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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061488
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
B60C11/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169464
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 吉景
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB04
3D131BC12
3D131BC15
3D131BC18
3D131BC20
3D131BC33
3D131EB22V
3D131EB22W
3D131EB22X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB31V
3D131EB31W
3D131EB43X
3D131EB83V
3D131EB83W
3D131EB87X
3D131EB91V
3D131EB91W
3D131EB94V
3D131EB94W
3D131EB97V
3D131EB97W
3D131EB98V
3D131EB98W
3D131EB99V
3D131EB99W
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】サイプが閉じることによる吸水性能の低下を十分抑制することができるタイヤを、提供する。
【解決手段】本発明のタイヤは、トレッド踏面10に、周溝及びラグ溝により区画されたブロックが形成されたタイヤであって、ブロックは、タイヤ幅方向に延びる複数のサイプを有し、複数のサイプは、第1サイプ18aを含み、第1サイプ18aは、第1サイプ18aの片側のサイプ壁から突出しサイプ深さ方向に延びる突起18apを有する、突起付きサイプであり、第1サイプ18aにおける突起18apは、サイプ深さ方向においてサイプ深さDsの1/2以上の長さDpを有し、トレッド踏面10からサイプ深さ方向に延びている。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド踏面に、周溝及びラグ溝により区画されたブロックが形成されたタイヤであって、
前記ブロックは、タイヤ幅方向に延びる複数のサイプを有し、
前記複数のサイプは、第1サイプを含み、
前記第1サイプは、当該第1サイプの片側のサイプ壁から突出しサイプ深さ方向に延びる突起を有する、突起付きサイプであり、
前記第1サイプにおける前記突起は、サイプ深さ方向においてサイプ深さの1/2以上の長さを有し、トレッド踏面からサイプ深さ方向に延びていることを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記第1サイプは、サイプ深さ方向断面視においてサイプ底側に拡幅部を有するフラスコ状を呈する、フラスコサイプである、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1サイプにおける前記突起は、サイプ深さ方向において前記拡幅部を除いたサイプ深さの3/4以上の長さを有する、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1サイプにおける前記突起は、トレッド踏面視における当該第1サイプのサイプ長手方向に間隔をあけて、当該第1サイプに複数設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1サイプにおける前記突起は、トレッド踏面視における当該第1サイプのサイプ長手方向端には、設けられていない、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1サイプにおける前記突起は、トレッド踏面視におけるサイプ幅方向においてサイプ幅の3/5以上の長さを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1サイプにおける前記突起は、トレッド踏面視においてサイプ長手方向における長さが当該突起の先端側に向かうに従い短くなる、テーパー状を呈している、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤのトレッド踏面における吸水性能の維持又は向上を図る技術が多く検討されている。例えば、特許文献1には、トレッド踏面におけるサイプにサイプ壁から延びる突起を設けることで、吸水性能の低下、ひいては氷雪性能の低下を抑制したタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-286204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特に重荷重用のタイヤにおいては、上記特許文献1に示されるような突起を設けてなお、サイプを設けたにもかかわらずサイプが閉じることによる吸水性能の低下が十分抑制されない場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、サイプが閉じることによる吸水性能の低下を十分抑制することができるタイヤを、提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により、解決される。
【0007】
(1)本発明のタイヤは、
トレッド踏面に、周溝及びラグ溝により区画されたブロックが形成されたタイヤであって、
前記ブロックは、タイヤ幅方向に延びる複数のサイプを有し、
前記複数のサイプは、第1サイプを含み、
前記第1サイプは、当該第1サイプの片側のサイプ壁から突出しサイプ深さ方向に延びる突起を有する、突起付きサイプであり、
前記第1サイプにおける前記突起は、サイプ深さ方向においてサイプ深さの1/2以上の長さを有し、トレッド踏面からサイプ深さ方向に延びていることを特徴とする。
本発明に係るタイヤによれば、サイプが閉じることによる吸水性能の低下を十分抑制することができる。
【0008】
(2)上記(1)のタイヤにおいて、
前記第1サイプは、サイプ深さ方向断面視においてサイプ底側に拡幅部を有するフラスコ状を呈する、フラスコサイプであることが好ましい。
この場合、吸水性能の低下をより抑制することができる。
【0009】
(3)上記(2)のタイヤにおいて、
前記第1サイプにおける前記突起は、サイプ深さ方向において前記拡幅部を除いたサイプ深さの3/4以上の長さを有することが好ましい。
この場合、吸水性能の低下をさらに抑制することができる。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれかのタイヤにおいて、
前記第1サイプにおける前記突起は、トレッド踏面視における当該第1サイプのサイプ長手方向に間隔をあけて、当該第1サイプに複数設けられていることが好ましい。
この場合、吸水性能の低下をより効果的に抑制することができる。
【0011】
(5)上記(1)~(4)のいずれかのタイヤにおいて、
前記第1サイプにおける前記突起は、トレッド踏面視における当該第1サイプのサイプ長手方向端には、設けられていないことが好ましい。
この場合、少ない体積の突起で効果的に吸水性能の低下を抑制できるとともに、製造上の問題も少なくなる。
【0012】
(6)上記(1)~(5)のいずれかのタイヤにおいて、
前記第1サイプにおける前記突起は、トレッド踏面視におけるサイプ幅方向においてサイプ幅の3/5以上の長さを有することが好ましい。
この場合、吸水性能の低下をより効果的に抑制することができる。
【0013】
(7)上記(1)~(6)のいずれかのタイヤにおいて、
前記第1サイプにおける前記突起は、トレッド踏面視においてサイプ幅方向における長さが当該突起の先端側に向かうに従い短くなる、テーパー状を呈していることが好ましい。
この場合、突起がサイプ幅方向に潰れにくく、吸水性能の低下をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、サイプが閉じることによる吸水性能の低下を十分抑制することができるタイヤを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤの、トレッド踏面を示す、展開図である。
図2図1のタイヤにおける一例のブロックについて説明するための、拡大平面図である。
図3A図1のタイヤにおける第1サイプを説明するための、拡大平面図である。
図3B図2及び図3AのX1―X1断面図である。
図3C図2のX2-X2断面図である。
図4】第1サイプにおける突起のサイプ壁からの突出方向と、第2サイプにおける山の振出し方向との関係を説明するための、模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るタイヤは、任意の種類のタイヤとして好適に利用でき、例えば、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ又は建設・鉱山車両用タイヤ等として好適に利用でき、特に、トラック・バス用タイヤ又は建設・鉱山車両用タイヤ等の重荷重用タイヤ、なかでも特には、トラック・バス用タイヤとして好適に利用できる。
【0017】
以下、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照しつつ例示説明する。
各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
本明細書において、「タイヤ周方向」とは、タイヤの回転軸を中心にタイヤが回転する方向をいい、「タイヤ幅方向」とは、タイヤの回転軸と平行な方向をいう。一部の図面では、タイヤ周方向を符号「CD」で示し、タイヤ幅方向を符号「WD」で示している。
また、本明細書において、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」と称し、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と称する。
さらに、本明細書において、「タイヤ周方向に延びる」とは、少なくともタイヤ周方向成分を有して延びることをいい、「タイヤ幅方向に延びる」とは、少なくともタイヤ幅方向成分を有して延びることをいう。
【0018】
以下、特に断りのない限り、各要素の位置関係や寸法等は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で測定されるものとする。また、本明細書において、「トレッド踏面」とは、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した状態において、路面と接することとなるタイヤの全周にわたる外周面の部分をいい、トレッド踏面のタイヤ幅方向の端縁を「トレッド端(TE)」という。また、本明細書において、「トレッド踏面視」とは、トレッド踏面を平面上に展開した状態でトレッド表面を平面視することを指す。
【0019】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されている又は将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指すが、これらの産業規格に記載のないサイズの場合は、空気入りタイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に前述の産業規格に記載されるサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられ得る。
【0020】
本明細書において、「規定内圧」とは、前述したJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、前述した産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、本明細書において、「最大荷重」とは、前述した産業規格に記載されている適用サイズのタイヤにおける最大負荷能力に対応する荷重、又は、前述した産業規格に記載のないサイズの場合には、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重を意味する。
【0021】
本明細書において、「溝幅」は、上記基準状態において、トレッド踏面における溝の延在方向に垂直な断面において、トレッド踏面と平行な方向に測るものとする。溝幅は、トレッド踏面に垂直な方向に一定でもよいし変化してもよい。但し、本明細書において、特に断りのない限り、「溝幅」は、トレッド踏面における溝幅を指すものとする。また、本明細書における「溝深さ」は、上記基準状態において、トレッド踏面に垂直な方向に測るものとする。
【0022】
本明細書において、「サイプ」とは、上記基準状態において、サイプ深さの50%以上の領域にわたって、サイプ幅が2mm以下となるものをいう。ここで、本明細書において、「サイプ幅」は、上記基準状態において、トレッド踏面におけるサイプの延在方向に垂直な断面において、後述の突起の部分を除きトレッド踏面と平行な方向に測るものとする。サイプ幅は、トレッド踏面に垂直な方向に一定でもよいし変化してもよい。ただし、本明細書において、特に断りのない限り、「サイプ幅」は、トレッド踏面におけるサイプ幅を指すものとする。また、本明細書における「サイプ深さ」は、上記基準状態において、トレッド踏面に垂直な方向に測るものとし、「サイプ深さ方向」とは、上記基準状態におけるサイプについて、トレッド踏面に垂直な方向を指す。さらに、本明細書において、「サイプ長手方向」とは、トレッド踏面におけるサイプ(より具体的には、サイプ中心線)の延在方向を指し、「サイプ幅方向」とは、トレッド踏面におけるサイプ長手方向と垂直な方向を指す。一部の図面では、サイプ長手方向を符号「SLD」で示し、サイプ幅方向を符号「SWD」で示している。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの、トレッド踏面を示す、展開図である。
図1に示す、本発明の一実施形態に係るタイヤ1は、トラック・バス用の空気入りラジアルタイヤである。
【0024】
なお、詳細な説明は省略するが、以下に説明する実施形態のタイヤ1としては、例えば、一対のビード部からそれぞれタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、両サイドウォール部間に跨るトレッド部が連なっており、一方のビード部からトレッド部を通り他方のビード部にわたって延びる、例えば有機繊維コード或いはスチールコードからなるカーカスプライを有するカーカスと、このカーカスとトレッド部のトレッドゴムとの間に配置した、例えばスチールコードからなるベルト層を有するベルトと、を備えた、一般的なタイヤ構造を適用することができる。
【0025】
図1に示すように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド踏面10に、タイヤ赤道面CLをタイヤ幅方向に挟む両側に配置された1対の内側周方向主溝(周溝)11と、当該1対の内側周方向主溝11をタイヤ幅方向に挟む両側に配置された1対の外側周方向主溝(周溝)12と、が形成されている。内側周方向主溝11及び外側周方向主溝12はそれぞれ、タイヤ周方向に沿って(即ち、タイヤ周方向に対して0°の角度で)直線状に、タイヤ全周にわたって連続して延びている。
内側周方向主溝11及び外側周方向主溝12それぞれの溝深さは、互いに同じになっている(例えば、約20mm)。また、内側周方向主溝11及び外側周方向主溝12それぞれの溝幅は、互いに同じになっている。但し、内側周方向主溝11及び外側周方向主溝12それぞれの溝深さを、互いに異ならせてもよく、また、内側周方向主溝11及び外側周方向主溝12それぞれの溝幅を、互いに異ならせてもよい。
【0026】
トレッド踏面10は、1対の内側周方向主溝11どうしの間に位置し、かつタイヤ赤道面CLを含むセンターブロック列13と、内側周方向主溝11と外側周方向主溝12との間に位置するセカンドブロック列14と、1対の外側周方向主溝12よりタイヤ幅方向の外側に位置するショルダーブロック列15と、に区画されている。
【0027】
センターブロック列13及びセカンドブロック列14にはそれぞれ、周方向細溝(周溝)が形成されている。周方向細溝16は、折曲り部でタイヤ幅方向に繰返し折れ曲がりながら(本例では、角張った折曲り部でタイヤ幅方向に繰返し折れ曲がりながら、即ち、屈曲部でタイヤ幅方向に繰返し屈曲しながら、ジグザグ状に)タイヤ周方向に、タイヤ全周にわたって連続して延びている。センターブロック列13及びセカンドブロック列14にはそれぞれ、複数の内側ラグ溝(ラグ溝)17がタイヤ周方向に間隔をあけて形成されている。内側ラグ溝17は、センターブロック列13およびセカンドブロック列14それぞれにおけるタイヤ幅方向の全長にわたって配置され、周方向細溝16によりタイヤ幅方向に分断されている。センターブロック列13及びセカンドブロック列14のそれぞれにおいて、内側ラグ溝17のうち、周方向細溝16に対して、タイヤ幅方向の一方側に位置する内側ラグ溝17及び他方側に位置する内側ラグ溝17それぞれのタイヤ周方向の位置は、互いに異なっている。内側ラグ溝17はそれぞれ、周方向細溝16と、内側周方向主溝11若しくは外側周方向主溝12と、に開口している。
【0028】
図1に示すように、本実施形態において、上述のとおり、内側周方向主溝11及び外側周方向主溝12はそれぞれ、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って(即ち、タイヤ周方向に対して0°の角度で)直線状に延びているが、内側周方向主溝11及び/又は外側周方向主溝12は、折曲り部でタイヤ幅方向に繰返し折れ曲がりながらタイヤ周方向に延びていてもよい。即ち、内側周方向主溝11及び/又は外側周方向主溝12は、タイヤ周方向に波状に延びていてもよい。
ここで、本明細書において、「波状」又は「波状に延びる」とは、折曲り部で繰返し折れ曲がりながら延びることを指し、丸みを帯びた折曲り部で繰返し折れ曲がりながら延びること、及び、角張った折曲り部(即ち、屈曲部)で繰返し折れ曲がり(即ち、屈曲し)ながら延びること(この場合、「ジグザグ状」又は「ジグザグ状に延びる」ともいう。)、の双方を含む。
また、図1に示すように、本実施形態において、上述のとおり、周方向細溝16は、トレッド踏面視において、折曲り部でタイヤ幅方向に繰返し折れ曲がりながら(即ち、波状に)タイヤ周方向に延びているが、周方向細溝16は、タイヤ周方向に沿って直線状に延びていてもよい。
【0029】
図1に示すように、本実施形態において、センターブロック列13は、周方向細溝(周溝)16をタイヤ幅方向に挟んで、それぞれ同一構成のブロックがタイヤ周方向に並ぶ、2つのブロック列131と132と、から構成されている。センターブロック列13には、内側周方向主溝(周溝)11及び周方向細溝(周溝)16と、タイヤ周方向に隣接する2つの内側ラグ溝(ラグ溝)17と、により区画された、多数のセンターブロック(ブロック)13a、13bが含まれている。
また、本実施形態において、1対のセカンドブロック列14のそれぞれは、周方向細溝(周溝)16をタイヤ幅方向に挟んで、それぞれ同一構成のブロックがタイヤ周方向に並ぶ、2つのブロック列141と142と、又は、2つのブロック列143と144と、から構成されている。1対のセカンドブロック列14のそれぞれは、内側周方向主溝(周溝)11及び周方向細溝(周溝)16、又は、外側周方向主溝(周溝)12及び周方向細溝(周溝)16と、タイヤ周方向に隣接する2つの内側ラグ溝(ラグ溝)17と、により区画された、多数のセカンドブロック(ブロック)14a、14b、14c、14dが含まれている。
即ち、本実施形態のタイヤ1は、トレッド踏面10に、周溝及びラグ溝により区画されたブロックが形成されている。
【0030】
センターブロック(ブロック)13a、13b及びセカンドブロック(ブロック)14a~14dはそれぞれ、タイヤ幅方向に延びる複数の内側サイプ(サイプ)18を有している。換言すれば、本実施形態において、タイヤ赤道面CLを挟んだ1対のタイヤ幅方向最外側の周溝(11、12)に挟まれたタイヤ幅方向領域に位置するブロック(13a、13b、14a~14d)のうちの少なくとも一部(本例では、全部)は、タイヤ幅方向に延びるサイプを有している。それらの各ブロックには、内側サイプ18が、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成されている。より具体的に、それらの各ブロックは、タイヤ幅方向に延びる少なくとも3本(本例では、3本)の内側サイプ18を有している。また、それらの各ブロックにおける、内側サイプ18は、少なくともタイヤ幅方向一方側(本例では、タイヤ幅方向両側)が内側周方向主溝(周溝)11、外側周方向主溝(周溝)12又は周方向細溝(周溝)16に開口している。
即ち、本実施形態において、ブロックは、タイヤ幅方向に延びる複数のサイプを有している。より具体的に、本実施形態において、ブロックは、少なくともタイヤ幅方向一方側が周溝に開口する、タイヤ幅方向に延びる少なくとも3本のサイプを有している。
【0031】
本実施形態において、内側サイプ18の溝深さは、周方向細溝16の溝深さより浅くなっている。また、内側サイプ18の溝深さは、内側周方向主溝11及び外側周方向主溝12の各溝深さの例えば50%以上100%以下となっている。
本実施形態において、内側サイプ18は、センターブロック13a、13b及びセカンドブロック14a~14dのそれぞれに複数配置されているとともに、それらの各ブロックに同じ数ずつ配置されている。
本実施形態において、センターブロック13a、13b及びセカンドブロック14a~14dのそれぞれのタイヤ周方向両端縁には、トレッド踏面視においてタイヤ周方向に沿って直線状に延びる周方向サイプ19が形成されている。但し、センターブロック13a、13b及びセカンドブロック14a~14dのそれぞれのタイヤ周方向両端縁に、周方向サイプ19が形成されていなくてもよい。
【0032】
図1に示すように、本実施形態において、センターブロック13a、13b及びセカンドブロック14a~14dの各ブロックにおける、複数(より具体的に、少なくとも3本)の内側サイプ(サイプ)18は、第1サイプ18aを含んでいる。また、それらの各ブロックにおける、内側サイプ18は、第1サイプ18aとは構成の異なる第2サイプ18bを含んでいる。即ち、本実施形態において、上記の各ブロックにおける複数の内側サイプ(サイプ)18は、第1サイプ18aと第2サイプ18bとを含んでいる。より具体的に、本実施形態において、上記の各ブロックにおける少なくとも3本の内側サイプ(サイプ)18は、第1サイプ18aと第2サイプ18bとから構成されている。
上記の各ブロックにおける、第1サイプ18a及び第2サイプ18bを含む内側サイプ(サイプ)18の構成及び配置等については、図2図4を参照しつつ追って詳述する。
【0033】
ショルダーブロック列15には、タイヤ周方向に間隔をあけて複数の外側ラグ溝(ラグ溝)21が形成されている。外側ラグ溝21の溝深さは、外側周方向主溝12の溝深さの例えば50%以上100%以下となっている。外側ラグ溝21の溝幅は、例えば8.2mm以下となっている。外側ラグ溝21は、ショルダーブロック列15におけるタイヤ幅方向の全長にわたって配置されている。トレッド踏面10におけるトレッド端TEを含むタイヤ幅方向外側端部に、複数の外側ラグ溝21及び外側周方向主溝(周溝)12により複数のショルダーブロック(ブロック)15a、15bが区画されている。
【0034】
一方のショルダーブロック列15に配置された外側ラグ溝21及び他方のショルダーブロック列15に配置された外側ラグ溝21それぞれのタイヤ周方向の位置は、互いに異なっている。一方のショルダーブロック列15に配置された外側ラグ溝21及び他方のショルダーブロック列15に配置された外側ラグ溝21のタイヤ周方向のずれ量は、ショルダーブロック15a、15bのタイヤ周方向の長さの半分以下となっている。
なお、一方のショルダーブロック列15に配置された外側ラグ溝21及び他方のショルダーブロック列15に配置された外側ラグ溝21それぞれのタイヤ周方向の位置を、互いに同等にしてもよい。
【0035】
本実施形態では、ショルダーブロック15a、15bに、溝幅が外側ラグ溝21より狭く、当該ショルダーブロック15a、15bのタイヤ幅方向の全長にわたって延びる横溝22と、溝幅が外側周方向主溝12より狭く、当該ショルダーブロック15a、15bのタイヤ周方向の全長にわたって延びる縦溝23と、が形成されている。横溝22のタイヤ幅方向の両端は、タイヤ幅方向に開口し、このうちタイヤ幅方向内側端は、外側周方向主溝12に開口している。縦溝23のタイヤ周方向の両端は、外側ラグ溝21に開口している。横溝22は、ショルダーブロック15a、15bにおけるタイヤ周方向の中央部に配置され、縦溝23は、ショルダーブロック15a、15bにおけるタイヤ幅方向の中央部に配置されている。縦溝23の溝幅は、横溝22の溝幅と同等になっている。
なお、横溝22及び縦溝23の各溝幅は互いに異ならせてもよく、例えば、縦溝23の溝幅を、横溝22の溝幅より広くしてもよい。また、横溝22及び縦溝23のそれぞれは、それぞれの延在方向の途中で溝幅が変化してもよい。
【0036】
横溝22の溝深さは、外側周方向主溝12の溝深さの例えば45%より大きく100%以下となっている。横溝22の溝深さが、外側周方向主溝12の溝深さの45%より大きいことで、ショルダーブロック15a、15bを、横溝22をタイヤ周方向に挟んだ両側で個別に変形させることができやすくなり、100%以下であることで、ショルダーブロック15a、15bの剛性の低下を抑制することができる。横溝22の溝深さは、外側ラグ溝21の溝深さと同等になっている(例えば、約12mm)。
【0037】
縦溝23の少なくとも一部は、横溝22より浅くなっている。縦溝23において、タイヤ周方向の中央部を除き、かつタイヤ周方向の長さの半分以上にわたる部分の溝深さが、横溝22より浅く、例えば約2mmとなっている。
【0038】
図1に示すように、ショルダーブロック15a、15bはそれぞれ、トレッド踏面視において、1対の辺がタイヤ幅方向に延び、かつ残り1対の辺がタイヤ周方向に延びる矩形状を呈している。ショルダーブロック15a、15bそれぞれの4つの角部のうち、タイヤ幅方向外側に位置する2つの角部に面取り部が形成されている。面取り部は、ショルダーブロック15a、15bにおいて、横溝22及び縦溝23から離れた位置に配置されている。
【0039】
ショルダーブロック15a、15bのそれぞれにおいて、縦溝23よりタイヤ幅方向内側に位置するタイヤ幅方向内側部分に、タイヤ幅方向に延びる外側サイプ(サイプ)24が形成されている。外側サイプ24は、トレッド踏面視において、タイヤ幅方向に直線状に延びるとともに、ショルダーブロック15a、15bのそれぞれに、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成されている。外側サイプ24は、ショルダーブロック15a、15bの前記タイヤ幅方向内側部分において、横溝22をタイヤ周方向に挟む両側に位置する各部分に、同じ数(本例では、1本)ずつ配置されている。外側サイプ24は、ショルダーブロック15a、15bの前記タイヤ幅方向内側部分において、ショルダーブロック15a、15bにおけるタイヤ周方向の端縁と、横溝22と、の間に位置する部分のタイヤ周方向の中央部に配置されている。
【0040】
外側サイプ24におけるタイヤ幅方向内側端は、外側周方向主溝12に開口している。外側サイプ24におけるタイヤ幅方向外側端は、ショルダーブロック15a、15bにおけるタイヤ幅方向の内端縁から、タイヤ幅方向外側にショルダーブロック15a、15bのタイヤ幅方向の長さの例えば4分の1未満離れている。
【0041】
次に、センターブロック13a、13b及びセカンドブロック14a~14dの各ブロックにおける、第1サイプ18a及び第2サイプ18bを含む内側サイプ(サイプ)18の構成及び配置等について、図2図4を参照しつつ説明する。
【0042】
図2は、図1のタイヤにおける一例のブロックについて説明するための、拡大平面図である。図3Aは、図1のタイヤにおける第1サイプを説明するための、拡大平面図であり、図3Bは、図2及び図3AのX1―X1断面図であり、図3Cは、図2のX2-X2断面図である。図4は、第1サイプにおける突起のサイプ壁からの突出方向と、第2サイプにおける山の振出し方向との関係を説明するための、模式的平面図である。
【0043】
図2は、図1に示す本実施形態のタイヤ1における一例のブロック、より具体的には、図1に示すセカンドブロック14bの、トレッド踏面10における構成を拡大して示している。
以下、主としてセカンドブロック14bを例にとって説明するが、本実施形態において、図1に示す、センターブロック13a、13b及びセカンドブロック14a、14c、14dにおける、当該各ブロック及び当該各ブロックに含まれる内側サイプ18(第1サイプ18a、第2サイプ18b)の構成は、トレッド踏面10における当該各ブロックの輪郭形状、内側サイプ18(第1サイプ18a、第2サイプ18b)のタイヤ幅方向に対する傾斜角度、後述する第1サイプ18aの突起18apのサイプ壁からの突出方向PJD及び第2サイプ18bの山18bmの振出し方向SUDが、一部図1に示されるように当該各ブロック間で異なっている場合がある点等を除き、実質的に同じである。
【0044】
本実施形態において、前述のとおり、図1及び図2に示すように、セカンドブロック(ブロック)14bは、タイヤ幅方向に延びる複数の内側サイプ(サイプ)18を有している。本例において、セカンドブロック14bは、タイヤ幅方向に延びる少なくとも3本(より具体的に、本例では3本)の内側サイプ18を有している。
そして、上記複数の内側サイプ18は、第1サイプ18aを含んでいる。本例において、上記少なくとも3本の内側サイプ18は、第1サイプ18aと第2サイプ18bとから構成されている。
【0045】
図1及び図2に示すように、本実施形態において、第1サイプ18aは、セカンドブロック14bのタイヤ周方向における略中央に、1本だけ形成されている。
但し、第1サイプ18aは、セカンドブロック14bのタイヤ周方向における略中央に形成されていなくてもよく、当該略中央からずれたタイヤ周方向位置に形成されていてもよい。また、第1サイプ18aは、セカンドブロック14bに複数本、例えば2本又は2~3本形成されていてもよい。しかし、剛性バランス等の観点からは、第1サイプ18aは、セカンドブロック14bのタイヤ周方向における略中央に、1本だけ形成されていることが好ましい。
【0046】
図1及び図2に示すように、本実施形態において、第1サイプ18aは、トレッド踏面視において直線状に延びている。
また、第1サイプ18aは、タイヤ幅方向両側が周溝(内側周方向主溝11又は周方向細溝16)に開口している。より具体的に、第1サイプ18aは、タイヤ幅方向一方側(図1及び図2における、左側)の端が周方向細溝16に開口し、タイヤ幅方向他方側(図1及び図2における、右側)の端が内側周方向主溝11に開口し、これら両端間でセカンドブロック14bをタイヤ幅方向に横切ってタイヤ幅方向に連続して延びている。
但し、第1サイプ18aは、少なくともタイヤ幅方向一方側が内側周方向主溝11又は周方向細溝16に開口していればよく、例えば、タイヤ幅方向一方側が周方向細溝16に開口しタイヤ幅方向他方側がセカンドブロック14b内で終端していてもよく、また、タイヤ幅方向他方側が内側周方向主溝11に開口しタイヤ幅方向一方側がセカンドブロック14b内で終端していてもよい。しかし、十分な吸水性能(ひいては、氷雪性能)の確保等の観点からは、第1サイプ18aは、タイヤ幅方向両側が周溝(内側周方向主溝11又は周方向細溝16)に開口していることが好ましい。
【0047】
図3A及び図3Bに示すように、本実施形態において、第1サイプ18aは、当該第1サイプ18aの片側のサイプ壁から突出しサイプ深さ方向に延びる突起18apを有する、突起付きサイプである。
第1サイプ18aが、所定の構成を備えた突起18apを有する、突起付きサイプであることにより、サイプによる吸水効果を企図してサイプを設けたにもかかわらず、荷重負荷によりサイプが閉じて十分な吸水効果が得られなくなることを、十分抑制することができる。
【0048】
図3Bに示すように、第1サイプ18aにおける突起18apは、サイプ深さ方向においてサイプ深さ(即ち、第1サイプ18aの全体の、サイプ深さ)Dsの1/2以上の長さ(以下、突起の「深さ」ともいう。)Dpを有している。本例において、突起18apの深さDpは、サイプ深さDsの例えば約3/5である。突起18apの深さDpが、サイプ深さDsの1/2以上であることにより、サイプが閉じること(ひいては、吸水性能の低下)を十分抑制できるとともに、摩耗が進んだ後でも当該サイプ閉塞抑制効果を持続させることができ、さらに、サイプ壁どうしが支え合いやすくなることでブロック剛性が向上し耐摩耗性能の向上にも寄与し得る。
同様の観点から、第1サイプ18aにおける突起18apは、サイプ深さ方向において後述する拡幅部18abを除いたサイプ深さ(即ち、第1サイプ18aの拡幅部18abを除いた部分の、サイプ深さ)Dl(図3B参照)の3/4以上の長さ(深さ)Dpを有することが好ましい。本例において、突起18apの深さDpは、拡幅部18abを除いたサイプ深さDlの例えば約7/8である。
【0049】
但し、突起18apの深さDpは、サイプ深さDsの4/5以下であることが好ましい。
この場合、タイヤ製造時にサイプ形成のために使用する型としての薄いブレードが抜きにくくなり当該ブレードやゴムの破損を招きやすくなる不具合を解消しやすくなり、また、サイプの容積が減り逆にサイプによる吸水性能が低下することもおそれがある不具合も解消することができる。
突起18apの深さDpは、例えば約7mmとすることができる。
【0050】
また、図3Bに示すように、第1サイプ18aにおける突起18apは、トレッド踏面10からサイプ深さ方向に延びている。
突起18apが、トレッド踏面10からサイプ深さ方向に延びていることにより、摩耗の初期段階から、突起がサイプ壁間を支えることでサイプが閉じることを防止でき吸水性能の低下を十分抑制できるとともに、特に重荷重用タイヤでは、トレッド踏面10付近が最もサイプが閉じやすいためより効果的に吸水性能の低下を抑制することができる。
【0051】
さらに、図3Bに示すように、第1サイプ18aの突起18apは、サイプ深さ方向断面視においてサイプ底側の下端部がサイプ底に向かうにつれサイプ幅方向幅が小さくなるテーパー状を呈している。
この場合、タイヤ製造時にサイプ形成のために使用する型としての薄いブレードが抜きにくくなり当該ブレードやゴムの破損を招きやすくなる不具合を、解消しやすくなる。
【0052】
以上より、第1サイプ18aが、当該第1サイプ18aの片側のサイプ壁から突出しサイプ深さ方向に延びる突起18apを有する、突起付きサイプであり、また、第1サイプ18aにおける突起18apが、サイプ深さ方向においてサイプ深さDsの1/2以上の長さを有し、トレッド踏面10からサイプ深さ方向に延びている、ことにより、サイプが閉じることによる吸水性能の低下を十分抑制することができる。
【0053】
図3Bに示すように、本実施形態において、第1サイプ18aは、サイプ深さ方向断面視においてサイプ底側に拡幅部18abを有するフラスコ状を呈する、フラスコサイプである。
第1サイプ18aが、上記のようなフラスコサイプであることにより、サイプの容積を十分確保して、第1サイプ18aに突起18apを設けたこと自体による吸水・排水性能の低下をより抑制することができる。
【0054】
図3Bに示すように、本実施形態において、第1サイプ18aは、サイプ深さ方向断面視においてトレッド踏面10から垂直に延びる直線状部18asを備えている。
より具体的に、図3Bに示すように、本例において、フラスコサイプである第1サイプ18aは、サイプ深さ方向断面視において、トレッド踏面10から両サイプ壁が当該トレッド踏面10に対して垂直に同一のサイプ幅でサイプ深さ方向に直線状に延びる、直線状部18asと、当該直線状部18asに連なりサイプ底に向かうにつれ徐々にサイプ幅を増大させながらサイプ底側に延びる、拡幅部18abと、を備えている。
第1サイプ18aのサイプ幅が最大となる拡幅部18abのサイプ幅Wsbは、トレッド踏面10におけるサイプ幅(即ち、本例では、直線状部18asのサイプ幅)Wsの例えば1.5~4.0倍であることが好ましい。第1サイプ18aの上記サイプ幅Wsは、例えば0.3~1.5mmとすることができる。
また、第1サイプ18aの拡幅部18abを除いたサイプ深さ(本例では、直線状部18asのサイプ深さ)Dlは、第1サイプ18aのサイプ深さDsの例えば0.6~0.8倍であることが好ましい。第1サイプ18aの上記サイプ深さDsは、例えば8~15mmとすることができる。
【0055】
図3Aに示すように、本実施形態において、第1サイプ18aにおける突起18apは、トレッド踏面視における当該第1サイプ18aのサイプ長手方向に間隔をあけて、当該第1サイプ18aに複数設けられている。
この場合、例えば、第1サイプ18aのサイプ長手方向の中央部付近に比較的サイプ長手方向長さの長い突起18apを1個だけ設けた場合と比較して、ブロック剛性を十分確保しつつ、サイプの容積を十分確保し吸水性能の低下をより効果的に抑制することができる。
但し、突起18apは、第1サイプ18aに1個だけ設けられていてもよい。
また、本例では、図3Aに示すように、突起18apは、第1サイプ18aに2個設けられている。しかし、突起18apは、第1サイプ18aに3個以上設けられていてもよい。
【0056】
図3Aに示すように、本実施形態において、第1サイプ18aにおける突起18apは、トレッド踏面視における当該第1サイプのサイプ長手方向端には、設けられていない。
この場合、少ない体積の突起で、十分にサイプが閉じることを抑制することができひいては効果的に吸水性能の低下を抑制できるとともに、サイプ形成のために使用する前記ブレードの破損を抑制できて、製造上の問題も少なくなる。
【0057】
また、図3A及び図3Bに示すように、第1サイプ18aにおける突起18apは、トレッド踏面視におけるサイプ幅方向においてサイプ幅Wsの3/5以上の長さ(以下、突起の「高さ」ともいう。)Hpを有している。
この場合、大荷重負荷時等にサイプが閉じるのを確実に防止することができ、吸水性能の低下をより効果的に抑制することができる。
【0058】
但し、図3A及び図3Bに示すように、突起18apの高さHpは、サイプ幅Wsより小さいこと(即ち、突起18apの突出方向の先端と当該先端に対向するサイプ壁との間に間隙SPが形成されていること)が好ましく、サイプ幅Wsの9/10以下であることがより好ましい。
これらの場合、サイプ形成のために使用する前記ブレードの破損を抑制できるとともに、サイプ内に侵入した雪の排出が妨げられて氷雪性能が悪化することを抑制することができる。
突起18apの高さHpは、例えば約0.6mmとすることができる。
【0059】
図3Aに示すように、第1サイプ18aにおける突起18apは、トレッド踏面視においてサイプ長手方向における長さ(以下、突起の「長さ」ともいう。)が当該突起18apの先端側に向かうに従い短くなる、テーパー状を呈している。即ち、本実施形態において、突起18apは、先端のサイプ長手方向長さLptが基端のサイプ長手方向長さLpよりも短く、基端側から先端側に向かうにつれて長さが徐々に直線的に短くなる、テーパー状を呈している。より具体的に、図3Aの例において、突起18apは、基端側の辺を下底とし先端側の辺を上底とする台形状を呈している。
この場合、突起がサイプ幅方向に潰れにくく、吸水性能の低下をより効果的に抑制することができる。
【0060】
なお、本実施形態において、第1サイプ18aは、適切な剛性バランスを保つ等の観点から、第1サイプ18aのサイプ長手方向一方側の端と突起18apとの間のサイプ長手方向長さLa、突起18apの基端におけるサイプ長手方向長さLp及びサイプ長手方向に隣接する2つの突起18ap間のサイプ長手方向長さLb(図3A参照)が、互いに同一とされている。但し、上記サイプ長手方向長さLa、Lp及びLbは、互いに同一でなくてもよい。
第1サイプ18aのサイプ長手方向長さLs(図3A参照)は、例えば約20mmとすることができる。上記サイプ長手方向長さLa、Lp及びLbは、例えば約4mmとすることができる。突起18apの先端のサイプ長手方向長さLptは、例えば約2mmとすることができる。
【0061】
ここで、本実施形態において、第1サイプ(サイプ)18aは、前述のとおり、トレッド踏面視において直線状に延びており、また、サイプ深さ方向断面視においてトレッド踏面10から垂直に延びる直線状部18asを備えており、サイプ深さ方向断面視においてサイプ底側に拡幅部18abを有するフラスコ状を呈する、フラスコサイプである。即ち、第1サイプ18aは、直線状垂直フラスコサイプである。
一方、本実施形態において、図1及び図2に示すように、第2サイプ(サイプ)18bは、トレッド踏面視において山18bm(18bm1、18bm2)の数が少なくとも片側で3個以上である波状に延びている。ここで、第2サイプ18bにおける「山」とは、トレッド踏面視における第2サイプ18bにおいて、第2サイプ18bの中心線18bcからサイプ幅方向(ひいては、タイヤ周方向)のいずれか一方側に突出した部分をいう。即ち、第2サイプ18bは、中心線18bcを挟んだ一方側(図2の上側)と他方側(図2の下側)の少なくとも片側(本例では、両側)に、3個以上の山18bmn(18bm1又は18bm2)を有している。なお、サイプの「中心線」とは、トレッド踏面視において波状に延びる波状サイプの場合、当該波の振幅の中心を結んだ線を指す。
また、本実施形態において、図3Cに示すように、第2サイプ18bは、サイプ深さ方向断面視においてサイプ底側に拡幅部18bbを有するフラスコ状を呈する、フラスコサイプである。即ち、第2サイプ18bは、波状フラスコサイプである。
第1サイプ18aが上記のような直線状垂直フラスコサイプであり、第2サイプ18bが上記のような波状フラスコサイプであることにより、耐摩耗性能を確保しつつ、氷雪性能を十分向上させることができる。即ち、トレッド踏面において波状に延びる波状サイプは、サイプ壁どうしが十分に支え合うこと等により氷雪性能及び耐摩耗性能ともに優れるが、氷雪性能については、トレッド踏面において直線状に延びる直線状サイプの方がより優れる場合がある。これは、直線状サイプでは、サイプを隔ててブロック部分が倒れやすくエッジ成分に圧が乗りやすいため変形初期からエッジ効果が得られるので、波状サイプに比べて特に低入力(小変形)時の氷雪性能(除水・引っ掻き効果)が優れること、及び、直線状サイプはトレッド踏面における凹凸がないため、波状サイプに比べて特に氷雪混合路でのサイプ内に侵入した雪の排出性ひいては吸水性能が高くブロック表面が常にリフレッシュされて路面ロバスト性が高いこと、等による。また、波状サイプにおける山の数が少なくとも片側で3個以上であることにより、より十分な氷雪性能及び耐摩耗性能が得られる。さらに、第1サイプ18a及び第2サイプ18bとも、サイプ底側に拡幅部(18ab、18bb)を有するフラスコサイプであるので、より十分な吸水・排水性能が確保される。以上の理由から、ブロックが、上記のような波状フラスコサイプである第2サイプ18bに加えて、上記のような直線状垂直フラスコサイプである第1サイプ18aを有することにより、タイヤの耐摩耗性能を確保しつつ、氷雪性能を十分向上させることができる。
【0062】
本例では、図1及び図2に示すように、第2サイプ18bは、中心線18bcを挟んだサイプ幅方向一方側(図2の上側)に4個の山18bm1を有し、他方側(図2の下側)に3個の山18bm2を有しているが、その逆(一方側で3個、他方側で4個)であってもよい。また、第2サイプ18bにおける山18bmの数は、例えばサイプ幅方向一方側(図2の上側)で3個であり他方側(図2の下側)で2個であってもよいし、その逆(一方側で2個、他方側で3個)であってもよい。また、同じく、山18bmの数は、例えばサイプ幅方向両側のそれぞれで3個ずつであってもよい。さらに、山18bmの数は、例えばサイプ幅方向両側のそれぞれで4個以上であってもよい。なお、後述する山18bmの振出し方向SUDがタイヤ周方向一方側に定まるようにする観点からは、第2サイプ18bにおける山18bmの数は、サイプ幅方向両側で互いに同一でないことが好ましい。
【0063】
前述のとおり、図3Cに示すように、第2サイプ18bは、サイプ底側に拡幅部18bbを有している。本例において、第2サイプ18bは、トレッド踏面10から当該拡幅部18bbに至るサイプ深さ方向領域に、トレッド踏面視において(即ち、トレッド踏面10で)波状に延びているだけではなく、サイプ深さ方向においても波状に延びている、3D部分を備えている。なお、図3Cでは、第2サイプ18bの、当該3D部分を含むトレッド踏面10から拡幅部18bbに至るサイプ深さ方向領域の構成は、模式化して描かれている。第2サイプ18bが3D部分を含むことにより、サイプ壁どうしがより確実に支え合うため、ブロック剛性がより十分に確保されて入力時のブロック表面の浮上がりが抑制され接地面積が向上すること及びサイプ容積が十分確保されて吸水性能が向上することにより、氷雪性能がより向上するとともに、ブロック剛性のより十分な確保により、耐摩耗性能もより向上する。
但し、第2サイプ18bは、3D部分を含まなくてもよく、図3Bに例示した第1サイプ18aと同様に、直線状部と拡幅部とから構成されていてもよい。
【0064】
第2サイプ18bのサイプ幅が最大となる拡幅部18bbのサイプ幅Wsbは、トレッド踏面10におけるサイプ幅Wsの例えば1.5~4.0倍であることが好ましい。第2サイプ18bの上記サイプ幅Wsは、例えば0.3~1.0mmとすることができる。
第2サイプ18bの拡幅部18bbを除いたサイプ深さDl(図3C参照)は、第2サイプ18bのサイプ深さDsの例えば0.7~0.9倍であることが好ましい。第2サイプ18bの上記サイプ深さDsは、例えば8~15mmとすることができる。
【0065】
図3B及び図3Cを参照して、本実施形態において、第1サイプ18aのトレッド踏面10におけるサイプ幅Wsと、第2サイプ18bのトレッド踏面10におけるサイプ幅Wsとは、互いに同一である。また、本実施形態において、第1サイプ18aのサイプ幅が最大となる拡幅部18abのサイプ幅Wsbと、第2サイプ18bのサイプ幅が最大となる拡幅部18bbのサイプ幅Wsbとは、互いに同一である。
この場合、第1サイプ18a及び第2サイプ18bの双方で十分な氷雪性能が得られるように、サイプ幅Ws、Wsbを調整することができる。
【0066】
図3B及び図3Cを参照して、本実施形態において、第1サイプ18aのサイプ深さDsと、第2サイプ18bのサイプ深さDsとは、互いに同一である。
この場合、第1サイプ18a及び第2サイプ18bの双方で十分な氷雪性能が得られるように、サイプ深さDsを調整することができる。
【0067】
一方、図3B及び図3Cを参照して、本実施形態において、サイプ深さ方向断面視において、第1サイプ18aの拡幅部18abの大きさ(面積)は、第2サイプ18bの拡幅部18bbの大きさ(面積)よりも大きくされている。即ち、本例では、第1サイプ18aと第2サイプ18bとで、図に示すそれぞれの拡幅部におけるサイプ幅Wsbどうしは同一であるが、それぞれの拡幅部のサイプ深さ方向長さ(図では、Ds-Dlに相当)は第1サイプ18aの方が長い。
この場合、第1サイプ18aの容積を十分確保することにより、第1サイプ18aにてより効果的に吸水・排水性能ひいては氷雪性能を向上できるとともに、第2サイプ18bではサイプ壁どうしがより強固に支え合えることにより、第2サイプ18bにて特に耐摩耗性能を効果的に向上させることができる。
【0068】
次に、再び図1及び図2を参照しつつ、本実施形態でも採用されている、トレッド踏面10における第1サイプ18aと第2サイプ18bとの好ましい配置構成等について、説明する。
【0069】
前述のとおり、一例のブロックである図2に示すセカンドブロック14bは、少なくともタイヤ幅方向一方側が周溝に開口する、タイヤ幅方向に延びる少なくとも3本のサイプを有しており、当該少なくとも3本のサイプは、前述のとおりの第1サイプ18aと第2サイプ18bとから構成されている。ここで、本実施形態において、当該セカンドブロック(ブロック)14bの少なくとも3本のサイプは、当該ブロック内においてタイヤ周方向における中央側のサイプのみが第1サイプ18aである。換言すれば、当該ブロック内において、第1サイプ18aのタイヤ周方向両側に第2サイプ18bが配置されており、いずれの第1サイプ18aもタイヤ周方向最も端側には配置されていない。
この場合、吸水性能ひいては氷雪性能を効果的に向上できるとともに、タイヤの車両への装着方向の違いによる、吸水性能ひいては氷雪性能のばらつきを回避することができる。タイヤ回転時には、同一ブロック内の蹴出し側ほど接地面が氷から水に変化しやすいが、直線状サイプよりタイヤ周方向両端側によりサイプ容積が大きく吸水性能の高い波状サイプを配置することで、上記装着方向によらずより効果的に水を吸水できるからである。また、この場合、ブロック変形を抑制しひいては耐摩耗性能を効果的に向上できるとともに、タイヤの車両への装着方向の違いによる、ブロック変形ひいては耐摩耗性能のばらつきを回避することができる。タイヤ回転時には、同一ブロック内の蹴出し側ほどブロック変形量が大きいが、直線状サイプよりタイヤ周方向両端側によりせん断剛性の高い波状サイプを配置することで、上記装着方向によらずより効果的にブロック変形を抑制できるからである。即ち、上記構成によれば、吸水性能ひいては氷雪性能及びブロック変形ひいては耐摩耗性能をより向上させることができるとともに、タイヤの使用時における車両への装着方向の違いによる、氷雪性能及び耐摩耗性能のばらつきを抑制することができる。従って、通常装着方向が指定されないトラック・バス用タイヤ等の重荷重用タイヤに上記構成を適用すると、特に効果的である。
【0070】
同様の観点から、図1及び図2に示す本実施形態のように、セカンドブロック(ブロック)14bの少なくとも3本のサイプは、当該ブロック内においてタイヤ周方向における中央側のサイプ1本のみが第1サイプ18aであることが好ましい。
この場合、本実施形態のように、例えば、第1サイプ18aのタイヤ周方向両側に1本ずつの第2サイプ18bを配置することで、タイヤの使用時における車両への装着方向の違いによる、氷雪性能及び耐摩耗性能のばらつきを抑制することができるとともに、氷雪性能及び耐摩耗性能をよりバランスよく両立させることができる。
【0071】
図2に示すように、本実施形態において、トレッド踏面10において、第1サイプ18aと第2サイプ18bとの間のタイヤ周方向平均距離は、第2サイプ18bとセカンドブロック(ブロック)14bのタイヤ周方向端縁14beとの間のタイヤ周方向平均距離より短い。
この場合、耐摩耗性能をさらに向上させることができるとともに、タイヤの使用時における車両への装着方向の違いによる、耐摩耗性能のばらつきをより抑制することができる。タイヤ回転時には、同一ブロック内の蹴出し側ほどブロック変形量が大きいが、第1サイプ18aと第2サイプ18bとの間、即ちタイヤ周方向中央側よりも、第2サイプ18bとブロックのタイヤ周方向端縁との間、即ちタイヤ周方向両端側のブロック部分のタイヤ周方向長さを長くとることで、上記装着方向によらずより効果的にブロック変形を抑制できるからである。
なお、上記「タイヤ周方向平均距離」は、サイプ(第1サイプ18a、第2サイプ18b)については、トレッド踏面10におけるサイプ中心線18ac、18bcを基準に測定されるものとし、「平均距離」は、(最大距離+最小距離)/2で計算されるものとする。また、同一ブロック内に、第1サイプ18a又は第2サイプ18bが複数本形成されている場合は、当該ブロックにおけるタイヤ周方向最も中心側の第1サイプ18a及び当該ブロックにおけるタイヤ周方向最も端縁側の第2サイプ18bを基準に、当該タイヤ周方向平均距離が測定されるものとする。
【0072】
また、図1に示すように、本実施形態において、第1サイプ18a及び第2サイプ18bは、タイヤ幅方向に互いに隣接する複数のブロック(本例では、セカンドブロック14a、14b、センターブロック13a、13b、セカンドブロック14c、14d。以下、「センターブロック」及び「セカンドブロック」を、単に「ブロック」と称する場合がある。)に設けられており、タイヤ幅方向に隣接する2つのブロック(本例では、ブロック14aと14b、ブロック14bと13a、ブロック13aと13b、ブロック13bと14c、及びブロック14cと14d)の間では、第2サイプ18bにおける山18bmの振出し方向SUD(図4参照)がタイヤ周方向互いに逆側である。なお、同一のブロックでは、第2サイプ18bにおける山18bmの振出し方向SUDは、当該第2サイプ18bのタイヤ幅方向両端側でタイヤ周方向互いに同一側である。
この場合、タイヤの使用時における車両への装着方向の違いによる、氷雪性能のばらつきを抑制することができる。より詳細に説明すると、波状サイプである第2サイプ18bは、タイヤ周方向で多くの山18bmがある側の方がサイプエッジによって氷雪等を噛むエッジ効果が高いため、当該タイヤ周方向で多くの山18bmがある側、即ち、山18bmの振出し方向SUDの側をタイヤ回転時の踏込み側とした場合の方が、それをタイヤ回転時の蹴出し側とした場合よりも、氷雪性能が高くなる傾向にある。即ち、多くの山18bmがあることになる山18bmの振出し方向SUDは、氷雪性能に対して方向性を有している。従って、第2サイプ18bにおける山18bmの振出し方向SUDを、タイヤ幅方向に隣接するブロック間で互いに逆転させることで、タイヤの使用時における車両への装着方向の違いによる、氷雪性能のばらつきを抑制することができる。
【0073】
ここで、波状サイプである第2サイプ18bにおける山18bmの振出し方向SUDとは、図4に白太矢印で示すように、第2サイプ18bがタイヤ幅方向一方側又は他方側の端からブロック内側に向かって延びるに従い、最初に山18bmが突出する方向を指す。例えば、図4に示す例において、2本の第2サイプ18bは、タイヤ幅方向端からブロック内側に向かって延びるに従い、すべて最初にタイヤ周方向一方側に山bm1(bm)が突出するので、山18bmの振出し方向SUDは、すべて紙面斜め上方向、即ち、すべてタイヤ周方向同一の一方側である。なお、図4は、後述する第1サイプ18aの突起18apのサイプ壁からの突出方向PJDと、第2サイプ18bの山18bmの振出し方向SUDとの関係を説明するための、模式的平面図であるが、一例として、図2の例のセカンドブロック14bの様子を模式的に示したものである。
即ち、図2及び図4に示すように、本実施形態において、同一の1つのブロック(本例では、ブロック14b)内では、第2サイプ18bの山18bmの振出し方向は、すべて同一である。これにより、1つのブロック内で各サイプにより区画された複数の小ブロックの形状をほぼ同一とすることができ、変形傾向を同一として偏摩耗を抑制することができる。
【0074】
さらに、図4に示すように、本実施形態において、第1サイプ18aにおける前述の突起18apのサイプ壁からの突出方向PJD(以下、単に「突起(18ap)の突出方向(PJD)」ともいい、図4では黒太矢印で示されている。)は、第2サイプ18bにおける山18bmの振出し方向と、タイヤ周方向逆側である。換言すれば、第1サイプ18aにおける突起18apは、第2サイプ18bにおける山18bmの振出し方向SUDとタイヤ周方向逆側に、第1サイプ18aの片側(図4では、紙面上側)のサイプ壁から突出している。さらに換言すれば、第1サイプ18aにおける突起18apは、第2サイプ18bにおける山18bmの振出し方向SUD側のサイプ壁から突出している。
この場合も、タイヤの使用時における車両への装着方向の違いによる、氷雪性能のばらつきを抑制することができる。より詳細に説明すると、上述のとおり、波状サイプである第2サイプ18bは、山18bmの振出し方向SUDの側をタイヤ回転時の踏込み側とした場合の方が、それをタイヤ回転時の蹴出し側とした場合よりも、氷雪性能が高くなる傾向にある。同様に、直線状サイプである第1サイプ18aは、突起18apが突出していないサイプ壁側、即ち、突起18apのサイプ壁からの突出方向PJDの側の方が氷雪性能が高いため、当該突出方向PJDの側をタイヤ回転時の踏込み側とした場合の方が、それをタイヤ回転時の蹴出し側とした場合よりも、氷雪性能が高くなる傾向にある。即ち、山18bmの振出し方向SUDと突起18apの突出方向OJDとは、氷雪性能に対して同一の方向性を有している。従って、同一のブロック内で、第1サイプ18aにおける突起18apの突出方向PJDが、第2サイプ18bにおける山18bmの振出し方向SUDと、タイヤ周方向逆側であることにより、タイヤの使用時における車両への装着方向の違いによる、氷雪性能のばらつきを抑制することができる。
【0075】
なお、前述した第2サイプ18bにおける山18bmの振出し方向SUDの場合と同様に、図示はしないが、本実施形態において、第1サイプ18a及び第2サイプ18bは、タイヤ幅方向に互いに隣接する複数のブロック(本例では、ブロック14a、14b、13a、13b、14c、及び14d)に設けられており、タイヤ幅方向に隣接する2つのブロック(本例では、ブロック14aと14b、ブロック14bと13a、ブロック13aと13b、ブロック13bと14c、及びブロック14cと14d)の間では、第1サイプ18aにおける突起18apのサイプ壁からの突出方向PJDがタイヤ周方向互いに逆側である。
前述した第2サイプ18bにおける山18bmの振出し方向SUDの場合と同様に、この場合も、タイヤの使用時における車両への装着方向の違いによる、氷雪性能のばらつきを抑制することができる。前述のとおり、当該山18bmの振出し方向SUDと同様、当該突起18apの突出方向OJDも、氷雪性能に対して方向性を有しているからである。
【0076】
図1に示すように、本実施形態において、トレッド踏面視において、周方向細溝(周溝)16を介して互いに隣り合う2つのブロックは、タイヤ周方向の一部が互いにタイヤ幅方向に重複している。より具体的に、例えば、図1におけるタイヤ幅方向一方側のセカンドブロック列14を構成する2つのブロック列141及び142は、それぞれのブロック14aと14bどうしが、当該それぞれのブロック14aと14bとのタイヤ周方向全領域ではなく、一部の領域のみが互いにタイヤ幅方向に重複するように配置されている。換言すれば、タイヤ周方向に屈曲しながら延びる周方向細溝16を介してタイヤ幅方向に隣接する、2つのブロック列141とブリック列142とは、それぞれを構成するブロック14aとブロック14bとが、タイヤ幅方向に互い違いになるように、タイヤ周方向に配列されている。
この場合、タイヤ周方向の位置の違いによる氷雪性能及び耐摩耗性能のばらつきが抑制され、タイヤ周方向に均一な特性となりやすくなる。
なお、図1に示すように、センターブロック列13を構成するブロック列131及び132のブロック13aと13b、並びに、タイヤ幅方向他方側のセカンドブロック列14を構成するブロック列143及び144のブロック14cと14dについても、同様である。さらに、図1に示すように、内側周方向主溝(周溝)11又は外側周方向主溝(周溝)12を介して互いに隣り合う2つのブロック(ブロック15aと14a、ブロック14bと13a、ブロック13bと14c、及びブロック14dと15b)についても、同様である。
【0077】
図1に示すように、本実施形態において、タイヤ幅方向の異なる位置に配置された複数のブロック14a、14b、13a、13b、14c、及び/又は14dに、前述の第1サイプ18a及び/又は第2サイプ18bが形成されている。また、トレッド踏面視において、第1サイプ18a及び/又は第2サイプ18bはタイヤ周方向に対して傾斜しており、当該第1サイプ18a及び/又は第2サイプ18bのタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、タイヤ幅方向内側のブロック13a及び/又は13bの方がタイヤ幅方向外側のブロック14a、14b、14c、及び/又は14dよりも、小さい。より具体的に、本例において、センターブロック13a及び13bにおける、第1サイプ18a及び第2サイプ18bのタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、例えば5°未満、より具体的には例えば0°であり、セカンドブロック14a、14b、14c、及び14dにおける、第1サイプ18a及び第2サイプ18bのタイヤ幅方向における傾斜角度は、例えば5~25°、より具体的には例えば10°である。なお、サイプのタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、図2に示すサイプ中心線18ac、18bcを基準に測定されるものとする。
上記の構成によれば、空車状態などの低荷重時における接地形状の踏み蹴りラインに、トレッド踏面における上記各サイプの延在方向が近くなるため、各サイプのエッジ効果が高まり、氷雪性能をより向上させることができる。また、上記の構成によれば、最も接地圧の高いタイヤ赤道面CL近傍のタイヤ幅方向領域では、タイヤ周方向に対してサイプのエッジが十分効くようにサイプのタイヤ幅方向に対する傾斜角度を0°に近くすることにより、特に直進時におけるタイヤ周方向の制・駆動力を高めることができるとともに、その他のタイヤ幅方向領域では、タイヤ周方向だけではなくタイヤ幅方向に対してもサイプのエッジが効くようにサイプのタイヤ幅方向に対する角度を0°近傍より比較的大きくすることにより、コーナリング時等の横力ひいては制・駆動力も高めることができる。
【0078】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。
例えば、上述の実施形態におけるタイヤ1では、タイヤ赤道面CLを挟んだそれぞれのタイヤ半部におけるタイヤ幅方向最外側の周溝どうしの間のタイヤ幅方向領域に配置されたブロック列131、132、141~144のすべて、ひいては、当該タイヤ幅方向領域におけるすべてのブロック13a、13b、14a~14dに、第1サイプ18a及び第2サイプ18b(ひいては、第1サイプ18a)が形成されているが、これらのブロックの一部にのみ、第1サイプ18a及び第2サイプ18b(ひいては、第1サイプ18a)が形成されていてもよい。例えば、上記のブロック列のうち、いずれか少なくとも1つのブロック列のブロックにのみ、第1サイプ18a及び第2サイプ18b(ひいては、第1サイプ18a)が形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係るタイヤは、任意の種類のタイヤとして好適に利用でき、例えば、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ又は建設・鉱山車両用タイヤ等として好適に利用でき、特に、トラック・バス用タイヤ又は建設・鉱山車両用タイヤ等の重荷重用タイヤ、なかでも特には、トラック・バス用タイヤとして好適に利用できる。
【符号の説明】
【0080】
1:タイヤ、 10:トレッド踏面、 11:内側周方向主溝(周溝)、 12:外側周方向主溝(周溝)、 13:センターブロック列、 13a、13b:センターブロック(ブロック)、 131、132:ブロック列、 14:セカンドブロック列、 14a~14d:セカンドブロック(ブロック)、 14be:ブロックのタイヤ周方向端縁、 141~144:ブロック列、 15:ショルダーブロック列、 15a、15b:ショルダーブロック(ブロック)、 16:周方向細溝(周溝)、 17:内側ラグ溝(ラグ溝)、 18:内側サイプ(サイプ)、 18a:第1サイプ(サイプ)、 18ab:拡幅部、 18ac:サイプ中心線、 18ap:突起、 18as:直線状部、 18b:第2サイプ(サイプ)、 18bb:拡幅部、 18bc:サイプ中心線、 18bm、18bm1、18bm2:山、 19:周方向サイプ、 21:外側ラグ溝(ラグ溝)、 22:横溝、 23:縦溝、 24:外側サイプ(サイプ)、
CD:タイヤ周方向、 CL:タイヤ赤道面、 Dl、Ds:サイプ深さ、 Dp:突起の深さ、 Hp:突起の高さ、 La、Lb、Lp、Lpt、Ls:サイプ長手方向長さ、 PJD:突起の突出方向、 SLD:サイプ長手方向、 SP:間隙、 SUD:山の振出し方向、 SWD:サイプ幅方向、 TE:トレッド端、 WD:タイヤ幅方向、 Ws、Wsb:サイプ幅
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4