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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061392
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】車両用収容装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
B60R7/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169316
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福井 直行
(72)【発明者】
【氏名】菱田 裕
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022CA07
3D022CB01
3D022CC18
3D022CD12
3D022CD18
(57)【要約】
【課題】上部開口を大きく開放させる位置までリッドの回動を補助することで、使用感の向上を図る。
【解決手段】車両用収容装置はボックス本体11、リッド30、軸40、切り替え機構50及び補助機構70を備える。軸40は、回動するシム41と、前後にスライドするスライド軸45とを備える。切り替え機構50は、リッド30の左右両側に設けられ、スライド軸45が、対応するシム41に対し回動伝達可能に連結された連結状態と、連結を解除された連結解除状態との間で、軸40の状態を切り替える。補助機構70は、軸40を中心としてリッド30が上部開口を開放する側へ回動するのを補助する。補助機構70は、左右の両シム41を連動可能に連結する連結機構部71と、連結機構部71を介して両シム41の間で力が伝達される経路で、リッド30が上部開口を開放する際に両シム41が回動する方向へ同シム41を付勢する付勢部材76とを備える。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、かつ互いに直交する第1辺及び第2辺を有する矩形状の上部開口が形成されたボックス本体と、前記上部開口の四隅で、前記第2辺に沿う方向へそれぞれ延びる軸のうち、前記第1辺に沿う方向における片側の一対の軸を中心として回動することで前記上部開口を開閉するリッドと、を備える車両用収容装置であって、
前記ボックス本体及び前記リッドの一方を第1部材とし他方を第2部材とした場合、各軸は、前記第1部材に対し回動可能に設けられたシムと、前記第2部材に対し回動を規制された状態で前記第2辺に沿う方向にスライド可能に設けられたスライド軸と、を備え、
前記第2部材の前記第1辺に沿う方向における両側には、前記第2辺に沿って相対向する一対の前記スライド軸が、対応する前記シムに対し回動を伝達可能に連結された連結状態と、前記連結を解除されて前記回動の伝達が遮断された連結解除状態との間で、前記軸の状態を切り替える切り替え機構がそれぞれ設けられ、
前記第1部材のうち、前記第2辺に沿う方向における少なくとも一方の側部には、前記第1辺に沿う方向における片側の前記切り替え機構により、前記軸が前記連結解除状態に切り替えられた場合、他側の前記軸を中心として前記リッドが前記上部開口を開放する側へ回動するのを補助する補助機構が設けられ、
前記補助機構は、一対の前記シムを連動可能に連結する連結機構部と、前記連結機構部を介して両シムの間で力が伝達される経路に設けられ、かつ前記リッドが前記上部開口を開放する際に両シムが回動する方向へ同シムを付勢する付勢部材と、を備える車両用収容装置。
【請求項2】
前記連結機構部は、
前記第1辺に沿う方向に延び、かつ前記第1部材に対し回動可能に支持されたシャフトと、
前記シャフトの両端部に一体回動可能に設けられた一対の第1回動伝達部と、
前記シム毎に一体回動可能に設けられた第2回動伝達部と、を備え、
各第2回動伝達部と、対応する前記第1回動伝達部とは、回動を伝達可能に係合されている請求項1に記載の車両用収容装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記シャフトに対し巻かれた状態で装着され、かつ一方の端部が前記第1部材に係止され、かつ他方の端部が前記シャフトに係止された捩りコイルばねを備えている請求項2に記載の車両用収容装置。
【請求項4】
各切り替え機構は、
前記第1辺に沿う方向における前記第2部材の側部に操作可能に設けられた操作部と、
前記操作部が操作された場合の同操作部の動きを前記第2辺に沿って相対向する一対の前記スライド軸に伝達して、両軸を前記連結状態にする連結位置から、前記連結解除状態にする連結解除位置へ両スライド軸をスライドさせる伝達機構部と、を備える請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるコンソールボックス等の車両用収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載されるボックス本体と、リッド(蓋体)とを備える車両用収容装置(両開き収納装置)が開示されている。ボックス本体には、矩形状の上部開口が形成されている。上部開口は、左右方向に延びる第1辺と、前後方向に延びる第2辺とを有している。
【0003】
リッドは、上部開口の四隅で、第2辺に沿う方向(前後方向)へそれぞれ延びる軸のうち、第1辺に沿う方向(左右方向)における片側の一対の軸を中心として回動する。リッドは、この回動により上部開口を開閉する。
【0004】
さらに、上記車両用収容装置には、リッドが上部開口を開放する側へ回動するのを補助する補助機構が設けられている。補助機構は、押圧部材を通じてリッドを上方へ付勢する付勢部材を備えている。
【0005】
上記従来の車両用収容装置によると、リッドによって閉塞されている上部開口を開放する際に、リッドが補助機構によってボックス本体から押し上げられる。リッドのうち、ボックス本体から突出した部分を把持することで、軸を中心としてリッドを容易に回動させることができる。この回動により、上部開口を開放及び閉塞することができるため、リッドの良好な操作性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-38600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来の車両用収容装置では、付勢部材の付勢力がリッドに作用するのは、リッドの開動作の初期の段階のみである。そのため、上部開口を大きく開放させる位置までリッドを回動させることが困難である。このように、従来の車両用収容装置には、使用感の面で改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための車両用収容装置の各態様を記載する。
[態様1]車両に搭載され、かつ互いに直交する第1辺及び第2辺を有する矩形状の上部開口が形成されたボックス本体と、前記上部開口の四隅で、前記第2辺に沿う方向へそれぞれ延びる軸のうち、前記第1辺に沿う方向における片側の一対の軸を中心として回動することで前記上部開口を開閉するリッドと、を備える車両用収容装置であって、前記ボックス本体及び前記リッドの一方を第1部材とし他方を第2部材とした場合、各軸は、前記第1部材に対し回動可能に設けられたシムと、前記第2部材に対し回動を規制された状態で前記第2辺に沿う方向にスライド可能に設けられたスライド軸と、を備え、前記第2部材の前記第1辺に沿う方向における両側には、前記第2辺に沿って相対向する一対の前記スライド軸が、対応する前記シムに対し回動を伝達可能に連結された連結状態と、前記連結を解除されて前記回動の伝達が遮断された連結解除状態との間で、前記軸の状態を切り替える切り替え機構がそれぞれ設けられ、前記第1部材のうち、前記第2辺に沿う方向における少なくとも一方の側部には、前記第1辺に沿う方向における片側の前記切り替え機構により、前記軸が前記連結解除状態に切り替えられた場合、他側の前記軸を中心として前記リッドが前記上部開口を開放する側へ回動するのを補助する補助機構が設けられ、前記補助機構は、一対の前記シムを連動可能に連結する連結機構部と、前記連結機構部を介して両シムの間で力が伝達される経路に設けられ、かつ前記リッドが前記上部開口を開放する際に両シムが回動する方向へ同シムを付勢する付勢部材と、を備える車両用収容装置。
【0009】
上記の構成によれば、リッドが上部開口を閉塞した状態で、両切り替え機構により上部開口の四隅の各軸が連結状態にされると、リッドが四隅の軸を通じて、ボックス本体に連結された状態となる。第1辺に沿う方向における片側の一対の軸を中心としたリッドの回動が規制される。リッドは、上部開口を閉塞した状態に保持される。
【0010】
このとき、補助機構の付勢部材は、両シムを回動させる付勢力を蓄えている。回動の方向は、リッドが上部開口を開放する際に両シムが回動する方向である。
第1辺に沿う方向における片側の切り替え機構により、一対の軸のそれぞれの状態が連結状態から連結解除状態に切り替えられると、それらの軸におけるシムとスライド軸との連結が解除されて、回動の伝達が遮断される。この遮断により、各シムの回動が可能となる。
【0011】
そのため、補助機構では、付勢部材が、蓄えていた付勢力を開放する。この付勢力が両シムに作用することで、各シムは、リッドが上部開口を開放する際に回動する方向へ回動する。
【0012】
切り替え機構により、連結解除状態に切り替えられていない側の一対の軸では、それぞれスライド軸がシムに連結されていて、シムの回動がスライド軸に伝達される。そのため、リッドは、切り替え機構により連結状態となっている側の軸を中心として、上部開口を開放させる側へ回動される。
【0013】
このように、補助機構は、シムを回動させることで、上部開口を開放させる側へリッドを回動させる補助をする。そのため、リッドを付勢部材の付勢力によって上方へ押し上げる従来の車両用収容装置よりも、リッドを大きな角度回動させて、起立状態にすることが可能である。上部開口を通じた物品のボックス本体に対する出し入れがしやすくなる。
【0014】
起立状態のリッドが、連結状態の軸を中心として、上部開口を閉塞する側へ回動されると、シムが回動する。この回動は、連結機構部を介して、スライド軸が連結されていない側のシムに伝達される。後者のシムが前者のシムに連動(同期)して回動する。両シムの回動の方向は、リッドが上部開口を閉塞する際に両シムが回動する方向である。上記回動は付勢部材にも伝達される。そのため、上記回動に伴い、付勢部材が、両シムを回動させる付勢力を蓄える。
【0015】
リッドが上部開口を閉塞する位置まで回動されると、両シムは、上述したリッドによる上部開口の閉塞時の回動位相に戻る。そのため、連結が解除されている側の一対の軸では、スライド軸をスライドさせることでシムに連結させることが可能となる。スライド軸がシムに連結されると、リッドは、四隅の軸を通じて、ボックス本体に連結された状態に戻る。リッドは、上部開口を閉塞した状態に保持される。
【0016】
[態様2]前記連結機構部は、前記第1辺に沿う方向に延び、かつ前記第1部材に対し回動可能に支持されたシャフトと、前記シャフトの両端部に一体回動可能に設けられた一対の第1回動伝達部と、前記シム毎に一体回動可能に設けられた第2回動伝達部と、を備え、各第2回動伝達部と、対応する前記第1回動伝達部とは、回動を伝達可能に係合されている[態様1]に記載の車両用収容装置。
【0017】
上記の構成によれば、シャフトは、第1辺に沿って延びる軸線を中心として回動可能である。これに対し、各シムは第2辺に沿って延びる軸線を中心として回動可能である。第1辺及び第2辺が直交していることから、前者の軸線と後者の軸線とは直交している。しかし、シャフトの端部に設けられた第1回動伝達部と、各シムに設けられて、第1回動伝達部に係合された第2回動伝達部との間では、回動が方向を変えながら伝達される。そのため、シャフトの回動は、第1回動伝達部及び第2回動伝達部を介して両シムに伝達される。また、シムの回動は、第2回動伝達部及び第1回動伝達部を介してシャフトに伝達される。
【0018】
[態様3]前記付勢部材は、前記シャフトに対し巻かれた状態で装着され、かつ一方の端部が前記第1部材に係止され、かつ他方の端部が前記シャフトに係止された捩りコイルばねを備えている[態様2]に記載の車両用収容装置。
【0019】
上記の構成によれば、リッドが上部開口を閉塞した状態に保持されているときには、付勢部材(捩りコイルばね)は、シャフトの周りで、同シャフトを回動させる付勢力を蓄えている。回動の方向は、リッドが上部開口を開放する際にシャフトが回動する方向である。
【0020】
第1辺に沿う方向における片側の切り替え機構により、一対の軸のそれぞれの状態が連結状態から連結解除状態に切り替えられると、付勢部材(捩りコイルばね)が、蓄えていた付勢力を開放する。開放された付勢力は、シャフト、第1回動伝達部及び第2回動伝達部を介して両シムに均等に伝達される。
【0021】
各シムは、リッドが上部開口を開放する際に回動する方向へ回動する。リッドは、切り替え機構により、連結解除状態に切り替えられていない側の軸、すなわち連結状態となっている側の軸を中心として、上部開口を開放させる側へ回動する。
【0022】
起立状態のリッドが、スライド軸がシムに連結されている軸を中心として、上部開口を閉塞する側へ回動されると、シムが回動する。この回動は、第2回動伝達部及び第1回動伝達部を介してシャフトに伝達され、同シャフトが回動する。シャフトの回動は、第1回動伝達部及び第2回動伝達部を介して、スライド軸が連結されていない側のシムに伝達される。後者のシムが前者のシムに連動(同期)して回動する。両シムの回動の方向は、リッドが上部開口を閉塞する際に両シムが回動する方向である。
【0023】
上記シャフトの回動が付勢部材(捩りコイルばね)に伝達され、同付勢部材(捩りコイルばね)が、両シムを回動させる付勢力を蓄える。
[態様4]各切り替え機構は、前記第1辺に沿う方向における前記第2部材の側部に操作可能に設けられた操作部と、前記操作部が操作された場合の同操作部の動きを前記第2辺に沿って相対向する一対の前記スライド軸に伝達して、両軸を前記連結状態にする連結位置から、前記連結解除状態にする連結解除位置へ両スライド軸をスライドさせる伝達機構部と、を備える[態様1]~[態様3]のいずれか1つに記載の車両用収容装置。
【0024】
上記の構成によれば、操作部が操作されると、その操作部の動きが伝達機構部によって、第2辺に沿って相対向する一対のスライド軸に伝達される。この伝達により、両スライド軸が、軸を連結状態にする連結位置から、連結解除状態にする連結解除位置へスライドさせられる。連結解除位置では、スライド軸のシムに対する連結が解除されて、回動の伝達が遮断される。
【発明の効果】
【0025】
上記車両用収容装置によれば、上部開口を大きく開放させる位置までリッドを回動させることで、使用感の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】車両用収容装置をコンソールボックスに具体化した一実施形態において、リッドによって上部開口が閉塞されたコンソールボックスの一部を示す斜視図である。
図2】同実施形態におけるボックス本体の一部(基部)を示す斜視図である。
図3図1におけるA部を拡大して示す部分斜視図である。
図4図1の状態から、上部開口が開放される側へリッドが回動されたコンソールボックスの一部を示す斜視図である。
図5図1のコンソールボックスにおける一部の構成部材を示す分解斜視図である。
図6】同じく、図1のコンソールボックスにおける一部の構成部材を示す分解斜視図である。
図7】上記実施形態における前側のシム、前側のスライド軸、及び前スライド部材の対応関係を示す分解斜視図である。
図8】上記実施形態における後側のシム、後側のスライド軸、及び後スライド部材の一部の対応関係を示す部分分解斜視図である。
図9】上記実施形態における右側の切り替え機構の一部の構成部材を示す部分分解斜視図である。
図10】上記実施形態における補助機構の分解斜視図である。
図11】上記実施形態におけるコンソールボックスの上部の部分側面図である。
図12図11の12-12線断面図である。
図13図12におけるB部の拡大断面図である。
図14図12におけるC部の拡大断面図である。
図15図12におけるD部の拡大断面図である。
図16図12における16-16線断面図である。
図17図14における17-17線断面図である。
図18図16の状態から全開位置までリッドが回動された状態を示す断面図である。
図19図13に対応する図であり、左側の操作部が押し込み操作されて、右側の操作部が操作孔から押し出された状態を示す部分平断面図である。
図20図14に対応する図であり、左側の操作部が押し込み操作された場合の部分平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、車両用収容装置を、コンソールボックスに具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって、車両の前進時の左右方向と一致するものとする。
【0028】
ここで、前後方向、上下方向及び左右方向の各方向におけるコンソールボックス10の位置を特定するために、各方向におけるコンソールボックス10の中央部を基準とする。各方向のうち、中央部に近づく方向、側等を「内」、「内方」、「内側」等といい、中央部から遠ざかる方向、側等を「外」、「外方」、「外側」等という。
【0029】
図1は、コンソールボックス10の一部であって、リッド30及びその周辺部分を示している。コンソールボックス10は、車室内において運転席と助手席との間に配置されるセンターコンソールの一部を構成する。
【0030】
図12に示すように、コンソールボックス10は、ボックス本体11、リッド30、4つの軸40、一対の切り替え機構50、及び補助機構70を備えている。次に、コンソールボックス10における各部について説明する。
【0031】
<ボックス本体11>
図1図2及び図4に示すように、ボックス本体11は、本実施形態では、コンソールボックス10のうち、特許請求の範囲における「第1部材」に相当する部材であり、車両に搭載される。
【0032】
ボックス本体11は、基部12、支持部15、及び一対の支持板部25を備えている。
図2に示すように、基部12は、左右方向よりも前後方向に長い形状をなしている。本実施形態では、基部12における左右方向及び前後方向のうち、寸法の小さな方向である左右方向を、コンソールボックス10の「幅方向」としている。上記幅方向は、車幅方向(左右方向)と合致する。
【0033】
基部12の前後方向における中間部分には、他の箇所よりも低い載置部13が形成されている。載置部13には、収容部18の一部を構成する空間部14が形成されている。空間部14の上端は開口されている。
【0034】
図5に示すように、支持部15は、前後方向に対称な構造を有するとともに、左右方向に対称な構造を有している。そのため、以降においては、前後方向における支持部15の一側の構造を説明することで、他側の構造については説明を省略することがある。また、左右方向における支持部15の一側の構造を説明することで、他側の構造については説明を省略することがある。これらの点は、支持部15に限らず、コンソールボックス10の他の構成部材についても同様である。
【0035】
支持部15の下部は、長方形状をなす枠部16によって構成されている。枠部16によって囲まれた空間部17は、上記基部12の空間部14(図2参照)等とともに、小物等の物品を収容するための収容部18を構成している。この収容部18の上縁部、より詳しくは枠部16の内側の面の上縁部は、収容部18の上部開口19を構成している。上部開口19は、平面視で矩形状の一態様である長方形状をなしている。上部開口19は、前後方向に対向した状態でそれぞれ左右方向へ平行に延びる一対(図5では一方のみ図示)の第1辺21と、左右方向に対向した状態でそれぞれ前後方向へ平行に延びる一対の第2辺22とを有している。第1辺21と第2辺22とは直交している。
【0036】
枠部16の前部及び後部からは、支持壁部23がそれぞれ上方へ突出している。両支持壁部23は、支持部15の上部を構成している。各支持壁部23の左右方向における両側部には、円筒状の軸受部24が設けられている。図示はしないが、支持部15は、載置部13(図2参照)上に載置された状態で基部12に取り付けられる。
【0037】
一対の支持板部25は、載置部13の上方で両支持壁部23を、前後方向における外側から挟み込む箇所に配置されている。各支持板部25は、隣接する支持壁部23に取り付けられている。各支持板部25の左右方向における両側部には、円筒状の軸受部26が設けられている。
【0038】
<リッド30>
図1図4及び図6に示すように、リッド30は、本実施形態では、コンソールボックス10のうち、特許請求の範囲における「第2部材」に相当する部材である。
【0039】
図12に示すように、リッド30は、上部開口19の四隅で、前後方向へそれぞれ延びる軸40のうち、左右方向について選ばれた片側の一対の軸40を中心として、閉塞位置と全開位置との間で回動することで、上部開口19を開閉する。
【0040】
リッド30は、閉塞位置では、図1及び図16に示すように、水平状態となって上部開口19(図4図5参照)を閉塞する。リッド30は、全開位置では、図4及び図18に示すように、起立状態となって上部開口19を大きく開放する。
【0041】
なお、以降においては、上部開口19を閉塞した状態のリッド30について説明する。
図5及び図16に示すように、リッド30は、上部開口19を上方から閉塞し得る形状及び大きさを有している。リッド30は、上下方向を自身の厚み方向としている。図1及び図11に示すように、リッド30は、厚み方向における一方(下方)に位置する半割体31と、他方(上方)に位置し、かつ半割体31に結合された半割体36とを備えている。
【0042】
図1及び図6に示すように、半割体31の前後方向における両方の壁部32は、リッド30が上部開口19を閉塞した状態では、上記支持壁部23に対し、前後方向における内側に隣接する。各壁部32における左右両側部には、円筒状の軸受部33が設けられている。
【0043】
半割体31の左右方向における両方の壁部34の前部には、上端が開放された切り欠き部35がそれぞれ形成されている。半割体36の左右方向における両方の壁部37の前部にも、下端が開放された切り欠き部38がそれぞれ形成されている。半割体36が半割体31に結合された状態では、図1及び図11に示すように、両切り欠き部35,38によって矩形状の操作孔39が形成される。
【0044】
<軸40>
図12に示すように、各軸40は、シム41及びスライド軸45を備えている。図7及び図8に示すように、軸40毎のシム41は、前後方向に延びる円筒状又は円柱状のシム本体42と、シム本体42から径方向における外方へ延びるアーム部43とを備えている。軸40毎のシム本体42の一部は、軸受部24,26に回動可能に収容されている(図13図15参照)。前後方向における各シム本体42の内側の面には係合突部44が形成されている。本実施形態では、係合突部44は、シム41の軸線を挟み込む2箇所に形成されているが、これに限られない。
【0045】
シム41毎のアーム部43は、シム本体42と一体で回動する。各アーム部43は、リッド30が全開位置(図18参照)まで回動したときに、ボックス本体11に形成されたストッパ(図示略)に接触することで、それ以上、リッド30が上部開口19を開放する側へ回動するのを規制される。
【0046】
軸40毎のスライド軸45の一部は、軸受部24,33に対し回動を規制された状態で、前後方向へスライド可能、表現を変えると、壁部32から出没し得るように収容されている(図13図15図17参照)。
【0047】
前後方向における各スライド軸45の外側の面には、シム41の上記係合突部44に対応して、係合凹部46が形成されている。係合凹部46は、スライド軸45の軸線を挟み込む2箇所に形成されているが、これに限られない。係合凹部46は、上記係合突部44に対し嵌合し得る形状をなしている。そして、図12図15に示すように、各スライド軸45が、前後方向における外側へスライドして壁部32から突出し、係合凹部46において、対応する係合突部44に嵌合することにより、スライド軸45がシム41に連結される。スライド軸45及びシム41の間で、回動を伝達することが可能となる。軸40のこの状態を「連結状態」というものとする。
【0048】
これに対し、図20に示すように、各スライド軸45が、前後方向における内側へスライドして、係合凹部46が、対応する係合突部44から外れる(離脱する)ことにより、上記連結が解除される。スライド軸45及びシム41の間での回動伝達が遮断される。軸40のこの状態を「連結解除状態」というものとする。
【0049】
図7及び図8に示すように、前後方向における各スライド軸45の外側の面であって、係合凹部46よりも下方となる箇所には傾斜面47が形成されている。スライド軸45毎の傾斜面47は、前後方向における内側ほど下側に位置するように、鉛直面に対し傾斜している(図17参照)。
【0050】
<切り替え機構50>
図6及び図12に示すように、切り替え機構50は、リッド30の左右方向における両側に設けられている。各切り替え機構50は、各軸40の状態を、上記連結状態と上記連結解除状態との間で切り替える機構である。
【0051】
各切り替え機構50は、操作部51、伝達機構部53及び復帰機構部62を備えている。切り替え機構50毎の操作部51(図11参照)は、リッド30の左右方向における両側部に操作可能に設けられている。各操作部51は、上記操作孔39に、左右方向に移動可能に配置されている。
【0052】
切り替え機構50毎の操作部51は、左右方向に延びる板状の伝達部材52によって連結されている。伝達部材52は、伝達機構部53の一部を構成する部材である。また、伝達部材52は、両切り替え機構50に共通の部材として用いられている。
【0053】
伝達部材52は、一方の操作部51に対し、これを押し込む操作(押し込み操作)が行なわれて同操作部51が左右方向における内側へ移動された場合に、その移動を他方の操作部51に伝達し、左右方向における外側へ移動させる。
【0054】
切り替え機構50毎の伝達機構部53は、次の機能を有している。
・操作部51の動きを前後方向に相対向する一対のスライド軸45に伝達して、軸40を連結状態にする連結位置と、連結解除状態にする連結解除位置との間でスライド軸45を移動させる。
【0055】
・前後方向に対向する一対のスライド軸45を、連結位置及び連結解除位置のうち、互いに同じ位置に位置させる。
伝達機構部53は、上記機能を実現するために、上記伝達部材52のほかに、一対のピン54、前スライド部材55、後スライド部材56及び付勢部材61を備えている。
【0056】
図9図13図15に示すように、一対のピン54は、伝達部材52のうち、左右方向における操作部51の内側となる箇所であって、互いに前後方向に離間した箇所から上方へ突出している。
【0057】
前スライド部材55及び後スライド部材56は、ともに前後方向に延びている。前スライド部材55及び後スライド部材56は、それぞれ前後方向における外側の端部において、対応するスライド軸45に結合されている(図17参照)。前スライド部材55及び後スライド部材56は、それぞれ前後方向における内側の端部において、上記伝達部材52上に重ね合わされている。
【0058】
前後方向における前スライド部材55及び後スライド部材56のそれぞれの内側の端部には、カム孔57が形成されている。両カム孔57は、前後方向に対称な形状をなしている。各カム孔57は、前後方向における内側の壁面に、基準面58及び傾斜面59を有している。カム孔57毎の基準面58は、前後方向に対し直交している。カム孔57毎の傾斜面59は、基準面58に対し、左右方向における内側に隣接している。カム孔57毎の傾斜面59は、左右方向における内側ほど前後方向における外側に位置するように、基準面58に対し傾斜している。各カム孔57内には、上述したピン54が挿通されている(図17参照)。
【0059】
付勢部材61は、コイルばね等のばねからなり、前スライド部材55及び後スライド部材56の間に、圧縮された状態で配置されている。この付勢部材61により、前スライド部材55及び後スライド部材56に対しては、常に、前後方向における外側へ向かう付勢力が作用している。この付勢力は、基準面58及び傾斜面59の少なくとも一方がピン54に接触することによって受け止められる。なお、付勢部材61として、コイルばねとは異なる種類のばねが用いられてもよいし、ばねとは異なる付勢部材が用いられてもよい。この点は、後述する復帰機構部62の付勢部材68についても同様である。
【0060】
本実施形態では、図13及び図14に示すように、左右のいずれの操作部51も押し込み操作されていない場合、左右のいずれの切り替え機構50でも、ピン54が、傾斜面59と基準面58との境界部分に接触するように設定されている。この場合、左右のいずれの切り替え機構50でも、軸40が連結状態になる。
【0061】
また、図14及び図20に示すように、操作部51に対する押し込み操作の有無と、カム孔57の内壁面に対するピン54の接触位置との関係が、次の条件を満たすように設定されている。
【0062】
図20に示すように、左右のいずれか一方の操作部51が押し込み操作された場合、押し込み操作された側の切り替え機構50では、ピン54が傾斜面59に接触する。
図19に示すように、上記押し込み操作に伴い、操作部51が操作孔39から押し出された側の切り替え機構50では、ピン54が基準面58に接触する。
【0063】
上記設定により、押し込み操作された側の切り替え機構50(図20参照)では、軸40が連結解除状態にされる。操作部51が押し出された側の切り替え機構50(図19参照)では軸40が連結状態に保持される。
【0064】
図6及び図12に示すように、切り替え機構50は、押し込み操作された操作部51を、押し込み操作される前の状態に戻す復帰機構部62をさらに備えている。復帰機構部62は、切り欠き部63、受け部65、押圧部材66、及び付勢部材68を備えている。
【0065】
切り欠き部63は、伝達部材52の後部であって左右方向における中央部に形成されている。切り欠き部63は、後方が開放された三角形状をなし、前側ほど左右方向の間隔が狭くなるように、前後方向に対し傾斜する一対の傾斜面を有している。
【0066】
受け部65は、リッド30内において、伝達部材52の後方となる箇所に設けられている。
押圧部材66は、切り欠き部63と受け部65との間に配置されている。押圧部材66の前部には、切り欠き部63の上記傾斜面に対応して前側ほど幅が狭くなるように、前後方向に対し傾斜する傾斜面が形成されている。
【0067】
付勢部材68は、コイルばね等のばねからなり、押圧部材66と受け部65との間に圧縮された状態で配置されている。この付勢部材68により、押圧部材66が常に前方へ付勢されている。
【0068】
上記構成の復帰機構部62は、次の機能を有している。
・左右のいずれかの操作部51が押し込み操作されるときに操作荷重を発生する。
・押し込まれた操作部51に対し、押し込む力が加えられなくなった場合に、伝達部材52(切り欠き部63)を左右方向における中央部に戻す。
【0069】
・左右のいずれの操作部51に対しても押し込み操作がなされないときに、伝達部材52を左右方向における中央部に保持する。
<補助機構70>
図12に示すように、補助機構70は、左右方向のうち、片側の切り替え機構50により、片側の軸40が連結解除状態に切り替えられた場合、他側の軸40を中心としてリッド30が上部開口19を開放する側へ回動するのを補助する機構である。補助機構70は、前後方向におけるボックス本体11の少なくとも一側に設けられている。本実施形態では、補助機構70は、支持部15の前側に設けられている。
【0070】
図3及び図10に示すように、補助機構70の一部は、上述した前側の支持板部25によって構成されている。左右方向における支持板部25の両側部であって、上記軸受部26に対し、同方向における内側となる2箇所には、それぞれ左右方向に延びる筒状の軸受部27が形成されている。両軸受部27は、左右方向に互いに離間している。
【0071】
支持板部25の左右の両軸受部27間であって、両軸受部27よりも下方となる箇所には、前後方向における外側へ突出する係止突部28が形成されている。
補助機構70は、上記支持板部25のほかにも、連結機構部71及び付勢部材76を備えている。
【0072】
連結機構部71は、前後方向における同じ側、ここでは前側の一対のシム41を連動可能に連結するためのものである。連結機構部71は、シャフト72、一対の第1回動伝達部74、及び一対の第2回動伝達部75を備えている。
【0073】
シャフト72は左右方向に延びており、同方向の両側部において上記軸受部27に挿通されていて、両軸受部27によって支持されている。シャフト72は、左右方向に延びる軸線を中心として回動可能である。シャフト72のうち、両軸受部27間となる箇所には、係止ピン73が形成されている。係止ピン73は、シャフト72から径方向における外方へ突出している。
【0074】
一対の第1回動伝達部74は、それぞれかさ歯車によって構成されている。各第1回動伝達部74は、シャフト72の端部に一体回動可能に設けられている。一対の第2回動伝達部75は、それぞれかさ歯車によって構成されている。各第2回動伝達部75は、対応するシム41の前後方向における外側の端部(この場合、前端部)に一体回動可能に設けられている。各第2回動伝達部75と、対応する第1回動伝達部74とは、回動を伝達可能に係合されている。
【0075】
ここで、シャフト72は、上述したように、左右方向に延びる軸線を中心として回動可能である。これに対し、各シム41は、前後方向に延びる軸線を中心として回動可能である。両軸線は、直交している。しかし、シャフト72の端部に設けられた第1回動伝達部74と、各シム41に設けられ、かつ第1回動伝達部74に係合された第2回動伝達部75との間では、回動が方向を変えながら伝達される。そのため、シャフト72の回動は、第1回動伝達部74及び第2回動伝達部75を介して両シム41に伝達される。また、シム41の回動は、第2回動伝達部75及び第1回動伝達部74を介してシャフト72に伝達される。
【0076】
付勢部材76は、連結機構部71を介して両シム41の間で力が伝達される経路に設けられて、リッド30が上部開口19を開放する際に両シム41が回動する方向へ同シム41を付勢するためのものである。本実施形態では、付勢部材76として、捩りコイルばねが用いられている。付勢部材76は、シャフト72の周りに巻かれた状態で装着されている。付勢部材76の一方の端部76aは上記係止突部28に係止されている。付勢部材76の他方の端部76bは上記係止ピン73に係止されている。
【0077】
支持板部25に対する付勢部材76の上記係止、及びシャフト72に対する付勢部材76の上記係止は、次の条件を満たすようになされている。その条件とは、リッド30が上部開口19を開放する際に両シム41が回動する方向へ同シム41を付勢する付勢力が、リッド30が全開位置(図4図18)にあるときにもシム41に作用することである。
【0078】
なお、図5及び図15に示すように、支持部15の後側には、上記補助機構70に類似した機構80、より詳しくは、上記補助機構70から付勢部材76及び係止突部28が省略された機構80が設けられている。そのため、機構80の構成部材のうち、補助機構70の構成部材に対応するものについては、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0079】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。
<閉塞位置のリッド30の操作部51に対して押し込み操作がなされない場合>
図12図15に示すように、リッド30が上部開口19を閉塞した状態(図16参照)で、左右のいずれの操作部51に対しても押し込み操作がなされない場合には、復帰機構部62(図12参照)により、伝達部材52が左右方向における中央部に保持される。
【0080】
また、このときには、各ピン54が各カム孔57における基準面58と傾斜面59との境界部分で、前後方向における同カム孔57の内側の壁面に接触する。上部開口19の四隅の軸40毎のスライド軸45が、対応するシム41に連結した連結状態にされる。リッド30が、四隅の軸40を通じて、ボックス本体11に連結された状態となる。各軸40は、回動を規制された状態となる。左右方向における片側の一対の軸40を中心としたリッド30の回動が規制される。リッド30は、上部開口19を閉塞した状態に保持される。このときには、復帰機構部62(図12参照)では、押圧部材66が切り欠き部63の両傾斜面に係合している。この係合により、伝達部材52が左右方向へがたつくことが規制される。
【0081】
また、このときには、補助機構70の付勢部材76は、シャフト72の周りで、両シム41を回動させる付勢力を蓄えている。回動の方向は、リッド30が上部開口19を開放する際に両シム41が回動する方向である。回動の方向は、両シム41の間で互いに反対である。
【0082】
<片方の操作部51が押し込み操作された場合>
図12及び図20に示すように、左右方向における片側、例えば左側の操作部51が復帰機構部62の付勢部材68の付勢力に抗して押し込み操作されると、伝達部材52が右方へ移動する。この移動に伴い、押圧部材66と切り欠き部63との係合箇所が変化し、押圧部材66が付勢部材68を圧縮させながら後方へ移動する。押圧部材66は、切り欠き部63における一方の傾斜面に対して接触する。
【0083】
また、伝達部材52の上記移動に伴い、各ピン54が右方へ移動する。左側の切り替え機構50では、各ピン54の右方へ向かう力は、傾斜面59を介して前スライド部材55及び後スライド部材56に伝達される。上述したように、各傾斜面59は、左右方向における内側ほど前後方向における外側に位置するように、基準面58に対し傾斜している。このことから、前スライド部材55及び後スライド部材56に対しては、前後方向における内側に向かう力が作用する。
【0084】
上記力により、左側の切り替え機構50では、前スライド部材55及び後スライド部材56が付勢部材61の付勢力に抗して互いに接近する。これに伴い、前後の各スライド軸45が、前後方向における内側へ移動する。スライド軸45毎の係合凹部46が、対応するシム41の係合突部44から外れる(離脱する)。前後の各スライド軸45のシム41に対する連結が解除される。すなわち、左右方向における左側の一対の軸40のそれぞれの状態が、連結状態から連結解除状態に切り替えられる。上記一対の軸40では、シム41とスライド軸45との間での回動の伝達が遮断される。左側の一対のシム41のそれぞれの回動が可能となる。
【0085】
そのため、補助機構70では、付勢部材76が、蓄えていた付勢力を開放する。この開放された付勢力によりシャフト72が回動し、その回動が第1回動伝達部74及び第2回動伝達部75を介して、各シム41に伝達される。各シム41は、リッド30が上部開口19を開放する際に回動する方向へ回動しようとする。
【0086】
図19に示すように、右側の切り替え機構50では、前後方向におけるカム孔57の内側の壁面に対する各ピン54の接触箇所が変化する。ただし、この変化は、基準面58においてなされる。前スライド部材55及び後スライド部材56に対し、前後方向における内側へ向かう力は作用しない。右側の一対の軸40では、それぞれスライド軸45がシム41に連結されている。そのため、リッド30は、右側の一対の軸40を中心として、上部開口19を開放させる側へ回動しようとする。機構80では、右側の軸40の回動が連結機構部71を介して左側のシム41に伝達される。
【0087】
リッド30が回動し始めたところで、左側の操作部51に対する押し込み操作を止める。表現を変えると、操作部51に対し押し込む側へ加えていた力を弱めていく。すると、図示はしないが、復帰機構部62では、付勢部材68によって前方へ付勢されている押圧部材66と切り欠き部63との接触箇所が変化する。押圧部材66の前方への動きが傾斜面を介して伝達部材52に伝わり、切り欠き部63、ひいては伝達部材52が左右方向における中央部に戻される。これに伴い、左右の両操作部51は、左側の操作部51が押し込み操作する前の位置に戻される(図12参照)。
【0088】
すなわち、各ピン54が、操作部51の押し込み操作前の位置に戻る。カム孔57の内壁面に対するピン54の接触箇所が変化する。各ピン54が傾斜面59を介して、前スライド部材55及び後スライド部材56を前後方向における内側へ押圧する力が弱まる。そのため、前スライド部材55及び後スライド部材56が付勢部材61の付勢力によって、前後方向における外側へ移動する。これに伴い、左側の一対のスライド軸45の前後方向における外側部分がリッド30の前後の壁部32から、同方向における外側へ突出する。
【0089】
左側の切り替え機構50により、連結解除状態に切り替えられた左側の一対の軸40では、スライド軸45のシム41に対する連結が解除されて回動の伝達が遮断されているため、シム41のみが回動する。
【0090】
シム41毎のアーム部43は、リッド30の回動に伴い、シム本体42と一体で回動する。各アーム部43が、ボックス本体11のストッパ(図示略)に接触すると、各シム41はそれ以上回動することを規制される。シム41に連結された右側のスライド軸45も同様である。図18に示すように、連結状態となっている右側の一対の軸40を中心とした上記回動は、リッド30が全開位置になったところで止まる。
【0091】
このときには、付勢部材76の付勢力が、シャフト72、第1回動伝達部74及び第2回動伝達部75を介してシム41に加わっている。そのため、リッド30は起立状態に保持される。
【0092】
上述したように、補助機構70は、シム41を回動させることで、上部開口19を開放させる側へリッド30を回動させる。そのため、リッドを付勢部材によって上方へ押し上げる従来の車両用収容装置よりも、リッド30を大きな角度回動させることが可能である。
【0093】
なお、左右の両操作部51が共通の伝達部材52によって繋がっているため、本実施形態では、両方の操作部51を同時に押し込み操作することはできない。
<リッド30を全開位置から閉塞位置に切り替える場合>
図18に示す起立状態のリッド30の例えば上端部(左端部)に対し乗員によって力が加えられて、そのリッド30が、右側の軸40を中心として、上部開口19を閉塞する側へ回動される。このとき、前後のシム41が回動する。
【0094】
図19及び図20に示すように、上記シム41の回動は、連結機構部71を介して、より詳しくは、右側の第2回動伝達部75及び右側の第1回動伝達部74を介してシャフト72に伝達され、同シャフト72が回動する。シャフト72の回動は、左側の第1回動伝達部74及び左側の第2回動伝達部75を介して、スライド軸45が連結されていない左側のシム41に伝達される。後者(左側)のシム41が前者(右側)のシム41に連動(同期)して回動する。両シム41の回動の方向は、リッド30が上部開口19を閉塞する際に両シム41が回動する方向であり、互いに反対方向である。シャフト72の上記回動は付勢部材76にも伝達される。そのため、上記回動に伴い、付勢部材76が、両シム41を回動させる付勢力を蓄える。また、この付勢力により、リッド30を回動させる際の操作荷重が発生する。なお、後側の機構80も補助機構70と同様に作動する。
【0095】
上記回動に伴い、リッド30の傾斜角度が緩やかになってゆく。シム41に連結されていない左側の一対のスライド軸45がボックス本体11における支持壁部23に近づく。リッド30が上部開口19を閉塞する直前には、各スライド軸45の傾斜面47が、対応する支持壁部23の上端部に接触する。傾斜面47は、上述したように、前後方向における内側ほど下側に位置するように、鉛直面に対し傾斜している(図7図8図17参照)。そのため、上記接触後にも引き続きリッド30が上部開口19を閉塞する側へ回動されると、支持壁部23に対する傾斜面47の接触位置が変化する。この変化に伴い、前後の各スライド軸45に対し、前後方向における内側へ向かう力が作用する。前スライド部材55及び後スライド部材56が、付勢部材61の付勢力に抗して、前後方向における内側へ移動する。
【0096】
図16及び図20に示すように、リッド30が上部開口19を閉塞する位置まで回動されると、各シム41は、上述したリッド30による上部開口19の閉塞時の回動位相に戻る。また、各シム41の係合突部44と、対応するスライド軸45の係合凹部46とが前後方向に対向する。すると、付勢部材61によって付勢されているスライド軸45が、前後方向における外側へスライドされる。このスライドにより、図14に示すように、スライド軸45の係合凹部46がシム41の係合突部44に係合(嵌合)される。図15に示すように、後側の軸40でも係合凹部46が係合突部44に係合(嵌合)される。各スライド軸45が、対応するシム41に連結される。リッド30は、図12に示すように、四隅の軸40を通じて、ボックス本体11に連結された状態となる。リッド30は、上部開口19を閉塞した状態に保持される。
【0097】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態では、リッド30の回動を補助する補助機構70として、左右一対のシム41を連動可能に連結する連結機構部71と、連結機構部71を介して両シム41の間で力が伝達される経路に設けられた付勢部材76とを用いている。付勢部材76は、リッド30が上部開口19を開放する際に両シム41が回動する方向へ同シム41を付勢する。
【0098】
そのため、リッドの開動作の初期の段階のみに、付勢部材の付勢力が押圧部材を介してリッドに作用する従来の車両用収容装置とは異なり、本実施形態では、リッド30を開動作の初期よりも遅い時期まで付勢力を作用させることができる。
【0099】
本実施形態では、リッド30を、閉塞位置から全開位置まで大きく回動させて、起立状態にすることができる。その結果、上部開口19を通じた物品の収容部18に対する出し入れがしやすくなる。
【0100】
また、従来の車両用収容装置では、リッドが押し上げられることで開放された上部開口をさらに大きく開放させたい場合には、乗員がリッドを把持して、上部開口を開放させる側へ回動させることになる。
【0101】
しかし、本実施形態では、補助機構70のみによってリッド30が大きく回動されて、上部開口19が大きく開放される。そのため、従来の車両用収容装置とは異なり、乗員が上部開口19を開放させる側へリッド30を回動させる操作を行なわなくてすむ。リッド30の操作性が良好になる。
【0102】
このように、本実施形態のコンソールボックス10(車両用収容装置)によると、従来の車両用収容装置よりも使い勝手が向上する。
(2)上記(1)に関連するが、本実施形態では、リッド30が閉塞位置にあるときには、リッド30が上部開口19を開放する際に両シム41が回動する方向へ、付勢部材76によって左右の両シム41を付勢している。そのため、左右のいずれの軸40を中心としてリッド30を回動させる場合にも、リッド30の回動を補助することができ、上記(1)の効果を得ることができる。
【0103】
(3)図13及び図14に示すように、本実施形態では、連結機構部71として、シャフト72と、シャフト72の両端部の第1回動伝達部74と、シム41毎の第2回動伝達部75とを備える構成を採用している。そのため、シャフト72の軸線と、両シム41の軸線とが直交しているが、シャフト72の回動を、第1回動伝達部74及び第2回動伝達部75を介して両シム41に伝達することができる。また、シム41の回動を、第2回動伝達部75及び第1回動伝達部74を介してシャフト72に伝達することができる。
【0104】
(4)図3に示すように本実施形態では、付勢部材76として、左右の両軸受部27間でシャフト72に対し巻かれた状態で装着された捩りコイルばねを用いている。そのため、リッド30が上部開口19を開放する際に両シム41が回動する方向へ同シム41を付勢する付勢力を、シャフト72、第1回動伝達部74及び第2回動伝達部75を介して両シム41に均等に伝達することができる。
【0105】
(5)図9に示すように、本実施形態では、各切り替え機構50として、操作部51及び伝達機構部53を用いている。そして、操作部51の動きを伝達機構部53により、前後一対のスライド軸45に伝達して、同スライド軸45を連結位置及び連結解除位置の間でスライドさせている。
【0106】
そのため、操作部51を押し込み操作することで、前後一対のスライド軸45を、連結位置から連結解除位置にスライドさせることができる。前後一対の軸40を連結状態から連結解除状態に切り替えることができる。
【0107】
(6)本実施形態では、リッド30が図18の全開位置にあるときにも、付勢部材76の付勢力がシム41に作用するように、同付勢部材76がシャフト72に装着されている。
【0108】
そのため、全開位置にあるリッド30が、上部開口19を閉塞する側へ回動するのを規制することができる。また、リッド30の全開位置では、アーム部43のストッパとの接触により、上部開口19を開放する側へのリッド30の回動が規制される。上記両規制により、リッド30が回動方向にふらつくのを抑制できる。
【0109】
また、全開位置にあって起立状態のリッド30に対し、左右方向における外方から仮に外力が加わることがあっても、上記と同様の理由により、上部開口19を閉塞する側へリッド30が回動する(倒れる)のを抑制できる。
【0110】
また、リッド30を、図18の全開位置から図16の閉塞位置へ回動させる際には、付勢部材76の上記付勢力に抗してリッド30を押して、又は把持して回動させることになる。付勢部材76の付勢力により、上部開口19を閉塞する側へリッド30を回動させる際の荷重(操作荷重)が作り出されるため、操作性が向上する。
【0111】
さらに、上部開口19を閉塞する側へリッド30を回動させる際に、勢いよくリッド30が回動したり、その回動に伴い操作音が発生したりするのを抑制できる効果も期待できる。
【0112】
(7)本実施形態では、ボックス本体11の後側に、上記補助機構70に類似した機構80が設けられている。そのため、切り替え機構50毎の伝達機構部53の動作が安定する。ボックス本体11の後側でも、軸40の状態を、連結状態及び連結解除状態の間で適切に切り替えることができる。軸40を中心としたリッド30の開閉動作をスムーズに行なうことができる。
【0113】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0114】
<上部開口19に関する事項>
・上部開口19の形状が、長方形に代えて正方形に変更されてもよい。
・上記実施形態において、上部開口19における第2辺22が第1辺21よりも短く設定されてもよい。すなわち、上部開口19の形状が、前後方向よりも左右方向に細長い長方形に変更されてもよい。
【0115】
<軸40に関する事項>
・上記実施形態とは異なり、係合突部44がスライド軸45に設けられ、係合凹部46がシム41に設けられてもよい。
【0116】
・係合突部44及び係合凹部46の形状、大きさ、位置、及び数の少なくとも1つが変更されてもよい。
<切り替え機構50>
・伝達機構部53における前スライド部材55及び後スライド部材56の形状が、上記実施形態とは異なる形状に変更されてもよい。
【0117】
・伝達部材52が左右方向に2つに分断されてもよい。この場合、復帰機構部62として、切り欠き部63、受け部65、押圧部材66及び付勢部材68に代えて、各伝達部材52を左右方向における外側へ付勢する付勢部材が用いられてもよい。
【0118】
・操作部51は、左右方向における内側に押し込み操作されるものに限定されず、傾動可能に設けられたレバー型をなすものであってもよい。この場合、操作部51は、リッド30に代えてボックス本体11に設けられてもよい。操作部51とスライド軸45との間には、操作部51を傾動させるための力が加えられると、その力を、スライド軸45を前後方向における内側へ移動させる力に変換する変換機構が設けられる。
【0119】
<補助機構70に関する事項>
・付勢部材76は、連結機構部71を介して左右の両シム41の間で力が伝達される経路であることを条件に、シャフト72とは異なる箇所に設けられてもよい。付勢部材76は、例えば、一方のシム41に設けられてもよいし、シム41毎に設けられてもよい。
【0120】
・連結機構部71として、シャフト72及び第1回動伝達部74に代えて、伝動ベルト、チェーン等の環状の伝達帯が用いられてもよい。伝動ベルトの場合、シム41毎の第2回動伝達部75として、プーリが用いられてもよい。チェーンの場合、シム41毎の第2回動伝達部75として、スプロケット(歯車)が用いられてもよい。
【0121】
また、連結機構部71として、複数のギヤの組み合わせからなるギヤ機構が用いられてもよい。
・上記実施形態において、前後方向におけるボックス本体11の前側に加え、又は代えて後側に補助機構70が設けられてもよい。上記実施形態の場合、機構80に対し、係止突部28及び付勢部材76を追加することで、補助機構70を成立させることができる。
【0122】
・付勢部材76として、捩りコイルばねとは異なる種類のばねが用いられてもよい。また、ばね以外の付勢部材が用いられてもよい。
<その他の事項>
・上記実施形態とは逆に、リッド30が第1部材とされ、ボックス本体11が第2部材とされてもよい。この場合、軸40におけるシム41がリッド30に設けられ、スライド軸45がボックス本体11に設けられる。補助機構70はリッド30に設けられる。
【0123】
・車両用収容装置は、コンソールボックス10に限らず、上部開口19を有する収容部18が形成されたボックス本体11と、軸40を中心として回動することにより上部開口19を開閉するリッド30とを備える車両用収容装置であれば広く適用可能である。
【符号の説明】
【0124】
10…コンソールボックス(車両用収容装置)
11…ボックス本体(第1部材)
19…上部開口
21…第1辺
22…第2辺
30…リッド(第2部材)
40…軸
41…シム
45…スライド軸
50…切り替え機構
51…操作部
53…伝達機構部
70…補助機構
71…連結機構部
72…シャフト
74…第1回動伝達部
75…第2回動伝達部
76…付勢部材
76a,76b…端部
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