(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006142
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】結束装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20240110BHJP
B65B 13/28 20060101ALI20240110BHJP
B65H 81/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
B65B13/28
B65H81/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106763
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 章
(72)【発明者】
【氏名】新藤 茂輝
(72)【発明者】
【氏名】野田口 洋成
【テーマコード(参考)】
3E052
【Fターム(参考)】
3E052AA08
3E052AA42
3E052BA18
3E052CA18
3E052CB05
3E052CB08
3E052EA10
3E052HA09
3E052JA11
3E052LA05
(57)【要約】
【課題】複数本のワイヤで鉄筋を結束する結束機構の使用に適した結束装置を提供する。
【解決手段】結束装置100Aは、本体部101と、本体部101を走行させる走行部110を備え、本体部101は、2本のワイヤWを鉄筋の周囲に送り、鉄筋の周囲に送った2本のワイヤWを捩じり結束する鉄筋結束機1Aと、鉄筋結束機1Aを鉄筋の結束を行う結束位置と鉄筋から離れた退避位置との間で移動させる結束機移動部10Aと、1本のワイヤWが巻かれた2個のリール20を収容するリール収容部200Aと、鉄筋結束機1Aとリール収容部200Aとの間で、リール収容部200Aに収容された2個のリール20から引き出されたワイヤWの送り経路を形成する経路誘導部材21を備える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部を走行させる走行部を備え、
前記本体部は、
複数本のワイヤを鉄筋の周囲に送り、鉄筋の周囲に送った複数本のワイヤを捩じり結束する結束機構と、
前記結束機構を鉄筋の結束を行う結束位置と鉄筋から離れた退避位置との間で移動させる結束機構移動部と、
1本のワイヤが巻かれた複数のリールを収容するリール収容部と、
前記結束機構と前記リール収容部との間で、前記リール収容部に収容された複数の前記リールから引き出されたワイヤの送り経路を形成する経路誘導部を備えた
結束装置。
【請求項2】
前記リール収容部は、複数の前記リールが、前記走行部による前記本体部の移動方向に対して左右に並ぶ配置で収容される
請求項1に記載の結束装置。
【請求項3】
前記リール収容部は、複数の前記リールが、前記走行部による前記本体部の移動方向に対して左右に対称な配置で収容される
請求項1に記載の結束装置。
【請求項4】
前記リール収容部は、複数の前記リールが、回転の軸を縦向きとして上下に重ねた配置で収容される
請求項1に記載の結束装置。
【請求項5】
前記結束機構は、回転動作でワイヤを捩じる結束部を備え、
前記リール収容部は、前記結束部の回転動作の回転軸を通る仮想の中心線に対して複数の前記リールが左右に対称な配置で収容される
請求項1に記載の結束装置。
【請求項6】
前記経路誘導部は、
前記結束機構と前記リール収容部との間の複数個所に、ワイヤの送り経路を形成する経路誘導部材を備え、
複数の前記経路誘導部材のうちの1つは、複数の前記リールから引き出されたワイヤを集合させる
請求項1に記載の結束装置。
【請求項7】
前記リール収容部は、複数の前記経路誘導部材のうち、前記リール収容部に最も近い経路誘導部材に対して、複数の前記リールが左右に対称な配置で収容される
請求項6に記載の結束装置。
【請求項8】
前記リール収容部は、一の前記リールから前記結束機構までのワイヤの送り経路の経路長と、他の前記リールから前記結束機構までのワイヤの送り経路の経路長の差が、前記結束機構が鉄筋の1回の結束で必要なワイヤの長さより短く設定される
請求項1に記載の結束装置。
【請求項9】
前記リール収容部は、一の前記リールから前記結束機構までのワイヤの送り経路の経路長と、他の前記リールから前記結束機構までのワイヤの送り経路の経路長の差が、前記リールのワイヤが巻かれた巻き芯部の周方向の長さよりも少なくなるように設定される
請求項1に記載の結束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄筋をワイヤで結束する結束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物には強度を向上させるために鉄筋が使用されており、コンクリート打設時に鉄筋が所定の位置からずれないように、ワイヤで結束している。
【0003】
従来から、2本以上の鉄筋にワイヤを巻き、鉄筋に巻いたワイヤを捩じって当該2本以上の鉄筋をワイヤで結束する鉄筋結束機と称す結束機が提案されている。鉄筋結束機は、作業者が手で持って使用する形態で使用され、ワイヤが巻かれたリールが鉄筋結束機に収容される構成である。
【0004】
これに対し、作業者が手で持って使用する鉄筋結束機を適用した鉄筋網の製造装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような鉄筋結束機を備えた結束装置では、ワイヤが巻かれたリールを鉄筋結束機の外部に収容する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鉄筋結束機を備えた結束装置では、ワイヤが巻かれたリールを鉄筋結束機の外部に収容できるため、鉄筋結束機のサイズの影響を受けずに、リールの径(フランジ部の高さ)やリールの幅(巻き芯部の長さ)の拡大が可能で、ワイヤの巻き量を増やしてワイヤの収容量を増やすことができる。
【0007】
しかし、複数本のワイヤで鉄筋を結束する鉄筋結束機を使用する場合、1個のリールに複数本のワイヤを巻く構成とすると、リールからワイヤを引き出す際に異常なワイヤの変形や、複数本のワイヤ間に大きな巻き癖差などが発生しないように複数本のワイヤを1つのリールで巻き取ることは、リールサイズが大きくなり巻き量が増加するほど難しく、管理コストの増加や歩留まり悪化に繋がる。
【0008】
また、異常なワイヤの変形や複数本のワイヤ間での大きな巻き癖差の発生を十分に抑制できないことで、鉄筋結束機の外部のリールから、鉄筋結束機までのワイヤの送り経路の管理が難しくなる。更に、鉄筋結束機で鉄筋の周囲にワイヤを巻き回す際のワイヤのカール軌道に影響を及ぼす。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、複数本のワイヤで鉄筋を結束する結束機構の使用に適した結束装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、本体部と、本体部を走行させる走行部を備え、本体部は、複数本のワイヤを鉄筋の周囲に送り、鉄筋の周囲に送った複数本のワイヤを捩じり結束する結束機構と、結束機構を鉄筋の結束を行う結束位置と鉄筋から離れた退避位置との間で移動させる結束機構移動部と、1本のワイヤが巻かれた複数のリールを収容するリール収容部と、結束機構とリール収容部との間で、リール収容部に収容された複数のリールから引き出されたワイヤの送り経路を形成する経路誘導部を備えた結束装置である。
【0011】
本発明では、1本のワイヤが巻かれた複数のリールから引き出された複数本のワイヤが結束機構に送られ、結束機が複数本のワイヤで鉄筋を結束する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各リールには1本のワイヤが巻かれており、複数本のワイヤがリール内で絡まる要因が排除される。このように、1個のリール20に1本のワイヤ巻く構成とすることで、複数本のワイヤ間での大きな巻き癖差の発生を考慮する必要がなく、ワイヤが巻かれたリール製造の管理コストの低減を図ることが出来ると共に、歩留まりを向上させることができる。
【0013】
また、2本のワイヤが1個のリールに巻かれることに起因する異常なワイヤの変形を排除できることから、結束機構の外部のリールから、結束機構までのワイヤの送り経路の管理が容易になる。更に、結束機構で鉄筋の周囲にワイヤを巻き回す際のワイヤのカール軌道に影響を及ぼす要因を排除することができる。また、本体部が走行部で走行する構成で、走行時の振動などで複数本のワイヤがリール内で絡まることが抑制される。よって、ワイヤの引き出し不良や送り不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】第1の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図である。
【
図1B】第1の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図である。
【
図1C】第1の実施の形態の結束装置の一例を示す上面図である。
【
図1D】第1の実施の形態の結束装置の一例を示す正面図である。
【
図2】ワイヤの送り経路の一例を示す斜視図である。
【
図4A】第2の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図である。
【
図4B】ワイヤの送り経路の一例を示す斜視図である。
【
図5A】第3の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図である。
【
図5B】ワイヤの送り経路の一例を示す斜視図である。
【
図6A】第4の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図である。
【
図6B】ワイヤの送り経路の一例を示す斜視図である。
【
図7A】第5の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図である。
【
図7B】ワイヤの送り経路の一例を示す斜視図である。
【
図8】本実施の形態の鉄筋結束機の内部構成の一例を示す要部側面図である。
【
図10A】他の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図である。
【
図10B】他の実施の形態の結束装置の一例を示す上面図である。
【
図10C】他の実施の形態の結束装置の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、ワイヤで鉄筋を結束する結束装置の実施の形態について説明する。
【0016】
<本実施の形態の結束装置の構成例>
図1A、
図1Bは、第1の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図、
図1Cは、第1の実施の形態の結束装置の一例を示す上面図、
図1Dは、第1の実施の形態の結束装置の一例を示す正面図である。
【0017】
第1の実施の形態の結束装置100Aは、本体部101と、本体部101を移動させる走行部110を備える。結束装置100Aは、格子状に配設された鉄筋Sの交差箇所をワイヤWで結束する鉄筋結束機1Aと、鉄筋結束機1Aを、鉄筋Sの配設面に対して交差する略鉛直方向に結束位置と退避位置との間で移動させる結束機移動部10Aを本体部101に備える。
【0018】
また、結束装置100Aは、鉄筋結束機1Aで使用されるワイヤWが巻かれたリール20が収容されるリール収容部200Aを本体部101に備える。
【0019】
結束装置100Aは、格子状に配設された鉄筋Sに走行部110が乗って本体部101が移動する構成であり、鉄筋Sの配設面が略水平な面となる。
【0020】
結束装置100Aの動作の概要を説明すると、結束装置100Aは、結束対象となる鉄筋Sの交差箇所に鉄筋結束機1Aの位置が合うように走行部110で移動し、結束機移動部10Aが鉄筋結束機1Aを
図1Bに示す待機位置から
図1Aに示す結束位置に移動させた後、鉄筋結束機1AがワイヤWで鉄筋Sを結束する。
【0021】
鉄筋結束機1Aで鉄筋Sの結束が終了すると、結束機移動部10Aが鉄筋結束機1Aを結束位置から待機位置に移動させる。そして、結束装置100Aは、次の結束対象となる鉄筋Sの交差箇所に鉄筋結束機1Aの位置が合うように走行部110で移動する。
【0022】
次に、結束装置100Aの各部の構成について説明する。結束機移動部10Aは結束機構移動部の一例で、鉄筋結束機1Aが装着される結束機装着部11と、結束機装着部11を矢印C1、C2で示す上下方向に移動させる駆動部12を備える。駆動部12は、モータ、アクチュエータなど、移動量、移動方向及び移動速度などが制御可能な動力源と、動力源の動き(出力)を、結束機装着部11の矢印C1、C2方向への動きに変換する各種機構を備える。
【0023】
結束機移動部10Aは、結束機装着部11に装着された鉄筋結束機1Aを矢印C1で示す上方向に所定量移動させることで、鉄筋結束機1Aを退避位置に移動させる。また、結束機移動部10Aは、結束機装着部11に装着された鉄筋結束機1Aを矢印C2で示す下方向に所定量移動させることで、鉄筋結束機1Aを退避位置から結束位置に移動させる。
【0024】
結束装置100Aは、矩形の本体部101の一の側部に、鉄筋結束機1A及び結束機移動部10Aの一部または全部が入る形状の凹部が設けられる。また、結束装置100Aは、本体部101の下面部に走行部110が設けられる。
【0025】
走行部110は、図示しないモータに駆動される無限軌道を備える。結束装置100Aは、格子状に配設された鉄筋Sに走行部110を構成する無限軌道が乗り、無限軌道が回転することで、鉄筋Sの配設面に沿って移動する。走行部110は、本体部101の移動方向に対して交差する左右方向の両側に設けられる。
【0026】
更に、結束装置100Aは、本体部101の上面部にリール収容部200Aが設けられる。リール収容部200Aは、2本のワイヤWを鉄筋Sに巻き回して結束する1台の鉄筋結束機1Aに対し、それぞれ1本ずつのワイヤWが引き出し可能に巻かれた2個のリール20が収容される。
【0027】
リール収容部200Aは、2個のリール20が、矢印A1、A2で示す走行部110による本体部101の移動方向(直進)に対して交差する左右方向に並ぶ配置で収容される。本例では、リール収容部200Aは、2個のリール20が、走行部110による本体部101の移動方向に対して左右に対称な位置に設けられる。詳細には、2個のリール20は、本体部101の移動方向と直交する左右方向の中心を通り、本体部101の移動方向に沿って延伸する仮想の中心線O1に対して対称な位置に設けられる。更に、リール収容部200Aは、2個のリール20が、本体部101の移動方向に対して交差する左右方向の両側に設けられる一対の走行部110のそれぞれ内側に設けられる。また、リール収容部200Aは、2個のリール20が、回転の軸を鉛直方向に対して横向きとして、軸方向に沿って同軸上に並ぶ配置で回転可能に収容される。
【0028】
図2は、ワイヤの送り経路の一例を示す斜視図、
図3A及び
図3Bは、経路誘導部材の一例を示す斜視図である。
【0029】
結束装置100Aは、鉄筋結束機1Aとリール収容部200Aとの間の複数個所に、ワイヤWの送り経路を形成する経路誘導部材21を備える。
【0030】
経路誘導部材21は経路誘導部の一例で、支持部材22で本体部101に取り付けられ、ワイヤWの送り経路に沿った複数個所に設けられる。結束装置100Aは、環状の経路誘導部材21にワイヤWが通されることで、リール収容部200Aから鉄筋結束機1Aに至るワイヤWの送り経路が形成される。
【0031】
経路誘導部材21は、
図3Aに示すように、2本のワイヤWの送り経路が独立した2個の環状の部材の組み合わせで構成され、各環状の部材に1本ずつのワイヤWが通される。また、経路誘導部材21は、
図3Bに示すように、2本のワイヤWの送り経路が独立しない1個の環状の部材で構成され、1個の環状の部材に2本のワイヤWが通されても良い。
【0032】
複数の経路誘導部材21のうちの1つの経路誘導部材21aは、2個のリール20から引き出された1本ずつのワイヤWを集合させる。また、この2個のリール20から引き出されたワイヤWを集合させる経路誘導部材21aと、鉄筋結束機1Aとの間の経路誘導部材21は、集合した2本のワイヤWを、並列した形態で鉄筋結束機1Aに誘導する。本例では、リール収容部200Aに最も近い経路誘導部材21が、2個のリール20から引き出された1本ずつのワイヤWを集合させる経路誘導部材21aを構成する。
【0033】
リール20は、ワイヤWがリール20の図示しない巻き芯部の軸方向に沿って位置を変えながら、径方向に重ねて巻かれている。このため、リール20からワイヤWが引き出される動作で、ワイヤWが引き出される位置がリール20の軸方向に沿って変わる。また、ワイヤWの使用量に応じて、ワイヤWが引き出される位置がリール20の径方向に沿って変わる。これにより、リール20からワイヤWが引き出される動作で、経路誘導部材21aに対するワイヤWの導入方向が変わる。但し、経路誘導部材21aのワイヤWが接する部位が曲面であるので、擦動による抵抗が増加することが抑制される。
【0034】
また、他の経路誘導部材21についても、ワイヤWが接する部位が曲面であるので、擦動による抵抗が増加することが抑制される。更に、鉄筋結束機1Aに近い部位の経路誘導部材21については、鉄筋結束機1Aが結束位置と待機位置との間を移動する動作で、経路誘導部材21に対するワイヤWの導入方向が変わる。但し、経路誘導部材21のワイヤWが接する部位が曲面であるので、擦動による抵抗が増加することが抑制され、ワイヤWが、結束位置と待機位置との間を鉄筋結束機1Aが移動する動作の妨げになることが抑制される。
【0035】
図4Aは、第2の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図、
図4Bは、ワイヤの送り経路の一例を示す斜視図である。
【0036】
第2の実施の形態の結束装置100Bは、複数のリール20、本例では2個のリール20を収容するリール収容部200Bを備える。第2の実施の形態の結束装置100Bは、リール収容部200B以外の構成は、第1の実施の形態の結束装置100Aと同じである。
【0037】
リール収容部200Bは、2個のリール20が、走行部110による本体部101の移動方向に対して交差する左右方向に並ぶ配置で収容される。本例では、リール収容部200Bは、2個のリール20が、走行部110による本体部101の移動方向に対して左右に対称な位置で、本体部101の左右方向の端部側に設けられる。また、リール収容部200Bは、2個のリール20が、回転の軸を鉛直方向に対して横向きとして、互いの軸方向が交差する向きで回転可能に収容される。
【0038】
図5Aは、第3の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図、
図5Bは、ワイヤの送り経路の一例を示す斜視図である。
【0039】
第3の実施の形態の結束装置100Cは、複数のリール20、本例では2個のリール20を収容するリール収容部200Cを備える。第3の実施の形態の結束装置100Cは、リール収容部200C以外の構成は、第1の実施の形態の結束装置100Aと同じである。
【0040】
リール収容部200Cは、2個のリール20が、走行部110による本体部101の移動方向に対して交差する左右方向に並ぶ配置で収容される。本例では、リール収容部200Cは、2個のリール20が、本体部101の左右方向の一方の側に設けられる。また、リール収容部200Cは、2個のリール20が、回転の軸を鉛直方向に対して横向きとし、かつ、回転の軸を本体部101の移動方向に対して傾斜した向きとして、軸方向に沿って同軸上に並ぶ配置で回転可能に収容される。
【0041】
図6Aは、第4の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図、
図6Bは、ワイヤの送り経路の一例を示す斜視図である。
【0042】
第4の実施の形態の結束装置100Dは、複数のリール20、本例では2個のリール20を収容するリール収容部200Dを備える。第4の実施の形態の結束装置100Dは、リール収容部200D以外の構成は、第1の実施の形態の結束装置100Aと同じである。
【0043】
リール収容部200Dは、2個のリール20が、走行部110による本体部101の移動方向に対して交差する左右方向に並ぶ配置で収容される。本例では、リール収容部200Dは、2個のリール20が、走行部110による本体部101の移動方向に対して左右に対称な位置に設けられる。更に、リール収容部200Dは、2個のリール20が、本体部101の移動方向に対して交差する左右方向の両側に設けられる一対の走行部110のそれぞれ内側に設けられる。また、リール収容部200Dは、2個のリール20が、回転の軸を鉛直方向に沿った縦向きとして回転可能に収容される。
【0044】
図7Aは、第5の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図、
図7Bは、ワイヤの送り経路の一例を示す斜視図である。
【0045】
第5の実施の形態の結束装置100Eは、複数のリール20、本例では2個のリール20を収容するリール収容部200Eを備える。第5の実施の形態の結束装置100Eは、リール収容部200E以外の構成は、第1の実施の形態の結束装置100Aと同じである。
【0046】
リール収容部200Eは、2個のリール20が、走行部110による本体部101の移動方向に対して交差する上下方向に並ぶ配置で収容される。本例では、リール収容部200Eは、2個のリール20が、本体部101の移動方向に対して交差する左右方向の両側に設けられる一対の走行部110の内側に設けられる。また、リール収容部200Eは、2個のリール20が、回転の軸を鉛直方向に沿った縦向きとして、軸方向に沿って同軸上に重なる配置で回転可能に収容される。
【0047】
<鉄筋結束機の構成例>
図8は、本実施の形態の鉄筋結束機の内部構成の一例を示す要部側面図である。
【0048】
鉄筋結束機1Aは結束機構の一例で、ワイヤWを矢印Fで示す正方向に送り、結束対象物である交差した2本の鉄筋Sの周囲に巻き回し、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWを、矢印Rで示す逆方向に送って鉄筋Sに巻き付けた後、ワイヤWを捩じり、鉄筋SをワイヤWで結束する。ワイヤWは、塑性変形し得る金属線で構成されたワイヤ、金属線が樹脂で被覆されたワイヤ、あるいは撚り線のワイヤなどが使用される。
【0049】
鉄筋結束機1Aは、上述した機能を実現するため、ワイヤWを正方向及び逆方向に送るワイヤ送り部3と、ワイヤ送り部3に送られるワイヤWをガイドするワイヤガイド4を備える。また、鉄筋結束機1Aは、ワイヤ送り部3で送られるワイヤWを鉄筋Sの周囲に巻き回す経路を構成するカール形成部5と、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWを切断する切断部6を備える。更に、鉄筋結束機1Aは、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWを捩じる結束部7と、結束部7を駆動する駆動部8を備える。
【0050】
鉄筋結束機1Aは、結束装置100A、100B、100C、100D、100E、後述する結束装置100Fに使用される場合、カール形成部5が下を向く形態で使用される。以下、結束装置100A、100B、100C、100D、100E、100Fに使用される鉄筋結束機1Aにおいて、カール形成部5が設けられる側を下側とする。
【0051】
ワイヤ送り部3は、1本または並列された複数本のワイヤWを挟持して送る一対の送りギア30を備える。ワイヤ送り部3は、一対の送りギア30が、互いが近づく方向に付勢され、図示しない送りモータの回転動作が伝達されて送りギア30が回転する。これにより、ワイヤ送り部3は、一対の送りギア30の間に挟持したワイヤWを、ワイヤWの延在方向に沿って送る。複数本、例えば2本のワイヤWを送る構成では、2本のワイヤWが並列された状態で送られる。
【0052】
ワイヤガイド4は、矢印Fで示すワイヤWの正方向の送り方向に対して、ワイヤ送り部3の上流側と下流側の所定の位置に設けられる。なお、
図8では、ワイヤ送り部3の上流側に設けたワイヤガイド4は図示していない。
【0053】
ワイヤガイド4は、ワイヤWの送り方向に沿って延伸する開口が設けられ、ワイヤWの正方向の送り方向に沿った上流側の開口に対し、下流側の開口の開口面積が小さく構成される。例えば、ワイヤガイド4は、正方向に送られるワイヤWの導入側の開口面積を最も大きくし、そこから徐々に開口面積が小さくなるようなテーパ状の開口で構成される。これにより、ワイヤガイド4は、正方向に送られてワイヤガイド4を通過するワイヤWを、一対の送りギア30の間及び切断部6にガイドする。
【0054】
鉄筋結束機1Aが2本のワイヤWで鉄筋Sを結束する構成では、ワイヤガイド4は、ワイヤWの正方向の送り方向に沿った下流側の開口が、2本のワイヤWの径方向の向きを規制する形状である。これにより、ワイヤガイド4は、正方向に送られてワイヤガイド4を通過する2本のワイヤWを、一対の送りギア30が並ぶ方向に沿って並列させ、一対の送りギア30の間及び切断部6にガイドする。なお、
図1A等に示す鉄筋結束機1Aに最も近い経路誘導部材21が、ワイヤガイド4に2本のワイヤWを誘導する。
【0055】
カール形成部5は、ワイヤ送り部3で送られるワイヤWに巻き癖をつけるカールガイド50と、カールガイド50で巻き癖を付けられたワイヤWを結束部7に誘導する誘導ガイド51を備える。
【0056】
鉄筋結束機1Aでは、ワイヤ送り部3で送られるワイヤWの送り経路がカール形成部5で規制されることで、ワイヤWの軌跡が
図8に破線で示すようなループRuとなり、ワイヤWが鉄筋Sの周囲に巻き回される。
【0057】
カール形成部5は、正方向に送られるワイヤWをガイドし、ワイヤWに巻き癖をつけるガイド部材53aとガイド部材53bを備える。ガイド部材53aは、カールガイド50においてワイヤ送り部3で送られるワイヤWの導入部側に設けられ、ワイヤ送り部3で送られるワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側に配置される。ガイド部材53bは、カールガイド50においてワイヤ送り部3で送られるワイヤWの排出部側に設けられ、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側に配置される。
【0058】
カール形成部5は、ガイド部材53aを退避させるガイド部材移動機構54を備える。ガイド部材移動機構54は、ワイヤWが鉄筋Sに巻き回された後、結束部7の動作と連動して、ガイド部材53aを退避させる。
【0059】
切断部6は、固定刃部60と、固定刃部60との協働でワイヤWを切断する可動刃部61と、結束部7の動作を可動刃部61に伝達する伝達機構62を備える。切断部6は、固定刃部60を支点軸とした可動刃部61の回転動作でワイヤWを切断する。伝達機構62は、結束部7の動作を、伝達部材75を介して可動刃部61に伝達し、結束部7の動作と連動して可動刃部61を回転させ、ワイヤWを切断する。
【0060】
結束部7は、ワイヤWが係止されるワイヤ係止体70と、ワイヤ係止体70を作動させるスリーブ71を備える。結束部7の詳細な構成は後述する。駆動部8は、モータ80と、減速及びトルクの増幅を行う減速機81を備える。
【0061】
鉄筋結束機1Aは、作業者が手に持って使用する形態のものを適用する場合、作業者が手で持つことが可能な形状のハンドル部16を備え、ハンドル部16にバッテリ17が着脱可能に取り付けられる。結束装置100Aは、結束機移動部10Aの結束機装着部11に、鉄筋結束機1Aのハンドル部16が装着される。なお、鉄筋結束機1Aは、結束装置100A、100B、100C、100D、100E、100Fから電源の供給を受ける構成でも良い。
【0062】
鉄筋結束機1Aは、ワイヤ送り部3で正方向に送られ、カール形成部5を通り鉄筋Sの周囲に巻き回されるワイヤWの送り経路に、ワイヤWの先端が突き当てられる送り規制部90を備える。
【0063】
また、鉄筋結束機1Aは、カールガイド50と誘導ガイド51との間に、カールガイド50と誘導ガイド51との間に入れられた鉄筋Sが突き当てられる突き当て部91を備える(
図1D参照)。
【0064】
結束装置100Aに装着された鉄筋結束機1Aは、結束機移動部10Aの動作で結束位置に移動すると、カールガイド50と誘導ガイド51との間に鉄筋Sが入れられ、カールガイド50と誘導ガイド51との間に入れられた鉄筋Sが、突き当て部91に突き当てられる。
【0065】
<結束部の構成例>
図9A及び
図9Bは、結束部の一例を示す断面平面図であり、次に、各図を参照して、結束部の構成について説明する。
【0066】
結束部7は、ワイヤ係止体70とスリーブ71を作動させる回転軸72を備える。結束部7と駆動部8は、回転軸72とモータ80が減速機81を介して連結され、回転軸72が、減速機81を介してモータ80に駆動される。
【0067】
ワイヤ係止体70は、回転軸72と連結されるセンターフック70Cと、センターフック70Cに対して開閉する第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lを備える。
【0068】
センターフック70Cは、回転軸72の軸方向に沿った一方の端部である回転軸72の先端に、回転軸72に対して回転可能、かつ、回転軸72と一体的に軸方向への移動が可能な構成を介して連結される。
【0069】
ワイヤ係止体70は、軸71bを支点とした回転動作で、第1のサイドフック70Rの先端側がセンターフック70Cに対して離接する方向に開閉する。また、第2のサイドフック70Lの先端側がセンターフック70Cに対して離接する方向に開閉する。
【0070】
スリーブ71は、回転軸72が挿入される空間の内周面に突出する図示しない凸部を有し、この凸部が、回転軸72の外周に軸方向に沿って形成された送りネジ72aの溝部に入る。スリーブ71は、回転軸72が回転すると、図示しない凸部と回転軸72の送りネジ72aの作用により、回転軸72の軸方向に沿った方向である上下方向へ、回転軸72の回転方向に応じて移動する。また、スリーブ71は、回転軸72と一体的に回転する。
【0071】
スリーブ71は、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lを開閉する開閉ピン71aを備える。
【0072】
開閉ピン71aは、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lに設けられた開閉ガイド孔73に挿入される。開閉ガイド孔73は、スリーブ71の移動方向に沿って延在し、スリーブ71と連動して移動する開閉ピン71aの直線方向の動きを、軸71bを支点とした第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lの回転による開閉動作に変換する形状を有する。
【0073】
ワイヤ係止体70は、スリーブ71が矢印D2で示す上方向に移動することで、開閉ピン71aの軌跡と開閉ガイド孔73の形状により、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、軸71bを支点とした回転動作でセンターフック70Cから離れる方向に移動する。
【0074】
これにより、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して開き、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間に、ワイヤWが通る送り経路が形成される。
【0075】
第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して開いた状態では、ワイヤ送り部3で送られるワイヤWは、センターフック70Cと第1のサイドフック70Rの間を通る。センターフック70Cと第1のサイドフック70Rとの間を通るワイヤWは、カール形成部5に誘導される。そして、カール形成部5で巻き癖が付けられ、結束部7に誘導されたワイヤWは、センターフック70Cと第2のサイドフック70Lの間を通る。
【0076】
ワイヤ係止体70は、スリーブ71が矢印D1で示す下方向に移動することで、開閉ピン71aの軌跡と開閉ガイド孔73の形状により、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、軸71bを支点とした回転動作でセンターフック70Cに近づく方向に移動する。これにより、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して閉じる。
【0077】
第1のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して閉じると、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間を移動することが可能な形態で係止される。また、第2のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して閉じると、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止される。
【0078】
スリーブ71は、ワイヤWの一方の端部である先端側を所定の方向に押して曲げることで、ワイヤWを所定の形状に成形する曲げ部71c1と、切断部6で切断されたワイヤWの他方の端部である終端側を所定の方向に押して曲げることで、ワイヤWを所定の形状に成形する曲げ部71c2を備える。
【0079】
スリーブ71は、矢印D1で示す下方向に移動することで、センターフック70Cと第2のサイドフック70Lで係止されたワイヤWの先端側を曲げ部71c1で押して、鉄筋S側へ曲げる。また、スリーブ71は、矢印D1で示す下方向に移動することで、センターフック70Cと第1のサイドフック70Rで係止され、切断部6で切断されたワイヤWの終端側を曲げ部71c2で押して、鉄筋S側へ曲げる。
【0080】
結束部7は、回転軸72の回転動作と連動したワイヤ係止体70及びスリーブ71の回転を規制する回転規制部74を備える。結束部7は、回転軸72の軸方向に位置に沿ったスリーブ71の位置に応じて、回転規制部74が、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転を規制し、回転軸72の回転動作でスリーブ71が矢印D1方向及び矢印D2方向に移動する。
【0081】
これにより、スリーブ71が回転せずに矢印D1方向に移動することで、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して閉じ、ワイヤWが係止される。また、スリーブ71が回転せずに矢印D2方向に移動することで、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して開き、ワイヤWの係止が解除される。
【0082】
結束部7は、回転規制部74によるスリーブ71の回転の規制が解除されると、回転軸72の回転に連動してスリーブ71が回転する。
【0083】
これにより、ワイヤWを係止した第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cが回転し、係止されたワイヤWが捩じられる。
【0084】
<本実施の形態の結束装置の作用効果例>
鉄筋結束機1Aは、2本のワイヤWを鉄筋Sの交差箇所の周囲に送り、鉄筋Sの周囲に送った2本のワイヤWを逆送りで鉄筋Sに巻き付け、このワイヤWを捩じって鉄筋Sを結束する構成である。このため、結束装置100A、100B、100C、100D、100Eは、リール収容部200A、200B、200C、200D、200Eから鉄筋結束機1Aの間で2本のワイヤWが送られる。
【0085】
結束装置100A、100B、100C、100D、100Eは、鉄筋結束機1Aで使用するワイヤWの本数に合わせて本例では2個のリール20がリール収容部200A、200B、200C、200D、200Eに収納され、各リール20には1本のワイヤWが巻かれている。これにより、2本のワイヤWが1本のリール20に巻かれることで発生する、2本のワイヤWがリール20内で絡まることが抑制される。よって、本体部101が走行部110で走行する構成で、走行時の振動などで2本のワイヤWがリール20内で絡まることが抑制される。
【0086】
このように、1個のリール20に1本のワイヤWを巻く構成とすることで、複数本のワイヤ間での大きな巻き癖差の発生を考慮する必要がなく、ワイヤが巻かれたリール製造の管理コストの低減を図ることが出来ると共に、歩留まりを向上させることができる。
【0087】
また、2本のワイヤWが1個のリール20に巻かれることに起因する異常なワイヤWの変形を排除できることから、鉄筋結束機1Aの外部のリール20から、鉄筋結束機1AまでのワイヤWの送り経路の管理が容易になる。また、鉄筋結束機1Aで鉄筋Sの周囲にワイヤWを巻き回す際のワイヤWのカール軌道に影響を及ぼす要因を排除することができる。
【0088】
したがって、ワイヤWのリール20からの引き出し不良や、送り経路での送り不良の発生を抑制することができる。
【0089】
リール収容部200Aは、2個のリール20が、矢印A1、A2で示す本体部101の移動方向と直交する左右方向の中心を通り、本体部101の移動方向に沿って延伸する仮想の中心線O1に対して対称な位置に設けられる。
【0090】
ワイヤWが巻かれたリール20は、結束装置100Aの中で比較的重量が重い部材である。結束装置100Aは、このリール20が仮想の中心線O1に対して対称な位置に設けられることで、本体部101の移動方向と直交する左右方向における重量バランスの偏りを抑制することができる。また、結束装置100Aは、鉄筋結束機1Aでの鉄筋Sの結束動作でワイヤWが使用され、リール20に巻かれたワイヤWの量が減った場合に、2個のリール20に巻かれたワイヤWの量は大体同じである。これにより、リール20に巻かれたワイヤWの量が減った場合でも、本体部101の移動方向と直交する左右方向における重量バランスの偏りを抑制することができる。
【0091】
結束装置100Aは、走行部110が本体部101の移動方向に対して交差する左右方向の両側に設けられる。この本体部101の左右方向における重量バランスの偏りを抑制することで、本体部101の傾きの発生などを抑制できる。また、リール収容部200Aは、2個のリール20が一対の走行部110のそれぞれ内側に設けられる。これにより、ワイヤWが巻かれた状態で比較的重量の重い2個のリール20を、結束装置100Aの左右方向の中心付近に集めることができる。
【0092】
なお、結束装置100Aは、
図9A、
図9Bに示す鉄筋結束機1Aの回転軸72が、上下方向に延伸する向きで、
図1Cに示す仮想の中心線O1の延長線上に位置するように、鉄筋結束機1Aが本体部101に取り付けられる。これにより、結束装置100Aは、2個のリール20が、鉄筋結束機1Aの回転軸72に対して対称な位置に設けられる。
【0093】
鉄筋結束機1Aは、結束装置100Aの中で比較的重量が重い部材である。結束装置100Aは、この鉄筋結束機1Aが仮想の中心線O1の延長線上に回転軸72が位置するように設けられることで、本体部101の移動方向と直交する左右方向における重量バランスの偏りを抑制することができる。
【0094】
また、結束装置100Aは、2個のリール20が鉄筋結束機1Aの回転軸72に対して対称な位置に設けられ、かつ、2個のリール20が一対の走行部110のそれぞれ内側に設けられることで、重量物を結束装置100Aの左右方向の中心付近に集めることができ、本体部101の移動方向と直交する左右方向における重量バランスの偏りを抑制することができる。
【0095】
一方、リール収容部200Aから鉄筋結束機1Aに至るワイヤWの送り経路は、
図1Cの上面図、
図1Dの正面図に示すように、仮想の中心線O1に対して一方向にずれており、リール収容部200Aに最も近い経路誘導部材21aが、仮想の中心線O1に対して一方向にずれた位置に設けられる。
【0096】
このため、一方のリール20(1)から経路誘導部材21aまでのワイヤWの経路長L1と、他方のリール20(2)から経路誘導部材21aまでのワイヤWの経路長L2が異なり、一方のリール20(1)から鉄筋結束機1Aまでの経路長と、他方のリール20(2)から鉄筋結束機1Aまでの経路長に差が生じる。
【0097】
2本のワイヤWで鉄筋Sを結束する動作では、2個のリール20のそれぞれから略同じ長さのワイヤWが引き出される。このため、一方のリール20(1)から鉄筋結束機1Aまでの経路長と、他方のリール20(2)から鉄筋結束機1Aまでの経路長に差があると、例えば、経路長の長い一方のリール20(1)から引き出されるワイヤWが先に無くなる場合がある。このような場合に、他方のリール20(2)に残ったワイヤWの長さが、鉄筋Sの1回の結束で必要なワイヤWの長さより長いと、両方のリール20を同時に交換した場合、他方のリール20(2)には、まだ鉄筋Sの結束に必要な量のワイヤWが残っているにも関わらず交換されることになるため、ワイヤWの無駄が発生する。
【0098】
そこで、一方のリール20(1)から鉄筋結束機1Aまでの経路長と、他方のリール20(2)から鉄筋結束機1Aまでの経路長の差は、鉄筋Sの1回の結束で必要なワイヤWの長さより短くなるように設定される。
【0099】
これにより、2本のワイヤWで鉄筋Sを結束する動作で、例えば一方のリール20(1)から引き出されるワイヤWが先に無くなった場合、他方のリール20(2)に残るワイヤWは、鉄筋Sの1回の結束で必要なワイヤWの長さより短く、両方のリール20を同時に交換しても、ワイヤWの無駄の発生が抑制される。
【0100】
また、一方のリール20(1)から鉄筋結束機1Aまでの経路長と、他方のリール20(2)から鉄筋結束機1Aまでの経路長の差は、リール20の図示しない巻き芯部の周方向の長さ、すなわち、リール20の図示しない巻き芯部の直径をRとしたとき、R×3.14よりも少なくなるように設定しても良い。
【0101】
一方のリール20(1)から鉄筋結束機1Aまでの経路長と、他方のリール20(2)から鉄筋結束機1Aまでの経路長の差が大きいと、各リール20から鉄筋結束機1Aまでの間で引き出されるワイヤWの量の差が大きくなるため、各リール20に巻かれたワイヤWの残量の差が大きくなる。各リール20に巻かれたワイヤWの残量の差が大きくなると、リール20の径方向においてワイヤWの引き出される位置が異なり、また、ワイヤWを含めたリール20の質量の差が大きくなるため、2本のワイヤWを並列させて送りにくくなる。また、鉄筋結束機1AでワイヤWを正方向に送り、カール形成部5でワイヤWに巻き癖を付けて鉄筋Sに巻き回す動作で、ワイヤWのカール軌道が安定しない可能性がある。
【0102】
これに対し、一方のリール20(1)から鉄筋結束機1Aまでの経路長と、他方のリール20(2)から鉄筋結束機1Aまでの経路長の差を、鉄筋Sの1回の結束で必要なワイヤWの長さより短くなるように設定することで、一方のリール20(1)から鉄筋結束機1Aまでの経路長と、他方のリール20(2)から鉄筋結束機1Aまでの経路長の差を小さくできる。また、一方のリール20(1)から鉄筋結束機1Aまでの経路長と、他方のリール20(2)から鉄筋結束機1Aまでの経路長の差を、リール20の図示しない巻き芯部の周方向の長さよりも少なくなるように設定することでも、一方のリール20(1)から鉄筋結束機1Aまでの経路長と、他方のリール20(2)から鉄筋結束機1Aまでの経路長の差を小さくできる。
【0103】
一方のリール20(1)から鉄筋結束機1Aまでの経路長と、他方のリール20(2)から鉄筋結束機1Aまでの経路長の差を小さくできることで、各リール20に巻かれたワイヤWの残量の差が小さくなり、リール20の径方向においてワイヤWの引き出される位置が略同じとなり、また、ワイヤWを含めたリール20の質量の差が小さくなる。これにより、2本のワイヤWの間でワイヤWの経路が安定し、鉄筋結束機1Aの外部のリール20から、鉄筋結束機1AまでのワイヤWの送り経路の管理が容易になる。また、鉄筋結束機1Aで鉄筋Sの周囲にワイヤWを巻き回す際のワイヤWのカール軌道に影響を及ぼす要因を排除することができる。
【0104】
図4A、
図4Bに示す結束装置100Bでも、リール収容部200Bは、2個のリール20(1)、20(2)が、走行部110による本体部101の移動方向に対して左右に対称な位置に設けられる。また、
図6A、
図6Bに示す結束装置100Dでも、リール収容部200Dは、2個のリール20(1)、20(2)が、走行部110による本体部101の移動方向に対して左右に対称な位置に設けられる。これにより、リール20の回転軸の向きによらず、結束装置100Aと同様に、本体部101の左右方向における重量バランスの偏りを抑制することができる。
【0105】
更に、
図7A、
図7Bに示す結束装置100Eは、リール20の回転軸を縦向きとすることで、リール収容部200Eが、2個のリール20(1)、20(2)を
図1に示す仮想の中心線O1上または仮想の中心線O1の近傍に重ねて配置できる。これにより、重量物を結束装置100Eの左右方向の中心付近に集めることができ、本体部101の移動方向と直交する左右方向における重量バランスの偏りを抑制することができる。
【0106】
上述した各結束装置100A、100B、100C、100D、100Eは、環状の経路誘導部材21(21a)にワイヤWが通されることで、リール収容部200A、200B、200C、200D、200Eから鉄筋結束機1Aに至るワイヤWの送り経路が形成される。ワイヤWの経路は、直線状の箇所と、経路誘導部材21(21a)でワイヤWが曲がる箇所がある。
【0107】
このように、ワイヤWの送り経路に、経路誘導部材21(21a)によりワイヤWが曲げられる箇所が存在していると、ワイヤWが直線状とならずに曲がった状態となる所謂曲げ癖が付く。
【0108】
このため、2本のワイヤWの送り経路の間で、経路誘導部材21(21a)によりワイヤWが曲がる角度、ワイヤWが曲がる方向に差があると、経路誘導部材21(21a)を通過する際についた巻き癖により、2本のワイヤWの曲がる角度や曲がる方向の差異に起因して、2本のワイヤWを並列させて送りにくくなる。また、鉄筋結束機1AでワイヤWを正方向に送り、カール形成部5でワイヤWに巻き癖を付けて鉄筋Sに巻き回す動作で、ワイヤWのカール軌道が安定しない可能性がある。
【0109】
これに対し、
図5A、
図5Bに示す結束装置100Cは、リール収容部200Cに最も近い経路誘導部材21aに対し、各リール20(1)、20(2)を対称な位置に配置できる。これにより、一方のリール20(1)から引き出されて経路誘導部材21aを通るワイヤWと、他方のリール20(2)から引き出されて経路誘導部材21aを通るワイヤWとの間で、経路誘導部材21aによりワイヤWが曲がる角度、ワイヤWが曲がる方向の差を少なくできる。したがって、2本のワイヤWの間でワイヤWの経路が安定し、鉄筋結束機1Aの外部のリール20から、鉄筋結束機1AまでのワイヤWの送り経路の管理が容易になる。また、鉄筋結束機1Aで鉄筋Sの周囲にワイヤWを巻き回す際のワイヤWのカール軌道に影響を及ぼす要因を排除することができる。
【0110】
更に、結束装置100Cは、一方のリール20(1)から経路誘導部材21aまでのワイヤWの経路長と、他方のリール20(2)から経路誘導部材21aまでのワイヤWの経路長の差を小さくでき、一方のリール20(1)から鉄筋結束機1Aまでの経路長と、他方のリール20(2)から鉄筋結束機1Aまでの経路長に差を小さくできる。
【0111】
<他の実施の形態の結束装置の構成例>
図10Aは、他の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図、
図10Bは、他の実施の形態の結束装置の一例を示す上面図、
図10Cは、他の実施の形態の結束装置の一例を示す正面図である。
【0112】
他の実施の形態の結束装置100Fは、格子状に配設された鉄筋Sの交差箇所をワイヤWで結束する複数の鉄筋結束機1Aと、各鉄筋結束機1Aを、鉄筋Sの配設面に対して交差する略鉛直方向に結束位置と退避位置との間で移動させる複数の結束機移動部10Aを本体部101に備える。
【0113】
また、結束装置100Fは、各鉄筋結束機1Aで使用されるワイヤWが巻かれたリール20が収容されるリール収容部200Fを本体部101に備える。
【0114】
結束装置100Fは、本体部101の上面部にリール収容部200Fが設けられる。リール収容部200Fは、2本のワイヤWを鉄筋Sに巻き回して結束する1台の鉄筋結束機1Aに対し、それぞれ1本ずつのワイヤWが引き出し可能に巻かれた2個のリール20が収容され、2台の鉄筋結束機1Aに対し4個のリール20が収容される。
【0115】
リール収容部200Fは、1台の鉄筋結束機1Aに対応した2個のリール20が、矢印A1、A2で示す走行部110による本体部101の移動方向(直進)に対して交差する左右方向に並ぶ配置で収容される。また、リール収容部200Fは、1台の鉄筋結束機1Aに対応した2個ずつのリール20が、走行部110による本体部101の移動方向に対して左右に対称な位置に設けられる。詳細には、2個ずつのリール20は、本体部101の移動方向と直交する左右方向の中心を通り、本体部101の移動方向に沿って延伸する仮想の中心線O1に対して対称な位置に設けられる。更に、リール収容部200Fは、2個ずつのリール20が、本体部101の移動方向に対して交差する左右方向の両側に設けられる一対の走行部110のそれぞれ内側に設けられる。また、リール収容部200Fは、2個ずつのリール20が、回転の軸を鉛直方向に対して横向きとして、軸方向に沿って同軸上に並ぶ配置で回転可能に収容される。
【0116】
なお、リール収容部200Fにおいて、リール20の配置はこれら例に限るものではなく、例えば
図4に示すように、2個ずつのリール20が、回転の軸を鉛直方向に対して横向きとして、互いの軸方向が交差する向きで回転可能に収容される配置でも良い。また、
図5Aに示すように、2個ずつのリール20が、回転の軸を鉛直方向に対して横向きとし、かつ、回転の軸を本体部101の移動方向に対して傾斜した向きとして、軸方向に沿って同軸上に並ぶ配置で回転可能に収容される配置でも良い。更に、
図6Aに示すように、2個ずつのリール20が、回転の軸を鉛直方向に沿った縦向きとして、本体部101の移動方向に対して左右方向に並んで収容される配置でも良い。また、
図7Aに示すように、2個ずつのリール20が、回転の軸を鉛直方向に沿った縦向きとして、上下に重ねて収容される配置でも良い。これにより、結束装置100Fは、結束装置100A、100B、100C、100D、100Eと同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0117】
100A、100B、100C、100D、100E、100F・・・結束装置、101・・・本体部、110・・・走行部、200A、200B、200C、200D、200E・・・リール収容部、1A・・・鉄筋結束機(結束機構)、10A・・・結束機移動部、20・・・リール、21、21a・・・経路誘導部材、22・・・支持部材、W・・・ワイヤ