(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006136
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示装置、及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
G09G 5/36 20060101AFI20240110BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240110BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240110BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20240110BHJP
G09G 5/377 20060101ALI20240110BHJP
G09G 5/02 20060101ALI20240110BHJP
G09G 5/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G09G5/36 520P
B60K35/00 A
G09G5/00 510A
G09G5/36 520F
G09G5/00 550H
G09G5/36 520G
G09G5/38 A
G09G5/00 550C
G09G5/36 520M
G09G5/02 B
G09G5/10 B
G09G5/00 550B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106748
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】片桐 雅貴
【テーマコード(参考)】
3D344
5C182
【Fターム(参考)】
3D344AA21
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3D344AC25
5C182AA03
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5C182AB15
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5C182BA56
5C182BB03
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5C182CB13
5C182CB14
5C182CB42
5C182CB44
5C182CB54
5C182CB55
5C182DA52
5C182DA65
(57)【要約】
【課題】 表示の視認性を低下させることで、車両の乗員による実景の視認を容易化し、一方、乗員によるその表示の認識性の低下も抑制する。
【解決手段】 車両1に搭載され、画像表示制御を行う表示制御装置700は、表示オブジェクトの視認性レベル、及び表示態様を制御する制御部140を有し、制御部140は、車両1の乗員5から見た前方の実空間に第1、第2の領域Z1、Z2を設定し、第1領域Z1では、表示オブジェクトを第1の視認性レベルで表示し、第2の領域Z2では、表示オブジェクトOB0を、第1の視認性レベルよりも低い第2の視認性レベルで表示する低視認性処理を実施すると共に、その表示オブジェクトOB0を拡張し、その一部が第1の領域にも表示されるようにすることで、拡張後の表示オブジェクトOB0’の認識性を向上させる認識性向上処理を実施する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、画像表示制御を行う表示制御装置であって、
表示オブジェクトの視認性レベル、及び表示態様を制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記車両の乗員から見た前方の実空間における仮想的な表示領域内に、近方の実景に対応する箇所を含む第1の領域と、遠方の実景に対応する箇所を含む第2の領域と、を設定し、
前記表示オブジェクトの視認性レベルに関して、
前記第1の領域に表示オブジェクトを表示する場合には、第1の視認性レベルとし、
前記第2の領域に表示オブジェクトを表示する場合には、前記第1の視認性レベルよりも低い第2の視認性レベルとする、表示オブジェクトの低視認性処理を実施し、
前記第2の領域に表示される表示オブジェクトを拡張して、その一部が前記第1の領域にも表示されるようにすることで、前記表示オブジェクトの認識性を向上させる認識性向上処理を実施する、
表示制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第2の領域に表示される表示オブジェクトであって、その表示オブジェクトが所定の種類の表示オブジェクトであり、かつ、その表示オブジェクトを許容範囲内で拡張した場合に、その表示オブジェクトが前記第2の領域と前記第1の領域にまたがって表示され得る、という条件を満たす表示オブジェクトを、前記認識性向上処理の対象とする、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記認識性向上処理の対象となる表示オブジェクトの少なくとも一部は、線遠近法、及び空気遠近法の少なくとも1つにより表現されており、
かつ、
前記認識性向上処理では、前記表示オブジェクトの、前記乗員から見て手前側に位置する部分の視認性レベルが上昇する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記認識性向上処理を実施して、表示オブジェクトを前記第1の領域と前記第2の領域にまたがるように表示する場合に、
前記第1の視認性レベルから前記第2の視認性レベルに至るまで、段階的に、又は連続的に視認性レベルを変化させる、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2の領域内に、第3の領域を設定し、
前記第3の領域に表示オブジェクトを表示する場合は、前記第1の視認性、又は前記第1の視認性に近い、第1の視認性に準じる視認性とし、
前記第2の領域における、前記第3の領域以外の領域に表示オブジェクトを表示する場合は、前記第2の視認性とする、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
表示オブジェクトに、表示の重要性を示す重要性レベルを付与し、
第1の表示オブジェクトに認識性向上処理を実施すると、重要性レベルが前記第1の表示オブジェクトよりも低い第2の表示オブジェクトとの間で重複が生じる場合は、前記第2の表示オブジェクトの大きさ、及び位置の少なくとも一方を変更することで、前記第1の表示オブジェクトと前記第2の表示オブジェクトの重複を解消する第1の重複解消処理を実施し、
前記第1の表示オブジェクトに認識性向上処理を実施すると、重要性レベルが前記第1の表示オブジェクトよりも高い第3の表示オブジェクトとの間で重複が生じる場合は、前記第1の表示オブジェクトに対する認識性向上処理を取り消すことで、前記第1の表示オブジェクトと前記第3の表示オブジェクトとの重複を解消する第2の重複解消処理を実施する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第2の領域に表示されていた表示オブジェクトが、前記第1の領域へ移動した際の視認性レベルを上昇させる変化速度を、前記第1の領域に表示されていた表示オブジェクトが、前記第2の領域へ移動した際の視認性レベルを低下させる変化速度より緩やかにする、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第2の領域に表示されていた、前記車両の走行レーンに関する表示オブジェクトが前記第1の領域へ移動した場合における、視認性レベルの第1の上昇態様と、
前記第2の領域に表示されていた、前記車両の走行レーンに関しない表示オブジェクトが前記第1の領域へ移動した場合における、視認性レベルの第2の上昇態様と、を異ならせる、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、
取得される第1の情報に基づいて、前記第2の領域の位置を変更する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項10】
前記第1の情報は、前記車両のステアリング角度、前記車両のピッチング角度、前記車両の乗員の両目位置、前記車両の走行場所、の少なくとも1つの情報を含み、
前記制御部は、
前記ステアリング角度から前記車両の走行方向を検出し、走行方向と同じ方向に前記第2の領域の位置を変更する、
及び、
前記ピッチング角度から前記車両の上下方向の揺れを検出し、揺れの方向と逆の方向に前記第2の領域の位置を変更する、
及び、
両目位置が基準位置よりも高い場合には、前記第2の領域の位置を高く変更し、両目位置が基準位置よりも低い場合には、前記第2の領域の位置を低く変更する、
及び、
走行場所に対して予め設定された位置に、前記第2の領域の位置を変更する、
の少なくとも1つを実行する、
請求項9に記載の表示制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、
取得される第1の情報に基づいて、前記第2の領域の大きさを変更する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項12】
前記第1の情報は、前記車両のステアリング角度、前記車両のピッチング角度、前記車両の乗員の両目位置、前記車両の走行場所、の少なくとも1つの情報を含み、
前記制御部は、前記第1の情報に基づき、
ステアリング角度が大きい場合には、前記第2の領域を、基準サイズよりも大きくするように変更する、
及び、
ピッチング角度が大きい場合には、前記第2の領域を、基準サイズよりも大きくするように変更する、
及び、
乗員の両目位置が基準位置よりも高い又は低い場合には、前記第2の領域を、基準サイズよりも大きくするように変更する、
及び、
走行場所に対して予め設定された大きさに、前記第2の領域の大きさを変更する、
の少なくとも1つを実行する、
請求項11に記載の表示制御装置。
【請求項13】
画像を生成する画像生成部と、
前記画像を表示する表示部と、
第1乃至第12の何れか1項に記載の表示制御装置と、
を有する表示装置。
【請求項14】
表示オブジェクトの視認性レベルを制御する表示制御方法であって、
車両の乗員から見た前方の実空間における仮想的な表示領域内に、近方の実景に対応する箇所を含む第1の領域と、遠方の実景に対応する箇所を含む第2の領域と、を設定するステップと、
前記表示オブジェクトの視認性レベルに関して、
前記第1の領域に表示オブジェクトを表示する場合には、第1の視認性レベルとするステップと、
前記第2の領域に表示オブジェクトを表示する場合には、前記表示オブジェクトの透過率、彩度、明度、及び輝度の少なくとも1つを調整して、第1の視認性レベルよりも低い第2の視認性レベルに設定する低視認性処理を実施するステップと、
前記第2の領域に表示される表示オブジェクトを拡張して、その一部が前記第2の領域にも表示されるようにすることで、前記表示オブジェクトの認識性を向上させる認識性向上処理を実施するステップと、
を含む表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される表示制御装置、例えばヘッドアップディスプレイ(HUD)装置等の表示装置、及び表示制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の[0014]には、「表示制御手段は、表示対象物の位置が予め設定された表示設定領域を越えて変化する場合に、案内画像を暗くするか、或いは、案内画像を通常画像から通常画像よりも小さい簡易画像に変更する」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者によって、下記の(1)、(2)の課題が明らかとなった。
(1)車両の乗員は、HUD装置等の車載表示装置が表示する画像を、例えばウインドシールド(被投影部材)を介して視認することができる。但し、表示されている画像が、前方等の実景の視認性を低下させる場合があることは否めない。
(2)このとき、上記の特許文献1に記載される技術を用いて、例えば、表示画像の輝度を低下させることで、乗員による実景の視認が容易化される。但し、この場合は、表示画像の視認性が低下していることから、乗員による、その表示画像の認識性が低下する。
【0005】
画像の認識性が低下すると、乗員によるその表示画像の発見が遅れたり、あるいは、その表示画像の意味や内容の理解に時間がかかったりする場合が有り得る。
【0006】
特許文献1は、上記の課題については言及されておらず、その課題についての対応策についても開示がない。よって、現状の表示制御技術については、改善の余地がある。このような課題が、本発明者によって明らかとされた。
【0007】
本発明の目的の一つは、表示の視認性を低下させることで、車両の乗員による実景の視認を容易化し、一方、乗員によるその表示の認識性の低下も抑制することである。
【0008】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実行形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0010】
本発明の第1の態様において、表示制御装置は、
車両に搭載され、画像表示制御を行う表示制御装置であって、
表示オブジェクトの視認性レベル、及び表示態様を制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記車両の乗員から見た前方の実空間における仮想的な表示領域内に、近方の実景に対応する箇所を含む第1の領域と、遠方の実景に対応する箇所を含む第2の領域と、を設定し、
前記表示オブジェクトの視認性レベルに関して、
前記第1の領域に表示オブジェクトを表示する場合には、第1の視認性レベルとし、
前記第2の領域に表示オブジェクトを表示する場合には、前記第1の視認性レベルよりも低い第2の視認性レベルとする、表示オブジェクトの低視認性処理を実施し、
前記第2の領域に表示される表示オブジェクトを拡張して、その一部が前記第1の領域にも表示されるようにすることで、前記表示オブジェクトの認識性を向上させる認識性向上処理を実施する。
【0011】
第1の態様によれば、前方視界を妨げる可能性がある第2の領域における表示オブジェクトは視認性レベルが低下するため、前方視界を確保することができる。一方、その表示オブジェクトに対して認識性向上処理を実施して、その表示オブジェクトを第1の領域にまで拡張することで、第1の領域に位置する部分の視認性(誘目性:輝度等)が上昇する。これにより、乗員が、その表示オブジェクトを発見し易くなる。また、乗員は、その表示オブジェクトが提示する情報の意味や内容を理解し易くなる。
【0012】
第1の態様に従属する第2の態様において、
前記制御部は、
前記第2の領域に表示される表示オブジェクトであって、その表示オブジェクトが所定の
種類の表示オブジェクトであり、かつ、その表示オブジェクトを許容範囲内で拡張した場合に、その表示オブジェクトが前記第2の領域と前記第1の領域にまたがって表示され得る、という条件を満たす表示オブジェクトを、前記認識性向上処理の対象としてもよい。
【0013】
第2の態様では、認識性向上処理の対象となる表示オブジェクトの条件の一例が示される。
【0014】
第2の領域に表示される表示オブジェクトには、認識性向上処理に適さないものも含まれる。このような表示オブジェクトに、無理に認識性向上処理を実施して表示オブジェクトを拡張すると、そのことが乗員に、視覚上の違和感を生じさせる要因ともなり、好ましくない。
【0015】
よって例えば、認識性向上効果が期待できる表示オブジェクトに対して、認識性向上処理を実施するのが好ましい。
【0016】
そこで、表示オブジェクトが「所定の種類の表示オブジェクトである」こと、及び、その表示オブジェクトを「許容範囲内で拡張した場合に、その表示オブジェクトが第2の領域と第1の領域にまたがって表示され得ること」を、認識性向上処理を実施する条件としてもよい。
【0017】
ここで、「所定の種類の表示オブジェクト」としては、例えば、路面に重畳されるように表示される路面重畳表示をあげることができる。具体的には、路面に重畳されるように表示されるナビゲーション表示、例えば、車両の走行方向を示す矢印の図形や、車両を誘導する誘導表示等をあげることができる。
【0018】
これらの表示は、乗員(例えば運転者)から見て、手前(近方)側から奥(遠方)側へと延在する延在部分(好ましくは直線状の延在部分)を含むことが多い。その延在部分の、例えば乗員(例えば運転者)から見た手前側の端部等を許容範囲内の距離だけ、延在部分の延在方向に延長すると、その延長された部分の一部が、比較的容易に第1の領域内に進入し、その部分の視認性(誘目性)が向上し、そして、これを契機として、そのナビゲーション表示の全体の形状の把握が容易化される場合が想定され得る。
【0019】
また、ナビゲーション表示、特に、路面に重畳されるように表示されるナビゲーション用の矢印の図形等は、路面上に大きく表示されることもあり、その全体の形状の把握が容易であることが求められる。よって、認識性向上処理により、認識性を高めることは、本来の目的に沿う。これらの点を考慮すると、路面重畳表示としてのナビゲーション用表示は、認識性向上処理に適した種類の表示オブジェクトとなり得る。
【0020】
このように、条件を課し、無理のない範囲で認識性向上処理を実施することで、認識性向上処理が、かえって違和感を生じさせる原因等となることを防止できる。
【0021】
第1、又は第2の態様に従属する第3の態様において、
前記認識性向上処理の対象となる表示オブジェクトの少なくとも一部は、線遠近法、及び空気遠近法の少なくとも1つにより表現されており、
かつ、
前記認識性向上処理では、前記表示オブジェクトの、前記乗員から見て手前側に位置する部分の視認性レベルが上昇してもよい。
【0022】
第3の態様では、遠近法による表現を活用することで、認識性向上処理後の表示オブジェクトの全体の形状(全体の輪郭)の把握を容易化することができ、また、違和感が生じにくい表示を実現することもできる。
【0023】
遠近法には、線遠近法と空気遠近法とが含まれる。線遠近法は、近くにある物体は大きく描き、遠くにある物体を小さく描くことで遠近感を生じさせる表現手法である。具体的には、例えば平行な2本の線が、視認者から見て近方から遠方へと延在しているとき、近方側では2本の線の間隔が広く、遠方にいくほど狭くなるように描画することで、表示オブジェクトに遠近感を生じさせることができる。
【0024】
また、空気遠近法は、例えば遠くにある山と視認者の目との間には多くの空気が挟まれることから、遠くの山は淡く霞んで見え、近くの山は濃くはっきりと見えるという、大気に影響されて見え方が異なるという性質を利用して、濃淡(あるいは色調等)によって遠近感を生じさせる表現手法である。
【0025】
認識性向上処理が実施されると、表示オブジェクトの一部は、視認性レベルが低い第2の領域から視認性レベルが高い第1の領域へと拡張される。そして、その拡張された部分の視認性(例えば輝度)が第1の視認性レベルに上昇する。
【0026】
但し、1つの表示オブジェクトにおいて、その視認性が向上した箇所と、視認性が低いまま維持されている箇所とが分離されて認識されることは好ましくない。
【0027】
ここで、その表示オブジェクトにおいて、視認性が向上した箇所(例えば輝度が上昇して濃く見える箇所)が、車両の乗員から見て手前側(近方側)に位置し、視認性が低く維持されている箇所が奥側(遠方側)に位置している場合、その、1つの表示オブジェクト全体についての遠近感(例えば空気遠近法による遠近感)がより強化された形態となり、視認性が向上した箇所の誘目性が高いことを契機として、乗員は、遠近感が生じている、まとまりのある表示オブジェクトの全体を直感的に把握することができる。
【0028】
また、日常において見慣れた遠近感のある表示であるため、乗員は特に違和感を覚えることがない。
【0029】
このように、遠近感を利用することで、表示オブジェクトの一部における輝度等の上昇を契機として、遠近感のある、まとまりのある表示オブジェクトの全体を直感的に把握できるようになり、また、特に違和感が生じない。このようにして、認識性向上処理によって、特に問題を生じさせることなく、表示の認識性を向上することができる。
【0030】
第1乃至第3の何れか1つの態様に従属する第4の態様において、
前記制御部は、前記認識性向上処理を実施して、表示オブジェクトを前記第1の領域と前記第2の領域にまたがるように表示する場合に、前記第1の視認性レベルから前記第2の視認性レベルに至るまで、段階的に、又は連続的に視認性レベルを変化させてもよい。
【0031】
第4の態様では、認識性向上処理を実施する際、表示オブジェクトの視認性(例えば輝度)を、例えば、乗員から見て手前側(近方側)から奥側(遠方側)へと、連続的に変化させる(言い換えれば、グラデーション表示とする)、あるいは、段階的に輝度が変化していくようにし、第1の視認性から第2の視認性へと自然に濃淡等が変化する表現態様とすることで、乗員の違和感を効果的に軽減することができ、また、より自然で見易い表示を実現することができる。
また、本態様の手法は、表示オブジェクトに対して、空気遠近法による自然な遠近感を生じさせるのにも役立つ。
【0032】
第1乃至第4の何れか1つの態様に従属する第5の態様において、
前記制御部は、
前記第2の領域内に、第3の領域を設定し、
前記第3の領域に表示オブジェクトを表示する場合は、前記第1の視認性、又は前記第1の視認性に近い、第1の視認性に準じる視認性とし、
前記第2の領域における、前記第3の領域以外の領域に表示オブジェクトを表示する場合は、前記第2の視認性としてもよい。
【0033】
第5の態様では、第2の領域内に第3の領域を設定することができる。この第3の領域では、第1の視認性、又は第1の視認性に近い、第1の視認性に準じる視認性を採用することができる。
【0034】
設定される領域の数を増やすことで、視認性レベルをより細かく制御できる。例えば、運転状況等に適応させて、視認性レベルを適応的に設定することも可能となる。
【0035】
第1乃至第5の何れか1つの態様に従属する第6の態様において、
前記制御部は、
表示オブジェクトに、表示の重要性を示す重要性レベルを付与し、
第1の表示オブジェクトに認識性向上処理を実施すると、重要性レベルが前記第1の表示オブジェクトよりも低い第2の表示オブジェクトとの間で重複が生じる場合は、前記第2の表示オブジェクトの大きさ、位置の少なくとも一方を変更することで、前記第1の表示オブジェクトと前記第2の表示オブジェクトの重複を解消する第1の重複解消処理を実施し、
前記第1の表示オブジェクトに認識性向上処理を実施すると、重要性レベルが前記第1の表示オブジェクトよりも高い第3の表示オブジェクトとの間で重複が生じる場合は、前記第1の表示オブジェクトに対する認識性向上処理を取り消すことで、前記第1の表示オブジェクトと前記第3の表示オブジェクトとの重複を解消する第2の重複解消処理を実施してもよい。
【0036】
第6の態様では、認識性向上処理に伴って表示オブジェクトが第1、第2の各領域にまたがって表示されたとき、第1の領域において他の表示オブジェクトとの重複が生じる場合には、その重複を解消するために、第1又は第2の重複解消処理が実施される。
【0037】
重複解消処理では、制御部は、各表示オブジェクトの重要性レベルを比較し、重要性レベルの高い方の表示オブジェクトの表示を優先させる。重要性レベルは、予め設定しておいてもよく、また、重複解消処理を実施するときに、例えば各種の状況を考慮し、その都度、設定してもよい。
【0038】
認識性向上処理の対象である第1の表示オブジェクトの方が、重要性レベルが高い場合は、第1の表示オブジェクトの表示が優先される。したがって、重要性が低い第2の表示オブジェクト(より具体的には、第1の領域に表示されている、重要性レベルが比較的低い第2の表示オブジェクト)について、大きさ、及び位置の少なくとも一方が変更され、これによって、表示オブジェクト間の重複が解消される(これを第1の重複解消処理と称する)。
【0039】
一方、第1の領域において表示されている第3の表示オブジェクトの方が、重要性レベルが高い場合は、第3の表示オブジェクトの表示が優先される。この場合は、第1の表示オブジェクトに対する認識性向上処理が取り消され、これによって、表示オブジェク間の重複が解消される(これを第2の重複解消処理と称する)。
【0040】
重複解消処理を実施することで、表示オブジェクト間で重複が生じて、乗員に、正確な情報を提示できない事態が確実に防止される。また、重要性レベルの高い表示オブジェクトの表示が優先されることから、車両の運行に関してより重要度の高い情報を、優先して乗員に提示することができる。
【0041】
第1乃至第6の何れか1つの態様に従属する第7の態様において、
前記制御部は、
前記第2の領域に表示されていた表示オブジェクトが、前記第1の領域へ移動した際の視認性レベルを上昇させる変化速度を、前記第1の領域に表示されていた表示オブジェクトが、前記第2の領域へ移動した際の視認性レベルを低下させる変化速度より緩やかにしてもよい。
【0042】
第7の態様では、表示オブジェクトの移動に伴って、視認性レベルの変更が必要となった場合を想定する。
【0043】
表示オブジェクトが、第2の領域内に入る場合には、実景の視認を妨げないように、表示オブジェクト(表示画像)の視認性レベルを素早く低下させることが好ましい。
【0044】
一方、表示オブジェクトが、第2の領域から外に出る場合には、視認レベルを即座に上昇させると、例えば、乗員が表示オブジェクトを注視してしまい、前方不注意の一因となる場合も想定される。よって、視認レベルを上昇させる変化速度を緩やかとする。これによって、運転者等が、必要以上に表示オブジェクトを注視してしまうといった事態が生じない。
【0045】
第1乃至第7の何れか1つの態様に従属する第8の態様において、
前記制御部は、
前記第2の領域に表示されていた、前記車両の走行レーンに関する表示オブジェクトが前記第1の領域へ移動した場合における、視認性レベルの第1の上昇態様と、
前記第2の領域に表示されていた、前記車両の走行レーンに関しない表示オブジェクトが前記第1の領域へ移動した場合における、視認性レベルの第2の上昇態様と、を異ならせてもよい。
【0046】
第8の態様では、第2の領域に表示されていた表示オブジェクトが第1の領域へと移動する場合において、その表示オブジェクトが、車両の走行レーンに関係するか否かに応じて、視認性レベルの上昇態様(例えば輝度等の上昇速度、輝度等の時間に対する上昇特性(時間に対する変化率等の設定)等を含む)を異ならせる。
【0047】
表示オブジェクトが、車両の走行レーンに関する表示(例えば、車両の車線変更を促すような矢印の表示)である場合、乗員による表示オブジェクトの発見や理解が即座に行われないと、例えば、事故発生に繋がる可能性も否定できない。この点を考慮すると、車両の走行レーンに関する表示オブジェクトは、第2の領域から外に出た際における、視認性レベルの上昇の変化速度等(変化態様)を、走行レーンに関係しない重要性の低い表示についての変化速度等(変化態様)と比べて速めることで、乗員が表示オブジェクトの発見や理解を行いやすくなり、迅速な認識が可能となる。
【0048】
第1乃至第8の何れか1つの態様に従属する第9の態様において、
前記制御部は、
取得される第1の情報に基づいて、前記第2の領域の位置を変更してもよい。
【0049】
第9の態様では、第2の領域の位置を可変に制御する。例えば、車両状態、乗員状態、走行環境等により、乗員が注意を払うべき領域は異なる。この点を考慮して、車両状態、乗員状態、走行環境等に応じて、第2の領域の位置を変化させることで、状況に応じて、適切な位置に第2の領域を設定することができる。
【0050】
第9の態様に従属する第10の態様において、
前記第1の情報は、前記車両のステアリング角度、前記車両のピッチング角度、前記車両の乗員の両目位置、前記車両の走行場所、の少なくとも1つの情報を含み、
前記制御部は、
前記ステアリング角度から前記車両の走行方向を検出し、走行方向と同じ方向に前記第2の領域の位置を変更する、
及び、
前記ピッチング角度から前記車両の上下方向の揺れを検出し、揺れの方向と逆の方向に前記第2の領域の位置を変更する、
及び、
乗員の両目位置が基準位置よりも高い場合には、前記第2の領域の位置を高く変更し、両目位置が基準位置よりも低い場合には、前記第2の領域の位置を低く変更する、
及び、
走行場所に対して予め設定された位置に、前記第2の領域の位置を変更する、
の少なくとも1つを実行してもよい。
【0051】
第10の態様では、ステアリング角度、ピッチング角度、乗員の両目位置、走行場所、の少なくとも1つの情報に基づいて、車両状態、乗員状態、走行環境等を検出し、その検出結果に基づいて、第2の領域の位置を変更することができる。
【0052】
例えば、乗員がステアリングを操舵している場合、乗員は走行方向に対して注意を払うことが多いため、ステアリングセンサの検出信号から車両の走行方向を検出し、第2の領域の位置を、走行方向と同じ方向に移動させてもよい。
【0053】
また、例えば、ピッチング角度の情報に基づいて、車両の上下方向の揺れを検出し、揺れの方向と逆の方向に第2の領域の位置を変更することで、第2の領域内において表示されていた表示オブジェクトが、その揺れに起因して第2の領域の外に出てしまうことが抑制される。
【0054】
また、乗員の両目位置(視点高さ位置)に応じて第2の領域の位置(高さ位置)を調整することで、乗員から見て適切な位置に、第2の領域を位置させることができる。
【0055】
また、車両の走行場所に応じて、乗員が注意を払う方向等が異なる場合がある。よって、走行場所に応じて、適応的に第2の領域の位置を調整することで、表示オブジェクトを第2の領域の適切な位置に安定的に表示できる。
【0056】
第1乃至第10の態様に従属する第11の態様において、
前記制御部は、
取得される第1の情報に基づいて、前記第2の領域の大きさを変更してもよい。
【0057】
第11の態様では、第2の領域の大きさを可変に制御する。例えば、車両状態、乗員状態、走行環境等により、乗員が注意を払うべき領域は異なる。この点を考慮して、車両状態、乗員状態、走行環境等に応じて第2の領域の大きさを変化させることで、状況ごとに適切な制約領域を設定することができる。
【0058】
第11の態様に従属する第12の態様において、
前記第1の情報は、前記車両のステアリング角度、前記車両のピッチング角度、前記車両の乗員の両目位置、前記車両の走行場所、の少なくとも1つの情報を含み、
前記制御部は、前記第1の情報に基づき、
ステアリング角度が大きい場合には、前記第2の領域を、基準サイズよりも大きくするように変更する、
及び、
ピッチング角度が大きい場合には、前記第2の領域を、基準サイズよりも大きくするように変更する、
及び、
両目位置が基準位置よりも高い又は低い場合には、前記第2の領域を、基準サイズよりも大きくするように変更する、
及び、
走行場所に対して予め設定された大きさに、前記第2の領域の大きさを変更する、
の少なくとも1つを実行してもよい。
【0059】
第12の態様では、上記の第10の態様(第2の領域の位置を、センサ情報等に基づいて変更する態様)と同様の効果を得ることができる。
【0060】
なお、「走行場所に対して予め設定された大きさに、第2の領域の大きさを変更する」場合の一例としては、下記の場合が想定され得る。例えば、市街地を走行する場合、乗員は高速道路等よりも広い範囲に注意を払うことが多いため、例えばGPSレシーバの検出信号から、車両が市街地を走行していることを検出した場合、第2の領域を大きくするように設定する。これにより、拡大された第2の領域の適切な位置に、表示オブジェクトを表示(配置)することが可能である。
【0061】
本発明の第13の態様において、表示装置は、
画像を生成する画像生成部と、
前記画像を表示する表示部と、
第1乃至第12の何れか1つの態様の表示制御装置と、
を有する。
【0062】
第13の態様によれば、実景の視認の妨げとなることを抑制して違和感を軽減しつつ、乗員に、表示の発見や内容の理解がし易い画像表示を実現することができる。よって、例えば、実用性に富み、高機能であり、安全性にも十分に配慮された、使い勝手のよいディスプレイ装置(例えば、HUD装置等)が実現される。
【0063】
第14の態様において、表示制御方法は、
表示オブジェクトの視認性レベルを制御する表示制御方法であって、
車両の乗員から見た前方の実空間における仮想的な表示領域内に、近方の実景に対応する箇所を含む第1の領域と、遠方の実景に対応する箇所を含む第2の領域と、を設定するステップと、
前記表示オブジェクトの視認性レベルに関して、
前記第1の領域に表示オブジェクトを表示する場合には、第1の視認性レベルとするステップと、
前記第2の領域に表示オブジェクトを表示する場合には、前記表示オブジェクトの透過率、彩度、明度、及び輝度の少なくとも1つを調整して、第1の視認性レベルよりも低い第2の視認性レベルに設定する低視認性処理を実施するステップと、
前記第2の領域に表示される表示オブジェクトを拡張して、その一部が前記第2の領域にも表示されるようにすることで、前記表示オブジェクトの認識性を向上させる認識性向上処理を実施するステップと、
を含んでもよい。
【0064】
第14の態様によれば、前方視界を妨げる可能性がある第2の領域における表示オブジェクトは視認性レベルが低下するため、前方視界を確保することができる。一方、その表示オブジェクトに認識性向上処理を施して、その表示オブジェクトを、視認性レベルが低下されない(あるいは、低下がほとんど問題とならない)第1の領域にまで拡張することで、表示の発見や内容の理解のし易さを確保することができる。
【0065】
この表示制御方法は、HUD装置による表示制御の他、液晶ディスプレイ等の表示器の表示制御、あるいは、プロジェクタ等の投影表示装置にも適用可能である。
【0066】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】
図1は、HUD装置を含む車載表示システムの構成の一例、及びHUD装置における虚像表示面の形状の例を示す図である。
【
図2】
図2は、表示領域内に設定された第1~第3の各領域に表示される表示オブジェクトの例、及び、表示オブジェクトに対する認識性向上処理の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、低視認性処理の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、認識性向上処理の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、重複解消処理の一例(第1の重複解消処理)を示す図である。
【
図6】
図6は、重複解消処理の他の例(第2の重複解消処理)を示す図である。
【
図7】
図7は、車両の運行中における表示例(応用例)を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の領域の位置を可変に制御する例、及び、第2の領域の大きさを可変に制御する例を示す図である。
【
図9】
図9は、車載表示システムの構成の一例、及び、制御部の構成の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、制御部(表示制御装置)の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下に説明する最良の実行形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実行形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0069】
以下に説明する最良の実行形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実行形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0070】
(第1の実施形態)
図1を参照する。
図1は、HUD装置を含む車載表示システムの構成の一例、及びHUD装置における虚像表示面の形状の例を示す図である。
【0071】
なお、
図1において、車両1の幅方向(左右方向、あるいは横方向)をX方向と記載している。また、左右方向に直交すると共に、地面又は地面に相当する面(ここでは路面6とする)に直交する線分に沿う方向(上下方向、あるいは高さ方向)をY方向とする。また、左右方向及び上下方向の各々に直交する線分に沿う方向(車両1の前進及び後退の向きを示す方向、前後方向)をZ方向とする。この点は、他の図面においても同様である。
【0072】
表示装置は、ここでは車両1に搭載される車載表示装置である。
図1の車載表示装置は、表示器装置(表示器制御部107及び液晶パネル等の表示器108を含む)、及び、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置100(制御部140、機器本体120を含む)を有する。
【0073】
HUD装置100は、例えばダッシュボード41内に設置されている。機器本体120は、液晶パネル等の表示器150と、表示面164を備えるスクリーン(表示部)160と、光の反射面179を備える曲面ミラー(凹面鏡等)170と、を有する。曲面ミラー(凹面鏡等)170は、スクリーン160からの光(表示光)を反射し、表示光Kを、車両1に備わるウインドシールド(被投影部材)2に投影(投射)する。
【0074】
なお、曲面ミラー等の光学部品を省いて、表示器150に表示される画像の表示光を直接的にウインドシールド(被投影部材)2に投影(投射)する直接投影型のHUD装置であってもよい。
【0075】
ウインドシールド(被投影部材)2では表示光Kの一部が反射されて乗員(運転者等、視認者という場合もある)の視点(目)Aに入射され、各入射光に対応する見かけ上の光E1~E3が、視認者の前方の結像点に結像することで、虚像表示面9上に虚像(画像)が表示される。
【0076】
なお、虚像表示面9は、スクリーン160における表示面164に対応して、乗員(運転者等の視認者)の前方の実空間に設定される仮想的な(見かけ上の)面である。
【0077】
また、虚像表示面9としては、例えば、路面6に垂直な立面a、路面6に対して傾斜した傾斜面b及びc、路面6に重畳される路面重畳面d、乗員(視認者)に近い側が立面(疑似立面を含む)であり、遠い側が傾斜面となっている面e等がある。立面aを除く他の面を用いた表示では、虚像表示面上での表示位置に応じて虚像の表示距離が異なり、よって3D表示が可能である。
【0078】
なお、上記のHUD装置の構成は一例であり、本発明は、レンチキュラレンズ等を用いた3DHUD装置や、視差式3DHUD装置等、種々のHUD装置にも適用できる。HUD装置の種類は問わない。
【0079】
なお、HUD装置によって運転者に提示されている情報を、運転者以外の乗員(助手席に着座しているパッセンジャー等)も見ることができるようにするために、CID等の表示器装置108に、HUD装置によって表示される画像と同じものを表示する場合が有り得る。この場合、例えば、車両1に取り付けたカメラ(不図示)で前方(又は後方)の画像を撮影し、その撮影された画像にAR画像を重畳表示するといった手法が考えられる。この点を考慮すると、表示装置(液晶パネル等の表示器108)を用いてAR表示を行う際に、本発明を適用可能である場合があり得る。
【0080】
次に、
図2を参照する。
図2は、表示領域内に設定された第1、第2の各領域に表示される表示オブジェクトの例、及び、表示オブジェクトに対する認識性向上処理の一例を示す図である。
図2において、
図1と共通する部分には同じ参照符号が付されている。
【0081】
図2のA-1において、乗員である運転者(視認者)5の前方には、虚像表示面(例えば、
図1の虚像表示面a)上にHUD表示領域(単に、表示領域と称する場合もある)202が設けられている。
【0082】
また、HUD表示領域(表示領域)202は、第1の領域Z1と、第2の領域Z2に区画されている。第2の領域Z2は、破線の矩形204の内部の領域である。第1の領域Z1は、表示領域202における、第1の領域Z1以外の領域である。
【0083】
破線の矩形204は、第1の領域Z1と第2の領域Z2との境界(境界線)を示している。
【0084】
第1の領域Z1は、乗員(運転者等)5から見て、近方(より近く:手前側)の実景(前景)に対応する箇所を含む領域であり、第2の領域Z2は、遠方(より遠く:奥側)の実景(前景)に対応する箇所を含む領域である。
【0085】
なお、
図2では、第1、第2の領域Z1、Z2は、矩形の領域であるが、これに限定されるものではない。
【0086】
第1、第2の領域Z1、Z2を設定することにより、表示オブジェクトOBが、第1の領域Z1内にあるか、第2の領域Z2内にあるかに応じて、視認性レベルを変更することができる。視認性レベルの制御は、例えば、表示オブジェクトの透過率、彩度、明度、及び輝度の少なくとも1つを調整することで実現可能である。
【0087】
図2では、表示オブジェクトOB1は第1の領域Z1に位置する。また、表示オブジェクトOB0、OB2、OB3は、第2の領域Z2に位置する。ここで、表示オブジェクトOB2、OB3は、「低視認性処理(あるいは視認性低下処理)」の対象となり、表示オブジェクトOB0は、「低視認性処理」及び「認識性向上処理」の対象となる。
【0088】
また、表示オブジェクトOB4は、第2の領域Z2内において適宜、設定され得る第3の領域Z3に位置する。第3の領域Z3では、第1の視認性、又は第1の視認性に近い、第1の視認性に準じる視認性を採用することができる。
【0089】
第1の領域Z1は、近方の実景に対応する部分を含む。第2の領域Z2は、遠方の実景に対応する部分を含む。第2の領域Z2においては、乗員5の良好な見通し(遠くまで一目で見ること)を確保する必要があり、あるいは、表示オブジェクトが実景の視認を妨げることで違和感や煩わしさが生じることを抑制する必要がある。よって、制御部140は、第2の領域Z2に表示される表示オブジェクトOB0、OB2、OB3について、「低視認性処理(視認性低下処理)」を実施することができる。
【0090】
「低視認性処理」は、例えば、基準となる視認性レベル(第1の視認性レベルと称する場合がある)よりも低い視認性レベル(第2の視認性レベルと称する場合がある)を設定する処理(あるいは、視認性を低く変更する処理)である。
【0091】
また、上述したように、制御部140は、第2の領域Z2内に、適宜、第3の領域Z3を設定してもよい。この第3の領域Z3では、第1の視認性、又は第1の視認性に近い、第1の視認性に準じる視認性を採用することができる。この場合、設定される領域の数を増やすことで、視認性レベルをより細かく制御できる。例えば、運転状況等に適応させて、視認性レベルを適応的に設定することも可能となる。なお、第3の領域Z3を用いた具体的な表示例については、
図7にて説明する。
【0092】
上述のとおり、表示オブジェクトOB0は、「低視認性処理」及び「認識性向上処理」の対象となる。低視認性処理によって、表示オブジェクトOB0の視認性(例えば輝度)を第1の視認性レベルから、視認性レベルがより低い第2の視認性レベルに変更すると、表示オブジェクトOB0の背後にある実景の視認性が改善される。
但し、その一方、乗員(運転者等)が表示オブジェクトOB0を視認しにくくなり、表示オブジェクトOB0の全体の発見が遅れたり、表示オブジェクトOB0が提示する情報の意味の理解、把握に時間がかかったりするという場合もある。
【0093】
そこで、表示オブジェクトOB0について「認識性向上処理」を実施し、表示オブジェクトOB0の認識性を向上させる。
図2のA-1では、第2の領域Z2に表示されている表示オブジェクトOB0を、下方向(-Y方向)に拡張している。この拡張によって、拡張後の表示オブジェクトOB0’の大きさ(面積)は、拡張前の表示オブジェクトOB0よりも増大する。
【0094】
これにより、表示オブジェクトOB0’の一部は、第1の領域Z1に位置する。言い換えれば、表示オブジェクトOB0’は、第1の領域Z1に位置する部分(第1の部分とする)と、第2の領域Z2に位置する部分(第2の部分とする)とを含む。
【0095】
元の表示オブジェクトOB0が下方向に拡張された結果、拡張後の表示オブジェクトOB0’の下側の部分(下側の端部近傍)は第1の領域Z2に進入している。そして、その進入した部分の視認性レベルが、低い第2のレベルから高い第1のレベルへと上昇する。言い換えれば、表示オブジェクトOB0’の誘目性が部分的に上昇する。
【0096】
この部分的な視認性レベル(部分的な誘目性)の向上が契機となって、拡張後の表示オブジェクトOB0’の全体の認識性が向上し、例えば、全体の形状の把握が容易化されるといった視覚的効果が得られる。
【0097】
ここで、認識性向上処理の対象となり得る表示オブジェクトの例について説明する。第2の領域Z2に表示される表示オブジェクトには、認識性向上処理に適さないものも含まれる。このような表示オブジェクトに、無理に認識性向上処理を実施して表示オブジェクトを拡張すると、そのことが乗員に、視覚上の違和感を生じさせる要因ともなり、好ましくない。
【0098】
よって例えば、認識性向上効果が期待できる表示オブジェクトに対して、認識性向上処理を実施するのが好ましい。
【0099】
例えば、表示オブジェクトが「所定の種類の表示オブジェクトである」こと、及び、その表示オブジェクトを「許容範囲内で拡張した場合に、その表示オブジェクトが第2の領域と第1の領域にまたがって表示され得ること」を、認識性向上処理を実施する条件としてもよい。
【0100】
ここで、「所定の種類の表示オブジェクト」としては、例えば、路面に重畳されるように表示される路面重畳表示をあげることができる。具体的には、路面に重畳されるように表示されるナビゲーション表示、例えば、車両の走行方向を示す矢印の図形や、車両を誘導する誘導表示等をあげることができる。
【0101】
これらの表示は、乗員(例えば運転者)から見て、手前側から奥側へと延在する延在部分(好ましくは直線状の延在部分)を含むことが多い。その延在部分の、例えば乗員(例えば運転者)から見た手前側の端部等を許容範囲内の距離だけ、延在部分の延在方向に延長すると、その延長された部分の一部が、比較的容易に第1の領域内に進入し、その部分の視認性が向上し、そして、これを契機として、そのナビゲーション表示の全体の形状の把握が容易化される場合が想定され得る。
【0102】
一方、
図2のA-1において、第2の領域Z2の中央付近に表示されている表示オブジェクトOB3は、その一部を、第1の領域Z1にまで延長することは容易ではないため、認識性向上処理の対象としては好ましくないと判断し得る。
【0103】
このように、条件を課し、無理のない範囲で認識性向上処理を実施することで、認識性向上処理が、かえって違和感を生じさせる原因等となることを防止できる。
【0104】
また、表示オブジェクトOB0’が遠近法により表現されている場合は、上記の効果が効率的に発揮されると共に、部分的な視認性レベルの向上による違和感が軽減される。但し、遠近法の活用は、好ましい実施例であって、これに限定されるものではない。遠近法を活用した例については、
図2のA-2、A-3を用いて説明する。
【0105】
図2のA-2、A-3には、認識性向上処理の好ましい具体例が示されている。
図2のA-2において、車両1は、直線状の道路を走行している。第2の領域Z2において、車両1の進行方向を示す矢印の図形ARが、路面6に重畳されるように表示されている。この矢印の図形ARが、
図2のA-1における表示オブジェクトOB0に相当する。この矢印の図形ARの視認性レベルは、第2の視認性レベルであり、輝度等が低く抑えられている。
【0106】
図2のA-2において、矢印の図形ARは、先端の矢印部分と、運転者5から見て、その先端の矢印部分よりも手前側にある基端部とを含む。その基端部は、乗員(運転者5)から見て、手前側から奥側へと延在する延在部分(直線状の延在部分)であり、そして、その基端部の、運転者5から見た手前側の端部と、第1及び第2の領域Z1、Z2間の境界204との距離はLである。
【0107】
また、その距離Lの大小を判定する閾値をL0とし、また、表示オブジェクトを拡張する場合の許容範囲(拡張可能な最大の距離)をL1とすると、L<L0<L1の関係が成立する。
【0108】
L<L0であることから、制御部140は、矢印の図形ARは、その端部が、第1及び第2の領域Z1、Z2間の境界204の近くに位置していると判定する。
言い換えれば、矢印の図形ARの端部を、例えば、拡張可能な最大の距離L1だけ、その基端部の延在方向に沿って延長すると、その延長された部分が第1の領域Z1に進入可能と判定する。
また、矢印の図形ARは、路面6に重畳されるナビゲーション用の表示であり、認識性向上処理の効果が期待される種類の表示オブジェクトである。
【0109】
そこで、制御部140は、矢印の図形ARについて、認識性向上処理を施すことを決定する。
【0110】
図2のA-3は、認識性向上処理が施された後の矢印の図形AR’を示している。基端部の一部が、第1の領域Z1に位置しており、その部分の視認性レベルが第1の視認性レベルとなり、輝度等が上昇し、見易くなっている。
【0111】
但し、矢印の図形ARは、遠近法(線遠近法、空気遠近法を含む)により表現されているため、その輝度等が上昇した箇所のみが見易くなっているのではなく、部分的な輝度等が上昇したことを契機として、その矢印の図形の遠近感がより強調され、遠近感が生じている矢印の図形の全体が一つのまとまりのある形状として直感的に認識され得る。
【0112】
また、その部分的な輝度等の上昇は、遠近法による遠近感を強調するように働くため、輝度等が上昇した箇所と、輝度等が低いまま維持されている箇所とが視覚的に分断されずに、遠近感のある一つのまとまりのある一つの図形として矢印の図形AR’が認識され得る。よって、視覚的な違和感も軽減される。
【0113】
このように、
図2のA-3に示されるように、認識性向上処理の対象となる表示オブジェクトの少なくとも一部は、線遠近法、及び空気遠近法の少なくとも1つにより表現されるのが好ましく、かつ、認識性向上処理では、表示オブジェクトの、乗員から見て手前側に位置する部分の視認性レベルが上昇するのが好ましい。これによって、乗員から見て、手前側が濃く見え、奥側が淡く見えるため、空気遠近法による遠近感が強調され、上記の視覚的効果を得ることが容易化される。
【0114】
なお、遠近法には、線遠近法と空気遠近法とが含まれる。線遠近法は、近くにある物体は大きく描き、遠くにある物体を小さく描くことで遠近感を生じさせる表現手法である。具体的には、例えば平行な2本の線が、視認者から見て近方から遠方へと延在しているとき、近方側では2本の線の間隔が広く、遠方にいくほど狭くなるように描画することで、表示オブジェクトに遠近感を生じさせることができる。
【0115】
また、空気遠近法は、例えば遠くにある山と視認者の目との間には多くの空気が挟まれることから、遠くの山は淡く霞んで見え、近くの山は濃くはっきりと見えるという、大気に影響されて見え方が異なるという性質を利用して、濃淡(あるいは色調等)によって遠近感を生じさせる表現手法である。
【0116】
上述したように、認識性向上処理が実施されると、表示オブジェクトの一部は、視認性レベルが低い第2の領域から視認性レベルが高い第1の領域へと拡張される。そして、その拡張された部分の視認性(例えば輝度)が第1の視認性レベルに上昇する。
【0117】
但し、1つの表示オブジェクトにおいて、その視認性が向上した箇所と、視認性が低いまま維持されている箇所とが分離されて認識されると、その表示オブジェクトの全体の認識性は、それほど向上しないと考えられる。
【0118】
ここで、その表示オブジェクトにおいて、視認性が向上した箇所(例えば輝度が上昇して濃く見える箇所)が、車両の乗員から見て手前側(近方側)に位置し、視認性が低く維持されている箇所が奥側(遠方側)に位置している場合、その、1つの表示オブジェクト全体についての遠近感がより強化された形態となり、視認性が向上した箇所の誘目性が高いことを契機として、乗員は、遠近感が生じている、まとまりのある表示オブジェクトの全体を直感的に把握することができる。
【0119】
また、日常において見慣れた遠近感のある表示であるため、乗員は特に違和感を覚えることがない。
【0120】
このように、遠近感を利用することで、表示オブジェクトの一部における輝度等の上昇を契機として、遠近感のある、まとまりのある表示オブジェクトの全体を直感的に把握できるようになり、また、特に違和感が生じない。このようにして、認識性向上処理によって、特に問題を生じさせることなく、所望の効果を得ることが可能である。
【0121】
次に、表示オブジェクトが移動する場合の表示処理について説明する。
図2のA-1に戻って説明を続ける。
図2のA-1において、矢印AR1で示すように、第2の領域Z2に表示されていた表示オブジェクトOB2が、第1の領域Z1における表示オブジェクトOB1の位置に移動する場合もあり得る。
【0122】
また、矢印AR2で示すように、第1の領域Z1に表示されていた表示オブジェクトOB1が、第2の領域Z2における表示オブジェクトOB2の位置に移動する場合もあり得る。これらの場合には、移動した表示オブジェクトに対する視認性の変更が必要であるが、その視認性の変化の速度等を一律とせず、矢印AR1の方向の移動と、矢印AR2の方向の移動とで、差を設けるのが好ましい場合もあり得る。
【0123】
例えば、制御部140は、第2の領域Z2に表示されていた表示オブジェクトOB2が、第1の領域Z1へ移動した際(言い換えれば、矢印AR1で示される移動の際)の視認性レベルを上昇させる変化速度を、第1の領域Z1に表示されていた表示オブジェクトOB1が、第2の領域Z2へ移動した際(言い換えれば、矢印AR2で示される移動の際)の視認性レベルを低下させる変化速度より緩やかにしてもよい。
【0124】
表示オブジェクトが、第2の領域Z2内に入る場合には、実景の視認を妨げないように、表示オブジェクト(表示画像)の視認性レベルを素早く低下させることが好ましい。
【0125】
一方、表示オブジェクトが、第2の領域から外に出る場合には、視認レベルを即座に上昇させると、例えば、乗員が表示オブジェクトを注視してしまい、前方不注意の一因となる場合も想定される。よって、視認レベルを上昇させる変化速度を緩やかとする。これによって、運転者等が、必要以上に表示オブジェクトを注視してしまうといった事態を抑制することができる。
【0126】
また、第2の領域Z2における表示オブジェクトOB2が、第1の領域Z1における表示オブジェクトOB1の位置に移動する(矢印AR1の方向に移動する)場合であっても、例えば、表示オブジェクトOB2が、例えば運転状況等に関する重要性レベルの高い表示(例えば走行レーンに関する表示)であるか否かによって、視認性の変化特性(時間に対する変化率等を示す特性線の形状等)を、適宜、適切に設定するのが好ましい場合もあり得る。
【0127】
例えば、制御部140は、第2の領域Z2に表示されていた、車両1の走行レーンに関する表示オブジェクトOB2が第1の領域Z1へ移動した場合における、視認性レベルの第1の上昇態様と、第2の領域Z2に表示されていた、車両1の走行レーンに関しない表示オブジェクトOB2が第1の領域Z1へ移動した場合における、視認性レベルの第2の上昇態様と、を異ならせてもよい。
【0128】
言い換えれば、第2の領域Z2に表示されていた表示オブジェクトが第1の領域Z1へと移動する場合において、その表示オブジェクトが、車両の走行レーンに関係するか否かに応じて、視認性レベルの上昇態様(例えば輝度等の上昇速度、輝度等の時間に対する上昇特性(時間に対する変化率等の設定)等を含む)を異ならせてもよい。
【0129】
表示オブジェクトが、車両の走行レーンに関する表示(例えば、車両の車線変更を促すような矢印の表示)である場合、乗員による表示オブジェクトの発見や理解が即座に行われないと、例えば、事故発生に繋がる可能性も否定できない。この点を考慮すると、車両の走行レーンに関する表示オブジェクトは、第2の領域から外に出た際における、視認性レベルの上昇の変化速度等(変化態様)を、走行レーンに関係しない重要性の低い表示についての変化速度等(変化態様)と比べて速めることで、乗員が表示オブジェクトの発見や理解を行いやすくなり、迅速な認識が可能となる。
【0130】
次に、
図3を参照する。
図3は、低視認性処理の一例を示す図である。
図3において、
図2と共通する部分には同じ符号を付している。
【0131】
図3のA-1では、車両1は、時速50km/hで、道路を直進している。第1の領域Z1において、車速表示(「50km/h」という文字画像)SPが表示されている。
【0132】
図3のA-2では、第2の領域Z2において、左折を促す、ナビゲーション画像としての矢印の図形301が表示される。第2の領域Z2内での表示であるため、視認性レベルは、第2の視認性レベルであり、輝度等は低く設定されている。
【0133】
図3のA-2では、矢印の図形(矢印の画像)301の背後に、障害物(箱状の落下物等)303が存在している。この障害物303は、矢印の図形301に部分的に重複するように存在している。
【0134】
しかし、矢印の図形301には低視認性処理が施されていることから、乗員(ここでは運転者)5は、その障害物303の存在を容易に発見することができる。
【0135】
ここで、仮に、
図3のA-3のように、低視認性処理が実施されないと、矢印の図形(矢印の画像)301が、背後の落下物を隠すことになり、落下物の発見が遅れる場合等が想定される。
【0136】
このように、表示オブジェクトの視認性を低下させることで、車両の乗員による実景の視認を容易化することができる。
【0137】
次に、
図4を参照する。
図4は、認識性向上処理の一例を示す図である。
図4のA-1は、先に説明した
図3のA-2における障害物303を除去したものであり、表示されている図形(矢印の図形301、車速表示SP)は、
図3のA-2と同じである。
【0138】
ナビゲーション表示としての矢印の図形301は、低視認性処理によって、視認性レベルが低下しているため、やや見づらいのは否めない。
【0139】
また、
図4のA-1における矢印の図形301は、
図2のA-2で説明した認識性向上処理の条件を満たすため、認識性向上処理の対象となり得る。
【0140】
図4のA-2では、矢印の図形301が下側に拡張されている。具体的には、矢印の図形301の直線状の基端部が、その基端部の延在方向(Y方向)に沿って下側へと延長され、この結果、矢印の図形301の基端部の一部が、第2の領域Z2内に進入している。このため、矢印の図形301の基端部の、第2の領域Z2内に位置する部分の輝度等が上昇して第1の視認性レベルとなる。
【0141】
この部分的な視認性レベル(誘目性レベル)の上昇が契機となり、矢印の図形301の全体の認識性が向上する。また、
図4のA-2に示される矢印の図形301は、先端部における幅が狭く描画されており、全体として遠近感が生じるように遠近法で描画されている。よって、先に説明したように、空気遠近法による遠近感が強調されることで、遠近感が生じている、まとまりのある全体の画像の輪郭等を把握し易くなり、乗員5は、矢印の図形301が提示する情報(左折を促す情報)の意味を素早く認識できる。
【0142】
但し、
図4のA-2では、矢印の図形301の第1の領域Z1に位置する部分は第1の視認性レベルであり、第2の領域Z2に位置する部分は第2の視認性レベルであり、各部分の境界付近では、視認性レベルがステップ的に変化するため、この部分で、視覚的な違和感が生じる場合がないとはいえない。
【0143】
そこで、
図4のA-3では、表示オブジェクトとしての矢印の図形301を、第1の領域Z1と第2の領域Z2にまたがるように表示する場合において、第1の視認性レベルから第2の視認性レベルに至るまで、段階的に、又は連続的に視認性レベルを変化させるようにしている。
言い換えれば、矢印の図形301の、第2の領域Z2に位置する部分において、グラデーション表示とする、あるいは、複数の段階に分けて輝度等を徐々に変化させるといった視認性制御を実施している。
これによって、空気遠近法による遠近感が強調され、より自然で、違和感がなく、かつ見易さが向上した表示を実現することができる。
【0144】
このように、認識性向上処理を実施する際、表示オブジェクトの視認性(例えば輝度)を、例えば、乗員から見て手前側(近方側)から奥側(遠方側)へと、連続的に変化させる(言い換えれば、グラデーション表示とする)、あるいは、段階的に輝度が変化していくようにし、第1の視認性から第2の視認性へと自然に濃淡等が変化する表現態様とすることで、乗員の違和感を効果的に軽減することができ、また、より自然で見易い表示を実現することができる。
【0145】
(第2の実施形態)
次に、
図5を参照する。
図5は、重複解消処理の一例(第1の重複解消処理)を示す図である。
【0146】
図5のA-1は、第1の表示オブジェクトとしての矢印の図形301に認識性向上処理を実施した結果、第1の表示領域Z1において、重要性レベルが第1の表示オブジェクトよりも低い第2の表示オブジェクトとしての制限速度表示305との間で重複(ここでは部分的な重複とする)が生じた状態を示している。表示オブジェクト同士の重複が生じると、表示オブジェクトが見づらくなり、乗員が、正確な情報を読み取るのが難しくなるのは否めない。
【0147】
なお、表示オブジェクトの重要性レベル(重要度)については、予め、各表示オブジェクトに付与しておいてもよく、あるいは、重複が生じたときに、運転状況等を考慮し、その都度、各オブジェクトの重要性レベル(重要度)を判定してもよい。
【0148】
矢印の図形301は、車両の左折を促す重要なナビゲーション表示であり、運転者のハンドル操作に直接的に影響を及ぼす。よって、
図5のA-1では、第1の表示オブジェクトとしての矢印の図形301に対しては、第2の表示オブジェクトとしての制限速度表示305よりも高い重要性レベルが設定されている。
【0149】
そこで、重複が生じている各表示オブジェクトの重要性レベルを考慮して、適切な重複解消処理が実施される。重複解消処理では、制御部140は、各表示オブジェクト301、305の重要性レベルを比較し、重要性レベルの高い方の表示オブジェクト(ここでは、第1の表示オブジェクトとしての矢印の図形301)の表示を優先させる。
【0150】
したがって、
図5のA-2に示すように、第1の領域Z1に表示されている、重要性レベルが比較的低い第2の表示オブジェクトとしての制限速度表示305について、大きさ、及び位置の少なくとも一方が変更され、これによって、表示オブジェクト間の重複が解消される。本明細書では、これを第1の重複解消処理と称する。
【0151】
第1の重複解消処理を実施することで、表示オブジェクト間で重複が生じて、乗員に、正確な情報を提示できない事態が確実に防止される。また、重要性レベルの高い表示オブジェクトの表示が優先されることから、車両の運行に関してより重要度の高い情報を、優先して乗員に提示することができる。
【0152】
次に、
図6を参照する。
図6は、重複解消処理の他の例(第2の重複解消処理)を示す図である。
【0153】
図6のA-1は、第1の表示オブジェクトとしての矢印の図形301に認識性向上処理を実施した結果、第1の表示領域Z1において、重要性レベルが第1の表示オブジェクトよりも高い第3の表示オブジェクトとしての、路面6の陥没箇所Q1を示す強調枠表示307との間で重複(ここでは部分的な重複とする)が生じた状態を示している。表示オブジェクト同士の重複が生じると、表示オブジェクトが見づらくなり、乗員が、正確な情報を読み取るのが難しくなるのは否めない。
【0154】
路面6の陥没箇所Q1を示す強調枠表示307(第3の表示オブジェクト)は、運転者のブレーキ操作等に関係し、車両の安全運行に重大な影響を及ぼす。よって、
図6のA-1では、第3の表示オブジェクトとしての強調枠表示307に対しては、第1の表示オブジェクトとしてのナビゲーション用の矢印の図形301よりも高い重要性レベルが設定されている。
【0155】
そこで、重複が生じている各表示オブジェクトの重要性レベルを考慮して、適切な重複解消処理が実施される。重複解消処理では、制御部140は、各表示オブジェクト301、307の重要性レベルを比較し、重要性レベルの高い方の表示オブジェクト(ここでは、第3の表示オブジェクトとしての強調枠表示307)の表示を優先させる。
【0156】
したがって、
図6のA-2に示すように、第1の表示オブジェクトである矢印の図形301に対する認識性向上処理が取り消され、これによって、表示オブジェク間の重複が解消される本明細書では、これを第2の重解消処理と称する。
【0157】
第2の重複解消処理を実施することで、表示オブジェクト間で重複が生じて、乗員に、正確な情報を提示できない事態が確実に防止される。また、重要性レベルの高い表示オブジェクトの表示が優先されることから、車両の運行に関してより重要度の高い情報を、優先して乗員に提示することができる。
【0158】
(第3の実施形態)
次に、
図7を参照する。
図7は、車両の運行中における表示例(応用例)を示す図である。
【0159】
図7のA-1において、車両1は高速道路を走っており、遠方の左側に出口904が見えている。この出口904に重畳するように、誘目用の円形のポインタ905が表示されている。
【0160】
この円形のポインタ905は、第3の領域Z3内において、第1の視認性レベル(高輝度)で表示されている。仮に、第3の領域Z3が設定されないと、ポインタ905は第2の領域Z2内に位置することになり、第2の視認性レベル(低輝度)で表示されることになり、運転者(乗員)5による視認がむずかしくなる。
図7のA-1では、第3の領域Z3が設定され、その第3の領域Z3内にポインタ905が表示されることから、運転者(乗員)5は、ポインタ905を、はっきりと視認することができる。
【0161】
図7のA-2では、第3の領域Z3は設定されておらず、第2の領域Z2内に、出口(降り口)の存在を示す有彩色の標識906が、低輝度にて表示されている。この標識906は、有彩色であり面積も大きいため、低輝度であっても運転者5は視認が可能である。その一方で、標識906の一部が出口(降り口)904に重なるが、標識906の視認性レベルが低いため、運転者5は、標識906の背後にある出口(降り口)904を視認することができる。
【0162】
図7のA-3では、車両1を出口(降り口)904に誘導する誘導表示907が、路面6に重畳されるように表示される。
この誘導表示907は、第2の領域Z2と第1の領域Z1にまたがって表示されている。この誘導表示907に対しては、先に説明した、低視認性処理(視認性低下処理)と、認識性向上処理が施されている。この結果、運転者5から見て手前側の部分の輝度が上昇し、見易い表示となっている。
【0163】
また、誘導表示907は、遠近法(線遠近法)を用いて描画されている。そして、認識性向上処理によって、運転者5から見て手前側の箇所が濃く表示され、奥側の箇所は淡く表示されることになる。このため、空気遠近法によって遠近感が強調され、遠近感が生じている誘導表示907の全体の形状を把握し易くなり、誘導表示907についての認識性が向上する。
【0164】
(第4の実施形態)
次に、
図8を参照する。
図8は、第2の領域の位置を可変に制御する例、及び、第2の領域の大きさを可変に制御する例を示す図である。
【0165】
図8のA-1では、制御部140は、取得される第1の情報に基づいて、第2の領域Z2の位置を変更する。言い換えれば、第2の領域Z2の位置(言い換えれば、第2の領域Z2の境界を決定する破線の図形(矩形)204の位置)が可変に制御される。
図8のA-1において、位置が変更される方向を、矢印DL、DR、DP、DNにて示している。
【0166】
車両状態、乗員状態、走行環境により、乗員が注意を払うべき領域(前方の実空間における領域)は異なる。この点を考慮して、車両状態、乗員状態、走行環境等に応じて、第2の領域Z2の位置を変化させることで、状況に応じて、適切な位置に第2の領域を設定することができる。
【0167】
ここで、上記の第1の情報としては、例えば、「ステアリング角度」、「ピッチング角度」、「両目位置」、「走行場所」の少なくとも1つの情報を含むものを想定し得る。
【0168】
例えば、制御部140は、ステアリング角度から車両1の走行方向を検出し、走行方向と同じ方向に前記第2の領域の位置を変更する、及び、ピッチング角度から車両1の上下方向の揺れを検出し、揺れの方向と逆の方向に第2の領域の位置を変更する、及び、両目位置が基準位置よりも高い場合には、第2の領域Z2の位置を、標準位置よりも高く変更し、両目位置が基準位置よりも低い場合には、第2の領域Z2の位置を、標準位置よりも低く変更する、及び、走行場所に対して予め設定された位置に、第2の領域Z2の位置を変更する、の少なくとも1つを実行してもよい。
【0169】
言い換えれば、制御部140は、ステアリング角度、ピッチング角度、両目位置、走行場所、の少なくとも1つの情報に基づいて、車両状態、乗員状態、走行環境等を検出し、その検出結果に基づいて、第2の領域の位置を変更してもよい。
【0170】
例えば、乗員がステアリングを操舵している場合、乗員は走行方向に対して注意を払うことが多いため、ステアリングセンサの検出信号から車両1の走行方向を検出し、第2の領域Z2の位置を、走行方向と同じ方向に移動させてもよい。
【0171】
また、例えば、ピッチング角度の情報に基づいて、車両1の上下方向の揺れを検出し、揺れの方向と逆の方向に第2の領域Z2の位置を変更することで、第2の領域Z2内において表示されていた表示オブジェクトが、その揺れに起因して第2の領域Z2の外に出てしまうことが抑制される。
【0172】
また、乗員の両目位置(視点高さ位置)に応じて第2の領域Z2の位置(高さ位置)を調整することで、乗員5から見て適切な位置に、第2の領域Z2を位置させることができる。
【0173】
また、車両1の走行場所に応じて、乗員5が注意を払う方向等が異なる場合がある。よって、走行場所に応じて、適応的に第2の領域Z2の位置を調整することで、表示オブジェクトを第2の領域Z2の適切な位置に安定的に表示できる。
【0174】
また、
図8のA-2では、制御部140は、取得される第1の情報に基づいて、第2の領域Z2の大きさを変更(調整)してもよい。
図8のA-2において、拡張され得る領域は、領域ZL、ZR、ZP、ZN(何れにも斜線が施されている)として描かれている。
【0175】
第2の領域Z2の大きさを、適宜、変更することで、
図8のA-1)の例(第2の領域Z2の位置を変更する例)と同様の効果を得ることができる。
【0176】
また、上記の第1の情報は、ステアリング角度、ピッチング角度、乗員の両目位置、走行場所、の少なくとも1つの情報を含むことができる。
【0177】
制御部140は、この第1の情報に基づき、ステアリング角度が大きい場合には、前記第2の領域を、基準サイズよりも大きくするように変更する、及び、ピッチング角度が大きい場合には、第2の領域を、基準サイズよりも大きくするように変更する、及び、両目位置が基準位置よりも高い又は低い場合には、第2の領域を、基準サイズよりも大きくするように変更する、及び、走行場所に対して予め設定された大きさに、第2の領域の大きさを変更する、の少なくとも1つを実行してもよい。
【0178】
図8のA-2の例では、
図8のA-1の例(第2の領域Z2の位置を、センサ情報等に基づいて変更する例)と同様の効果を得ることができる。
【0179】
なお、「走行場所に対して予め設定された大きさに、第2の領域の大きさを変更する」場合の一例としては、下記の場合が想定され得る。例えば、市街地を走行する場合、乗員は高速道路等よりも広い範囲に注意を払うことが多いため、例えばGPSレシーバの検出信号から、車両が市街地を走行していることを検出した場合、第2の領域を大きくするように設定する。これにより、拡大された第2の領域の適切な位置に、表示オブジェクトを表示(配置)することが可能である。
【0180】
(第5の実施形態)
次に、
図9を参照する。
図9は、車載表示システムの構成の一例、及び、制御部の構成の一例を示す図である。
【0181】
図9のA-1において、車載表示システムは、HUD装置(広義には表示装置)100と、情報取得部119と、瞳撮像カメラ43と、視点位置検出部45と、ステアリングセンサ47と、ピッチ角センサ49と、車両ECU51と、車外センサ53と、GPSレシーバ(アンテナANを備える)55と、を有する。
【0182】
HUD装置100は、表示制御装置700を有する。表示制御装置700は、制御部140を有する。制御部140は、I/Oインタフェース741と、少なくとも1つのプロセッサ742と、メモリ743と、を有する。
【0183】
また、HUD装置100は、画像生成部112と、表示部113と、光学系116と、光学系116を構成する光学部品を駆動して位置等を変更させるアクチュエータ181とを有する。光学系116には、
図1における曲面ミラー(凹面鏡等)170を含めてもよい。
【0184】
なお、情報取得部119は、各種のセンサ等から得られる情報(第1の情報)を、通信バス727を介して取得する。この情報取得部119は、HUD装置100内に設けてもよい。
【0185】
HUD装置100は、先に説明したように、車両(自車両)1のウインドシールド(フロントガラス等)2、又は、ウインドシールド2と乗員との間に設けられるコンバイナ等に、表示像(画像の表示光)を投影して表示することで、乗員5に対して、例えば車両の運転に有益な情報を提示する。
【0186】
制御部140(あるいはプロセッサ742)は、例えば、後述する処理フローのような処理を実行する。
【0187】
車外センサ53は、他車両、歩行者、道路交通標識といった車両外部の環境に存在するオブジェクトの位置や内容を検出する。
【0188】
ステアリングセンサ47は、ステアリングの操舵角を検出する。また、ピッチ角センサ49)は、車両1のピッチング方向の姿勢を検出する。
【0189】
視点位置検出部45は、瞳(あるいは顔)撮像カメラ43による撮像画像に基づいて、例えば、乗員5の目の位置や視線方向等を検出する。
【0190】
GPSレシーバ55は、GPS衛星から発せられる無線信号を受信し、車両1の位置を検出する。
【0191】
車両ECU51は、エンジンECUやメータECUといった複数の種類があり、センサからの情報を基にアクチュエータを動作させると共に、制御部140や他の車両ECUに対して、適宜、必要な情報を送信する。
【0192】
図9のA-2において、制御部140(あるいは、プロセッサ702)は、機能ブロックとして、第1~第3の各領域を設定する領域設定部745と、表示オブジェクトを設定する表示オブジェクト設定部746と、表示オブジェクトの視認性レベルを調整する視認性調整部747と、表示オブジェクト間の重複を解消する重複解消処理部750と、各表示オブジェクトに重要性レベル(重要度)を付与する重要性レベル設定部751と、を有する。また、視認性調整部747は、低視認性処理部(視認性低下処理部)748と、認識性向上処理部749と、を有する。
【0193】
なお、各種の機能ブロックは、プロセッサ(コンピュータ)702が、コンピュータプログラムによって動作することによって構築され得る。この場合、メモリ743にインストールされたプログラムを実行することで、各種の機能ブロックを容易に構築することができる。
【0194】
次に、
図10を参照する。
図10は、制御部(表示制御装置)の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【0195】
ステップS1では、ヘッドアップディスプレイ(HUD装置)の表示領域に、第1、第2の領域を設定し、必要に応じて第3の領域を設定する。
【0196】
ステップS2では、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置に表示する表示オブジェクト(表示対象、表示要素等)を設定する。
【0197】
ステップS3では、第2の領域に含まれる表示オブジェクトの視認性を低下させる低視認性処理を実施する。
【0198】
ステップS4では、第2の領域に含まれる表示オブジェクトを第1の領域まで拡張する認識性向上処理を実施する。このとき、他の表示オブジェクトとの重複が生じるときは、重複解消処理を実施する。
【0199】
ステップS5では、表示オブジェクトをヘッドアップディスプレイ(HUD)装置に表示する。
【0200】
ステップS6では、表示を終了するか否かを判定する。Yのときは終了し、Nのときは、ステップS1に戻る。
【0201】
以上説明したように、本実施形態によれば、表示の視認性を低下させることで、車両の乗員による実景の視認を容易化し、一方、乗員によるその表示の認識性の低下も抑制することができる。
【0202】
なお、上記の説明において、「第1の領域」、「第2の領域」と表現しているが、これは、便宜上の表現であり、適宜、言い換えることができる。
【0203】
例えば、「第1の領域」は、視認性レベルに関して、特に制限(あるいは条件)が課せられず、表示の自由度が高い「非制限領域」、あるいは、「表示の制限(条件)が抑制されている「制限(条件)抑制領域」等と呼称されてもよい。
【0204】
また、「第2の領域」は、視認性レベルに関して、所定の制限(条件)が課せられている「制限領域」等と呼称されてもよい。
【0205】
また、本明細書において、車両という用語は、広義に、乗り物としても解釈し得るものである。また、ナビゲーションに関する用語(例えば標識等)についても、例えば、車両の運行に役立つ広義のナビゲーション情報という観点等も考慮し、広義に解釈するものとする。また、HUD装置や表示器装置(及び広義の表示装置)には、シミュレータ(例えば、航空機のシミュレータ、ゲーム装置としてのシミュレータ等)として使用されるものも含まれるものとする。
【0206】
本発明は、上述の例示的な実行形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実行形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0207】
1・・・車両(自車両)、2・・・ウインドシールド(被投影部材)、6・・・路面(地面や床面等の相当面を含む)、41・・・ダッシュボード、43・・・瞳撮像カメラ、45・・・視点位置検出部、47・・・ステアリングセンサ、49・・・ピッチ角センサ、51・・・車両ECU、53・・・車外センサ、55・・・GPSレシーバ、100・・・HUD装置、113・・・表示部、112・・・画像生成部、116・・・光学系、140・・・制御部(プロセッサ)、181・・・アクチュエータ、202・・・HUD装置(表示装置)の表示領域(HUD表示領域)、204・・・第1の領域と第2の領域との境界又は境界線(あるいは境界を決定する図形)、211・・・左折路、301・・・ナビゲーション表示としての矢印の図形(矢印の表示)、303・・・路上の障害物、305・・・制限速度表示、307・・・路上の陥没箇所を強調する強調枠表示(強調表示)、700・・・表示制御装置、741・・・I/Oインタフェース、742・・・プロセッサ、743・・・メモリ、745・・・領域設定部、746・・・表示オブジェクト設定部、747・・・視認性調整部、748・・・低視認性処理部(視認性低下処理部)、749・・・認識性向上処理部、750・・・重複解消処理部、751・・・重要性レベル設定部、904・・・高速道路の出口(降り口)、905・・・ポインタ、906・・・標識表示、907・・・誘導表示、Z1・・・第1の領域(非制限領域)、第2の領域(制限領域)、Z3・・・第3の領域、SP・・・車速表示、OB1~OB4・・・表示オブジェクト(HUD表示、画像、虚像、表示要素)、Q1・・・路上の陥没箇所。