(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061417
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 5/00 20060101AFI20240425BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20240425BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20240425BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B60C5/00 G
B60C11/00 D
B60C9/22 C
B60C9/18 K
B60C5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169355
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】今井 大樹
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA05
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC31
3D131BC44
3D131CA03
3D131CB01
3D131CB06
3D131CB12
3D131CB13
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA55
3D131EB11X
(57)【要約】
【課題】転がり抵抗性能及び高速耐久性能を維持しつつ騒音性能を向上する。
【解決手段】空気入りタイヤ1である。トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4と、一対のビード部4の間を延びるカーカス6と、カーカス6の内側で一対のビード部4の間を延びる内側ゴム10とを含む。内側ゴム10は、トレッド部2を第1厚さt1で延びる第1部分11と、一対のサイドウォール部3を第2厚さt2で延びる第2部分12とを含む。第1厚さt1は、第2厚さt2よりも大きい。タイヤ子午線断面において、内側ゴム10の断面積は、空気入りタイヤ1の内腔断面積の1.5%~10%である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
一対のビード部と、
前記一対のビード部の間を延びるカーカスと、
前記カーカスの内側で前記一対のビード部の間を延びる内側ゴムとを含み、
前記内側ゴムは、前記トレッド部を第1厚さで延びる第1部分と、前記一対のサイドウォール部を第2厚さで延びる第2部分とを含み、
前記第1厚さは、前記第2厚さよりも大きく、
タイヤ子午線断面において、前記内側ゴムの断面積は、前記空気入りタイヤの内腔断面積の1.5%~10%である、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1厚さは、前記第2厚さの1.5~3.5倍である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1厚さは、2.0~4.5mmである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記空気入りタイヤは、断面幅が、205~325mmであり、偏平率が、25%~65%であり、リム径が、16~22インチである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記トレッド部は、第1トレッド端と、タイヤ赤道と、前記タイヤ赤道と前記第1トレッド端との間に配された第1ショルダー周方向溝を含み、
前記内側ゴムの前記第1部分は、前記タイヤ赤道よりも前記第1トレッド端側において、タイヤ軸方向の外端を有し、
前記外端は、前記第1ショルダー周方向溝よりもタイヤ軸方向の外側に位置する、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記トレッド部には、前記カーカスのタイヤ半径方向外側に、ベルト層が配されており、
前記ベルト層は、第1ベルトプライと、前記第1ベルトプライのタイヤ半径方向外側に配された第2ベルトプライとを含み、
前記第1トレッド端側において、前記第2ベルトプライのタイヤ軸方向の外端は、前記第1ベルトプライのタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ軸方向の内側に位置し、
前記第1部分の前記外端は、前記第2ベルトプライの前記外端とタイヤ軸方向で同じ位置にあるか、又は、前記第2ベルトプライの前記外端よりもタイヤ軸方向の内側で、かつ、タイヤ軸方向に10mm以内に位置する、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記内側ゴムの前記第1部分は、前記第1部分の前記外端に向かって前記第1厚さが連続的に減少する部分を含む、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第1厚さは、前記タイヤ赤道の位置、及び、前記第1ショルダー周方向溝よりも前記第1トレッド端側の位置において、実質的に同一である、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記第1厚さは、前記タイヤ赤道の位置から前記第1ショルダー周方向溝を超えた位置まで、実質的に同一である、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記第1部分の前記外端は、前記第1トレッド端よりもタイヤ軸方向の内側に位置している、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記第1部分は、空気非透過性を有するゴム材料で形成されている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記第1部分は、空気非透過性を有するゴム材料と、空気透過性を有するゴム材料を複合して形成されている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記トレッド部は、接地面を構成するトレッドゴムを含み、
前記第1部分の70℃における損失正接tanδ1は、前記第2部分の70℃における損失正接tanδ2以上であり、前記トレッドゴムの30℃における損失正接tanδA以下である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記トレッド部は、前記ベルト層のタイヤ半径方向の外側に配されるバンド層を含み、
前記バンド層は、バンドストリップを螺旋状に巻き付けて形成されたバンドプライを含み、
前記バンドプライは、前記第1部分とタイヤ軸方向で重複する位置に、タイヤ軸方向に隣接する前記バンドストリップ同士が離隔する隙間を有する、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
前記隙間のタイヤ軸方向の幅は、前記バンドストリップの幅の20%~60%である、
請求項14に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部、カーカス、ベルト層、バンド層、及び、クッションゴムが設けられた空気入りタイヤが記載されている。この空気入りタイヤでは、タイヤ騒音の低減を目的として、前記ベルト層のベルトプライの形状が特定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境への配慮から、騒音性能をより向上することが望まれている。騒音性能を向上する手法として、例えば、前記トレッド部のゴム厚さを大きくすることが知られている。しかしながら、単に、前記トレッド部のゴム厚さを大きくするだけでは、ゴム体積の増加によって、転がり抵抗性能や高速耐久性能が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、転がり抵抗性能及び高速耐久性能を維持しつつ騒音性能を向上し得る空気入りタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気入りタイヤであって、トレッド部と、一対のサイドウォール部と、一対のビード部と、前記一対のビード部の間を延びるカーカスと、前記カーカスの内側で前記一対のビード部の間を延びる内側ゴムとを含み、前記内側ゴムは、前記トレッド部を第1厚さで延びる第1部分と、前記一対のサイドウォール部を第2厚さで延びる第2部分とを含み、前記第1厚さは、前記第2厚さよりも大きく、タイヤ子午線断面において、前記内側ゴムの断面積は、前記空気入りタイヤの内腔断面積の1.5%~10%である、空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空気入りタイヤは、上記の構成を採用したことによって、転がり抵抗性能及び高速耐久性能を維持しつつ騒音性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図である。
【
図2】(A)は、空気入りタイヤの内腔断面積を模式的に示す図、(B)は、内側ゴムの断面積を模式的に示す図である。
【
図4】(A)は、バンドストリップの斜視図で、(B)は、バンドストリップを用いて形成されたトレッド部の断面図ある。
【
図6】他の実施形態の第1トレッド端付近の断面図である。
【
図7】さらに他の実施形態の第1トレッド端付近の断面図である。
【
図8】他の実施形態のサイドウォール部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図面は、本発明の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれている。また、複数の実施形態がある場合、明細書を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤ1(以下、単に「タイヤ1」という場合がある。)の回転軸(図示省略)を含むタイヤ子午線断面図である。
図1には、正規状態のタイヤ1が示される。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、重荷重用の空気入りタイヤに適用されても良い。
【0011】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、前記正規状態で測定できない構成(例えば、タイヤ1の内部材である。)は、タイヤ1を出来るだけ前記正規状態に近似させた状態にして、測定された値である。
【0012】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0013】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0014】
タイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4とを含んでいる。サイドウォール部3は、トレッド部2のタイヤ軸方向外側に連なり、タイヤ半径方向に延びている。ビード部4は、サイドウォール部3のタイヤ半径方向内側に連なっている。また、タイヤ1は、カーカス6と、内側ゴム10とを含んでいる。カーカス6は、一対のビード部4の間を延びている。カーカス6は、本実施形態では、一方のビード部4から、一方のサイドウォール部3、トレッド部2、他方のサイドウォール部3を通って、他方のビード部4まで延びている。内側ゴム10は、カーカス6の内側に配されており、一対のビード部4、4の間を延びている。内側ゴム10は、タイヤ内腔面1Aを構成している。内側ゴム10は、本実施形態では、加硫されたゴムで構成されており、パンク防止用のシーラント材とは相違する。
【0015】
内側ゴム10は、第1部分11及び第2部分12を含んでいる。第1部分11は、トレッド部2を第1厚さt1で延びている。第2部分12は、一対のサイドウォール部3を第2厚さt2で延びている。第2部分12は、例えば、第1部分11の両側に配されている。なお、本明細書では、第1厚さt1及び第2厚さt2は、カーカス6のタイヤ内腔側の内面6iからタイヤ内腔面1Aまでの長さを意味する。
【0016】
第1厚さt1は、第2厚さt2よりも大きい。なお、第1厚さt1が第2厚さt2よりも大きいとは、第1厚さt1の平均値が、第2厚さt2の平均値よりも大きいことを意味する。第1厚さt1の平均値とは、タイヤ子午線断面における第1部分11の断面積を、第1部分11のタイヤ内腔面1iに沿った長さで除した値に相当する。第2厚さt2の平均値も同様である。望ましい態様として、本実施形態では、上述の厚さの関係が、タイヤ全周に亘って維持されている。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0017】
図2(A)には、タイヤ1の内腔断面積A1が着色して模式的に示される。
図2(B)には、内側ゴム10の断面積A2が着色して模式的に示される。
図2に示されるように、タイヤ子午線断面において、内側ゴム10の断面積A2は、タイヤ1の内腔断面積A1の1.5%以上が望ましく、10%以下が望ましい。本発明では、上記の構成を採用したことによって、転がり抵抗性能及び高速耐久性能を維持しつつ騒音性能を向上することができる。その理由は、以下の通りである。
【0018】
内側ゴム10は、路面からの走行時の振動を吸収するので、車内騒音を低減して騒音性能を向上する。とりわけ、トレッド部2に相対的に厚さの大きい第1部分11が配されるので、トレッド部2からの前記振動を効果的に吸収することができる。また、タイヤ内腔面1Aを構成する内側ゴム10は、カーカス6よりもタイヤ半径方向の外側のゴムを大きくした場合に比して、転がり抵抗性能を高く維持することができる。さらに、断面積A2が内腔断面積A1の1.5%以上であるので、路面からの走行時の振動がタイヤ内腔内で共鳴することを抑えることができる。また、断面積A2が内腔断面積A1の10%以下であるので、タイヤ質量の過度の増加が抑制される。さらに、サイドウォール部3に相対的に厚さの小さい第2部分12が配されるので、タイヤ質量の過度の増加を抑制する効果が高められる。これにより、本実施形態のタイヤ1は、転がり抵抗性能や高速耐久性能が高く維持される。このような作用を効果的により発揮させるために、断面積A2は、内腔断面積A1の2.0%以上がさらに望ましく、5.0%以下がさらに望ましい。内腔断面積A1は、ビードベースラインBLとタイヤ内腔面1Aとに囲まれた断面積A1aと、第2部分12のタイヤ内腔面12iをタイヤ軸方向の内側に滑らかに延長させた仮想線k1からタイヤ半径方向の内側の第1部分11の断面積A1bとの和である。ビードベースラインBLは、タイヤ1が基づく規格で定まるリム径位置を通るタイヤ軸方向線である。断面積A1bは、下記
図7に示された後述する追加層17の断面積と同じである。
【0019】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0020】
図1に示されるように、タイヤ1は、例えば、断面幅Wが、205mm以上、325mm以下であり、偏平率が、25%以上、65%以下であり、リム径が、16インチ以上、22インチ以下であるのが望ましい。このようなサイズのタイヤ1は、相対的に、断面幅Wが大きく、低偏平率、かつ、大径であり、車内騒音及び転がり抵抗が大きくなりやすく、かつ、タイヤの放熱性が低下し易いタイヤ1である。このようなタイヤ1に、本発明を適用することで、転がり抵抗性能及び高速耐久性能を維持しつつ騒音性能を向上する効果をより一層発揮することができる。本明細書では、前記「断面幅W」「偏平率」及び「リム径」は、JATMA規格における、タイヤの「断面幅の呼び」、「偏平比の呼び」及び「リム径の呼び」と同義である。
【0021】
本実施形態のタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されている。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部3の外面等に、文字又は記号で表示される。なお、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されず、車両の装着の向きが指定されないものでも良い。
【0022】
トレッド部2は、タイヤ赤道Cと、第1トレッド端T1(図では左側)と、第2トレッド端T2(図では右側)とを含んでいる。第1トレッド端T1は、本実施形態では、車両装着時に車両外側に位置する。第2トレッド端T2は、本実施形態では、車両装着時に車両内側に位置する。第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2は、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重の70%が負荷され、トレッド部2をキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。第1トレッド端T1と第2トレッド端T2との間のタイヤ軸方向の距離がトレッド幅TWである。タイヤ赤道Cは、第1トレッド端T1から第2トレッド端T2側へトレッド幅TWの50%のタイヤ軸方向の距離を隔てた位置である。また、第1トレッド端T1と第2トレッド端T2との間のトレッド部2のタイヤ半径方向の外面が接地面2sとされる。
【0023】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0024】
カーカス6は、例えば、1枚のカーカスプライ6Aで構成されている。カーカスプライ6Aは、例えば、本体部6aと折返し部6bとを含んでいる。本体部6aは、例えば、一対のビード部4、4の間を延びている。折返し部6bは、例えば、本体部6aに連なりビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。
【0025】
カーカスプライ6Aは、複数のカーカスコードと、これらを被覆するトッピングゴムとを含む(図示省略)。カーカスコードは、例えば、アラミド、レーヨンなどの有機繊維コードが採用される。カーカスコードは、例えば、タイヤ周方向に対して70~90°の角度で配列されるのが望ましい。
【0026】
図3は、
図1のトレッド部2の拡大断面図である。
図3に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、例えば、カーカス6のタイヤ半径方向外側に配されたベルト層7及びバンド層8を含んでいる。ベルト層7は、カーカス6に隣接する第1ベルトプライ7Aと、第1ベルトプライ7Aのタイヤ半径方向外側に配された第2ベルトプライ7Bとを含んでいる。第1ベルトプライ7A及び第2ベルトプライ7Bのそれぞれは、タイヤ周方向に対して15~45°の角度で配列された複数のベルトコードと、これらを被覆するトッピングゴムを含んでいる(図示省略)。なお、ベルト層7は、このような態様に限定されるものではない。
【0027】
第2ベルトプライ7Bのタイヤ軸方向の長さL2(
図1に示す)は、第1ベルトプライ7Aのタイヤ軸方向の長さL1よりも小さいのが望ましい。第2ベルトプライ7Bのタイヤ軸方向の両端(外端)7b、7bは、第1ベルトプライ7Aのタイヤ軸方向の両端7a、7aよりもタイヤ軸方向の内側に位置している。第2ベルトプライ7Bの長さL2は、第1ベルトプライ7Aの長さL1の90%~98%であるのが望ましい。また、第2ベルトプライ7Bの長さL2は、タイヤ1の正規状態での断面幅の65~80%が望ましい。これにより、トレッド部2の振動を抑制しつつ、タイヤ1の重量増加が抑制される。前記「断面幅」は、タイヤ側面の模様や文字など全てを含むサイドウォール部3、3間のタイヤ軸方向距離(タイヤの総幅)からタイヤの側面の模様、文字などを除いた幅として求めることができる。
【0028】
本実施形態のバンド層8は、ベルト層7の全体を覆う様に配置されている。バンド層8は、例えば、1枚のバンドプライ8Aで構成されている。バンドプライ8Aは、例えば、タイヤ周方向に対して5°以下の角度で配されたバンドコードGa(
図4に示す)と、バンドコードGaを被覆するトッピングゴムGbとを含む。バンドプライ8Aは、例えば、バンドコードGaを含むバンドストリップGs(
図4示す)を螺旋状に巻き付けることで形成されてもよい。
図4(A)は、バンドストリップGsの斜視図である。
図4(B)は、バンドストリップGsを用いたトレッド部2の部分断面図である。
図4に示されるように、バンドプライ8Aは、例えば、第1部分11とタイヤ軸方向に重複する部分では、タイヤ軸方向に隣接する前記バンドストリップGs同士を離隔させた隙間Sを設けることができる。隙間Sのタイヤ軸方向の幅Wsは、バンドストリップGsの幅Wgの20%以上が望ましく、30%以上がさらに望ましく、60%以下が望ましく、50%以下がさらに望ましい。
【0029】
トレッド部2は、例えば、複数本の周方向溝20が設けられている。本実施形態の周方向溝20は、第1トレッド端T1と第2トレッド端T2との間に設けられている。周方向溝20は、タイヤ周方向に連続して延びる溝である。
【0030】
本実施形態の複数の周方向溝20は、第1ショルダー周方向溝21、第2ショルダー周方向溝22、第1クラウン周方向溝23及び第2クラウン周方向溝24を含んでいる。第1ショルダー周方向溝21は、第1トレッド端T1とタイヤ赤道Cとの間に設けられており、本実施形態では、複数の周方向溝20のうち、最も第1トレッド端T1側に配されている。第2ショルダー周方向溝22は、第2トレッド端T2とタイヤ赤道Cとの間に設けられており、本実施形態では、複数の周方向溝20のうち、最も第2トレッド端T2側に配されている。第1クラウン周方向溝23は、第1ショルダー周方向溝21とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。第2クラウン周方向溝24は、第2ショルダー周方向溝22とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。
【0031】
タイヤ赤道Cから第1ショルダー周方向溝21又は第2ショルダー周方向溝22の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L3は、例えば、トレッド幅TWの25%~35%であるのが望ましい。タイヤ赤道Cから第1クラウン周方向溝23又は第2クラウン周方向溝24の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L4は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%であるのが望ましい。
【0032】
各周方向溝20の溝幅Waは、少なくとも3mm以上であるのが望ましい。また、各周方向溝20の溝幅Waは、例えば、トレッド幅TWの4.0%~8.5%であるのが望ましい。さらに、複数の周方向溝20の溝幅Waの合計は、例えば、トレッド幅TWの20%~30%であり、望ましくは20%~25%である。これにより、車外騒音が低減されて、騒音性能を高めることができる。各周方向溝20の溝深さ(図示省略)は、乗用車用の空気入りタイヤの場合、例えば、5~10mmであるのが望ましい。
【0033】
第1部分11は、第1トレッド端T1側の第1端部13と、第2トレッド端T2側の第2端部14とを含んでいる。第1端部13は、例えば、第1部分11の第1トレッド端T1側の外端11aに向かって第1厚さt1が連続的に減少している。第2端部14は、例えば、第1部分11の第2トレッド端T2側の外端11bに向かって第1厚さt1が連続的に減少している。本実施形態では、上述の第1厚さt1の減少が終了している位置が、第1部分11のタイヤ軸方向の外端11a、11bに相当する。
【0034】
本実施形態の第1部分11の第1トレッド端T1側の外端11aは、第1クラウン周方向溝23よりも第1トレッド端T1側に位置しており、より望ましくは、第1ショルダー周方向溝21よりも第1トレッド端T1側に位置している。これにより、車内騒音を確実に低減させることができる。
【0035】
図5は、第1部分11の第1端部13側の拡大断面図である。
図5に示されるように、タイヤ赤道Cから第1トレッド端T1側において、第1部分11の外端11aは、第2ベルトプライ7Bの外端7bとタイヤ軸方向で同じ位置にあるか、又は、第2ベルトプライ7Bの外端7bよりもタイヤ軸方向の内側にあるのが望ましい。さらに望ましい態様では、第1部分11の外端11aと、第2ベルトプライ7Bの外端7bとのタイヤ軸方向の距離L5は、10mm以内とされる。これにより、第1部分11のタイヤ軸方向の長さを十分に確保しつつ、タイヤ走行時における第1部分11の外端11a周辺の変形をベルト層7によって抑制することができ、ひいては外端11a周辺での内側ゴム10の剥離を抑制することができる。したがって、騒音性能の向上を長期間に亘って維持することができる。
【0036】
また、第1端部13は、タイヤ赤道C側において、実質的に同一の第1厚さt1で延びる部分と連なっている。第1端部13のタイヤ軸方向の長さL6は、例えば、トレッド幅TWの2.0%~4.0%である。これにより、内側ゴム10の厚さが急変するのを防ぐことができ、内側ゴム10の剥離等の損傷を抑制することができる。
【0037】
図3に示されるように、本実施形態の第1部分11のタイヤ軸方向の長さL7は、トレッド幅TWの90%~110%とされるのが望ましい。これにより、タイヤ質量の増加を抑制しつつ、車内騒音を確実に低減することができる。第1部分11の長さL7は、例えば、第2ベルトプライ7Bの長さL2(
図1に示す)の70%以上が望ましく、80%以上がさらに望ましく、98%以下が望ましく、95%以下がさらに望ましい。
【0038】
本実施形態の第1部分11は、タイヤ赤道Cから第1トレッド端T1側の外端11aまでの第1長さL8と、タイヤ赤道Cから第2トレッド端T2側の外端11bまでの第2長さL9とが実質的に同一とされる。より具体的には、第1長さL8と、第2長さL9との差は、第1長さL8の5%以下とされる。他の実施形態では、例えば、第2長さL9が、第1長さL8よりも大きいものでも良い。具体的には、第2長さL9が、第1長さL8の105%~110%とされる。このような実施形態は、車両装着時に車両内側となる第2トレッド端T2側において、第1部分11の長さが十分に確保されるため、車内騒音をさらに低減させることができる。
【0039】
第1部分11は、第1端部13と第2端部14との間において、一定の第1厚さt1で延びている。第1厚さt1は、タイヤ赤道Cの位置、及び、第1ショルダー周方向溝21よりも第1トレッド端T1側の位置において、実質的に同一である。望ましい態様では、第1厚さt1は、タイヤ赤道Cの位置から第1ショルダー周方向溝21を超えた位置まで、実質的に同一である。なお、「実質的に同一である」とは、タイヤ等のゴム製品における不可避な誤差を許容し得る主旨であり、厚さの最大値と最小値との差が、前記最大値の5%以下である態様を含むものとする。
【0040】
第1部分11は、その外端11aが、本実施形態では、第1トレッド端T1よりもタイヤ軸方向の内側に位置する。このようなタイヤ1は、タイヤ質量が低減されるので、転がり抵抗性能や高速耐久性能が高く維持される。なお、第1部分11は、一定の第1厚さt1で延びる領域が第1トレッド端T1まで延びているものでも良い(図示省略)。換言すれば、第1厚さt1は、タイヤ赤道Cの位置から第1トレッド端T1の位置(第1トレッド端T1を通ってタイヤ半径方向に平行に延びる仮想線)まで、実質的に同一であるものでも良い。
【0041】
第1部分11は、第2トレッド端T2側においても、第1トレッド端T1側と同様の構成を有している。第1部分11の外端11bは、例えば、第2クラウン周方向溝24よりも第2トレッド端T2側に位置しており、より望ましくは、第2ショルダー周方向溝22よりも第2トレッド端T2側に位置している。また、第1部分11の第2トレッド端T2側の外端11bは、第2ベルトプライ7Bの外端7bとタイヤ軸方向で同じ位置にあるか、又は、第2ベルトプライ7Bの外端7bよりもタイヤ軸方向の内側にあるのが望ましい。また、例えば、第1部分11の外端11bと、第2ベルトプライ7Bの外端7bとの間のタイヤ軸方向の距離L5(
図5に示す)は、10mm以下とされる。さらに、本実施形態の第2端部14は、第1端部13と同じ構成や形状を有している。
【0042】
また、第1厚さt1は、例えば、タイヤ赤道Cの位置、及び、第2ショルダー周方向溝22よりも第2トレッド端T2側の位置において、実質的に同一である。望ましい態様では、第1厚さt1は、タイヤ赤道Cの位置から第2ショルダー周方向溝22を超えた位置まで、実質的に同一である。また、第1部分11の外端11bは、例えば、第2トレッド端T2のタイヤ軸方向の内側に位置する。
【0043】
第1厚さt1の平均値は、第2厚さt2(
図1に示す)の平均値の1.5~3.5倍とされるのが望ましい。具体的には、第1厚さt1の平均値は、第2厚さt2の平均値の望ましくは1.5倍以上、より望ましくは1.75倍以上であり、さらに望ましくは1.9倍以上であり、望ましくは3.5倍以下、より望ましくは2.7倍以下、さらに望ましくは2.2倍以下である。これにより、タイヤ質量の増加が抑制されつつ、車内騒音が確実に低減される。
【0044】
同様の観点から、第1厚さt1の平均値は、望ましくは2.0mm以上、より望ましくは2.5mm以上であり、望ましくは4.5mm以下、より望ましくは4.0mm以下、さらに望ましくは3.5mm以下である。一方、第2厚さt2の平均値は、例えば、0.5mmよりも大きく、かつ、2.0mm未満である。望ましい態様では、第2厚さt2の平均値は、1.0~1.5mmとされる。なお、本実施形態の第2部分12は、第1部分11に連なってビード部4(
図1に示す)まで延びており、その全体において第2厚さt2が一定となっている。但し、第2部分12は、このような態様に限定されるものではない。
【0045】
内側ゴム10の第1部分11及び第2部分12は、本実施形態では、空気非透過性を有するゴム材料で形成されている。前記ゴム材料としては、例えば、ブチル系又はハロゲン化ブチル系のゴム材料が採用されうる。本実施形態では、第1部分11及び第2部分12が同じゴム材料で形成されている。
【0046】
トレッド部2は、接地面2sを構成するトレッドゴム2Gを含んでいる。トレッド部2は、例えば、接地面2sを構成するキャップゴム2Aと、キャップゴム2Aのタイヤ半径方向の内側に配されたベースゴム2Bとを含んでいる。トレッド部2は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、1層のゴム材料で構成されていてもよく、3層以上のゴム材料で構成されていてもよい。トレッド部2が複数のゴム材料で構成されている場合のトレッドゴム2Gは、接地面2sを構成するゴム材料、例えば、キャップゴム2Aである。
【0047】
本実施形態の第1部分11の70℃における損失正接tanδ1は、第2部分12の70℃における損失正接tanδ2以上であるのが望ましい。このような第1部分11は、トレッド部2の振動を抑制することに役立ち、空気入りタイヤ1の騒音性能を向上させることができる。
【0048】
第1部分11の70℃における損失正接tanδ1は、トレッドゴム2Gの30℃における損失正接tanδA以下であるのが望ましい。なお、接地面2sを構成するトレッドゴム2Gは、外気との接触により冷却されるので、測定温度を30℃としている。このような第1部分11は、トレッド部2における転がり抵抗への影響をより低減することができ、空気入りタイヤ1の転がり抵抗性能を向上させることに役立つ。このため、本実施形態の空気入りタイヤ1は、転がり抵抗性能と騒音性能とを両立することができる。
【0049】
ここで、本明細書において、損失正接tanδは、JIS-K6394の規定に準拠して、下記の条件で動的粘弾性測定装置を用いて測定された値である。損失正接tanδを測定する際のゴムサンプルは、例えば、加硫後の空気入りタイヤ1から採取されたものであり、サンプルの長手方向と空気入りタイヤ1の周方向とを一致させるように採取されたものである。
初期歪:5%(測定温度が30℃の場合)又は10%(測定温度が70℃の場合)
動歪の振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:30℃又は70℃
【0050】
なお、損失正接tanδは、ゴム組成物のガラス転移点Tg及び各種配合剤の種類、配合量により、適宜調整することが可能である。具体的には、ゴム組成物のガラス転移点Tgを高くすること、カーボン、シリカ等の補強剤の平均粒子径を小さくすること、補強剤の配合量を増やすこと、硫黄、促進剤等の加硫剤を減らすこと等により、損失正接tanδを高めることが可能である。
【0051】
ここで、第1部分11の損失正接tanδ1は、第1部分11が単一のゴム材料から構成されている場合、そのゴム材料の損失正接tanδ1である。また、第1部分11の損失正接tanδ1は、第1部分11が複数のゴム材料から構成されている場合、それらのゴム材料の損失正接tanδ1を各ゴム材料の断面積で重み付けした加重平均として求められる平均値である。なお、他の損失正接tanδも同様である。
【0052】
より好ましい態様として、第1部分11の70℃における損失正接tanδ1は、第2部分12の70℃における損失正接tanδ2の1.0~2.0倍である。第1部分11の70℃における損失正接tanδ1が第2部分12の70℃における損失正接tanδ2の1.0倍以上であることで、トレッド部2の振動抑制効果を確実に奏することができる。このような観点から、第1部分11の70℃における損失正接tanδ1は、より好ましくは、第2部分12の70℃における損失正接tanδ2の1.1倍以上である。
【0053】
第1部分11の70℃における損失正接tanδ1が第2部分12の70℃における損失正接tanδ2の2.0倍以下であることで、物性の過度な差による剥離等の破損を抑制し、空気入りタイヤ1の耐久性能を向上させることができる。このような観点から、第1部分11の70℃における損失正接tanδ1は、より好ましくは、第2部分12の70℃における損失正接tanδ2の1.5倍以下である。
【0054】
第1部分11の70℃における損失正接tanδ1は、好ましくは、トレッドゴム2Gの30℃における損失正接tanδAの0.4~0.7倍である。第1部分11の70℃における損失正接tanδ1がトレッドゴム2Gの30℃における損失正接tanδAの0.4倍以上であることで、空気入りタイヤ1の転がり抵抗性能を維持しつつ、トレッド部2の振動を低減させることができる。
【0055】
第1部分11の70℃における損失正接tanδ1がトレッドゴム2Gの30℃における損失正接tanδAの0.7倍以下であることで、空気入りタイヤ1の高速耐久性能を維持しつつ、トレッド部2の振動を低減させることができる。
【0056】
第1部分11の70℃における損失正接tanδ1は、好ましくは、0.14以上である。第1部分11の70℃における損失正接tanδ1が0.14以上であることで、トレッド部2の振動を確実に抑制し、ノイズの発生を低減することができる。このような観点から、第1部分11の70℃における損失正接tanδ1は、より好ましくは、0.15以上であり、更に好ましくは、0.20以上である。
【0057】
第2部分12の70℃における損失正接tanδ2は、第1部分11の70℃における損失正接tanδ1に等しいのが望ましい。このような内側ゴム10は、第1部分11と第2部分12とを一体的に形成することができ、空気入りタイヤ1の製造コストを低減させることに役立つ。
【0058】
トレッドゴム2Gの30℃における損失正接tanδAは、好ましくは、0.30以下である。トレッドゴム2Gの30℃における損失正接tanδAが0.30以下であることで、転がり抵抗を低減し、空気入りタイヤ1の転がり抵抗性能を向上させることができる。このような観点から、トレッドゴム2Gの30℃における損失正接tanδAは、より好ましくは、0.25以下であり、更に好ましくは、0.20以下である。
【0059】
トレッド部2がキャップゴム2Aとベースゴム2Bとから構成される場合のトレッドゴム2Gの30℃における損失正接tanδAは、キャップゴム2Aの30℃における損失正接tanδAであるのが望ましい。すなわち、ベースゴム2Bの70℃における損失正接tanδBは、キャップゴム2Aの30℃における損失正接tanδAよりも小さいのが望ましい。このようなトレッド部2は、空気入りタイヤ1の良好な高速耐久性能を維持しつつ、転がり抵抗性能を向上させることに役立つ。
【0060】
ベースゴム2Bの70℃における損失正接tanδBは、好ましくは、0.21以下である。ベースゴム2Bの70℃における損失正接tanδBが0.21以下であることで、走行時のトレッド部2での発熱を抑制し、空気入りタイヤ1の良好な転がり抵抗性能を維持することに役立つ。このような観点から、ベースゴム2Bの70℃における損失正接tanδBは、より好ましくは、0.20以下である。
【0061】
図6は、他の実施形態のトレッド部2の第1トレッド端T1付近の断面図である。
図6に示されるように、この実施形態の内側ゴム10の第1部分11は、空気非透過性を有するゴム材料(以下、第1ゴム材料という)からなるインナーライナ層16と、インナーライナ層16とカーカス6との間に配された追加層17とを含んでいる。この追加層17は、第1ゴム材料とは異なる第2ゴム材料で構成されている。第2ゴム材料として、例えは、空気透過性を有するゴム材料が採用される。すなわち、この実施形態の第1部分11は、空気非透過性を有するゴム材料と、空気透過性を有するゴム材料とを複合して形成されている。
【0062】
この実施形態では、第1部分11が追加層17を含むことにより、種々の性能を向上させることができる。例えば、追加層17を構成する第2ゴム材料として、インナーライナ層16を構成する第1ゴム材料よりも損失正接tanδが大きいゴム材料が採用され得る。この場合の第1部分11の損失正接tanδ1の最大値は、追加層17の損失正接tanδである。また、第2部分12の損失正接tanδ2の最大値は、インナーライナ層16の損失正接tanδに相当する。これにより、トレッド部2における路面からの走行時の振動をより一層吸収することができ、車内騒音をさらに低減させることができる。
【0063】
追加層17の配置位置は、
図6で示される態様に限定されるものではない。
図7は、さらに他の実施形態のトレッド部2の第1トレッド端T1付近の断面図である。
図7に示されるように、追加層17は、インナーライナ層16のタイヤ半径方向内側に配されるものでも良い。追加層17は、例えば、タイヤ内腔面1Aの一部を構成している。
【0064】
図6及び
図7で示されるように、内側ゴム10の第1部分11に追加層17が含まれる態様であっても、第1厚さt1は、トレッド部2におけるカーカス6の内面6iからタイヤ内腔面1Aまでの厚さに相当するのは、言うまでもない。
【0065】
図8には、本発明の他の実施形態のサイドウォール部3の拡大断面図が示されている。
図8に示されるように、この実施形態の第2部分12は、空気非透過性を有する第1ゴム材料からなるインナーライナ層16と、インナーライナ層16とカーカス6との間に配された中間層18とを含んでいる。
図8において、この中間層18には、ドットが施されている。中間層18は、第1ゴム材料とは異なるゴム材料で構成されている。中間層18は、例えば、
図6及び
図7で説明された第1部分11の追加層17と同じ第2ゴム材料で構成されても良い。第2部分12がこのような中間層18を含むことにより、トレッド部2で生じた前記振動が車両側に伝達するのをさらに抑制することができる。なお、中間層18は、第1ゴム材料及び第2ゴム材料とはさらに異なるゴム材料で構成されても良い。
【0066】
中間層18は、例えば、バンド層8とタイヤ軸方向で重複している。望ましい態様では、中間層18は、ベルト層7とタイヤ軸方向で重複している。中間層18は、内側ゴム10の第1部分11に連なるものでも良い。また、中間層18は、例えば、カーカス6の折返し部6bのタイヤ半径方向外側の端部よりも、タイヤ半径方向内側まで延びている。換言すると、この実施形態では、中間層18は、折返し部6bとタイヤ半径方向で重複している。このような中間層18は、車内騒音をさらに低減させるのに役立つ。
【0067】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【0068】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0069】
[本発明1]
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
一対のビード部と、
前記一対のビード部の間を延びるカーカスと、
前記カーカスの内側で前記一対のビード部の間を延びる内側ゴムとを含み、
前記内側ゴムは、前記トレッド部を第1厚さで延びる第1部分と、前記一対のサイドウォール部を第2厚さで延びる第2部分とを含み、
前記第1厚さは、前記第2厚さよりも大きく、
タイヤ子午線断面において、前記内側ゴムの断面積は、前記空気入りタイヤの内腔断面積の1.5%~10%である、
空気入りタイヤ。
[本発明2]
前記第1厚さは、前記第2厚さの1.5~3.5倍である、本発明1に記載の空気入りタイヤ。
[本発明3]
前記第1厚さは、2.0~4.5mmである、本発明1又は2に記載の空気入りタイヤ。
[本発明4]
前記空気入りタイヤは、断面幅が、205~325mmであり、偏平率が、25%~65%であり、リム径が、16~22インチである、本発明1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
[本発明5]
前記トレッド部は、第1トレッド端と、タイヤ赤道と、前記タイヤ赤道と前記第1トレッド端との間に配された第1ショルダー周方向溝を含み、
前記内側ゴムの前記第1部分は、前記タイヤ赤道よりも前記第1トレッド端側において、タイヤ軸方向の外端を有し、
前記外端は、前記第1ショルダー周方向溝よりもタイヤ軸方向の外側に位置する、本発明1ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
[本発明6]
前記トレッド部には、前記カーカスのタイヤ半径方向外側に、ベルト層が配されており、
前記ベルト層は、第1ベルトプライと、前記第1ベルトプライのタイヤ半径方向外側に配された第2ベルトプライとを含み、
前記第1トレッド端側において、前記第2ベルトプライのタイヤ軸方向の外端は、前記第1ベルトプライのタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ軸方向の内側に位置し、
前記第1部分の前記外端は、前記第2ベルトプライの前記外端とタイヤ軸方向で同じ位置にあるか、又は、前記第2ベルトプライの前記外端よりもタイヤ軸方向の内側で、かつ、タイヤ軸方向に10mm以内に位置する、本発明5に記載の空気入りタイヤ。
[本発明7]
前記内側ゴムの前記第1部分は、前記第1部分の前記外端に向かって前記第1厚さが連続的に減少する部分を含む、本発明5に記載の空気入りタイヤ。
[本発明8]
前記第1厚さは、前記タイヤ赤道の位置、及び、前記第1ショルダー周方向溝よりも前記第1トレッド端側の位置において、実質的に同一である、本発明5に記載の空気入りタイヤ。
[本発明9]
前記第1厚さは、前記タイヤ赤道の位置から前記第1ショルダー周方向溝を超えた位置まで、実質的に同一である、本発明5に記載の空気入りタイヤ。
[本発明10]
前記第1部分の前記外端は、前記第1トレッド端よりもタイヤ軸方向の内側に位置している、本発明5に記載の空気入りタイヤ。
[本発明11]
前記第1部分は、空気非透過性を有するゴム材料で形成されている、本発明1ないし10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
[本発明12]
前記第1部分は、空気非透過性を有するゴム材料と、空気透過性を有するゴム材料を複合して形成されている、本発明1ないし11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
[本発明13]
前記トレッド部は、接地面を構成するトレッドゴムを含み、
前記第1部分の70℃における損失正接tanδ1は、前記第2部分の70℃における損失正接tanδ2以上であり、前記トレッドゴムの30℃における損失正接tanδA以下である、本発明1ないし12のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
[本発明14]
前記トレッド部は、前記ベルト層のタイヤ半径方向の外側に配されるバンド層を含み、
前記バンド層は、バンドストリップを螺旋状に巻き付けて形成されたバンドプライを含み、
前記バンドプライは、前記第1部分とタイヤ軸方向で重複する位置に、タイヤ軸方向に隣接する前記バンドストリップ同士が離隔する隙間を有する、本発明6に記載の空気入りタイヤ。
[本発明15]
前記隙間のタイヤ軸方向の幅は、前記バンドストリップの幅の20%~60%である、
本発明14に記載の空気入りタイヤ。
【符号の説明】
【0070】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
6 カーカス
10 内側ゴム
11 第1部分
12 第2部分
t1 第1厚さ
t2 第2厚さ