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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061411
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
F04C18/02 311U
F04C18/02 311H
F04C18/02 311E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169348
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 詩織
(72)【発明者】
【氏名】山下 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】並木 謙
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA06
3H039AA12
3H039BB28
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC15
3H039CC22
(57)【要約】
【課題】ハウジングの大型化の抑制と固定スクロールの強度の確保とを両立しつつ外周通路を広げることができるスクロール型圧縮機を提供する。
【解決手段】スクロール型圧縮機10は、流体を圧縮する圧縮室S2と、モータ室S1から流体が流入する外周通路Rと、外周通路Rから圧縮室S2に流体を吸入する吸入通路67とを有している。圧縮室S2は、固定スクロール60と旋回スクロール70とによって区画されている。外周通路Rは、吐出ハウジング40の第3周壁42の内周面420と固定スクロール60の固定周壁63の外周面630とによって区画されている。吸入通路67は、固定周壁63に設けられている。固定周壁63の外周面630は、回転軸12の軸線方向において吸入通路67よりも電動モータ13側に位置する上流側外周面631を有する。回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離は、回転軸12の軸線方向において変化している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸を回転させる電動モータと、
前記電動モータを収容するモータ室を有するハウジングと、
前記ハウジング内に収容されるとともに前記ハウジングに固定される固定スクロールと、
前記回転軸の回転に伴い公転する旋回スクロールと、
を備え、
前記固定スクロールは、固定端壁と、前記固定端壁から前記旋回スクロールに向かって延出する筒状の周壁とを有し、
前記固定スクロールと前記旋回スクロールとによって区画され、流体を圧縮する圧縮室と、
前記ハウジングの内周面と前記周壁の外周面とによって区画され、前記モータ室から前記流体が流入する外周通路と、
前記周壁に設けられ、前記外周通路から前記圧縮室に前記流体を吸入する吸入通路と、
を有するスクロール型圧縮機であって、
前記周壁の外周面は、前記回転軸の軸線方向において前記吸入通路よりも前記電動モータ側に位置する上流側外周面を有し、
前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの距離は、前記回転軸の軸線方向において変化していることを特徴とするスクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記上流側外周面は、前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの距離が前記回転軸の軸線方向において徐々に変化するように、前記回転軸の軸線に対して傾斜している請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの距離は、前記回転軸の軸線方向において前記モータ室から前記吸入通路に向かうにつれて長くなっている請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
【請求項4】
前記上流側外周面は、前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの距離が前記回転軸の軸線方向において前記モータ室から前記吸入通路に向かうにつれて徐々に長くなるように、前記回転軸の軸線に対して傾斜しており、
前記回転軸の軸線に対する前記上流側外周面の傾斜角度は、前記周壁の周方向において異なっている請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
【請求項5】
前記周壁の外周面は、前記回転軸の軸線方向において前記吸入通路を挟んで前記上流側外周面とは反対側に位置する下流側外周面を有し、
前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記下流側外周面までの距離は、前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの最長距離以上である請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
【請求項6】
前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記下流側外周面までの距離は、前記回転軸の軸線方向において一定である請求項5に記載のスクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のスクロール型圧縮機は、回転軸と、電動モータと、ハウジングと、固定スクロールと、旋回スクロールとを備えている。電動モータは、回転軸を回転させる。ハウジングは、電動モータを収容するモータ室を有している。固定スクロールは、ハウジング内に収容されるとともにハウジングに固定されている。固定スクロールは、固定端壁と、固定端壁から旋回スクロールに向かって延出する筒状の周壁とを有している。旋回スクロールは、回転軸の回転に伴い公転する。
【0003】
スクロール型圧縮機は、圧縮室と、外周通路と、吸入通路とを有している。圧縮室は、固定スクロールと旋回スクロールとによって区画されている。圧縮室は、流体を圧縮する。外周通路は、ハウジングの内周面と固定スクロールの周壁の外周面とによって区画されている。外周通路には、モータ室から流体が流入する。吸入通路は、周壁に設けられている。吸入通路は、外周通路から圧縮室に流体を吸入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-161947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハウジングの内周面から固定スクロールの周壁の外周面までの距離が短い場合、すなわち外周通路が狭い場合、流体は外周通路を流れにくくなる。外周通路を広げる方法として、例えば、次の2つの方法が考えられる。第1の方法としては、特許文献1のように、ハウジングを外周側に大型化する方法である。第2の方法としては、固定スクロールの周壁の厚さを薄くする方法である。しかしながら、第1の方法では、圧縮機が大型化する。第2の方法では、固定スクロールの強度を確保できなくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するためのスクロール型圧縮機は、回転軸と、前記回転軸を回転させる電動モータと、前記電動モータを収容するモータ室を有するハウジングと、前記ハウジング内に収容されるとともに前記ハウジングに固定される固定スクロールと、前記回転軸の回転に伴い公転する旋回スクロールと、を備え、前記固定スクロールは、固定端壁と、前記固定端壁から前記旋回スクロールに向かって延出する筒状の周壁とを有し、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとによって区画され、流体を圧縮する圧縮室と、前記ハウジングの内周面と前記周壁の外周面とによって区画され、前記モータ室から前記流体が流入する外周通路と、前記周壁に設けられ、前記外周通路から前記圧縮室に前記流体を吸入する吸入通路と、を有するスクロール型圧縮機であって、前記周壁の外周面は、前記回転軸の軸線方向において前記吸入通路よりも前記電動モータ側に位置する上流側外周面を有し、前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの距離は、前記回転軸の軸線方向において変化していることを要旨とする。
【0007】
上記構成では、回転軸の軸線方向と直交する方向における回転軸の軸線から上流側外周面までの距離が短い部分によって、ハウジングの内周面から周壁の外周面までの距離を長くすることができる。このため、ハウジングを大型化しなくても、外周通路を広げることができる。また、回転軸の軸線方向と直交する方向における回転軸の軸線から上流側外周面までの距離が長い部分によって、周壁の厚さを確保することができる。このため、固定スクロールの強度を確保できる。よって、ハウジングの大型化の抑制と固定スクロールの強度の確保とを両立しつつ外周通路を広げることができる。
【0008】
上記スクロール型圧縮機において、前記上流側外周面は、前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの距離が前記回転軸の軸線方向において徐々に変化するように、前記回転軸の軸線に対して傾斜していてもよい。
【0009】
上記構成では、回転軸の軸線方向と直交する方向における回転軸の軸線から上流側外周面までの距離が回転軸の軸線方向において段階的に変化するように、上流側外周面が階段状になっている場合と比較して、流体は外周通路を流れやすい。
【0010】
上記スクロール型圧縮機において、前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの距離は、前記回転軸の軸線方向において前記モータ室から前記吸入通路に向かうにつれて長くなっていてもよい。
【0011】
上記構成では、ハウジングの内周面から上流側外周面までの距離を、回転軸の軸線方向においてモータ室から吸入通路に向かうにつれて長くすることができる。このため、外周通路は、回転軸の軸線方向においてモータ室から吸入通路に向かうにつれて広がる。したがって、外周通路が回転軸の軸線方向においてモータ室から吸入通路に向かうにつれて狭まる場合と比較して、流体は外周通路を吸入通路に向かって流れやすくなる。
【0012】
上記スクロール型圧縮機において、前記上流側外周面は、前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの距離が前記回転軸の軸線方向において前記モータ室から前記吸入通路に向かうにつれて徐々に長くなるように、前記回転軸の軸線に対して傾斜しており、前記回転軸の軸線に対する前記上流側外周面の傾斜角度は、前記周壁の周方向において異なっていてもよい。
【0013】
上記構成では、周壁の周方向における吸入通路の位置や周壁の厚さに応じて、回転軸の軸線に対する上流側外周面の傾斜角度を異ならせることができる。例えば、周壁の周方向における吸入通路周辺の部分では、回転軸の軸線に対する上流側外周面の傾斜角度を大きくして外周通路を広げることにより、外周通路から吸入通路に流体を流れやすくすることができる。例えば、周壁の周方向における厚さが薄い部分では、回転軸の軸線に対する上流側外周面の傾斜角度を小さくすることにより、周壁の強度を確保しやすくなる。
【0014】
上記スクロール型圧縮機において、前記周壁の外周面は、前記回転軸の軸線方向において前記吸入通路を挟んで前記上流側外周面とは反対側に位置する下流側外周面を有し、前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記下流側外周面までの距離は、前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの最長距離以上であってもよい。
【0015】
上記構成では、回転軸の軸線方向と直交する方向における回転軸の軸線から下流側外周面までの距離が回転軸の軸線から上流側外周面までの最長距離よりも短い場合と比較して、固定スクロールの強度を上げることができる。
【0016】
上記スクロール型圧縮機において、前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記下流側外周面までの距離は、前記回転軸の軸線方向において一定であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ハウジングの大型化の抑制と固定スクロールの強度の確保とを両立しつつ外周通路を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態におけるスクロール型圧縮機を示す断面図である。
図2】実施形態における吐出ハウジング及び固定スクロールを示す正面図である。
図3】実施形態におけるスクロール型圧縮機の一部分を拡大して示す断面図である。
図4】実施形態におけるスクロール型圧縮機の一部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、スクロール型圧縮機を具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。本実施形態のスクロール型圧縮機は、車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、スクロール型圧縮機10は、ハウジング11と、回転軸12と、電動モータ13と、圧縮機構14とを備えている。ハウジング11は、回転軸12、電動モータ13、及び圧縮機構14を収容している。電動モータ13は、回転軸12を回転させる。圧縮機構14は、回転軸12の回転によって駆動する。
【0020】
<ハウジング>
ハウジング11は、モータハウジング20と、軸支ハウジング30と、吐出ハウジング40とを有している。ハウジング11は、金属製である。本実施形態のハウジング11は、アルミニウム製である。
【0021】
モータハウジング20は、第1底壁21と、第1底壁21の外周部から延びる筒状の第1周壁22とを有する有底筒状である。モータハウジング20は、円筒状の第1ボス部23を有している。第1ボス部23は、第1底壁21の内面から突出している。モータハウジング20は、吸入口22aを有している。吸入口22aは、第1周壁22における第1底壁21側に位置する部分に形成されている。吸入口22aは、モータハウジング20の内外を連通させている。モータハウジング20は、複数の雌ねじ孔22bを有している。なお、図1では、1つの雌ねじ孔22bのみが図示されている。各雌ねじ孔22bは、第1周壁22の先端面に形成されている。複数の雌ねじ孔22bは、第1周壁22の周方向において間隔を空けて配置されている。
【0022】
軸支ハウジング30は、第2底壁31と、第2底壁31の外周部から延びる筒状の第2周壁32とを有する有底筒状である。軸支ハウジング30は、円孔状の軸挿通孔31aを有している。軸挿通孔31aは、第2底壁31の中央部に形成されている。軸挿通孔31aは、第2底壁31を厚さ方向に貫通している。
【0023】
軸支ハウジング30は、円環状のフランジ部33を有している。フランジ部33は、第2周壁32における第2底壁31とは反対側の端部から第2周壁32の径方向外側に向けて延びている。
【0024】
軸支ハウジング30は、複数の第1ボルト挿通孔33aと、複数の連通孔34とを有している。なお、図1では、1つの第1ボルト挿通孔33a及び1つの連通孔34のみが図示されている。各第1ボルト挿通孔33a及び各連通孔34は、フランジ部33の外周部に形成されている。各第1ボルト挿通孔33a及び各連通孔34は、フランジ部33を厚さ方向に貫通している。複数の第1ボルト挿通孔33aは、フランジ部33の周方向において間隔を空けて配置されている。複数の連通孔34は、フランジ部33の周方向において第1ボルト挿通孔33aとは異なる位置に形成されている。
【0025】
軸支ハウジング30は、複数のピン35を有している。なお、図1では、1つのピン35のみが図示されている。ピン35は、フランジ部33から第2底壁31とは反対側に向けて突出している。ピン35は、フランジ部33の径方向において第1ボルト挿通孔33a及び連通孔34よりも内側に位置している。
【0026】
軸支ハウジング30は、モータハウジング20の開口を閉塞している。モータハウジング20の第1周壁22の先端面は、軸支ハウジング30のフランジ部33と当接している。軸支ハウジング30の第2周壁32の軸方向は、モータハウジング20の第1周壁22の軸方向と一致している。
【0027】
モータハウジング20及び軸支ハウジング30によってモータ室S1が区画されている。電動モータ13は、モータ室S1に収容されている。したがって、ハウジング11は、電動モータ13が収容されるモータ室S1を有している。モータ室S1内には、図示しない外部冷媒回路から吸入口22aを介して流体としての冷媒が吸入される。したがって、モータ室S1は、吸入口22aから冷媒が吸入される吸入室である。
【0028】
軸支ハウジング30の第1ボルト挿通孔33aは、モータハウジング20の雌ねじ孔22bと連通している。軸支ハウジング30の連通孔34は、モータハウジング20の第1周壁22の内周面よりも径方向内側に位置している。したがって、連通孔34は、モータ室S1と連通している。
【0029】
吐出ハウジング40は、第3底壁41と、第3底壁41の外周部から延びる筒状の第3周壁42とを有する有底筒状である。
図2に示すように、第3周壁42の外径は、第3周壁42の周方向全周においてほぼ一定である。一方、第3周壁42の内径は、第3周壁42の周方向において異なっている。したがって、第3周壁42の径方向における第3周壁42の厚さは、第3周壁42の周方向において異なっている。第3周壁42は、肉厚部42aと肉薄部42bとを有している。肉厚部42aと肉薄部42bは、第3周壁42の周方向において交互に設けられている。肉厚部42aにおける第3周壁42の内周面420は、肉薄部42bにおける第3周壁42の内周面420よりも径方向内側に迫り出している。
【0030】
吐出ハウジング40は、複数の第2ボルト挿通孔40aを有している。各第2ボルト挿通孔40aは、吐出ハウジング40を第3周壁42の軸方向に貫通している。複数の第2ボルト挿通孔40aは、第3周壁42の周方向において間隔を空けて配置されている。本実施形態では、各第2ボルト挿通孔40aは、第3周壁42の肉厚部42aに形成されている。
【0031】
図1に示すように、吐出ハウジング40は、第1凹部43を有している。第1凹部43は、第3底壁41の内面から凹んでいる。吐出ハウジング40は、油分離室44を有している。油分離室44は、第3底壁41の内部に設けられている。油分離室44を区画する内壁には、筒部材45が嵌め込まれている。吐出ハウジング40は、導入通路46を有している。導入通路46は、第1凹部43の内側と油分離室44内とを連通させている。吐出ハウジング40は、吐出口47を有している。吐出口47は、筒部材45の内側と吐出ハウジング40の外部とを連通させている。
【0032】
吐出ハウジング40は、軸支ハウジング30を挟んでモータハウジング20とは反対側に配置されている。軸支ハウジング30のフランジ部33は、モータハウジング20の第1周壁22と吐出ハウジング40の第3周壁42とによって挟み込まれている。吐出ハウジング40の第3周壁42の先端面は、軸支ハウジング30のフランジ部33と当接している。吐出ハウジング40の第3周壁42の軸方向は、軸支ハウジング30の第2周壁32の軸方向と一致している。吐出ハウジング40の第2ボルト挿通孔40aは、軸支ハウジング30の第1ボルト挿通孔33aと連通している。軸支ハウジング30の連通孔34は、吐出ハウジング40の第3周壁42の内周面420よりも径方向内側に位置している。
【0033】
モータハウジング20、軸支ハウジング30、及び吐出ハウジング40は、複数本のボルトBによって連結されている。なお、図1では、1本のボルトBのみが図示されている。詳しくは、ボルトBは、吐出ハウジング40の第2ボルト挿通孔40a及び軸支ハウジング30の第1ボルト挿通孔33aに挿通されている。ボルトBの雄ねじは、モータハウジング20の雌ねじ孔22bに螺合されている。ハウジング11は、モータハウジング20、軸支ハウジング30、及び吐出ハウジング40が一体化されることによって構成されている。
【0034】
<回転軸>
回転軸12は、主軸12aと偏心軸12bとを有している。主軸12aの外径は、偏心軸12bの外径よりも大きい。
【0035】
主軸12aは、軸支ハウジング30の軸挿通孔31aに挿通されている。主軸12aの第1端部は、第1ボス部23の内側に挿入されている。第1ボス部23の内周面と主軸12aの第1端部の外周面との間には、第1軸受15aが設けられている。第1軸受15aは、例えば、転がり軸受である。主軸12aの第1端部は、第1軸受15aを介してモータハウジング20に回転可能に支持されている。主軸12aの第1端部とは反対側の端部である第2端部は、軸支ハウジング30の内側に位置している。軸支ハウジング30の第2周壁32の内周面と主軸12aの第2端部の外周面との間には、第2軸受15bが設けられている。第2軸受15bは、例えば、転がり軸受である。主軸12aの第2端部は、第2軸受15bを介して軸支ハウジング30に回転可能に支持されている。
【0036】
偏心軸12bは、主軸12aの軸方向における第2端部側の端面から突出している。偏心軸12bの軸線Lbは、主軸12aの軸線Laに対して平行に延びている。偏心軸12bの軸線Lbは、主軸12aの軸線Laに対して偏心した位置に設けられている。
【0037】
以下では、主軸12aの軸線Laを回転軸12の軸線Lという。また、回転軸12の軸線Lが延びる方向を回転軸12の軸線方向という。回転軸12の軸線方向は、モータハウジング20の第1周壁22の軸方向、軸支ハウジング30の第2周壁32の軸方向、及び吐出ハウジング40の第3周壁42の軸方向と一致している。
【0038】
<電動モータ>
電動モータ13は、ロータ51とステータ52とを有している。
ロータ51は、円筒状のロータコア53と、ロータコア53に設けられた図示しない永久磁石とを有している。回転軸12の主軸12aは、ロータコア53の内側に挿通されている。ロータコア53は、回転軸12に固定されている。ロータ51は、回転軸12と一体的に回転可能である。
【0039】
ステータ52は、ロータ51の外周に設けられている。ステータ52は、ロータ51を取り囲んでいる。ステータ52は、円筒状のステータコア54と、コイル55とを有している。ステータコア54は、モータハウジング20の第1周壁22の内周面に固定されている。コイル55は、ステータコア54に巻回されている。
【0040】
コイル55に電力が供給されることによりステータ52に回転磁界が生じると、ロータ51は回転する。これにより、回転軸12は、ロータ51と一体的に回転する。
<圧縮機構>
圧縮機構14は、固定スクロール60と旋回スクロール70とを有している。
【0041】
図1及び図2に示すように、固定スクロール60は、円板状の固定端壁61と、渦巻形状の固定渦巻壁62と、筒状の周壁としての固定周壁63とを有している。固定渦巻壁62及び固定周壁63はそれぞれ、固定端壁61の第1面61aから突出している。固定周壁63は、固定端壁61の外周部に位置している。固定周壁63は、固定渦巻壁62を取り囲んでいる。
【0042】
図2に示すように、固定周壁63の内径は、固定周壁63の周方向全周においてほぼ一定である。一方、固定周壁63の外径は、固定周壁63の周方向において異なっている。したがって、固定周壁63の径方向における固定周壁63の厚さは、固定周壁63の周方向において異なっている。固定周壁63は、肉厚部63aと肉薄部63bとを有している。肉厚部63aと肉薄部63bは、固定周壁63の周方向において交互に設けられている。
【0043】
固定スクロール60は、吐出通路64を有している。吐出通路64は、固定端壁61の中央部に形成されている。吐出通路64は、固定端壁61を厚さ方向に貫通している。
図1に示すように、固定スクロール60は、第2凹部65を有している。第2凹部65は、固定端壁61の第1面61aとは反対側の面である第2面61bから凹んでいる。吐出通路64は、第2凹部65の底面において開口している。第2凹部65の底面には、弁機構66が取り付けられている。弁機構66は、吐出通路64を開閉可能に構成されている。
【0044】
図1及び図2に示すように、固定スクロール60は、複数の吸入通路67を有している。各吸入通路67は、固定周壁63を径方向に貫通している。各吸入通路67は、固定周壁63の内外を連通させている。複数の吸入通路67は、固定周壁63の周方向において間隔を空けて配置されている。本実施形態では、各吸入通路67は、固定周壁63の肉厚部63aに設けられている。したがって、肉厚部63aは、固定周壁63の周方向における吸入通路67周辺の部分である。
【0045】
図1に示すように、旋回スクロール70は、円板状の旋回端壁71と、渦巻形状の旋回渦巻壁72とを有している。旋回渦巻壁72は、旋回端壁71の第1面71aから突出している。旋回スクロール70は、円筒状の第2ボス部73を有している。第2ボス部73は、旋回端壁71の第1面71aとは反対側の面である第2面71bから突出している。旋回スクロール70は、複数の溝部74を有している。なお、図1では、1つの溝部74のみが図示されている。各溝部74は、旋回端壁71の第2面71bから凹んでいる。各溝部74は、旋回端壁71の径方向において第2ボス部73よりも外側に位置している。各溝部74内には、円環状のリング部材75が嵌着されている。各リング部材75内には、軸支ハウジング30のピン35が挿入されている。
【0046】
固定スクロール60と旋回スクロール70は、固定端壁61の第1面61aと旋回端壁71の第1面71aとが対向するように配置されている。固定渦巻壁62と旋回渦巻壁72とは、互いに噛み合わされている。旋回渦巻壁72は、固定周壁63の内側に位置している。固定渦巻壁62の先端面は、旋回端壁71の第1面71aに当接している。旋回渦巻壁72の先端面は、固定端壁61の第1面61aに当接している。
【0047】
固定スクロール60及び旋回スクロール70は、冷媒を圧縮する圧縮室S2を区画している。詳しくは、圧縮室S2は、固定端壁61の第1面61aと、固定渦巻壁62と、固定周壁63の内周面と、旋回端壁71の第1面71aと、旋回渦巻壁72とによって、区画されている。
【0048】
圧縮機構14は、軸支ハウジング30と吐出ハウジング40とによって区画された空間に収容されている。固定スクロール60は、軸支ハウジング30のフランジ部33と吐出ハウジング40の第3底壁41との間に位置している。固定スクロール60は、軸支ハウジング30のフランジ部33と吐出ハウジング40の第3底壁41とによって挟み込まれることによって、ハウジング11に固定されている。
【0049】
固定端壁61は、吐出ハウジング40の第3底壁41と旋回スクロール70との間に位置している。固定端壁61の第2面61bと吐出ハウジング40の第3底壁41の内面との間には、ガスケット16が配置されている。ガスケット16は、固定端壁61と第3底壁41との間をシールしている。
【0050】
吐出ハウジング40の第1凹部43と、固定端壁61の第2凹部65とによって、吐出室S3が区画されている。吐出室S3には、圧縮室S2において圧縮された冷媒が吐出通路64を介して吐出される。
【0051】
固定渦巻壁62及び固定周壁63はそれぞれ、固定端壁61の第1面61aから旋回スクロール70に向かって延出している。固定周壁63の軸方向は、吐出ハウジング40の第3周壁42の軸方向と一致している。固定周壁63の先端面は、軸支ハウジング30のフランジ部33と当接している。固定周壁63の外周面630は、吐出ハウジング40の第3周壁42の内周面420と離間した状態で対向している。
【0052】
図2に示すように、固定周壁63の肉厚部63aは、第3周壁42の肉薄部42bと径方向に並んでいる。固定周壁63の肉薄部63bは、第3周壁42の肉厚部42aと径方向に並んでいる。
【0053】
図1に示すように、旋回スクロール70は、軸支ハウジング30と固定スクロール60の固定端壁61との間に位置している。旋回端壁71の第2面71bは、軸支ハウジング30のフランジ部33と対向している。旋回渦巻壁72は、旋回端壁71の第1面71aから電動モータ13から離れる方向に向かって延出している。
【0054】
<バランスウェイト及びブッシュ>
スクロール型圧縮機10は、バランスウェイト18及びブッシュ19を備えている。バランスウェイト18とブッシュ19は、一体形成されている。バランスウェイト18及びブッシュ19は、圧縮機構14とともに、軸支ハウジング30と吐出ハウジング40とによって区画された空間に収容されている。
【0055】
ブッシュ19は、偏心軸12bの外周面に嵌合されている。ブッシュ19は、第2ボス部73の内側に挿入されている。第2ボス部73の内周面とブッシュ19の外周面との間には、第3軸受15cが配置されている。第3軸受15cは、例えば、転がり軸受である。旋回スクロール70は、ブッシュ19及び第3軸受15cを介して偏心軸12bと相対回転可能に偏心軸12bに支持されている。バランスウェイト18は、軸支ハウジング30のフランジ部33の内側に配置されている。
【0056】
主軸12aの回転は、偏心軸12b、ブッシュ19、及び第3軸受15cを介して旋回スクロール70に伝達される。このとき、各ピン35と各リング部材75の内周面とが接触することにより、旋回スクロール70の自転が阻止される。旋回スクロール70は、固定スクロール60に対する公転運動のみが許容される。つまり、旋回スクロール70は、回転軸12の回転に伴い公転する。旋回スクロール70が公転する際、旋回渦巻壁72が固定渦巻壁62に接触して圧縮室S2の容積が減少することにより、圧縮室S2内の冷媒は圧縮される。バランスウェイト18は、旋回スクロール70が公転する際に旋回スクロール70に作用する遠心力を相殺することによって、旋回スクロール70のアンバランス量を低減する。
【0057】
<外周通路>
スクロール型圧縮機10は、外周通路Rを有している。外周通路Rは、吐出ハウジング40の第3周壁42の内周面420と、固定スクロール60の固定周壁63の外周面630とによって区画されている。上述したように、軸支ハウジング30の連通孔34は、吐出ハウジング40の第3周壁42の内周面420よりも径方向内側に位置している。したがって、連通孔34は、外周通路Rと連通している。外周通路Rには、モータ室S1から連通孔34を介して冷媒が流入する。
【0058】
図3に示すように、固定周壁63の外周面630は、上流側外周面631と下流側外周面632とを有している。上流側外周面631は、回転軸12の軸線方向において吸入通路67よりも電動モータ13側に位置している。下流側外周面632は、回転軸12の軸線方向において吸入通路67を挟んで上流側外周面631とは反対側に位置している。
【0059】
回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pは、回転軸12の軸線方向において変化している。その一方で、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから吐出ハウジング40の第3周壁42の内周面420までの距離は、回転軸12の軸線方向において一定である。したがって、回転軸12の軸線方向と直交する方向における吐出ハウジング40の第3周壁42の内周面420から固定周壁63の外周面630までの距離は、回転軸12の軸線方向において変化している。つまり、回転軸12の径方向における外周通路Rの幅は、回転軸12の軸線方向において変化している。本実施形態では、第3周壁42の先端面及び固定周壁63の先端面において、第3周壁42の内周面420から固定周壁63の外周面630までの距離は、連通孔34の孔径と一致している。
【0060】
本実施形態では、上流側外周面631は、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pが回転軸12の軸線方向において徐々に変化するように、回転軸12の軸線Lに対して傾斜している。本実施形態では、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pは、回転軸12の軸線方向においてモータ室S1から吸入通路67に向かうにつれて長くなっている。固定周壁63の厚さは、回転軸12の軸線方向においてモータ室S1から吸入通路67に向かうにつれて厚くなっている。
【0061】
図3及び図4に示すように、本実施形態では、回転軸12の軸線Lに対する上流側外周面631の傾斜角度は、固定周壁63の周方向において異なっている。具体的には、回転軸12の軸線Lに対する上流側外周面631の傾斜角度は、固定周壁63の周方向における吸入通路67の位置や固定周壁63の厚さに応じて設定されている。
【0062】
図3は、肉厚部63aにおける上流側外周面631を示している。上述したように、肉厚部63aは、固定周壁63の周方向における吸入通路67周辺の部分である。図4は、肉薄部63bにおける上流側外周面631を示している。肉厚部63aにおける回転軸12の軸線Lに対する上流側外周面631の傾斜角度は、肉薄部63bにおける回転軸12の軸線Lに対する上流側外周面631の傾斜角度よりも大きい角度に設定されている。つまり、固定周壁63の周方向における吸入通路67周辺の部分では、回転軸12の軸線Lに対する上流側外周面631の傾斜角度は大きく設定されている。一方、固定周壁63の周方向における厚さが薄い部分では、回転軸12の軸線Lに対する上流側外周面631の傾斜角度は小さく設定されている。
【0063】
本実施形態では、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから下流側外周面632までの距離Qは、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pの最長距離以上に設定されている。回転軸12の軸線方向における吸入通路67から固定端壁61までの間の固定周壁63の厚さは、回転軸12の軸線方向における固定周壁63の先端面から吸入通路67までの間の固定周壁63の厚さ以上である。
【0064】
また、本実施形態では、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから下流側外周面632までの距離Qは、回転軸12の軸線方向において一定である。固定周壁63の厚さは、回転軸12の軸線方向における吸入通路67から固定端壁61までの間において一定である。
【0065】
<冷媒の流れ>
スクロール型圧縮機10における冷媒の流れについて説明する。
冷媒は、外部冷媒回路から吸入口22aを通ってモータ室S1に吸入される。モータ室S1に吸入された冷媒は、連通孔34を通って外周通路Rに流入する。外周通路Rに流入した冷媒は、吸入通路67を通って圧縮室S2に流入する。したがって、吸入通路67は、外周通路Rから圧縮室S2に冷媒を吸入する。圧縮室S2に流入した冷媒は、圧縮室S2の容積が減少することによって圧縮される。圧縮された冷媒は、吐出通路64を通って吐出室S3に吐出される。吐出室S3に吐出された冷媒は、導入通路46を通って油分離室44内に導入される。油分離室44では、冷媒に含まれるオイルが分離される。詳しくは、油分離室44内に導入された冷媒が筒部材45の周囲を旋回する際、冷媒に含まれているオイルに遠心力が付与されることによって、油分離室44内でオイルが分離される。オイルが分離された後の冷媒は、筒部材45の内側を通過した後、吐出口47を通って外部冷媒回路に還流する。
【0066】
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから固定周壁63の上流側外周面631までの距離Pは、回転軸12の軸線方向において変化している。この構成により、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pが短い部分によって、吐出ハウジング40の第3周壁42の内周面420から固定周壁63の外周面630までの距離を長くすることができる。このため、吐出ハウジング40を外周側に大型化しなくても、外周通路Rを広げることができる。また、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pが長い部分によって、固定周壁63の厚さを確保することができる。このため、固定スクロール60の強度を確保できる。よって、ハウジング11の大型化の抑制と固定スクロール60の強度の確保とを両立しつつ外周通路Rを広げることができる。
【0067】
(2)上流側外周面631は、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pが回転軸12の軸線方向において徐々に変化するように、回転軸12の軸線Lに対して傾斜している。この構成により、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pが回転軸12の軸線方向において段階的に変化するように、上流側外周面631が階段状になっている場合と比較して、冷媒は外周通路Rを流れやすくなる。
【0068】
(3)回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pは、回転軸12の軸線方向においてモータ室S1から吸入通路67に向かうにつれて長くなっている。この構成により、吐出ハウジング40の第3周壁42の内周面420から上流側外周面631までの距離を、回転軸12の軸線方向においてモータ室S1から吸入通路67に向かうにつれて長くすることができる。このため、外周通路Rは、回転軸12の軸線方向においてモータ室S1から吸入通路67に向かうにつれて広がる。したがって、外周通路Rが回転軸12の軸線方向においてモータ室S1から吸入通路67に向かうにつれて狭まる場合と比較して、冷媒は外周通路Rを吸入通路67に向かって流れやすくなる。
【0069】
(4)回転軸12の軸線Lに対する上流側外周面631の傾斜角度は、固定周壁63の周方向において異なっている。本実施形態では、回転軸12の軸線Lに対する上流側外周面631の傾斜角度は、固定周壁63の周方向における吸入通路67の位置及び固定周壁63の厚さに応じて設定されている。具体的には、固定周壁63の周方向における吸入通路67周辺の部分である肉厚部63aでは、回転軸12の軸線Lに対する上流側外周面631の傾斜角度を大きくして外周通路Rを広げることにより、外周通路Rから吸入通路67に冷媒を流れやすくしている。また、固定周壁63の周方向における厚さが薄い部分である肉薄部63bでは、回転軸12の軸線Lに対する上流側外周面631の傾斜角度を小さくすることにより、固定周壁63の強度を確保している。
【0070】
(5)回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから下流側外周面632までの距離Qは、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pの最長距離以上である。この構成により、回転軸12の軸線Lから下流側外周面632までの距離Qが回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pの最長距離よりも短い場合と比較して、固定スクロール60の強度を上げることができる。
【0071】
(6)第3周壁42の先端面及び固定周壁63の先端面において、第3周壁42の内周面420から固定周壁63の外周面630までの距離は、連通孔34の孔径と一致している。したがって、第3周壁42の先端面及び固定周壁63の先端面において、第3周壁42の内周面420から固定周壁63の外周面630までの距離が連通孔34の孔径よりも小さい場合と比較して、冷媒は連通孔34から外周通路Rに流れやすくなる。
【0072】
(7)吐出ハウジング40の第3周壁42には、第2ボルト挿通孔40aを形成するための肉厚部42aが設けられている。本実施形態では、肉厚部42aは、第3周壁42の内周面420が径方向内側に向けて迫り出した部分である。そして、固定周壁63における第3周壁42の肉厚部42aと径方向に並ぶ部分は、肉薄部63bになっている。この構成では、例えば、第3周壁42に第2ボルト挿通孔40aを形成するために、第3周壁42の外周面を径方向外側に迫り出させることによって肉厚部42aを設ける場合と比較して、吐出ハウジング40を径方向に小型化できる。
【0073】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0074】
○ 上記実施形態のハウジング11の構成は一例である。ハウジング11の構成は、適宜変更されてもよい。
例えば、吐出ハウジング40の代わりに軸支ハウジング30が第3周壁42を有していてもよい。この場合、第3周壁42は、フランジ部33の外周部からモータハウジング20とは反対側に向けて延出する。吐出ハウジング40は、第3底壁41のみを有する。第3底壁41は、第3周壁42の先端部に連結されることによって、軸支ハウジング30の開口部を閉塞する。
【0075】
例えば、吐出ハウジング40の代わりにモータハウジング20が第3周壁42を有していてもよい。この場合、第3周壁42は、第1周壁22を軸方向に延長することによって形成される。吐出ハウジング40は、第3底壁41のみを有する。第3底壁41は、第3周壁42の先端部に連結されることによって、モータハウジング20の開口部を閉塞する。軸支ハウジング30は、モータハウジング20内に配置される。軸支ハウジング30は、モータ室S1と、圧縮機構14を収容する空間とを隔てる。
【0076】
○ 回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから固定周壁63の上流側外周面631までの距離Pが回転軸12の軸線方向において変化していれば、上流側外周面631は、回転軸12の軸線Lに対して傾斜していなくてもよい。例えば、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pが回転軸12の軸線方向において段階的に変化するように、上流側外周面631は階段状になっていてもよい。
【0077】
○ 回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pは、回転軸12の軸線方向において変化していれば、回転軸12の軸線方向においてモータ室S1から吸入通路67に向かうにつれて長くなっていなくてもよい。例えば、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pは、回転軸12の軸線方向においてモータ室S1から吸入通路67に向かうにつれて短くなっていてもよい。
【0078】
○ 回転軸12の軸線Lに対する上流側外周面631の傾斜角度は、固定周壁63の周方向において一定であってもよい。
○ 第3周壁42の先端面及び固定周壁63の先端面において、第3周壁42の内周面420から固定周壁63の外周面630までの距離は、連通孔34の孔径と異なっていてもよい。
【0079】
○ 回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから下流側外周面632までの距離Qは、回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから上流側外周面631までの距離Pの最長距離よりも短くてもよい。
【0080】
○ 回転軸12の軸線方向と直交する方向における回転軸12の軸線Lから下流側外周面632までの距離Qは、回転軸12の軸線方向において変化していてもよい。
○ スクロール型圧縮機10の用途は、車両空調装置に限定されない。例えば、スクロール型圧縮機10は、燃料電池車に搭載されてもよい。スクロール型圧縮機10は、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮する。
【0081】
[付記]
上記各実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
[1]回転軸と、前記回転軸を回転させる電動モータと、前記電動モータを収容するモータ室を有するハウジングと、前記ハウジング内に収容されるとともに前記ハウジングに固定される固定スクロールと、前記回転軸の回転に伴い公転する旋回スクロールと、を備え、前記固定スクロールは、固定端壁と、前記固定端壁から前記旋回スクロールに向かって延出する筒状の周壁とを有し、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとによって区画され、流体を圧縮する圧縮室と、前記ハウジングの内周面と前記周壁の外周面とによって区画され、前記モータ室から前記流体が流入する外周通路と、前記周壁に設けられ、前記外周通路から前記圧縮室に前記流体を吸入する吸入通路と、を有するスクロール型圧縮機であって、前記周壁の外周面は、前記回転軸の軸線方向において前記吸入通路よりも前記電動モータ側に位置する上流側外周面を有し、前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの距離は、前記回転軸の軸線方向において変化していることを特徴とするスクロール型圧縮機。
【0082】
[2]前記上流側外周面は、前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの距離が前記回転軸の軸線方向において徐々に変化するように、前記回転軸の軸線に対して傾斜している[1]に記載のスクロール型圧縮機。
【0083】
[3]前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの距離は、前記回転軸の軸線方向において前記モータ室から前記吸入通路に向かうにつれて長くなっている[1]又は[2]に記載のスクロール型圧縮機。
【0084】
[4]前記上流側外周面は、前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの距離が前記回転軸の軸線方向において前記モータ室から前記吸入通路に向かうにつれて徐々に長くなるように、前記回転軸の軸線に対して傾斜しており、前記回転軸の軸線に対する前記上流側外周面の傾斜角度は、前記周壁の周方向において異なっている[1]に記載のスクロール型圧縮機。
【0085】
[5]前記周壁の外周面は、前記回転軸の軸線方向において前記吸入通路を挟んで前記上流側外周面とは反対側に位置する下流側外周面を有し、前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記下流側外周面までの距離は、前記回転軸の軸線から前記上流側外周面までの最長距離以上である[1]~[4]の何れか一項に記載のスクロール型圧縮機。
【0086】
[6]前記回転軸の軸線方向と直交する方向における前記回転軸の軸線から前記下流側外周面までの距離は、前記回転軸の軸線方向において一定である[5]に記載のスクロール型圧縮機。
【符号の説明】
【0087】
10…スクロール型圧縮機、11…ハウジング、12…回転軸、13…電動モータ、60…固定スクロール、61…固定端壁、63…周壁としての固定周壁、67…吸入通路、70…旋回スクロール、420…内周面、630…外周面、631…上流側外周面、632…下流側外周面、L…軸線、R…外周通路、S1…モータ室、S2…圧縮室。
図1
図2
図3
図4