(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061476
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】移動式クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 23/78 20060101AFI20240425BHJP
B66C 23/90 20060101ALN20240425BHJP
【FI】
B66C23/78 E
B66C23/90 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169448
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】506002823
【氏名又は名称】古河ユニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】郡 昭彦
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA07
3F205CA07
3F205DA04
3F205FA05
3F205FA06
(57)【要約】
【課題】機体に対するクレーン装置の旋回角度に関わらず、クレーン装置の最大性能を発揮可能であり且つブームの長さも確保可能である、作業性を向上可能な移動式クレーンを提供することを目的とする。
【解決手段】基台10の上面中央部には、重心部Cを通り上下方向に延びる直線を中心とする貫通孔であるクレーン装置支持孔15が形成されている。また、右前側突出部11には上下方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である第一アウトリガ装置支持孔16が形成されており、左前側突出部12には上下方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である第二アウトリガ装置支持孔17が形成されており、右後側突出部13には上下方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である第三アウトリガ装置支持孔18が形成されており、左後側突出部14には上下方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である第四アウトリガ装置支持孔19が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に走行装置を備え且つ上部に上下方向を向く軸回りに旋回可能なクレーン装置を備えた機体と、該機体に対して上下方向を向く軸回りに旋回可能且つ張り出し可能な4基のアウトリガ装置とを備えた移動式クレーンであって、
前記アウトリガ装置は、前記機体上に想定される水平な仮想長方形の頂点に旋回中心が設けられており、
前記クレーン装置は、前記仮想長方形の対角線同士の交点に旋回中心が設けられていることを特徴とする移動式クレーン。
【請求項2】
前記クレーン装置は、前記機体に対して起伏可能なコラムと、該コラムの上端に起伏可能に連結されたブームと、を備え、前記コラムが前記機体に対して上下方向を向くクレーン旋回中心軸の軸回りに旋回可能であることを特徴とする請求項1に記載の移動式クレーン。
【請求項3】
前記ブームは伸縮可能であり、前記ブームが最も縮んだときの寸法は前記移動式クレーンの全長と等しい又は略等しいことを特徴とする請求項2に記載の移動式クレーン。
【請求項4】
前記コラムを起伏させる時の揺動軸であるコラム軸と、前記ブームを起伏させる時の揺動軸であるブーム軸との間の水平距離は、前記コラムが最大まで伏せた姿勢をとったときに、前記コラム軸から前記機体における前後方向の少なくとも一方の端部までの水平距離と略等しくなることを特徴とする請求項3に記載の移動式クレーン。
【請求項5】
前記コラムを最大まで伏せたときの該コラムの上端部は、前記機体の前後方向端部に位置していることを特徴とする請求項3に記載の移動式クレーン。
【請求項6】
前記コラム軸と、前記ブーム軸との間の水平距離は、前記コラムが最大まで立ち上がった姿勢をとったときに、略ゼロとなることを特徴とする請求項4に記載の移動式クレーン。
【請求項7】
前記コラムが起き上がった姿勢をとったとき、前記ブームを起伏させる時の揺動軸であるブーム軸と前記クレーン旋回中心軸との間の水平距離は、前記コラムを起伏させる時の揺動軸であるコラム軸と前記クレーン旋回中心軸との間の水平距離よりも短いことを特徴とする請求項2から6のうちいずれかに記載の移動式クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のアウトリガ装置を備えた移動式クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレームの下部に備えられたクローラで走行する走行体を備えた移動式クレーンは、基台の右前、左前、右後ろ及び左後ろにアウトリガ装置を備えており、基台の上面には、起伏動作が可能なクレーン装置が搭載されている。これらのアウトリガ装置は、機体に対して放射状に展開可能且つ張り出し可能である。そして、それぞれのアウトリガ装置を接地させることで機体の安定を図るようになっている。また、このような移動式クレーンは、アウトリガ装置及びクレーン装置を格納することで、機体の長さ、幅及び高さを作業状態よりも小さくすることができ、比較的狭い場所にも進入して作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の移動式クレーンは、狭小地等への進入を容易にするため、移動時の姿勢における機体の全長を短くしつつ、作業時に広い作業範囲を確保するために、クレーン装置の旋回中心を機体前側に偏って設けている。
しかし、このような移動式クレーンは、それぞれのアウトリガ装置を最大まで張り出させた時に、機体前側に備えられているアウトリガ装置の接地部からクレーン装置の旋回中心軸までの水平距離と、機体後側に備えられているアウトリガ装置の接地部からクレーン装置の旋回中心までの水平距離とが異なる。
【0005】
上記のような移動式クレーンは、旋回角度ごとの定格荷重がアウトリガ装置を境として異なるため、それぞれのアウトリガ装置によって区切られた旋回領域ごとに過負荷防止装置が作動する荷重の閾値を変化させている。そのため、ある旋回領域で吊り上げた荷を運搬するためにクレーン装置を旋回させた場合に、吊り荷が、荷重の閾値が低くなるような旋回領域に進入しそうになると、過負荷防止装置が作動し、クレーン装置の動作が停止する場合がある。そのような場合には、一度作業を中断し、定格荷重表等を確認し、吊り荷を運搬させることができるような位置に移動式クレーン1を移動させてから、再度作業を行う必要があり、吊り荷の運搬作業を行う際の効率を低下させる原因となる。
【0006】
上記のような移動式クレーンに、最大の吊り上げ性能を発揮させるためには、それぞれのアウトリガ装置を所定の角度に展開する必要がある。しかし、クレーン装置の旋回中心軸が機体前側に偏っているため、最大の吊り上げ性能を発揮させるための展開角度が前側のアウトリガ装置と後側のアウトリガ装置とで完全には一致しない。そのため、アウトリガ装置を接地させるまでに、すべてのアウトリガ装置の展開角度を確認しなければならず、作業者の負担を増加させる原因となっている。
仮に所定の展開角度に設定されていない場合には、最大性能以下の負荷が掛かったときにも過負荷防止装置が作動するため、作業を中断しなければならず、吊り荷の運搬作業を行う際の効率を低下させる原因となる。
【0007】
さらに、上記のような移動式クレーン1は、所定の場合には、すべての旋回領域における過負荷防止装置が作動する荷重の閾値が、他の旋回領域よりも吊り上げ性能が低く設定されている、機体前側の旋回領域における吊り上げ性能に制限される場合がある。
しかし、すべてのアウトリガ装置を最大まで張り出して接地させた場合、機体後側のアウトリガ装置における接地部からクレーン旋回中心軸までの距離は、機体前側のアウトリガ装置の接地部からクレーン旋回中心軸までの距離よりも長くなる。即ち、機体後側のアウトリガ装置は、過剰に張り出しを行った状態になり、機体右側、機体左側及び機体後側の旋回領域における吊り上げ性能は過剰に制限される。そのため、機体前側の旋回領域に吊荷が進入しないような場合であっても、吊り上げ性能を制限されたまま作業を行わなければならず、吊り荷の運搬作業を行う際の効率を低下させる原因となる。
【0008】
そこで、本発明は、機体に対するクレーン装置の旋回角度に関わらず、クレーン装置の最大性能を発揮可能であり且つブームの長さも確保可能である、作業性を向上可能な移動式クレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の発明は、下部に走行装置を備え且つ上部に上下方向を向く軸回りに旋回可能なクレーン装置を備えた機体と、該機体に対して上下方向を向く軸回りに旋回可能且つ張り出し可能な4基のアウトリガ装置を備えた移動式クレーンであって、
前記アウトリガ装置は、前記機体上に想定される水平な仮想長方形の頂点に旋回中心が設けられており、
前記クレーン装置は、前記仮想長方形の対角線同士の交点に旋回中心が設けられていることを特徴とする移動式クレーンである。
【0010】
第二の発明は、第一の発明における、前記クレーン装置は、前記機体に対して起伏可能なコラムと、該コラムの上端に起伏可能に連結されたブームと、を備え、前記コラムが前記機体に対して上下方向を向く軸回りに旋回可能であることを特徴とする移動式クレーンである。
第三の発明は、第二の発明における、前記ブームは伸縮可能であり、前記ブームが最も縮んだときの寸法は前記移動式クレーンの全長と等しい又は略等しいことを特徴とする移動式クレーンである。
【0011】
第四の発明は、第三の発明における、前記コラムを起伏させる時の揺動軸であるコラム軸と、前記ブームを起伏させる時の揺動軸であるブーム軸との間の水平距離は、前記コラムが最大まで伏せた姿勢をとったときに、前記コラム軸から前記機体の前後方向端部までの水平距離と略等しいことを特徴とする移動式クレーンである。
第五の発明は、第三の発明における、前記コラムを最大まで伏せたときの該コラムの上端は、前記機体の前後方向端部に位置していることを特徴とする移動式クレーンである。
【0012】
第六の発明は、第四の発明における、前記コラム軸と、前記ブーム軸との間の水平距離は、前記コラムが最大まで立ち上がった姿勢をとったときに、略ゼロとなることを特徴とする移動式クレーンである。
第七の発明は、第二の発明から第六の発明のうちひとつにおいて、前記コラムが略垂直な起伏姿勢をとったとき、前記ブーム軸と、前記クレーン旋回軸との間の水平距離は、短いことを特徴とする移動式クレーンである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、機体に対するクレーン装置の旋回角度に関わらず、クレーン装置の最大性能を発揮可能であり且つブームの長さも確保可能である、作業性を向上可能な移動式クレーン1を提供することがかのうである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】走行姿勢をとっている移動式クレーンの正面図である。
【
図2】作業姿勢をとっている移動式クレーンの正面図である。
【
図4】最大張り出し姿勢をとっているアウトリガ装置の正面図である。
【
図5】基台におけるアウトリガ装置の支持部を示す平面図である。
【
図6】走行姿勢をとっているときの、コラムの姿勢を示す正面図である。
【
図7】作業姿勢をとっているときの、コラムの姿勢を示す正面図である。
【
図8】移動式クレーンの領域性能を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る移動式クレーンについて、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚さと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なる場合があることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0016】
<移動式クレーンの構成>
初めに、
図1及び2図を参照して本実施形態に係る移動式クレーン1について説明する。なお、以後の説明において、基台10が備えられている側(
図1における左側)を「機体前側」とし、原動部Eが備えられている側(
図1における右側)を「機体後側」として説明する場合がある。また、第一アウトリガ装置OR1、第二アウトリガ装置OR2、第三アウトリガ装置OR3及び第四アウトリガ装置OR4は、同一の構成であるため、区別する必要がない場合にはアウトリガ装置ORとして説明する。
【0017】
図1は、走行姿勢をとっているときの移動式クレーン1の正面図である。
移動式クレーン1は下部に走行装置TRを有するシャシーフレームCFを備えている。シャシーフレームCFの上部には、機体前側に基台10が固定されており、機体後側に原動部Eが固定されている。
基台10を上面視したときの右前側には、第一アウトリガ装置OR1(
図1においては図示を省略する)が備えられており、左前側には、第二アウトリガ装置OR2が備えられている。また、右後側には、第三アウトリガ装置OR3(
図1においては図示を省略する)が備えられており、左後ろ側には、及び第四アウトリガ装置OR4が支持されている。詳細は後述するが、第一アウトリガ装置OR1~第四アウトリガ装置OR4は、張り出し可能且つ上下方向を向く軸回りに展開可能に構成されている。
基台10の上部における中央部にはクレーン装置20が上下方向を向く軸回りに旋回可能に支持されている。
【0018】
移動式クレーン1が走行姿勢のとき、クレーン装置20は、その長手方向が機体前後方向に延びる向きの直線に沿い、且つ後述するコラム101が機体前側を向くような旋回角度をとっている。また、すべてのアウトリガ装置ORも、張り出し方向が機体前後方向の直線に沿う展開角度となる格納姿勢をとっている。
図2は、作業姿勢をとっているときの移動式クレーン1の正面図である。
移動式クレーン1が作業姿勢のとき、アウトリガ装置ORは、移動式クレーン1から平面視で放射状に展開し且つ張り出した姿勢で接地している。移動式クレーン1が作業姿勢をとっているとき、クレーン装置20は起伏動作、伸縮動作、旋回動作を行うことができる。
【0019】
<基台の構造>
次に基台10の構造について
図3を参照して説明する。
基台10は、上面視で右前側、左前側、右後側及び左後側に突出部を有する略X字形の部材である。なお、以下において各位置の突出部を、右前側突出部11、左前側突出部12、右後側突出部13及び左後側突出部14として説明する。
【0020】
基台10の上面中央部には、重心部Cを通り上下方向に延びる直線を中心とする貫通孔であるクレーン装置支持孔15が形成されている。右前側突出部11には上下方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である第一アウトリガ装置支持孔16が形成されている。左前側突出部12には上下方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である第二アウトリガ装置支持孔17が形成されている。右後側突出部13には上下方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である第三アウトリガ装置支持孔18が形成されている。左後側突出部14には上下方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である第四アウトリガ装置支持孔19が形成されている。
第一アウトリガ装置支持孔16、第二アウトリガ装置支持孔17、第三アウトリガ装置支持孔18及び第四アウトリガ装置支持孔19は、基台10の平面におけるそれぞれの中心が、重心部Cを中心とする水平な仮想円ICに重なるように配されている。
【0021】
以上の位置関係から、第一アウトリガ装置支持孔16の中心から第二アウトリガ装置支持孔17の中心までを結ぶ第一仮想直線IL1、第二アウトリガ装置支持孔17の中心から第四アウトリガ装置支持孔19の中心までを結ぶ第二仮想直線IL2、第四アウトリガ装置支持孔19の中心から第三アウトリガ装置支持孔18の中心までを結ぶ第三仮想直線IL3及び第三アウトリガ装置支持孔18の中心から第一アウトリガ装置支持孔16の中心までを結ぶ第四仮想直線IL4によって、水平な第一仮想長方形ISC1が形成される。そして、第一仮想長方形ISC1における対角線の、第一アウトリガ装置支持孔16の中心から第四アウトリガ装置支持孔19の中心までを結ぶ第五仮想直線IL5と、第二アウトリガ装置支持孔17の中心から第三アウトリガ装置支持孔18の中心までを結ぶ第六仮想直線IL6との交点は、クレーン装置支持孔15の中心である重心部Cとなる。即ち、クレーン装置支持孔15の中心は、第一仮想長方形ISC1の対角線の交点に設けられている。
【0022】
<アウトリガ装置の構成>
次に、アウトリガ装置ORの構成について
図4を参照して説明する。
なお、以下の説明において、ブラケット30における基端部30Aの側(
図4における左側)を「機体側」とし、先端部30Bの側(
図4における右側)を「張り出し側」として説明する場合がある。
アウトリガ装置ORは、ブラケット30、アームシリンダ36、アーム38及びスイングアーム41を備えており、これらの部材によって両てこ機構を構成する。格納姿勢(
図1)から最大張出姿勢(
図4)までの姿勢の変更は、作業者によるアウトリガ装置ORの押し込み及び引き出しによって行う。
【0023】
ブラケット30は、水平方向に延びる部材であり、基端部30Aの側に上下方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔であるアウトリガ装置支持孔31が形成されている。
またブラケット30における上面には、機体側に張り出し部32が形成されており、張り出し部32から約三分の一下の部分には、機体側に突出した張り出し部33が形成されている。張り出し部32、33には、上下方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である展開角度固定孔32A、33Aが形成されている。
ブラケット30の先端部30Bは、上面視で略C字形状であり、上部に水平方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である格納固定孔34が形成されている。
ブラケット30の上面における長手方向の中央部には、側面視で略U字形の支持部材35が設けられている。
【0024】
アームシリンダ36は、油圧で動作する複動片ロッドシリンダであり、シリンダロッド36Rには、シリンダロッド36Rの摺動面を保護するための保護板37が固定されている。
アーム38は、柱状の本体部38A及び本体部38Aの正面及び背面に固定されている挟持部39を備えている。挟持部39は、アーム38における短手方向の一方に偏って幅広部39Aを有している。幅広部39Aには、円弧上に連なって中心を有し、水平方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である、最小張出位置固定孔40a、中間張出位置固定孔40b及び最大張出位置固定孔40cが形成されている。
【0025】
スイングアーム41は柱状の部材であり、幅広のリンク部41A及びリンク部41Aの約半分の幅を有しリンク部41Aにおける幅方向の一方に偏った位置から延びる脚部41Bを有している。リンク部41Aにおける機体側の側面の上部には、上面視で略コの字形の支持部材42が設けられている。また、リンク部41Aが脚部41Bの幅から、はみ出している部分の下部には、前後方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である張り出し固定孔43が形成されている。脚部41Bの先端部からわずかに基端部側の位置には、水平方向に延びる直線に沿う向きの貫通孔である格納固定孔44が形成されており、先端部には接地部Fが設けられている。また、脚部41Bの上下方向中央付近には、アウトリガ装置ORを操作するときに作業者が握持するためのハンドルHAが備えられている。
【0026】
アームシリンダ36は、シリンダチューブ36Cのヘッド部が支持部材35に挟み込まれ、基端側アームシリンダピン50が嵌め込まれることによって、ブラケット30に揺動可能に支持されている。
アーム38は、本体部38Aの基端部がブラケット30の先端部に挟み込まれ、基端側アームピン51が嵌め込まれることによって、ブラケット30に揺動可能に支持されている。
スイングアーム41は、アームシリンダ36におけるシリンダロッド36Rの先端が支持部材42に挟み込まれ、先端側アームシリンダピン52が嵌め込まれることによってアームシリンダ36に揺動可能に支持されている。また、スイングアーム41のリンク部41Aがアーム38の挟持部39に挟み込まれ、先端側アームピン53が嵌め込まれることによって、アーム38に揺動可能に支持されている。
【0027】
アウトリガ装置ORが格納姿勢(
図1)をとっているときは、ブラケット30における格納固定孔34とスイングアーム41における格納固定孔44とが重なりあう。
このときに、それぞれの格納固定孔34、44に、固定ピン54が嵌め込まれることで、アウトリガ装置ORの形状が固定されている。
【0028】
<基台におけるアウトリガ装置の支持部>
次に、基台10におけるアウトリガ装置ORの支持部について、
図5を参照し、第一アウトリガ装置OR1の支持部である右前側突出部11を例に説明する。なお、左前側突出部12、右後側突出部13及び左後側突出部14も同様の構成であるため、図示を省略する。
【0029】
第一アウトリガ装置OR1は、基台10の右前側突出部11に形成されている第一アウトリガ装置支持孔16及び、第一アウトリガ装置OR1におけるブラケット30に形成されているアウトリガ装置支持孔31にアウトリガ旋回軸OSが嵌め込まれることによって、基台10に上下方向を向く軸回りに揺動可能に支持されている。
【0030】
第一アウトリガ装置OR1の展開角度は、右前側突出部11に形成されている展開角度固定孔61~65のいずれか一つと、第一アウトリガ装置OR1のブラケット30における展開角度固定孔32A、33Aと、に展開角度固定ピン70が嵌め込まれることによって規定される。
右前側突出部11において、基台10における前後方向の中央に最も近い位置(
図5における下側)に形成されている展開角度固定孔61は、移動式クレーン1が走行姿勢をとるときに第一アウトリガ装置OR1の向きを機体の前後方向に沿う向きに固定するときに用いられる。
【0031】
右前側突出部11において基台10における重心部Cに最も近い位置(
図5における左下側)に形成されている展開角度固定孔63は、後述する統一角度Anに、第一アウトリガ装置OR1を固定するときに用いられる。基台10の幅方向における中央に最も近い位置(
図5における左側)に形成されている展開角度固定孔65は、第一アウトリガ装置OR1を基部Bの左右方向に沿う向きに固定するときに用いられる。また、展開角度固定孔61と展開角度固定孔63との間に形成されている展開角度固定孔62及び展開角度固定孔63と展開角度固定孔65との間に形成されている展開角度固定孔64は、移動式クレーン1を狭小地などで使用する場合であっても、第一アウトリガ装置OR1を展開可能にするために形成されている。
【0032】
<クレーン装置の構成>
次に、クレーン装置20の構成について
図2、
図6及び
図7を参照して説明する。
なお、以下において、特に記載がない限り、移動式クレーン1は走行姿勢をとっている状態を基準として説明する。そのため、
図6及び
図7において、コラム101が備えられている側を「前側」とし、ブームシリンダ102が備えられている側を「後側」として説明する場合がある。
【0033】
図2に示すように、クレーン装置20は、旋回基台100、コラム101、ブームシリンダ102、ブーム103及びコラムシリンダ104を備えており、ブーム103の先端部にジブ105、ジブシリンダ106及びジブリンク107を備えている。
旋回基台100は、下部100Aが円形であり、上部100Bが側面視で略U字形の部材である。
コラム101は、長手方向の中央部が後側に膨らんだウィンチカバーWCを有している柱状の部材である。
【0034】
ブームシリンダ102は、油圧で動作する2本の複動片ロッドシリンダである。
ブーム103は、最も伸縮した状態の長さLBが移動式クレーン1の前後方向の長さと略等しい入れ子状の伸縮機構を備えた柱状の部材である。
なお、前後方向の長さが略等しいとは、例えば、ブーム103の長さLBが、移動式クレーン1の下部走行体の全長LFと比べて、最大で220mm程度長い、又は最小で10mm程度短い範囲に形成されていることをいう。
【0035】
ブーム103の基端部103Aは、下方向に突出した形状であり、また、基端部103Aから先端部に向かって、コラムピン110からブームシリンダピン111までの間の水平距離と略同じ距離離れた位置に、基端部103Aと略同じ長さの分下側に突出した形状の支持部103Bを有している。また、基端部103Aと支持部103Bとの間にはウィンチWが備えられている。
コラムシリンダ104は、油圧で動作する複動片ロッドシリンダである。
【0036】
図6及び
図7に示すように、旋回基台100は、下部100Aが基台10のクレーン装置支持孔15に嵌め込まれるように支持されている。
コラム101は、基端部が旋回基台100における前側の上下方向中央付近に、移動式クレーン1の左右方向を向く軸である、コラムピン110によって揺動可能に支持されている。
ブームシリンダ102は、シリンダチューブのヘッド部が、旋回基台100の正面及び背面における後側の上下方向中央付近に、コラムピン110に平行な向きの軸であるブームシリンダピン111によって揺動可能に支持されている。
【0037】
ブーム103は、基端部103Aが、コラム101の先端部にコラムピン110と平行な向きの軸である第一ブームピン112によって揺動可能に支持されており、支持部103Bが、ブームシリンダ102のシリンダロッド先端部に、コラムピン110と平行な向きの軸である第二ブームピン113によって揺動可能に支持されている。
コラムシリンダ104は、シリンダチューブのヘッド部が、旋回基台100の後側における上部分に第一コラムシリンダピン114によって揺動可能に支持されており、シリンダロッドの先端部がコラムの長手方向中央部に第二コラムシリンダピン115によって揺動可能に支持されている。
【0038】
図2に示すように、ジブ105は、入れ子式の伸縮機構を備えており、基端部がブーム103の伸縮機構における最も内側の部材の先端部に水平方向を向く軸回りに揺動可能に支持されている。ジブの伸縮機構における最も内側の部材の先端部には、シーブSが備えられている。シーブSからは、ウィンチWから延びたワイヤーWIに固定されているフックHOが吊り下げられている。
【0039】
ジブ105は、さらに、ジブシリンダ106及びジブリンク107を介してもブームに揺動可能に支持されている。ジブシリンダ106は、油圧で動作する複動片ロッドシリンダであり、ジブリンク107は、ブーム103の先端部及びジブ105の基端部に揺動可能に支持されている。ジブシリンダ106が伸長することによって、ジブ105は起き上がる方向に動作する。また、ジブ105は、ジブシリンダ106が収縮することによって、ブーム103の下側に折りたたまれ、ジブシリンダ106が最小の長さまで収縮したとき、ブーム103と略平行な角度になる。
【0040】
図6及び
図7に示すように、旋回基台100、コラム101、ブームシリンダ102及びブーム103は、コラムピン110、ブームシリンダピン111、第一ブームピン112及び第二ブームピン113を軸としてリンク機構を構成している。そして、ブームシリンダ102が最も収縮しているとき、このリンク機構は平行リンクに近い形状になる。
そのため、コラムシリンダ104が最大の長さまで伸長し、コラム101が伏せた姿勢(
図6)をとるとき、ブーム103は略水平で、且つ基台10に近づいた姿勢をとっている。また、コラム101の先端部は、移動式クレーン1の前端と垂直方向に略重なる位置に移動する。
【0041】
コラムシリンダ104が最小の長さまで収縮し、コラム101が立ち上がった姿勢(
図7)をとるとき、ブーム103は略水平な姿勢を維持したまま、コラム101が伏せた姿勢のときよりも基台10から高い位置に移動する。このとき、コラムピン110と第一ブームピン112との間の水平方向の距離RCBは、略ゼロになる。
なお、この水平距離RCBにおける略ゼロとは、例えば、第一ブームピン112が機体前側に100mm程度又は機体後側に50mm程度離れている範囲内に位置していることをいう。
【0042】
また、旋回基台100は、旋回装置(図示省略)によって、重心部Cを通り上下方向に延びる直線であるクレーン旋回中心軸TCの軸回りに旋回可能である。
なお、
図6及び
図7には記載していないが、コラム101が起き上がった姿勢をとったとき、コラム101が、さらに機体後側に動作することで、クレーン旋回中心軸TCとコラム軸110との間の距離R1よりも、クレーン旋回中心軸TCとブーム軸112との間の距離R2が短い姿勢をとることも可能である。
【0043】
<アウトリガ装置を展開させる時の統一角度>
図1に示すように、移動式クレーン1が走行姿勢をとっているとき、機体前側に備えられている第二アウトリガ装置OR2は、接地部F2が機体前側を向いており、機体後側に備えられている第三アウトリガ装置OR3は、接地部F3が機体後側を向いている。
図1において図示を省略しているが、機体前側に備えられているアウトリガ装置OR1も接地部F1が機体前側を向いており、第四アウトリガ装置OR4も接地部F4が機体後側を向いている。
そのため、第一アウトリガ装置OR1~第四アウトリガ装置OR4を移動式クレーン1に対して放射状に展開させるときには、いずれもその張り出し方向を基台10における前後方向に沿う角度から、基台10における左右方向に沿う角度に向けて旋回させる。
【0044】
ここで、
図8に示すように、第一アウトリガ装置OR1~第四アウトリガ装置OR4は、第一仮想長方形ISC1の頂点に位置し、且つクレーン旋回中心軸TCまでの距離が同じである。そのため、第一アウトリガ装置OR1~第四アウトリガ装置OR4のそれぞれを、同じ角度だけ旋回させ、かつ最大まで張り出したとき、第一アウトリガ装置OR1の接地部F1、第二アウトリガ装置OR2の接地部F2、第三アウトリガ装置OR3の接地部F3及び第四アウトリガ装置OR4の接地部F4は、移動式クレーン1を平面視した時に想定される水平な第二仮想長方形ISC2の頂点に位置する。
【0045】
そして、第一アウトリガ装置OR1~第四アウトリガ装置OR4を統一角度Anになるように旋回させたとき、第二仮想長方形ISC2は正方形になる。即ち、接地部F1と接地部F2との間の距離、接地部F2と接地部F3との間の距離、接地部F3と接地部F4との間の距離及び接地部F4と接地部F1との間の距離が等しくなる。
【0046】
<アウトリガ装置の接地位置と吊り上げ能力との関係>
図8は、第一アウトリガ装置OR1から第四アウトリガ装置OR4までのそれぞれを、統一角度Anに展開させ最大まで張り出させて、作業姿勢をとっている移動式クレーン1の平面図である。
【0047】
移動式クレーン1は、接地部F1、F2、F3、F4までの接地位置に応じて、クレーン装置20が吊り上げ可能な荷重(定格荷重)が変化する。これは、クレーン装置に掛かる負荷によって生じる転倒モーメントに対して発生可能な抗力が、第一アウトリガ装置OR1の接地部F1から第四アウトリガ装置OR4の接地部F4までの接地位置に応じて変化するためである。仮に、転倒モーメントが、第一アウトリガ装置OR1から第四アウトリガ装置OR4が発生させる抗力を上回った場合には、移動式クレーン1が転倒する可能性がある。そのため、実際のアウトリガ装置ORの張り出し状態によって発生可能な抗力の限界まで転倒モーメントが上昇する前に、過負荷防止装置によってクレーン装置20の動作を停止させるような制御が行われる。
【0048】
第二仮想長方形ISC2はクレーン装置20に負荷が掛かった場合に、第一アウトリガ装置OR1から第四アウトリガ装置OR4が発生可能な、転倒モーメントに対する抗力の強さを規定する、転倒モーメントの作用点までの距離を示している。なお、転倒モーメントの力点は吊り荷の中心点PEであり、支点はクレーン旋回中心軸TCである。
【0049】
例えば、クレーン装置20が、
図8に示すような旋回角度に位置している場合の転倒モーメントの作用点PA1は、クレーン装置20と、第三アウトリガ装置OR3における接地部F3から第四アウトリガ装置における接地部F4までを結ぶ第四仮想直線IL4との交点になる。よって、このときアウトリガ装置ORから発生可能な抗力の最大値を規定するための距離は、クレーン旋回中心軸TCから作用点PA1までの第一距離L1となる。
仮に、クレーン装置20が、第一アウトリガ装置OR1の接地部F1と垂直方向に重なるような旋回角度をとっている場合には、転倒モーメントの作用点PA2は、クレーン装置20と垂直方向に重なった位置にある接地部F1の中心になる。このときの抗力の最大値を規定する距離は、クレーン旋回中心軸TCから接地部F1までの第二距離L2となる。
【0050】
そのため、クレーン装置20が接地部F1、F2、F3、F4のいずれかと垂直方向に重なるような角度に旋回している場合には、クレーン旋回中心軸TCから作用点までの距離が長くなり、発生可能な抗力の最大値が大きくなるため、定格荷重は大きくなる。対して、例えば第三アウトリガ装置OR3と第四アウトリガ装置OR4との中間地点に位置するような角度に旋回している場合には、接地部F1、F2、F3、F4のいずれかとクレーン装置20とが垂直方向に重なるような旋回角度よりも、クレーン旋回中心軸TCから作用点までの距離が短くなり定格荷重は減少する。
【0051】
しかし、クレーン装置20を用いて荷吊り作業を行う場合には、旋回動作を行うことが多い。そのため、第一距離のときの抗力を最小値とし、第二距離のときの抗力を最大値として定格荷重を設定すると、比較的重い荷を吊り上げて旋回動作を行おうとしたときに、過負荷防止装置が作動する場合がある。そのため、実際の移動式クレーン1における性能値には、クレーン旋回中心軸TCから転倒モーメントの作用点までの距離が最も短いときの第一距離L1を基準とする値を用いている。
【0052】
以上より、クレーン装置20の性能を規定するために用いられる、クレーン旋回中心軸TCから作用点までの距離は、
図8の設定値表示円MCに示すような、第二仮想長方形ISC2に内接する円形になる。
よって、第一アウトリガ装置OR1から第四アウトリガ装置OR4の展開角度が統一角度Anに設定されており、且つ最大まで張り出された状態で作業姿勢をとっているとき、クレーン装置20は、旋回角度に関わらず最大の性能を発揮することができる。
【0053】
<走行姿勢及び作業姿勢>
移動式クレーン1の姿勢を走行姿勢から作業姿勢に変更するためには、まず、アウトリガ装置ORを展開する。作業者が、第一アウトリガ装置OR1、第二アウトリガ装置OR2、第三アウトリガ装置OR3及び第四アウトリガ装置OR4のそれぞれを統一角度Anまで旋回させ、展開角度固定ピン70を嵌め込むことで旋回角度を固定する。次に、作業者が、第一アウトリガ装置OR1、第二アウトリガ装置OR2、第三アウトリガ装置OR3及び第四アウトリガ装置OR4を最大張出位置まで張り出させ、固定ピン54を嵌め込むことで形状を固定する。そして、アームシリンダ36を伸長させることで、接地部F1、F2、F3、F4を接地させる。接地部F1、F2、F3、F4を接地させた後、さらにアームシリンダ36を伸長させることで、移動式クレーン1の走行装置TRをわずかに浮き上がらせ、それぞれの接地部F1、F2、F3、F4に荷重を掛けることで、安定を確保させる。
【0054】
次に、クレーン装置20を展開する。コラムシリンダ104を収縮させることで、コラム101を起き上がらせる。クレーン装置20は、旋回基台100、コラム101、ブームシリンダ102及びブーム103によって平行リンク機構に近いリンク機構を構成しているため、コラム101が動作することで、ブーム103は移動式クレーン1に対する角度をほとんど変化させずに上昇する。そして、ブームシリンダ102を伸長させることでブーム103を起き上がらせ、ジブシリンダ106を伸長させることでジブ105を起き上がらせることで移動式クレーン1は作業姿勢(
図2)になる。
【0055】
移動式クレーン1の姿勢を作業姿勢から走行姿勢に変更するためには、まず、クレーン装置20を格納する。クレーン装置20を格納するため、初めにウィンチWを回転させ、ワイヤーWIを巻き取ることでフックHOをジブ105の先端部直下まで上昇させる。次に、ブーム103及びジブ105を最小の長さになるまで収縮させ、ジブシリンダ106を収縮させることでジブ105をブーム103の下側に位置するように折りたたむ。その後、ブームシリンダ102を収縮させ、ブーム103を水平に近い角度まで伏せさせる。そして、コラム101を伏せさせることでクレーン装置20を格納する。
【0056】
コラム101は、コラムシリンダ104を伸長方向に動作させることで、伏せる方向に動作する。クレーン装置20は、旋回基台100、コラム101、ブームシリンダ102及びブーム103によって平行リンク機構に近いリンク機構を構成しているため、コラム101が動作することで、ブーム103は移動式クレーン1に対する角度をほとんど変化させずに下降する。コラムシリンダ104が、ストロークエンド付近まで伸長したとき、ブーム103が最も短いときの長さLBは移動式クレーン1の下部走行体の全長LFと略等しいため、コラム101の先端部及びブーム103の基端部は移動式クレーン1の前端と略同じ位置に到達する。
【0057】
なお、略同じ位置とは、例えばコラム101の先端部及びブーム103の基端部と移動式クレーン1の前端との間の水平距離RFが、機体前側に100mm程度から機体後側に100mm程度の範囲に位置することをいう。
さらに、ブーム103の先端部は、移動式クレーン1の後端と略同じ位置に到達する。
なお、略同じ位置とは、例えばブーム103の先端部と移動式クレーン1の後端との間の水平距離RRが、機体前側に220mm程度から機体後側に10mm程度の範囲に位置することをいう。
【0058】
次に、すべてのアウトリガ装置OR1、OR2、OR3、OR4を格納する。そのために、まず、アームシリンダ36を収縮させることで、移動式クレーン1を下降させ、走行装置TRを接地させる。走行装置TRが接地した後も、さらにアームシリンダ36をストロークエンドまで収縮させることで、アウトリガ装置OR1、OR2、OR3、OR4を格納可能な姿勢にする。そして、作業者がアウトリガ装置OR1、OR2、OR3、OR4を押し上げて格納姿勢をとらせ、固定ピン54を格納固定孔34、44に嵌め込み、形状を固定する。その後、作業者がアウトリガ装置OR1、OR2、OR3、OR4を、移動式クレーンの前後方向に沿う角度まで作業者が旋回させ、展開角度固定ピン70を嵌め込み、旋回角度を固定することで移動式クレーン1は走行姿勢(
図1)になる。
【0059】
<効果>
本発明に係る移動式クレーン1は、アウトリガ装置OR1、OR2、OR3、OR4を統一角度Anに旋回させ、且つ最大まで張り出すことで、接地部F1~F4の中心部がクレーン旋回中心軸TCと等距離に配置され、機体の全周囲における定格荷重を揃えることができる。即ち、アウトリガ装置OR1、OR2、OR3、OR4を境として吊り上げ性能が変化しないため、荷吊り作業中において、クレーン装置20を旋回動作させただけで過負荷防止装置が作動することを防止できるため、吊り荷の運搬効率が向上する。
【0060】
本発明に係る移動式クレーン1は、クレーン装置20における全周囲の定格荷重を揃えることができるため、アウトリガ装置ORの接地部Fからクレーン旋回中心軸TCまでの距離が機体の前後で異なるような従来の移動式クレーンのように、接地部Fからクレーン旋回中心軸TCまでの距離が短い側に、性能を揃えなくてもよく、クレーン装置20の性能を効率よく発揮することができる。
また、従来の移動式クレーンが備えていた、機体の前後でクレーン装置の性能が異なることに対応するための制御装置を備えなくてもよく、故障時のリスク及びコストを低減させることができる。
【0061】
本発明に係る移動式クレーン1は、コラム101が起伏動作することで、走行姿勢のときには移動式クレーン1の前端から後端までの間にブーム103を収めることがでる。そのため、基部Bの中央に、移動式クレーン1の下部走行体の全長LFと略同じ長さのブーム103を備えるクレーン装置20を備えていても、走行姿勢における移動式クレーン1の前後からクレーン装置20が大きく突出しない。
また、作業姿勢のときには、コラム101が起き上がり、ブーム103がクレーン旋回中心軸TCに近づくため、ブーム103における基端からクレーン旋回中心軸TCまでの長さを短くすることができ、ブーム103の作業半径を大きくすることができる。さらに、コラム101が起き上がることで、ブーム103が高い位置に移動するため、荷を吊り上げ可能な高さが高くなる。
【0062】
本発明にかかる移動式クレーン1は、コラム101が起き上がった姿勢をとることによってブーム軸112と、クレーン旋回中心軸TCとの間の距離が短くなる。
ここで、クレーン装置20を用いて作業を行うとき、実際に作業に使用可能なブーム103の長さは、クレーン旋回中心TCと、ブーム103の先端部までの長さとなる。そのため、作業時における実質的なブームの長さを短くする原因となる、クレーン旋回中心TCと、ブーム軸112との間の距離を短くすることによって、クレーン装置20を用いた作業を行うときに使用可能なブーム103の長さを長くでき、吊り荷200を運搬可能な距離が長くなる。
【0063】
以上の効果によって、走行時には狭小地等を移動しやすい大きさを保ちつつ、作業時の性能を向上させることができ、移動式クレーン1を用いた作業の作業性を向上させることができる。
【0064】
<変形例>
本実施形態においては、クレーン装置支持孔15及び第一アウトリガ装置支持孔16~第四アウトリガ装置支持孔19は、前後方向に長い上面視で略X字形の基台10に形成されているが、基台10の形状は、クレーン装置支持孔15及び第一アウトリガ装置支持孔16~第四アウトリガ装置支持孔19の位置関係の条件を満足すれば、例えば楕円形等の他の形状でもよい。また、基台10とシャシーフレームCFとを一体に構成してもよい。
【0065】
本実施形態において、コラムピン110はクレーン旋回中心軸TCから離れた位置に設けられているが、コラムピン110がクレーン旋回中心軸TCと重なるように設けてもよい。
本実施形態に係るクレーン装置20は、ジブ105、ジブシリンダ106及びジブリンク107を備えているが、本発明はこれらの構成を備えないクレーン装置20にも用いてもよい。
また、本実施形態に係るアウトリガ装置ORは、リンク機構によって張り出し動作が可能な構成であるが、本発明は、リンク機構を有さないアウトリガ装置を備える移動式クレーンに用いてもよい。
【0066】
本実施形態に係る移動式クレーン1は、コラム101が立ち上がった姿勢のとき、コラムピン110と第一ブームピン112との間の水平距離RCBが略ゼロとなるが、本発明は、水平距離RCBが略ゼロとならない移動式クレーン1に用いられてもよい。
本実施形態に係る移動式クレーン1は、コラム101を最大限に伏せた姿勢のとき、コラム101の先端が移動式クレーン1の前端と略同じ位置に位置するが、本発明は、例えばコラム101の先端が、移動式クレーン1における側面の端に位置するような移動式クレーンに用いられてもよい。
【0067】
本実施形態に係る移動式クレーン1は、ブーム103が最も縮んだときの長さLBが、移動式クレーン1の下部走行体の全長LFと略等しくなるが、本発明は、ブーム103が移動式クレーン1の下部走行体の全長LFよりも短い、又は長いような移動式クレーン1に用いられてもよい。
本実施形態に係る移動式クレーン1は、クレーン装置20が、クレーン旋回中心軸TCの軸回りに旋回可能、且つブーム103が第一ブームピン112を軸として起伏可能である。しかし、本発明は、例えばクレーン装置20の旋回角度が一定の範囲に制限されている移動式クレーン1や、ブーム103の起伏角度が固定されている移動式クレーン1にも適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 移動式クレーン
10 基台
11 右前側突出部
12 左前側突出部
13 右後側突出部
14 左後側突出部
15 クレーン装置支持孔
16 第一アウトリガ装置支持孔
17 第二アウトリガ装置支持孔
18 第三アウトリガ装置支持孔
19 第四アウトリガ装置支持孔
20 クレーン装置
30 ブラケット
30A 基端部
30B 先端部
31 アウトリガ装置支持孔
32 張り出し部
33 張り出し部
32A 展開角度固定孔
33A 展開角度固定孔
34 格納固定孔
35 支持部材
36 アームシリンダ
36C シリンダチューブ
36R シリンダロッド
37 保護板
38 アーム
38A 本体部
39 挟持部
39A 幅広部
40a 最小張出位置固定孔
40b 中間張出位置固定孔
40c 最大張出位置固定孔
41 スイングアーム
41A リンク部
41B 脚部
42 支持部材
43 張り出し固定孔
44 格納固定孔
50 基端側アームシリンダピン
51 基端側アームピン
52 先端側アームシリンダピン
53 先端側アームピン
54 固定ピン
61 展開角度固定孔
62 展開角度固定孔
63 展開角度固定孔
64 展開角度固定孔
65 展開角度固定孔
70 展開角度固定ピン
100 旋回基台
100A 旋回基台下部
100B 旋回基台上部
101 コラム
102 ブームシリンダ
103 ブーム
103A 基端部
103B 支持部
104 コラムシリンダ
105 ジブ
106 ジブシリンダ
107 ジブリンク
110 コラムピン
111 ブームシリンダピン
112 第一ブームピン
113 第二ブームピン
114 第一コラムシリンダピン
115 第二コラムシリンダピン
An 統一角度
B 基部
C 重心部
CF シャシーフレーム
E 原動部
F1 接地部
F2 接地部
F3 接地部
F4 接地部
H ハンドル
HO フック
IC 仮想円
IL1 第一仮想直線
IL2 第二仮想直線
IL3 第三仮想直線
IL4 第四仮想直線
IL5 仮想直線
IL6 仮想直線
ISC1 第一仮想長方形
ISC2 第二仮想長方形
LF 下部走行体の全長
LB 最も縮んだときのブーム長さ
L1 距離
L2 距離
MC 設定値表示円
OR アウトリガ装置
OR1 第一アウトリガ装置
OR2 第二アウトリガ装置
OR3 第三アウトリガ装置
OR4 第四アウトリガ装置
OS アウトリガ旋回軸
PA1 作用点
PA2 作用点
PE 中心点
RCB 水平距離
RF 水平距離
RR 水平距離
R1 距離
R2 距離
S シーブ
TC クレーン旋回中心軸
TR 走行装置
W ウィンチ
WC ウィンチカバー
WI ワイヤー