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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061366
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20240425BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240425BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240425BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240425BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20240425BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20240425BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/118
B33Y50/00
B29C64/386
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169269
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】514129844
【氏名又は名称】ニッポー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧島 誠二
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC02
4F213AP11
4F213AP12
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL73
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL93
4F213WL95
(57)【要約】
【課題】造形テーブル上の複数の測定点の測定時間の短縮を図りつつ精度良い歪み補正を行う。
【解決手段】三次元造形装置は、ヘッドユニット、造形テーブル、造形テーブルの表面性状を測定する測定部、ヘッドユニット及び造形テーブルの少なくとも一方を駆動して相対的に移動させる駆動機構、これを制御する制御装置を備え、制御装置は、測定部により測定する、造形テーブルの測定領域の設定、測定点数の設定、及び測定ピッチの設定の少なくとも一つを実行し、測定領域の各測定点の位置を設定する設定部、設定された各測定点について測定値を取得する取得部、取得された測定値に基づき、造形テーブルの表面形状データを平滑化するための補正値を算出する算出部、算出された補正値を記憶する記憶部、算出された補正値を用い、ヘッドユニット及び造形テーブルの相対的な高さ位置を調整する高さ調整部を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材料を供給するヘッドユニットと、
前記造形材料によって形成される造形物が載置される造形テーブルと、
前記造形テーブルの表面性状を測定可能な測定部と、
前記ヘッドユニット及び前記造形テーブルの少なくとも一方を駆動して前記ヘッドユニット及び前記造形テーブルを相対的に移動させる駆動機構と、
前記駆動機構を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記測定部によって測定する、前記造形テーブルにおける測定領域の設定、測定点数の設定、及び測定ピッチの設定の少なくとも一つを実行し、前記測定領域における各測定点の位置を設定する設定部と、
前記設定された各測定点について測定値を取得する取得部と、
取得された前記測定値に基づいて、前記造形テーブルの表面形状データを平滑化するための補正値を算出する算出部と、
算出された前記補正値を記憶する記憶部と、
算出された前記補正値を用いて、前記ヘッドユニット及び前記造形テーブルの相対的な高さ位置を調整する高さ調整部と、を有する
三次元造形装置。
【請求項2】
前記測定領域は、前記造形物を造形するために前記制御装置に入力された造形データに基づいて、前記造形物の前記造形テーブルに接する面で規定される造形領域を求め、求められた前記造形領域に基づいて設定される
請求項1記載の三次元造形装置。
【請求項3】
前記測定領域は、ユーザーからの操作入力により前記制御装置に受け付けられた入力情報に基づき規定される領域情報を求め、求められた前記領域情報に基づいて設定される
請求項1記載の三次元造形装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記測定領域における前記測定点数及び前記測定ピッチの少なくとも一つの数値指定を、ユーザーからの操作入力に伴う入力情報の入力値に基づき行う
請求項1記載の三次元造形装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記取得部で取得された前記測定値と、前記取得部で以前に取得され前記記憶部に記憶された測定値とを比較して、前記算出部で前記補正値の算出に用いる測定値を決定する
請求項1記載の三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱溶解積層法(FDM:Fused Deposition Modeling)により三次元造形物(以下、「造形物」と呼ぶ。)を作製する三次元造形装置では、造形テーブル上に溶融された樹脂材料を吐出して積層することで、造形物が作製される。この造形テーブルは完全な平坦ではなく、凹凸等の歪みがあるため、そのまま造形物を作製すると、造形物が歪んだり、造形テーブル上で剥がれ等が発生したりすることがある。
【0003】
これらの不具合を防止するため、例えばノズルと造形テーブルとの間隔を一定に保つように、ノズルのZ方向位置を微調整して、材料層の厚さを一定に保ちながら、剥がれ、歪み等のない造形物を作製する三次元造形装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-155885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された三次元造形装置のように、ノズルのZ方向位置の高さ調整を行って造形テーブルの歪みを補正するためには、一般的に、例えばセンサによって予め造形テーブルの表面平坦度を検出し、検出結果をもとに造形時にノズルと造形テーブルの間隔が一定となるように補正することが行われる。すなわち、造形テーブル上の全体領域における複数の測定点を測定し、これに基づき造形テーブルの歪みの補正値を算出して、算出された補正値をノズルのZ方向制御に反映させることが行われる。
【0006】
この場合、歪み補正を精密に行おうとすると、複数の測定点を造形テーブルの全体領域に渡って予め決められた測定ピッチで測定する必要があるが、造形テーブルの平坦度は、造形テーブルの温度による熱膨張や、作業者の操作による影響で、常に一定ではないため、精密な造形を行うためには、造形を行う毎に平坦度の測定が必要となる。このため、造形物の底面積が小さく、造形テーブルの全体領域を必要としない場合でも、造形毎に造形テーブルの全体領域の測定点を測定することになり、造形物の底面積が小さい場合は無駄に測定時間を費やしてしまったり、結果的に測定時間が膨大になってしまったりするという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、造形テーブル上の複数の測定点の測定時間の短縮を図ることができる三次元造形装置及び高さ調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る三次元造形装置は、造形材料を吐出するヘッドユニットと、前記造形材料によって形成される造形物が載置される造形テーブルと、前記造形テーブルの表面性状を測定可能な測定部と、前記ヘッドユニット及び前記造形テーブルの少なくとも一方を駆動して前記ヘッドユニット及び前記造形テーブルを相対的に移動させる駆動機構と、前記駆動機構を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記測定部によって測定する、前記造形テーブルにおける測定領域の設定、測定点数の設定、及び測定ピッチの設定の少なくとも一つを実行し、前記測定領域における各測定点の位置を設定する設定部と、前記設定された各測定点について測定値を取得する取得部と、取得された前記測定値に基づいて、前記造形テーブルの表面形状データを平滑化するための補正値を算出する算出部と、算出された前記補正値を記憶する記憶部と、算出された前記補正値を用いて、前記ヘッドユニット及び前記造形テーブルの相対的な高さ位置を調整する高さ調整部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、造形テーブル上の複数の測定点の測定時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る三次元造形装置の一部を概略的に示す斜視図である。
図2】同三次元造形装置の一部を概略的に示す正面図である。
図3】同三次元造形装置の制御装置の基本的構成を示すブロック図である。
図4】同高さ調整方法を含む造形処理示すフローチャートである。
図5】データ比較処理を示すフローチャートである。
図6】測定領域設定処理を示すフローチャートである。
図7】造形テーブル上の各領域を説明するための図である。
図8】測定点設定処理を示すフローチャートである。
図9】異物判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態に係る三次元造形装置及び高さ調整方法を詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、以下の実施の形態においては、各構成要素の縮尺、寸法等が誇張されて示されている場合、及び一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る三次元造形装置の一部を概略的に示す斜視図である。図2は、三次元造形装置の一部を概略的に示す正面図である。図3は、三次元造形装置の制御装置の基本的構成を示すブロック図である。本実施形態の三次元造形装置として、図1及び図2に示す熱溶解積層法(FDM)の3Dプリンタ100を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではなく、FFF(Fused Filament Fabrication)、インクジェット等の他の積層造形方法を用いる3Dプリンタであっても良い。
【0013】
なお、3Dプリンタ100は、造形材料、例えば溶融された樹脂材料を吐出して積層することで、造形物を作製するものであるが、基本的な構造については既知であるので、ここでは説明が必要な場合を除いて詳細な説明を割愛する。以下の説明において、「X軸方向(X方向)」は3Dプリンタ100の正面に向かい合った場合の左右方向を意味し、「Y軸方向(Y方向)」はこの場合の奥行き方向を意味し、「Z軸方向(Z方向)」はX軸方向及びY軸方向と交差する上下方向(高さ方向、垂直方向)を意味する。
【0014】
図1及び図2に示すように、FDM型の3Dプリンタ100は、例えばヘッドユニット1と、造形テーブル2と、センサ部3と、駆動機構としての昇降機構4と、を備える。また、3Dプリンタ100には、3Dプリンタ100の全体を制御する制御装置10が備えられている。
【0015】
ヘッドユニット1は、供給されたフィラメント樹脂等の樹脂材料を加熱して溶融させる熱溶解部(図示せず)を有し、溶融した樹脂材料(溶融樹脂)を吐出するノズルヘッド部1aを備える。また、ヘッドユニット1は、ノズルヘッド部1aに樹脂材料を送り込むと共に、溶融樹脂を吐出させるように押し出すエクストルーダ(図示せず)を備える。
【0016】
なお、ヘッドユニット1は、Z軸方向に互いに干渉しない状態でずれて貫通するように設けられたX軸ガイドポール5a及びY軸ガイドポール5bを介して、スライダ、モータ等を備えるヘッドユニット駆動機構9(図3)によって、X軸方向及びY軸方向に移動自在に配置されている。
【0017】
ヘッドユニット1のZ軸方向下方側には、溶融した樹脂材料を積層してなる造形物(図示せず)が形成される造形テーブル2が配置されている。造形テーブル2は、矩形平板状に形成され、昇降テーブル6の上方に配置されている。造形テーブル2は、昇降テーブル6の上方に、例えば三角形の各頂点位置に対応する前方1個所、後方2個所に配置されたバネ状の結合部材7を介して配置され、ねじ8によって昇降テーブル6に固定されている。本実施形態の造形テーブル2は、例えばその表面にシート材、フィルム材及びテープ材等が載置されている場合は、これらを含んだものを指す。
【0018】
昇降テーブル6の後方側のX方向両端には、それぞれガイドリング6a,6bが固定されている。このガイドリング6a,6bには、Z方向に延びるZ軸ガイドポール6c,6dが挿通されている。Z軸ガイドポール6c,6dは、それぞれシャフトホルダ6e,6fに支持されている。昇降テーブル6の後方側のX方向中央部は、昇降機構4に連結されている。昇降機構4は、昇降テーブル6に固定されたボールねじナット4aと、このボールねじナット4aに螺合するボールねじ4bと、ボールねじ4bの下端に結合されたカップリング(連結器)4cと、このカップリング4cを介してボールねじ4bを回転駆動するモータ(図示せず)と、ボールねじ4bの上端を回転自在に保持するシャフトホルダ4dと、を有する。
【0019】
このように構成された昇降機構4によって、造形テーブル2は昇降テーブル6と共にZ軸方向に上下動自在に駆動される。なお、昇降機構4は、本実施形態では造形テーブル2をヘッドユニット1に対して上下動させる構成としているが、これに限定されるものではなく、造形テーブル2に対してヘッドユニット1を上下動させるものであっても良い。すなわち、昇降機構4は、ヘッドユニット1及び造形テーブル2を造形物の積層方向(上下方向)に相対的に移動させるように駆動することができる構成であれば良い。
【0020】
センサ部3は、例えばノズルヘッド部1aの近傍のヘッドユニット1の下方側に設けられた接触検出型のプローブセンサからなり、造形テーブル2の表面性状(凹凸等)を測定可能に構成されている。センサ部3は、ヘッドユニット1と共にX軸方向及びY軸方向に移動自在に設けられている。なお、センサ部3は、プローブセンサに限定されるものではなく、レーザセンサ、マグネットセンサ、超音波センサ等、種々の構成のセンサを採用し得る。センサ部3は、具体的には、造形テーブル2上の複数のXY座標の測定点におけるZ座標を測定し得る。
【0021】
制御装置10は、RAM、ROM、SSD等の記憶媒体、及びCPU等の中央演算処理装置を備えるパーソナルコンピュータ等の情報処理装置からなり、ヘッドユニット1、センサ部3及び昇降機構4等の各動作を制御する。制御装置10は、図3に示すように、入力部11、測定領域設定部12、測定点設定部13、取得部14、算出部15、高さ調整部16、及び記憶部17を備える。
【0022】
入力部11は、キーボード、タッチパネル等の入力デバイスを含みユーザーからの操作入力等を入力情報として受け付ける。測定領域設定部12は、入力部11から入力された測定領域設定情報、又は図示しないCADシステムから入力された造形データから測定領域SA(図8参照)を設定する。測定点設定部13は、入力部11から入力された測定点数、測定ピッチ等のデータ、測定領域設定部12で設定された測定領域SA等に基づき測定すべき各測定点(XY座標値)を設定する。ヘッドユニット駆動機構9は、測定点設定部13で設定された測定点にヘッドユニット1を移動させる。昇降機構4は、設定された各測定点で昇降テーブル6を駆動する。
【0023】
取得部14は、昇降機構4の図示しないエンコーダから出力される造形テーブル2の高さ(Z座標値)をセンサ部3が接触検知信号を出力したタイミングで、取得する。センサ部3、昇降機構4、ヘッドユニット駆動機構9、及び取得部14で測定部が構成される。測定値は、例えば造形テーブル2の表面の凹凸を表す値を示している。算出部15は、取得部14によって取得された測定値に基づいて、例えば造形テーブル2の表面の凹凸を含む表面形状を表す高低マップデータを生成する。そして、この高低マップデータを平滑化するための補正値を算出する。
【0024】
高さ調整部16は、算出部15によって算出された補正値を用いて、ヘッドユニット1及び造形テーブル2の相対的な高さ位置を調整する高さ調整データを生成する。制御装置10は、こうして生成された高さ調整データに基づいて、造形テーブル2の表面が平坦となるようにヘッドユニット1及び造形テーブル2の間隔を調整し、造形を行う。なお、記憶部17は測定値等を読み書き可能に記憶する記憶媒体からなる。
【0025】
次に、このように構成された3Dプリンタ100において行われる高さ調整方法について説明する。
図4は、3Dプリンタ100における高さ調整方法を含む造形処理示すフローチャートである。図5は、データ比較処理を示すフローチャートである。図6は、測定領域設定処理を示すフローチャートである。図7は、造形テーブル上の各領域を説明するための図である。図8は、測定点設定処理を示すフローチャートである。図9は、異物判定処理を示すフローチャートである。
【0026】
図4に示すように、制御装置10は、例えば入力部11からの操作入力に伴う入力情報等に基づいて、造形物の造形(印刷)がスタートされたか否かを判断する(ステップS10)。造形がスタートされたと判断した場合(ステップS10のYES)は、データ比較処理(ステップS11)が行われる。
【0027】
データ比較処理は、例えば過去データ(以前の測定値)を利用する場合にのみ実行される処理であり、上述したN点よりも少ない任意のS点を簡易的に測定し、測定値が過去(以前)のものと同じであればN点全てが同じと見做して、測定時間の短縮を図る処理である。
【0028】
すなわち、データ比較処理においては、図5に示すように、まず、処理が有効であるか否かが判断され(ステップS30)、有効であると判断した場合(ステップS30のYES)は、記憶部17に保存された過去データの有無が判断される(ステップS31)。
【0029】
過去データがあると判断した場合(ステップS31のYES)は、過去データであるN点の測定点のうち、N点よりも少ない任意のS点の測定点のZ座標値を簡易的に測定する(ステップS32)。そして、取得部14を介して得られた測定値と、過去データの測定値とを比較し(ステップS33)、測定値が同じであるか否かを判断する(ステップS34)。
【0030】
測定値が同じであると判断した場合(ステップS34のYES)は、以降の測定を止めて過去の測定値を利用するため、図4の後述するステップS20へ移行する。なお、測定値が同じではないと判断した場合(ステップS34のNO)は、データ比較処理を終了して、図4の測定領域設定処理(ステップS12)に移行する。上記ステップS30にて処理が有効ではないと判断した場合(ステップS30のNO)、及び上記ステップS31にて過去データがないと判断した場合(ステップS31のNO)も、測定領域設定処理(ステップS12)に移行する。
【0031】
測定領域設定処理は、測定領域設定部12によって、造形テーブル2上の測定領域SA(又は自動測定領域ASA)を手動又は自動で設定する処理である。すなわち、測定領域設定処理においては、図6に示すように、まず、処理が有効であるか否かが判断され(ステップS40)、有効であると判断した場合(ステップS40のYES)は、上述したような入力情報等に基づいて、手動設定であるか否かが判断される(ステップS41)。
【0032】
手動設定であると判断した場合(ステップS41のYES)は、入力部11により入力された入力情報の入力値(数値等)を読み込む(ステップS42)。ここでの入力値としては、例えば、図7に示すように、造形テーブル2上の任意の指定点P1,P2のXY座標値、又は指定点P1のXY座標値及びこの指定点P1からのXY方向の各長さ等が挙げられる。
【0033】
入力値を読み込んだら、演算により測定領域SAの座標が決定されて(ステップS43)、測定領域設定処理を終了し、図4の測定点設定処理(ステップS13)に移行する。なお、上記ステップS40にて処理が有効ではないと判断した場合(ステップS40のNO)も、測定点設定処理(ステップS13)に移行する。
【0034】
手動設定ではないと判断した場合(ステップS41のNO)は、造形データを読み込む(ステップS44)と共に、造形物の造形テーブル2に接する面で規定される造形領域MA、例えば造形物の一層目の造形領域MA(図7参照)を算出し(ステップS45)、演算により自動測定領域ASA(図7参照)の座標が決定されて(ステップS43)、測定点設定処理(ステップS13)に移行する。
【0035】
この測定領域設定処理で設定される測定領域SA又は自動測定領域ASAは、図7に示すように、その範囲が、造形テーブル2の全体領域AAより狭く、且つ造形物の一層目の造形領域MAより広く設定される。このように、測定領域SA又は自動測定領域ASAは、一層目の造形領域MAを全体的にカバーしながら、全体領域AAよりも狭く設定されるので、次処理の測定点設定処理(ステップS13)で任意の数の測定点を設定することで、測定点数は変えずに測定領域SA又は自動測定領域ASA内を細かく測定したり、測定点数を少なくして測定時間を短縮したりすることが可能となる。
【0036】
測定点設定処理は、測定点設定部13によって、設定された測定領域SA(又は自動測定領域ASA)内の測定点の位置(XY座標)を設定する処理である。すなわち、測定点設定処理においては、図8に示すように、まず、処理が有効であるか否かが判断され(ステップS50)、有効であると判断した場合(ステップS50のYES)は、入力部11により入力された入力情報の入力値を読み込む(ステップS51)。
【0037】
ここでの入力値としては、例えば、測定領域SA(又は測定領域ASA)のX軸方向及びY軸方向の測定点数(ポイント数)又は測定ピッチ(Pitch)の値(mm)が挙げられる。入力値を読み込んだら、入力値がポイント数であるか否かが判断され(ステップS52)、入力値がポイント数であると判断した場合(ステップS52のYES)は、演算により測定領域SA(又は自動測定領域ASA)のエリア(範囲)から測定ピッチを算出し(ステップS53)、測定領域SA(又は自動測定領域ASA)内を何点測定するかの総数(ポイント総数:N点)を算出する(ステップS54)。
【0038】
そして、算出されたポイント総数(N点)の各測定点のXY座標を算出し(ステップS55)、測定点設定処理を終了して、図4の原点検出処理(ステップS14)に移行する。なお、上記ステップS52において入力値がポイント数ではないと判断した場合(ステップS52のNO)は、上記ステップS53をスキップして上記ステップS54に移行し、ポイント総数が直接算出されて以降の処理が行われる。
【0039】
図4に戻り、上述したように測定領域設定処理及び測定点設定処理を経て測定領域SA(又は自動測定領域ASA)内の測定点が決定されたら、原点検出処理を実行する(ステップS14)。この原点検出処理では、例えば、図2に示す、造形テーブル2の正面から向かって左側の手前位置がX軸及びY軸の原点(X軸及びY軸の基準点)となり、造形テーブル2のX軸方向及びY軸方向の中心のZ座標値がZ軸の原点(Z軸の基準点)となる。これらX軸、Y軸及びZ軸の原点は、記憶部17に記憶しておいても良い。
【0040】
次に、N点測定処理を実行する(ステップS15)。N点測定処理では、測定領域設定処理(ステップS12)で設定された造形テーブル2の測定領域SA(又は自動測定領域ASA)内における測定点設定処理(ステップS13)で設定されたX軸方向及びY軸方向にそれぞれ予め設定された複数の測定点(N点:Nは正の整数)の、各XY座標におけるZ軸の基準点(Z-home)を基準とした場合のZ方向の高さを測定する。例えば、ヘッドユニット1をヘッドユニット駆動機構9で駆動してヘッドユニット1を各測定点(XY座標)に移動させ、昇降機構4でヘッドユニット1を造形テーブル2に対して降下させ、センサ部3が造形テーブル2に接触したタイミングで、昇降機構4の図示しないエンコーダ出力(Z座標値)を取得部14で取得する。
【0041】
このN点測定処理では、例えば、X軸方向に8点、Y軸方向に8点の測定点が設定されている場合、64点(N=8×8=64)の測定点におけるXY座標のZ方向高さが測定される。そして、測定した各測定点の測定値を記憶部17に記憶する(ステップS16)。
【0042】
なお、上記ステップS10にて造形がスタートされていないと判断した場合(ステップS10のNO)は、初期設定処理(ステップS23)が行われる。ここで、初期設定処理は、例えば、測定領域SA(又は自動測定領域ASA)の初期値及び測定領域SA(又は自動測定領域ASA)内の測定点(の測定点数)の初期値を記憶部17から読み出して設定する処理である。
【0043】
上記ステップS16にて測定値を記憶したら、異物判定処理(ステップS17)が行われる。異物判定処理は、造形テーブル2の表面の異常(異物残り、シート材貼着ミス等)を判定する処理であり、造形物の造形前に造形テーブル2上の不具合を見つけ出すことを目的としている。
【0044】
すなわち、異物判定処理においては、図9に示すように、まず、処理が有効であるか否かが判断され(ステップS60)、有効であると判断した場合(ステップS60のYES)は、上述したような入力情報等に基づく入力値(数値等)を読み込む(ステップS61)。ここでの入力値としては、測定値(Xmn,Ymn,Zmn)に対するしきい値(THx(=Xmn±α),THy(=Ymn±β),THz(=Zmn±γ))等が挙げられる。
【0045】
入力値(しきい値)を読み込んだら、測定値と比較して(ステップS62)、入力値(しきい値)よりも大きい値があるか否かが判断される(ステップS63)。入力値(しきい値)よりも大きい値がないと判断した場合(ステップS63のNO)は、造形テーブル2上に不具合がないとして異物判定処理を終了し、図4の補正値算出処理(ステップS18)に移行する。
【0046】
一方、入力値(しきい値)よりも大きい値があると判断した場合(ステップS63のYES)は、エラー処理(ステップS64)に移行する。なお、このエラー処理では、制御装置10が、例えば図示しない報知手段(表示手段、音声出力手段を含む)によって、所定の警報(例えば、造形テーブル2の点検を促す文言等)をユーザーに向けて表示出力又は音声出力すること等が挙げられる。なお、エラー処理の後は、再度異物判定処理を行っても良いし、N点測定処理(ステップS15)等の任意の処理に移行しても良いし、図のフローチャートによる高さ調整方法を終了するようにしても良い。
【0047】
図4に戻り、次に算出部15によって、補正値算出処理を実行する(ステップS18)。補正値算出処理においては、まず、各測定点(N点)のZ方向高さの測定値(Xmn,Ymn,Zmn)に基づき、例えば予め定められている各測定点のX軸、Y軸及びZ軸の設計値(又は初期値)(Xn,Yn,Zn)からの変位量(ΔXn,ΔYn,ΔZn)を基に、造形テーブル2の測定領域SA(又は自動測定領域ASA)の高低マップデータを算出する。そして、算出された高低マップデータの高低を平坦(Z-home=0と同じ)にするために、逆位相の高低マップデータを補正値として算出する。
【0048】
補正値を算出したら、補正値を記憶部17等に保存する(ステップS19)。次に、ヘッドユニット1を造形テーブル2の上記原点位置へ移動させる(ステップS20)。そして、制御装置10は、実際の造形物の造形(印刷)を一層目から開始する(ステップS21)。
【0049】
なお、造形中においては、制御措置10は、高さ調整部16を介して、補正値を反映させて平坦となるように生成された高低マップデータに基づき、例えば昇降機構4を制御し、造形テーブル2の高さ位置を調整して歪みを吸収して平坦となるようにヘッドユニット1から溶融樹脂を吐出する。これにより、積層される溶融樹脂の表面の高さ方向の歪みの発生を抑制し、造形物の局所的な剥がれや歪み等を効果的に防止することができる。
【0050】
なお、造形テーブル2の歪み吸収は、造形テーブル2の高さ位置を調整することに止まらず、ヘッドユニット1をZ方向に移動自在な構成としてこれの高さ調整を行ったり、ヘッドユニット1のノズルヘッド部1aから吐出される溶融樹脂の吐出量、吐出高さ、温度等を制御して造形層の厚さを変えて高さ調整を行ったりしても良い。
【0051】
このように、本実施形態の高さ調整方法によれば、造形テーブル2の全体領域AAよりも狭く造形領域MAよりも広い測定領域SA(又は自動測定領域ASA)を設定し、設定された領域内において任意の数の測定点を測定して、造形テーブル2の歪み補正を行うことができる。
【0052】
このため、造形テーブル2の全体領域AA内の複数の測定点を測定する場合と比較して、造形テーブル2上の複数の測定点の測定時間の短縮を図りつつも、造形テーブル2の歪み補正を精度良く行うことが可能となる。そして、制御装置10は、造形開始後に、例えば、所定の層数分の溶融樹脂が吐出され造形物が形成されたか否かを判断すること等によって、造形が終了するまで待って(ステップS22のNO)、終了したら(ステップS22のYES)、本フローチャートによる一連の高さ調整方法を含む造形処理を終了する。
【0053】
なお、上記初期設定処理(ステップS23)の後は、原点検出処理(ステップS24)、N点測定処理(ステップS25)、測定値の記憶(ステップS26)、異物判定処理(ステップS27)、補正値算出処理(ステップS28-1)、補正値の保存(ステップS28-2)、及び原点位置への移動(ステップS29)の各工程が行われ、本フローチャートを終了する。これら各工程は、上述したステップS14~S20の内容と重複するため、ここでは説明を省略する。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、この実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、上記実施形態では、測定領域設定(図4:ステップS12)と、測定点設定(図4:ステップS13)における測定点数又は測定ピッチの設定の両方を実行したが、いずれか一方のみを実行しても良い。測定領域設定のみを実行する場合には、測定点は予め決められた測定点のうち、設定された測定領域内の測定点のみを測定する。また、測定点数又は測定ピッチの設定のみを実行する場合には、予め設定された測定領域を使用し、測定点数又は測定ピッチのみを設定された値に変更すれば良い。何れの場合でも、造形テーブル上の複数の測定点の測定時間の短縮を図ることができるという効果を奏する。また、測定領域を設定する場合には、造形テーブル上の複数の測定点の測定時間の短縮を図りつつ精度良い歪み補正を行うことができるという効果を奏する。
【0055】
このように、本発明は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0056】
なお、本実施の形態で説明した高さ調整方法は、予め用意された高さ調整プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、HDD、SSD、CD-ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 ヘッドユニット
2 造形テーブル
3 センサ部
4 昇降機構
10 制御装置
11 入力部
12 測定領域設定部
13 測定点設定部
14 取得部
15 算出部
16 高さ調整部
17 記憶部
100 3Dプリンタ(三次元造形装置)
図1
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図9