(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061381
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】自動食器洗浄機用洗浄剤組成物および自動食器洗浄機による食器の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 1/44 20060101AFI20240425BHJP
A47L 15/42 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
C11D1/44
A47L15/42 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169293
(22)【出願日】2022-10-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】591225132
【氏名又は名称】株式会社アルボース
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】立岩 雅大
(72)【発明者】
【氏名】三輪 真之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕美
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AE02
4H003DA19
4H003DB02
4H003DC02
4H003EA21
4H003FA04
4H003FA17
4H003FA23
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】本発明は、油に対する洗浄力、低起泡性、および界面活性剤の樹脂に対する低付着性において優れる自動食器用洗浄機用洗浄剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、曇点が60℃以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンを含有する、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曇点が60℃以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンを含有する、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項2】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンの曇点が、20~60℃である、請求項1に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに、アルカリ剤を含有する、請求項1に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を用いて食器を洗浄する、自動食器洗浄機による食器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物およびそれを用いた自動食器洗浄機による食器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動食器洗浄機は、専用の洗浄剤を希釈した洗浄剤希釈液を、汚れの付着した洗浄すべき食器類の表面に高圧水流で噴射することで、食器類に付着した汚れを落としている。このとき、例えば、自動食器洗浄の洗浄性を高めるために、洗浄剤には、アルカリ剤や界面活性剤などの洗浄成分が配合されており(例えば、特許文献1を参照)、特に油汚れに対する洗浄力を高めることを目的としては、非イオン界面活性剤がよく配合される。
【0003】
自動食器洗浄機用洗浄剤に配合される非イオン界面活性剤には、種々の性能が要求され、例えば、非イオン界面活性剤に起泡性があると、泡を原因とする水圧の低下が生じ、噴射洗浄による洗浄効果を低下させてしまうことから、自動食器洗浄機用洗浄剤に配合される非イオン界面活性剤は、まず低起泡性であることが求められる。また、自動食器洗浄機用洗浄剤の成分は、洗浄後の食器の美観(跡残り)にも影響を与えるが、特に非イオン界面活性剤は、食器(特に樹脂製食器)への付着が問題となることがあることから、樹脂に対して低付着性であることも求められている。
【0004】
このように、自動食器洗浄機用洗浄剤に配合される非イオン界面活性剤には、種々の性能が求められるのであるが、これら性能を十分な水準で満足するような非イオン界面活性剤はこれまで見出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、油に対する洗浄力、低起泡性、および界面活性剤の樹脂に対する低付着性において優れており、自動食器洗浄機用洗浄剤に配合するのに適した非イオン界面活性剤を新たに見出し、もって、油に対する洗浄力、低起泡性、および界面活性剤の樹脂に対する低付着性において優れる自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、曇点が60℃以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンが、油に対する洗浄力、低起泡性、および界面活性剤の樹脂に対する低付着性の全てにおいて優れており、これを配合する洗浄剤組成物が、自動食器洗浄機用洗浄剤として優れることを見出して、本発明を完成させた。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
[1]曇点が60℃以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンを含有する、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
[2]ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンの曇点が、20~60℃である、[1]に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
[3]さらに、アルカリ剤を含有する、[1]に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
[4][1]に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を用いて食器を洗浄する、自動食器洗浄機による食器の洗浄方法。
【0009】
なお、前記[1]から[4]の各構成は、任意に2つ以上を選択して組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、油に対する洗浄力、低起泡性、および界面活性剤の樹脂に対する低付着性において優れる自動食器用洗浄機用洗浄剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書中で使用される用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で解釈される。
【0012】
<自動食器洗浄機用洗浄剤組成物>
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物(以下、単に洗浄剤組成物ということがある)は、曇点が60℃以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンを含有する。本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、非イオン界面活性剤として、曇点が60℃以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンを含有することに特徴がある。曇点が60℃以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンは、前述のとおり、非イオン界面活性剤の中でも、油に対する洗浄力、低起泡性、および界面活性剤の樹脂に対する低付着性の全てに優れており、これを含有する洗浄剤組成物は、自動食器洗浄機用洗浄剤として好適に使用できる。
【0013】
[ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン]
本発明において、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンは、曇点が60℃以下のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンを使用する。
【0014】
ここで、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンは、具体的に、下記の一般式で示される化合物であり、当該技術分野において公知の化合物を、広く使用することができる。
【化1】
[式中、R
1は、炭素原子数1~22の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキルエーテル基であり、A
1OおよびA
2Oは、それぞれエチレンオキサイド基またはプロピレンオキサイド基を示し、m、nはそれぞれA
1OおよびA
2Oの平均付加モル数であって1以上の数を示す。好ましくは、m、nは、それぞれ1000以下である。少なくとも(A
1O)
mおよび(A
2O)
nのいずれかに、1以上のエチレンオキサイド基が含まれ、かつ少なくとも(A
1O)
mおよび(A
2O)
nのいずれかに、1以上のプロピレンオキサイド基が含まれる。なお、mが2以上のとき、(A
1O)
mにおいて、それぞれのA
1Oは同一のオキシアルキレン基であってもよく、異なるオキシアルキレン基であってもよい。また、nが2以上のとき、(A
2O)
nにおいて、それぞれのA
2Oは同一のオキシアルキレン基であってもよく、異なるオキシアルキレン基であってもよい。]
【0015】
上記式において、A1Oは、前述のとおり、エチレンオキサイド(EO)基またはプロピレンオキサイド(PO)基であって、(A1O)mは、EOのみが付加されたもの(EO基のみからなるもの)、POのみが付加されたもの(PO基のみからなるもの)、EOとPOが混合して付加されたもの(EO基とPO基とからなるもの)を含む。EOとPOが混合して付加されたものである場合、EO基とPO基とが不連続に付加されても、ブロック状に付加されていてもよい。また、A2O及び(A2O)nについても、A1O及び(A1O)mとそれぞれ同様に考えることができる。
【0016】
また、曇点とは、透明または半透明な界面活性剤水溶液において、温度変化によって相分離が起き、その結果不透明になる温度のことをいう。本発明において、曇点は、以下の方法により測定される。
【0017】
まず、1質量%の非イオン界面活性剤の水溶液を調製する。攪拌しながら、その水溶液を昇温し、不透明となった時の温度を当該非イオン界面活性剤の曇点として測定する。
【0018】
本発明において、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンは、曇点が60℃以下のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンであれば特に制限なく使用でき、例えば、当該技術分野において一般的に使用されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンの中から、曇点が60℃以下のものを適宜選択して使用することができる。
【0019】
本発明において、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンヤシアルキルアミン等を好適に使用できる。
【0020】
本発明において、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンの曇点は、60℃以下のものを使用するが、例えば、55℃以下のものを好ましく使用でき、50℃以下のものをより好ましく使用できる。また、曇点が、例えば、20℃以上のものを使用でき、25℃以上のものを好ましく使用でき、30℃以上のものをより好ましく使用できる。曇点の好ましい範囲としては、例えば、20~60℃であり、好ましくは25~55℃であり、より好ましくは30~50℃である。曇点が60℃超であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンは、起泡性が強いことから自動食器洗浄機用途には不適である。また、曇点が20℃未満であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンは、曇点が低いことによる配合安定性の悪さが場合によっては問題となることがある。
【0021】
なお、本発明の洗浄剤組成物において、曇点が60℃以下のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンは、1種単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明において、曇点が60℃以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンは、例えば、以下の市販品を使用することができる。ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社のリポノールC/18-18[ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンヤシアルキルアミン(曇点:45℃)]、青木油脂工業社のブラウノンLPE―1007[ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルアミン(曇点:33℃)]、ダウ・ケミカル社のTRITON CF-32 surfactant[ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン(曇点:24℃)]など。
【0023】
本発明の洗浄剤組成物において、曇点が60℃以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンの含有量は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限なく、適量配合できる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンの含有量の下限としては、洗浄力の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、1質量%以上が特に好ましい。また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンの含有量の上限としては、洗浄剤組成物の配合安定性の観点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンの含有量の数値範囲としては、0.001質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。
【0024】
[アルカリ剤]
本発明の洗浄剤組成物は、アルカリ剤を好ましく含有することができ、高い洗浄力が要求される自動食器洗浄機用洗浄剤用途に使用することができる。アルカリ剤は、当該技術分野において公知のものを、特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩;珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸塩;あるいは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等のアルカノールアミン等を使用することができる。中でも、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムを好適に使用できる。なお、本発明の洗浄剤組成物において、アルカリ剤は、1種単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明の洗浄剤組成物におけるアルカリ剤の含有量は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限なく、適量配合できる。アルカリ剤の含有量の下限としては、洗浄力の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。また、アルカリ剤の含有量の上限としては、洗浄剤組成物の配合安定性の観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。アルカリ剤の含有量の数値範囲としては、0.01質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。なお、アルカリ剤として、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを使用する場合、劇物扱いとなることを回避するために、それぞれの含有量は、5質量%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明の洗浄剤組成物には、上記成分の他、必要に応じて水、高分子分散剤、キレート剤、酵素、色素、殺菌剤、水溶性溶剤、消泡剤、漂白剤、漂白活性化剤、酸化防止剤、香料、金属腐食防止剤、防腐剤等を含有させることができる。また、本発明の洗浄剤組成物には、本発明の効果が奏される範囲であれば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン以外の任意の界面活性剤(例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤)も含有させることができる。なお、本発明は、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物であることから、例えば、酵素であるセルラーゼは、含有しないことが好ましい。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物において、高分子分散剤は、例えば、スケール発生防止、スケール付着防止等の観点から含有させることができる。高分子分散剤は、当該技術分野において公知のものを、特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体、オレフィン/マレイン酸共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体、無水マレイン酸/エチレン共重合体、無水マレイン酸/酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸/アクリル酸エステル共重合体、糖類/アクリル酸共重合体、リグニンスルホン酸、ポリアスパラギン酸、ポリエチレンイミン、アルコキシル化ポリエチレンイミンおよびこれらの塩等を使用することができる。中でも、ポリアクリル酸、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体、およびこれらの塩を好適に使用でき、ポリアクリル酸、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体、およびこれらの塩を特に好適に使用できる。これらの平均分子量は、当該技術分野において一般的に使用される範囲であればよく、例えば、1000~100000である。なお、本発明の洗浄剤組成物において、高分子分散剤は、1種単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。(なお、本明細書において、平均分子量は、重量平均分子量を意味する。)
【0028】
本発明の洗浄剤組成物における高分子分散剤の含有量は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限なく、適量配合できる。高分子分散剤の含有量の下限としては、スケール付着防止の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。また、高分子分散剤の含有量の上限としては、洗浄剤組成物の配合安定性の観点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。高分子分散剤の含有量の数値範囲としては、0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることが更に好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。
【0029】
本発明の洗浄剤組成物において、キレート剤は、例えば、洗浄力の向上、スケール発生防止等の観点から含有させることができる。キレート剤は、当該技術分野において公知のものを、特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,3-プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸(DPTA-OH)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、3-ヒドロキシ-2,2-イミノジコハク酸(HIDS)、アラニン二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、トリポリリン酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、ジエチルグルタル酸、フィチン酸およびこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)等を使用することができる。中でも、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、およびこれらの塩を好適に使用でき、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩を特に好適に使用できる。なお、本発明の洗浄剤組成物において、キレート剤は、1種単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本発明の洗浄剤組成物におけるキレート剤の含有量は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限なく、適量配合できる。キレート剤の含有量の下限としては、洗浄力の観点から、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましい。また、キレート剤の含有量の上限としては、洗浄剤組成物の配合安定性の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。キレート剤の含有量の数値範囲としては、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
【0031】
本発明の洗浄剤組成物が含有する水としては、特に限定されず、例えば水道水、イオン交換水、精製水、蒸留水、純水、軟水、硬水等が挙げられる。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物は、上述の各成分を常法により混合することで製造することができる。
【0033】
[自動食器洗浄機用用途]
本発明の洗浄剤組成物は、自動食器洗浄機にて用いられる。典型的には、各種自動食器洗浄機に一体的に内蔵もしくは付設される洗浄剤供給装置を介して所定濃度に希釈され、その洗浄剤希釈液が、自動食器洗浄機において、被洗浄物を洗浄するのに用いられる。ここで、本発明の洗浄剤組成物を使用することができる自動食器洗浄機に、特に制限はなく、例えば、ドアタイプ、アンダーカウンタータイプ、ラックコンベアタイプ、フライトコンベアタイプ、フィルアンドダンプタイプ等、一般的に流通している家庭用または業務用各種自動食器洗浄機において使用することができる。
【0034】
上記被洗浄物としては、自動食器洗浄機により洗浄され得るものであれば、特に制限はないが、例えば、飲食器、調理器具、トレイ、瓶、缶等が挙げられる。
【0035】
なお、本発明の洗浄剤組成物は、曝気洗浄、超音波洗浄、浸漬洗浄、減圧沸騰式洗浄等にも使用できる。
【0036】
<自動食器洗浄機による食器の洗浄方法>
本発明の自動食器洗浄機による食器の洗浄方法(以下、単に洗浄方法ということがある)は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を用いることを特徴とし、その他の工程、条件等は制限されない。なお、この洗浄方法の説明には、前述の本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物の記載が援用できる。
【0037】
本発明の洗浄方法は、例えば、本発明の洗浄剤組成物の希釈液を、自動食器洗浄機庫内に収容された食器に対し噴射する、噴射洗浄工程を含む。
【0038】
本発明の洗浄方法において、本発明の洗浄剤組成物は、通常、水で希釈されて、洗浄剤希釈液として使用される。このときの希釈倍率は、例えば、2~100000倍である。また、洗浄剤希釈液中の本発明の洗浄剤組成物の濃度は、例えば、0.001質量%以上50質量%以下である。
【0039】
本発明の洗浄方法において、噴射洗浄時の温度は、適宜設定可能であるが、例えば、1~100℃である。ここで、一般的に流通している家庭用または業務用の噴射洗浄時の温度は、60~70℃であることが一般的であり、本発明の洗浄方法は、このような温度(60~70℃)において好適に使用できる。
【0040】
本発明の洗浄方法において、噴射洗浄による洗浄時間は、適宜設定可能であるが、例えば、1秒~24時間である。
【実施例0041】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0042】
下記表1に示す洗浄液を調製し、以下の試験を行った。配合に用いた各成分を以下に示す。なお、以下において「%」は特に記載がない限り質量%を表す。また、各種界面活性剤の曇点は、前述の測定方法により測定した。
【0043】
[非イオン界面活性剤]
<ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン>
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン1(曇点45℃):商品名「リポノールC/18-18(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンヤシアルキルアミン)」(EO8モル:PO8モル;比率EO:PO=1:1)、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン2(曇点33℃):商品名「ブラウノンLPE-1007(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルアミン)」(比率EO:PO=1:1.86)、青木油脂工業社製
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン3(曇点:24℃):商品名「TRITON CF-32 surfactant」(比率EO:PO=不明)、ダウ・ケミカル社製
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン4(曇点95℃):商品名「ブラウノンSAP-3004」(EO85モル:PO15モル;比率EO:PO=1:0.18)、青木油脂工業社製
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン5(曇点74℃):商品名「ピュアミールCF-60」(比率EO:PO=不明)、三洋化成工業社製
【0044】
<その他の非イオン界面活性剤>
・ポリオキシエチレンアルキルアミン1(曇点37℃):商品名「アミート105(ポリオキシエチレンラウリルアミン)」(EO付加モル数不明)、花王社製
・ポリオキシエチレンアルキルアミン2(曇点59℃):商品名「ブラウノンL-205(ポリオキシエチレンラウリルアミン)」(EO5モル付加物)、青木油脂工業社製
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(曇点38℃):商品名「プルラファックLFー901」、BASF社製
・リバースプルロニック型ブロックポリマー(曇点36℃):商品名「ブラウノンEP-0480」、青木油脂工業社製
【0045】
[その他の成分]
・水酸化ナトリウム:東ソー社製
【0046】
[油に対する洗浄試験]
<汚れ付着食器>
モデル汚れは、牛脂と大豆油とを1:1で混合した油を使用した。この油を15gずつ、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂製食器に均一に塗布し、汚れ付着食器を準備した。
【0047】
<洗浄方法>
業務用自動食器洗浄機(ホシザキ株式会社製、機種:JW-300TUD)を用いて、上記汚れ付着食器を洗浄した。具体的には、以下の手順で洗浄した。
1)洗浄槽に水道水を15L投入し、60℃まで昇温した。
2)自動食器洗浄機に洗浄液15g(洗浄槽の水15Lに対して)を投入した。
3)自動食器洗浄機庫内に汚れ付着食器をセットし、洗浄30秒、濯ぎ1分の条件で洗浄を行った。
【0048】
<評価方法>
洗浄後、汚れ残りを目視及び直接手で触ることで確認し、下記の評価基準に基づいて油に対する洗浄力を評価した。
◎:汚れ、ぬるつきが確認できない。
○:明らかな汚れはないものの、若干のぬるつきが観察される。
×:明らかな汚れ、ぬるつきが観察される。
【0049】
[泡立ち試験]
業務用自動食器洗浄機(ホシザキ株式会社製、機種:JW-300TUD)を用いて、泡立ち試験を実施した。具体的には、以下の手順で泡立ち試験を実施した。
1)洗浄槽に水道水を15L投入し、60℃まで昇温した。
2)自動食器洗浄機に洗浄液15g(洗浄槽の水15Lに対して)を投入した。
3)30秒間自動食器洗浄機を運転させ、庫内の泡立ち量を下記評価基準に基づき評価した。
○:泡の高さが水面から1cm未満。
×:泡の高さが水面から1cm以上。
【0050】
[樹脂に対する界面活性剤の付着性試験]
業務用自動食器洗浄機(ホシザキ株式会社製、機種:JW-300TUD)を用いて、樹脂に対する界面活性剤の付着性試験を実施した。具体的には、以下の手順で付着性試験を実施した。
1)洗浄槽に水道水を15L投入し、60℃まで昇温した。
2)自動食器洗浄機に洗浄液15g(洗浄槽の水15Lに対して)を投入した。
3)自動食器洗浄機庫内にポリプロピレン樹脂製食器をセットし、洗浄30秒、濯ぎ1分の条件で洗浄を行った。
4)洗浄後の食器にヨウ素溶液を塗布し、食器に残留する界面活性剤にヨウ素を付着させることで、食器に残留する界面活性剤を可視化した。これを目視で確認し、樹脂製食器への界面活性剤の付着性を評価した。評価基準は以下のとおりである。なお、「-」は、試験を実施しなかったことを示す。
○:食器への界面活性剤の残留が観察されない。
×:食器への界面活性剤の残留が観察される。
【0051】
【0052】
上記各種試験の結果を表1に示す。表1に示されるとおり、曇点が60℃以下(具体的には、45℃、33℃、または24℃)であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンを含有する洗浄液(実施例1~4)は、油に対する洗浄力、低起泡性、および界面活性剤の樹脂に対する低付着性の全てにおいて優れていた。これに対し、曇点が60℃超のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンを含有する洗浄液(比較例1~2)は、油に対する洗浄力、樹脂への低付着性には優れるものの、起泡性があって、自動食器洗浄機用洗浄剤用途には適さないことがわかった。
【0053】
また、ポリオキシエチレンアルキルアミンを含有する洗浄液(比較例3~4)は、含有されるポリオキシエチレンアルキルアミンの曇点が60℃以下であっても起泡性があった。特に、曇点が37℃と低いポリオキシエチレンアルキルアミンを使用した場合(比較例4)であっても起泡性があり、ポリオキシエチレンアルキルアミンは、自動食器洗浄機用洗浄剤用途には適さないことがわかった。
【0054】
さらに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンを含有する洗浄液(実施例1~4)は、同じ非イオン界面活性剤に分類されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有する洗浄液(比較例5)およびリバースプルロニック型ブロックポリマーを含有する洗浄液(比較例6)と比較して、油に対する洗浄力、および界面活性剤の樹脂に対する低付着性おいて優れていた。ここで、実施例1~4および比較例5~6に含まれる非イオン界面活性剤は、いずれも同様に比較的低い曇点(60℃以下)を有する非イオン界面活性剤であり、低起泡性でもあるが、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンを含有する洗浄液は、より油に対する洗浄力に優れており、かつ樹脂への低付着性にも優れていた。特に、樹脂に対する低付着性については、水温60℃の洗浄条件による試験であることを考慮すれば、曇点が60℃以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンを含有する洗浄液が、界面活性剤の樹脂に対する付着が低く抑えられていたことは、非常に驚くべきことであった。なぜなら、非イオン界面活性剤は、曇点以上の温度で、溶質と水とに分離してしまうことが知られており、通常であれば、樹脂への付着が問題となると考えられるからである。
【0055】
以上のとおり、本発明のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミンを含有する洗浄剤組成物は、油に対する洗浄力、低起泡性、界面活性剤の樹脂に対する低付着性において優れており、自動食器洗浄機用洗浄剤用途に適していることが明らかとなった。