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特開2024-61494シート搬送ローラ用ゴム組成物およびシート搬送ローラ
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  • 特開-シート搬送ローラ用ゴム組成物およびシート搬送ローラ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061494
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】シート搬送ローラ用ゴム組成物およびシート搬送ローラ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240425BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20240425BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L93/04
C08L23/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169473
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼窪 眞司
(72)【発明者】
【氏名】藤井 良輔
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AF023
4J002BB052
4J002BB152
4J002DA046
4J002EK036
4J002EK046
4J002EK056
4J002EK086
4J002EV167
4J002EV327
4J002FD010
4J002FD030
4J002FD146
4J002FD157
4J002GM00
(57)【要約】
【課題】高い摩擦係数を有するシート搬送ローラおよびそのローラ本体を形成するためのゴム組成物を提供する。
【解決手段】本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムを含むゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを含有することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分中のジエン系ゴムの含有率が、50質量%以上である請求項1に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴムが、イソプレンゴムおよび/または天然ゴムである請求項1に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分は、さらに、非ジエン系ゴムとしてエチレン・α-オレフィン共重合体を50質量%未満含む請求項1に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分100質量部に対して、前記ロジンおよび/またはロジン誘導体を1質量部~15質量部含有する請求項1に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記シートは、枚葉紙である請求項1に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物を硬化して得られたことを特徴とするシート搬送ローラ。
【請求項8】
ジエン系ゴムを含むゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを、ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点以上の温度で混錬して混錬物を得る第1工程を有することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
前記混錬物に加硫剤を混合する第2工程を有する請求項8に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送ローラ用ゴム組成物およびこれを用いて形成されたシート搬送ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタなどのOA機器の紙送りローラは、その摩擦係数、耐環境性能(耐オゾン等)、コストの面で、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)製のローラが多く使用されている。プリンタ等で使用される紙の種類が多岐にわたるようになり、ローラに対しては高い摩擦係数が要求される場合がある。そのためEPDMにオイル等を加えて低硬度化して摩擦係数を上げたり、またイソプレンゴム(IR)をブレンドしたりすることで摩擦係数を上げるなどの工夫がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ローラのローラ本体を形成するためのゴム組成物であって、少なくともエチレンプロピレンジエンゴムを含むゴム、前記ゴムの総量100質量部あたり20質量部以下のフィラー、および前記ゴムの総量100質量部あたり2.5質量部以上の過酸化物架橋剤を含み、前記エチレンプロピレンジエンゴムは、エチレン含量が55%以上、72%以下の非油展エチレンプロピレンジエンゴムと、油展エチレンプロピレンジエンゴムであり、前記非油展エチレンプロピレンジエンゴムの割合は、前記ゴムの総量100質量部中の20質量部以上、80質量部以下であるゴム組成物が開示されている。また、前記ゴムにさらにIRをブレンドすることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、ローラ本体を含み、前記ローラ本体は、イソプレンゴムおよび天然ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のイソプレン系ゴム(ただし、エポキシ化天然ゴムを除く)をゴムの総量100質量部中に55質量部以上の割合で含むゴム組成物の架橋物からなる紙送りローラが開示されている。
【0005】
特許文献3には、ロジン物質の有機溶媒液からなることを特徴とするエラストマーローラの処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-02271号公報
【特許文献2】特開2021-91549号公報
【特許文献3】特開平7-268313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、プリンタなどのOA機器の紙送りローラは、高い摩擦係数を有することが要求されている。また、帳票類のスキャナやソートを行う書類処理装置に使用される枚葉類搬送用のローラは、高速で多様な枚葉類を送り出すため、摩耗しやすく、摩耗した状態でも高い摩擦係数の維持が要求されている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、摩擦係数が高いシート搬送ローラおよびそのローラを形成するためのゴム組成物を提供することを課題とする。さらに、本発明は、シート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決することができた、本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを含有することを特徴とする。
【0010】
本発明には、本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物を硬化させて得られるシート搬送ローラが含まれる。
【0011】
本発明には、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを、ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点以上の温度で混錬して混錬物を得る第1工程を有することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法が含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い摩擦係数を有するシート搬送ローラが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のシート搬送ローラの実施形態の一例を示す斜視図。
図2】本発明のシート搬送ローラの摩擦係数および摩耗減量率を測定する方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<シート搬送ローラ用ゴム組成物>
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」と称することがある。)は、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを含有することを特徴とする。
【0015】
[ゴム成分]
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分を含有することが好ましい。まず、前記ゴム成分について説明する。
【0016】
(ジエン系ゴム)
前記ジエン系ゴムは、ジエン化合物に由来する構成単位(以下、単に「ジエン単位」と称することがある。)を主に有する重合体であれば特に限定されない。
【0017】
前記ジエン化合物は、分子中にジエン構造を有するものであれば特に限定されない。前記ジエン化合物の炭素数は、4以上が好ましく、5以上がより好ましく、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。前記ジエン化合物としては、共役ジエン化合物、非共役ジエン化合物が挙げられる。
【0018】
前記共役ジエン化合物の具体例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-へプタジエン、2,4-へプタジエン、1,3-オクタジエン、2,4-オクタジエン、3,5-オクタジエン、1,3-ノナジエン、2,4-ノナジエン、3,5-ノナジエン、1,3-デカジエン、2,4-デカジエン、3,5-デカジエン、4,6-デカジエン等の鎖状共役ジエン化合物;1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロヘプタジエン、1,3-シクロオクタジエン、1,3-シクロノナジエン、1,3-シクロデカジエン等の環状共役ジエン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの共役ジエンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、前記共役ジエン化合物は、さらに置換基を有してもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I)、アルキル基(直鎖状、分岐状、環状)、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
【0019】
前記非共役ジエン化合物の具体例としては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-へプタジエン、1,5-へプタジエン、1,6-へプタジエン、2,5-へプタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2,5-オクタジエン、2,6-オクタジエン、1,4-ノナジエン、1,5-ノナジエン、1,6-ノナジエン、1,7-ノナジエン、1,8-ノナジエン、2,5-ノナジエン、2,6-ノナジエン、2,7-ノナジエン、3,6-ノナジエン、1,4-デカジエン、1,5-デカジエン、1,6-デカジエン、1,7-デカジエン、1,8-デカジエン、1,9-デカジエン、2,5-デカジエン、2,6-デカジエン、2,7-デカジエン、2,8-デカジエン、3,6-デカジエン、3,7-デカジエン等の鎖状非共役ジエン化合物;1,4-シクロヘキサジエン、1,4-シクロへプタジエン、1,4-シクロオクタジエン、1,5-シクロオクタジエン、1,4-シクロノナジエン、1,5-シクロノナジエン、1,4-シクロデカジエン、1,5-シクロデカジエン、ジシクロペンタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン等の環状非共役ジエン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの非共役ジエン化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、前記非共役ジエン化合物は、さらに置換基を有してもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I)、アルキル基(直鎖状、分岐状、環状)、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
【0020】
前記ジエン化合物としては、共役ジエン化合物と非共役ジエン化合物のいずれを使用してもよいが、共役ジエン化合物を使用することが好ましい。
【0021】
前記ジエン系ゴムは、前記ジエン単位のみを有してもよいが、さらに、非ジエン化合物に由来する構成単位(以下、単に「非ジエン単位」と称することがある。)を有してもよい。
【0022】
前記非ジエン化合物は、分子中にエチレン性不飽和結合を有し且つジエン構造を有さないものであれば特に限定されない。前記非ジエン化合物としては、オレフィン、芳香族ビニル化合物、ニトリル化合物などが挙げられる。
【0023】
前記オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン等が挙げられる。前記オレフィンは、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。前記芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等が挙げられる。前記ニトリル化合物の具体例としては、(メタ)アクリロニトリル、ブテンニトリル等が挙げられる。これらの非ジエン化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、前記非ジエン化合物は、さらに置換基を有してもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I)、アルキル基(直鎖状、分岐状、環状)、アルコキシ基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
【0024】
前記ジエン系ゴムにおいて、ジエン単位の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、前記ジエン単位の含有率の上限は、100質量%である。
【0025】
なお、前記ジエン系ゴム中のジエン単位および非ジエン単位の含有率は、例えば13C-NMRにより求めることができる。
【0026】
前記ジエン系ゴムは、例えば、触媒の存在下で、ジエン化合物と、任意的な非ジエン化合物とを含むモノマー組成物を重合させる公知の方法により製造することができる。また、市販品を用いてもよい。
【0027】
前記ジエン系ゴムの具体例としては、例えば、天然ゴム(NR);ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム;およびこれらの変性ジエン系ゴムを挙げることができるが、これらに限定されない。前記ジエン系ゴムは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明では、摩擦係数の観点から、ジエン系ゴムとして、IR、NR、SBRを用いることが好ましく、IR、NRを用いることが特に好ましい。なお、前記ジエン系ゴムとしては、非油展タイプ、油展タイプのいずれを用いてもよい。
【0028】
前記ジエン系ゴムは、市販品を用いてもよい。特に限定されないが、例えば、BRとしては、日本ゼオン社製のニポール(登録商標)BR1220(非油展タイプ)等が挙げられる。IRとしては、日本ゼオン社製のニポールIR2200、IR2200L等が挙げられる。SBRとしては、日本ゼオン社製のニポール1502(結合スチレン量:23.5%、非油展タイプ)、1723(結合スチレン量:23.5%、油展タイプ)、1739(結合スチレン量:40.0%、油展タイプ)、9548(結合スチレン量:35.0%、油展タイプ)等が挙げられる。NBRとしては、日本ゼオン社製のニポール1041(結合アクリロニトリル量:40.5%)、DN101(結合アクリロニトリル量:42.5%)等の高ニトリルタイプ;ニポール1042(結合アクリロニトリル量:33.5%)、DN202(結合アクリロニトリル量:31.0%)等の中高ニトリルタイプ;ニポール1043(結合アクリロニトリル量:29.0%)、DN302(結合アクリロニトリル量:27.5%)等の中ニトリルタイプ;ニポールDN401(結合アクリロニトリル量:18.0%)等の低ニトリルタイプ等が挙げられる。
【0029】
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物が含有するゴム成分は、前記ジエン系ゴムを主成分として含有することが好ましい。前記ゴム成分において、ジエン系ゴムの含有率は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。なお、前記ゴム成分が、ジエン系ゴムのみを含有することも好ましい。ジエン系ゴムの含有率が50質量%以上であれば、摩擦係数が向上するからである。
【0030】
本発明では、前記ジエン系ゴムとしては、ジエン単位のみから構成されるゴムと、ジエン単位および非ジエン単位から構成されるゴムのいずれを使用してもよいが、摩擦係数の観点から、ジエン単位のみから構成されるゴムを使用することが好ましい。ジエン単位のみから構成されるゴムの含有率は、ジエン単位のみから構成されるゴムと、ジエン単位および非ジエン単位から構成されるゴムとの合計含有率100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、前記含有率の上限は、100質量%である。
【0031】
なお、本発明において、前記ジエン系ゴムは、常温(23℃)で半固形状ないし固形状であることが好ましい。
【0032】
(非ジエン系ゴム)
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物が含有するゴム成分は、前記ジエン系ゴムのみを含んでもよいが、さらに、非ジエン系ゴムを含んでもよい。
【0033】
前記非ジエン系ゴムとしては、ジエン単位を有さない重合体、および、ジエン単位の含有率が0質量%超、50質量%未満である重合体が挙げられる。
【0034】
前記非ジエン系ゴムとしては、特に限定されないが、オゾン劣化抑制などの観点から、エチレン・α-オレフィン共重合体や、エチレン・酢酸ビニル共重合体を使用することが好ましい。
【0035】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構成単位とα-オレフィンに由来する構成単位(以下、それぞれ「エチレン単位」、「α-オレフィン単位」と称することがある。)を主に有する共重合体であれば特に限定されない。
【0036】
前記α-オレフィンは、α位に二重結合を持つアルケンである。前記α-オレフィンの炭素数は、3以上が好ましく、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましく、6以下が特に好ましい。前記α-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等の直鎖状オレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン等の分岐鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の環状オレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。これらのα-オレフィンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、前記α-オレフィンは、さらに置換基を有してもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I)などが挙げられる。
【0037】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレン単位とα-オレフィン単位のみを有しても良いが、さらに他のモノマーに由来する構成単位を有してもよい。
【0038】
前記他のモノマーとしては、特に限定されないが、ジエン化合物が好ましい。前記ジエン化合物としては、共役ジエン化合物、非共役ジエン化合物が挙げられる。
【0039】
前記共役ジエン化合物の具体例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-へプタジエン、2,4-へプタジエン、1,3-オクタジエン、2,4-オクタジエン、3,5-オクタジエン、1,3-ノナジエン、2,4-ノナジエン、3,5-ノナジエン、1,3-デカジエン、2,4-デカジエン、3,5-デカジエン、4,6-デカジエン等の鎖状共役ジエン化合物;1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロヘプタジエン、1,3-シクロオクタジエン、1,3-シクロノナジエン、1,3-シクロデカジエン等の環状共役ジエン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの共役ジエンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、前記共役ジエン化合物は、さらに置換基を有してもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I)、アルキル基(直鎖状、分岐状、環状)、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
【0040】
前記非共役ジエン化合物の具体例としては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-へプタジエン、1,5-へプタジエン、1,6-へプタジエン、2,5-へプタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2,5-オクタジエン、2,6-オクタジエン、1,4-ノナジエン、1,5-ノナジエン、1,6-ノナジエン、1,7-ノナジエン、1,8-ノナジエン、2,5-ノナジエン、2,6-ノナジエン、2,7-ノナジエン、3,6-ノナジエン、1,4-デカジエン、1,5-デカジエン、1,6-デカジエン、1,7-デカジエン、1,8-デカジエン、1,9-デカジエン、2,5-デカジエン、2,6-デカジエン、2,7-デカジエン、2,8-デカジエン、3,6-デカジエン、3,7-デカジエン等の鎖状非共役ジエン化合物;1,4-シクロヘキサジエン、1,4-シクロへプタジエン、1,4-シクロオクタジエン、1,5-シクロオクタジエン、1,4-シクロノナジエン、1,5-シクロノナジエン、1,4-シクロデカジエン、1,5-シクロデカジエン、ジシクロペンタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン等の環状非共役ジエン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの非共役ジエン化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、前記非共役ジエン化合物は、さらに置換基を有してもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I)、アルキル基(直鎖状、分岐状、環状)、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
【0041】
前記ジエン化合物としては、共役ジエン化合物と非共役ジエン化合物のいずれを使用してもよいが、非共役ジエン化合物を使用することが好ましい。
【0042】
本発明において、ジエン化合物に由来する構成単位を有するエチレン・α-オレフィン共重合体を、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体という場合がある。本発明において、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体は、エチレン・α-オレフィン共重合体の下位概念である。
【0043】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体において、エチレン単位とα-オレフィン単位の合計含有率は、50質量%超であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、前記合計含有率の上限は、100質量%である。
【0044】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体において、エチレン単位の含有率は、40質量%以上であることが好ましく、42質量%以上であることがより好ましく、43質量%以上であることがさらに好ましく、79質量%以下であることが好ましく、78質量%以下であることがより好ましく、77質量%以下であることがさらに好ましい。エチレン単位の含有率が前記範囲であれば、市販品で入手しやすいからである。
【0045】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体がエチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体である場合、前記エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体において、ジエン単位の含有率は、0.5質量%以上であることが好ましく、0.7質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましく、15質量%以下であることが好ましく、14質量%以下であることがより好ましく、13質量%以下であることがさらに好ましい。ジエン単位の含有率が前記範囲であれば、市販品で入手しやすいからである。
【0046】
なお、共重合体中のエチレン単位、α-オレフィン単位およびジエン単位などの含有率は、例えば13C-NMRにより求めることができる。
【0047】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体は、例えば、触媒の存在下で、エチレンと、α-オレフィンと、任意的にジエン化合物などの他のモノマーとを含むモノマー組成物を共重合させる公知の方法により製造することができる。また、市販品を用いてもよい。
【0048】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体の具体例としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・ブテン共重合体(EBR)、エチレン・オクテン共重合体(EOR)、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体(EPBR)、エチレン・ブテン・ジエン共重合体(EBDM)、エチレン・プロピレン・ブテン・ジエン共重合体を挙げることができるが、これらに限定されない。前記共重合体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明では、オゾン劣化抑制の観点から、エチレン・α-オレフィン共重合体として、EPDMを用いることが好ましい。前記EPDMは、1種で用いても良く、2種以上を併用してもよい。なお、前記共重合体としては、非油展タイプ、油展タイプのいずれを用いてもよい。
【0049】
前記EPDMの市販品としては、例えば、住友化学社製のエスプレン(登録商標)301〔エチレン含量:62%、ジエン含量:3.0%〕、301A〔エチレン含量:50%、ジエン含量:5.0%〕、501A〔エチレン含量:52%、ジエン含量:4.0%〕、505A〔エチレン含量:50%、ジエン含量:9.5%〕、505〔エチレン含量:50%、ジエン含量:10.0%〕、502〔エチレン含量:56%、ジエン含量:4.0%〕、512F〔エチレン含量:65%、ジエン含量:4.0%〕、532〔エチレン含量:51%、ジエン含量:3.5%〕、552〔エチレン含量:55%、ジエン含量:4.0%〕、553〔エチレン含量:58%、ジエン含量:4.5%〕、5206F〔エチレン含量:54%、ジエン含量:8.5%〕、5527F〔エチレン含量:54%、ジエン含量:8.5%〕、586〔エチレン含量:66%、ジエン含量:12.5%〕(以上は非油展タイプ);7456〔エチレン含量:53%、ジエン含量:10.5%、油展量:20phr〕、603〔エチレン含量:64%、ジエン含量:4.5%、油展量:40phr〕、6101〔エチレン含量:70%、ジエン含量:6.5%、油展量:70phr〕、601F〔エチレン含量:59%、ジエン含量:3.5%、油展量:70phr〕、600F〔エチレン含量:66%、ジエン含量:4.0%、油展量:100phr〕、670F〔エチレン含量:66%、ジエン含量:4.0%、油展量:100phr〕(以上は油展タイプ)が挙げられる(「%」は、「質量%」である。)。
【0050】
また、前記EPDMの市販品としては、ダウ・ケミカル社製のNORDEL(登録商標)シリーズ、JSR社製のEPシリーズ、三井化学社製の三井EPT(登録商標)シリーズなどを挙げることもできる。
【0051】
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンに由来する構成単位と酢酸ビニルに由来する構成単位(以下、「酢酸ビニル単位」と称することがある。)を主に有する共重合体であれば特に限定されない。
【0052】
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレン単位および酢酸ビニル単位のみを有してもよいが、さらに他のモノマーに由来する構成単位を有してもよい。
【0053】
前記他のモノマーとしては、特に限定されないが、ビニルアルコールが好ましい。ビニルアルコールに由来する構成単位(以下、単に「ビニルアルコール単位」と称することがある。)を有するエチレン・酢酸ビニル共重合体としては、例えば、共重合体の一部の酢酸ビニル単位をケン化反応によってビニルアルコール単位に転換させた部分ケン化物が挙げられる。本発明において、前記部分ケン化物は、エチレン・酢酸ビニル共重合体の下位概念である。
【0054】
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体において、エチレン単位と酢酸ビニル単位(ビニルアルコール単位を有する場合、さらにビニルアルコール単位)の合計含有率は、50質量%超であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、前記合計含有率の上限は、100質量%である。
【0055】
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体において、エチレン単位の含有率は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。エチレン単位の含有率が前記範囲であれば、市販品で入手しやすいからである。
【0056】
なお、共重合体中のエチレン単位、酢酸ビニル単位およびビニルアルコール単位などの含有率は、例えば13C-NMRにより求めることができる。
【0057】
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
非ジエン系ゴムとしては、前記エチレン・α-オレフィン共重合体とエチレン・酢酸ビニル共重合体のいずれを好ましく使用できるが、エチレン・α-オレフィン共重合体を使用することがより好ましく、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体を使用することが特に好ましい。
【0059】
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物が含有するゴム成分は、前記非ジエン系ゴムを含む場合、前記ゴム成分において、前記非ジエン系ゴムの含有率は、25質量%以上であることが好ましく、28質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%未満であることが好ましく、45質量%未満であることがより好ましく、40質量%未満であることがさらに好ましい。非ジエン系ゴムの含有率が25質量%以上であれば、オゾン劣化の抑制効果がより高くなり、50質量%未満であれば、摩擦係数がより向上するからである。
【0060】
ゴム成分が、ジエン系ゴムと非ジエン系ゴムとを含有する場合、ジエン系ゴムと非ジエン系ゴムの合計含有率が100質量%となるように、非ジエン系ゴムの含有率は、前記範囲内から選択されればよい。
【0061】
なお、本発明では、前記ジエン系ゴムまたはエチレン・α-オレフィン共重合体などの非ジエン系ゴムとして、油展タイプを使用する場合、当該油展タイプ中に含まれる固形分(伸展油を除いたゴム成分自体)の量に基づいて、前記含有率を算出する。
【0062】
[ロジンおよび/またはその誘導体]
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、ロジンおよび/またはロジン誘導体(以下、単に「ロジン類成分」と称する場合がある)を含有する。ロジンとロジン誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく、両者を併用してもよい。
【0063】
ロジンは、マツ科の植物の樹液である松脂等のバルサム類を集めてテレピン精油を蒸留した後に残る残留物で、ロジン酸(アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸等)を主成分とする天然樹脂である。ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン、並びにこれらの精製物が挙げられる。これらのロジンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
ロジン誘導体は、前記ロジンの誘導体であれば特に限定されず、例えば、前記ロジンに水素化、不均化、重合、エステル化、変性(例えば、酸変性)、その他の化学的な修飾などの処理を施したものが挙げられる。これらの処理は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。ロジン誘導体としては、例えば、ロジンエステル、不均化ロジン、不均化ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、水素化ロジン、水素化ロジンエステル、変性ロジン、変性ロジンエステル等が挙げられる。これらのロジン誘導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0065】
前記ロジンおよび/またはロジン誘導体としては、市販品を用いることができる。例えば、ハリマ化成社製のハリエスターP(ペンタエリスリトールロジンエステル、酸価:6~12mgKOH/g)、ハリエスターDS-70L(ロジンエステル、酸価:8mgKOH/g以下)、ハリタックR-80(ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)、ハリタックFK100(不均化ロジンエステル、酸価:5mgKOH/g以下)、ハリタックFK125(不均化ロジンエステル、酸価:14~20mgKOH/g)、ハリタックSE10(水添ロジンエステル、酸価:2~10mgKOH/g)、ハリタックF85(水添ロジンエステル、酸価:4~12mgKOH/g)、ハリタックPH(水添ロジンエステル、酸価:7~16mgKOH/g)、ハリタックAQ-90A(ロジン変性特殊合成樹脂、酸価:100~110mgKOH/g)などのロジンエステル類;ハリタックF-75(特殊変性ロジン、酸価:145mgKOH/g以上)、ハリタックFG-90(特殊変性ロジン、酸価:140~160mgKOH/g)、ハリマックT-80(マレイン化ロジン、酸価:170~200mgKOH/g)、ハリマックR-100(マレイン化ロジンエステル、酸価:25mgKOH/g以下)、ハリマックM-453(マレイン化ロジンエステル、酸価:25mgKOH/g以下)、ハリタック4740(マレイン化ロジンエステル、酸価:25~35mgKOH/g)、ハリエスターMSR-4(マレイン化ロジンエステル、酸価:120~150mgKOH/g)、ハリタック28JA(マレイン化ロジンエステル、酸価:39mgKOH/g以下)などの変性ロジン類及び変性ロジンエステル類;ハリタックPCJ(重合ロジンエステル、酸価:16mgKOH/g以下)、ハリエスターDS-130(重合ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)、ハリエスターKT-3(重合ロジンエステル、酸価:17mgKOH/g以下)などの重合ロジンエステル類が挙げられる。
【0066】
また、荒川化学工業社製のパインクリスタルKR-85(超淡色ロジン、酸価:165~175mgKOH/g)、パインクリスタルKR-612(超淡色ロジン、酸価:160~175mgKOH/g)、パインクリスタルKR-614(超淡色ロジン、酸価:170~180mgKOH/g)、パインクリスタルKE-100(超淡色ロジンエステル、酸価:2~10mgKOH/g)、パインクリスタルKE-311(超淡色ロジンエステル、酸価:2~10mgKOH/g)、パインクリスタルPE-590(超淡色ロジンエステル、酸価:2~10mgKOH/g)、パインクリスタルKE-359(超淡色ロジンエステル、酸価:10~20mgKOH/g)、パインクリスタルKE-604(酸変性超淡色ロジン、酸価:230~245mgKOH/g)、パインクリスタルKR-120(酸変性超淡色ロジン、酸価:305~345mgKOH/g)、パインクリスタルKR-140(超淡色重合ロジン、酸価:130~160mgKOH/g)、パインクリスタルD-6011(ロジン含有ジオール、酸価:1mgKOH/g以下)、パインクリスタルKR-50M(超淡色ロジンの金属塩、酸価:90~100mgKOH/g)などの超淡色ロジン類;スーパーエステルA-18(特殊ロジンエステル、酸価:15~30mgKOH/g)、スーパーエステルA-75(特殊ロジンエステル、酸価:10mgKOH/g以下)、スーパーエステルA-100(特殊ロジンエステル、酸価:10mgKOH/g以下)、スーパーエステルA-115(特殊ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)、スーパーエステルA-125(特殊ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)等の特殊ロジンエステル類;エステルガムAA-L(ロジンエステル、酸価:0.1~7.0mgKOH/g)、AA-G(ロジンエステル、酸価:0.1~7.0mgKOH/g)、エステルガムAA-V(ロジンエステル、酸価:0.1~7.0mgKOH/g)、エステルガム105(ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)、エステルガムAT(ロジンエステル、酸価:10mgKOH/g以下)、エステルガムH(水素化ロジンエステル、酸価:10mgKOH/g以下)、エステルガムHP(水素化ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)、ペンセルGA-100(ロジンエステル、酸価:10~20mgKOH/g)、ペンセルAZ(ロジンエステル、酸価:35~50mgKOH/g)、ペンセルC(重合ロジンエステル、酸価:16mgKOH/g以下)、ペンセルD-125(重合ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)、ペンセルD-135(重合ロジンエステル、酸価:10~16mgKOH/g)、ペンセルD-160(重合ロジンエステル、酸価:10~16mgKOH/g)、ペンセルKK(重合ロジンエステル、酸価:10~25mgKOH/g)などのロジンエステル類;アラダイム白菊ロジン(精製ロジン、酸価:165mgKOH/g以上)、アラダイムR-95(重合ロジン、158~168mgKOH/g)などの重合ロジン類;マルキードNo.1(マレイン酸ロジン、酸価:25mgKOH/g以下)、マルキードNo.2(マレイン酸ロジン、酸価:20~39mgKOH/g)、マルキードNo.5(マレイン酸ロジン、酸価:15~25mgKOH/g)、マルキードNo.6(マレイン酸ロジン、酸価:39mgKOH/g以下)、マルキードNo.8(マレイン酸ロジン、酸価:20~39mgKOH/g)、マルキードNo.31(マレイン酸ロジン、酸価:175~200mgKOH/g)、マルキードNo.32(マレイン酸ロジン、酸価:120~140mgKOH/g)、マルキードNo.33(マレイン酸ロジン、酸価:290~320mgKOH/g)などのマレイン酸ロジン類が挙げられる。
【0067】
前記ロジンおよび/またはロジン誘導体の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましく、15質量部以下であることが好ましく、13質量部以下であることがより好ましく、12質量部以下であることがさらに好ましい。ロジンおよび/またはロジン誘導体の含有量が1質量部以上であれば、摩擦係数を向上させる効果が高くなり、15質量部以下であれば、混練時の加工性等が良好となる。
【0068】
[その他の成分]
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、前記ゴム成分及びロジンおよび/またはロジン誘導体に加えて、必要に応じてその他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。その他の成分としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、充填剤、顔料、加工助剤、老化防止剤、しゃっかい剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、および帯電防止剤等のゴム配合剤として一般に使用される添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
(加硫剤)
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、加硫剤を含有することが好ましい。前記加硫剤は、ゴム分子を架橋させて加硫物を形成するための成分である。
【0070】
前記加硫剤としては、硫黄系、有機過酸化物、フェノール樹脂、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノンまたはその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物等のゴムを架橋する際に一般に使用される加硫剤が挙げられる。これらのうち、硫黄系加硫剤、有機過酸化物が好適である。
【0071】
前記硫黄系加硫剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、加硫剤として硫黄系加硫剤を用いる場合、後記する加硫促進剤および/または加硫促進助剤を併用することが好ましい。
【0072】
加硫剤として硫黄系加硫剤を用いる場合、硫黄系加硫剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0073】
前記有機過酸化物としては、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド等が挙られる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、硫黄系加硫剤のブルームによる摩擦係数の低下の懸念が少ない点から、加硫剤として有機過酸化物を用いることが好ましい。
【0074】
加硫剤として有機過酸化物を用いる場合、有機過酸化物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましく、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましい。
【0075】
(加硫促進剤)
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。前記加硫促進剤としては、無機促進剤、有機促進剤のいずれも使用できる。前記無機促進剤としては、消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等が挙げられる。前記有機促進剤としては、例えば、チアゾール系促進剤、チウラム系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤等が挙げられる。加硫促進剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記硫黄系架橋剤と組み合わせる加硫促進剤としては、チアゾール系促進剤とチウラム系促進剤を併用するのが好ましい。
【0076】
前記チアゾール系促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(N,N-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられ、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
【0077】
前記チウラム系促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられ、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドが好ましい。
【0078】
前記チアゾール系促進剤の使用量は、前記基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上、10質量部以下が好ましい。
前記チウラム系促進剤の使用量は、前記基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上、10質量部以下が好ましい。
【0079】
(加硫促進助剤)
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、加硫促進助剤を含有してもよい。前記加硫促進助剤としては、酸化亜鉛が挙げられる。前記加硫促進助剤の使用量は、前記基材ゴム100質量部に対して1質量部以上、20質量部以下が好ましい。
【0080】
(その他の成分)
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、充填剤、顔料、加工助剤、老化防止剤、しゃくかい剤など、本発明の趣旨を害さない範囲で、ゴムの配合剤として一般的に使用される配合剤を使用することができる。
【0081】
前記充填剤としては、例えば、ゴム用補強材や充填剤として知られているカーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等を目的に応じて使用することができる。
【0082】
前記充填剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、100質量部以下が好ましく、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、特に好ましくは45質量部以下である。
【0083】
顔料としてカーボンブラックを配合する場合、カーボンブラックの含有量は、基材ゴム100質量部に対して、3質量部以下が好ましく、より好ましくは1質量部以下である。カーボンブラックの配合量を抑えることで、搬送されるシートの汚れを抑制できる。
【0084】
前記加工助剤としては、炭素数12~30の脂肪酸(ステアリン酸等)、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、炭化水素(パラフィン)、プロセスオイル等が挙げられる。
【0085】
前記老化防止剤としては、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。
【0086】
<シート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法>
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法は、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを、ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点以上の温度で混錬して混錬物を得る第1工程を有することを特徴とする。
ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点以上の温度で混錬することにより、ロジン類成分がゴム成分に均一に分散する。
【0087】
前記第1工程における最終混錬温度(排出時の温度)は、ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点よりも3℃以上であることが好ましく、5℃以上であることがより好ましく、10℃以上であることがさらに好ましく、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましい。
【0088】
前記第1工程において、ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点以上での混錬時間は、1分間以上が好ましく、1.5分間以上がより好ましく、2分間以上がさらに好ましく、15分間以下が好ましく、12分間以下がより好ましく、10分間以下がさらに好ましい。
【0089】
前記第1工程では、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とに加えて、必要に応じて加工助剤、顔料、充填剤などを配合することも好ましい。
【0090】
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法は、前記第1工程において加硫剤を配合しないことが好ましい。第1工程で加硫剤を配合すると、架橋反応が進行する場合があるからである。すなわち、本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法は、第1工程で得られた混錬物を冷却して、加硫剤を混合する第2工程を有することが好ましい。また、第2工程で、加硫剤に加えて加硫促進剤および/または加硫促進助剤を配合することも好ましい。
【0091】
第2工程における混合温度は、特に限定されないが、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以下がさらに好ましく、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。
【0092】
前記第2工程における混合時間は、十分に混合されていれば特に限定されないが、1分間以上が好ましく、2分間以上がより好ましく、3分間以上がさらに好ましく、30分間以下が好ましく、20分間以下がより好ましく、15分間以下がさらに好ましい。
【0093】
第1工程および第2工程は、例えば、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行うことができる。
【0094】
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物を硬化する条件は、特に限定されないが、例えば、120℃~190℃の温度で3分間~60分間加熱成形することが好ましい。
【0095】
前記ゴム組成物の硬化物の硬さ(デュロメータ法、タイプA)は、10以上が好ましく、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上であり、90以下が好ましく、より好ましくは85以下、さらに好ましくは80以下である。硬化物の硬さが10以上であればシート搬送に適した硬度となり搬送力がより向上し、90以下であればローラ軸の圧入がより容易である。
【0096】
<シート搬送ローラ>
本発明のシート搬送ローラは、前記シート搬送ローラ用ゴム組成物を硬化して得られたものである。シート搬送ローラの形状としては、円筒状、円柱状、多角筒状、多角柱状が挙げられる。シート搬送ローラが円筒状、多角筒状の場合、シート搬送ローラはシャフトを有することが好ましい。前記シャフトの材質は特に限定されず、金属、セラミック、樹脂等が挙げられる。
【0097】
図1にシート搬送ローラの一例を示す。図1に記載のシート搬送ローラ1は、上述した本発明のゴム組成物を筒状に成形するとともに架橋させて形成されたローラ本体2を備えている。前記ローラ本体2の中心には断面円形の通孔3が設けられており、当該通孔3には、図示しない駆動系に連結されるなどした円柱状のシャフト4が挿通されて、固定されている。ローラ本体2の外周面は、通孔3およびシャフト4と同心の筒状に形成されている。
【0098】
ローラ本体2とシャフト4とは、例えば、ローラ本体2の通孔3に、当該通孔3の内径よりも外径の大きいシャフト4を圧入する等して、空転を生じないように互いに固定されている。つまり、両者間の径差に基づく締め代により、当該両者間で一定の空転トルク(空転が生じない限界のトルク)が確保されている。
【0099】
シャフト4は、例えば、金属、セラミック、硬質樹脂等によって形成されている。ローラ本体2は、必要に応じて複数個を、1本のシャフト4の複数箇所に固定してもよい。
ローラ本体2を製造する方法は、ゴム組成物を押出成形法等によって筒状に成形した後、プレス架橋法等によって架橋する方法;トランスファー成形法等によって筒状に成形するとともに架橋する方法等が挙げられる。
【0100】
ローラ本体2は、上記製造の工程の任意の時点で、必要に応じて、外周面を所定の表面粗さになるように研磨したり、ローレット加工、シボ加工等したりしてもよい。また、外周面が所定幅となるようにローラ本体2の両端をカットしてもよい。ローラ本体2の外周面は、任意のコート層で被覆してもよい。
【0101】
またローラ本体2は、外周面側の外層と通孔3側の内層の2層構造に形成してもよい。その場合、少なくとも外層を上記本発明のゴム組成物によって形成するのが好ましい。ただし、構造を簡略化し、生産性を向上するとともに製造コストを低下させること等を考慮すると、ローラ本体2は、図1に示すように単層構造とするのが好ましい。
【0102】
また、ローラ本体2は多孔質構造としてもよい。しかし、耐摩耗性を向上したり、圧縮永久ひずみを小さくして、1箇所で接触した状態が比較的長期間に亘って続いても変形による凹みを生じにくくしたりするために、ローラ本体2は、実質的に非多孔質構造であるのが好ましい。
【0103】
前記通孔3は、シート搬送ローラ1の用途によっては、ローラ本体2の中心から偏心した位置に設けてもよい。また、ローラ本体2の外周面は筒状ではなく異形形状、例えば、筒状の外周面の一部が平面状に切欠かれた形状等であってもよい。これら異形形状のローラ本体2を備えたシート搬送ローラ1を製造するには、先に説明した製造方法によって直接に、異形形状のローラ本体2を成形したのち架橋させてもよいし、筒状に成形したローラ本体2を、後加工によって異形形状としてもよい。
【0104】
また筒状に成形したローラ本体2の通孔3に、当該ローラ本体2の異形形状に対応する変形形状とされたシャフト4を圧入して、ローラ本体2を異形形状に変形させてもよい。
この場合、外周面5の研磨やローレット加工、シボ加工などは、変形前の筒状の外周面
5に対して実施できるため加工性を向上できる。
【0105】
<シート搬送ローラを備える装置>
本発明のシート搬送ローラは、高い摩擦係数を有し、搬送性能に優れるため、様々な装置の搬送ローラとして好適に利用できる。例えば、本発明のシート搬送ローラは、レーザープリンタや静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した種々の画像形成装置に組み込むことができる。また、本発明のシート搬送ローラは、インクジェットプリンタやATM等に組み込むこともできる。さらに、本発明のシート搬送ローラは、帳票類のスキャナやソートを行う書類処理装置に組み込むこともできる。
【0106】
本発明のシート搬送ローラは、用紙等のシートと接触しながら回転して、摩擦によってシートを搬送する。前記シート搬送ローラは、例えば、給紙ローラ、搬送ローラ、プラテンローラ、排紙ローラ等として用いることができる。
【0107】
本発明のシート搬送ローラが搬送するシートとしては、ロール状のシートであってもよいし、あるいは、所定の寸法に裁断された枚葉紙であってもよい。本発明のシート搬送ローラは、枚葉紙の搬送ローラとして好適に使用することができる。
【実施例0108】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0109】
[評価方法]
(1)硬さ
ゴム組成物の硬化物の硬さは、JIS K6253-3(2012)に準拠して測定した。具体的には、ゴム組成物を170℃で20分間プレスして、厚み2mmのシートを作製した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚重ねた状態で、タイプAデュロメータの加圧板を接触させ、接触させてから3秒後に数値を読み取った。硬度計として、高分子計器社製アスカーゴム硬度計A型を用いた。
【0110】
(2)引張強さ、破断伸び
ゴム組成物の硬化物の引張強さ、破断伸び(切断時伸び)は、JIS K6251(2017)に準拠して測定した。具体的には、ゴム組成物を170℃で20分間プレスして、厚み2mmのシートを作製し、これをダンベル形状(ダンベル状3号形、平行部分の厚さ2mm、初期の標線間距離20mm)に打ち抜いて試験片を作製した。引張試験測定装置を用いて物性を測定した(測定温度23℃、引張速度500mm/分)。そして、試験片が切断するまで引っ張ったときに記録される最大の引張力を試験片の試験前の断面積で除することで引張強さを算出した。
【0111】
(3)摩擦係数測定
図2に示すように、普通紙11(富士フイルムビジネスイノベーション製、P紙)を、水平に設置したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の板10の上に載置した。この紙11に、シート搬送ローラ1のローラ本体2を載置し、シャフト4に鉛直荷重W1(=300gf)を付加し板10に圧接させた。
次いで、温度23℃、相対湿度55%の環境下、ローラ本体2を一点鎖線の矢印R1で示す方向に200rpmで回転させた際に、紙11の一端に接続したロードセル12に加わる搬送力F(gf)を測定した。
測定した搬送力Fと鉛直荷重W1(=300gf)とから式(1)によって初期の摩擦係数μを求めた。
μ=F(gf)/W1(gf) (1)
【0112】
(4)強制摩耗試験
図2に示すように、普通紙11(富士フイルムビジネスイノベーション製、P紙)を、水平に設置したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の板10の上に載置した。この紙11に、シート搬送ローラ1のローラ本体2を載置し、シャフト4に鉛直荷重W1(=500gf)を付加し板10に圧接させた。
次いで、温度23℃、相対湿度55%の環境下、ローラ本体2を一点鎖線の矢印R1で示す方向に200rpmで10分間連続回転させた。ローラ1を回転させる前の質量W(g)と回転後の質量W(g)とから下記式(2)によって摩耗減量率(%)求めた。
摩耗減量率(%)=100×(W-W)/W (式2)
【0113】
(5)ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点の測定方法
JIS K 5902の環球法により測定した。
【0114】
<ゴム組成物の調製>
表1~表5に示す配合処方に基づいて、3Lニーダーにゴム成分、ロジン類成分、加工助剤、顔料、および充填剤を投入し、ロジン類成分の軟化点以上の温度で、1分間以上混錬して混錬物を得た。得られた混錬物を冷却して、表面温度を30℃~50℃に制御したオープンロールを用いて、前記混錬物に加硫剤および加硫促進剤、加硫促進助剤を加えて混合して、ゴム組成物を調製した。
【0115】
<シート搬送ローラの作製>
上記で調製したゴム組成物をトランスファー成形により170℃、30分間の成形条件で円筒状に成形した。円筒状成形体の通孔に外径12mmのシャフトを圧入した。シャフトが挿入された状態で、円筒研削盤を用いて、円筒状成形体の外径が22mmになるように研磨し、幅25mmにカットして、筒状のローラを作製した。
【0116】
各シート搬送ローラについての評価結果は、表1~表5に示す。
【0117】
(シート搬送ローラNo.1~No.6)
シート搬送ローラNo.1~No.6では、ゴム成分として、ジエン系ゴム(IR)のみを用い、加硫系として、硫黄、加硫促進剤および加硫促進助剤を配合した。表1の結果から、ローラ本体がロジン類成分を適量に含有するゴム組成物から形成されたNo.1~No.5のローラは、いずれもローラ本体がロジン類成分を含有しないゴム組成物から形成されたNo.6のローラと比べて摩擦係数が向上していることがわかる。
【0118】
【表1】
【0119】
(シート搬送ローラNo.7~No.12)
シート搬送ローラNo.7~No.12では、ゴム成分として、ジエン系ゴム(IR)のみを用い、加硫系として、有機過酸化物を配合した。表2の結果から、ローラ本体がロジン類成分を適量に含有するゴム組成物から形成されたNo.7~11のローラは、いずれもローラ本体がロジン類成分を含有しないゴム組成物から形成されたNo.12のローラと比べて摩擦係数が向上していることがわかる。
【0120】
【表2】
【0121】
(シート搬送ローラNo.13~No.16)
シート搬送ローラNo.13~No.16では、ゴム成分として、ジエン系ゴム(NR)のみを用い、加硫系として、硫黄、加硫促進剤および加硫促進助剤を配合した。表3の結果から、ローラ本体がロジン類成分を適量に含有するゴム組成物から形成されたNo.13~No.15のローラは、いずれもローラ本体がロジン類成分を含有しないゴム組成物から形成されたNo.16のローラと比べて摩擦係数が向上していることがわかる。
【0122】
【表3】
【0123】
(シート搬送ローラNo.17~No.21)
シート搬送ローラNo.17~No.21では、ゴム成分として、ジエン系ゴム(IR)と非ジエン系ゴム(EPDM)のブレンドを用い、加硫系として、有機過酸化物を配合した。表4の結果から、ローラ本体がロジン類成分を適量に含有するゴム組成物から形成されたNo.17~No.20のローラは、いずれもローラ本体がロジン類成分を含有しないゴム組成物から形成されたNo.21のローラと比べて摩擦係数が向上していることがわかる。
【0124】
【表4】
【0125】
(シート搬送ローラNo.22~No.24)
シート搬送ローラNo.22~No.24では、2種類のジエン系ゴム(IR、SBR)と非ジエン系ゴム(EPDM)のブレンドを用い、加硫系として、有機過酸化物を配合した。表5の結果から、ローラ本体がロジン類成分を適量に含有するゴム組成物から形成されたNo.22およびNo.23のローラは、いずれもローラ本体がロジン類成分を含有しないゴム組成物から形成されたNo.24のローラと比べて摩擦係数が向上していることがわかる。
【0126】
【表5】
【0127】
表1~5で用いた材料は下記の通りである。
IR:日本ゼオン社製、ニポールIR2200
NR:CV-60
SBR:日本ゼオン社製、ニポール1502〔結合スチレン量:23.5%、非油展タイプ〕
EPDM:住友化学社製、エスプレン505A〔エチレン量:50%、ジエン量:9.5%、非油展タイプ〕
超淡色ロジン:荒川化学工業社製、パインクリスタルKR-612〔酸価:160~175mgKOH/g〕
ペンタエリスリトールロジンエステル:荒川化学工業社製、パインクリスタルKE-359〔酸価:10~20mgKOH/g〕
不均化ロジンエステル1:荒川化学工業社製、パインクリスタルKE-100〔酸価:2~10mgKOH/g〕
水添ロジンエステル:荒川化学工業社製、エステルガムH〔酸価:10mgKOH/g以下〕
不均化ロジンエステル2:荒川化学工業社製、スーパーエステルA-100〔酸価:10mgKOH/g以下〕
マレイン酸ロジン:荒川化学工業社製、マルキードNo.8〔酸価:20~39mgKOH/g〕
硫黄:鶴見化学工業社製、5%オイル処理硫黄(200メッシュ)
有機過酸化物:日油社製、パークミル(登録商標)D
チウラム系加硫促進剤:大内新興化学工業社製、ノクセラーTOT-N
チアゾール系加硫促進剤:大内新興化学工業社製、ノクセラーDM
酸化亜鉛:三井金属鉱業製、酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油社製、つばき
カーボンブラック:東海カーボン社製、シースト3
炭酸カルシウム:備北粉化工業社製、BF-300
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明のシート搬送ローラは、高い摩擦係数を有し、搬送性能に優れるため、OA機器(例えば、レーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、これらの複合機、インクジェットプリンタなど)やATMなどの紙送りローラとして好適に使用できることが期待される。また、摩耗した状態でも高い摩擦係数の維持が要求されるシート搬送ローラ(例えば、帳票類のスキャナやソートを行う書類処理装置に使用される枚葉類搬送用のローラ)としても、有効に使用できることが期待される。
【符号の説明】
【0129】
1:シート搬送ローラ、2:ローラ本体、3:通孔、4:シャフト、10:板、11:紙、12:ロードセル
【0130】
本発明(1)のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを含有することを特徴とする。
【0131】
本発明(2)のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、前記ゴム成分中のジエン系ゴムの含有率が、50質量%以上である本発明(1)に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0132】
本発明(3)のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、前記ジエン系ゴムが、イソプレンゴムおよび/または天然ゴムである本発明(1)または(2)に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0133】
本発明(4)のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、前記ゴム成分が、さらに、非ジエン系ゴムとして、エチレン・α-オレフィン共重合体を50質量%未満含む本発明(1)~(3)のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0134】
本発明(5)のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記ロジンおよび/またはロジン誘導体を1質量部~15質量部含有する本発明(1)~(4)のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0135】
本発明(6)のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、前記シートが、枚葉紙である本発明(1)~(5)のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0136】
本発明(7)のシート搬送ローラは、本発明(1)~(6)のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物を硬化して得られたことを特徴とする。
【0137】
本発明(8)のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法は、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを、ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点以上の温度で混錬して混錬物を得る第1工程を有することを特徴とする。
【0138】
本発明(9)のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法は、前記混錬物に加硫剤を混合する第2工程を有する本発明(8)に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法である。
図1
図2