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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061470
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】電流刺激装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169441
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】591032518
【氏名又は名称】伊藤超短波株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】今泉 真之介
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ01
4C053JJ05
4C053JJ18
4C053JJ24
(57)【要約】
【課題】電気刺激を付与する電流刺激装置において、電流を付与する電極の表面コート層の劣化を抑制し、皮膚面における障害を防止し、治療効率を向上させ、治療コストを抑制する機能を備えた装置を提供する。
【解決手段】本発明に基づく電流刺激装置は、電気刺激を付与する電流刺激装置であって、電気刺激を付与する治療電流を出力する複数の電極が接続される複数の出力端子と、電極と出力端子を接続するケーブルと、治療電流を生成する波形生成部と、波形生成部を制御する制御部を備えるとともに、波形生成部は、電気刺激が出力されないときは、出力端子間を接続する回路部を備え、前記接続は治療電流を構成するパルス毎に実行されることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気刺激を付与する電流刺激装置であって、
前記電気刺激を付与する治療電流を出力する複数の電極が接続される複数の出力端子と、
前記複数の電極と前記複数の出力端子を接続するケーブルと、
前記治療電流を生成する波形生成部と、
前記波形生成部を制御する制御部を備え、
前記波形生成部は、前記電気刺激が出力されないときは、前記出力端子間を接続する回路部を備え、
前記接続が前記治療電流を構成するパルス毎に実行されることを特徴とする電流刺激装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記出力端子間の接続を、前記治療電流に応じて選択的に制御することを特徴とする請求項1記載の電流刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の肌面もしくは経皮的に電流刺激を与える物理療法に使用される電流刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、美容効果を得ることや筋肉のコリや疲れの解消、または疼痛緩和や、筋緊張緩和、組織修復といった治療を目的として人体の肌面に刺激を与える様々な装置が提案されている。例えば、刺激として電気信号による電流刺激を与えるものとしては、低周波電気信号を生体に供給することで疼痛や運動機能改善等の治療効果を得る治療器や、筋肉刺激による運動効果が得られるいわゆるEMS(Electrical Muscle Stimulation)機器がある。また、電流刺激として経皮的電気刺激や高電圧刺激法(ハイボルテージ)、微弱電流(マイクロカレント)といった各々の生体に対する効果に違いがある各種方法があり、治療や美容といった各種目的に応じて選択される。
【0003】
例えば特許文献1では、創傷の治癒促進のために、微弱電流を、電極を通じて創傷部に流す電流刺激治療器に関するものであり、矩形波のパルス電流を一定の周期で繰り返し流し、電気刺激終了後は、陽極と陰極をシャントする機構を備える技術が開示されている。これは、組織再生の芽となる肉芽組織の基盤となる繊維芽細胞が、シャントにより、陰極側に移動し、創傷治癒が促進される効果を目的としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-177106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、治療するために使用される電流(以下、治療電流という)として単極性のパルスが繰り返し使用され、治療終了後にシャントを行うことになる。この場合、治療時間の分だけ陽極側に負電荷、陰極側に陽電荷が見かけ上、蓄積していく。一方、このような電流刺激装置にはパッド型の電極が使用され、その材質として金属材に加え、表面コート層に導電性ゲル等の電解質が使用される。ここで治療電流によって各電極において、電極を構成する部材や人体に蓄積された電荷(以下、残留電荷という)によって、電極を構成する化合物や電解質の電気分解が例えば表面の導電性ゲル等で発生し、電気分解で生じた電解生成物によって、陽極側において酸性度が上昇し、陰極側においてアルカリ度が上昇するといった、pH値が変化することが明らかになっている。この現象によって電極表面コート層が変質し、電極が接触する皮膚面において、酸またはアルカリによる炎症や火傷などの障害が生じることが考えられる。すなわち電気化学的な作用による皮膚表面へのダメージが問題となる。
【0006】
このような電流刺激に使用される電極や導電性部材であって、人体に接触して治療電流を提供する電極や導電性部材、あるいは当該電極や導電性部材を含んで構成されるものを導子と称する。このような残留電荷による不具合は肌に直接接触する上記の導電性ゲルに限らず、パッド型の電極を構成する種々の材料にも発生しうる。例えば導子に使用される導電性の接着剤や導電部材をコートするコート層でも発生し、接着力の低下やコート層が劣化してはがれるなどの不具合が発生し、導子の性能劣化や導子の寿命低下を招いている。電極を構成する部材や材料において、或いは上記の導電性ゲル等の人体に接触する物質において生じた生成物は上記の電気分解が発生しなかった他の部材や材料に作用してこれらを劣化させるなどの悪影響を及ぼす場合もある。このような状態では所望の治療電流が適切に人体に供給されず、十分な治療が得られないなど、治療効率が低下する不具合が発生していた。このために残留電荷の影響を受けない材料を選定するか、接着力の低下やコート剥がれが発生する前に導子を早期に交換するなどの対策が必要で導子や治療のコストアップを誘発していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に基づく電流刺激装置は、電気刺激を付与する電流刺激装置であって、前記電気刺激を付与する治療電流を出力する複数の電極が接続される複数の出力端子と、前記複数の電極と前記複数の出力端子を接続するケーブルと、前記治療電流を生成する波形生成部と、前記波形生成部を制御する制御部を備え、前記波形生成部は前記電気刺激が出力されないときは、前記出力端子間を接続する回路部を備え、前記出力端子間の接続が前記治療電流を構成するパルス毎に実行されることを特徴とする。
【0008】
また、前記制御部は、前記出力端子間の接続を、前記治療電流に応じて選択的に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成を有する本発明は、単極性パルスを使用する場合には、パルス出力毎に使用する電極間を電気的に直接または間接的に接続する機能を有効にすることで、電極に使用されるコート層や導電性電解質の電気分解を抑制し、それによって生じる酸性又はアルカリ性成分による火傷等皮膚障害あるいは上記の電極自体に対する悪影響による劣化を防止することが可能になる。
【0010】
さらに導子に発生する不具合を回避して治療効率の低下を防ぐとともに、導子に使用する部材や材料の選択肢を増やして導子のコストアップを防ぐだけでなく、導子の寿命の低下を防いで治療のコストアップを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の電流刺激装置の構成図である。
図2】本発明の実施形態の電流刺激装置の本体のブロック図である。
図3】本発明の実施形態の電流刺激装置の出力電流とシャント機能の動作タイミング説明図である。
図4】本発明の実施形態の電流刺激装置において正極性パルスを治療電流として使用する場合の動作説明図である。
図5】本発明の実施形態の電流刺激装置において負極性パルスを治療電流として使用する場合の動作説明図である。
図6】本発明の実施形態の電流刺激装置のシャント機能を実現する回路の一例を示す回路図である
図7】本発明の実施形態の電流刺激装置のシャント機能を実現する回路の別の一例を示す回路図である
図8】本発明の第2の実施形態の電流刺激装置においてシャント機能制御を説明する動作説明図である。
図9】本発明の第2の実施形態の物理療法機器の単極性パルスと双極性パルスを両方治療電流として使用する場合の動作を説明する動作説明図である。
図10】本発明の第2の実施形態の電流刺激装置において別の波形の双極性パルスを治療電流として使用する場合の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の電流刺激装置1であり、本体11と一対の電極12、接続ケーブル13からなる。本体11は、治療に必要な電気刺激を与える治療電流を生成するとともに治療電流の振幅・波形や供給時間等のパラメータによって治療電流を制御する機能を備えている。電極12は、人体の治療を必要とする部位(以下、治療箇所とする。)に電気刺激を供給できるように、一般的にはパッド型の電極が採用される。パッド型電極には導電性のゲルが塗布され、導電性が確保されるとともにその粘着力で治療箇所にパッドを固定する。本体11と電極12とは接続ケーブル13で接続される。電極12は1対のパッド型電極で構成される場合を記載しているが、これに限らず、3つ以上のパッド型電極で構成されてもよいし、さらにそれらが複数対あってもよい。または、1対の電極12を複数対使用するような構成でもよい。
【0013】
図2は本体11を説明するブロック図である。本体11には波形生成部111、制御部112、ユーザーインタフェース部(ユーザーIF部)113を備え、出力端子A14と出力端子B15に接続された接続ケーブル13で一対の電極12が本体11に接続される。ユーザーインタフェース部113では、使用者が治療電流の波形、強度、治療時間等を設定し、各設定値を制御部112に伝える。制御部112ではその設定値をもとに波形生成部111に治療電流となる電気刺激を生成するように波形生成部111に指示が行われる。波形生成部111では制御部112からの指示に従い、ユーザーインタフェース部113で設定された設定値に従って治療電流波形を生成する。治療電流は出力端子A14と出力端子B15から接続ケーブル13を通じ、電極12によって治療箇所に供給される。
【0014】
波形生成部111は治療電流として図3のような単極性パルスの出力電流Iを生成する。出力電流Iは複数の矩形バルスで構成されている。電流の絶対値を本明細書では単に電流値と称するとすると、出力電流Iには、電流値が大きい状態と小さい状態があり、電流値が大きい状態をHigh、逆に小さい状態をLowと称する。図3のように単極性パルスである出力電流IがLowになった、すなわち出力電流Iの電流の絶対値(以降、「電流値」等と記述する)について、電流値が小さくなったあるいはゼロのときには、出力端子A14と出力端子B15が後述するように電気的に、直接または間接的に接続されて(以降、「シャントする」等と記述する)、結果的に一対の電極12間に溜まった電荷を放電または中和する機能が働き、High時にはシャントをしないように、パルス毎のシャントを実行しており、図3でシャント機能のON/OFFで表している。後述のように本動作は治療用の単極性パルスの出力電流Iを利用して波形生成部111において実現している。
【0015】
図3の動作を実現するために、波形生成部111において、図4のように、出力電流Iである、治療電流を利用したシャント動作を、スイッチング素子を用いて実現する。この動作を実現する部分が回路部であり、以下シャント回路と称する。図4で表しているように入力の正極パルスがHighのときにOFFとなり、出力端子A14と出力端子B15がシャントされて、すなわち一対の電極12間がシャントされて出力電流IがLow(0V)の場合に、溜まった電荷、すなわち残留電荷を逃がすように、ONとなる極性のスイッチング素子を用いたシャント回路A41であれば1個の素子で実現可能である。この場合、治療電流のパルスがHighの時以外は、スイッチング素子はONになるので、電極間がシャントされ、電極間の電位は同じ電位を維持できる。一方、入力が負極性パルスの時は、図5のようにHigh(0V)のとき、すなわち出力電流Iの絶対値である電流値が小さいまたはゼロのときに溜まった電荷を逃がすようにONとなり、LowのときにOFFとなる極性のスイッチング素子を用いたシャント回路B51を使用すればよい。
【0016】
治療電流として単極性のパルスが繰り返し使用され、治療終了後にシャントを行うことになる。この場合、治療時間の分だけ陽極側に負電荷、陰極側に陽電荷が見かけ上、蓄積していく。一方、このような電流刺激装置にはパッド型の電極が使用され、その材質として金属材に加え、表面コート層に導電性ゲル等の電解質が使用される。ここで治療電流によって各電極において、電極を構成する部材や人体に蓄積された電荷(以下、残留電荷という)によって、電極を構成する化合物や電解質の電気分解が、例えば表面の導電性ゲル等で発生し、電気分解で生じた電解生成物によって、陽極側において酸性度が上昇し、陰極側においてアルカリ度が上昇するといった、pH値が変化することが明らかになっている。この現象によって電極表面コート層が変質し、電極が接触する皮膚面において、酸またはアルカリによる炎症や火傷などの障害が生じることが考えられる。すなわち電気化学的な作用による皮膚表面へのダメージが問題となる。
【0017】
このような電流刺激に使用される電極や導電性部材であって、人体に接触して治療電流を提供する電極や導電性部材、あるいは当該電極や導電性部材を含んで構成されるものを導子と称する。このような残留電荷による不具合は肌に直接接触する上記の導電性ゲルに限らず、パッド型の電極を構成する種々の材料にも発生しうる。例えば導子に使用される導電性の接着剤や導電部材をコートするコート層でも発生し、接着力の低下やコート層が劣化してはがれるなどの不具合が発生し、導子の性能劣化や導子の寿命低下を招いている。電極を構成する部材や材料において、或いは上記の導電性ゲル等の人体に接触する物質において生じた生成物は上記の電気分解が発生しなかった他の部材や材料に作用して、これらを劣化させるなどの悪影響を及ぼす場合もある。このような状態では、所望の治療電流が適切に人体に供給されず、十分な治療が得られないなど、治療効率が低下する不具合が発生していた。このために残留電荷の影響を受けない材料を選定するか、接着力の低下やコート剥がれが発生する前に導子を早期に交換するなどの対策が必要で導子や治療のコストアップを誘発していた。
【0018】
このような構成により、単極性パルスを治療電流として使用した場合に、一対の電極12間に電荷が溜まることによる電極に使用される導電性接着剤やコート層、あるいは導電性ゲルの電気分解が発生することを抑止し、火傷等の障害を防ぐことができる。また、電極12のコストアップを防ぎ、寿命を低下させることがなく、治療効率の低下を防ぐことができる。
【0019】
さらに、上記シャント回路を入れることで、単極性パルスの治療電流を流す治療開始前から治療後まで、シャント機能が動作することになり、治療電流が流れている間を除いて、一対の電極12同士は常に電気的に、直接または間接的に接続されて同電位となり、さらに電極12間に電荷が溜まることによる静電気発生を抑止し、安全な治療が可能となる。
【0020】
図6図4で説明した動作機能を具体的な回路構成として実現した場合となる。波形生成部を構成する回路のうち、出力側の回路であって、単極性パルスとして正極パルスとした場合のパルス毎のシャント動作を実現する回路部は、シャント回路C61で示される。制御部からの正極パルス入力Ipに従い、トランジスタB615、トランジスタC617、抵抗B616からなるスイッチング回路によって、Vccの出力が電極12に正極の単極性パルス出力として現れる。ここで、制御部からの正極パルス入力Ipは、まず抵抗C618、コンデンサ619からなる遅延回路62によって時定数の分だけ遅延され、シャント回路C61では、反転素子611によって反転され、シャントを実行するスイッチング素子であるトランジスタA612のベースに入力される。従って、正極パルス入力IpがHighのときには、トランジスタA612はOFFになり、電極12側にVccがそのまま出力として現れ、正極パルス入力IpがLowのときに、トランジスタA612はONになり、電極側の出力がGNDに接続され、溜まった電荷が放電または中和される。シャント動作を実現する回路は電極12同士を直接、あるいは接地を介し間接的に接続する構成でもよいが、不測の事態に備えて保護手段である保護回路を設けてもよい。例えば図6のシャント回路C61内には、図のように単なるショートにするのではなく保護回路として保護抵抗となる抵抗A613が設けている。また、出力と放電が同時にONとなり、部品破損、未通電状態になることを防止するために、出力ONが優先となる保護ダイオードA614を設けている。このような保護回路を設けることで素子を保護しつつ確実に電荷を放電することが可能となる。すなわち、一対の電極12はスイッチング素子によって直接、あるいは保護回路や保護手段を介して間接的に電極間が接続されることになる。このように一対の電極12同士をシャントするスイッチング素子をシャント用スイッチング素子という。図6では、トランジスタA612がシャント用スイッチング素子に該当する。図6では回路構成上は、Vccの電流をオンオフするスイッチング素子であるトランジスタC617とトランジスタA612は反転素子611がなければ同時にスイッチングすることになる。そのために反転素子611を使用してトランジスタC617とトランジスタA612のオンオフ動作が逆になるように制御しているが、本発明はこれに限定されず、シャントを行うスイッチング素子としてトランジスタC617と回路構成上で逆のスイッチングになるようなトランジスタを図6のトランジスタA612の代わりに使用してもよい。例えば両方ともPNPトランジスタを採用することが考えられる。回路構成上逆のスイッチングとなるトランジスタでは、正極パルス入力IpがLowの場合にオンになるので、別途反転素子611が不要で回路構成の簡略化に有効である。さらに図6では治療電流としてVccが電極12に供給されるが、Vccを昇圧または降圧するアンプを設けて治療電流として使用することもできる。あるいはトランジスタC617を使用してオンオフを行って治療電流を供給するのではなく、任意に出力電流を作成できるPWMなどを使用して治療電流を供給してもよいがこの場合は、治療電流のHighとなる場合にシャントがオフとなり治療電流がLowとなるときにシャントがオンとなるように治療電流を降圧または昇圧した信号を、必要なら反転して、シャントを実行するスイッチング素子であるトランジスタのベースに入力することで本発明のシャントが実行できる。
【0021】
電極が複数対すなわち、多出力のチャンネル構成の場合は、各出力間の通電時治療電流の干渉を防止する必要があり、チャンネル毎に絶縁が必要となる。この場合、放電は出力側の回路で行う必要があり、絶縁を保つために放電のシャント回路の制御信号と出力回路での絶縁が必要になる。図7では、トランス712、トランジスタD715からなるスイッチング回路素子でVccの出力が制御部からの正極パルス入力Ipでスイッチングされて出力端子A14および出力端子B15に接続された電極12に正極の単極性パルス出力として現れる。シャント回路D71はシャント用スイッチング素子として光デバイス711単体によってあるいは光デバイス711を含んだ回路部として実現され、絶縁は維持される。図6と同様に保護抵抗である抵抗D713が設けられ、また出力と放電が同時にONとなり、部品破損、未通電状態になることを防止するために、出力ONが優先となる保護ダイオードB714を設けている。このような保護回路を設けることで素子を保護しつつ確実に電荷を放電または中和することが可能となる。以上のように治療電流を使用してまたは治療電流を生成する信号、例えば正極パルス信号Ipを使用してシャント素子のオンオフを実行してもよいが、これに本発明は限定されず、少なくとも治療電流に同期した信号であってシャントを実行するスイッチング素子の制御を行う信号を別途用意してスイッチングの制御を行ってもよい。
【0022】
(第2の実施形態)
別の実施形態である本実施形態では、図1の装置構成図、図2のブロック図は同様であるが、シャント機能を制御する構成が異なる。治療電流をシャント回路のスイッチングに利用する第1の実施形態と異なり、図8のようにスイッチング素子を有するシャント回路E81のスイッチングは別途制御部からのスイッチング制御信号82に基づいて独立に行われるものである。この場合、治療電流として単極性パルスと双極性パルスといった治療電流の種類に基づいて、各々個別にシャント機能の実行を制御することが可能となる。例えば、図3のように単極性パルスを使用する場合は、パルス毎にシャントが実行されるように、出力電流IがLowとなることに同期して、シャント回路E81によって出力端子A14と衆力端子B15が電気的に接続されるような制御信号82をシャント回路E81に供給すればよい。図8では仮にシャント回路E81に、制御信号がHighの時にシャントが実行されるスイッチング素子が使用されている場合であり、使用する制御信号82としては出力電流Iと逆位相の信号を使用している。逆に制御信号がLowの時にシャントが実行されるようなスイッチング素子が使用されている場合は制御信号82としては出力電流Iと同位相の信号を使用することもできる。
【0023】
例えば、図9のように、単極性パルスで治療を行い、その後双極性パルスで治療を行うようなケースの場合、双極性パルスの場合は、単極性パルスと異なり、正負が交互に電極に印加されることから電気分解が発生しない、もしくは発生しても単極性パルスの場合よりも残留電荷が発生しにくく、残留電荷による影響は少ないと考えられ、単極性パルスのようなパルス毎のシャントは必要なく、例えば創傷治癒の促進のための治療終了後のシャントを行えば十分と考えられる。このような場合、単極性パルスを出力中は、第1の実施形態のようにパルス毎にシャント回路が動作するように制御を行い、双極性パルスを出力後に、シャント回路を1回動作させることになる。
【0024】
具体的な動作として図9のように単極性パルスと双極性パルス両方が使用される場合は、単極性パルスの出力電流Iが出力されている場合は、シャント回路E81によってパルス毎のシャントを実行し、双極性パルスの出力電流Iが出力されている場合はシャント回路E81によるシャントは行わず、治療後にシャントを実行することができる。仮にシャント回路E81に、制御信号がHighの時にシャントが実行されるスイッチング素子が使用されて場合では、双極性パルスの出力電流Iによる治療中は、制御信号82はLowに維持され、治療後、すなわち出力電流Iの供給が停止されるとHighとなる制御信号82を使用することができる。逆に制御信号がLowの時にシャントが実行されるようなスイッチング素子が使用されている場合では、双極性パルスの出力電流Iによる治療中に制御信号82はHighに維持され、治療後、すなわち出力電流Iの供給が停止されるとLowとなる制御信号82を使用することができる。このように、治療後にシャントを行う場合は、出力電流Iが停止後からシャントを実行するまでの時間(図9の時間T)をパラメータの一つとして使用することもできる。時間Tは、治療電流の出力時間が満了後、あるいは出力電流Iの最後のパルスの出力後からの経過時間ということもできる。時間Tは別途使用者がユーザーインタフェース部113によって設定できるような構成でもよい。
【0025】
第2の実施形態においては、このようなシャント回路の動作を出力パルスによって制御できる。従って、単極性パルスによって創傷治療を行う機器もあれば、他の機能例えば双極性パルス低周波電流刺激による疼痛緩和も備えた複数の機能を備えた機器への対応も可能となる。このような複数機能を備えた電流刺激装置の場合、制御部は使用するパルスによって、シャント機能を都度行う/治療終了後に行う/行わない等、切り替えることが望ましい。
【0026】
制御部が行うシャントの制御として、より具体的にはシャントの使い方として、シャントなし、図3のようなパルス毎にシャントを行うパルス毎シャント、治療電流(出力電流I)を出力中はシャントを行わないが治療後にシャントを行う治療後シャント、あるいは治療電流の出力中に定期的に治療電流の出力を停止してシャントを行う定期的シャントなどが考えられ、それぞれをシャントモードと称すると、シャントなしを第1のシャントモード、パルス毎にシャントを行うモードを第2のシャントモード、治療中にシャントを行わずに治療後にのみシャントを行うモードを第3のシャントモード、治療中において、パルスにかかわらず定期的にシャントを行うモードを第4のシャントモードと称することができる。本発明はこれに限定されずその他のシャントモードも、シャントのタイミング、すなわち、いつシャントを実行するか、例えば上記の時間Tを示す情報などのパラメータにより種々のシャントシャントモードを使用することができる。本実施の形態では、制御信号82によってシャントモードを治療によって使用者が選択可能としてもよいし、治療方法、すなわち使用する治療電流に応じてシャントモードが自動的に切り替わる動作としてもよい。あるいは複数のシャントモードを使い分ける組み合わせを自由に設定してもよい。例えば図3のようなリハビリテーション用として単極性パルスが選択された場合は、制御部112は第2のシャントモードをシャント回路E81に実行させる制御信号82をシャント回路E81に出力してもよい。あるいは両極性パルスが出力される場合は、制御部112は第1のシャントモードをシャント回路E81に実行させる、すなわちシャントが起きない制御信号82をシャント回路E81に出力してもよい。
【0027】
このほか、特定の治療目的によって、シャントモードが自動的に設定されて実行される構成でもよい。例えば図3のような単極性パルスを出力する場合であっても、筋収縮を発生させる治療電流の場合では、自動的に制御部112はパルス毎シャントである第2のシャントモードを実行できる制御信号82を生成してシャント回路E81に送信してパルス毎のシャントを実行してもよい。一方で図3のような単極性パルスであっても筋収縮が起きないような電流値である場合、例えば微弱電流使用する褥瘡治療のような場合では第3のシャントモードで治療後にシャントを実行することでもよい。具体的にはユーザーインタフェース部113によって単極性パルスが選択され、出力値が事前に定めた特定の値、例えば閾値を超えた場合では制御部112は第2のシャントモードを選択し、閾値を超えない場合では制御部112は第3のシャントモードを選択して、それぞれのシャントモードに対応したシャントをシャント回路E81に実行させる制御信号82をシャント回路E81に供給するような構成でもよい。
【0028】
なお、双極性パルスとして図9では正極性の電流の後に直ちに負極性の電流が出力され、続けて直ちに正極性の電流が出力されるパルスを例に挙げて説明している、つまり、プラスのHighの後にマイナスのHigh、続けてプラスのHigh、マイナスのHighが繰り返されるパルス列を例に挙げているが本発明はこれに限定されず、図10のようなパルス列であってもよい。すなわち、プラスのHigh、マイナスのHigh、Lowで構成されるパルスを繰り返して使用する治療電流であってもよい。この場合にシャントは図9のように出力電流Iの後に実行されてもよいが、出力電流IがLowの時に実行してもよい。両極性パルスの場合は、残留電荷が発生しにくいが、電極や導子に使用する材料によっては電流の向きに対して抵抗値が異方性を有する場合は、両極性であっても残留電荷は多少なりとも発生する可能性があるために、出力電流IがLowとなるタイミングでシャントを行う制御を行う方がより望ましい。例えば両極性パルスとして、マイナスのHigh、プラスのHigh、Lowで構成されるパルスが繰り返される治療電流であってもよく、プラスのHigh、Low、マイナスのHighで構成されるパルスが繰り返して使用される治療電流であってもよく、マイナスのHigh、Low、プラスのHighで構成されるパルスが繰り返して使用される治療電流であってもよく、プラスのHigh、Low、マイナスのHigh、Lowで構成されるパルスが繰り返して使用される治療電流であってもよく、マイナスのHigh、Low、プラスのHigh、Lowで構成されるパルスが繰り返して使用される治療電流であってもよく、Lowの状態でシャントを実行する制御であってもよい。このようなLowの状態でのシャントは、Lowの度に行ってもよいが、一つのパルスに複数のパルスが存在する場合はその少なくとも一つでパルスを実行してもよい。すなわち、治療電流が出力されている間の、あるいは治療中の、治療電流がLowとなる状態の少なくとも一つでシャントがされるような制御を行ってもよい。また、上記において、例えば図10では出力電流Iが一度LowとなるとそのLowの間は常にシャントされている例を挙げているが本願はこれに限定されず、一度Lowとなる期間の例えば50%の時間でシャントされるような制御を行ってもよい。換言すると治療電流がLowとなる期間の少なくとも一部でシャントがされているとともに、治療電流が出力されている間は当該シャントがパルス毎に繰り返して実行される制御であってもよい。
【0029】
上記の制御信号82は、通常HighとLowの2値の信号が使用される。例えば制御信号82がHighの時にシャントが実行されるが、逆に制御信号82がLowの時にシャントが実行されてもよく、治療電流の電流値が小さいまたはゼロのときにシャントが実行されていればよい。ただし、本体11の電源投入直後や電源オフの後、治療終了後である治療電流出力停止後、あるいは静電気の発生しやすい環境での使用などにより、1対の電極12間に不測の電圧が発生する場合がある。この場合は静電気放電などの不快を感じ問題が発生しうる。または本体11のエラー等により制御部112が出力の停止を波形生成部111に指示しても波形生成部111の暴走等により治療電流を制御できなくなった時など、あるいは制御部112の故障などにより制御信号82が出力されていない場合には使用者に予期しない電流が流れて使用者が不快を感じる、あるいは当該予期しない電流による火傷等が発生するなどの問題が発生しうる。そこで、制御信号82がHighでない場合あるいはLowの場合にオンとする極性のスイッチング素子をシャント用スイッチング素子として使用することが望ましい。このような構成では、本体11の電源投入直前・直後、電極12に静電気が生じた場合、あるいは本体11が故障して制御信号82が出力されない場合となってもシャント用スイッチング素子はオンとなって一対の電極12間がシャントされて一対の電極12間の電圧が発生せず、使用者に予期しない電流が流れることがなく、安全で不快を感じない治療器が実現できる。
【0030】
ただしシャントモードの設定はこれに限定されず、治療目的に応じて制御部112がシャントモードを自動で設定するような構成でもよい。例えば使用者がユーザーインタフェース部113に表示された、リハビリや褥瘡治療あるいは疼痛治療をなどの治療目的を選択すると、それに応じて、制御部112は出力する治療電流、例えば単極性パルスや、単極性の微弱電流あるいは双極性パルスのTENSなどの治療電流を特定するパラメータを波形生成部111に送信する。当該パラメータには、例えば使用する治療電流を特定するために必要な情報である、矩形波や正弦波等の出力される治療電流の種類、周波数。パルス幅、DUTY比、治療時間などのほかに、シャントモードとして上記のどのシャントモードを使用するかの情報が含まれる。使用されるシャントモードによって、シャントする時間やタイミングや、シャントの要否などの情報が含まれていてもよい。波形生成部111は当該パラメータに応じて治療電流を出力するとともに適切なシャントを実行することができる。シャントの要否やどのタイミングでシャントを実行するかの設定には専門知識が必要なので、治療電流とシャントモードの組み合わせが適切でないと、所望の治療効果が得られず治療効率が低下する不具合を誘発する。例えば図3のような単極性のパルスによって筋収縮を起こさせると、麻痺などの治療としてリハビリに使用するのに適している。この場合ではシャントモードしては第2のシャントモードが必要で、第3のシャントモードや第4のシャントモードでは上記の残留電荷による不具合が発生する。ところが治療目的によって適切なシャントモードが自動的に選択されるのでシャントに関する専門知識がなくても治療効率の低下がない好適な治療器を提供できる。
【0031】
あるいは出力される治療電流によってシャントモードが設定されてもよい。治療電流に応じて制御部112がシャントモードを自動で設定するような構成でもよい。例えば使用者がユーザーインタフェース部113に表示された、単極パルスや両極性パルス、微弱電流あるいはTENSなどの治療電流を選択すると、それに応じて、制御部112は出力する治療電流、例えば単極性パルスや、単極性の微弱電流あるいは双極性パルスのTENSなどの治療電流を特定するパラメータを波形生成部111に送信する。当該パラメータには、例えば周波数やパルス幅、DUTY比、治療時間などのほかに、シャントモードとして上記のどのシャントモードを使用するかの情報も含まれている。波形生成部111は当該パラメータに応じて治療電流を出力するとともに適切なシャントを実行することができる。シャントの要否やどのタイミングでシャントを実行するかの設定には専門知識が必要なので、治療電流とシャントモードの組み合わせが適切でないと、所望の治療効果が得られず治療効率が低下する不具合を誘発する。例えば図3のような単極性のパルスによって筋収縮を起こさせることは、麻痺などの治療としてリハビリテーションに使用するのに適しているが、この際に使用されるシャントモードしては第2のシャントモードが必要であり、第3のシャントモードや第4のシャントモードでは上記の残留電荷による不具合が発生する。ところが治療電流によって適切なシャントモードが自動的に選択されるのでシャントに関する専門知識がなくても治療効率の低下がない好適な治療器を提供できる。
【0032】
すなわち、上記構成を有する本発明は、パルスの種類(単極性パルスと、双極性パルス)と、治療目的に応じ、使用するパルスごとにパルスごとのシャント、治療後のシャント、シャント機能不使用を切り替えて使用することを可能にすることで、効率のよい治療が可能となる
【0033】
以上は、ただ本発明の好ましい実施形態に過ぎなく、本発明の保護範囲は、上記実施形態に限定されたものではなく、当業者により本発明で開示された内容に基づき作られた同等の各種の改良または変形は、すべて本願の特許請求の範囲に含まれている。例えば上記では主に創傷治療と疼痛緩和の電気刺激だが、他にハイボルテージ等別の電流刺激との組み合わせでもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 電流刺激装置
11 電流刺激装置本体、本体
12 電極
13 ケーブル、接続ケーブル
111 波形生成部
112 制御部
113 ユーザーインタフェース部
14 出力端子A
15 出力端子B
41 シャント回路A
51 シャント回路B
61 シャント回路C
62 遅延回路
611 反転素子
612 トランジスタA
613 抵抗A
614 ダイオードA
615 トランジスタB
616 抵抗B
617 トランジスタC
618 抵抗C
619 コンデンサ
71 シャント回路D
711 光デバイス
712 トランス
713 抵抗D
714 ダイオードB
715 トランジスタD
81 シャント回路E
82 制御信号
図1
図2
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図10