(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061393
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】コンピュータカラーマッチング装置、コンピュータカラーマッチングシステム、コンピュータカラーマッチング方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01J 3/46 20060101AFI20240425BHJP
H04N 1/60 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G01J3/46 Z
H04N1/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169320
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】原田 治憲
(72)【発明者】
【氏名】岡田 克也
【テーマコード(参考)】
2G020
5C079
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA02
2G020DA03
2G020DA04
2G020DA05
2G020DA14
2G020DA22
2G020DA23
2G020DA34
5C079HB08
5C079KA15
5C079LB01
5C079MA20
5C079NA03
5C079PA03
(57)【要約】
【課題】所望の色である目標色とCCMを用いて作成した色との差を低減するコンピュータカラーマッチング方法、コンピュータカラーマッチング装置、コンピュータカラーマッチングシステムおよびプログラムを提供すること。
【解決手段】記憶装置にアクセス可能な演算回路により実行される、目標色を調色するための複数の基準色材の配合比率を算出するコンピュータカラーマッチング方法であって、記憶装置が所定目標色と、その配合比率に基づいて得られた所定作成色とに関連付けられた組み合わせデータを少なくとも含む学習データを予め記憶し、方法は、目標色を取得するステップと、学習データに基づいて目標色を調整する調整量を算出するステップと、目標色と調整量とに基づいて調整目標色を決定するステップと、調整目標色の配合比率を算出するステップと、を含み、調整量は、各波長における所定目標色と所定作成色との反射率の差に基づいて決定される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶装置にアクセス可能な演算回路により実行される、目標色を調色するための複数の基準色材の配合比率を算出するコンピュータカラーマッチング方法であって、
前記記憶装置は学習データを予め記憶しており、
前記学習データは、所定目標色と、前記所定目標色を調色するために算出された配合比率に基づいて得られた所定作成色とに関連付けられた組み合わせデータを少なくとも含み、
前記コンピュータカラーマッチング方法は、
前記目標色を取得するステップと、
前記学習データに基づいて、前記目標色を調整する調整量を算出するステップと、
前記目標色と前記調整量とに基づいて調整目標色を決定するステップと、
前記調整目標色を調色する配合比率を算出するステップと、を含み、
前記目標色と、前記所定目標色と、前記所定作成色と、前記調整目標色と、は、それぞれ、波長毎の反射率で表され、前記調整量は、各波長における前記所定目標色の反射率と前記所定作成色の反射率との間の差に基づいて決定される、
コンピュータカラーマッチング方法。
【請求項2】
前記調整量は、各波長における前記所定作成色の反射率に対する前記所定目標色の反射率の差から算出され、
各波長における前記調整目標色の反射率は、前記目標色の反射率から前記調整量を減算することで算出される、
請求項1に記載のコンピュータカラーマッチング方法。
【請求項3】
前記調整量は、各波長における前記所定作成色の反射率に対する前記所定目標色の反射率の差を、前記所定作成色の反射率で除算することで算出され、
各波長における前記調整目標色の反射率は、前記目標色の反射率から、前記目標色の反射率と前記調整量との積を減算することで算出される、
請求項1に記載のコンピュータカラーマッチング方法。
【請求項4】
前記目標色と、前記所定目標色と、前記所定作成色と、前記調整目標色と、は、色空間を表す座標にさらに表され、前記演算回路は、前記調整量を算出するステップにおいて、前記座標における前記目標色とのユークリッド距離が最も小さい前記所定目標色を選択する、請求項1に記載のコンピュータカラーマッチング方法。
【請求項5】
前記目標色と、前記所定目標色と、前記所定作成色と、前記調整目標色と、は、色空間を表す座標にさらに表され、
前記学習データは複数の前記組み合わせデータを含み、
前記学習データから前記目標色に対する2以上の組み合わせデータを抽出するステップをさらに有し、
前記調整量を算出するステップは、前記抽出した2以上の組み合わせデータに基づいて、前記調整量を算出する、請求項1に記載のコンピュータカラーマッチング方法。
【請求項6】
前記抽出するステップは、前記学習データから前記目標色の近傍色を検索することで、2以上の組み合わせデータを抽出するステップである、請求項5に記載のコンピュータカラーマッチング方法。
【請求項7】
前記抽出するステップは、検索した前記2以上の組み合わせデータから、前記所定作成色に対する前記所定目標色の色差の傾向が異なる組み合わせデータを除外する、請求項6に記載のコンピュータカラーマッチング方法。
【請求項8】
前記調整量を算出するステップは、前記抽出するステップによって抽出された2以上の組み合わせデータから得られる、各波長における2以上の差に基づく値を平均して調整量を算出する、請求項5に記載のコンピュータカラーマッチング方法。
【請求項9】
前記調整目標色、前記調整目標色の反射率または前記調整目標色の配合比率のいずれかと、
前記調整目標色を調色するために算出された配合比率によって得られた調整作成色、前記調整作成色の反射率または前記調整作成色の反射率に対する前記調整目標色の反射率の各波長における差に基づく値のいずれかと、
を少なくとも有する組み合わせデータを前記学習データにさらに追加するステップを含む、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のコンピュータカラーマッチング方法。
【請求項10】
前記目標色の反射率が取得される波長の範囲は、少なくとも可視光の領域を含む、請求項1に記載のコンピュータカラーマッチング方法。
【請求項11】
請求項1に記載のコンピュータカラーマッチング方法を前記演算回路に実行させるための、プログラム。
【請求項12】
目標色を作成するための基準色材の配合比率を算出する演算回路と、
所定目標色と、前記所定目標色を調色するために算出された配合比率に基づいて得られた所定作成色とに関連付けられた組み合わせデータを少なくとも含む学習データを記憶する記憶装置と、を備え、
前記演算回路は、
前記目標色を取得し、
前記学習データに基づいて前記目標色を調整する調整量を算出し、
前記目標色と前記調整量とに基づいて調整目標色を決定し、
前記調整目標色を調色する配合比率を算出し、
前記目標色と、前記所定目標色と、前記所定作成色と、前記調整目標色と、は、それぞれ、波長毎の反射率で表され、前記調整量は、各波長における前記所定目標色の反射率と前記所定作成色の反射率との間の差に基づいて決定される、
コンピュータカラーマッチング装置。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータカラーマッチング装置と、
色を測定する測色装置と、を備え、
前記目標色は、前記測色装置で測定することで取得される、
コンピュータカラーマッチングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンピュータカラーマッチング装置、コンピュータカラーマッチングシステム、コンピュータカラーマッチング方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の色材を組み合わせて所望の色を得るためにコンピュータを用いて色材の配合比率を算出するコンピュータカラーマッチング(以下、適宜「CCM」という)が知られている。例えば、特許文献1には、ニューラルネットワークを用いて、見本色と等色な混合色を得るための基本色材の配合比を求める調色方法に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、所望の色を作成するために必要な色材の配合比率をCCMによって算出し、当該配合比率で色材を調色したとしても、所望の色とは異なる色が作成されることがある。所望の色である目標色と作成された色である作成色との差は、様々な要因で発生し得る。したがって、CCMによって目標色を作成するための配合比率を算出する際に、当該差が生じないようにCCMを設計することは困難である。
【0005】
本開示は、所望の色である目標色とCCMを用いて作成した色との差を低減するコンピュータカラーマッチング方法、コンピュータカラーマッチング装置、コンピュータカラーマッチングシステムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るコンピュータカラーマッチング方法は、記憶装置にアクセス可能な演算回路により実行される、目標色を調色するための複数の基準色材の配合比率を算出するコンピュータカラーマッチング方法であって、記憶装置は学習データを予め記憶しており、学習データは、所定目標色と、所定目標色を調色するために算出された配合比率に基づいて得られた所定作成色とに関連付けられた組み合わせデータを少なくとも含み、コンピュータカラーマッチング方法は、目標色を取得するステップと、学習データに基づいて、目標色を調整する調整量を算出するステップと、目標色と調整量とに基づいて調整目標色を決定するステップと、調整目標色を調色する配合比率を算出するステップと、を含み、目標色と、所定目標色と、所定作成色と、調整目標色と、は、それぞれ、波長毎の反射率で表され、調整量は、各波長における所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の差に基づいて決定される。
【0007】
本開示に係るプログラムは、コンピュータの演算回路に本開示に係るコンピュータカラーマッチング方法を実行させるためのプログラムである。
【0008】
本開示に係るコンピュータカラーマッチング装置は、目標色を作成するための基準色材の配合比率を算出する演算回路と、所定目標色と、所定目標色を調色するために算出された配合比率に基づいて得られた所定作成色とに関連付けられた組み合わせデータを少なくとも含む学習データを記憶する記憶装置と、を備え、演算回路は、目標色を取得し、学習データに基づいて目標色を調整する調整量を算出し、目標色と調整量とに基づいて調整目標色を決定し、調整目標色を調色する配合比率を算出し、目標色と、所定目標色と、所定作成色と、調整目標色と、は、それぞれ、波長毎の反射率で表され、調整量は、各波長における所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の差に基づいて決定される。
【0009】
本開示に係るコンピュータカラーマッチングシステムは、コンピュータカラーマッチング装置と、色を測定する測色装置と、を備え、目標色は、測色装置で測定することで取得される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、所望の色である目標色とCCMを用いて作成した色との差を低減するコンピュータカラーマッチング方法、コンピュータカラーマッチング装置、コンピュータカラーマッチングシステムおよびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1および実施形態2に係るコンピュータカラーマッチングシステム1の概略的な構成を示す図
【
図2】従来の手法によるCCMを実行する処理のフローチャート
【
図3】実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMを実行する処理のフローチャート
【
図4】実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法による調整目標色の算出方法の概略図
【
図5】コンピュータカラーマッチング装置のアプリケーションの一例を示す図
【
図6】コンピュータカラーマッチング装置のアプリケーションの一例を示す図
【
図7】実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMを実行する処理のフローチャート
【
図8】目標色に類似したパラメータを有する所定目標色の反射率、および所定作成色の反射率の一例を示すグラフ
【
図9】
図8に示す所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の反射率差比を示すグラフ
【
図10】目標色の反射率、および実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法により算出された調整目標色の反射率の一例を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る実施形態を説明する。ただし、以下に説明する構成は、本開示の一例に過ぎず、本開示は下記の実施形態に限定されることはなく、これら実施形態以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本開示の実施形態1に係るコンピュータカラーマッチングシステム1の概略的な構成を示す図である。
【0014】
図1に示すように、本開示の実施形態1に係るコンピュータカラーマッチングシステム1は、コンピュータカラーマッチング装置10と、測色装置20とを備える。コンピュータカラーマッチング装置10は、演算回路11と、記憶装置12と、入出力装置13と、通信回路14と、を備える。コンピュータカラーマッチング装置10は、例えばコンピュータである。
【0015】
演算回路11は、コンピュータカラーマッチング装置10の動作を制御する制御部である。演算回路11は、プログラムを実行することで所定の機能を実現するCPUまたはMPUのような汎用プロセッサを含む。演算回路11は、例えば記憶装置12に格納された演算プログラム等を呼び出して実行することにより、後述する配合比率を算出する処理など、演算回路11における各種の処理を実現する。演算回路11は、ハードウェア資源とソフトウェアとが協働して所定の機能を実現する態様に限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。すなわち、演算回路11は、CPU、MPU以外にも、GPU、FPGA、DSP、ASIC等、種々のプロセッサで実現され得る。このような演算回路11は、例えば、半導体集積回路である信号処理回路で構成され得る。
【0016】
記憶装置12は、種々の情報を記憶できる記憶媒体である。記憶装置12は、例えば、DRAMやSRAM、フラッシュメモリ等のメモリ、HDD、SSD、その他の記憶デバイスまたはそれらを適宜組み合わせて実現される。記憶装置12は、上述しているように、演算回路11が行う各種の処理を実現するためのプログラムを格納する。また、記憶装置12は、後述するように、演算回路11が目標色の調整量を算出するための学習データを格納する。
【0017】
入出力装置13は、ユーザからの情報の入力のための入力装置、およびユーザへの情報の出力のための出力装置としての機能を有する。入出力装置13は、1以上のヒューマン・マシン・インタフェースを備える。ヒューマン・マシン・インタフェースは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、トラックボール等)、タッチパッド等の入力装置、ディスプレイ、スピーカ等の出力装置を含む。また、ヒューマン・マシン・インタフェースは、インセル型タッチパネル搭載のディスプレイ(例えば液晶パネルまたは有機ELパネル)等の入出力装置を含む。
【0018】
通信回路14は、有線または無線により装置またはシステムと通信回線を介して接続するためのインタフェース装置である。当該インタフェース装置は、例えば、USB(登録商標)またはイーサネット(登録商標)等の有線通信規格に準拠した通信を行うことが可能である。また、インタフェース装置は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、携帯電話回線等の無線通信規格に準拠した通信を行うことが可能である。
【0019】
測色装置20は、例えば分光光度計である。測色装置20は、色が付与されている物体に対して光を当て、反射した光を受光することで当該物体の色を測色することができる。
【0020】
実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法は、記憶装置12にアクセス可能な演算回路11により実行され、目標色を調色するための複数の基準色材の配合比率を算出する。記憶装置12は、学習データを予め記憶しており、学習データは、所定目標色または所定目標色の配合比率のいずれかと、所定目標色を調色するために算出された配合比率に基づいて得られた所定作成色または所定作成色に対する所定目標色の色差のいずれかとの組み合わせデータを少なくとも含む。コンピュータカラーマッチング方法は、目標色を取得するステップと、学習データに基づいて、目標色を調整する調整量を算出するステップと、目標色と調整量とに基づいて調整目標色を決定するステップと、調整目標色を調色する配合比率を算出するステップと、を含む。
【0021】
このような方法によれば、当該方法を実行するコンピュータカラーマッチングシステム1は、従来の手法を用いたCCMよりも目標色に近い色を得るための配合比率を算出することができる。
【0022】
まず、
図2を参照しつつ、従来から実施されている手法を用いたCCMによる基準色材の配合比率の算出方法について説明する。
図2は、従来の手法によるCCMを実行するために、演算回路11によって実行される処理の一例のフローチャートである。従来の手法によるCCMは、上記したコンピュータカラーマッチングシステム1と同等の構成を有するシステムによって実施され得る。
【0023】
まず、コンピュータカラーマッチング装置10の演算回路11は、調色したい色である目標色を取得する(S10)。目標色は、例えば、測色装置20が、当該目標色を有する物体(生地、紙等)を測色し、通信回路14を介してコンピュータカラーマッチング装置10へ送信することで取得され得る。目標色は、演算回路11が記憶装置12にあらかじめ格納されている一つ以上の色を入出力装置13の一つであるディスプレイに表示し、ユーザが表示されている色のいずれかを入出力装置13の一つであるマウスを用いて選択することで、取得されてもよい。
【0024】
コンピュータカラーマッチング装置10は、目標色を、所定の色空間で表される座標上および数値として定めることができる。所定の色空間は、例えば、CIE1976Lab、CIE1994、CIE2000、CIE1976LUV、CMC等を含むがこれに限定されない。本発明においては、精度良く色差の計算が可能なCIE1976Labを用いるのが好ましい。本明細書では、従来の手法によるCCMを実施するコンピュータカラーマッチング装置10、および本実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング装置10は、色空間としてCIE1976Labを用いてCCMを行う。同様に、後述する実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング装置10は、色空間としてCIE1976Labを用いてCCMを実行し得る。CIE1976Labでは、任意の色は、明度を表す成分であるLと、色相および彩度を表す成分であるa、bとを含むパラメータで示される。本明細書において、目標色、計算色、作成色など、色について言及する場合、当該色を色空間で表される座標またはパラメータ(すなわち、L、a、bの値)を意味することを含む。
【0025】
演算回路11は、目標色を取得すると、当該目標色を調色するための複数の基準色材の配合比率を算出する(S11)。基準色材は、任意の色を調色するために用いられる、所定の色を有する色材である。例えば、基準色材は、藍色、朱色、黄色、白色、黒色など、複数の色の色材が用いられ得る。基準色材は、調色する目標色に応じて、当該目標色の調色に適した複数の基準色材が選択され得る。記憶装置12は、各基準色材に関するパラメータ(例えば、当該基準色材の色を色空間で表した場合のL、a、bの値)を有し、演算回路11は、当該パラメータを用いて、基準色材を任意の比率で配合した際に表現されるはずの色である計算色を算出することができる。演算回路11は、計算色と目標色とが一致または実質的に一致するように比率を決定することで、目標色を作成するための基準色材の配合比率を算出できる。
【0026】
コンピュータカラーマッチング装置10により、目標色を調色するための基準色材の配合比率が算出されると、基準色材が、算出された配合比率で配合される。当該配合は、ユーザによって手動で行われてもよいし、機械を用いて自動的に行われてもよい。配合された色材は、色を付加する物体に応じて、紙に印刷されたり、生地を染めたりすることで、基準色材の配合比率に基づいた色を表現することができる。本明細書において、このように所定の目標色を調色するために算出された配合比率で物体に付与された色を、適宜「作成色」という。演算回路11は、物体に色を付加した際に表現される色が所望の発色を示すように、色を付与する対象(例えば、紙、生地等)ごとに調整して配合比率を算出するように構成されてもよい。また、演算回路11は、色を付与する方法(例えば、オフセット印刷、グラビア印刷等)ごとに調整して配合比率を算出するように構成されてもよい。
【0027】
従来の手法によるCCMによって算出された配合比率で所定の物体に作成色を付与した後、測色装置20が当該物体に付与された作成色を測色すると、目標色のパラメータとは異なるパラメータが取得され得る。このような差異は、例えば、調色したユーザによる人為的な要因、または調色した際の温度または湿度等の環境的な要因によって生じ得る。ユーザによる人為的な要因の一例は、配合された基準色材の比率が、算出された配当比率とわずかに異なる場合である。また、このような差異は、上記以外に、記憶装置12に記憶されている、演算回路11が算出に用いた基準色材のパラメータと、調色に用いた色材との間に差異があった場合など、様々な要因によって生じ得る。さらに、色材自体の経時変化等もこれらの要因に影響し得る。
【0028】
本実施形態1に係るコンピュータカラーマッチングシステム1は、上記のような、従来のCCMで生じていた、目標色と作成色との差異を改善することができる。以下、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチングシステム1および当該システムによるコンピュータカラーマッチング方法を説明する。
【0029】
実施形態1に係るコンピュータカラーマッチングシステム1は、従来のコンピュータカラーマッチングシステムで配合比率を算出する処理を行う前に所定の処理を実行することで、算出した配合比率によって調色した作成色と目標色とがより近い色となるように、CCMを行う。
図3は、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法を実行するために、演算回路11によって実行される処理の一例のフローチャートである。
【0030】
まず、コンピュータカラーマッチング装置10の演算回路11は、目標色を取得する(S20)。上述したように、目標色は、例えば、測色装置20が、当該目標色を有する物体(生地、紙等)を測色し、通信回路14を介してコンピュータカラーマッチング装置10へ送信することで取得され得る。また、目標色は、記憶装置12にあらかじめ格納されている色から選択され、取得されてもよい。
【0031】
次に、演算回路11は、当該目標色を色空間で表したパラメータに近いパラメータを有する所定目標色を決定する(S21)。所定目標色は、過去にコンピュータカラーマッチングシステム1でCCMを実行された目標色である。当該CCMは、任意のシステムによって実行された従来の手法によるCCMであってもよい。記憶装置12は、上述したように学習データを格納している。学習データは、所定目標色と、当該所定目標色に対応する作成色である所定作成色と、の組み合わせデータを含む。所定作成色は、所定目標色を調色するために演算回路11で算出された配合比率に基づいて作成された作成色を意味する。所定目標色は、記憶装置12に格納された学習データから、選択され得る。
【0032】
演算回路11は、所定目標色を決定すると、当該所定目標色と、当該所定目標色に対応する所定作成色とのギャップを取得する(S22)。演算回路11は、当該ギャップを、目標色を調整するための調整量として用いることができる。ギャップは、例えば、色空間における所定目標色のパラメータ(L1、a1、b1)と所定作成色のパラメータ(L2、a2、b2)との差(L2-L1、a2-a1、b2-b1)で表すことができる。当該ギャップは、学習データとして記憶装置12にあらかじめ格納されてもよいし、必要に応じて、演算回路11が所定目標色と所定作成色とから算出することで、取得されてもよい。なお、ギャップを学習データとして記憶する場合、所定作成色自体は記憶しなくてもよい。学習データは、所定目標色と所定作成色との組み合わせ、所定目標色の配合比率と所定作成色との組み合わせ、または、所定目標色とギャップとの組み合わせ、のいずれのパターンでもよい。学習データは、所定目標色の配合比率とギャップとの組み合わせであってもよい。
【0033】
学習データが所定目標色の配合比率と所定作成色との組み合わせデータを記憶する場合、演算回路11は、所定目標色の配合比率に基づいて所定目標色を算出して使用できる。
【0034】
学習データは、複数の組み合わせデータを含んでもよい。演算回路11は、所定目標色を決定するために、学習データに含まれ得る複数の組み合わせデータを使用することができる。したがって、演算回路11は、学習データから目標色に対する2以上の組み合わせデータを抽出し、抽出した2以上の組み合わせデータに基づいて調整量を算出してもよい。
【0035】
演算回路11は、ギャップ、すなわち調整量を算出すると、目標色と調整量とを考慮した調整目標色を決定する(S23)。演算回路11は、例えば、色空間に表した目標色のパラメータ(La、aa、ba)から調整量を減算することで調整目標色(Lb、ab、bb)のパラメータを算出できる。例えば、演算回路11は、調整目標色のL成分Lbを、Lb=La-(L2-L1)として算出できる。調整目標色のa成分ab、b成分bbは、同様に算出され得る。
【0036】
演算回路11は、調整目標色を決定すると、当該調整目標色を調色するための基準色材の配合比率を算出する(S24)。記憶装置12は、上述したように、各基準色材に関するパラメータを有する。したがって、演算回路11は、各基準色材に関するパラメータを用いて、基準色材を任意の比率で配合した際に表現されるはずの色である調整計算色を算出できる。調整計算色は、調整目標色に対応する計算色である。
【0037】
以上が、本実施形態1に係るコンピュータカラーマッチングシステム1のコンピュータカラーマッチング装置10によるコンピュータカラーマッチング方法である。従来の手法によるCCMが実行された場合と同様、算出された配合比率で基準色材を配合して色を作成すると、測色装置20が当該色を測色し、調整作成色のパラメータを取得する。これにより、CCMによって目標色を作成しようとしたユーザは、作成した色が所望の目標色と一致しているか確認することができる。調整作成色は、調整目標色に対応する作成色である。コンピュータカラーマッチングシステム1は、調整作成色のパラメータを取得すると、調整作成色と、当該調整作成色を作成するためにCCMにて使用した調整目標色とを関連付けて、記憶装置12に学習データとしてさらに記憶させることができる。これにより、コンピュータカラーマッチングシステム1は、調整量を決定するために利用可能な学習データを増加させることができ、さらに正確なCCMを実行することができるようになる。コンピュータカラーマッチングシステム1は、調整作成色と、調整目標色を調色するための配合比率とを関連付けて、記憶装置12に学習データとしてさらに記憶させてもよい。コンピュータカラーマッチングシステム1は、調整目標色と、調整目標色と調整作成色との間のギャップとを関連づけて、記憶装置12に学習データとしてさらに記憶させてもよい。コンピュータカラーマッチングシステム1は、調整目標色を調色するための配合比率と、調整目標色と調整作成色との間のギャップとを関連づけて、記憶装置12に学習データとしてさらに記憶させてもよい。
【0038】
図4は、上記のコンピュータカラーマッチング方法による調整目標色の算出方法を図示した概略図である。
図4を参照しつつ、実施形態1に係るコンピュータマッチング方法によって目標色に近い色を有する作成色を作成するための配合比率の算出方法を説明する。
図4は、色空間の座標上にプロットされた、目標色A、所定目標色B、所定作成色B’、および各色A、B、B’に基づいて決定される調整目標色Cを示す。上述したように、目標色Aは、パラメータ(L
a、a
a、b
a)を有する。所定目標色Bは、パラメータ(L
1、a
1、b
1)を有する。所定作成色B’は、パラメータ(L
2、a
2、b
2)を有する。調整目標色Cは、パラメータ(L
b、a
b、b
b)を有する。
【0039】
所定目標色Bは、過去にCCMにて配合比率が算出された色であり、所定作成色B’は、所定目標色Bを作成するためにCCMによって算出された配合比率に基づいて調色された色である。所定目標色および所定作成色は、演算回路11によって、記憶装置12に格納された学習データから選択される。ギャップGは、このような所定目標色Bと所定作成色B’とから算出される。実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法では、ギャップGは、(L2-L1、a2-a1、b2-b1)で表される。後述するように、目標色と作成色との間のギャップは、目標色のパラメータが近い場合、類似したギャップが生じると推定される。したがって、演算回路11が、目標色Aを作成するためにCCMによって配合比率を算出し、測色装置20が当該配合比率に基づいて作成された作成色を測色すると、目標色Aに対して、ギャップG分の差を有する作成色A’が測色されると推定される。そのため、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法では、演算回路11は、目標色Aに対してギャップGの違いがある色を調整目標色Cとして設定し、調整目標色Cを作成するためにCCMによって基準色材の配合比率を算出する。
【0040】
実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法を用いたCCMによって配合比率を算出すると、ユーザは、当該配合比率に基づいて調色し、物体に付与して、調整作成色C’を作成する。上述しているように、調整作成色C’は、ギャップGを考慮して作成されている。したがって、調整作成色C’は、目標色Aに対してギャップGを有すると推定される作成色A’と比べて、目標色Aに近いパラメータを有し得る。このように、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法を用いたCCMによれば、従来の手法を用いたCCMによって作成した作成色と比べて、より目標色に近い色を作成することができる。
【0041】
作成された調整作成色C’は、測色装置20によって測色され得る。測色装置20は、調整作成色C’を測色すると、通信回路14を介してコンピュータカラーマッチング装置10の記憶装置12へと測色した結果を送信する。また、演算回路11は、調整目標色Cを記憶装置12へと送信する。したがって、記憶装置12は、調整目標色Cと、当該調整目標色Cに基づいて作成された調整作成色C’と、の組み合わせをさらに記憶することができる。演算回路11は、目標色Aと、調整作成色C’とを比較することで、調整作成色C’が目標色Aと近い色であるか否か判定することができる。演算回路11は、例えば、色空間で、調整作成色C’が目標色Aから所定のユークリッド距離の範囲内にある場合、目標色Aに対応する色が作成できたと判断してもよい。演算回路11は、調整作成色C’が、目標色Aから当該範囲内にない場合、再度、CCMを実行してもよい。この場合、演算回路11は、目標色Aと調整作成色C’との間のギャップを、調整目標色Cに対してさらに付与した調整目標色を作成し、配合比率を算出してもよい。
【0042】
上述したように、従来の手法を用いたCCMによって、目標色Aを作成するために演算回路11によって算出された当該配合比率に基づいて調色された作成色A’は、目標色Aに対して何らかのギャップを有する色となる可能性がある。しかし、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法によれば、そのようなギャップが生じることを加味した目標色である調整目標色Cを設定してCCMを行うことができる。したがって、CCMによって算出された基準色材の配合比率で調色すると、作成された調整作成色C’は、調整目標色Cに対して、所定目標色Bと所定作成色B’との間のギャップGに相当するギャップG’を有する色で調色され、目標色Aに近い色で調色され得る。このように、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法を用いたCCMによれば、従来の手法によるCCMに比べて、目標色に対するギャップが小さくなるように色を調色することができる。すなわち、目標色と調整作成色との間のギャップが、目標色と作成色との間のギャップより小さくなるように調色することができる。上記の算出方法では、ギャップは、所定目標色と所定作成色との組み合わせデータの一つを用いて算出されているが、これに限定されず、ギャップは、複数の組み合わせデータに基づいて算出されてもよい。例えば、ギャップは、複数の組み合わせデータのそれぞれにより得られる複数のギャップの平均値であってもよい。
【0043】
次に、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチングシステム1のコンピュータカラーマッチング装置10の動作例について説明する。
図5は、コンピュータカラーマッチング装置10の入出力装置13の一つであるディスプレイに表示された、アプリケーション30である。当該アプリケーション30は、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング装置10によるCCMを実行する手段の一例であり、これに限定されない。ユーザは、当該アプリケーション30を操作することで、演算回路11によりCCMを実行することができる。アプリケーション30は、記憶装置12に格納され、必要に応じて演算回路11によって読み出され、入出力装置13に表示され得る。アプリケーション30は、ユーザが入出力装置13の一つであるマウスまたはキーボード等を操作すると、演算回路11によって制御され得る。
【0044】
図5に示すように、アプリケーション30は、所定の情報を入出力装置13のディスプレイに表示する複数の領域を有する。当該領域は、領域31、領域32、領域33、領域34および領域35を含む。
【0045】
アプリケーション30は、領域31において、使用する基準色材を選択することができる。例えば、
図5には、基準色材の一例である、ブラック、オーカー、ブラウン、ホワイトが表示されている。本実施例において、アプリケーション30は、領域31に示されている基準色材を用いて目標色を調色するための配合比率を算出する。本実施例では、領域31は、簡便のため、ブラック等の色の名称を記載しているがこれに限定されず、例えば特定の色を示す記号等を用いてもよい。
【0046】
領域32は、取得した目標色を表示する。
図5では、目標色は、オレンジ色に近い色が設定されている。上述したように、目標色は、例えば測色装置20が任意の色を測色することで演算回路11によって取得され、設定され得る。
【0047】
領域33は、記憶装置12に格納されている学習データのうち、領域32に示されている目標色に近いパラメータを有する一つ以上の所定目標色に関する情報を示す。例えば、領域33は、領域31に示されている基準色材、各基準色材の配合比率、当該配合比率に基づいて算出された所定計算色(すなわち、所定目標色)のパラメータ、当該配合比率による所定作成色のパラメータを示す。領域33は、所定目標色と所定作成色の各パラメータの差異等、その他の情報を示してもよい。
【0048】
領域34は、パラメータのa成分、b成分に関する色空間の任意の範囲を示し、横軸がa成分、縦軸がb成分を示す。領域34は、領域33に示されている各所定目標色に関して、所定目標色と、所定目標色に対応する所定作成色との組み合わせデータに基づいて算出された、パラメータのa成分、b成分に関する各ギャップを表示している。領域34に示されている矢印の始点は、所定目標色を示す。当該矢印の終点は、当該所定目標色に対応する所定作成色を示す。当該矢印は、当該所定目標色と当該所定作成色とから算出されるギャップを示す。このように、領域34は、記憶装置12に格納されている学習データが有する所定目標色と所定作成色との組み合わせデータの少なくとも一部について、パラメータのa成分、b成分に関する各ギャップの分布を示すことができる。
【0049】
領域35は、パラメータのL成分に関する色空間の任意の範囲を示す。領域35は、領域33に示されている各所定目標色に関して、所定目標色と、所定目標色に対応する所定作成色との組み合わせデータに基づいて算出された、パラメータのL成分に関する各ギャップを表示している。このように、領域35は、記憶装置12に格納されている学習データが有する所定目標色と所定作成色との組み合わせデータの少なくとも一部について、パラメータのL成分に関する各ギャップの分布を表示することができる。
【0050】
アプリケーション30は、後述する、調整量を算出するために使用する組み合わせデータに用いる近傍色を検索する範囲である、目標色に対するユークリッド距離を決定するための機能を備えてもよい。また、アプリケーション30は、色差の傾向が異なる組み合わせデータを除外するためのパラメータを決定する機能を備えてもよい。
【0051】
図6は、
図5と同じく、コンピュータカラーマッチング装置10の入出力装置13の一つであるディスプレイに表示された、アプリケーション30である。
図6は、領域34に目標色と、目標色に対して付与する調整量に対応するギャップとをさらに示す。調整量に対応するギャップは、
図6の領域34において破線の矢印で示されている。破線の矢印の始点は、目標色を示す。破線の矢印の終点は、目標色に対してCCMを実行した場合に作成されると推測される作成色を示す。
図6を参照しつつ、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法の一例を説明する。
【0052】
目標色は、上述しているように、測色装置20で測色することで取得され得る。調整量は、所定目標色と所定作成色との色差であるギャップに基づいて取得され得る。当該調整量は、例えば、目標色が有するパラメータに一番近いパラメータを有する所定目標色に基づくギャップが選択され得る。演算回路11は、目標色のパラメータと所定目標色のパラメータとの間のユークリッド距離が一番小さい所定目標色を、一番近い所定目標色として選択してもよい。
図6の領域34には、目標色のパラメータに近いパラメータを有する所定目標色が示されている。
図6の領域34に実線の矢印で示されている各所定目標色のギャップは、類似する向きおよび大きさを有する。つまり、類似するパラメータを有する目標色に対してCCMを実行し、算出された配合比率から作成された作成色は、類似するギャップを有すると推定される。したがって、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法のように、目標色に類似するパラメータを有する所定目標色のギャップ分の差異を有する調整目標色を作成するようにCCMを実行すれば、目標色に近い色を有する調整作成色を得ることができる。
【0053】
上記した例によるコンピュータカラーマッチング方法において、演算回路11は、目標色のパラメータと所定目標色のパラメータとの間のユークリッド距離が一番小さい所定目標色に関するギャップに基づいて、調整量を所得したがこれに限定されない。例えば、演算回路11は、記憶装置12に格納されている学習データから、目標色の近傍色として、目標色のパラメータの近傍にある所定目標色を検索してもよい。演算回路11は、目標色の近傍色を検索することで、2以上の所定目標色を抽出し、2以上の所定目標色のそれぞれに対応する2以上の複数の組み合わせデータを抽出することができる。演算回路11は、目標色のパラメータから所定のユークリッド距離の範囲内にある所定目標色を、目標色の近傍色として抽出してもよい。演算回路11は、目標色の近傍色の検索において、所定のユークリッド距離として、例えば、1、2、5または10など任意の値を設定できる。このように設定することで、演算回路11は、より具体的には、
図6の領域34に示されている矢印(すなわちギャップ)において、目標色の近傍に表示される矢印に関する組み合わせデータを抽出することができる。
【0054】
演算回路11は、抽出された2以上の組み合わせデータに基づいて、目標色に対する調整量を算出することができる。演算回路11は、2以上の組み合わせデータのそれぞれから得られるギャップを平均化することで調整量を算出してもよい。
【0055】
また、演算回路11は、2以上の組み合わせデータから、一部の組み合わせデータを除外してもよい。演算回路11は、各組み合わせデータから得られるギャップに関して、ギャップの傾向が異なる組み合わせデータを除外することができる。例えば、演算回路11は、2以上の組み合わせデータから得られた2以上のギャップに基づいて、ギャップの標準偏差σを算出し、所定値に含まれないギャップを有する組み合わせデータを除外してもよい。演算回路11は、所定値として、例えば、1σ、2σまたは3σなど任意の値を設定できる。このように設定することで、演算回路11は、より具体的には、
図6の領域34に示されている矢印(すなわちギャップ)において、矢印の向きが明らかに異なる矢印に関する組み合わせデータを除外することができる。
【0056】
本開示に係るコンピュータカラーマッチング方法によれば、コンピュータカラーマッチング装置10の演算回路11は、従来の手法を用いたCCMよりも目標色に近い色を得るための配合比率を算出することができる。当該方法は、上述したように、従来の手法を用いたCCMを実行する前に目標色を調整目標色に修正する処理を行うことで実行される。したがって、ユーザは、目標色を得るための配合比率を算出するプログラムを新たに作成せず、従来の手法を用いたCCMを行うためのプログラムを利用して、コンピュータの演算回路に本開示に係るコンピュータカラーマッチング方法を実行させることができる。
【0057】
(実施形態2)
本開示の実施形態2に係るコンピュータカラーマッチングシステム、および当該システムによるコンピュータカラーマッチング方法について説明する。実施形態2では、主に実施形態1と異なる点について説明する。実施形態2において、実施形態1と同一または同等の構成については、同じ符号を付して説明する。また、実施形態2では、実施形態1と重複する記載は省略することがある。実施形態2に係るコンピュータカラーマッチングシステム1は、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチングシステム1と同等の構成を有する。実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法は、コンピュータカラーマッチングシステム1によって実行され得る。
【0058】
実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法は、記憶装置12にアクセス可能な演算回路11により実行され、目標色を調色するための複数の基準色材の配合比率を算出する。記憶装置12は、学習データを予め記憶しており、学習データは、所定目標色と、所定目標色を調色するために算出された配合比率に基づいて得られた所定作成色とに関連付けられた組み合わせデータを少なくとも含む。コンピュータカラーマッチング方法は、目標色を取得するステップと、学習データに基づいて、目標色を調整する調整量を算出するステップと、目標色と調整量とに基づいて調整目標色を決定するステップと、調整目標色を調色する配合比率を算出するステップと、を含む。目標色と、所定目標色と、所定作成色と、調整目標色と、は、それぞれ、波長毎の反射率で表される。調整量は、各波長における所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の差に基づいて決定される。本実施形態において、調整量は、各波長における所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の差比に基づいて決定される。組み合わせデータは、所定目標色、所定目標色の反射率または所定目標色の配合比率のいずれかと、所定作成色の配合比率、所定作成色、所定作成色の反射率または各波長における所定作成色の反射率に対する所定目標色の反射率の差比のいずれかとの組み合わせを含んでもよい。
【0059】
このような方法によれば、当該方法を実行するコンピュータカラーマッチングシステム1は、従来の手法を用いたCCMよりも目標色に近い色を得るための配合比率を算出することができる。また、当該方法によって得られた配合比率で作成された色は、光源によらず、従来の手法を用いたCCMよりも目標色に近い色となり得る。
【0060】
実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法では、演算回路11は、配合比率を算出する処理を行う前に所定の処理を実行してCCMを実行している。具体的には、演算回路11は、所定の処理として、所定目標色と所定作成色のパラメータの差(すなわちギャップ)を算出して当該ギャップに基づいて目標色のパラメータを調整している。実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法は、後述するように、演算回路11が、所定目標色と所定作成色の反射率の差比に基づいて目標色の反射率を調整する点が、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法と異なる。
【0061】
目標色は、種々の波長の光、すなわち波長によって定まる色、を合成した結果として定義される。所定目標色、所定作成色、および調整目標色も、同様に種々の波長の光を合成した結果として定義される。実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング装置10は、目標色を、波長毎の反射率として定めることができる。目標色の反射率に関して定められる波長の範囲は、所定の波長範囲を含み、所定の波長範囲は、少なくとも可視光の領域を含み得る。具体的には、所定の波長範囲は、例えば400nm以上700nm以下を含み得る。波長範囲はこれに限定されず、360nm以上780nm以下を含んでもよい。また、所定の波長範囲は、赤外線領域または紫外線領域を含んでもよい。実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング装置10は、CIE1976Labを用いたCCMに加えて、反射率を用いたCCMを行うことができる。反射率は、例えば、所定の波長範囲において、複数の波長で算出され得る。実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング装置10において、反射率は、所定の波長範囲において、16種類の波長で算出され得るがこれに限定されない。反射率は、10種類の波長で算出されてもよいし、30種類の波長で算出されてもよい。反射率を算出する波長は、波長の個数だけでなく、波長間隔によって定められてもよい。例えば、反射率は、400nmから700nmまで、10nm間隔の波長で算出されてもよい。具体的には、反射率は、400nm、410nm、・・・、700nmの波長で算出されてもよい。波長間隔は、10nmに限定されず、例えば5nm、20nm、30nm、40nm、50nm等の任意の間隔で算出され得る。
【0062】
実施形態2において、コンピュータカラーマッチング装置10の記憶装置12は、各基準色材の反射率のデータを有する。演算回路11は、当該反射率に基づいて、基準色材を任意の比率で配合した際に表現されるはずの色である計算色を算出することができる。演算回路11は、計算色の反射率と、目標色の反射率とが一致または実質的に一致するように比率を決定することで、目標色を作成するための基準色材の配合比率を算出できる。
【0063】
図7は、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法を実行するために、演算回路11によって実行される処理の一例のフローチャートである。
【0064】
まず、コンピュータカラーマッチング装置10の演算回路11は、目標色のデータを取得する(S30)。上述したように、目標色のデータは、例えば、測色装置20が、当該目標色を有する物体(生地、紙等)を測色することによって取得され、通信回路14を介してコンピュータカラーマッチング装置10へ送信される。これにより、演算回路11は目標色のデータを取得できる。また、目標色のデータは、記憶装置12にあらかじめ格納されている色からユーザに選択されることによって、取得されてもよい。
【0065】
次に、演算回路11は、当該目標色を色空間で表したパラメータに近いパラメータを有する所定目標色を決定する(S31)。上記したように、所定目標色は、過去にコンピュータカラーマッチングシステム1でCCMを実行された目標色である。当該CCMは、任意のシステムによって実行された従来の手法によるCCMであってもよい。記憶装置12は、上述したように学習データを格納している。学習データは、所定目標色と、当該所定目標色に対応する作成色である所定作成色と、の組み合わせデータを含む。所定作成色は、所定目標色を調色するために演算回路11で算出された配合比率に基づいて作成された作成色を意味する。所定目標色は、記憶装置12に格納された学習データから、選択され得る。
【0066】
演算回路11は、所定目標色を決定すると、各波長に関する当該所定目標色の反射率、および当該所定目標色に対応する所定作成色の反射率を取得する。これらの反射率は、例えば所定目標色および所定作成色に関連付けて記憶装置12に格納され、演算回路11は、記憶装置12から読み出すことで取得できる。また、演算回路11は、記憶装置12に格納されている所定目標色および所定作成色の情報(例えば、これらの色のパラメータ)から各波長における反射率を算出することで取得してもよい。
【0067】
演算回路11は、各色の波長毎の反射率を取得すると、各波長における所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の差比を取得する(S32)。具体的には、演算回路11は、各波長における所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間のずれを算出し、差比として取得する。所定の波長における差比は、当該所定の波長における所定作成色の反射率が、当該所定の波長における所定目標色の反射率に対してずれている割合を示す。このように所定の波長における差比は、各波長における所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の差に基づいて決定される。演算回路11は、各波長における差比を、目標色を調整するための調整量として用いることができる。調整量は、各波長における所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の差比に基づいて決定され得る。本明細書において、各波長における差比を総称して、適宜「反射率差比」またはより簡略的に「差比」ということもある。反射率差比は、所定の波長範囲内における波長毎の所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の差比を含む。本実施形態において所定の波長範囲は、400nm以上700nm以下の波長範囲を含むがこれに限定されない。
【0068】
所定の波長における差比は、例えば、下記数式(1)に示すように、所定作成色の反射率に対する所定目標色の反射率の差を、所定作成色の反射率で除算することで算出され得る。所定の波長における差比は、式(1)に示すように、所定作成色の反射率に対して相対的な値を意味する。つまり、所定の波長における差比は、所定作成色の反射率と所定目標色の反射率との差が、所定作成色の反射率に対してどの程度の割合の大きさを有するかを示す。演算回路11は、波長毎に式(1)に示す計算を実行することで、各波長における所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の差比を取得することができる。
【0069】
【0070】
実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法において、コンピュータカラーマッチング装置10の演算回路11は、波長毎に反射率の差を絶対値で調整するのではなく相対値で調整する。これにより、演算回路11は、所定の波長範囲内において反射率が高い波長と反射率が低い波長とで、同等の調整を行うことができる。
【0071】
反射率差比は、学習データとして記憶装置12に、当該反射率差比に対応する所定目標色または所定作成色に関連付けてあらかじめ格納されてもよいし、必要に応じて、演算回路11が所定目標色および所定作成色から算出することで、取得されてもよい。なお、反射率差比を学習データとして記憶する場合、所定作成色自体は記憶しなくてもよい。学習データは、所定目標色と、所定作成色とに関連付けられた組み合わせデータを含んでもよい。学習データとして記憶される組み合わせデータは、所定目標色、所定目標色の反射率または所定目標色の配向比率のいずれかと、所定作成色の配合比率、所定作成色、所定作成色の反射率または反射率差比のいずれかとの組み合わせであってもよい。
【0072】
学習データが所定目標色の配合比率と所定作成色との組み合わせデータを記憶する場合、演算回路11は、所定目標色の配合比率に基づいて所定目標色を算出して使用できる。
【0073】
学習データは、複数の組み合わせデータを含んでもよい。演算回路11は、所定目標色を決定するために、学習データに含まれ得る複数の組み合わせデータを使用することができる。したがって、演算回路11は、学習データから目標色に対する2以上の組み合わせデータを抽出し、抽出した2以上の組み合わせデータに基づいて調整量を算出してもよい。調整量は、例えば、2以上の組み合わせデータにおける反射率差比の、波長毎に算出された平均値であってもよい。このように、調整量は、2以上の組み合わせデータにおける反射率の差に基づいて算出される値を平均して、算出され得る。
【0074】
演算回路11は、調整量を算出すると、目標色の反射率と調整量とに基づいて調整後の目標色の反射率を算出して、調整目標色を決定する(S33)。調整目標色の反射率は、当該調整後の目標色の反射率を示す。演算回路11は、例えば、下記数式(2)に示すように、波長毎に、目標色の反射率から、目標色の反射率と調整量との積を減算することで、各波長における調整目標色の反射率を算出できる。
【0075】
調整目標色の反射率=目標色の反射率(1-調整量) (2)
【0076】
演算回路11は、調整目標色を決定すると、当該調整目標色を調色するための基準色材の配合比率を算出する(S34)。記憶装置12は、上述したように、各基準色材に関するパラメータを有する。したがって、演算回路11は、各基準色材に関するパラメータを用いて、基準色材を任意の比率で配合した際に表現されるはずの色である調整計算色を算出できる。上記したように、調整計算色は、調整目標色に対応する計算色である。
【0077】
以上が、本実施形態2に係るコンピュータカラーマッチングシステム1のコンピュータカラーマッチング装置10によるコンピュータカラーマッチング方法である。従来の手法によるCCMが実行された場合と同様、算出された配合比率で基準色材を配合して色を作成すると、測色装置20が当該色を測色し、調整作成色のパラメータを取得する。これにより、CCMによって目標色を作成しようとしたユーザは、作成した色が所望の目標色と一致しているか確認することができる。上記したように、調整作成色は、調整目標色に対応する作成色である。コンピュータカラーマッチングシステム1は、調整作成色のパラメータを取得すると、調整作成色と、当該調整作成色を作成するためにCCMにて使用した調整目標色とを関連付けて、記憶装置12に学習データとしてさらに記憶させることができる。つまり、調整目標色のパラメータと調整作成色のパラメータとが、記憶装置12に学習データとしてさらに記憶され得る。
【0078】
また、上記したようにコンピュータカラーマッチング装置10は、配合された色を測色装置20によって測色することで、当該色の反射率を取得することができる。コンピュータカラーマッチングシステム1は、調整作成色の反射率を取得すると、反射率について、調整作成色と、調整目標色とを関連付けて、記憶装置12に学習データとして記憶させてもよい。
【0079】
これにより、コンピュータカラーマッチングシステム1は、調整量を決定するために利用可能な学習データを増加させることができ、さらに正確なCCMを実行することができるようになる。コンピュータカラーマッチングシステム1は、調整作成色と、調整目標色を調色するための配合比率とを関連付けて、記憶装置12に学習データとしてさらに記憶させてもよい。コンピュータカラーマッチングシステム1は、調整目標色を調色するための配合比率と、調整目標色と調整作成色との間の反射率差比とを関連付けて、記憶装置12に学習データとしてさらに記憶させてもよい。コンピュータカラーマッチングシステム1は、上記したデータを組み合わせて学習データとして記憶装置12に記憶させてもよい。つまり、調整目標色、調整目標色の反射率または調整目標色の配合比率のいずれかと、対応する調整作成色、調整作成色の反射率または調整目標色と調整作成色との間の反射率差比のいずれかと、を少なくとも有する組み合わせが学習データとして記憶され得る。
【0080】
次に、波長と反射率と色差との関係について説明する。波長をλとすると、反射率R(λ)、光源データS(λ)、等色関数
は、波長ごとに離散的な値を有する。これらの値を用いて、三刺激値X、Y、Zは、次の式(3)~(5)で示される。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
色空間上のパラメータであるL*、a*、b*は、X、Y、Zと、白色板のX、Y、Z値を示すXn、Yn、Znとを用いて、次の式(6)~(8)で示される。また、f(t)は、式(9)で示される。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
また、CIE1976Labの色空間では、色差ΔE*
abは、次の式(10)で示される。ΔL*、Δa*、Δb*は、2つの色におけるそれぞれのL*、a*、b*値の差である。
【0090】
【0091】
演算回路11は、例えば上記した式を利用して、波長および反射率からパラメータおよび色差を、またはその逆を算出することができる。
【0092】
実施形態2に係るコンピュータカラーマッチングシステム1において、コンピュータカラーマッチング装置10の演算回路11は、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチングシステム1と同様の方法で所定目標色を決定できる。例えば、演算回路11は、目標色のパラメータと所定目標色のパラメータとの間をユークリッド距離が一番小さい所定目標色を、目標量との反射率差比を取得するための所定目標色として決定してもよい。
【0093】
実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング装置10において、演算回路11は、上記した
図5および
図6に示すようなアプリケーション30を用いてCCMを実行してもよい。演算回路11は、アプリケーション30の、目標色に対するユークリッド距離を決定する機能を通じて、調整量を算出するために使用するために目標色の近傍色を検索し、当該近傍色からCCMに使用する所定目標色を決定できる。例えば、演算回路11は、所定のユークリッド距離の範囲にある所定目標色を目標色の近傍色として抽出して、当該近傍色の1つ以上をCCMに使用する所定目標色として決定してもよい。このように実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング装置10の演算回路11は、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法のように、色空間上のパラメータに基づいて色差等を算出してもよい。
【0094】
演算回路11は、2以上の組み合わせデータから、一部の組み合わせデータを除外してもよい。演算回路11は、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法において記載するように、各組み合わせデータから得られるギャップに関して、ギャップの傾向が異なる組み合わせデータを除外することができる。例えば、演算回路11は、2以上の組み合わせデータから得られた2以上のギャップに基づいて、ギャップの標準偏差σを算出し、所定値に含まれないギャップを有する組み合わせデータを除外してもよい。演算回路11は、所定値として、例えば、1σ、2σまたは3σなど任意の値を設定できる。
【0095】
以下、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法による調整目標色の決定方法を説明する。
図8は、目標色に類似したパラメータを有する所定目標色の反射率、および所定作成色の反射率の一例を示すグラフである。
図8の横軸は波長(nm)であり、縦軸は各波長における反射率(%)である。
図8において、実線A
reqは、学習データに格納された所定目標色の反射率を示す。
図8において、破線A
meaは、学習データに格納された、当該所定目標色に対応する所定作成色の反射率を示す。上記したように、所定目標色は、過去にコンピュータカラーマッチングシステム1でCCMを実行され、配合比率が算出された色を意味する。所定作成色は、所定目標色を作成するためにCCMによって算出された配合比率に基づいて調色された色を意味する。所定目標色および所定作成色は、演算回路11によって、記憶装置12に格納された学習データから選択される。
図8から明らかなように、所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間には、波長毎に差比がある。したがって、例えばユーザが、所定目標色を作成するように算出された配合比率で基準色材を配合すると、各波長で当該差比の分ずれた色(すなわち調整作成色)が作成される。
【0096】
図9は、
図8に示す所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の反射率差比を示すグラフである。
図9の横軸は波長(nm)であり、縦軸は各波長における差比である。
図9において、線Dは、
図8に示す所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の反射率差比を示す。
図9に示す反射率差比は、所定目標色の反射率および所定作成色の反射率に対して、上記した式(1)を適用して算出されている。
図8および
図9から明らかなように、本例において、約400nmから約600nmの間の波長範囲での反射率は、所定目標色よりも所定作成色の方が大きい。また、本例において、約600nmから約700nmの間の波長範囲での反射率は、所定作成色よりも所定目標色の方が大きい。したがって、例えばユーザが当該所定目標色に類似したパラメータまたは反射率を有する目標色を調色するための配合比率で基準色材を配合すると、
図9に示す反射率差比の分、反射率がずれた色が配合されると推測される。したがって、本開示に係るコンピュータカラーマッチング方法では、演算回路11は、目標色を取得する配合比率を算出する処理を行う前に、当該反射率差比を調整する処理を実行することで、目標色と作成色との間で発生し得る色のずれを補正する。
【0097】
図10は、目標色の反射率、および実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法により算出された調整目標色の反射率の一例を示すグラフである。
図10の横軸は波長(nm)であり、縦軸は各波長における反射率(%)である。
図10において、実線B
reqは、目標色の反射率を示す。破線B
adjは、調整目標色の反射率を示す。調整目標色は、所定目標色と所定作成色とから算出された反射率差比に基づいて、算出されている。上記したように、本実施例において、約400nmから約600nmの間の波長では、所定作成色の反射率が、所定目標色の反射率よりも大きい。また、約600nmから約700nmの間の波長では、所定作成色の反射率が、所定目標色の反射率よりも小さい。調整作成色は、この反射率差比を補正するように調整されているため、
図10に示すように、調整目標色の反射率は、約400nmから約600nmの間の波長では目標色の反射率より小さい。また、調整目標色の反射率は、約600nmから約700nmの間の波長では目標色の反射率より大きい。
【0098】
実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法を用いたCCMによって配合比率を算出すると、ユーザは、当該配合比率に基づいて調色し、物体に付与して、調整作成色を作成する。上記したように、調整作成色は、所定の反射率差比を考慮して作成されている。したがって、調整作成色は、目標色に対して所定の反射率差比を有すると推定される作成色と比べて、目標色に近い反射率を有し得る。調整作成色は、目標色に近い反射率を有するため、当該作成色と比べて、所定の分光分布を有する様々な光源において目標色に近いパラメータを有し得る。このように、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法を用いたCCMによれば、従来の手法を用いたCCMによって作成した作成色と比べて、より目標色に近い色を作成することができる。
【0099】
上記したように、作成された調整作成色は、測色装置20によって測色され得る。測色装置20は、調整作成色を測色すると、通信回路14を介してコンピュータカラーマッチング装置10の記憶装置12へと測色した結果を送信する。また、演算回路11は、調整目標色を記憶装置12へと送信する。したがって、記憶装置12は、調整目標色と、当該調整目標色に基づいて作成された調整作成色と、の組み合わせをさらに記憶することができる。演算回路11は、目標色と、調整作成色とを比較することで、調整作成色が目標色と近い色であるか否かを判断することができる。演算回路11は、例えば、任意の光源が適用された色空間で、調整作成色が目標色から所定のユークリッド距離の範囲内にある場合、目標色Aに対応する色が作成できたと判断してもよい。また、演算回路11は、例えば、波長毎の調整作成色の反射率と目標色の反射率との間の差比の平均値が、所定の閾値以下である場合、目標色に対応する色が作成できたと判断してもよい。演算回路11は、調整作成色が、上記した条件を満たさない場合、再度、CCMを実行してもよい。この場合、演算回路11は、目標色と調整作成色との間の反射率差比を、調整目標色に対してさらに付与したさらなる調整目標色を作成し、配合比率を算出してもよい。
【0100】
上記したように、従来の手法を用いたCCMによって、目標色を作成するために演算回路11によって算出された当該配合比率に基づいて調色された作成色は、目標色に対して何らかの違いを有する色となる可能性がある。しかし、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法によれば、そのような違いが生じることを加味した目標色である調整目標色を設定してCCMを行うことが出来る。したがって、CCMによって算出された基準色材の配合比率で調色すると、作成された調整作成色は、調整目標色に対して、所定目標色と所定作成色との間の反射率差比に相当する大きさの反射率差比を有する色で調色され、目標色に近い色で調色され得る。このように、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法を用いたCCMによれば、従来のCCMに比べて、目標色に対する反射率差比が小さくなるように色を調色することができる。すなわち、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法を用いたCCMによれば、目標色の反射率と調整作成色の反射率との間の反射率差比が、目標色の反射率と作成色の反射率との間の反射率差比より小さくなるように調色することができる。
【0101】
(実施例)
次に、本実施形態に係るコンピュータカラーマッチングシステム1のコンピュータカラーマッチング装置10の動作例について説明する。
【0102】
従来の手法によるCCMによって算出された配合比率、並びに実施形態1および実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMによって算出された配合比率について、表1を参照しつつ説明する。
【0103】
【0104】
表1は、所定のサンプルとして設定されている目標色を作成できる基準色材の配合比率、および当該目標色を作成するために複数の手法によるCCMによって算出された配合比率、並びにそれらの配合比率の差を示す。所定のサンプルを作成するために使用される基準色材は、表1に示すように、ホワイト、ブラック、オーカーおよびブラウンである。表1のA列は、当該目標色を作成できる各基準色材の配合比率Aを示す。表1のB列は、当該目標色を作成するために、従来の方法によるCCMによって算出された基準色材の配合比率B、および配合比率Aと配合比率Bとの間の差を示す。表1のC列は、当該目標色を作成するために、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMによって算出された基準色材の配合比率C、および配合比率Aと配合比率Cとの間の差を示す。表1のD列は、当該目標色を作成するために、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMによって算出された基準色材の配合比率D、および配合比率Aと配合比率Dとの間の差を示す。配合比率B、CおよびDがそれぞれ、配合比率Aに近いと、当該配合比率に基づいて作成された色が目標色に近い発色を示す。
【0105】
表1のB列の「配合差」行は、各基準色材の配合比率Aと配合比率Bとの間の差から算出された二乗和平方根である。同様に、表1のC列の「配合差」行は、各基準色材の配合比率Aと配合比率Cとの間の差から算出された二乗和平方根である。表1のD列の「配合差」行は、各基準色材の配合比率Aと配合比率Dとの間の差から算出された二乗和平方根である。基本的に、二乗和平方根の数値が小さいほど、当該配合比率に基づいて作成された作成色は目標色に近い発色を示す。表1に示すように、「配合差」行でのC列の値は、B列の値より小さい。また、「配合差」行でのD列の値は、B列の値より小さく、Cの値とほぼ同等である。したがって、実施形態1および実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMによって算出された基準色材の配合比率に基づいて作成された作成色は、配合比率Bに基づいて作成された作成色よりも目標色に近い色になり得る。
【0106】
従来の手法によるCCMによって算出された配合比率に基づくパラメータ、並びに実施形態1および実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMによって算出された配合比率に基づくパラメータについて、表2を参照しつつ説明する。
【0107】
【0108】
表2は、従来の手法、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法、および実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMによって算出された配合比率に関する、光源毎の色差を示す。具体的には、B列は、配合比率Aに基づいて算出される反射率および各光源で取得されるパラメータ(CIE色空間上のL、a、b)と、配合比率Bに基づいて算出される反射率および各光源で取得されるパラメータとの間の色差を示す。色差は、具体的には、2つのパラメータ間(所定のL、a、bと別のL、a、bとの間)のCIE色空間上のユークリッド距離を示す。C列は、配合比率Aに基づいて算出される反射率および各光源で取得されるパラメータと、配合比率Cに基づいて算出される反射率および各光源で取得されるパラメータとの間の色差を示す。D列は、配合比率Aに基づいて算出される反射率および各光源で取得されるパラメータと、配合比率Dに基づいて算出される反射率および各光源で取得されるパラメータとの間の色差を示す。
【0109】
表2において、「D65」は、太陽光を模擬した光源であるD65光源を示す。したがって、例えば「D65」行「B」列は、D65光源に関して、配合比率Aに基づいて取得されるパラメータと、配合比率Bに基づいて取得されるパラメータとの間の色差を示す。
【0110】
「A」は、白熱電球を模擬した光源であるA光源を示す。したがって、例えば「A」行「C」列は、A光源に関して、配合比率Aに基づいて取得されるパラメータと、配合比率Cに基づいて取得されるパラメータとの間の色差を示す。
【0111】
「F6」は、白色蛍光灯を模擬した光源であるF6光源を示す。したがって、例えば「F6」行「D」列は、F6光源に関して、配合比率Aに基づいて取得されるパラメータと、配合比率Dに基づいて取得されるパラメータとの間の色差を示す。
【0112】
「F8」は、高演色蛍光灯を模擬した光源であるF8光源を示す。したがって、例えば「F8」行「D」列は、F8光源に関して、配合比率Aに基づいて取得されるパラメータと、配合比率Dに基づいて取得されるパラメータとの間の色差を示す。
【0113】
表2において「平均」は、各配合比率B、CおよびDにおいて、各光源に基づいて取得されたパラメータの平均値を示す。したがって、「平均」行「B」列の値は、4つの光源に関して、配合比率Aに基づいて取得されるパラメータと、配合比率Bに基づいて取得されるパラメータとの間の色差の平均値を示す。配合比率CおよびDについても同様である。
【0114】
本実施例において、色差を比較する光源は、上記した4つの光源であるがこれに限定されず、他の任意の光源を用いて色差が評価されてもよい。上記するように、配合比率Aは、目標色を作成できる配合比率である。したがって、ある光源に関して、配合比率Aに基づいて算出されるパラメータに近いパラメータが算出される配合比率ほど、実際に配合された際に当該光源において目標色に近い発色を備えることができると推定される。
【0115】
目標色と作成した色(以下、適宜「第1色」という)との間の色差に関して、ある光源において色差が小さいにもかかわらず、別の光源において色差が大きい場合、目標色と第2色との間には条件等色(いわゆるメタメリズム)が発生しているといえる。つまり、第1色は、本質的には目標色と異なる色が作成されているといえる。それに対して、目標色と作成した別の色(以下、適宜「第2色」という)との間の色差に関して、複数の光源において色差が小さい場合、目標色と第2色との間にはメタメリズムが発生していない、または発生の程度が小さいといえる。つまり、第2色は、第1色に比べて、本質的に目標色に近い色が作成されているといえる。
【0116】
表2に示すように、本実施例において、D65光源に関して、配合比率B、CおよびDに基づく色差はそれぞれ、0.00である。したがって、従来の手法、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法、および実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法は、それぞれ、D65光源に関して、目標色を精度よく再現できている。
【0117】
表2に示すように、本実施例において、配合比率Aと配合比率Bとの間の色差は、A光源に関して0.02、F6光源に関して0.02、F8光源に関して0.02である。配合比率Aと配合比率Cとの間の色差は、A光源に関して0.13、F6光源に関して0.11、F8光源に関して0.05である。したがって、A光源、F6光源およびF8光源に関して、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMは、従来の手法によるCCMに比べてメタメリズムへの対応精度が低下している。したがって、本実施例において実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMが算出した配合比率に基づいて作成された色は、目標色に対してメタメリズムが発生し得る。
【0118】
配合比率Aと配合比率Dとの間の色差は、A光源に関して0.01、F6光源に関して0.00、F8光源に関して0.00である。したがって、A光源、F6光源およびF8光源に関して、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMは、実施形態1に係る方法によるCCMに比べてメタメリズムへの対応精度が向上している。このように、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMは、D65光源だけでなく、他の光源でも、従来の手法によるCCMよりも適切な配合比率を算出できている。したがって、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMは、実施形態1に係る方法によるCCMと比べて、目標色に対するメタメリズムが発生しない、または発生の程度が小さい色が作成され得る配合比率を算出することができる。
【0119】
実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法によるCCMは、波長毎に反射率の差比を算出するため、演算回路11による処理量は多くなる。しかし、当該方法によるCCMによれば、演算回路11は、1度の計算でメタメリズムの評価をすることができる。また、実施形態1に係るコンピュータカラーマッチング方法では、演算回路11は、色差を用いて、色のずれを調整しているが、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法では演算回路11は、反射率を用いて色のずれを調整する。したがって、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法では演算回路11は、目標色および調整目標色等の各色について反射率によって評価を行うことができる。
【0120】
上記したように、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法によれば、コンピュータカラーマッチング装置10の演算回路11は、各色の反射率を用いて、目標色を得るために作成する色の配合比率を決定する。したがって、実施形態2に係るコンピュータカラーマッチング方法によれば、演算回路11は、任意の光源において、所望の色である目標色に近い色を作成できる配合比率を算出することができる。当該方法は、上述したように、従来の手法を用いたCCMを実行する前に目標色を調整目標色に修正する処理を行うことで実行される。したがって、ユーザは、目標色を得るための配合比率を算出するプログラムを新たに作成せず、従来の手法を用いたCCMを行うためのプログラムを利用して、コンピュータの演算回路に本開示に係るコンピュータカラーマッチング方法を実行させることができる。
【0121】
(他の実施形態)
上記した実施形態2に係るコンピュータカラーマッチングシステム1において、演算回路11は、各波長における差比を算出し、差比を調整量として使用するがこれに限定されない。演算回路11は、所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との差を用いて目標色の反射率を調整してもよい。演算回路11は、例えば、調整量を、各波長における所定作成色の反射率に対する所定目標色の反射率の差から算出してもよい。演算回路11は、各波長における調整目標色の反射率を、目標色の反射率から調整量を減算することで算出できる。このようにして算出された調整量は、所定作成色の反射率に対する絶対値としての差を有する。
【0122】
上記した実施形態2において、学習データは、所定目標色、所定目標色の反射率または所定目標色の配向比率のいずれかと、所定作成色の配合比率、所定作成色、所定作成色の反射率または反射率差比のいずれかとの組み合わせを含んでいたがこれに限定されない。記憶装置12に記憶される学習データは、所定目標色、所定目標色の反射率または所定目標色の配向比率のいずれかと、所定作成色の配合比率、所定作成色、所定作成色の反射率または反射率の差のいずれかとの組み合わせであってもよい。
【0123】
上記した実施形態2において、学習データが複数の組み合わせデータを含む場合、調整量は、2以上の組み合わせデータにおける反射率差比の、波長毎に算出された平均値を含んでいたがこれに限定されない。例えば、調整量は、2以上の組み合わせデータにおける反射率の差の、波長毎に算出された平均値であってもよい。
【0124】
このように、上記した実施形態2に係るコンピュータカラーマッチングシステム1において、演算回路11は、反射率差比を用いてコンピュータカラーマッチング方法を実施しているが、これに限定されない。演算回路11は、反射率差比の代わりに、反射率の差を用いてコンピュータカラーマッチング方法を実施してもよい。
【0125】
(実施形態のまとめ)
以上のように説明した実施形態に係るコンピュータカラーマッチング装置、コンピュータカラーマッチングシステム、コンピュータカラーマッチング方法およびプログラムは、以下のように構成してもよい。
【0126】
(態様1)コンピュータカラーマッチング方法は、記憶装置(12)にアクセス可能な演算回路(11)により実行される、目標色を調色するための複数の基準色材の配合比率を算出するコンピュータカラーマッチング方法であって、記憶装置(12)は学習データを予め記憶しており、学習データは、所定目標色と、所定目標色を調色するために算出された配合比率に基づいて得られた所定作成色とに関連付けられた組み合わせデータを少なくとも含み、コンピュータカラーマッチング方法は、目標色を取得するステップと、学習データに基づいて、目標色を調整する調整量を算出するステップと、目標色と調整量とに基づいて調整目標色を決定するステップと、調整目標色を調色する配合比率を算出するステップと、を含み、目標色と、所定目標色と、所定作成色と、調整目標色と、は、それぞれ、波長毎の反射率で表され、調整量は、各波長における所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の差に基づいて決定される。本方法によれば、演算回路(11)は、目標色と、当該目標色を作成するように調色された作成色との間に生じるであろう反射率の差を考慮した目標色を示す調整目標色を決定できる。したがって、演算回路(11)は、任意の光源において、所望の色である目標色に近い色を作成できる配合比率を算出することができる。
【0127】
(態様2)態様1のコンピュータカラーマッチング方法において、調整量は、各波長における所定作成色の反射率に対する所定目標色の反射率の差から算出され、各波長における調整目標色の反射率は、目標色の反射率から調整量を減算することで算出されてもよい。本方法によれば、演算回路(11)は、目標色と作成色との間に生じ得る反射率の差を絶対値で調整して調整目標色の反射率を算出できる。したがって、演算回路(11)は、任意の光源において、所望の色である目標色に近い色を作成できる配合比率を算出することができる。
【0128】
(態様3)態様1のコンピュータカラーマッチング方法において、調整量は、各波長における所定作成色の反射率に対する所定目標色の反射率の差を、所定作成色の反射率で除算することで算出され、各波長における調整目標色の反射率は、目標色の反射率から、目標色の反射率と調整量の積を減算することで算出されてもよい。本方法によれば、演算回路(11)は、目標色と作成色との間に生じ得る反射率の差を反射率毎に相対値で調整して調整目標色の反射率を算出することができる。したがって、演算回路(11)は、任意の光源において、所望の色である目標色に近い色を作成できる配合比率を算出することができる。
【0129】
(態様4)態様1から態様3のいずれか1つのコンピュータカラーマッチング方法において、目標色と、所定目標色と、所定作成色と、調整目標色と、は、色空間を表す座標にさらに表され、演算回路(11)は、調整量を算出するステップにおいて、座標における目標色とのユークリッド距離が最も小さい所定目標色を選択してもよい。本方法によれば、演算回路(11)は、目標色に最も近いと考えられる色を所定目標色として用いて調整量を決定することができる。したがって、演算回路(11)は、任意の光源において、所望の色である目標色に近い色を作成できる配合比率を算出することができる。
【0130】
(態様5)態様1から態様3のいずれか1つのコンピュータカラーマッチング方法において、目標色と、所定目標色と、所定作成色と、調整目標色と、は、色空間を表す座標にさらに表され、学習データは複数の組み合わせデータを含み、学習データから目標色に対する2以上の組み合わせデータを抽出するステップをさらに有し、調整量を算出するステップは、抽出した2以上の組み合わせデータに基づいて、調整量を算出してもよい。本方法によれば、演算回路(11)は、複数の所定目標色を用いて調整量を決定することができる。したがって、演算回路(11)は、任意の光源において、所望の色である目標色に近い色を作成できる配合比率を算出することができる。
【0131】
(態様6)態様5のコンピュータカラーマッチング方法において、抽出するステップは、学習データから目標色の近傍色を検索することで、2以上の組み合わせデータを抽出するステップであってもよい。本方法によれば、演算回路(11)は、目標色に近い色から選択された複数の所定目標色を用いて調整量を決定することができる。したがって、演算回路(11)は、任意の光源において、所望の色である目標色に近い色を作成できる配合比率を算出することができる。
【0132】
(態様7)態様6のコンピュータカラーマッチング方法において、抽出するステップは、検索した2以上の組み合わせデータから、所定作成色に対する所定目標色の色差の傾向が異なる組み合わせデータを除外してもよい。本方法によれば、演算回路(11)は、検索された複数の所定目標色のうち、所定目標色と所定作成色との間の色差の傾向が他の所定目標色と異なる所定目標色を除外して、調整量を決定することができる。したがって、演算回路(11)は、任意の光源において、所望の色である目標色に近い色を作成できる配合比率を算出することができる。
【0133】
(態様8)態様5から態様7のいずれか1つのコンピュータカラーマッチング方法において、調整量を算出するステップは、抽出するステップによって抽出された2以上の組み合わせデータから得られる、各波長における2以上の差に基づく値を平均して調整量を算出してもよい。本方法によれば、演算回路(11)は、複数の所定目標色に基づく複数の反射率差比を用いて調整量を決定できる。したがって、演算回路(11)は、任意の光源において、所望の色である目標色に近い色を作成できる配合比率を算出することができる。
【0134】
(態様9)態様1から態様8のいずれか1つのコンピュータカラーマッチング方法は、調整目標色、調整目標色の反射率または調整目標色の配合比率のいずれかと、調整目標色を調色するために算出された配合比率によって得られた調整作成色、調整作成色の反射率または調整作成色の反射率に対する調整目標色の反射率の各波長における差に基づく値のいずれかと、を少なくとも有する組み合わせデータを学習データにさらに追加するステップを含んでもよい。本方法によれば、演算回路(11)は、任意の組み合わせデータに基づいて、任意の光源において、所望の色である目標色に近い色を作成できる配合比率を算出することができる。
【0135】
(態様10)態様1から態様9のいずれか1つのコンピュータカラーマッチング方法において、目標色の反射率が取得される波長の範囲は、少なくとも可視光の領域を含んでもよい。本方法によれば、演算回路(11)は、任意の光源において、少なくとも可視光の領域において、所望の色である目標色に近い色を作成できる配合比率を算出することができる。
【0136】
(態様11)プログラムは、態様1から態様10のいずれか1つのコンピュータカラーマッチング方法を演算回路(11)に実行させることができる。
【0137】
(態様12)コンピュータカラーマッチング装置(10)は、目標色を作成するための基準色材の配合比率を算出する演算回路(11)と、所定目標色と、所定目標色を調色するために算出された配合比率に基づいて得られた所定作成色とに関連付けられた組み合わせデータを少なくとも含む学習データを記憶する記憶装置(12)と、を備え、演算回路(11)は、目標色を取得し、学習データに基づいて目標色を調整する調整量を算出し、目標色と調整量とに基づいて調整目標色を決定し、調整目標色を調色する配合比率を算出し、目標色と、所定目標色と、所定作成色と、調整目標色と、は、それぞれ、波長毎の反射率で表され、調整量は、各波長における所定目標色の反射率と所定作成色の反射率との間の差に基づいて決定される。このような構成によれば、演算回路(11)は、目標色と、当該目標色を作成するように調色された作成色との間に生じるであろう反射率の差を考慮した目標色を示す調整目標色を決定できる。したがって、演算回路(11)は、任意の光源において、所望の色である目標色に近い色を作成できる配合比率を算出することができる。
【0138】
(態様13)コンピュータカラーマッチングシステム(1)は、態様12のコンピュータカラーマッチング装置(10)と、色を測定する測色装置(20)と、を備え、目標色は、測色装置(20)で測定することで取得される。
【0139】
本開示に記載のコンピュータカラーマッチング装置およびコンピュータカラーマッチングシステムは、ハードウェア資源、例えば、プロセッサ、メモリ、と、ソフトウェア資源(コンピュータプログラム)との協働などによって実現される。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本開示によれば、所望の色である目標色とCCMを用いて作成した色との差を低減するコンピュータカラーマッチング方法、コンピュータカラーマッチング装置、コンピュータカラーマッチングシステムおよびプログラムを提供することができる。したがって、この種の産業分野において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0141】
1 コンピュータカラーマッチングシステム
10 コンピュータカラーマッチング装置
11 演算回路
12 記憶装置
13 入出力装置
14 通信回路
20 測色装置
30 アプリケーション