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特開2024-61456温度調整ユニットの製造方法及び温度調整ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061456
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】温度調整ユニットの製造方法及び温度調整ユニット
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/12 20060101AFI20240425BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240425BHJP
   B23K 11/14 20060101ALI20240425BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20240425BHJP
   F28D 1/047 20060101ALI20240425BHJP
   B21D 53/04 20060101ALI20240425BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
F28F3/12 D
B23K26/21 N
B23K11/14
B23K9/00 501H
F28D1/047 B
B21D53/04 C
B23K20/12 366
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169423
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 励一
【テーマコード(参考)】
3L103
4E081
4E167
4E168
【Fターム(参考)】
3L103AA01
3L103AA13
3L103DD13
3L103DD57
4E081YN10
4E167BG25
4E168BA21
(57)【要約】
【課題】確実に流体の漏れを防ぐことができ、短時間での施工が可能であり、さらに昇温炉のような大型で高価な設備が不要であり、かつ高い剥離強度、疲労強度が得られる流路を備える温度調整ユニットの製造方法及び温度調整ユニットを提供する。
【解決手段】温度調整ユニットの製造方法は、第1の金属板材11と第2の金属板材12のうち少なくとも一方に設けられた溝13の周囲を囲うように、接着剤14を被着させる接着剤被着工程と、接着剤14が第1の金属板材11と第2の金属板材12の間に介在するように、第1の金属板材11と第2の金属板材12とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、重ね合わされた第1の金属板材11及び第2の金属板材12に対し、少なくとも接着剤14が被着されておらず、かつ、溝13が成形加工されていない部分を、溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つにより接合する接合工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属板材と第2の金属板材のうち少なくとも一方に流体を通すための流路となる溝が成形加工され、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材を接合してなる、温度調整ユニットの製造方法であって、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材のうち少なくとも一方に設けられた前記溝の周囲を囲うように、接着剤を被着させる接着剤被着工程と、
前記接着剤が前記第1の金属板材と前記第2の金属板材の間に介在するように、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
重ね合わされた前記第1の金属板材及び前記第2の金属板材に対し、少なくとも、前記接着剤が被着されておらず、かつ、前記溝が成形加工されていない部分を、溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つにより接合する接合工程と、
を有する、温度調整ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記接合工程は、前記接着剤が固化する前に行われる、請求項1に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記接合工程は、レーザ溶接、アーク溶接、抵抗スポット溶接、抵抗シーム溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つにより行われる、請求項1又は2に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記接着剤は、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材との間に所定の間隔を確保する固形物を含有する、請求項1又は2に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項5】
前記接合工程は、片側抵抗スポット溶接により行われる、請求項1又は2に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項6】
前記接合工程が、抵抗スポット溶接により行われる場合において、
前記第1の金属板材における前記第2の金属板材との重ね合わせ面及び前記第2の金属板材における前記第1の金属板材との重ね合わせ面のうち少なくとも一方に対し、プレス加工又はポンチ打撃加工により前記重ね合わせ面に向かう方向に突出する凸部が形成され、
前記凸部を狙い位置として前記抵抗スポット溶接を行う、請求項1又は2に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項7】
前記接着剤被着工程の前において、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材との前記重ね合わせ面に、火炎照射処理、プライマー処理及びプラズマ照射処理のいずれかの表面改質処理を施す表面改質処理工程をさらに備える、請求項1又は2に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項8】
前記接合工程の後において、
前記流路の一部に、外部から前記流体を供給又は排出するためのアタッチメントを取り付ける取付け工程をさらに備える、請求項1又は2に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項9】
第1の金属板材と第2の金属板材のうち少なくとも一方に流体を通すための流路となる溝が成形加工され、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材を接合してなる、温度調整ユニットの製造方法であって、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材のうち少なくとも一方に設けられた前記溝の周囲を囲うように、接着剤を被着させる接着剤被着工程と、
前記接着剤が前記第1の金属板材と前記第2の金属板材の間に介在するように、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
重ね合わされた前記第1の金属板材及び前記第2の金属板材に対し、前記接着剤が固化する前に、少なくとも、前記接着剤が被着された部分を一部含み、かつ、前記溝が成形加工されていない部分を、溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つにより接合する接合工程と、
を有する、温度調整ユニットの製造方法。
【請求項10】
前記接合工程は、抵抗スポット溶接、抵抗シーム溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つにより行われる、請求項9に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項11】
前記接合工程において、形成される溶融接合部もしくは機械的接合部によって、前記接着剤の線幅のすべてが消失しないように、前記溶融接合部もしくは前記機械的接合部の径、並びに、前記溶融接合部もしくは前記機械的接合部の位置の少なくとも一方を決定する、請求項9又は10に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項12】
前記接着剤は、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材との間に所定の間隔を確保する固形物を含有する、請求項9又は10に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項13】
前記接合工程は、片側抵抗スポット溶接により行われる、請求項9又は10に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項14】
前記接合工程が、抵抗スポット溶接により行われる場合において、
前記第1の金属板材における前記第2の金属板材との重ね合わせ面及び前記第2の金属板材における前記第1の金属板材との重ね合わせ面のうち少なくとも一方に対し、プレス加工又はポンチ打撃加工により前記重ね合わせ面に向かう方向に突出する凸部が形成され、
前記凸部を狙い位置として前記抵抗スポット溶接を行う、請求項9又は10に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項15】
前記接着剤被着工程の前において、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材との前記重ね合わせ面に、火炎照射処理、プライマー処理及びプラズマ照射処理のいずれかの表面改質処理を施す表面改質処理工程をさらに備える、請求項9又は10に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項16】
前記接合工程の後において、
前記流路の一部に、外部から前記流体を供給又は排出するためのアタッチメントを取り付ける取付け工程をさらに備える、請求項9又は10に記載の温度調整ユニットの製造方法。
【請求項17】
第1の金属板材と第2の金属板材のうち少なくとも一方に流体を通すための流路となる溝が成形加工され、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材を接合してなる、温度調整ユニットであって、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材のうち少なくとも一方に設けられた前記溝の周囲を囲うように、接着剤が被着された状態で、かつ、前記接着剤が前記第1の金属板材と前記第2の金属板材の間に介在するように、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材とが重ね合わせられており、
重ね合わされた前記第1の金属板材及び前記第2の金属板材に対し、少なくとも、前記接着剤が被着されておらず、かつ、前記溝が成形加工されていない部分において溶融接合部もしくは機械的接合部が形成されている、温度調整ユニット。
【請求項18】
第1の金属板材と第2の金属板材のうち少なくとも一方に流体を通すための流路となる溝が成形加工され、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材を接合してなる、温度調整ユニットであって、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材のうち少なくとも一方に設けられた前記溝の周囲を囲うように、接着剤が被着された状態で、かつ、前記接着剤が前記第1の金属板材と前記第2の金属板材の間に介在するように、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材とが重ね合わせられており、
重ね合わされた前記第1の金属板材及び前記第2の金属板材に対し、少なくとも、前記接着剤が被着された部分を一部含み、かつ、前記溝が成形加工されていない部分において溶融接合部もしくは機械的接合部が形成されている、温度調整ユニット。
【請求項19】
前記流路の一部に、外部から前記流体を供給又は排出するためのアタッチメントが取り付けられている、請求項17又は18に記載の温度調整ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調整ユニットの製造方法及び温度調整ユニットに関し、特に、流体を媒体として熱交換するための温度調整ユニットの製造方法及び温度調整ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の代表的な温度調整ユニット100としては、温度調整ユニット100の単位体積当たりの接触面積を増やすべく、図12に示すように、金属パイプ101を往復経路状に加工して流路115を形成し、効率よく熱交換するようにしたシンプルな構造体(パイプ屈曲型温度調整ユニット)が知られている。また、図13に示すように、往復経路状に形成された金属パイプ101間にフィン状の金属板102を溶接して、熱交換効率の向上と、温度調整ユニット100の剛性向上を図った構造体(フィン付きパイプ屈曲型温度調整ユニット)も知られている。
【0003】
このような温度調整ユニットの製造手段としては、金属パイプを往復経路状に曲げ加工する手段や、直線状パイプの両端にU字形部品を接合する手段がある。金属パイプの曲げ加工だけであれば、流体が漏れるおそれがほとんどなく、また、U字形部品を接合する方式であっても、アーク溶接又はろう付け等の公知の溶接手段により高い接合品質を得ることができるため、品質的に高い信頼性が得られる。しかし、これらの方式では、薄く、長大で、複雑な流路を形成するのが難しく、製造コストが増大するという短所がある。これらの問題から、金属パイプではなく金属板に凸状の突起をプレス加工により形成し、平板又は同じく凸状の突起を有するプレス板と貼り合わせることで流路を形成する構造が提案されている(例えば、特許文献1又は2参照)。
【0004】
特許文献1又は2で開示される貼り合わせ構造の温度調整ユニットは、大面積の流路を短時間で安価に作ることができ、また流路の断面形状も真円である必要がなく、扁平形状とすることで薄厚化が容易である。一方、貼り合わせ構造の温度調整ユニットにおける最大の課題は、貼り合わせのための接合品質の確保にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-64132号公報
【特許文献2】特開2014-52147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1又は2では、ろう付け、溶接、接着など、あらゆる接合方法が適用可能と記載されている。しかしながら、接合品質確保のための要件が具体的に記載されていない。すなわち、これらの接合方法を単独で温度調整ユニットに適用した場合には、以下に示す品質上の課題がある。
【0007】
(a)ろう付け法
最も一般的な、炉内ろう付け法は、図14(a)及び(b)に示すように、プレス加工により凸状の突起111を形成した金属板110に、突起111の周囲、あるいは重ね合わせ面となる平坦部全体に金属板110よりも融点の低いろう材112を塗布し(図14(b)参照)、更に、図15(a)及び(b)に示すように、平板113、又はプレス加工により突起111が形成された他の金属板110を重ねた状態で、昇温炉114に挿入し、所定温度まで昇温させて、ろう材112を溶融させて金属結合により接合するものである。
【0008】
ろう付け法は、接合工程での欠陥が生じ難く、特にプレス成形された金属板110に穴があく危険性がないため、流体漏れの心配が極めて小さいのが最大の長所であり、実用化もされている。一方、昇温炉114に入れて、昇温、維持及び降温させる手間と時間の負担が非常に大きいのが短所である。また、昇温炉114には、バッチ式とベルトコンベアを用いた連続式があるが、どちらにしても設備負担が大きいという課題がある。
【0009】
(b)溶接法
溶接法は、図16(a)及び(b)並びに図17(a)及び(b)に示すように、貼り合わせる2枚の金属板110、113を重ねた後、流路115となる凸状の突起111の周囲を、レーザ溶接120、MIG(Metal Inert Gas)溶接又はMAG(Metal ActiveGas)溶接121、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接122、プラズマアーク溶接123等で線状に形成した溶融金属部125によって接合して、流体の漏れをシールする方法である。なお、溶接に際し、溶接材料(フィラーワイヤ)を加えることもある。また、摩擦撹拌接合法(FSW)124を用いて、融点以下の温度で接合する方法もある。
【0010】
溶接法は、昇温炉が不要であり、直交座標型又は多関節型の溶接ロボットを用いて施工でき、省スペースで工程的にシンプルである。しかし、流体リーク箇所となりうる溶接欠陥発生のリスクをゼロにすることは難しく、流路としての品質に懸念がある。特に、溶接ビードの始端や終端部分には溶込みが得られ難く、リーク欠陥が発生し易い。さらに、長い距離に対してレーザ溶接やプラズマアーク溶接のような高温熱源を使う場合は、熱変形が生じるおそれがある。また、FSWのような高圧を用いる場合は、塑性変形により温度調整ユニットとしての平面性が得られ難い問題もある。
【0011】
(c)接着法
接着法は、図18並びに図19(a)及び(b)に示すように、ディスペンサ116を用いて流路115となる凸状の突起111を囲むように、全周に亘って接着剤131を線状に塗布して接着させることで、流体が漏れるのをシールする方法である。接着剤131は、一般的に半練り状態(ジェル状)のため、貼り合わせの工程で形状が潰れる際に、確実に界面(接合面)に馴染む。そのため、溶接法よりもシール性能に優れている。一方、溶接法に比べて接合強度が低いため、高圧の流体に耐えられないという課題や、流体稼働のオンオフの繰返しに伴う耐長期疲労性に課題がある。
【0012】
また、接着剤の固化手段には、1液型の長時間室温保持型、又は短時間固化が可能な紫外線硬化型、高温硬化型、二液混合型などのタイプがあるが、いずれの接着剤も、塗布後すぐに金属板110、113を動かすと、金属板110、113が相対的に位置ずれする可能性があることから、ある程度の固化まではその場に保持しておかなければならない。なお、最も扱いやすく、シンプルな1液型の長時間室温保持型ではこの問題が顕著である。したがって、接着剤は硬化時間を含めると能率が悪いという課題がある。さらには、接着剤はシール性に優れるといっても、重ね合わせ時の圧力が部分的に強いと、接着剤が接合面から完全に排出されてしまい、シール性が完全に保証されないという課題もある。
【0013】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、確実に流体の漏れを防ぐことができ、短時間での施工が可能であり、さらに昇温炉のような大型で高価な設備が不要であり、かつ高い剥離強度、疲労強度が得られる流路を備える、温度調整ユニットの製造方法及び温度調整ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、温度調整ユニットの製造方法に係る下記[1]又は[2]の構成により達成される。
【0015】
[1] 第1の金属板材と第2の金属板材のうち少なくとも一方に流体を通すための流路となる溝が成形加工され、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材を接合してなる、温度調整ユニットの製造方法であって、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材のうち少なくとも一方に設けられた前記溝の周囲を囲うように、接着剤を被着させる接着剤被着工程と、
前記接着剤が前記第1の金属板材と前記第2の金属板材の間に介在するように、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
重ね合わされた前記第1の金属板材及び前記第2の金属板材に対し、少なくとも、前記接着剤が被着されておらず、かつ、前記溝が成形加工されていない部分を、溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合法のうち少なくとも一つにより接合する接合工程と、
を有する、温度調整ユニットの製造方法。
【0016】
[2] 第1の金属板材と第2の金属板材のうち少なくとも一方に流体を通すための流路となる溝が成形加工され、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材を接合してなる、温度調整ユニットの製造方法であって、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材のうち少なくとも一方に設けられた前記溝の周囲を囲うように、接着剤を被着させる接着剤被着工程と、
前記接着剤が前記第1の金属板材と前記第2の金属板材の間に介在するように、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
重ね合わされた前記第1の金属板材及び前記第2の金属板材に対し、前記接着剤が固化する前に、少なくとも、前記接着剤が被着された部分を一部含み、かつ、前記溝が成形加工されていない部分を、溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合法のうち少なくとも一つにより接合する接合工程と、
を有する、温度調整ユニットの製造方法。
【0017】
また、本発明の上記目的は、温度調整ユニットに係る下記[3]又は[4]の構成により達成される。
【0018】
[3] 第1の金属板材と第2の金属板材のうち少なくとも一方に流体を通すための流路となる溝が成形加工され、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材を接合してなる、温度調整ユニットであって、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材のうち少なくとも一方に設けられた前記溝の周囲を囲うように、接着剤が被着された状態で、かつ、前記接着剤が前記第1の金属板材と前記第2の金属板材の間に介在するように、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材とが重ね合わせられており、
重ね合わされた前記第1の金属板材及び前記第2の金属板材に対し、少なくとも、前記接着剤が被着されておらず、かつ、前記溝が成形加工されていない部分において溶融接合部及び機械的接合部のうち少なくとも一つが形成されている、温度調整ユニット。
【0019】
[4] 第1の金属板材と第2の金属板材のうち少なくとも一方に流体を通すための流路となる溝が成形加工され、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材を接合してなる、温度調整ユニットであって、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材のうち少なくとも一方に設けられた前記溝の周囲を囲うように、接着剤が被着された状態で、かつ、前記接着剤が前記第1の金属板材と前記第2の金属板材の間に介在するように、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材とが重ね合わせられており、
重ね合わされた前記第1の金属板材及び前記第2の金属板材に対し、少なくとも、前記接着剤が被着された部分を一部含み、かつ、前記溝が成形加工されていない部分において溶融接合部及び機械的接合部のうち少なくとも一つが形成されている、温度調整ユニット。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、確実に流体の漏れを防ぐことができ、短時間での施工が可能であり、さらに昇温炉のような大型で高価な設備が不要であり、かつ高い剥離強度、疲労強度を有する流路を備える、温度調整ユニットの製造方法及び温度調整ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、アタッチメントが設けられた本発明の第1実施形態に係る温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のA-A断面図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る温度調整ユニットの製造方法により形成される温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のB-B断面図である。
図3図3は、2枚の金属板材間に接着剤が介在した状態を示す図であって、(a)は、2枚の金属板材の加圧により被着された接着剤が接合面から排除される状態を示す断面図、(b)は、接着剤に含有する固形物により2枚の金属板材間に所定の間隔が確保される状態を示す断面図である。
図4図4は、一方の金属板材の重ね合わせ面にポンチ打撃によって点状突起を形成する工程を示す図であって、(a)は、一方の金属板材の重ね合わせ面にポンチ打撃によって点状突起を形成する前の状態を示す断面図、(b)は、ポンチ打撃により点状突起を形成した後の状態を示す断面図である。
図5図5は、接着剤が被着された金属板材に点状突起を有する他の金属板材を重ね合わせて金属板材同士を接合する工程を示す図であって、(a)は、接着剤が被着された金属板材に点状突起を有する他の金属板材を重ね合わせる状態を示す断面図、(b)は、抵抗スポット溶接法により金属板材同士を接合する状態を示す断面図、(c)は、金属板材同士が接合された状態を示す断面図である。
図6図6は、大型の温度調整ユニットの中央部付近を片側抵抗スポット溶接法により接合する状態を示す断面図である。
図7図7は、レーザ溶接により形成された線状の溶融接合部により金属板材同士が接合された温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のC-C断面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る温度調整ユニットの製造方法により形成される温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のD-D断面図である。
図9図9は、溶融接合部もしくは機械的接合部のサイズと接着剤の幅との関係を示す図であって、(a)は、接着剤の幅より大きい溶融接合部もしくは機械的接合部により接合された接合部の断面図、(b)は、接着剤の幅より小さい溶融接合部もしくは機械的接合部により接合された接合部の断面図、(c)は、接着剤の幅より大きい溶融接合部もしくは機械的接合部が接着剤の幅の片側に寄せられて接合された接合部の断面図である。
図10図10は、接着剤が被着された金属板材に点状突起を有する他の金属板材を重ね合わせて金属板材同士を接合する工程を示す図であって、(a)は、接着剤の被着位置に他の金属板材の点状突起を合わせて位置決めする状態を示す断面図、(b)は、点状突起により接着剤を圧し潰しながら抵抗スポット溶接法により接合する状態を示す断面図、図10(c)は、接合後の接合部の断面図である。
図11図11は、分岐する複雑な流路を有する温度調整ユニットの平面図である。
図12図12は、従来のパイプ屈曲型温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のE-E断面図である。
図13図13は、従来のフィン付きパイプ屈曲型温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のF-F断面図である。
図14図14は、ろう付け法で形成される温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のG-G断面図である。
図15図15は、接合面にろう材が被着された金属板を昇温炉内に挿入し、更に加熱して形成される温度調整ユニットの断面図である。
図16図16は、各種溶接及び摩擦撹拌接合により接合される温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のH-H断面図である。
図17図17は、図16に示す接合法により形成された温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のI-I断面図である。
図18図18は、一方の金属板材に接着剤が被着される状態を示す断面図である。
図19図19は、接着法により形成される温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のJ-J断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る温度調整ユニットの概略構造及び温度調整ユニットの製造方法に係る各実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
まず、本発明の一実施形態に係る温度調整ユニットの概略構造について、図1(a)及び(b)を参照して説明する。
【0024】
<温度調整ユニットの概略構造>
図1は、アタッチメントが設けられた本発明の第1実施形態に係る温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のA-A断面図である。図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態の温度調整ユニット10は、流路16となるジグザグ状の連続した溝13がプレス加工により形成された第1の金属板材11と、平板状の第2の金属板材12が重ね合わされ、該第1の金属板材11と第2の金属板材12の重ね合わせ面11a、12a同士が、接着剤14、並びに、溶融接合部もしくは機械的接合部15により接合されて形成されている。なお、接着剤14は、溝13の周囲を囲むように連続して線状に形成されている。また、溶融接合部もしくは機械的接合部15は、溝13及び接着剤14の被着部を除いた部位に複数点在して形成されている。
【0025】
上記したように、第1の金属板材11と第2の金属板材12の重ね合わせ面11a、12a部同士を接合することで、溝13によって、冷媒などの流体を通すためのジグザグ状の流路16が容易に形成される。また、第1の金属板材11と第2の金属板材12が接合された後、流路16の両端において、流路16内に流体を供給するための、又は流路16を流れる流体を外部に排出するためのパイプ状のアタッチメント17が取り付けられる。なお、説明の都合上、以下の各実施形態及び前述した従来例においては、アタッチメント17の図示及び説明を省略するものとする。
【0026】
また、上記の実施形態では、第2の金属板材12は平板状としたが、平板状板に限定されず、第1の金属板材11の溝13に対応して他の溝が形成された金属板材とすることもできる。さらに、第1の金属板材11と第2の金属板材12の溝形状は同じであってもよく、異なる形状であってもよい。
【0027】
このように、接着剤14を溝13の周囲を囲むように連続して形成することで、接着剤14の持つ高いシール性、低歪み性などの特性を生かして高いシール性能を有する流路16が得られる。また、各種溶接法、摩擦撹拌接合法、各種機械的接合法で形成する、溶融接合部もしくは機械的接合部15により、第1の金属板材11と第2の金属板材12の重ね合わせ面11a、12a同士を接合することで、接着剤14の弱点である剥離強度、疲労強度に対応する機能を付与することができる。また、溶融接合部もしくは機械的接合部15で接合することで、接着剤14が固化する前に次の工程に移動させることができ、高いせん断強度と共に、早い施工速度の実現が可能となる。さらに、各種溶接法、摩擦攪拌接合法で不可避的に発生し、完全排除が困難な溶接割れ欠陥が発生したとしても、接着部の外側に位置するので、リーク原因となることを避けることができる。
【0028】
<第1実施形態>
続いて、本発明の第1実施形態に係る温度調整ユニットの製造方法について、図2図7を参照して説明する。
【0029】
(温度調整ユニットの製造方法)
図2は、本発明の第1実施形態に係る温度調整ユニットの製造方法により形成される温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のB-B断面図である。本実施形態に係る温度調整ユニット10の製造方法は、図2(a)及び(b)に示すように、プレス加工により流路16となるジグザグ状の溝13が形成された第1の金属板材11の重ね合わせ面11aに、溝13の全周を囲うように、接着剤14を切れ目なく線状に被着させる(接着剤被着工程)。
【0030】
なお、接着剤被着工程の前には、第1の金属板材11と第2の金属板材12の重ね合わせ面11a、12aにおける接着剤14の被着部付近に付着する埃や油分、水分の除去は当然のことながら、更に、火炎照射処理、水性プライマー処理及び大気圧プラズマ照射処理などの表面改質処理(表面改質処理工程)を施しておくことが望ましい。これにより、第1の金属板材11と第2の金属板材12の重ね合わせ面11a、12aの表面が活性化し、接着剤14と第1の金属板材11及び第2の金属板材12の被着強度が向上してシール性能が向上する。
【0031】
次いで、別途用意した平板状の第2の金属板材12を、接着剤14が第1の金属板材11と第2の金属板材12の間に介在するようにして第1の金属板材11に重ね合わせる(重ね合わせ工程)。
【0032】
そして、第1の金属板材11と第2の金属板材12の接着剤14が被着されておらず、かつ、溝13が成形加工されていない部分を、一例として、一対の溶接電極31、32で挟持し、第1の金属板材11と第2の金属板材12を加圧しながら電圧を印加して、抵抗スポット溶接126により溶融接合部15を形成して、第1の金属板材11と第2の金属板材12とを接合する(接合工程)。そして、接合位置を変えながら、溶融接合部15により、第1の金属板材11と第2の金属板材12とを接合する操作を繰り返し行う。
【0033】
なお、本実施形態における接合工程は、接着剤14が被着されていない部分に溶融接合部もしくは機械的接合部15を形成するので、接着剤14が固化する前であってもよく、また固化後であってよい。これに対し、接着剤14が被着された部分において、溶接により溶融接合部15を形成しようとすると、接着剤14が固化前であればアーク溶接やレーザ溶接において、また接着剤14が固化後では全ての溶接法において、気孔欠陥の発生、通電不良による溶接不能、撹拌不良といった問題が発生するおそれがある。このため、接着剤14の被着部への溶接は極力避ける必要がある。ただし、金属板材を加圧しながら溶接する抵抗溶接及び摩擦撹拌接合(FSW)は、接着剤14の固化前であれば、上記した問題が発生しないため適用可能であることから、これに関しては後述する第2実施形態で詳述する。
【0034】
このように、第1の金属板材11と第2の金属板材12とを接合して水密の流路16を形成した後、流路16の両端部に、外部から流体を供給又は排出するためのアタッチメント17(図1参照)を取り付ける(アタッチメント取付け工程)。
【0035】
アタッチメント17は、例えば、ゴムホースや金属管などを介してポンプなどに接続される。アタッチメント17の取り付け方法は特に問わないが、一般的な方法としては、接合時において流路16の入口及び出口に穴をあける、又は、接合工程の前に予め穴をあけておき、短尺のパイプ状アタッチメント17を、溶接、機械的かしめ、接着などの方法で取り付ける方法がある。
【0036】
溶融接合部15を形成する溶接方法としては、溶接時に第1の金属板材11と第2の金属板材12を加圧しながら接合する抵抗溶接(抵抗スポット溶接及び抵抗シーム溶接)及び摩擦撹拌接合(FSW)と、溶接時に第1の金属板材11と第2の金属板材12を加圧せずに接合するレーザ溶接、アーク溶接(MAG溶接、MIG溶接及びTIG溶接)及びプラズマアーク溶接があるが、本実施形態に係る温度調整ユニットの製造方法は、いずれの接合方法も適用可能である。なお、本明細書において、摩擦撹拌接合(FSW)により得られる接合部もまた、溶融接合部に含まれるものとする。
【0037】
また、機械的接合部15を形成する機械的接合法としては、ブラインドリベットやパンチリベットなどの各種リベット、メカニカルクリンチ、SPR(Self-Piercing Rivet)、ネジ、ドリルネジ、ボルト・ナットといった手段を指し、いずれも点接合かつ基本的に加圧を伴う室温プロセスであることが共通であって、いずれの接合方法も適用可能である。なお、上記のうち、ブラインドリベットやボルト・ナットを用いる場合、接合対象である第1の金属板材11及び第2の金属板材12に対し、事前に貫通穴を設けておく必要がある。
【0038】
ここで、第1の金属板材11と第2の金属板材12を加圧しながら溶接する抵抗スポット溶接、抵抗シーム溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合の場合、図3(a)に示すように、第1の金属板材11と第2の金属板材12の間に被着された接着剤14が、両金属板材11、12の加圧により、第1の金属板材11と第2の金属板材12間の隙間Cが狭くなることで押し出され、被着された接着剤14に薄肉部や切れ目が生じる可能性があり、シール性能の低下が懸念される。
【0039】
しかし、図3(b)に示すように、被着される接着剤14にガラス、セラミック、金属、樹脂など小径の固形物18を含有させることで、第1の金属板材11と第2の金属板材12との間に所定の間隔h、すなわち、適度な厚さの接着剤14を確保することができ、良好なシール性が確保できる。
【0040】
固形物18の材質としては、溶接時の加圧に耐える硬度があれば特に限定されない。また、固形物18のサイズについては、大きくなるほど接着剤塗布ノズルへの詰まりが顕著になる。具体的には、直径0.1~0.5mm程度が、被着性、接着強度及びシール性の確保のバランスから好適である。
【0041】
上記したように、接着剤14が適度な厚さを有することはシール性確保の観点から重要である。しかし、接着剤14に適度な厚さを持たせると、第1の金属板材11と第2の金属板材12が接触しておらず、抵抗スポット溶接を用いる場合に、溶接の品質を保証し難いという課題がある。すなわち、高粘度の接着剤、さらには接着剤中に小径の固形物を含有させた場合、また加圧力の小さい片側抵抗スポット溶接を用いると、通電前に第1の金属板材11と第2の金属板材12がしっかりと接触した状態にするのが難しい場合があり、最悪の場合、未接触となって全く溶接できないおそれがある。
【0042】
そこで、図4(a)及び(b)に示すように、第1の金属板材11の表面をポンチ35で打撃して、重ね合わせ面11aに第2の金属板材12に向かって突出する凸部19を形成しておく。そして、図5(a)及び(b)に示すように、接着剤14が線状に被着された第2の金属板材12に第1の金属板材11を重ね合わせて、第1の金属板材11(凸部19)と第2の金属板材12を確実に接触させた状態で、凸部19を狙い位置として抵抗スポット溶接を行う。なお、図4(b)や図5(a)で示す凸部19の高さHは、図5(c)で示す溶接後の板間隙間h、すなわち、接着剤固化時の厚さと等価であるが、これより高すぎても溶接時に凸部19が溶融して容易に潰れるので問題は無い。具体的には、0.5~2.0mm程度の高さが好適である。
【0043】
このように抵抗スポット溶接することで、被着された固化前の接着剤14が、押し潰されて所定の厚さhを維持しながら横に広がると共に、第1の金属板材11と第2の金属板材12は、溶融接合部15により強固に接合されて、シール性と共に溶接品質が確保される。一方、固化後に抵抗スポット溶接する場合でも、固化接着剤厚さにほぼ等しい板間ギャップが形成されることがほぼ必然となるが、ポンチ35の存在によって溶接部だけは金属接触を容易に得ることができ、抵抗スポット溶接が可能、かつその品質を安定させることができる。
【0044】
また、図6に示すように、面積が大きい温度調整ユニット10を、抵抗スポット溶接、抵抗シーム溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つにより、点状の溶融接合部もしくは機械的接合部15を形成して接合する場合、温度調整ユニット10中央部の接合個所へアクセスさせるために、C型クランプのサイズが巨大化し、扱いづらい、設備コストが増大する、C型クランプを搭載するロボットが大型になるなどの問題がある。
【0045】
一方、アーク溶接やレーザ溶接は、C型クランプが不要であり大面積の温度調整ユニット10に容易に対応できる利点を有するが、溶接時の加圧機能を有しないことから、接着工程後の貼り合わせのためのプレス機能を有していない。これらの観点から、スポット溶接の一種である片側抵抗スポット溶接127は、C型クランプを必要とせず、かつ加圧機能を有するため、面積が大きい温度調整ユニット10を製造するのに好適である。
【0046】
なお、片側抵抗スポット溶接は、一般的なC型クランプを用いるスポット溶接法と比べると、(a)溶接部径の安定性が劣ること、(b)大電流が流せないこと、(c)加圧力が低いこと、(d)通電経路の長さが変わることから、溶接位置が溶接部径に影響を及ぼすといったことが懸念される。しかし、本実施形態において溶接を行う目的は、接着剤の補剛であって、接合部には主体的な品質保証が要求されないので、十分適用することができる。
【0047】
(変形例)
続いて、第1実施形態に係る温度調整ユニットの製造方法の変形例について説明する。図7は、レーザ溶接により形成された線状の溶融接合部により金属板材同士が接合された温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のC-C断面図である。第1実施形態の変形例の温度調整ユニット10は、図2に示す第1実施形態の温度調整ユニット10の製造方法と同様に、プレス加工により流路16となるジグザグ状の連続した溝13が形成された第1の金属板材11の重ね合わせ面11aに、溝13の全周を囲うように、接着剤14を切れ目なく線状に被着させる(接着剤被着工程)。
【0048】
次いで、別途用意した平板状の第2の金属板材12を、接着剤14が第1の金属板材11と第2の金属板材12の間に介在するようにして第1の金属板材11に重ね合わせる(重ね合わせ工程)。
【0049】
そして、第1の金属板材11と第2の金属板材12の接着剤14が被着されておらず、かつ、溝13が成形加工されていない部分を、一例として、レーザ溶接120により線状の溶融接合部15を形成して第1の金属板材11と第2の金属板材12とを接合する(接合工程)。接合工程は、接着剤14が固化する前であっても、固化後であってよく、また、線状の溶融接合部15は、連続していても、複数に分割形成されてもよい。なお、図7(a)及び(b)は、分割形成された例を示している。また、線状の溶融接合部15は、レーザ溶接120以外に、抵抗シーム溶接128によって形成してもよい。
【0050】
第1の金属板材11と第2の金属板材12とを接合した後、流路16の両端部に、外部から流体を供給又は排出するための図示しないアタッチメント17を取り付ける(取付け工程)。その他の製造方法及び作用は、第1実施形態の温度調整ユニットの製造方法と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0051】
(第1実施形態の作用効果)
以上説明したように、第1実施形態の温度調整ユニットの製造方法において、レーザ溶接、アーク溶接(MAG,MIG,TIG,プラズマアーク)、抵抗溶接(抵抗スポット溶接、抵抗シーム溶接)、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つを用いて金属板材を接合している。これらの接合法は、金属の接合法として一般的に用いられており、その接合部は高い強度と信頼性を持つ。特に、接着剤やろう付け法といった母材を溶かさない接合法に対して、母材同士が溶け込む、もしくは物理的にかしめるといった、これらの接合法は高い剥離強度を発揮する。そこで、これらの接合法を、接着剤の被着によりシール性能を持たせた流路に適用することで、流路に発生する剥離応力を溶融接合部もしくは機械的接合部15が受け持つことで、接着剤の剥離を確実に防止することができる。
【0052】
また、接着剤が固化するまでの間に金属板材を物理的に動かすと、容易に金属板材が相対的に位置ずれを起こしてしまう問題に対しても、溶接法、摩擦撹拌接合法あるいは機械的接合法により、金属板材の位置を固定することで解決できる。
【0053】
さらには、高強度な接着剤は粘性が高いことが多く、単に金属板材同士を重ね合わせるだけでは、接着剤の固化前であっても容易には潰れず、接着剤の上に金属板材が乗っているだけの状態になってしまう可能性がある。したがって、確実な溶接を行うためには、接着剤と金属板材の接触面積を増やすために加圧する必要がある。抵抗スポット溶接、抵抗シーム溶接、摩擦撹拌接合、機械的接合といった加圧機能を有する接合方法であれば、別途プレス機を用意する必要がない。一方、これらの加圧機能を過度に作用させると、作業能率が低下するだけでなく、熱歪や塑性歪が加わって仕上げ精度(主に平坦性)が低下して、接着剤の持つ長所を生かせなくなるおそれがある。したがって、これらの溶接あるいは機械的接合による接合工程は、温度調整ユニットの大きさや流路形状に応じて必要最低限とするのが望ましい。
【0054】
また、接着剤が被着されておらず、かつ溝以外の部分において、溶融接合部で接合する溶接法あるいは機械的接合部で接合する機械的接合法を接着剤と併用することで、流路の確実なシール性能が確保され、かつ金属板材の位置確定と共に必要な剥離強度を担保することができる。
【0055】
また、本実施形態の温度調整ユニットの製造方法によれば、図11に示すように、流路16の途中で分岐や合流する複雑な流路16を有する温度調整ユニット10であっても、複雑な形状の溝13をプレス加工により形成することで、容易、かつ短時間で形成でき、流路16の形状が制約されることがない。
【0056】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る温度調整ユニットの製造方法について図8図10を参照して説明する。
【0057】
(温度調整ユニットの製造方法)
第2実施形態に係る温度調整ユニットの製造方法は、溶融接合部あるいは機械的接合部の形成が接着剤の固化前であり、かつ、接着剤が被着された部分を一部含んで溶融接合部あるいは機械的接合部が形成される点において、第1実施形態に係る温度調整ユニットの製造方法と異なる。また、接合工程は、金属板材の加圧機能を有する抵抗スポット溶接、抵抗シーム溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合部のうちから選択される必要がある。すなわち、加圧機能を有しないレーザ溶接、アーク溶接(MAG溶接,MIG溶接,TIG溶接,プラズマアーク溶接)は、適用できない。
【0058】
なお、以下の説明では、第1実施形態と同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略するものとする。
【0059】
図8は、本発明の第2実施形態に係る温度調整ユニットの製造方法により形成される温度調整ユニットの図であって、(a)は、該温度調整ユニットの平面図、(b)は、(a)のD-D断面図である。本実施形態の温度調整ユニットの製造方法は、まず、図8(a)に示すように、プレス加工により流路16となるジグザグ状の連続した溝13が形成された第1の金属板材11の重ね合わせ面11aに、第1の金属板材11と第2の金属板材12とを重ね合わせたとき、溝13の全周が接着剤14で囲われるように、接着剤14を第2の金属板材12の重ね合わせ面12aに切れ目なく線状に被着させる(接着剤被着工程)。
【0060】
次いで、第1の金属板材11と、第2の金属板材12に被着された接着剤14とを位置合わせをしながら、第1の金属板材11と第2の金属板材12を重ね合わせる(重ね合わせ工程、図8(b)及び図10(a)参照)。
【0061】
そして、図8(b)及び図10(b)に示すように、接着剤14の固化前、すなわち接着剤14が液状又はジェル状の間に、接着剤14が被着された部分、かつ、溝13が成形加工されていない部分を、溶接電極31で押圧しながら電圧を印加して、一例として、片側抵抗スポット溶接により溶融接合部15を形成し、第1の金属板材11と第2の金属板材12とを接合する。
【0062】
ここで、本実施形態においても、上記第1実施形態(図4(a)及び(b)参照)で示したのと同様、第1の金属板材11の表面をポンチ35で打撃して、重ね合わせ面11aに第2の金属板材12に向かって突出する凸部19を形成しておくのであってもよい。なお、図10(a)~(c)では、第1の金属板材11に凸部19が形成された場合のケースを示しているが、第2実施形態もまた第1実施形態と同様、第1の金属板材11の表面をポンチ35で打撃して、重ね合わせ面11aに第2の金属板材12に向かって突出する凸部19を形成しておく形態に限定されないことは言うまでもない。
【0063】
なお、片側抵抗スポット溶接の代わりに一般的な抵抗スポット溶接、抵抗シーム溶接、摩擦攪拌接合、機械的接合としても良い(接合工程)。機械的接合法の中では、貫通穴が事前に必要となるボルト・ナットや一部のリベットはその貫通穴から接着剤が漏れ出て作業性や製品品質を悪化させることがあるので、SPRやメカニカルクリンチといった貫通穴があかない工法を選択することが望ましい。通電しない摩擦攪拌接合や機械的接合では凸部を設ける効果はない。
【0064】
一例として抵抗スポット溶接を用いた接合工程においては、第1の金属板材11及び第2の金属板材12が、板厚方向に加圧されるので、第1の金属板材11が、第2の金属板材12に被着された固化前の接着剤14内に侵入して接着剤14を横方向に押し出すことで、第1の金属板材11が第2の金属板材12の重ね合わせ面12aに確実に接触する(図10(b)参照)。
【0065】
そして、第1の金属板材11と第2の金属板材12との間に電圧を印加して溶融接合部15を形成し、第1の金属板材11と第2の金属板材12とを接合する(図10(c)参照)。
【0066】
その後、接合位置を変えながら、接着剤14の被着部を一部含む部分に溶融接合部15を形成して第1の金属板材11と第2の金属板材12とを接合する操作を繰り返し行う。
【0067】
(第2実施形態の作用効果)
本実施形態の温度調整ユニットの製造方法によれば、金属板材11、12の加圧機能を有する抵抗スポット溶接、抵抗シーム溶接及び摩擦撹拌接合、機械的接合が適用され、接合部における固化前の接着剤14を押し出して接合するので、接着剤14の被着部にも溶融接合部あるいは機械的接合部15を形成して接合できる。
【0068】
しかし、図9(a)に示すように、溶融接合部あるいは機械的接合部15の径Dが、接着剤14の線幅(被着部の幅)Wより大きく、かつ溶融接合部あるいは機械的接合部15が線幅Wの全幅を横断するように形成されると、接着剤14のシール性能が消失して流体がリークする原因となり得る。このため、溶融接合部あるいは機械的接合部15の径Dは、図9(b)に示すように、接着剤14の線幅Wより小さくするか、図9(c)に示すように、溶融接合部あるいは機械的接合部15が、線幅Wの一部に掛かり、被着部が残るように溶融接合部あるいは機械的接合部15の形成位置を調整することが好ましい。すなわち、接合工程において、形成される溶融接合部あるいは機械的接合部15によって接着剤14の線幅Wのすべてが消失しないように、溶融接合部あるいは機械的接合部15の径D及び溶融接合部あるいは機械的接合部15の位置の少なくとも一方を決定する必要がある。
【0069】
その他の製造方法及び作用は、第1実施形態の温度調整ユニットの製造方法と同様であるため説明を省略する。
なお、第1実施形態で説明したように、機械的接合部15を形成する機械的接合法は、いずれも点接合かつ基本的に加圧を伴う室温プロセス(すなわち、冷間プロセス)であることから、第2実施形態のような、接着剤が被着された部分を一部含んで機械的接合部が形成されることに支障はない。
【0070】
また、本実施形態の温度調整ユニットの製造方法によれば、図11に示すように、流路16の途中で分岐や合流する複雑な流路16を有する温度調整ユニット10であっても、複雑な形状の溝13をプレス加工により形成することで、容易、かつ短時間で形成でき、流路16の形状が制約されることがない。
【0071】
なお、本発明の一実施形態に係る温度調整ユニットの概略構造、本発明の第1実施形態に係る温度調整ユニットの製造方法及びその変形例、並びに、本発明の第2実施形態に係る温度調整ユニットの製造方法について説明してきたが、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0072】
上記で説明した温度調整ユニットは、例えば、EV用バッテリーケースの温度調整パネル、床暖房システム、冷凍・冷蔵庫、大型コンピュータの冷却装置、水族館等での水槽の温度調整器などに適用できる。
【0073】
以上のとおり、本明細書には次の事項が開示されている。
【0074】
(1) 第1の金属板材と第2の金属板材のうち少なくとも一方に流体を通すための流路となる溝が成形加工され、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材を接合してなる、温度調整ユニットの製造方法であって、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材のうち少なくとも一方に設けられた前記溝の周囲を囲うように、接着剤を被着させる接着剤被着工程と、
前記接着剤が前記第1の金属板材と前記第2の金属板材の間に介在するように、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
重ね合わされた前記第1の金属板材及び前記第2の金属板材に対し、少なくとも、前記接着剤が被着されておらず、かつ、前記溝が成形加工されていない部分を、溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つにより接合する接合工程と、
を有する、温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、接着剤の有する高いシール性能により確実に流体の漏れを防ぐことができ、さらに溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つの有する高い剥離強度、疲労強度により信頼性の高い流路を備える温度調整ユニットの製造が可能となる。
【0075】
(2) 前記接合工程は、前記接着剤が固化する前に行われる、(1)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、第1の金属板材と第2の金属板材との間に接着剤を確実に介在させることができ、高いシール性能が得られる。
【0076】
(3) 前記接合工程は、レーザ溶接、アーク溶接、抵抗スポット溶接、抵抗シーム溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つにより行われる、(1)又は(2)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、従来の各種溶接方法、摩擦撹拌方法、機械的接合方法を用いて、溶接品質の信頼性が高い温度調整ユニットを製造できる。
【0077】
(4) 前記接着剤は、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材との間に所定の間隔を確保する固形物を含有する、(1)又は(2)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、第1の金属板材と第2の金属板材との間に所定の厚さの接着剤を介在させることができ、高いシール性能が得られる。
【0078】
(5) 前記接合工程は、片側抵抗スポット溶接により行われる、(1)又は(2)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、比較的小型の溶接装置により、大型の温度調整ユニットの中央部も容易に接合できる。
【0079】
(6) 前記接合工程が、抵抗スポット溶接により行われる場合において、
前記第1の金属板材における前記第2の金属板材との重ね合わせ面及び前記第2の金属板材における前記第1の金属板材との重ね合わせ面のうち少なくとも一方に対し、プレス加工又はポンチ打撃加工により前記重ね合わせ面に向かう方向に突出する凸部が形成され、
前記凸部を狙い位置として前記抵抗スポット溶接を行う、(1)又は(2)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、一方の金属板材の凸部と他方の金属板材との間の接触を確保することができ、抵抗スポット溶接により金属板材同士を確実に接合できる。
【0080】
(7) 前記接着剤被着工程の前において、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材との前記重ね合わせ面に、火炎照射処理、プライマー処理及びプラズマ照射処理のいずれかの表面改質処理を施す表面改質処理工程をさらに備える、(1)又は(2)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、表面改質処理により金属板材と接着剤の被着強度が向上してシール性能が向上する。
【0081】
(8) 前記接合工程の後において、
前記流路の一部に、外部から前記流体を供給又は排出するためのアタッチメントを取り付ける取付け工程をさらに備える、(1)又は(2)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、流路に流体を供給又は排出するためのアタッチメントを配設できる。
【0082】
(9) 第1の金属板材と第2の金属板材のうち少なくとも一方に流体を通すための流路となる溝が成形加工され、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材を接合してなる、温度調整ユニットの製造方法であって、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材のうち少なくとも一方に設けられた前記溝の周囲を囲うように、接着剤を被着させる接着剤被着工程と、
前記接着剤が前記第1の金属板材と前記第2の金属板材の間に介在するように、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
重ね合わされた前記第1の金属板材及び前記第2の金属板材に対し、前記接着剤が固化する前に、少なくとも、前記接着剤が被着された部分を一部含み、かつ、前記溝が成形加工されていない部分を、溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つにより接合する接合工程と、
を有する、温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、接着剤が固化する前に接合することで、接着剤が被着された部分であっても、第1の金属板材と第2の金属板材とを溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つにより接合できる。
【0083】
(10) 前記接合工程は、抵抗スポット溶接、抵抗シーム溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つにより行われる、(9)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、接着剤が被着された部分であっても、抵抗スポット溶接、抵抗シーム溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合のうち少なくとも一つにより第1の金属板材と第2の金属板材とを確実に接合できる。
【0084】
(11) 前記接合工程において、形成される溶融接合部もしくは機械的接合部によって、前記接着剤の線幅のすべてが消失しないように、前記溶融接合部もしくは前記機械的接合部の径、並びに、前記溶融接合部もしくは前記機械的接合部の位置の少なくとも一方を決定する、(9)又は(10)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、第1の金属板材と第2の金属板材との間を接着剤により確実にシールできる。
【0085】
(12) 前記接着剤は、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材との間に所定の間隔を確保する固形物を含有する、(9)又は(10)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、第1の金属板材と第2の金属板材との間に所定の厚さの接着剤を介在させることができ、高いシール性能が得られる。
【0086】
(13) 前記接合工程は、片側抵抗スポット溶接により行われる、(9)又は(10)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、比較的小型の溶接装置により、大型の温度調整ユニットの中央部も容易に接合できる。
【0087】
(14) 前記接合工程が、抵抗スポット溶接により行われる場合において、
前記第1の金属板材における前記第2の金属板材との重ね合わせ面及び前記第2の金属板材における前記第1の金属板材との重ね合わせ面のうち少なくとも一方に対し、プレス加工又はポンチ打撃加工により前記重ね合わせ面に向かう方向に突出する凸部が形成され、
前記凸部を狙い位置として前記抵抗スポット溶接を行う、(9)又は(10)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、接着剤が被着された部分であっても、一方の金属板材の凸部と他方の金属板材との間の接触を確保することができ、抵抗スポット溶接により金属板材同士を確実に接合できる。
【0088】
(15) 前記接着剤被着工程の前において、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材との前記重ね合わせ面に、火炎照射処理、プライマー処理及びプラズマ照射処理のいずれかの表面改質処理を施す表面改質処理工程をさらに備える、9)又は(10)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、金属板材と接着剤の被着強度が向上してシール性能が向上する。
【0089】
(16) 前記接合工程の後において、
前記流路の一部に、外部から前記流体を供給又は排出するためのアタッチメントを取り付ける取付け工程をさらに備える、(9)又は(10)に記載の温度調整ユニットの製造方法。
この構成によれば、流路に流体を供給又は排出するためのアタッチメントを配設できる。
【0090】
(17) 第1の金属板材と第2の金属板材のうち少なくとも一方に流体を通すための流路となる溝が成形加工され、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材を接合してなる、温度調整ユニットであって、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材のうち少なくとも一方に設けられた前記溝の周囲を囲うように、接着剤が被着された状態で、かつ、前記接着剤が前記第1の金属板材と前記第2の金属板材の間に介在するように、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材とが重ね合わせられており、
重ね合わされた前記第1の金属板材及び前記第2の金属板材に対し、少なくとも、前記接着剤が被着されておらず、かつ、前記溝が成形加工されていない部分において溶融接合部もしくは機械的接合部が形成されている、温度調整ユニット。
この構成によれば、接着剤の有する高いシール性能により確実に流体の漏れを防ぐことができ、さらに溶接、摩擦撹拌接合及び機械的接合の有する高い剥離強度、疲労強度により信頼性の高い流路を備える温度調整ユニットを形成できる。
【0091】
(18) 第1の金属板材と第2の金属板材のうち少なくとも一方に流体を通すための流路となる溝が成形加工され、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材を接合してなる、温度調整ユニットであって、
前記第1の金属板材と前記第2の金属板材のうち少なくとも一方に設けられた前記溝の周囲を囲うように、接着剤が被着された状態で、かつ、前記接着剤が前記第1の金属板材と前記第2の金属板材の間に介在するように、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材とが重ね合わせられており、
重ね合わされた前記第1の金属板材及び前記第2の金属板材に対し、少なくとも、前記接着剤が被着された部分を一部含み、かつ、前記溝が成形加工されていない部分において溶融接合部もしくは機械的接合部が形成されている、温度調整ユニット。
この構成によれば、確実に流体の漏れを防ぐことができ、さらに高い剥離強度、疲労強度を有する流路を備える温度調整ユニットが形成できる。
【0092】
(19) 前記流路の一部に、外部から前記流体を供給又は排出するためのアタッチメントが取り付けられている、(17)又は(18)に記載の温度調整ユニット。
この構成によれば、流路の外部からアタッチメントを介して温度調整ユニットに流体を供給又は排出することができる。
【符号の説明】
【0093】
10 温度調整ユニット
11 第1の金属板材
11a、12a 重ね合わせ面
12 第2の金属板材
13 溝
14 接着剤
15 溶融接合部もしくは機械的接合部
16 流路
17 アタッチメント
18 固形物
19 凸部
120 レーザ溶接
121 MIG、MAG溶接(アーク溶接)
122 TIG溶接(アーク溶接)
123 プラズマアーク溶接(アーク溶接)
124 摩擦撹拌接合(FSW)
126 抵抗スポット溶接
127 片側抵抗スポット溶接
128 抵抗シーム溶接
D 溶融接合部もしくは機械的接合部の径
h 板間隙間(第1の金属板材と第2の金属板材間の所定の間隔)
W 被着部幅(接着剤の線幅)
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