(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061410
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20240425BHJP
【FI】
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169347
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田辺 麻衣子
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA02
5F142AA26
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CA13
5F142CB03
5F142CB12
5F142CB23
5F142CD02
5F142CD16
5F142CD17
5F142CD44
5F142CD47
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG32
5F142DA14
5F142FA18
5F142GA11
5F142GA29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発光素子から出射される光の損失が低減され、滲みが防止され、高い光出力が得られる発光装置を提供する。
【解決手段】対向する2つの主面を備えた基板11と、基板11の一方の主面である上面上に配置された半導体発光素子20と、半導体発光素子20上に配置された光変換部材22と、光変換部材22の半導体発光素子20に対向する面及び基板11の上面を覆いつつ、半導体発光素子20を埋設する第1被覆部材23と、を備え、第1被覆部材23は、光変換部材22の半導体発光素子20に対向する面22Bの外周縁から光変換部材22の側面を露出しつつ外方に延在し、基板11は、上面視において、光変換部材22を包含しつつ光変換部材22の外側面よりも外方に突出し、光変換部材22は、上面視において、半導体発光素子20を包含しつつ半導体発光素子20の外側面よりも外方に突出している半導体発光装置10。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの主面を備えた基板と、
前記基板の一方の主面である上面上に配置された半導体発光素子と、
前記半導体発光素子上に配置された光変換部材と、
前記光変換部材の前記半導体発光素子に対向する面及び前記基板の上面を覆いつつ、前記半導体発光素子を埋設する第1被覆部材と、を備え、
前記第1被覆部材は、前記光変換部材の前記半導体発光素子に対向する面の外周縁から前記光変換部材の側面を露出しつつ外方に延在し、
前記基板は、上面視において、前記光変換部材を包含しつつ前記光変換部材の外側面よりも外方に突出し、
前記光変換部材は、上面視において、前記半導体発光素子を包含しつつ前記半導体発光素子の外側面よりも外方に突出している半導体発光装置。
【請求項2】
前記光変換部材は光変換粒子を有し、
前記光変換部材は、前記半導体発光素子から出射される光及び前記光変換粒子から出射される光を散乱する光散乱性を有する請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記第1被覆部材は、前記半導体発光素子及び前記光変換部材から出射される光を反射する光反射性を有する請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記第1被覆部材は、前記半導体発光素子から出射される光及び前記光変換部材に含まれる前記光変換粒子から出射される光を反射する光反射性粒子を含有する請求項3に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記半導体発光素子と前記光変換部材との間に、前記半導体発光素子の上面から出射する光を前記光変換部材の下面に入光するように設けられた接着部材を有する請求項1または請求項4に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記接着部材の側面は、前記第1被覆部材により被覆されている請求項5に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
少なくとも前記光変換部材の側面と前記第1被覆部材の上面とを被覆する透光性の第2被覆部材を備え、
前記第2被覆部材は、空気層より大きく前記光変換部材より小さい屈折率を有する請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記半導体発光素子を複数個備え、
前記光変換部材は、上面視において、当該複数の半導体発光素子の全体を包含しつつ当該複数の半導体発光素子の全体の外縁よりも外方に突出している請求項1に記載の半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、特に発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子が実装された発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子が実装された発光装置は、各種の照明や表示装置に利用されている。特に近年、半導体発光素子が実装された発光装置は、更なる発光出力及び発光効率の向上が求められている。また、車両用ヘッドライトなどの光源として、高出力な発光装置が求められている。
さらに、表示装置のバックライト用光源として小型化も求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、発光素子と、発光素子からの出射光を光透過部材に導光する導光部材と、発光素子及び光透過部材の一方の表面を被覆する被覆部材とを備えた発光装置が開示されている。
また、特許文献2には、ケースと、発光層を含む積層体を有するLED素子とを備えた発光装置において、コーティング材がケース内に充填されている発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-219324号公報
【特許文献2】特開2007-19096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光透過部材と被覆部材とを用いた発光装置には、光の損失が発生するという問題があった。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、発光素子から出射される光の損失が低減され、高い光出力が得られる発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1実施形態による発光装置は、
対向する2つの主面を備えた基板と、
前記基板の一方の主面である上面上に配置された半導体発光素子と、
前記半導体発光素子上に配置された光変換部材と、
前記光変換部材の前記半導体発光素子に対向する面及び前記基板の上面を覆いつつ、前記半導体発光素子を埋設する第1被覆部材と、を備え、
前記第1被覆部材は、前記光変換部材の前記半導体発光素子に対向する面の外周縁から前記光変換部材の側面を露出しつつ外方に延在し、
前記基板は、上面視において、前記光変換部材を包含しつつ前記光変換部材の外側面よりも外方に突出し、
前記光変換部材は、上面視において、前記半導体発光素子を包含しつつ前記半導体発光素子の外側面よりも外方に突出している半導体発光装置。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】第1の実施形態の発光装置を示した概念図であり、上面側から見たときの斜視図である。
【
図2A】第1の実施形態の発光素子を示した概念図である。
【
図2D】発光素子を基板及び光変換部材に接続した状態の概念図。
【
図3】発光装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4A】発光装置の製造工程S1を示す断面図である。
【
図4B】発光装置の製造工程S2を示す断面図である。
【
図4C】発光装置の製造工程S3を示す断面図である。
【
図4D】発光装置の製造工程S4を示す断面図である。
【
図4E】発光装置の製造工程S5を示す断面図である。
【
図4F】発光装置の製造工程S6を示す断面図である。
【
図5A】第1の実施形態の変形例1による発光装置を示した断面図である。
【
図5B】第1の実施形態の変形例2による発光装置を示した断面図である。
【
図6A】第2の実施形態による発光装置を示した概念図であり、上面側から見たときの斜視図である。
【
図6B】光変換部材の設置及び、第1被覆部材を充填する前の第2の実施形態による発光装置を示した概念図であり、上面側から見たときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
[第1の実施形態]
【0009】
図1Aは、本発明の第1の実施形態による発光装置10を示した概念図であり、上面側から見たときの斜視図である。
図1Bは、
図1Aに示すA-A線に沿った断面図である。
本明細書においては、基板11に対して発光素子20が設けられた方向を上方といい、その逆を下方という。また、上面視において基板11の中心に向かう方向を内方といい、その逆を外方という。
【0010】
発光装置10は、上面及び下面を備えた基板11と、基板11の上面上に実装された発光素子20と、発光素子20の出射面(上面)の上に接着部材21を介して設けられた上面視において当該出射面より面積の大きい下面22Bを有する光変換部材22と、発光素子20及び接着部材21の側面と光変換部材22の下面を被覆する反射性の第1被覆部材23とを有している。
【0011】
(基板)
基板11としては、ガラスエポキシ基板(ガラス繊維強化エポキシ樹脂基板)が用いられている。なお、基板11の基体には、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミ(AlN)などの絶縁性のセラミック基板を用いることができる。
【0012】
基板11は、互いに対向する主面である上面及び下面を備えた矩形の板状に形成されている。
図1A及び
図1Bに示すように、上面視において、基板11は光変換部材22を包含する大きさを有し、基板11の全ての外側面は光変換部材22の外側面よりも外方に突出している。
【0013】
基板11には第1配線電極12A及び第2配線電極12Bが設けられている。また基板11は、第1貫通電極28A及び第2貫通電極28Bと、第1実装電極13A及び第2実装電極13Bとを有している。以後、第1配線電極12A及び第2配線電極12B、第1貫通電極28A及び第2貫通電極28B、第1実装電極13A及び第2実装電極13Bの各々を区別しない場合には単に配線電極12、貫通電極28、実装電極13と記載する。
【0014】
基板11の上面には、第1及び第2配線電極12A,12Bが設けられている。また、基板11は、第1及び第2配線電極12A,12Bにそれぞれ電気的に接続された第1及び第2貫通電極28A、28Bを有している。基板11の下面には、第1及び第2貫通電極28A、28Bにそれぞれ電気的に接続され、回路基板等(図示しない)に接合される第1実装電極13A及び第2実装電極13Bが設けられている。
【0015】
第1配線電極12A及び第2配線電極12Bの各々には、発光素子20が載置される発光素子載置領域に加え、保護素子が載置される保護素子配置領域を備えている。第1配線電極12A及び第2配線電極12B間には、発光素子20と並列に保護素子(図示しない)が実装されている。保護素子は、異常電圧により、発光素子20を破損して不灯になることを防止するものであり、ツェナーダイオードのほか、コンデンサ、バリスタを用いることができる。
【0016】
第1実装電極13A及び第2実装電極13Bの各々は、発光素子20に電力を供給するアノード電極及びカソード電極である。
【0017】
(発光素子)
発光素子20は、
図2Aに示すように、n型半導体層と発光層及びp型半導体層を備えた半導体発光機能層26と、半導体発光機能層26の上面に設けられた透光基板25と、半導体発光機能層26の下面に設けられた第1素子電極27A及び第2素子電極27Bとを有するLED(light-emitting diode)である。半導体発光機能層26は、GaN系化合物半導体である。なお、AlInGaP系、InGaAs系の化合物半導体とすることもできる。また透光基板25は、半導体発光機能層26から出射される光を透過する透光性のサファイア(Al
2O
3)である。なお、透光基板25としては窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミ(AlN)、炭化ケイ素(SiC)を用いることもできる。
【0018】
第1素子電極27Aは半導体発光機能層26のp型半導体に接続され、第2素子電極27Bは半導体発光機能層26のn型半導体に接続される。そして当該第1及び第2素子電極27A、27Bが、それぞれ基板11の上面に設けられた第1及び第2配線電極12A、12Bに接合部材14を介して接合されている。発光素子20は、発光装置10の第1実装電極13A及び第2実装電極13Bへ通電することにより発光層から青色光を出射する。出射された光は透光基板25を透光して、当該透光基板25の上面から出射される。なお、このように発光素子20の第1及び第2素子電極27A、27Bを基板11の第1及び第2配線電極12A、12Bへ接合する態様をフリップチップ接合と言い、この用途に用いる発光素子20をフリップチップと言う。
【0019】
(光変換部材)
光変換部材22は、通過する発光素子20から出射された光(一次光)の一部または全部を吸収し、当該光の波長より長波長に変換して出射(二次光)する光変換粒子を含んでいる。光変換部材22は、母材としてのアルミナ、光変換粒子としてのセリウム賦活イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)蛍光体粒子を含んだセラミック蛍光体である。光変換部材22から出射される光は、青色の一次光と緑黄色の二次光が混色された白色光である。また、母材としてのアルミナの屈折率は1.7、光変換粒子としてのYAG:Ceの屈折率は1.84と異なっており光散乱性を有している。よって、光変換部材22の上面及び側面からは略同等な色相の白色光が出射される。なお、青色の一次光の全部を変換する光変換部材22を用いた場合には、緑黄色の二次光のみが出射する。
【0020】
図1Bに示すように、光変換部材22は透光性の接着部材21によって発光素子20の上面に接着されている。また、上面視において、光変換部材22は発光素子20及び接着部材21を包含する大きさを有し、光変換部材22の全ての外側面は発光素子20及び接着部材21の外側面よりも外方に突出している。なお、接着部材21の外側面は発光素子20の外側面を延長した面より、若干凸状又は凹状に出っ張り引っ込みしていてもよい。
【0021】
このように、上面視において、光変換部材22の全ての外側面が発光素子20及び接着部材21の外側面よりも外方に突出していることにより、青色の一次光及び緑黄色の二次光が、光変換部材22の上面と略同じ比率で外側面から出射させることができる。すなわち、色ムラの発生を防止できる。
【0022】
また、光変換部材22は発光素子20の出射面(上面)より幅広な受光面22B(下面)を持ち、発光素子20の出射面から接着部材21を経由して光変換部材22の受光面22Bまでの光路の全周は、第1被覆部材23により覆われているため、発光素子20から出射される出射光(1次光)の光漏れを防止できる。つまり、発光素子20からの出射光が光変換部材22に取り込まれやすくなり、高い光出力が得られる。
【0023】
また、上面視において光変換部材22の中心は発光素子20の中心に一致するようにアライメントされて配置されており、光変換部材22の外側面は、発光素子20の外側面に対して突出長POだけ突出している。ここで、突出長POは、上面視における光変換部材22の幅PSから上面視における発光素子20の幅CSを減算した値の1/2(すなわち、PO=(PS-CS)/2)である。なお、突出長POは、発光素子20の幅CSに対して3%~7%であることが好ましい。
例えば、発光素子20の幅CSが1.00mmであり、光変換部材22の突出長POが、発光素子20の幅CSに対して5%である場合には、光変換部材22の幅PSは1.10mmであり、光変換部材22の突出長POは0.05mmである。
【0024】
光変換部材22の突出長POが大きいと、光変換部材22の外周部まで発光素子20からの出射光が届かずに輝度低下が顕在化することがある。また、光変換部材22の突出長POが小さいと、発光素子20の出射光が支配的になり色ズレが大きくなる。また、光変換部材22と第1被覆部材23との接着面を設けられなくなる。
【0025】
なお、上記したように、光変換部材22の突出量POが(PS-CS)/2、すなわち光変換部材22の対向する2つの側面の突出量POが等しいことが好ましい。さらに、光変換部材22の4つの側面の突出量POが等しいことが好ましい。しかしながら、これに限定されず、各側面の突出量POが互いに異なっていてもよい。具体的には、光変換部材22と発光素子20の中心ズレは、突出長POが前述の範囲であれば問題ない。
【0026】
光変換部材22は、上面視において矩形であり、その上面22A及び受光面22B(下面)は、両面とも略平坦な面であり、かつ、対向する両面が互いに略平行に形成されており、光変換部材22は全体として板状に形成されている。また、上面22A及び受光面22Bの表面は、微視的に観察すると、アルミナ母材及びYAG:Ce光変換粒子の粒子に由来する微細な凹凸を有している。光変換部材22は矩形で平坦な面を有する板状に限らず、加工による凹凸構造又はポリッシング等による平滑な面性状を有することもできる。また、上面22Aおよび/または外側面に透光性の保護膜が形成されていてもよい。例えば、汚れ弾きのよいフッ素樹脂薄膜、耐候性を有するガラス薄膜、指向特性を制御する誘電体多層膜などがある。
【0027】
光変換部材22の母材としては、透光性のセラミック又はガラス類の無機材、透光性の樹脂材などを用いることができる。また、光変換粒子としては、セリウム賦活イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)蛍光体、セリウム賦活ルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LuAG:Ce)蛍光体、ユーロピウム又は/及びセリウム賦活オルトシリケート((Ba,Sr,Ca)SiO4:Eu,Ce)蛍光体、セリウム賦活テルビウム・アルミニウム・ガーネット(TAG:Ce)、ユーロピウム賦活αサイアロン蛍光体(α-SiAlON:Eu)、ユーロピウム賦活βサイアロン蛍光体(β-SiAlON:Eu)、マンガン賦活カリウム・フルオロ珪酸カリウム(KFS:Mn)などを用いることができ、励起光の波長や所望の色調などによって異なる種類の光変換粒子を適宜選択して用いることができる。また、1つの発光装置10に複数の発光素子20が搭載されている場合には、各発光素子20に同じ/または異なる光変換粒子を含有した光変換部材22を用いることもできる。
【0028】
光変換部材22は、光変換粒子を含んだセラミック焼結体、ガラス成形体又は樹脂成形体などから形成されていてもよい。例えば、アルミナにYAG:Ce蛍光体を混合したセラミック焼結体、またソーダガラス、ホウ珪酸ガラスまたは窒素成分を含むナイトガラスなどのガラスにβサイアロン蛍光体を混合したガラス成形体、シリコーン樹脂にオルトシリケート蛍光体を混合した樹脂成型体などを用いることができる。
【0029】
光変換部材22の光散乱性が不十分な場合は、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミナ(Al2O3)などの光散乱性の粒子を添加して光散乱性を向上することができる。または、光散乱効果のあるサイズの気孔(ポア)を含ませて光散乱性を向上することもできる。
【0030】
なお、上記の実施形態においては、光変換部材22が設けられた場合について説明したが、これに限定されない。例えば、発光装置10の出射光を発光素子20の出射光のみとしたい場合(光変換部材22に光変換粒子を混合しない場合)は、前述のように光変換部材22に光散乱性の粒子だけを添加する構成とすることもできる。
【0031】
(第1被覆部材)
図1Bに示すように、第1被覆部材23は、光変換部材22の発光素子20に対向する面22Bの外周縁、すなわち、光変換部材22の受光面22B(下面)の辺を起点として光変換部材22の側面を露出しつつ光変換部材22の外方に延在している。また、第1被覆部材23は、基板11の上面(23D)、基板11上に実装された発光素子20及び接着部材21の側面(23C)を被覆するとともに、光変換部材22の受光面22B(下面)を被覆している。換言すれば、発光素子20は第1被覆部材23よって埋設され封止されている。
【0032】
また、第1被覆部材23の露出面は、光変換部材22の下面の外周縁から外方に向けて下方に傾斜して延在させた延在面23A(上面)と、延在面23Aの外周縁から基板11の上面の外周縁に向かって鉛直方向に延びる外側面23Bからなる。
本実施形態において、延在面23A及び外側面23Bは、発光装置10の表面である。
【0033】
本実施形態において、延在面23Aは、側面視において、光変換部材22の外周縁の下端から外方かつ下方に凹状に湾曲する曲面であるが、延在面23Aは、外方かつ下方に凸状に湾曲する曲面でもよく、その形状は平面でもあってもよい。また、延在面23Aと外側面23Bが連続的に繋がっていてもよい。
【0034】
また、光変換部材22の下面22Bの外周縁から外方への突出長TWは、PT≦TW≦PSを満たすことが好ましい。突出長TWの最小値が光変換部材22の厚みPT未満であると、光変換部材22の側面から出射光の反射効率が低下する。また、突出長TWが光変換部材22の幅PSを超えると発光装置10のサイズが光変換部材22に対して不必要に大きくなるからである。
【0035】
第1被覆部材23の母材は、透光性のシリコーン樹脂を用いている。なお、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂などからなる透光性の樹脂材料を用いることができる。
【0036】
第1被覆部材23は、光反射材として光反射性を有する酸化チタン(TiO2)粒子が含有されている。光変換部材22の外側面は第1被覆部材23により被覆されていないため、光変換部材22の外側面から出射された出射光が第1被覆部材23の延在面23Aで反射されることにより、軸上方向の光出力を向上することができる。
【0037】
例えば、光変換部材の外側面が第1被覆部材で覆われている場合には、第1被覆部材における光変換部材との当接部(例えば、光変換部材との当接面から0.2mm程度)において光損失が発生する。具体的には、当該部分に光滲みが生じる。
本実施形態によれば、光変換部材22の外側面が第1被覆部材23で覆われていないため、光変換部材22の外側面から光を取り出せるため光損失を防止でき、高い光出力が得られる。また、同時に指向特性を広くできる。
【0038】
より詳細には、光変換部材の外側面の上端まで被覆部材で覆われている点が異なるだけで、他の構成を全て同じにした比較サンプルを作成し、比較サンプルと本実施形態を同条件下で光出力(全光束:lm)と半値角(光出力が最大値の半分になる指向角)を比較した結果、比較サンプルの光出力は400lmであり、指向特性の半値角は120°であった。対して、本実施形態の光出力は420lmであり、指向特性の半値角は125°であった。すなわち、本実施形態の光出力は比較サンプルに対して5%向上した。また、指向特性の半値角は5°拡大した。
【0039】
なお、第1被覆部材23に含有させるTiO2粒子としては、例えば、粒径は200nm~300nmであり、かつ、含有量は8~60wt%であることが好ましい。TiO2粒子の粒径が200nm~300nmであることにより、ミー散乱が発生し、拡散反射性に優れるからである。
なお、本実施形態では光反射材としてTiO2粒子を用いたが、TiO2粒子のほか、酸化亜鉛(ZnO)粒子などを用いることができる。
【0040】
また、上記においては、延在面23Aが、光変換部材22の下面22Bの外周縁から外方に向けて下方に傾斜して延在している場合について説明したが、これに限られない。延在面23Aは、光変換部材22の下面22Bの外周縁から外方に向けて上方に傾斜して延在してもよい。また、延在面23Aは、光変換部材22の下面22Bの外周縁から外方に向けて光変換部材22の下面22Bと平行に延在してもよい。つまり、延在面23Aは光変換部材22の下面22Bに対して傾斜していなくてもよい。
【0041】
(発光装置の製造方法)
以下に第1の実施形態の発光装置10の製造方法についてフローチャート及び図面を参照して詳細に説明する。
図3は、発光装置10の製造方法を示すフローチャートである。また、
図4A~4Fは、各工程を示す断面図である。また、各図において、発光装置10毎に分割する際の切断線を破線で示している。
【0042】
(S1)準備
第1及び第2配線電極12A,12Bと、第1及び第2貫通電極28A,28Bと、第1実装電極13A及び第2実装電極13Bとを有するガラスエポキシ基板11を準備する(
図4A)。
ガラスエポキシ基板11の上面には、第1及び第2配線電極12A,12Bが設けられている。また、ガラスエポキシ基板11は、第1及び第2配線電極12A,12Bにそれぞれ電気的に接続された第1及び第2貫通電極28A、28Bを有している。ガラスエポキシ基板11の裏面には、第1及び第2貫通電極28A、28Bにそれぞれ電気的に接続された第1実装電極13A及び第2実装電極13Bが設けられている。
【0043】
(S2)素子実装工程
発光素子20及び保護素子が実装される第1及び第2配線電極12A、12B上に接合部材14として金錫(Au-Sn)クリームはんだを塗布する。次に、発光素子20、保護素子を金錫クリームはんだ上に載置する。
リフロー炉で300℃まで加熱して金錫クリームはんだを溶融・固化して発光素子20、保護素子を第1及び第2配線電極12A、12B上に実装する(
図4B)。
【0044】
(S3)光変換部材接着工程
接着部材21である透光性の接着剤であるシリコーン樹脂を発光素子20の出光面(上面)に塗布する。次に、光変換部材22を発光素子20上に載置する。180℃で30分間加熱して、シリコーン樹脂を仮硬化して光変換部材22を接着する(
図4C)。
【0045】
(S4)枠体形成工程
ガラスエポキシ基板11の最外周に低温硬化型の樹脂にて枠体80を形成する。150℃で10分間加熱して、樹脂を硬化する。樹脂は、光硬化樹脂を用いてもよい(
図4D)。
【0046】
(S5)第1被覆部材形成工程
枠体80の内側に、酸化チタン粒子を混合したシリコーン樹脂からなる第1被覆部材23を光変換部材22の外側縁の下端に接する高さまで充填する。その後、150℃で120分間加熱してシリコーン樹脂を硬化させる。このとき、接着部材21も本硬化される。また、シリコーン樹脂の体積が減少して延在面23Aとなる部分が凹状の湾曲形状に形成される(
図4E)。
【0047】
(S6)個片化工程
ダイサーで発光装置10の単位毎に切断し、個片化する。以上の工程により、発光装置10が製造される(
図4F)。
【0048】
本発明によれば、製造工程(S4)において樹脂製の枠体を形成することで、第1被覆部材23を充填するためのケースなどの別部材が不要である。そのため、製造工程がより簡易に発光装置10を製造することができる。
【0049】
以上、説明したように、本発明によれば、発光素子20から出射される光の損失が低減され、高い光出力が得られる発光装置10を提供することができる。また、指向特性を広角化できる。
なお、本実施形態においては、発光素子20として、透光性の基板付きフリップチップを用いたが、用いられる発光素子はこれに限定されない。例えば、以下に例示する発光素子を用いることもできる。
【0050】
図2Bは、支持基板付き片面電極チップである発光素子30を示している。発光素子30は、第1及び第2素子電極34A、34Bと、第1及び第2素子電極34A、34B上に設けられた支持基板33と、支持基板33上に設けられた接合層32と、接合層32上に設けられたp型半導体、n型半導体及び発光層を含む半導体発光機能層31とを有している。
支持基板33には、主にシリコン(Si)またはセラミックが用いられる。
第1素子電極34Aは半導体発光機能層31のp型半導体に接続され、第2素子電極34Bは半導体発光機能層31のn型半導体に接続されている。
【0051】
図2Cは、支持基板付き上下両面電極チップである発光素子40を示している。発光素子40は、支持基板43と、支持基板43上に設けられた接合層42と、接合層42上に設けられたp型半導体、n型半導体及び発光層を含む半導体発光機能層41を有している。
支持基板43の上面には第1素子電極44A、支持基板43の下面には第2素子電極44Bが設けられている。
【0052】
支持基板43には、主にシリコンまたはセラミックが用いられる。
第1素子電極44Aは、半導体発光機能層41のp型半導体に接続され、第2素子電極44Bは半導体発光機能層41のn型半導体に接続されている。
図2Dに示したように、第1素子電極44Aは金バンプを介して基板11の上面の第1配線電極12A(図示せず)とワイヤ46によりワイヤボンディングされている。また素子電極44Bは第2配線電極12B(図示せず)と接続部材14を介して接合されている。
【0053】
そのため、当該ワイヤ46が光変換部材22と接触しないように、接着部材21にスペーサ45を含有させている。これにより、光変換部材22の下面22Bと発光素子40の第1素子電極44Aに接続しているワイヤ46と離間させることができる。
【0054】
具体的には、粒径70μmのスペーサ45により光変換部材22の下面22Bと発光素子40の上面との離間距離は70μm確保され、高さ20μmの金バンプ上にワイヤ径30μmのワイヤ46が接続された箇所においても、光変換部材22の下面22Bと干渉しなくなる。なお、スペーサ45には、軟質ガラスまたは樹脂を用いることができる。
【0055】
[第1の実施形態の変形例1]
第1の実施形態の変形例1について説明する。なお、本発明の第1の実施形態による発光装置10と同一の構成については適宜説明を省略する。
図5Aに示すように、第1の実施形態の変形例1に係る発光装置50は、上面及び下面を備えた基板11と、基板11の上面上に実装された発光素子20と、発光素子20の出射面(上面)上に設けられた光変換部材22と、第1被覆部材23と、第2被覆部材24とを有している。
【0056】
第2被覆部材24は、光変換部材22の外側面と第1被覆部材23の延在面23Aを被覆している。詳細には、第2被覆部材24は、光変換部材22の上面22Aの外周縁から外方に向けて下方に傾斜して延在させた上面と、光変換部材22の外側面と覆う内周面と、第2被覆部材24の上面から基板11の上面の外周縁に向かって鉛直方向に延びる外側面と、第1被覆部材23の延在面23Aの全面を覆う下面とを有している。
この場合、第2被覆部材24により光変換部材22を固定することができ、また、発光装置50の外表面と発光素子20との封止厚みを増すことができ、耐候性が向上する。
【0057】
第2被覆部材24は、光変換部材22の屈折率(平均屈折率)より小さく空気層の屈折率よりも大きい透光性のシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン樹脂などからなる透光性の樹脂材料を用いることができる。
したがって、光変換部材22、第2被覆部材24、空気層の順に屈折率が段階的に変化することで、光変換部材22からの出射光の光取り出し効率を向上させることができる。
【0058】
[第1の実施形態の変形例2]
第1の実施形態の変形例2について説明する。変形例2においては、
図5Bに示すように、第2被覆部材24が光変換部材22の上面22Aの全体を覆う構成している。この場合、光変換部材22の上面22Aから出射された出射光の光取り出し効率を向上させることができるとともに光変換部材22の上面22A及び光変換部材22の外側面を保護することができる。
【0059】
第2被覆部材24には、拡散材を混合することができる。拡散材の含有により、色度の角度依存性(色分離)を向上させることができる。拡散材としては、例えば、ミー散乱領域の粒子より大きい粒径のアルミナ粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子などを用いることができる。また、その粒径は、3~50μmであることが好ましい。
【0060】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について説明する。なお、本発明の第1の実施形態による発光装置10と同一の構成については適宜説明を省略する。
第2の実施形態に係る発光装置60は、上面及び下面を備えた基板11と、基板11の上面上に実装された複数の発光素子20と、発光素子20の出射面(上面)上に設けられた光変換部材22と、第1被覆部材23とを有している。
【0061】
図6Bに示すように、発光装置60は発光素子20を4つ有し、4つの発光素子20は2行2列のマトリクス状に互いに離間して配列されている。
そして、4つの発光素子20の全体の仮想外周縁(発光素子20の外側の辺を結んだ仮想線)は矩形であり、光変換部材22の外周縁も4つの発光素子20の仮想外周縁から等距離となる矩形状である。したがって、効率的で均一な光変換を行うことができる。
【0062】
各発光素子20の離間距離は、光変換部材22の突出長POの1倍以上2倍以下であることが好ましい。
各発光素子20の離間距離が2倍超だと、光変換部材22において発光素子20の出射光が届かない部分の光出力が減衰して輝度ムラを発生する。また、1倍未満だと、光出力の向上率が低下する。
【0063】
4つの発光素子20は第1及び第2配線電極12A,12Bと第1中継配線電極12C、第2中継配線電極12D及び第3中継配線電極12Eとによって、直列接続されている。したがって、4つの発光素子20には、同一な電流を流すことができる。
また、保護素子90は上面視における4つの発光素子20の配置の中心に位置する。また、保護素子90は、当該4つの発光素子20の位置まで延在した第1配線電極12Aと第2配線電極12Bに接続されている。この配置により光出力の損失を防止できる。
【0064】
なお、本実施形態においては、複数の発光素子20を第1及び第2配線電極12A,12Bによって、直列接続させたが、並列接続させてもよい。
また、本実施形態においては、発光素子20の数を4つとしたが、その数は2つでも3つでもよく、5つ以上でもよい。すなわち、光変換部材22が矩形となるように、発光素子20を1行2列、1行3列、1行4列、・・・、m行n列(m、nは整数)に配列できる。
【0065】
図6A、
図6B及び
図6Cに示すように、上面視において、光変換部材22は4つの所定距離だけ離間して載置された発光素子20を包含する大きさ及び配置で設けられている。つまり、光変換部材22は、当該複数の発光素子20の全体の仮想外周縁よりも外方に突出長POだけ突出している。また、複数の発光素子20の離間距離も突出長POの1~2倍のだけ離間して載置されている。
【0066】
そのため、光変換部材22はすべての発光素子20の出射面(上面)より幅広な受光面22B(下面)を持ち、発光素子20の出射面から光変換部材22の受光面22Bまでの光路の周囲は、第1被覆部材23により覆われているため、発光素子20からの出射される出射光の光漏れが防止される。
つまり、発光素子20からの出射光が光変換部材22に取り込まれやすくなり、高い光出力が得られる。また、配光特性も広角化できる。
【0067】
当該複数の発光素子20の出射面(上面)は、基板11から同一の高さであることが好ましい。しかしながら、複数の発光素子20の出射面の基板11からの高さにバラツキがあっても、上述の構造に加え、透光性の接着部材21と当該接着部材21の側面を第1被覆部材23で被覆する構造により、発光装置50から出射する光出力のバラツキを抑えることができる。
【0068】
以上、詳細に説明したように、発光素子から出射される光の損失が低減され、高い光出力が得られる半導体発光装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 発光装置
11 基板
12 配線
12A 第1配線電極
12B 第2配線電極
13 実装電極
13A 第1実装電極
13B 第2実装電極
14 接合部材
20 発光素子
21 接着部材
22 光変換部材
23 第1被覆部材
24 第2被覆部材
25 透光基板
26 半導体発光機能層
27A 第1素子電極
27B 第2素子電極
28A 第1貫通電極
28B 第2貫通電極
30 発光素子
31 半導体発光機能層
32 接合層
33 支持基板
34A 第1素子電極
34B 第2素子電極
40 発光素子
41 半導体発光機能層
42 接合層
43 支持基板
44A 第1素子電極
44B 第2素子電極
45 スペーサ
46 ワイヤ
50 発光装置
60 発光装置
70 発光装置
80 枠体
90 保護素子