(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061343
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】危険箇所検知バンドおよび危険箇所検知方法
(51)【国際特許分類】
G08B 21/24 20060101AFI20240425BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G08B21/24
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169238
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】下山田 明也乃
【テーマコード(参考)】
5C086
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086AA52
5C086CB28
5C086DA08
5C086FA02
5C086FA20
(57)【要約】
【課題】高所や開口部などの危険個所における転倒・落下を効果的かつ効率的に防止することが可能になる危険箇所検知バンドを提供する。
【解決手段】危険箇所検知バンド10L,10Rは、帯状であって、それぞれその長さ方向に5つの距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5を分散して備え、左足WLと右足WRの足元周りを対象に下方向への測距ビームBmを出力して空間の距離を測定(検出)する。危険箇所検知バンド10L,10Rは、例えば足元近くの床Fに開口部Hが存在することで、作業者Wの足元周りに予め設定された設定距離D以上の空間距離が検出された場合には、警告振動VBを発生し、転倒・落下の恐れがある危険個所(ここでは開口部H)への接近を作業者Wに直感として効果的に警告する。現場に多数存在する危険箇所毎に作業者Wの接近を警報する警報装置を設置する必要が無く効率的でもある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足首に巻いて装着されるバンドと、
前記バンドの表面に長さ方向に複数分散して設けられ、そのそれぞれが前記バンドを巻いた足元周りの下方向への空間距離を測定する複数の距離センサと、
前記バンドに設けられ振動を発生する振動部と、
前記複数の距離センサのうち少なくとも1つの距離センサにより、予め設定された設定距離以上の空間距離が測定された場合に、前記振動部に振動を発生させる制御部と、
を備える危険箇所検知バンド。
【請求項2】
前記距離センサは、前記バンドを足首に装着した状態で、前記空間距離の測定方向が前記バンドの垂下方向よりも外側へ一定角度傾斜した方向に向くように設けられる、
請求項1に記載の危険箇所検知バンド。
【請求項3】
前記距離センサは、前記バンドを足首に装着した状態で、つま先に正対しない左右斜め前の2方向と、左右側面の2方向と、真後ろの1方向と、の少なくとも5つの方向に面する位置に設けられる、
請求項1または請求項2に記載の危険箇所検知バンド。
【請求項4】
前記制御部は、前記振動部に振動を発生させた後に、前記測定された空間距離が前記設定距離未満に戻った場合、前記振動部の振動を停止させる、
請求項1または請求項2に記載の危険箇所検知バンド。
【請求項5】
前記バンドに設けられ警報音を出力する警報部を備え、
前記制御部は、前記複数の距離センサの全ての距離センサにより前記設定距離以上の空間距離が測定された場合に、前記警報部に警報音を出力させる、
請求項1または請求項2に記載の危険箇所検知バンド。
【請求項6】
前記危険箇所検知バンドは、左右の足首に各々装着される一対の前記バンドを備える、
請求項5に記載の危険箇所検知バンド。
【請求項7】
前記一対のバンドの各々に設けられ相互に通信接続する通信部を備え、
前記制御部は、前記複数の距離センサの全ての距離センサにより前記設定距離以上の空間距離が測定された場合に、前記通信部を介して相手の前記バンドに警報通知信号を送信すると共に、前記通信部を介して相手の前記バンドから警報通知信号を受信した場合に、前記警報部に警報音を出力させる、
請求項6に記載の危険箇所検知バンド。
【請求項8】
足首に巻いて装着されるバンドと、
前記バンドの表面に長さ方向に複数分散して設けられ、そのそれぞれが前記バンドを巻いた足元周りの下方向への空間距離を測定する複数の距離センサと、
前記バンドに設けられ振動を発生する振動部と、
を備えた危険箇所検知バンドの制御部により、
前記複数の距離センサのうち少なくとも1つの距離センサにより、予め設定された設定距離以上の空間距離が測定された場合に、前記振動部に振動を発生させる、
ようにした危険箇所検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、危険箇所検知バンドおよび危険箇所検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建設作業現場では、多種多様な労働災害が発生する恐れがある。その中には、作業者が高所(足場、ローリングタワー、作業台)や開口部などの危険個所において転倒したり、落下したりするといった労働災害が含まれる。
【0003】
従来、このような危険箇所に対して、現場管理者は、何らかの安全対策を講じている。
【0004】
安全対策の例としては、作業者に対し安全教育を実施する、作業現場内の危険個所を明示するなどがある。これらの安全対策は、現場の作業前に実施して作業者の危機意識を高めるもので、災害リスク発生の低減が期待できる。しかしその一方で、作業者は、長期間作業すると作業現場に慣れてしまい危機意識が低下するため、安全対策の効果が発揮されなくなる可能性がある。持続的な安全対策を講じるためには、危険箇所では作業員に対して常に注意喚起を促すことが必要である。
【0005】
そこで、センサを用いて危険個所に近づく人を感知し、感知した人に対してスピーカから注意文言を発報して注意喚起する音声警報器(例えば、特許文献1参照。)や、危険箇所の危険範囲を撮像する撮像部により撮像された周囲画像情報に人物画像情報が含まれるかを判定し、危険範囲に入った人に対してスピーカから警告音声を発生させて注意喚起する作業現場用警報装置(例えば、特許文献2参照。)が考えられている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の音声警報器や特許文献2に記載の作業現場用警報装置は、その何れにあっても、作業現場に存在する危険箇所の各々に設置され、音声によって警報を発生するものである。このため、多様な作業に伴う騒音が交錯する現場では作業者が警報音声を聞き取ることができない場合があり、確実な注意喚起を行うことができない。また広大かつ様々な危険個所がある作業現場では、警報装置を現場各々の作業の妨げにならない適切な場所に多数設置する必要があり、設置のための労力やコスト面で効率的ではない。
【0007】
作業者の両手両足の4箇所に取り付けた接触センサにより、例えば梯子を使用した高所作業時の作業者の三点支持を検出し、三点支持となっていない場合には、作業者の胴体部に装着した警告装置により音と振動と光の警告を発することで当該作業者に三点支持の姿勢を促し、落下・転落の危険性を下げることのできる安全確認システムが考えられている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
重機にその危険作業領域に可視光を投光する投光機を設けるとともに、可視光を受光する受光機と振動発生機を作業者に装着し、受光機が可視光を受光した場合に振動発生機により振動を発生することで、騒音環境下でも作業者に対し重機の接近を警告できる接近警告システムが考えられている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3168921号公報
【特許文献2】特開2021-174331号公報
【特許文献3】特開2014-206944号公報
【特許文献4】特開2021-140547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3に記載の安全確認システムや特許文献4に記載の接近警告システムは、何れも、作業者の装着した装着物により振動を発生して危険を知らせる機能を有するものの、前者の安全確認システムは作業者が梯子などを昇降する作業現場での落下・転落の防止を図るもの、後者の接近警告システムは重機を使用する作業現場での重機と作業者との接触の防止を図るものであり、高所(足場、ローリングタワー、作業台)や開口部などの危険個所における転倒・落下を適切に防止することはできない。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、高所や開口部などの危険個所における転倒・落下を効果的かつ効率的に防止することが可能になる危険箇所検知バンドおよび危険箇所検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態の危険箇所検知バンドは、
足首に巻いて装着されるバンドと、
前記バンドの表面に長さ方向に複数分散して設けられ、そのそれぞれが前記バンドを巻いた足元周りの下方向への空間距離を測定する複数の距離センサと、
前記バンドに設けられ振動を発生する振動部と、
前記複数の距離センサのうち少なくとも1つの距離センサにより、予め設定された設定距離以上の空間距離が測定された場合に、前記振動部に振動を発生させる制御部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の危険箇所検知バンド10および危険箇所検知方法を使用した作業現場の一例を示す図。
【
図2】危険箇所検知バンド10の外観構成を示す図であり、同図(AL)(BL)は左足用検知バンド10Lの左足首Laへの装着図および正面展開図、同図(AR)(BR)は右足用検知バンド10Rの右足首Raへの装着図および正面展開図。
【
図3】危険箇所検知バンド10(10L,10R)を作業者(左足WL,右足WR)に装着した状態での電子回路の配置位置を示す平面図であり、矢印Fは作業者の前方を示す。
【
図4】危険箇所検知バンド10(10L,10R)を作業者(左足WL,右足WR)に装着した状態での左右の距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5による測距ビームBm1~Bm5の出力方向を説明する平面図。
【
図5】危険箇所検知バンド10(10L,10R)を作業者(左足WL,右足WR)に装着した状態での左右の距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5による測距ビームBm1~Bm5の出力方向を説明する斜視図。
【
図6】危険箇所検知バンド10(10L,10R)の電子回路の構成を示すブロック図。
【
図7】危険箇所検知バンド10(10L,10R)の制御装置18L,18Rにより実行される危険箇所検知処理を示すフローチャート。
【
図8】危険箇所検知バンド10(10L,10R)を使用した高所作業時の危険箇所検知動作を説明する図。
【
図9】危険箇所検知バンド10(10L,10R)を使用したアクセスフロアAFでの作業時の危険箇所検知動作(前後方向)を説明する図。
【
図10】危険箇所検知バンド10(10L,10R)を使用したアクセスフロアAFでの作業時の危険箇所検知動作(左右方向)を説明する図。
【
図11】危険箇所検知バンド10(10L,10R)を使用した作業時の高所からの落下を想定した危険箇所検知動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0015】
(実施形態の構成)
図1は、実施形態の危険箇所検知バンド10および危険箇所検知方法を使用した作業現場の一例を示す図である。
【0016】
図2は、危険箇所検知バンド10の外観構成を示す図であり、同図(AL)(BL)は左足用検知バンド10Lの左足首Laへの装着図および正面展開図、同図(AR)(BR)は右足用検知バンド10Rの右足首Raへの装着図および正面展開図である。
【0017】
危険箇所検知バンド10は、
図1に示すように、左足WL用の危険箇所検知バンド10Lと右足WR用の危険箇所検知バンド10Rとを一対にして備え、作業現場では、
図2(AL)(AR)に示すように、そのそれぞれを作業者Wの左足首Laと右足首Raとに巻回して装着することで使用する。
【0018】
危険箇所検知バンド10L,10Rは、帯状であって、それぞれその長さ方向に5つの距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5を分散して備え、左足WLと右足WRの足元周りを対象に下方向への測距ビームBmを出力して空間の距離を測定(検出)する。危険箇所検知バンド10L,10Rは、例えば
図1に示すように、足元近くの床Fに開口部Hが存在することで、作業者Wの足元周りに予め設定された設定距離D以上の空間距離が検出された場合には、警告振動VBを発生し、転倒・落下の恐れがある危険個所(ここでは開口部H)への接近を作業者Wに直感として警告する機能を有する。
【0019】
左足用検知バンド10Lと右足用検知バンド10Rとは、
図2(BL)(BR)に示すように、その何れも、図示左端に設けた凹バックル12aと図示右端に設けた凸バックル12bとの組み合わせからなるバックル12R,12Lにより、
図2(AL)(AR)に示すように、当該バックル12L,12Rが足首La,Raの正面側に位置するように装着される。
【0020】
左右の検知バンド10L,10Rは、何れも、例えば左右の長さ25cm、上下の幅4cm、厚み6mm程度の大きさで構成され、長さ方向に6分割される伸縮バンド部14L1~14L6,14R1~14R6と、各伸縮バンド部14L1~14L6,14R1~14R6の相互間に配置される5つのセンサ部13L1~13L5,13R1~13R5とを、凹バックル12aと凸バックル12bとの間で交互に連結させて構成する。
【0021】
伸縮バンド部14L1~14L6,14R1~14R6は、例えば弾性材料を含む布製で帯状の伸縮素材により形成され、そのうち少なくともセンサ部13L1~13L5,13R1~13R5の相互間を連結する伸縮バンド部14L2~14L5,14R2~14R5は、左右に連通する中空部を有する。
【0022】
センサ部13L1~13L5,13R1~13R5は、例えばプラスチック製で帯状の硬質素材により形成され、伸縮バンド部14L2~14L5,14R2~14R5の中空部に連通する中空部を有する。
【0023】
なお、左右の検知バンド10L,10Rにおいて、それぞれその5つのセンサ部13L1~13L5,13R1~13R5は、配置間隔が均等ではなく、
図2(AL)(AR)で示したように、バックル12L,12Rを足首La,Raの正面に位置させて装着した状態で、つま先に正対しない左右斜め前の2方向(13L1,13L5)(13R1,13R5)と、左右側面の2方向(13L2,13L4)(13R2,13R4)と、真後ろの1方向(13L3)(13R3)と、の計5方向に面する位置に配置される。
【0024】
すなわち、左右の検知バンド10L,10Rそれぞれのセンサ部13L1~13L5,13R1~13R5は、
図2(BL)(BR)で示したように、検知バンド10L,10Rの長さ方向の2分の1の位置(13L3)(13R3)と、更にその2分の1の位置(13L2,13L4)(13R2,13R4)と、更にその左右先端方向の2分の1の位置(13L1,13L5)(13R1,13R5)と、の計5箇所に配置される。
【0025】
そして、センサ部13L1~13L5,13R1~13R5には、その各々の表面に露出する状態で距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5を設ける。
【0026】
距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5は、例えば小型レーザ式や小型超音波式の省電力距離センサであり、測距ビームBm(
図1参照)としてのレーザ光や超音波信号が当たる物体面まで空間距離を測定(検出)するもので、何れもその距離の測定方向は、検知バンド10L,10Rを足首La,Raに装着した状態(すなわち検知バンド10L,10Rの長さ方向が左右方向に、幅方向が上下方向に向いた状態)で、センサ部13L1~13L5,13R1~13R5の表面に沿った垂下方向よりも外側へ30度程度傾斜した方向に向けて設けられる。
【0027】
ここで、左足用検知バンド10Lの距離センサ11L1~11L5は、左足首Laに装着した状態での反時計回り(左回り)に第1距離センサ11L1~第5距離センサ11L5とし、右足用検知バンド10Rの距離センサ11R1~11R5は、右足首Raに装着した状態での時計回り(右回り)に第1距離センサ11R1~第5距離センサ11R5とする。
【0028】
左右の検知バンド10L,10Rともに、操作性および機能性の観点から、第1距離センサ11L1,11R1を設けたセンサ部13L1,13R1には電源ボタン(電源ランプ付き)15L,15Rを設け、第2距離センサ11L2,11R2を設けたセンサ部13L2,13R2には大音量の落下警報部16L,16Rを内蔵(報音孔は露出)させ、第3距離センサ11L3,11R3を設けたセンサ部13L3,13R3には警告振動部17L,17Rを内蔵させる。
【0029】
図3は、危険箇所検知バンド10(10L,10R)を作業者(左足WL,右足WR)に装着した状態での電子回路の配置位置を示す平面図であり、矢印Fは作業者の前方を示す。
【0030】
図3に示すように、落下警報部16L,16Rは、左足WLおよび右足WRの外側面に位置するセンサ部13L2,13R2に設けることにより警報音を効果的に周囲に発出し、警告振動部17L,17Rは、左足WLおよび右足WRの腱上部に位置するセンサ部13L3,13R3に内蔵させることにより警告振動VBを効果的に作業者Wに伝達する。
【0031】
そして電子回路を制御する制御装置18L,18Rを、左足WLおよび右足WRの内側面に位置するセンサ部13L4,13R4に内蔵させることにより効果的に保護し誤動作を防止する。
【0032】
なお、危険箇所検知バンド10(10L,10R)の電子回路に要する信号線および電源線は、前述したセンサ部13L1~13L5,13R1~13R5および伸縮バンド部14L2~14L5,14R2~14R5の中空部に配線される。
【0033】
このように、左右の検知バンド10L,10Rは、
図2および
図3で示したように、電源ボタン(電源ランプ付き)15L,15Rおよび落下警報部16L,16R、警告振動部17L,17R、制御装置18L,18Rを対象とする操作性および機能性の観点から、バックル12L,12R(凹バックル12a,凸バックル12b)の部分を除いて左右対称に構成されるが、バックル12L,12Rは、作業者W自身への着脱に際して、左手で持った凹バックル12aに対し、一般に利き手である右手で持った凸バックル12bを嵌めたり外したりすることを想定し、左右の検知バンド10L,10Rの何れにあっても、正面から見て(
図2参照)左端に凹バックル12aを設け、右端に凸バックル12bを設ける。
【0034】
図4は、危険箇所検知バンド10(10L,10R)を作業者(左足WL,右足WR)に装着した状態での左右の距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5による測距ビームBm1~Bm5の出力方向を説明する平面図である。
【0035】
図5は、危険箇所検知バンド10(10L,10R)を作業者(左足WL,右足WR)に装着した状態での左右の距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5による測距ビームBm1~Bm5の出力方向を説明する斜視図である。
【0036】
すなわち、第1距離センサ11L1,11R1からの測距ビームBm1は前方斜め外側の斜め下に向けて出力され、第2距離センサ11L2,11R2からの測距ビームBm2は左右外側の斜め下に向けて出力され、第3距離センサ11L3,11R3からの測距ビームBm3は後方の斜め下に向けて出力され、第4距離センサ11L4,11R4からの測距ビームBm4は左右内側の斜め下に向けて出力され、第5距離センサ11L5,11R5からの測距ビームBm5は前方斜め内側の斜め下に向けて出力される。
【0037】
従って、危険箇所検知バンド10(10L,10R)の距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5は、左足WLと右足WRの足元周りを囲むようにして下方向への空間距離を測定(検出)する。
【0038】
図6は、危険箇所検知バンド10(10L,10R)の電子回路の構成を示すブロック図である。
【0039】
危険箇所検知バンド10(10L,10R)の制御装置18L,18Rは、何れも同様に制御部(CPU:Central Processing Unit)21を備える。制御部21は、記憶部22に記憶される制御プログラムに従い回路各部の動作を制御し、ソフトウエアとハードウェアとを協働させて検知バンド10L,10Rが有する危険箇所検知機能を実現する。
【0040】
制御部21には、記憶部22、近距離無線通信部23が接続されるほか、前述した距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5、電源ボタン(電源ランプ付き)15L,15R、落下警報部16L,16R、警告振動部17L,17Rが接続される。
【0041】
また検知バンド10L,10Rの電子回路は、例えば電磁誘導式の非接触で充電可能な充電池24により電源が供給される。
【0042】
近距離無線通信部23は、例えばBLE(Bluetooth Low Energy)(登録商標)を用いて構成され、一対である左右の検知バンド10L,10R間で通信接続し、距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5により測定(検出)される足元の空間距離に基づいて、一方の検知バンド10Lまたは10Rにおける空間距離の測定状態が特定の状態(全ての距離センサ11L1~11L5(または11R1~11R5)の測定距離が設定距離D以上)となった場合の特定情報(警報通知)を、他方の検知バンド10Rまたは10Lと共有する。
【0043】
(実施形態の動作)
図7は、危険箇所検知バンド10(10L,10R)の制御装置18L,18Rにより実行される危険箇所検知処理を示すフローチャートである。
【0044】
なお、危険箇所検知バンド10(10L,10R)の危険箇所検知処理は、左右何れの検知バンド10L,10Rも同じになるため、
図7では左足WL用の危険箇所検知バンド10Lの場合を代表として示す。
【0045】
図8は、危険箇所検知バンド10(10L,10R)を使用した高所作業時の危険箇所検知動作を説明する図である。
【0046】
図9は、危険箇所検知バンド10(10L,10R)を使用したアクセスフロアAFでの作業時の危険箇所検知動作(前後方向)を説明する図である。
【0047】
図10は、危険箇所検知バンド10(10L,10R)を使用したアクセスフロアAFでの作業時の危険箇所検知動作(左右方向)を説明する図である。
【0048】
危険箇所検知バンド10(10L,10R)を、
図2~
図5で示したように、作業者Wの左右の足首La,Raに装着し、電源ボタン15L,15Rにより電源をオンにすると、制御部21は、電源ボタン15L,15Rの電源ランプを点灯させ、動作中であることを作業者Wを含む外部に報知する(ステップS1)。
【0049】
ここで、作業者Wの足元周りに空間や開口部Hなど、転倒や落下を招く危険箇所が存在していない危険箇所非検知状態では、制御部21は、第1距離センサ11L1(11R1)~第5距離センサ11L5(11R5)により測定される足元周りの全ての空間距離が、予め設定された設定距離D(例えば40cm)未満であると判定し(ステップS2(YES))、警告振動部17L(17R)の停止を維持する(ステップS3)。
【0050】
この危険箇所非検知状態は、左右の検知バンド10L,10Rの全ての距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5からの測距ビームBm1~Bm5が足元周りの床面に当たっている状態であり、例えば
図8(A)に示す足場31での作業時や
図8(B)に示す作業台32での作業時では、
図8(C)に示すように、作業者Wの足(WL)が足場31や作業台32の端31Fよりも一定程度内側にある安全な状態であり、また、例えば
図9および
図10に示すアクセスフロアAFでの作業時では、
図9(A)(C)および
図10(A)(C)に示すように、作業者Wの足(WL)(WR)が開口部Hよりも一定程度離れた位置にある安全な状態である。
【0051】
一方、例えば
図8(D)(E)に示すように、作業者Wの足(WL)が足場31や作業台32の端31Fの直ぐ傍に近付いた危険な状態になったり、また、例えば
図9(B)(D)および
図10(B)(D)に示すように、作業者Wの足(WL)(WR)が開口部Hの直ぐ傍に近付いた危険な状態になったりした場合(危険箇所検知状態)、制御部21は、第1距離センサ11L1(11R1)~第5距離センサ11L5(11R5)のうち、少なくとも一つ以上の距離センサ11Ln(11Rn)の測距ビームBmnにより測定される足元周りの空間距離が、予め設定された設定距離D(ここでは40cm)以上になったと判定する(ステップS4(YES))。
【0052】
この場合、左右の検知バンド10L,10Rの制御部21は、危険箇所検知状態にある左足WLまたは右足WR(または両足WL,WR)の警告振動部17L(17R)を駆動して警告振動VBを発生し、転倒・落下の恐れがある危険個所への接近を作業者Wに直感として警告する(ステップS5)。
【0053】
作業者Wは、警告振動VBを感じている側の足の直ぐ傍に足場31や作業台32の端31Fあるいは開口部Hが近付いて危険な状態であることを直ちに認識し、その場から離れたりそれ以上近付いたりしないことで危険を回避できる。
【0054】
ここで、危険が回避され、前述したように第1距離センサ11L1(11R1)~第5距離センサ11L5(11R5)により測定される足元周りの全ての空間距離が、予め設定された設定距離D未満になることで、再び危険箇所非検知状態に戻ると(ステップS2(YES))、制御部21は、警告振動部17L(17R)の駆動を停止し、警告振動VBを止める(ステップS3)。
【0055】
図11は、危険箇所検知バンド10(10L,10R)を使用した作業時の高所からの落下を想定した危険箇所検知動作を説明する図である。
【0056】
作業者Wが、万が一、足場31や作業台32の端31Fを踏み外してしまったり、開口部Hに踏み込んでしまったりすることで、例えば
図11に示すように、落下する事態が発生した場合、その両足WL,WRが宙に浮くことで、左右の検知バンド10L,10Rの何れの距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5からの測距ビームBm1~Bm5も床Fの表面から外れて開口部Hに対応する空間中に出力される状態になる。
【0057】
この場合、制御部21は、第1距離センサ11L1(11R1)~第5距離センサ11L5(11R5)により測定される足元周りの全ての空間距離が、予め設定された設定距離D(ここでは40cm)以上であると判定する(ステップS6(YES))。そして、一対であるもう一つの検知バンド(ここでは右足WR用の検知ハンド10R)に対して近距離無線通信部23を介して通信接続し警報通知信号を送信すると共に(ステップS7)、当該一対であるもう一つの検知バンド(右足WR用の検知ハンド10R)からの警報通知信号の受信を待機する(ステップS8)。
【0058】
一対であるもう一つの検知バンド(右足WR用の検知ハンド10R)からの警報通知信号が受信されると(ステップS8(YES))、制御部21は、左右の検知バンド10L,10Rの全ての距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5により設定距離D以上の空間距離が測定されたと判定することに基づいて、作業者Wが落下する事態が発生したと判定する。
【0059】
制御部21は、警報部16L(16R)を駆動して警報音BZを出力し、作業者Wの落下が発生している事態をその発生現場を含む周囲の第三者に向けて警報する(ステップS9)。
【0060】
作業者Wの作業現場およびその周辺では、作業者Wの落下が発生した事態を直ちに認識して落下した作業者Wをいち早く救助できる。
【0061】
(実施形態のまとめ)
実施形態の危険箇所検知バンド10(10L,10R)によれば、作業者Wの左右の足首La,Raに巻回装着して使用される帯状の左足用検知バンド10Lと右足用検知バンド10Rとを備え、当該検知バンド10L,10Rの表面に長さ方向に複数分散して設けた距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5により、左足WLと右足WRの足元周りを対象に下方向への測距ビームBmを出力して空間の距離を測定する。
【0062】
複数の距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5のうち、少なくとも1つの距離センサ11Ln(11Rn)により設定距離D以上の空間距離が測定された場合、当該空間距離(≧D)が測定された距離センサ11Ln(11Rn)を有する側の検知バンド10L(10R)に内蔵させた警告振動部17L(17R)により警告振動VBを発生し、警告振動VBを発生している側の足WL(WR)が、転倒・落下の恐れがある危険個所(開口部Hあるいは足場31や作業台32の端31Fなど)に接近している事態を作業者Wに直感として警告する。
【0063】
距離センサ11Ln(11Rn)により測定されている空間距離が設定距離D以上から設定距離D未満に戻った場合、警告振動部17L(17R)による警告振動VBを停止させ、危険箇所から離れたことを作業者Wに直感として知らせる。
【0064】
また、実施形態の危険箇所検知バンド10(10L,10R)によれば、全ての距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5により設定距離D以上の空間距離が測定された場合には、一方の検知バンド10Lと他方の検知バンド10Rとの間で、近距離無線通信部23を介して警報通知信号を相互に送受信することで、作業者Wの両足WL,WRが宙に浮いた状態であることを共有する。そして、警報部16L,16Rにより警報音BZを出力して、作業者Wの落下が発生している事態をその発生現場を含む周囲の第三者に向けて警報する。
【0065】
実施形態の危険箇所検知バンド10(10L,10R)によれば、多様な作業に伴う騒音が交錯する現場にあっても、転倒・落下の恐れがある危険個所への接近を警告振動VBによって作業者Wに直に効果的に警告でき、しかも広大かつ様々な危険個所がある作業現場であっても、警報装置を現場各々に個別多数設置する必要はなく効率的に警告できる。
【0066】
よって、高所や開口部などの危険個所における転倒・落下を効果的かつ効率的に防止することが可能になる。
【0067】
(他の実施形態)
前記実施形態では、左右の危険箇所検知バンド10L,10Rの両方に落下警報部16L,16Rを設け、両方の検知バンド10L,10Rの全ての距離センサ11L1~11L5,11R1~11R5により測定される空間距離が設定距離D以上になった状態を、近距離無線通信部23を介して各検知バンド10L,10R間で共有し、両方の落下警報部16L,16Rを駆動して警報音BZを出力する構成とした。
【0068】
これに対し、一方の検知バンド10L(10R)の全ての距離センサ11L1~11L5(11R1~11R5)により測定される空間距離が設定距離D以上になった場合には、近距離無線通信部23を介しての他方の検知バンド10R(10L)との情報共有を行なうことなく、当該一方の検知バンド10L(10R)が単独で落下警報部16L(16R)を駆動して警報音BZを出力してもよい。
【0069】
また、一方の検知バンド10L(または10R)にのみ落下警報部16L(または16R)を設け、当該一方の検知バンド10Lの距離センサ11L1~11L5により設定距離D以上の空間距離が測定された状態にあって、他方の検知バンド10Rの距離センサ11L1~11L5により設定距離D以上の空間距離が測定された場合に、他方の検知バンド10Rからの警報通知信号を一方の検知バンド10Lが受信することで、当該一方の検知バンド10Lの落下警報部16Lを駆動する構成としてもよい。
【0070】
また、前記実施形態では、左右の危険箇所検知バンド10L,10Rは、操作性および機能性の観点から、バックル12L,12Rを除いて、電源ボタン(電源ランプ)15L,15R、落下警報部16L,16R、警告振動部17L,17Rを、左右対称に位置するように設けたが、左右の区別無しに同一の構成の一対の危険箇所検知バンド(例えば10,10)をそれぞれ作業者Wの左右の足首La,Raに装着し、前記実施形態と同様に動作させることで、警告振動VBによる危険箇所への接近の警告と、警報音BZによる落下の警報と、を行なうようにしてもよい。
【0071】
また、前記実施形態では、距離センサ11Ln,11Rnにより測定される作業者Wの足元周りの下方向への空間距離が、例えば床Fの開口部Hであったり、足場31や作業台32の端31Fより外側であったりすることを判定するための設定距離Dを、例えば40cmに設定した。設定距離Dがこれに限らないのは勿論であり、危険箇所検知バンド10L,10Rの作業者Wに対する装着位置とその作業に伴う高さの推移とを考慮して適切に設定すればよい。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
10L,10R…危険箇所検知バンド、11L1~11L5,11R1~11R5…距離センサ、Bm1~Bm5…測距ビーム、D…設定距離、12L,12R…バックル、13L1~13L5,13R1~13R5…センサ部、14L1~14L6,14R1~14R6…伸縮バンド部、15L,15R…電源ボタン(電源ランプ)、16L,16R…落下警報部、BZ…警報音、17L,17R…警告振動部、VB…警告振動、18L,18R…制御装置、21…制御部(CPU)、22…記憶部、23…近距離無線通信部、24…充電池、W…作業者、La,Ra…足首、F…床、H…開口部、31…足場、32…作業台。