向に湾曲した形状に射出成形される。これにより、後述するルーフモール湾曲工程及び押圧部移動工程を経て押出成形部21が設定曲率となるように湾曲したときに、押出成形部21の側縁21aと射出成形部31の側縁31aとが連続した湾曲形状となる。ゆえに、押出成形部21と射出成形部31との境界B1(図2参照)が不自然に屈曲することなくなだらかな湾曲形状となり、ルーフモール20の見栄えが良い。
【0042】
続くルーフモール配置工程において、作業者は、製造装置40における押圧板51と支持部61との間であって、ルーフモール載置板42のルーフモール載置部42aに、ルーフモール20を配置し、押圧板51の凸状湾曲面51aとルーフモール20の脚部23とを対向させる(図6参照)。このとき、ルーフモール20の端面にモール位置決め部材45を当てることにより、ルーフモール20を位置決めする(図6(a)参照)。また、ルーフモール20において押圧板51が当接する側とは反対側の側面20aに対向する位置に、長尺帯71が配置されている(図6(b)参照)。
【0043】
続くルーフモール湾曲工程において、作業者が開始スイッチ(図示略)を操作すると、制御装置のCPUは、アクチュエータ46に駆動信号を出力し、押圧板51を前進(図7(a)では下側、図7(b)では左側に移動)させる制御を行う。その結果、ルーフモール20の脚部23が、押圧板51によって幅方向に押圧される。これに伴い、ルーフモール20の側面20aが長尺帯71に当接し、一対のローラー62(支持部61)が、長尺帯71を介してルーフモール20を押さえるようになる(図7参照)。なお、押圧板51は、ルーフモール20を構成する押出成形部21及び射出成形部31のうち、押出成形部21に当接して同押出成形部21を曲げるため、押出成形部21のみが湾曲する。その結果、ルーフモール20の押圧部分である押出成形部21が、上記した設定曲率よりも大きな曲率(本実施形態では、曲率半径R=150mm)となるように湾曲する(図7(a)参照)。また、長尺帯71はルーフモール20よりも軟質な材料からなるため、長尺帯71はルーフモール20とともに湾曲する。さらに、一対のローラー62が長尺帯71を介してルーフモール20を押さえるため、ルーフモール20が傷付くことを防止できる。
【0044】
続く押圧部移動工程において、CPUは、アクチュエータ46に駆動信号を出力し、押圧板51を後退(ルーフモール20から離間する方向(図7(a)では上方向)に移動)させる制御を行う。これにより、押圧部分(押出成形部21)の曲率が小さく(即ち、曲率半径Rが大きく)なるようにルーフモール20が戻り変形する。
【0045】
ルーフモール20を製造装置40から取り外した後、ルーフモール20を放置することでさらに押圧部分の曲率が小さくなり、ルーフモール20はルーフ溝12の湾曲に対応した設定曲率になる。なお、図8(a)に示すように、ルーフモール湾曲工程の前では、ルーフモール20の押出成形部21は直線状であるが、図8(b)に示すように、ルーフ溝12に装着するとき(設定曲率に湾曲しているとき)のルーフモール20は、押出成形部21の湾曲開始点21bから射出成形部31の端末31bまでの距離における湾曲量L1が、例えば16mmである。この場合、押圧部移動工程において押圧板51をルーフモール20から離間させた直後、湾曲量L1は、例えば18mmとなる。その後、1時間程度経過すれば、経時変化により、湾曲量L1は16mmとなる。従って、ルーフモール20をルーフ溝12に装着する際、ルーフモール20が設定曲率に湾曲した形状になるように、ルーフモール湾曲工程でルーフモール20を湾曲させる曲率を設定するとよい。
【0046】
そして、ルーフモール20を、ルーフパネル13のルーフ溝12に装着する。具体的に言うと、ルーフ溝12内にルーフモール20を押し込むことにより、ルーフモール20の被係止部にルーフパネル13のクリップ17が係止する。その結果、ルーフ溝12にルーフモール20が取り付けられる。
【0047】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0048】
(1)本実施形態のルーフモール20は、頭部22や脚部23等に加えて突出部25も備えるため、剛性を有する断面形状をなしている。従って、ルーフモール20を押出成形によって直線状に形成した場合には、ルーフモール20を車体10の幅方向に湾曲したルーフ溝12に追従させて取り付けることができない。その結果、ルーフ溝12に装着されたルーフモール20と、Aピラーガーニッシュ15との間に段差A1(図9参照)が生じるため、見栄えが悪いという問題がある。
【0049】
一方、本実施形態では、ルーフモール20が剛性を有する断面形状をなしていたとしても、ルーフモール20の製造装置40を用いることにより、押圧部分(押出成形部21)の曲率が設定曲率となるようにルーフモール20を湾曲させることができる。これにより、ルーフモール20の断面形状に関係なく、ルーフモール20をルーフ溝12に追従させた形状にすることができるため、上記の段差A1の発生を防止することができる。
【0050】
(2)通常、ルーフモール20を湾曲した形状にする場合には、ルーフモール20を構成する押出成形部21及び射出成形部31のうち、湾曲した形状に成形可能な射出成形部31を長くする必要がある。一方、本実施形態では、直線状に押出成形された押出成形部21であっても、湾曲した形状にすることができる。このため、射出成形部31を短くすることができ、射出成形部31と押出成形部21との境界B1(図2参照)の位置の自由度が高くなる。
【0051】
(3)本実施形態では、ルーフモール20のリップ部24が、頭部22、脚部23及び突出部25よりも高度の低い弾性ポリマー材料で形成されているため、小さい力でリップ部24を変形させることができる。よって、ルーフモール20を小さい力でルーフ溝12に装着することができる。
【0052】
(4)本実施形態では、長尺帯保持部材65が、長尺帯71全体ではなく、長尺帯71の一部のみを保持するため、長尺帯71を保持したとしても、長尺帯71の変形の自由度が確保される。よって、ルーフモール湾曲工程において、長尺帯71はルーフモール20とともに湾曲し、ルーフモール20の湾曲を阻害しない。
【0053】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0054】
・上記実施形態において、製造装置40の支持板61は、ルーフモール20の脚部23を幅方向に押圧するようになっていた。しかし、支持板61は、ルーフモール20において頭部22、リップ部24及び突出部25などの別の箇所を押圧するようになっていてもよい。
【0055】
・上記実施形態の製造装置40は2つの支持部61を備えていたが、支持部61は、3つ以上備えていてもよい。
【0056】
・上記実施形態の支持部61は、ローラー62を含んで構成されていた。しかし、支持部61は、ローラー62の代わりに、柱状部材や板状部材等の他の部材を含んで構成されていてもよい。即ち、支持部61は、回転するものでなくてもよい。
【0057】
・上記実施形態の製造装置40では、押圧板51を移動させることにより、押圧板51及び支持部61が、相対的に接近または離間する方向に移動可能となっていた。しかし、押圧板51の代わりに支持部61を移動させることによって、押圧板51及び支持部61が相対的に接近または離間する方向に移動するようにしてもよい。また、支持板51及び支持部61の両方を移動させることによって、押圧板51及び支持部61が相対的に接近または離間する方向に移動するようにしてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、アクチュエータ46を用いて押圧板51を移動させていたが、手動操作によって押圧板51を移動させてもよい。また、上記実施形態では、手動操作によってルーフモール20をルーフモール載置板42上に搬送していたが、アクチュエータを用いてルーフモール20を搬送してもよい。
【0059】
・上記実施形態のルーフモール20は、押出成形部21と射出成形部31とによって構成されていた。しかし、ルーフモール20は、押出成形部21のみによって構成されていてもよい。
【0060】
・上記実施形態のルーフモール湾曲工程では、押出成形部21に押圧板51を当接させて曲げることにより、押出成形部21のみを湾曲させていた。しかし、押出成形部21及び射出成形部31(及びインサート品33)の両方を湾曲させてもよい。
【0061】
・上記実施形態のルーフモール20は、脚部23の先端部の両側面に、ルーフモール20の幅方向外側に突出するリップ部24をそれぞれ備えていた。しかし、ルーフモール20は、脚部23の先端部の一方の側面のみに、ルーフモール20の幅方向外側に突出するリップ部24を備えていてもよい。また、上記実施形態のルーフモール20は、頭部22の幅方向における両端部に、突出部25をそれぞれ備えていた。しかし、ルーフモール20は、頭部22の幅方向における一方の端部のみに突出部25を備えていてもよい。
【0062】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0063】
(1)請求項1乃至3のいずれか1項において、前記ルーフモール湾曲工程では、前記押圧部によって前記ルーフモールの前記脚部を幅方向に押圧することを特徴とするルーフモールの製造方法。
(2)請求項1乃至3のいずれか1項において、前記押圧部移動工程では、前記押圧部を前記ルーフモールから離間する方向に移動させることにより、前記ルーフモールを戻り変形させることを特徴とするルーフモールの製造方法。
(3)請求項7または8において、前記ルーフモールは、前記ルーフ溝を覆う頭部と、前記頭部の裏面側から突出する脚部とを備え、前記押圧部は、前記ルーフモールの前記脚部を幅方向に押圧可能となっていることを特徴とするルーフモールの製造装置。
【符号の説明】
【0064】
10…車体
11…ルーフ
12…ルーフ溝
20…ルーフモール
20a…ルーフモールにおいて押圧部が当接する側とは反対側の側面
21…押出成形部
21a…押出成形部の側縁
22…頭部
22a…頭部の裏面
23…脚部
24…リップ部
25…突出部
31…射出成形部
31a…射出成形部の側縁
40…ルーフモールの製造装置
42…ルーフモール載置部としてのルーフモール載置板
51…押圧部としての押圧板
51a…押圧面としての凸状湾曲面
61…支持部
62…ローラー
71…長尺帯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9