(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061474
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】アウトリガ装置、アウトリガ装置を用いた産業用機械の積み込み方法及び積み下ろし方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/78 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
B66C23/78 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169446
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】506002823
【氏名又は名称】古河ユニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小磯 涼介
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA07
3F205FA05
3F205FA06
(57)【要約】
【課題】アウトリガ装置の作業姿勢と走行姿勢との姿勢変更に必要な時間を短縮し、且つアウトリガ装置の上昇及び下降動作に用いられる伸縮部材の動作効率を向上可能なアウトリガ装置を提供する。また、産業用機械を容易に運搬用車両に積み込み、積み下ろすことが可能な方法を提供する。
【解決手段】ブラケット10、アームシリンダ20、アーム30及びスイングアーム40はそれぞれ揺動可能に支持される。ブラケット10は、前後方向の軸回りにおける自由度を有さず、リンク機構の静止節になる。アームシリンダ20及びアーム30は、スイングアーム40における先端側アームシリンダピン25及び先端側アームピン38の間を連接節として連動して揺動する揺動節になり、アウトリガ装置2は両てこ機構を構成する。アウトリガ装置2の形状が、張り出し固定ピン50によって固定された後にアームシリンダ20を伸長させることで、スイングアーム40は下降する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用機械に支持される基部と、
一端が、前記基部における一の部分に、水平方向を向く第一揺動軸の軸回りに揺動可能に支持される第一揺動部材と、
一端が、前記基部における他の部分に、前記第一揺動軸に平行な第二揺動軸の軸回りに揺動可能に支持される第二揺動部材と、
基端部が前記第一揺動部材の他端に、前記第一揺動軸に平行な第三揺動軸の軸回りに揺動可能に支持され、且つ前記第三揺動軸よりも先端部側である前記基端部の他の部分が前記第二揺動部材の他端に、前記第一揺動軸に平行な第四揺動軸の軸回りに揺動可能に支持される先端側部材と、を備え、
前記第一揺動部材及び前記第二揺動部材のうち、少なくとも一方は伸長動作及び収縮動作が可能な伸縮部材であり、
前記先端側部材は、先端部に接地部を備えており、
前記基部、前記第一揺動部材、前記第二揺動部材及び前記先端側部材は、前記基部を静止節とし、前記先端側部材を連接節として、前記第一揺動部材と、前記第二揺動部材と、が連動して揺動する、両てこ機構を構成し、
前記第一揺動軸の軸回りにおける前記基部と前記第一揺動部材との間の角度、前記第二揺動軸の軸回りにおける前記基部と前記第二揺動部材との間の角度、前記第三揺動軸の軸回りにおける前記第一揺動部材と前記先端側部材との間の角度及び前記第四揺動軸の軸回りにおける前記第二揺動部材と前記先端側部材との間の角度のうち、少なくとも一つの角度を固定することで、前記両てこ機構の形状を固定する固定部を備えることを特徴とするアウトリガ装置。
【請求項2】
前記固定部は、前記両てこ機構を、前記産業用機械の側の死点付近である格納位置と、張り出し側の死点付近である最大張り出し位置と、前記格納位置と前記最大張り出し位置との間である最小張り出し位置と、を含む少なくとも三か所で段階的に固定可能であることを特徴とする請求項1に記載のアウトリガ装置。
【請求項3】
前記第一揺動部材のみが、前記伸縮部材を備えており、
前記固定部は、前記第三揺動軸の軸回りにおける前記第一揺動部材と前記先端側部材との間の角度、及び、前記第四揺動軸の軸回りにおける前記第二揺動部材と前記先端側部材との間の角度のうち一方のみを固定することを特徴とする請求項2に記載のアウトリガ装置。
【請求項4】
前記両てこ機構を前記最大張り出し位置まで張り出させた状態において、
前記伸縮部材をストロークの途中まで伸長させ、前記産業用機械がわずかに持ち上げられた状態になる作業モードと、
前記伸縮部材をストロークの最大付近まで伸長させ、前記産業用機械がさらに高く持ち上げられた状態になる積載モードと、に姿勢を変更可能な請求項3に記載のアウトリガ装置。
【請求項5】
前記第二揺動部材のみが、前記伸縮部材を備えており、
前記固定部は、前記第三揺動軸の軸回りにおける前記第一揺動部材と前記先端側部材との間の角度、及び、前記第四揺動軸の軸回りにおける前記第二揺動部材と前記先端側部材との間の角度のうち一方のみを固定することを特徴とする請求項2に記載のアウトリガ装置。
【請求項6】
前記両てこ機構を前記最大張り出し位置まで張り出させた状態において、
前記伸縮部材をストロークの途中まで収縮させ、前記産業用機械がわずかに持ち上げられた状態になる作業モードと、
前記伸縮部材をストロークの限界付近まで収縮させ、前記産業用機械がさらに高く持ち上げられた状態になる積載モードと、に姿勢を変更可能な請求項5に記載のアウトリガ装置。
【請求項7】
前記基部は、前記産業用機械に対して上下方向を向く軸回りに旋回可能であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のアウトリガ装置。
【請求項8】
前記基部は、前記産業用機械の基台に形成された貫通孔の内部に突出することで、前記産業用機械に対する前記アウトリガ装置の旋回角度を固定する旋回角度固定ピンを備えており、
前記先端側部材は、前記固定部として、前記アウトリガ装置を格納したときに、前記基台に形成された貫通孔の内部に突出し、前記基台と前記先端側部材とを固定するための格納固定ピンと、前記第二揺動部材に形成された格納用孔又は角度固定孔の内部に突出し、前記第二揺動部材と前記先端側部材とを固定するための張り出し固定ピンと、を備えており、
前記先端側部材は、前記旋回角度固定ピン、前記格納固定ピン及び前記張り出し固定ピンの突出状態を制御するための操作部を備えており、
前記操作部は、該操作部の全体を、前記先端側部材における前記操作部の取付面に対してねじり方向に回転させることで、前記旋回角度固定ピンの突出状態を解除し、前記アウトリガ装置を前記産業用機械に対して上下方向を向く軸回りに回転可能な状態にする展開レバーと、押し込まれることで前記格納固定ピン及び前記張り出し固定ピンの突出状態を解除し、前記アウトリガ装置を張り出し可能な状態にする、張り出しレバーと、を備えていることを特徴とする請求項7に記載のアウトリガ装置。
【請求項9】
請求項7に記載のアウトリガ装置を用いた、運搬用車両の荷台への前記産業用機械の積み込み方法であって、
前記アウトリガ装置を、少なくとも一方向から前記荷台が進入可能な角度に旋回させ、
前記アウトリガ装置を旋回させた後、前記アウトリガ装置を張り出させ、
前記アウトリガ装置を張り出させた後、前記固定部によって前記先端側部材と前記第一揺動部材及び前記第二揺動部材のうち一方との角度を固定し、
前記角度の固定後、前記伸縮部材を動作させることで前記接地部を接地させ、
前記接地部が接地した後、前記アウトリガ装置をさらに押し下げることによって前記産業用機械を持ち上げ、前記産業用機械と地面との間に前記荷台が進入可能な空間を形成させ、
前記空間が形成された後、前記空間に前記荷台を進入させ、
前記産業用機械が、前記荷台の積載位置に到達した位置で、前記アウトリガ装置を格納させることで、前記荷台に前記産業用機械を積み込むことを特徴とするアウトリガ装置を用いた産業用機械の積み込み方法。
【請求項10】
請求項7に記載のアウトリガ装置を用いた、運搬用車両の荷台から前記産業用機械を積み降ろす方法であって、
前記アウトリガ装置を、張り出し及び下降させたときに、前記アウトリガ装置が前記運搬用車両に接触せず且つ前記接地部が接地する角度に旋回させ、
前記アウトリガ装置を旋回させた後に、前記アウトリガ装置を張り出させ、
前記アウトリガ装置を張り出させた後、前記固定部によって前記先端側部材と前記第一揺動部材及び前記第二揺動部材の内一方との角度を固定し、
前記角度の固定後、前記伸縮部材を動作させることで前記接地部を接地させ、
前記接地部が接地した後、前記アウトリガ装置をさらに押し下げることによって前記産業用機械を持ち上げ、前記産業用機械と前記荷台との間に前記運搬用車両の前記荷台が脱出可能な空間を形成させ、
前記空間が形成された後、前記空間から前記運搬用車両を脱出させ、
前記運搬用車両が脱出した後、前記伸縮部材を動作させることで、前記産業用機械が接地するまで前記アウトリガ装置を上昇させ、
前記産業用機械が接地した後に、前記アウトリガ装置を格納させることを特徴とする、産業用機械を運搬用車両の荷台から積み下ろす方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンの機体から張り出して機体を支持するアウトリガ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーン等の作業車両に用いられるアウトリガ装置として、例えば特許文献1に記載のアウトリガ装置がある。
このようなアウトリガ装置を備えた移動式クレーンを用いて作業を開始するときには、まず、トラック等の荷台に積載された移動式クレーンを、車載クレーン等を用いて地面に降ろす。次に、移動式クレーンを作業位置まで自走させる。移動式クレーンが作業位置に到着した後、アウトリガ装置を移動式クレーンに対して放射状に展開させ、先端側アームを水平に近い角度まで起き上がらせる。次に、横アウトリガシリンダを伸長させることで先端側アームを伸長させる。そして、縦アウトリガシリンダを伸長させることで基端側アームを伏せさせ、接地部を接地させ、さらに縦アウトリガシリンダを伸長させることで接地部に荷重が掛かるようにさせる。
【0003】
作業終了後に移動式クレーンを搬出するためには、アウトリガ装置を展開させるときの手順を逆に行い、アウトリガ装置を格納する。アウトリガ装置の格納後に、移動式クレーンを積載するためのトラック等の付近まで移動式クレーンを自走させ、車載クレーン等を用いて移動式クレーンを荷台に積載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のアウトリガ装置は、縦アウトリガシリンダを伸縮させることで基端側アームを起伏させ、アウトリガ装置の動作を行っている。即ち、先端側アームが略水平な姿勢から、接地部が設置するまでの間は縦アウトリガシリンダを動作させなければならず、縦アウトリガシリンダのストロークを長くする必要がある。そのため、接地部が接地するまでに時間を要し、作業開始までの時間が増加する原因となっていた。また、作業終了後においても、基端側アームを格納位置まで起き上がらせる必要がるため、同様の問題が生じていた。さらに、縦アウトリガシリンダの動作における大部分が、基端側アームを起伏させるだけの低負荷の作業であるが、接地部が接地した後は、移動式クレーンの走行装置から荷重を移動させるために、アウトリガ装置を押し下げる動作を行う必要があり、縦アウトリガシリンダは当該動作を行えるだけの性能を有さなければならず、縦アウトリガシリンダの動作効率を低下させる原因となっていた。
【0006】
作業終了後に、移動式クレーンをトラック等の荷台に積載しようとしたときには、移動式クレーンを車載クレーン等で吊り上げて荷台に積載する場合がある。しかし、車載クレーンを使用する場合には、ブームを起き上がらせることで、移動式クレーンを荷台の前方に移動させようとしても、移動式クレーンと車載クレーンのブームとが接触するのを回避するために、車載クレーンの旋回中心から遠くに移動式クレーンを吊り上げなければならず、荷台の前方に移動式クレーンを降ろすことができない場合があった。そのため、移動式クレーンを荷台後方に降ろした後に、自走させることで荷台の前方に移動させてから固定を行う等の作業を行う必要があった。そして、積み下ろしの場合も同様に、移動式クレーンを自走させて荷台の後方に移動させてから、車載クレーンによって吊り上げる必要があった。そのため、作業開始前及び作業終了後に必要な作業時間が増加する原因となっていた。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑み、アウトリガ装置を備える産業用機械における、接地姿勢と走行姿勢との姿勢変更に必要な時間を短縮可能であり、且つアウトリガ装置の上昇及び下降動作に用いられる伸縮部材の動作効率を向上させることができるアウトリガ装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、産業用機械を、容易にトラック等の荷台に積み込み及び積み下ろし可能な、アウトリガ装置を用いた積み込み方法及び積み下ろし方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の発明に係るアウトリガ装置は、産業用機械に支持される基部と、
一端が、前記基部における一の部分に、水平方向を向く第一揺動軸の軸回りに揺動可能に支持される第一揺動部材と、
一端が、前記基部における他の部分に、前記第一揺動軸に平行な第二揺動軸の軸回りに揺動可能に支持される第二揺動部材と、
基端部が前記第一揺動部材の他端に、前記第一揺動軸に平行な第三揺動軸の軸回りに揺動可能に支持され、且つ前記第三揺動軸よりも先端部側である前記基端部の他の部分が前記第二揺動部材の他端に、前記第一揺動軸に平行な第四揺動軸の軸回りに揺動可能に支持される先端側部材と、を備え、
前記第一揺動部材及び前記第二揺動部材のうち、少なくとも一方は伸長動作及び収縮動作が可能な伸縮部材であり、
前記先端側部材は、先端部に接地部を備えており、
前記基部、前記第一揺動部材、前記第二揺動部材及び前記先端側部材は、前記基部を静止節とし、前記先端側部材を連接節として、前記第一揺動部材と、前記第二揺動部材と、が連動して揺動する、両てこ機構を構成し、
前記第一揺動軸の軸回りにおける前記基部と前記第一揺動部材との間の角度、前記第二揺動軸の軸回りにおける前記基部と前記第二揺動部材との間の角度、前記第三揺動軸の軸回りにおける前記第一揺動部材と前記先端側部材との間の角度及び前記第四揺動軸の軸回りにおける前記第二揺動部材と前記先端側部材との間の角度のうち、少なくとも一つの角度を固定することで、前記両てこ機構の形状を固定する固定部を備えることを特徴とする。
【0009】
第二の発明は、第一の発明から第六の発明に発明のうちいずれか一つにおける前記基部は、前記産業用機械に対して上下方向を向く軸回りに旋回可能であることを特徴とする。
第二の発明に係るアウトリガ装置を用いた、運搬用車両の荷台への前記産業用機械の積み込み方法であって、
前記アウトリガ装置を、少なくとも一方向から前記荷台が進入可能な角度に旋回させ、
前記アウトリガ装置を旋回させた後、前記アウトリガ装置を張り出させ、
前記アウトリガ装置を張り出させた後、前記固定部によって前記先端側部材と前記第一揺動部材及び前記第二揺動部材のうち一方との角度を固定し、
前記角度の固定後、前記伸縮部材を動作させることで前記接地部を接地させ、
前記接地部が接地した後、前記アウトリガ装置をさらに押し下げることによって前記産業用機械を持ち上げ、前記産業用機械と地面との間に前記荷台が進入可能な空間を形成させ、
前記空間が形成された後、前記空間に前記荷台を進入させ、
前記産業用機械が、前記荷台の積載位置に到達した位置で、前記アウトリガ装置を格納させることで、前記荷台に前記産業用機械を積み込むことを特徴とする。
【0010】
第二の発明に係るアウトリガ装置を用いた、運搬用車両の荷台から前記産業用機械を積み降ろす方法であって、
前記アウトリガ装置を、張り出し及び下降させたときに、前記アウトリガ装置が前記運搬用車両に接触せず且つ前記接地部が接地する角度に旋回させ、
前記アウトリガ装置を旋回させた後に、前記アウトリガ装置を張り出させ、
前記アウトリガ装置を張り出させた後、前記固定部によって前記先端側部材と前記第一揺動部材及び前記第二揺動部材の内一方との角度を固定し、
前記角度の固定後、前記伸縮部材を動作させることで前記接地部を接地させ、
前記接地部が接地した後、前記アウトリガ装置をさらに押し下げることによって前記産業用機械を持ち上げ、前記産業用機械と前記荷台との間に前記運搬用車両の前記荷台が脱出可能な空間を形成させ、
前記空間が形成された後、前記空間から前記運搬用車両を脱出させ、
前記運搬用車両が脱出した後、前記伸縮部材を動作させることで、前記産業用機械が接地するまで前記アウトリガ装置を上昇させ、
前記産業用機械が接地した後に、前記アウトリガ装置を格納させることを特徴とする、産業用機械を運搬用車両の荷台から積み下ろす方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るアウトリガ装置によれば、アウトリガ装置を備える産業用機械における、接地姿勢と走行姿勢との姿勢変更に必要な時間を短縮可能であり、且つアウトリガ装置の上昇及び下降動作に用いられる伸縮部材の動作効率を向上させることができるアウトリガ装置を提供できる。
また、本発明に係る産業用機械の積み込み及び積み下ろし方法によれば、産業用機械を、容易にトラック等の荷台に積み込み及び積み下ろし可能な、アウトリガ装置を用いた積み込み方法及び積み下ろし方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るアウトリガ装置を搭載した移動式クレーンの正面図である。
【
図2】本発明に係るアウトリガ装置の格納姿勢の正面図である。
【
図3】張り出し固定ピン及び格納固定ピンの構造を示す図である。
【
図4】アウトリガ装置が格納姿勢をとっているときの格納固定ピンの状態を示す側面図である。
【
図5】基台における旋回角度固定孔の位置を示す上面図である。
【
図6】アウトリガ装置の、両てこ機構の動作を示す図である。
【
図7】アームシリンダを伸長させた時の、アウトリガ装置の動作を示す図である。
【
図8】最大張り出し姿勢で作業モードをとったときの、アームシリンダの状態を示す図である。
【
図9】積載モードをとったときアームシリンダの状態を示す図である。
【
図10】運搬用車両に、移動式クレーンを積み込む方法を示す正面図(a)及び右側面図(b)である。
【
図11】運搬用車両に、移動式クレーンを積み込む方法を示す正面図(a)及び右側面図(b)である。
【
図12】運搬用車両に、移動式クレーンを積み込む方法を示す正面図(a)及び右側面図(b)である。
【
図13】運搬用車両に、移動式クレーンを積み込む方法を示す正面図(a)及び右側面図(b)である。
【
図14】運搬用車両に、移動式クレーンを積み込む方法を示す正面図(a)及び右側面図(b)である。
【
図15】運搬用車両に、移動式クレーンを積み込む方法を示す正面図(a)及び右側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るアウトリガ装置を搭載した移動式クレーンを例として説明する。
なお、図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0014】
<移動式クレーンの構成>
初めに、本実施形態に係るアウトリガ装置を備える移動式クレーンの構成について、
図1を用いて説明する。なお、以下において
図1に示す移動式クレーン1は、アウトリガ装置2を格納し固定した、走行可能な状態(以下、「走行姿勢」)を示す正面図であり、移動式クレーンの基台Bが配されている側(
図1左側)を「機体前側」とし、原動部Eが配されている側(
図1右側)を「機体後側」、機体の前後方向に対して右側を「機体右側」、左側を「機体左側」として説明する場合がある。なお、ホース類及びワイヤー等については図示省略している。
【0015】
産業用機械である移動式クレーン1は、シャシーフレームCFの上部における一方に基台Bが固定されており、他方に原動部Eが固定されている。基台Bの上部にクレーン装置CRが旋回可能に備えられている。また、シャシーフレームCFの下部に走行装置TRを備えている。
アウトリガ装置2は、基台Bを上面視したときの四隅に、基台Bに対して上下方向を向く軸回りに旋回可能に支持されている。なお、右下部Ba及び左下部Bbを図示し、右上部及び左上部は図示省略している。
【0016】
<アウトリガ装置の構成>
以下において、本実施形態に係るアウトリガ装置2の構成について
図2から
図5を用いて説明する。
なお、以下の説明において特に記載がない場合には、格納姿勢のアウトリガ装置2を正面視した
図2の状態を基準とし、
図2におけるアウトリガ装置2の左側を「機体側」、右側を「張り出し側」として説明する場合がある。
【0017】
まず、アウトリガ装置2のリンク機構について説明する。
図2に示すように、アウトリガ装置2は、基部であるブラケット10、第一揺動部材であるアームシリンダ20、第二揺動部材であるアーム30及び先端側部材であるスイングアーム40を備えている。
図2に示すように、アウトリガ装置2のブラケット10は、水平方向に延びる部材であり、詳細は後述するが、基端部10Aが基台Bに上下方向を向く軸回りに旋回可能に支持される。
【0018】
ブラケット10の先端側における約三分の一の部分10B(以下において、「先端部10B」と記載する。)は、下側に湾曲しており、且つ下面、上面及び張り出し側の面が解放された形状である。先端部10Bにおける張り出し側の上部には、前後方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である、第一格納固定孔15が形成されており、第一格納固定孔15よりも基端部10A側の下部分(基部における一の部分)には、前後方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である、第一アーム支持孔16が形成されている。
ブラケット10における上面の長手方向中央部には、正面視で略三角形状の支持部材13が固定されている。支持部材13は側面視で略U字形であり、また、支持部材13の上部(基部における他の部分)には、前後方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である、第一アームシリンダ支持孔14が形成されている。
【0019】
アームシリンダ20は、複動片ロッド型の油圧シリンダであり、シリンダチューブ20C、シリンダロッド20R及び保護板21を備えている。
シリンダチューブ20Cのヘッド側基端部には、前後方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である第二アームシリンダ支持孔22が形成されており、シリンダロッド20Rの先端部には、前後方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である第一スイングアーム支持孔23が形成されている。
【0020】
シリンダロッド20Rは、シリンダチューブ20Cの約2倍の長さを有している。そのため、アームシリンダ20を最も収縮させた状態においても、シリンダロッド20Rの全長のうち、約半分が露出する。また、シリンダロッド20Rの長手方向中央部には、保護板21の支持部が固定されている。保護板21は、シリンダロッド20Rが伸長したときに、シリンダチューブ20Cの内部から露出したシリンダロッド20Rの摺動面を覆い保護する。
【0021】
アーム30は、上下方向に延びる柱上の本体部31を備えており、本体部31の先端側に挟持部32を備えている。
本体部31は、基端部側に、前後方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である第二アーム支持孔36を備えている。
挟持部32は、下側の約三分の一に、水平方向に本体部31と同程度の幅を有する幅狭部32Aを有し、上側の約三分の二に、張り出し側に偏って幅が広くなっている幅広部32Bを有している板材である。挟持部32は、幅広部32Bが本体部31から上側に張り出すような向きで、本体部31の正面及び背面のそれぞれに幅狭部32Aが固定されている。
そして、本体部31を幅方向の中央付近で分割する仮想直線ILの挟持部32側の延長線上には、幅広部32Bの先端側に第二スイングアーム支持孔34が形成されている。
【0022】
スイングアーム40は、アウトリガ装置2が格納姿勢のときに上側に位置する基端部側の約三分の一の部分に、略平行四辺形状のリンク部40Aを有し、残りの約三分の二の部分に、張り出し側に偏ってリンク部40Aの約半分の幅を有し、且つ先端に向かうにつれて幅がわずかに狭くなる形状の脚部40Bを有している。脚部40Bの先端部には、接地板44が接地板軸45によって揺動可能に支持されている。
【0023】
リンク部40Aにおける機体側には、正面視で略三角形状であり、張り出し側以外が解放されている平面視で略コの字状の支持部材41が固定されている。支持部材41の正面及び背面における幅方向の中央部には、わずかに上側に偏って前後方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である、第三スイングアーム支持孔42が形成されている。また、リンク部40Aにおける機体側に張り出した部分における長手方向の中央部には、前後方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である第四スイングアーム支持孔43が形成されている。
【0024】
アームシリンダ20は、シリンダチューブ20Cの基部が支持部材13に挟み込まれ、第一アームシリンダ支持孔14と第二アームシリンダ支持孔22とに第一揺動軸である基端側アームシリンダピン24が嵌め込まれることによって、ブラケット10に揺動可能に支持される。
アーム30は、本体部31の基端部がブラケット10の先端部10Bに挟み込まれ、第一アーム支持孔16と第二アーム支持孔36とに第二揺動軸である基端側アームピン37が嵌め込まれることによって、ブラケット10に揺動可能に支持される。
【0025】
スイングアーム40は、アームシリンダ20におけるシリンダロッド20Rの先端が支持部材41に挟み込まれ、第一スイングアーム支持孔23と第三スイングアーム支持孔42とに、第三揺動軸である先端側アームシリンダピン25が嵌め込まれることによってアームシリンダ20に揺動可能に支持される。また、スイングアーム40のリンク部40Aがアーム30における挟持部32に挟み込まれ、第二スイングアーム支持孔34と第四スイングアーム支持孔43とに、第四揺動軸である先端側アームピン38が嵌め込まれることによって、アーム30に揺動可能に支持される。
【0026】
ブラケット10、アームシリンダ20、アーム30及びスイングアーム40がそれぞれ揺動可能に支持されることによって、アウトリガ装置2は四節リンク機構を構成する。
ブラケット10は、前後方向の軸回りにおける自由度を有さないため、アウトリガ装置2のリンク機構における静止節になる。よって、アームシリンダ20及びアーム30は、スイングアーム40における先端側アームシリンダピン25と、先端側アームピン38と、の間を連接節として、連動して揺動する揺動節になり、アウトリガ装置2は両てこ機構を構成する。
【0027】
アーム30及びスイングアーム40は、アウトリガ装置の張り出し操作及び格納操作を行うときに、作業者を補助するためのガススプリングS1、S2を備えている。
ガススプリングS1は、ロッドS1Rの先端部がアーム30の機体側の側面に支持されており、圧力チューブS1Cのヘッド側端部がスイングアーム40における支持部材41の直下に支持されている。ここで、ガススプリングS1は、ロッドS1Rを伸長させる方向に付勢されているため、アウトリガ装置2は格納姿勢になるように動作しようとする。
ガススプリングS2は、ロッドS2Rの先端部はアーム30の張り出し側の側面に支持されており、圧力チューブS2Cのヘッド側端部はスイングアーム40の脚部40Bにおける機体側の側面に支持されている。ここで、ガススプリングS2は、ロッドS2Rを収縮させる方向に付勢されているため、アウトリガ装置2は、さらに格納姿勢になるように動作しようとする。
【0028】
次に、アウトリガ装置2における両てこ機構の形状を固定する固定部について説明する。
図2に示すように、挟持部32における長手方向の中央部であり、且つ仮想直線ILの上には第二格納固定孔33が形成されている。幅広部32Bにおける本体部31の幅から張り出している部分には、第二格納固定孔33の中心と第二スイングアーム支持孔34の中心との間の長さに等しい半径を有する仮想円IC上に、アウトリガ装置2を最小張り出し位置に固定する最小張り出し位置固定孔35a、アウトリガ装置を中間張り出し位置に固定する中間張り出し位置固定孔35b及びアウトリガ装置を最大張り出し位置に固定する最大張り出し位置固定孔35cが、それぞれ中心を有するように形成されている。
【0029】
スイングアーム40におけるリンク部40Aの機体側下部には、前後方向を向き、正面側及び背面側に突出した張り出し固定ピン50が備えられており、脚部40Bの先端部には、前後方向を向き、正面側及び背面側に突出した格納固定ピン51が備えられている。
張り出し固定ピン50及び格納固定ピン51は、作業者の操作によって、スイングアーム40の正面及び背面から突出した突出姿勢と、スイングアーム40の正面及び背面から突出しないように引き込まれた引込姿勢とをとることができる。
【0030】
脚部40Bの張り出し側の側面における長手方向の中央部には、旋回角度固定ピン12、張り出し固定ピン50及び格納固定ピン51の姿勢を制御するための操作部である、ハンドル52が備えられている。ハンドル52は、基部53、握持部54及び張り出しレバー55を有している。基部53は、旋回角度固定ピン12にワイヤーを介して接続されている。また、張り出しレバー55は、張り出し固定ピン50及び格納固定ピン51にワイヤーを介して接続されている。
【0031】
図3は、格納固定ピン51の構造を示す側面図である。
張り出し固定ピン50及び格納固定ピン51は、第一格納固定孔15に嵌め込まれる円柱形の軸部56、軸部56の内側面端部に固定されている第一リンク57、一端が第一リンクの端部に揺動可能に接続されており且つ他端同士が揺動可能に接続されている第二リンク58、一端に第二リンク58の他端が揺動可能に接続されている第三リンク59及び一端が第三リンク59の他端に固定されており、他端が基部53及び張り出しレバー55から延びるワイヤーの端に固定されているソケット60を備えている。
【0032】
図4は、格納固定ピン51の収容部を右側面視した図である。軸部56は、左右方向(
図2における前後方向)のみに動作可能となるようにスイングアーム40に収容されており、ソケット60は上下方向にのみ動作可能となるようにスイングアーム40に収容されている。ハンドル52における張り出しレバー55を押し込むことによって、ワイヤーが引っ張られると、第三リンク59を介して第二リンク58が上方向に引っ張られ、第一リンク57同士の距離が近づく。第一リンク57の動作に連動して軸部56も互いに近づくため、軸部56はスイングアーム40から突出しなくなる。
なお張り出し固定ピン50も同様の構造であり、張り出し固定ピン50の軸部56は、第二格納固定孔33、最小張り出し位置固定孔35a、中間張り出し位置固定孔35b及び最大張り出し位置固定孔35cのいずれかに嵌め込まれる。
【0033】
次に、基台Bとアウトリガ装置2との支持部について説明する。
図2に示すように、ブラケット10における基端部10Aには、上下方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である旋回ピン支持孔11Aが形成されている。ブラケット10は、基台Bの板部B1、B2に上面と底面が挟み込まれ、旋回ピン支持孔11Aとフレーム側旋回ピン支持孔11Bとに旋回ピン11が嵌め込まれることによって支持される。
【0034】
ブラケット10における基端部10Aの端部分には、アウトリガ装置2の、基台Bに対する旋回角度を規定するための旋回角度固定ピン12が配されている。旋回角度固定ピン12は、作業者の操作によって、ブラケット10の上面よりも上方向に突出した突出姿勢と、ブラケット10の上面より低い高さになるように引き込まれた引込姿勢と、をとることができる。
【0035】
図5は、基台Bを上面視したときの右下部Baとブラケット10との接続部分を上面視した図である。
基台Bにおける、右下部Ba、左下部Bb、右上部(図示省略)、左上部(図示省略)のそれぞれには、旋回ピン11と同心であり、旋回ピン11よりも大径の円周上に中心を有し、上下方向に延びる直線に沿う方向の貫通孔である、旋回角度規定孔17が等間隔に連続して形成されている。旋回角度規定孔17は、旋回ピン11に対して機体前後方向中央側に位置する格納位置規定孔17aから、旋回ピン11に対して機体幅方向中央側に位置する最大展開位置規定孔17bまでの間の約90度にわたって設けられており、旋回角度固定ピン12が突出し嵌め込まれることで、基台Bに対するアウトリガ装置2の旋回角度を規定する。
作業者が握持部54を握り、ハンドル52をひねる方向に操作することで、ワイヤーに接続された旋回角度固定ピン12が引っ張られ、旋回角度固定ピン12は格納姿勢になる。そのため、アウトリガ装置2は、基台Bに対して上下方向を向く軸回りに旋回可能な状態になる。
【0036】
<アウトリガ装置の張り出し及び格納操作>
以下において、アウトリガ装置2の操作について
図2と、
図6から
図9とを用いて説明する。本実施形態におけるアウトリガ装置2は、張り出し姿勢をとるときに、最小張り出し姿勢、中間張り出し姿勢及び最大張り出し姿勢のいずれか一つを選択することができる。最小張り出し姿勢(図示省略)のとき、張り出し固定ピン50は、最小張り出し位置固定孔35aに嵌め込まれるように突出した状態となり、中間張り出し姿勢(図示省略)のとき張り出し固定ピン50は、中間張り出し位置固定孔35bに嵌め込まれるように突出した状態となり、最大張り出し姿勢(
図6実線部分)のとき、張り出し固定ピン50は、最大張り出し位置固定孔35cに嵌め込まれるように突出した状態となる。
【0037】
なお、以下の説明においては、アウトリガ装置2を最大張り出し姿勢に動作させる場合について説明する。また、移動式クレーン1を上面視したとき、基台Bの左下部Bbに支持されているアウトリガ装置2を左前側アウトリガ装置2FL、基台Bの右下部Baに支持されているアウトリガ装置2を左後側アウトリガ装置2RL、基台Bの右上部に支持されているアウトリガ装置2を右後側アウトリガ装置2RRと記載する場合があり、図示省略するが、基台Bの左上部に支持されているアウトリガ装置2を右前側アウトリガ装置と記載する場合がある。
【0038】
初めに、アウトリガ装置2が格納姿勢(
図2)のときは、格納固定ピン51がブラケット10における第一格納固定孔15に嵌め込まれるように突出した状態であるため、アウトリガ装置は固定されている。
【0039】
図6に示すように、アウトリガ装置2を格納姿勢から最大張り出し姿勢にするためには、まず、ハンドル52をひねり、旋回角度固定ピン12を基台Bの旋回角度規定孔17から抜き出す。次に、左前側アウトリガ装置2FL、左後側アウトリガ装置2RL、右後側アウトリガ装置2RR及び右前側アウトリガ装置を移動式クレーン1に対して放射状に展開されるように旋回させる。そのように旋回させた状態で、ハンドル52を元の角度に戻し、旋回角度固定ピン12を、基台の旋回角度規定孔17に嵌め込ませることで、アウトリガ装置2の水平方向における旋回角度を固定する。
【0040】
次に、張り出しレバー55を押し込み、張り出し固定ピン50及び格納固定ピン51を引き込ませる。作業者はその状態のまま、張り出し固定ピン50が最大張り出し位置固定孔35cに重なる位置までハンドル52を引き、アウトリガ装置2を張り出す。ここで、一点鎖線CL1は、アウトリガ装置2を張り出させたときにおける先端側アームシリンダピン25の中心の軌道を表しており、一点鎖線CL2は、アウトリガ装置2を張り出させた時における先端側アームピン38の中心の軌道を表している。また、一点鎖線CL3は、スイングアーム40における接地板軸45の中心の軌道を表している。スイングアーム40を張り出した後、張り出しレバー55を開放し、張り出し固定ピン50を最大張り出し位置固定孔35cに嵌め込むことで、アウトリガ装置2を固定する。ここで、アウトリガ装置2は、ガススプリングS1、S2によって格納姿勢をとる方向に動作するよう付勢されるため、作業者が張り出し方向に動作させるときには抵抗となる。そのため、アウトリガ装置2を張り出すときにアウトリガ装置2の自重によって、急速に動作することが防止される。
【0041】
図7に示すように、アウトリガ装置2の形状が、張り出し固定ピン50によって固定された後にアームシリンダ20を伸長させることで、スイングアーム40は下降するため、本動作を続けることで、接地板44を接地させる。ここで、一点鎖線CL4は、アウトリガ装置2を下降させた時における接地板軸45の中心の軌道を示している。接地板44が接地した後、さらにアームシリンダ20を伸長させることで、移動式クレーン1の走行装置TRをわずかに浮き上がらせ、アウトリガ装置2に荷重を移動させる。
図8に示すように、走行装置TRが地面Gから50mm程度の作業時高さH1まで離れたとき、移動式クレーン1は、アウトリガ装置2によって安定が確保された作業モードになる。
【0042】
ここで、
図8に示すように、アームシリンダ20のシリンダチューブ20Cは、接地板44が地面Gに設置しており、アウトリガ装置2に荷重が掛かっている場合であっても、さらに伸長方向に動作可能な分の余裕を有している。そのため、本実施形態に係るアウトリガ装置2は
図9に示すように、作業モードからさらにアームシリンダ20を最大付近まで伸長させることによって、走行装置TRの下面を地面Gから1200mm程度の積載時高さH2まで持ち上げた積載モードに変形させることが可能である。なお、積載モードの使用方法については後述する。
【0043】
アウトリガ装置2を格納する場合には、アームシリンダ20を収縮させ、移動式クレーン1の走行装置TRを接地させる。そして、さらにアームシリンダ20を収縮側のストロークエンドまで収縮させる。次に、作業者がハンドル52を保持しながら、張り出しレバー55を押し込み、張り出し固定ピン50及び格納固定ピン51を引込姿勢にしたまま、スイングアーム40を格納位置まで押し上げる。ここで、アウトリガ装置2は、ガススプリングS1、S2によって格納姿勢をとるように付勢されるため、作業者がスイングアーム40を押し上げようとするときの負担は軽減される。
【0044】
スイングアーム40が格納位置まで押し上げられた状態で、張り出しレバー55を開放することで、格納固定ピン51はブラケット10における第一格納固定孔15に嵌め込まれるように突出し、張り出し固定ピン50は第二格納固定孔33に嵌め込まれるように突出するため、アウトリガ装置2は格納姿勢に固定される。
アウトリガ装置2が格納状態に固定された後、作業者はハンドル52をひねり、旋回角度固定ピン12を引込姿勢にしながらアウトリガ装置2を旋回させる。アウトリガ装置2が旋回格納位置まで到達したときに、ハンドル52を元の角度に戻し、旋回角度固定ピン12を基台Bの格納位置規定孔17aに嵌め込まれるように突出させることで、アウトリガ装置2は固定され、移動式クレーン1は走行姿勢になる。
【0045】
<移動式クレーンの積み込み方法及び積み下ろし方法>
本実施形態に係るアウトリガ装置2を使用して、移動式クレーン1をトラックCVの荷台CAへ積み込むための手順について、
図10~
図15を用いて説明する。
初めに、
図10に示すようにアウトリガ装置2を格納姿勢にし、走行姿勢をとらせた移動式クレーン1を積み込み作業が可能な場所まで移動させる。次に、
図11に示すように、左前側アウトリガ装置2FL、左後側アウトリガ装置2RL、右後側アウトリガ装置2RR及び右前側アウトリガ装置をそれぞれ機体左右方向に約90度旋回させる。次に、
図12に示すように左前側アウトリガ装置2FL、左後側アウトリガ装置2RL、右後側アウトリガ装置2RR及び右前側アウトリガ装置を最大張り出し位置まで張り出させ、アームシリンダ20を伸長させることで、移動式クレーン1を持ち上げる。そして、
図13に示すように、移動式クレーン1を積載モードにし、走行装置TRをトラックCVの荷台CAよりも高い位置まで移動させた後、トラックCVを、移動式クレーン1を積み込む位置まで後退させる。なお、移動式クレーン1の積み込みは、荷台CAの右側煽りRG、左側煽りLG及び後煽りTGが開いた状態で行う。トラックCVを、移動式クレーン1の積み込み位置まで後退させた後に、
図14及び
図15に示すように、左前側アウトリガ装置2FL、左後側アウトリガ装置2RL、右後側アウトリガ装置2RR及び右前側アウトリガ装置を格納し、移動式クレーン1を走行姿勢にする。最後に、移動式クレーン1を荷台CAに固定し、側煽りRG、LG及び後煽りTGを閉じることで、積み込みが完了する。
【0046】
本実施形態に係るアウトリガ装置2を使用して、移動式クレーン1をトラックの荷台から積み下ろすためには、初めに、
図15に示すようにトラックCVの右側煽りRG、左側煽りLG及び後煽りTGを開く。次に、
図14に示すように左前側アウトリガ装置2FL、左後側アウトリガ装置2RL、右後側アウトリガ装置2RR及び右前側アウトリガ装置をそれぞれ機体の左右方向に約90度旋回させる。次に、
図13に示すように、左前側アウトリガ装置2FL、左後側アウトリガ装置2RL、右後側アウトリガ装置2RR及び右前側アウトリガ装置をトラックCVの荷台CAの外側まで張り出させ、移動式クレーン1の走行装置TRと、トラックCVの荷台CAと、の間に空間が形成されるまで移動式クレーン1を持ち上げる。そして、
図12に示すようにトラックCVを前進させることで移動式クレーン1を積み下ろす。積み下ろし後に移動式クレーン1を下降させ、走行装置TRを接地させる。走行装置TRが接地した後、左前側アウトリガ装置2FL、左後側アウトリガ装置2RL、右後側アウトリガ装置2RR及び右前側アウトリガ装置を
図14に示すように格納し、
図10に示すように走行姿勢をとった後、作業場所まで移動させる。
【0047】
<効果>
本発明に係るアウトリガ装置2は、両てこ機構によって接地板44が大きく持ち上がることなく張り出し位置に移動する。そのため、従来のアウトリガ装置と比較して、短い下降動作で接地板44を接地させことができる。この動作には、従来のアウトリガ装置においては縦アウトリガシリンダが用いられ、本発明に係るアウトリガ装置2においてはアームシリンダ20が用いられるが、接地板44を接地させるまでに必要な動作量が少なくなった分、シリンダのストロークを短くすることができる。
【0048】
また、従来のアウトリガ装置における縦アウトリガシリンダの動作は、基端側アーム及び先端側アームを単に起伏させるだけの低負荷動作が多く、移動式クレーンを持ち上げるような性能を発揮することができる動作範囲は限られていた。
ここで、本発明に係るアウトリガ装置2は、上述の通り、接地板44が大きく上昇することなく移動するため、低い負荷しか掛からない動作範囲を短くすることができる。そのため、シリンダのストロークを効率よく使用することができ、アームシリンダ20の動作効率を向上させることができる。
【0049】
本実施形態におけるアウトリガ装置2は、ハンドル52をひねり方向に回転させることで、アウトリガ装置2を移動式クレーン1に対して横方向に旋回可能な状態にすることができ、張り出しレバー55を押し込むことでアウトリガ装置を張り出し可能な状態にすることができる。そのため、旋回角度固定ピン12、張り出し固定ピン50及び格納固定ピン51を、作業者が引き抜き、アウトリガ装置を任意の姿勢になるように操作してから再度嵌め込むようなアウトリガ装置を用いる場合と比べて、作業者がハンドル52を保持できる位置から移動する必要がなく、ピンの抜き差しを行う必要もない。また、ハンドル52のみによって、旋回角度固定ピン12の操作と張り出し固定ピン50及び格納固定ピン51の操作を行うことができるため、アウトリガ装置2の展開及び格納作業を行うときにハンドル52から手を放す必要がなく、アウトリガ装置2の操作が容易になる。
【0050】
本発明に係るアウトリガ装置を用いることで、移動式クレーン1の積み込み及び積み下ろしを、クレーン装置を用いずに行うことができるため、移動式クレーンの搬入及び搬出における作業時間を短縮可能であり、また、車載クレーン等を搭載していないトラックにも移動式クレーン1を積載することが可能になる。
【0051】
以上から、本発明に係るアウトリガ装置を用いることで、アウトリガ装置を備える産業用機械における、接地姿勢と走行姿勢との姿勢変更に必要な時間を短縮することができ、且つアウトリガ装置の上昇及び下降動作に用いられる伸縮部材の動作効率を向上させることもできる。
また、本発明に係る積み込み及び積み下ろし方法を用いることで、産業用機械を、容易にトラック等の荷台に積み込み及び積み下ろすことができる。
【0052】
<変形例>
本実施形態において、アームシリンダ20は両てこ機構の機体側に配置される第一揺動部材として説明したが、アームシリンダ20を両てこ機構の張り出し側に配置される第二揺動部材としてもよく、また、第一揺動部材及び第二揺動部材を共に油圧シリンダにしてもよい。
アームシリンダ20を第二揺動部材にした場合には、アームシリンダ20のヘッド側基端部が支持され、第一揺動部材には長さが一定のアームが配置される。このような構成とした場合には、アウトリガ装置2が格納姿勢をとっているときには、アームシリンダ20は最大まで伸長した姿勢をとる。また、接地板44を接地させるために降下操作を行うときには、アームシリンダ20を収縮させることで、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
第一揺動部材及び第二揺動部材を共に油圧シリンダとした場合には、それぞれの油圧シリンダを伸縮させることで接地板44を機体からより遠くに接地させることが可能になり、また、スイングアーム40の角度を変更可能になるため、狭所におけるアウトリガ装置2の張り出し及び接地を行いやすくなる。
【0053】
本実施形態において、アームシリンダ20は、移動式クレーン1が作業モードをとっている状態からさらに伸長可能な分の余裕を有しているが、
図10~
図15に示した積み込み及び積み下ろし方法を不要とする産業用機械の場合は、この分の余裕を有さない油圧シリンダをアームシリンダ20として使用してもよい。その場合、シリンダチューブ20Cの長さ及びシリンダロッド20Rの摺動部分を短くすることができ、アームシリンダ20の生産コストを減少させることができる。
【0054】
本実施形態において、ブラケット10は、旋回ピン11の軸回りに旋回可能となるように基台Bに支持されているが、ブラケット10は基台に固定されていてもよい。そのような構成にした場合、アウトリガ装置2を搭載する産業用機械が最大の性能を発揮可能な向きにアウトリガ装置2の張り出し方向を固定できるため、アウトリガ装置を張り出させるときの、作業者の確認負担を減少させることができる。
【0055】
本実施形態において、旋回角度固定ピン12の姿勢を切り替えるためには、作業者がハンドル52をひねる操作を行い、張り出し固定ピン50及び格納固定ピン51の姿勢を切り替えるためには、作業者が張り出しレバー55を押し込む操作を行っていたが、それぞれの固定ピンを操作するために別の方法を用いてもよい。
例えば、ハンドル52の直上または直下に、旋回角度固定ピン12を操作するためレバーを備えた第二のハンドルをさらに設けたり、リング状の引手部を備えた張り出しレバー55をハンドル52の基部53側に設け、作業者がこの引手部を指で引くことでそれぞれの固定ピンを操作可能にしたりしてもよい。
【0056】
他には、旋回角度固定ピン12、張り出し固定ピン50及び格納固定ピン51を、ブラケット10及びスイングアーム40から脱着可能な別部材とし、アウトリガ装置を旋回及び変形させるときに、作業者が抜き差しすることで固定状態及び非固定状態を制御してもよい。このような構成の場合、固定ピン一本を張り出し固定ピン50及び格納固定ピン51の両方に使用することもできる。即ち、共通の固定ピンが、アウトリガ装置2が格納姿勢のときには、格納固定ピン51として第一格納固定孔15に嵌め込まれ、アウトリガ装置2を最大まで張り出させる時には、第一格納固定孔15から共通の固定ピンを引き抜き、アウトリガ装置2を張り出してから最大張り出し位置固定孔35cに張り出し固定ピン50として嵌め込まれる。
【0057】
本実施形態において、アウトリガ装置2を張り出すときの変形動作の減速機構及びアウトリガ装置2を格納するときの作業者の補助機構として、アウトリガ装置2が格納姿勢に変形しようとする向きに付勢するガススプリングS1、S2を備える場合について説明したが、これらの機構は必ずしもガススプリングS1、S2を用いなくてもよい。
他の構成要素として、例えば、両てこ機構の揺動軸回りに、アウトリガ装置2が格納姿勢をとるよう付勢するねじりバネを設けてもよい。また、変形動作の減速機構として、例えば、両てこ機構の揺動軸回りにロータリーダンパーを設けてもよい。
【0058】
本実施形態においては、四か所にアウトリガ装置2が備えられている移動式クレーン1を例として説明したが、例えば車両搭載型クレーンのような、車両の左右に一基ずつアウトリガ装置が備えられている産業用機械に対して、本発明に係るアウトリガ装置を搭載することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 移動式クレーン
2 アウトリガ装置
2FL アウトリガ装置
2RL アウトリガ装置
2RR アウトリガ装置
10 ブラケット
10A 基端部
10B 先端部
11 旋回ピン
11A 旋回ピン支持孔
11B フレーム側旋回ピン支持孔
12 旋回角度固定ピン
13 支持部材
14 第一アームシリンダ支持孔
15 第一格納固定孔
16 第一アーム支持孔
17 旋回角度規定孔
17a 格納位置規定孔
17b 最大展開位置規定孔
20 アームシリンダ
20C シリンダチューブ
20R シリンダロッド
21 保護板
22 第二アームシリンダ支持孔
23 第一スイングアーム支持孔
24 基端側アームシリンダピン
25 先端側アームシリンダピン
30 アーム
31 本体部
32 挟持部
32A 幅狭部
32B 幅広部
33 第二格納固定孔
34 第二スイングアーム支持孔
35a 最小張り出し位置固定孔
35b 中間張り出し位置固定孔
35c 最大張り出し位置固定孔
36 第二アーム支持孔
37 基端側アームピン
38 先端側アームピン
40 スイングアーム
40A リンク部
40B 脚部
41 支持部材
42 第三スイングアーム支持孔
43 第四スイングアーム支持孔
44 接地板
45 接地板軸
50 張り出し固定ピン
51 格納固定ピン
52 ハンドル
53 基部
54 握持部
55 張り出しレバー
56 軸部
57 第一リンク
58 第二リンク
59 第三リンク
60 ソケット
B 基台
B1 板部
B2 板部
Ba 右下部
Bb 左下部
CA 荷台
CF シャシーフレーム
CR クレーン装置
CV トラック
E 原動部
G 地面
H1 作業時高さ
H2 積載時高さ
IC 仮想円
IL 仮想直線
LG 左側煽り
RG 右側煽り
S1 ガススプリング
S1C 圧力チューブ
S1R ロッド
S2 ガススプリング
S2C 圧力チューブ
S2R ロッド
TG 後煽り
TR 走行装置