(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061497
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】排ガス分析装置および排ガス分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/00 20060101AFI20240425BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20240425BHJP
G01N 31/10 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G01N31/00 H
G01N1/22 D
G01N1/22 R
G01N31/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169476
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平井 剛
(72)【発明者】
【氏名】西村 海心
(72)【発明者】
【氏名】野地 勝己
(72)【発明者】
【氏名】米村 将直
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛
【テーマコード(参考)】
2G042
2G052
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042AA04
2G042BA05
2G042BB07
2G042CA01
2G042CB01
2G042DA03
2G042DA07
2G042FA05
2G042FA09
2G042GA01
2G052AA02
2G052AB07
2G052AB22
2G052AC25
2G052AD02
2G052AD22
2G052AD42
2G052EB11
2G052GA23
2G052JA18
(57)【要約】
【課題】排ガスダクトに設置される反応装置を撤去せずに、反応装置を置き換えるための反応部による排ガスに対する所定の反応処理の性能を、反応装置と同等の環境条件で分析する。
【解決手段】排ガスダクト224と、排ガスダクト224を流通する燃焼排ガスGeに還元処理をする脱硝触媒223bとを備える排熱回収ボイラに着脱可能に取り付けられ、排ガスダクト224の脱硝触媒223bの上流側で燃焼排ガスGeを採取して排ガスダクト224の外部に導くための採取配管10と、採取配管10に取り付けられるとともに採取配管10を流通する燃焼排ガスGeに還元処理をする反応器20と、反応器20により還元処理が行われた燃焼排ガスGeの成分を分析するNOx計測器30と、を備える排ガス分析装置100を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置から排出される排ガスが流通する排ガスダクトと、前記排ガスダクトを流通する前記排ガスに所定の反応処理をする反応装置とを備える排ガス処理装置に着脱可能に取り付けられる排ガス分析装置であって、
前記排ガスダクトの前記反応装置の上流側で前記排ガスを採取して前記排ガスダクトの外部に導くための配管と、
前記配管に取り付けられるとともに前記配管を流通する前記排ガスに前記所定の反応処理をする反応部と、
前記反応部により前記所定の反応処理が行われた前記排ガスの成分を分析する分析部と、を備える排ガス分析装置。
【請求項2】
前記反応部は、前記排ガスダクトに配置される前記反応装置と所定温度範囲内の温度となるように加熱されている請求項1に記載の排ガス分析装置。
【請求項3】
前記反応部は、前記排ガスダクトの内部に露出するように配置されており、前記排ガスダクトを流通する前記排ガスにより加熱されている請求項2に記載の排ガス分析装置。
【請求項4】
前記反応部は、前記排ガスダクトの外部に配置されており、
前記反応部を前記排ガスダクトに配置される前記反応装置と所定温度範囲内の温度となるように加熱する加熱部を備える請求項2に記載の排ガス分析装置。
【請求項5】
前記排ガスダクトの外壁には、前記排ガスダクトの内部環境を計測するための計測器が挿入される取付座が設置されており、
前記配管は、前記計測器が取り外された前記取付座に固定されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の排ガス分析装置。
【請求項6】
前記配管を介して前記排ガスダクトから前記排ガスを前記分析部に導くための吸引部を備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の排ガス分析装置。
【請求項7】
前記反応部は、前記配管を流通する前記排ガスに含まれる窒素酸化物を還元する還元処理をする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の排ガス分析装置。
【請求項8】
前記排ガスには、前記窒素酸化物を還元するための還元剤が混合されており、
前記反応部は、前記窒素酸化物を前記還元剤により還元処理するための脱硝触媒を有し、
前記脱硝触媒は、前記反応装置が有する他の脱硝触媒とは還元処理の性能が異なる請求項7に記載の排ガス分析装置。
【請求項9】
前記反応部は、前記配管を流通する前記排ガスに含まれるアンモニアを分解する分解処理をする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の排ガス分析装置。
【請求項10】
燃焼装置から排出される排ガスが流通する排ガスダクトと、前記排ガスダクトに設けられて前記排ガスに所定の反応処理をする反応装置とを備える排ガス処理装置で処理される前記排ガスを分析する排ガス分析方法であって、
前記排ガスダクトの前記反応装置の上流側で前記排ガスを採取して前記排ガスダクトの外部に導くための配管に採取する第1採取工程と、
前記第1採取工程で前記配管に導かれた前記排ガスに前記所定の反応処理をする第1反応工程と、
前記第1反応工程により前記所定の反応処理が行われた前記排ガスの成分を分析する第1分析工程と、を備える排ガス分析方法。
【請求項11】
前記第1反応工程は、前記排ガスダクトに配置される前記反応装置と所定温度範囲内の温度で前記反応処理をする請求項10に記載の排ガス分析方法。
【請求項12】
前記排ガスダクトの前記反応装置の上流側で前記排ガスを採取する第2採取工程と、
前記第2採取工程で採取された前記排ガスに第2反応部により前記所定の反応処理をする第2反応工程と、
前記第2反応工程により前記所定の反応処理が行われた前記排ガスの成分を分析する第2分析工程と、
前記第1分析工程の分析結果と前記第2分析工程の分析結果とを比較する比較工程と、を備える請求項10または請求項11に記載の排ガス分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排ガス分析装置および排ガス分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービンにより発電機を駆動して発電を行うガスタービン複合発電設備において、ガスタービン等から排出される燃焼排ガスに含まれるNOxを低減除去するために、排熱回収ボイラに脱硝装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。脱硝装置とは燃焼排ガスにアンモニア等の還元剤を注入し、NOxと還元剤を触媒中で反応させ、無害な窒素と水に還元して除去(いわゆる脱硝)する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の再生可能エネルギーが普及しており、再生可能エネルギーによる発電出力が大きい時間帯には、ガスタービン複合発電設備は定格負荷よりも負荷の低い低負荷で運転して発電出力を抑制する運用が行われる場合がある。このような低負荷運転では、高負荷運転に比べて、ガスタービンから排出される燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物中の二酸化窒素の比率が上昇し、触媒による二酸化窒素の除去率が下がってしまう現象が発生する。
【0005】
低負荷運転中の窒素酸化物の除去率を高めるためには、脱硝装置の触媒を、窒素酸化物中の二酸化窒素の除去率の高い新規の触媒に交換する作業が有効となる。脱硝装置に設けられている既存の触媒による窒素酸化物の除去率と、新規の触媒による窒素酸化物の除去率とを正確に比較するためには、既存の触媒と新規の触媒とを同等の環境に設置して試験を行う必要がある。
【0006】
しかしながら、運用中の排熱回収装置に設置された既存の触媒を撤去し、撤去した既存の触媒に替えて新規の触媒を設置するためには、排熱回収装置を停止させて多大な工数を要する作業を行う必要がある。そのため、新規の触媒による所定のガス成分の除去率が高いと見込まれる場合であっても、新規の触媒を既存の触媒と同等の環境に設置して試験を行って性能を確認することは容易ではない。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、排ガスダクトに設置される反応装置を撤去せずに、反応装置を置き換えるための反応部による排ガスに対する所定の反応処理の性能を、反応装置と同等の環境条件で分析することが可能な排ガス分析装置および排ガス分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の排ガス分析装置および排ガス分析方法は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る排ガス分析装置は、燃焼装置から排出される排ガスが流通する排ガスダクトと、前記排ガスダクトを流通する前記排ガスに所定の反応処理をする反応装置とを備える排ガス処理装置に着脱可能に取り付けられる排ガス分析装置であって、前記排ガスダクトの前記反応装置の上流側で前記排ガスを採取して前記排ガスダクトの外部に導くための配管と、前記配管に取り付けられるとともに前記配管を流通する前記排ガスに前記所定の反応処理をする反応部と、前記反応部により前記所定の反応処理が行われた前記排ガスの成分を分析する分析部と、を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る排ガス分析方法は、燃焼装置から排出される排ガスが流通する排ガスダクトと、前記排ガスダクトに設けられて前記排ガスに所定の反応処理をする反応装置とを備える排ガス処理装置で処理される前記排ガスを分析する排ガス分析方法であって、前記排ガスダクトの前記反応装置の上流側で前記排ガスを採取して前記排ガスダクトの外部に導くための配管に採取する採取工程と、前記採取工程で前記配管に導かれた前記排ガスに前記所定の反応処理をする反応工程と、前記反応工程により前記所定の反応処理が行われた前記排ガスの成分を分析する分析工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、排ガスダクトに設置される反応装置を撤去せずに、反応装置を置き換えるための反応部による排ガスに対する所定の反応処理の性能を、反応装置と同等の環境条件で分析することが可能な排ガス分析装置および排ガス分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るガスタービン複合発電設備を示した概略構成図である。
【
図2】
図1に示す排熱回収ボイラの部分拡大図であり、取付座に排ガス分析装置が固定された状態を示す。
【
図3】排熱回収ボイラの部分拡大図であり、取付座に圧力センサが固定された状態を示す。
【
図4】本開示の第1実施形態の排ガス分析方法を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の第2実施形態に係る排熱回収ボイラの部分拡大図であり、取付座に排ガス分析装置が固定された状態を示す。
【
図6】排熱回収ボイラの部分拡大図であり、取付座に排ガス分析装置が固定された状態を示す。
【
図7】本開示の第3実施形態の排ガス分析方法を示すフローチャートである。
【
図8】排ガス分析装置の第1変形例を示す図である。
【
図9】排ガス分析装置の第2変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態に係る排ガス分析装置100および排ガス分析方法について図面を参照して説明する。本実施形態の排ガス分析装置100は、ガスタービン複合発電設備200の排熱回収ボイラ(排ガス処理装置)220に着脱可能に設けられる装置である。
図1に示すように、ガスタービン複合発電設備200は、ガスタービン(燃焼装置)210と、排熱回収ボイラ220と、還元剤供給部230と、を備える。
【0013】
ガスタービン210は、圧縮機211と、燃焼器212と、タービン213と、発電機214と、を有する。圧縮機211とタービン213と発電機214は、一体回転可能に同軸に連結されている。圧縮機211は、外部から取り込んだ空気を圧縮して燃焼器212に供給する。
【0014】
燃焼器212は、圧縮機211から供給された圧縮空気と燃料とを混合して燃焼し、高温・高圧の燃焼ガスを生成する。タービン213は、燃焼器212から供給された高温・高圧の燃焼ガスが断熱膨張することにより回転する。発電機214は、タービン213と同軸上に設けられており、タービン213が回転駆動することで発電する。タービン213から排出される燃焼排ガス中には、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)などの一般的にNOxで総称される窒素酸化物(以下、NOxとする。)が含まれている。
【0015】
排熱回収ボイラ220は、上部熱交換器221と、下部熱交換器222と、脱硝装置223と、排ガスダクト224と、を有する。タービン213から排出された燃焼排ガスGeは排熱回収ボイラ220に導かれて排熱が回収される。燃焼排ガスGeは、上部熱交換器221および下部熱交換器222を通過する際に、水または蒸気との熱交換をして温度が低下する。上部熱交換器221を通過した燃焼排ガスは、排熱回収ボイラ220の上方から大気中に排出される。
【0016】
上部熱交換器221は、複数の伝熱管221aを有する。上部熱交換器221は、複数の伝熱管221aの内部を流通する水または蒸気を、燃焼排ガスGeとの熱交換により加熱する。下部熱交換器222は、複数の伝熱管222aを有する。下部熱交換器222は、複数の伝熱管222aの内部を流通する水または蒸気を、燃焼排ガスGeとの熱交換により加熱する。
【0017】
脱硝装置223は、排熱回収ボイラ220に導かれるタービン213の燃焼排ガスGeに含まれるNOxを除去する装置である。脱硝装置223は、還元剤注入ノズル223aと、脱硝触媒(反応装置)223bと、を有する。還元剤注入ノズル223aは、還元剤供給部230から供給される還元剤を、排ガスダクト224を流通する燃焼排ガスGeに向けて噴射して燃焼排ガスGeと還元剤とを混合させる装置である。還元剤注入ノズル223aから噴射される還元剤の量は、流量調整弁232により調整される。還元剤注入ノズル223aの下流側には、燃焼排ガスGeと還元剤との混合を促進するための混合器(図示省略)が設置されていてもよい。
【0018】
ここで、還元剤注入ノズル223aから噴射される還元剤は、例えば、アンモニアや尿素水である。還元剤として尿素水を用いる場合、高温(例えば、300℃以上かつ400℃以下の範囲の温度)の燃焼排ガスGeに向けて噴射された尿素水が加水分解してアンモニアが生成され、アンモニアが混合した燃焼排ガスGeが脱硝触媒223bに導かれる。
【0019】
脱硝触媒223bは、排ガスダクト224を流通する燃焼排ガスGeに含まれるNOxの還元反応(所定の反応処理)を促す装置である。脱硝触媒223bは、例えば、ハニカム形状を有し、内部を通過する燃焼排ガスGeに対して還元反応を促して下流側へ向けて通過させる。
【0020】
脱硝触媒223bは、内部において、以下の反応式(1),(2),(3)に示す通りアンモニア(NH3)による還元反応を促してNOxを分解する。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O (1)
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O (2)
6NO2+8NH3→7N2+12H2O (3)
【0021】
排ガスダクト224は、ガスタービン210から排出される燃焼排ガスGeが流通するダクトである。
図1に示す排ガスダクト224は、高さ方向HDに沿って下方から上方に向けて燃焼排ガスGeを流通させる。排ガスダクト224は、還元剤注入ノズル223aから噴射される還元剤と燃焼排ガスGeとを混合し、下部熱交換器222で燃焼排ガスGeと水または蒸気とを熱交換させ、脱硝触媒223bを通過させて燃焼排ガスGeに含まれるNOxの還元反応を促し、上部熱交換器221で燃焼排ガスGeと水または蒸気とを熱交換させ、上端部から大気中へNOxが分解された燃焼排ガスGeを排出する。
【0022】
排ガスダクト224が燃焼排ガスGeを流通させる方向は、
図1に示す下方から上方へ向けた方向以外の他の方向としてもよい。例えば、排ガスダクト224が燃焼排ガスGeを流通させる方向は、
図1に示す上方から下方へ向けた方向とした変形例としてもよい。この場合、還元剤注入ノズル223aが上部熱交換器221の上方に配置される。また、例えば、排ガスダクト224が燃焼排ガスGeを流通させる方向を水平方向とした変形例としてもよい。
【0023】
還元剤供給部230は、還元剤注入ノズル223aへ還元剤を供給する装置である。還元剤供給部230は、還元剤貯蔵タンク231と、流量調整弁232と、還元剤供給配管233と、を有する。還元剤供給部230は、流量調整弁232の開度を調整することにより、還元剤貯蔵タンク231から還元剤供給配管233を介して還元剤注入ノズル223aへ供給される還元剤の流量を調整する。
【0024】
次に、
図2を参照して、本実施形態の排熱回収ボイラ220に着脱可能に取り付けられる排ガス分析装置100について説明する。
図2は、
図1に示す排熱回収ボイラ220の部分拡大図であり、取付座225に排ガス分析装置100が固定された状態を示す。
図2に示すように、排熱回収ボイラ220には、排ガス分析装置100が設けられている。
図2に示すように排ガス分析装置100は、採取配管10と、反応器(反応部)20と、NOx計測器(分析部)30と、供給配管40と、吸引部50と、を有する。
【0025】
採取配管10は、排ガスダクト224の脱硝触媒223bよりも燃焼排ガスGeの流れ方向の上流側で燃焼排ガスGeを採取して排ガスダクト224の外部に導くための配管である。採取配管10は、排ガスダクト224を流通する燃焼排ガスGeを採取して反応器20へ導く第1配管11と、反応器20を通過した燃焼排ガスGeを供給配管40へ導く第2配管12と、を有する。採取配管10は、燃焼排ガスGeに対する耐熱性を有する金属材料により形成されている。採取配管10は、排ガスダクト224の外周面に直交するように水平方向に沿って配置される。
【0026】
図2に示すように、第1配管11は、全体が排ガスダクト224の内部空間S1に配置されている。一方、第2配管12は、反応器20が取り付けられる第1端部12a側が内部空間S1に配置され、供給配管40が取り付けられる第2端部12b側が排ガスダクト224の外部空間S2に配置される。第2配管12は、排ガスダクト224の外周面に固定された取付座225に対して固定されている。第2配管12は、例えば、フランジ部12cを有し、パッキン12dを挟んだ状態で、締結具(図示略)により取付座225のフランジ部225bに固定される。
【0027】
取付座225は、採取配管10の外径および反応器20の外径よりも大きい内径の貫通穴225aとフランジ部225bと、を有する。第2配管12のフランジ部12cは、貫通穴225aに挿入された状態で、締結具(図示略)により取付座225のフランジ部225bに固定される。第2配管12のフランジ部12cと取付座225のフランジ部225bとの間がパッキン12dにより封止され、内部空間S1と外部空間S2とが連通しない状態となる。
【0028】
取付座225は、本実施形態の採取配管10を固定するために設けられた専用の部材ではなく、他の用途で排ガスダクト224の外周面に予め固定された部材であってもよい。採取配管10を取り付ける前の取付座225には、例えば、
図3に示すように、排ガスダクト224の内部空間S1の圧力を計測する圧力センサ300が固定されている。本実施形態の採取配管10は、取付座225から圧力センサ300を取り外した後に、取付座225に対して取り付けられる。
【0029】
ここでは、採取配管10を取り付ける前の取付座225には、圧力センサ300が取り付けられているものとしたが、圧力センサ300とは異なる他のセンサ(温度センサなど)が取り付けられていてもよい。また、取付座225は、通常時は蓋(図示省略)で封鎖されており、必要に応じて排ガスダクト224内部のガスを採取するために設置されたガスサンプリング座であってもよい。すなわち、取付座225は、排ガスダクト224の内部環境を計測するための計測座であってもよい。
【0030】
反応器20は、第1配管11および第2配管12に取り付けられるとともに第1配管11および第2配管12を流通する燃焼排ガスGeに含まれるNOxの還元反応を促すための脱硝触媒21を内部に保持する装置である。反応器20は、例えば、ハニカム形状を有し、内部を通過する燃焼排ガスGeに含まれるNOxの還元反応を促し、第2配管12に向けて燃焼排ガスGeを通過させる。
【0031】
反応器20が内部に保持する脱硝触媒21は、脱硝触媒223bと同様に、前述した反応式(1),(2),(3)によりアンモニア(NH3)による還元反応を促してNOxを分解するものである。一方、脱硝触媒21は、脱硝触媒223b(他の脱硝触媒)とはNOxへの反応性能が異なるものである。例えば、単位体積当たりの二酸化窒素との反応性能を比較した場合、脱硝触媒21の二酸化窒素との反応率は、脱硝触媒223bの二酸化窒素との反応率よりも高い。
【0032】
図2に示すように、反応器20は、排ガスダクト224の内部に全体が露出するように配置されている。そのため、反応器20および反応器20の内部に配置される脱硝触媒21の温度は、排ガスダクト224に配置される脱硝触媒223bの温度と所定温度範囲内(例えば、排ガスダクト224内の燃焼排ガスGeの温度と同等)となるように燃焼排ガスGeにより加熱されている。そのため、本実施形態の排ガス分析装置100は、脱硝触媒223bにより還元反応が促される燃焼排ガスGeを、同じまたは近似した温度条件で脱硝触媒21により還元反応を促し、脱硝触媒21の二酸化窒素との反応性能を分析することができる。
【0033】
NOx計測器30は、反応器20の脱硝触媒21によりNOxの還元反応を促された燃焼排ガスGeの成分を分析する装置である。NOx計測器30は、供給配管40から供給される燃焼排ガスGeに含まれる一酸化窒素および二酸化窒素のそれぞれの濃度を計測する。NOx計測器30は、計測した一酸化窒素および二酸化窒素の濃度を表示させる表示装置(図示略)を備えている。また、NOx計測器30は、表示装置に替えて、一酸化窒素および二酸化窒素の濃度を外部装置(図示略)へ伝達する通信部(図示略)を備えたものでもよい。
【0034】
供給配管40は、第2配管12の第2端部12bから排出される燃焼排ガスGeをNOx計測器30に供給する配管である。
吸引部50は、採取配管10を介して排ガスダクト224の内部空間S1から燃焼排ガスGeをNOx計測器30に導くための装置である。吸引部50は、負圧を発生させることにより、排ガスダクト224の内部空間S1に存在する燃焼排ガスGeを、採取配管10から供給配管40を介してNOx計測器30へ導く。
【0035】
次に、本実施形態の排ガス分析装置100を用いた排ガス分析方法について図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態の排ガス分析方法を示すフローチャートである。
ステップS101で、排ガス分析装置100は、吸引部50により負圧を発生させ、排ガスダクト224の内部空間S1の燃焼排ガスGeを採取配管10で採取する。
【0036】
ステップS102で、排ガス分析装置100は、反応器20の内部に燃焼排ガスGeを通過させ、反応器20で燃焼排ガスGeに含まれるNOxの還元反応を促す。反応器20を通過した燃焼排ガスGeは、第2配管12から供給配管40を介してNOx計測器30へ供給される。
【0037】
ステップS103で、排ガス分析装置100は、NOx計測器30により、反応器20の脱硝触媒21によりNOxの還元反応が促された燃焼排ガスGeの成分を分析する。NOx計測器30は、供給配管40から供給される燃焼排ガスGeに含まれる一酸化窒素および二酸化窒素のそれぞれの濃度を計測し、計測した一酸化窒素および二酸化窒素の濃度を表示部(図示略)に表示させる。
排ガス分析装置100は、以上のステップS101からステップS103の処理を、定期的または作業者が指示するタイミングで実行する。
【0038】
以上説明した本実施形態の排ガス分析装置100および排ガス分析方法が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の排ガス分析装置100によれば、脱硝触媒223bの上流側で採取された燃焼排ガスGeが採取配管10により排ガスダクト224の外部に導かれるとともに、採取配管10に取り付けられた反応器20により燃焼排ガスGeに含まれるNOxの還元反応が促される。NOx計測器30は、反応器20で還元反応が促された燃焼排ガスGeに含まれる一酸化窒素および二酸化窒素のそれぞれの濃度を計測する。反応器20は、排ガスダクト224に配置される脱硝触媒223bと所定温度範囲内の温度となるように加熱されている。
【0039】
そのため、排ガス分析装置100は、反応器20において脱硝触媒223bと同等の環境条件で燃焼排ガスGeに含まれるNOxの還元反応を促し、NOx計測器30により脱硝触媒223bと同等の環境条件で燃焼排ガスGeに含まれる一酸化窒素および二酸化窒素のそれぞれの濃度を計測することができる。すなわち、本実施形態の排ガス分析装置100によれば、排ガスダクト224に設置される脱硝触媒223bを撤去せずに、脱硝触媒223bを置き換えるための反応器20の脱硝触媒21による燃焼排ガスGeに含まれるNOxに対する反応性能を、脱硝触媒223bと同等の環境条件で分析することができる。
【0040】
本実施形態の排ガス分析装置100によれば、排ガスダクト224の内部に露出するように配置された反応器20が、排ガスダクト224を流通する燃焼排ガスGeにより加熱されている。そのため、反応器20を排ガスダクト224内の脱硝触媒223bと同等の温度条件とすることができる。
【0041】
本実施形態の排ガス分析装置100によれば、排ガスダクト224の内部環境を計測するための圧力センサ300などの計測器が挿入される既存の取付座225に対して採取配管10を固定してよいため、排ガスダクト224に採取配管10を固定するために新規に取付座225を設ける必要がない。
【0042】
本実施形態の排ガス分析装置100によれば、吸引部50を用いることにより、採取配管10を介して排ガスダクト224から燃焼排ガスGeをNOx計測器30に導くことができる。
本実施形態の排ガス分析装置100によれば、脱硝触媒223bとはNOxに対する反応性能が異なる反応器20が有する脱硝触媒21の反応性能を、脱硝触媒223bと同等の環境条件で分析することができる。
【0043】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る排ガス分析装置100Aについて、図面を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0044】
第1実施形態の排ガス分析装置100は、反応器20を排ガスダクト224の内部空間S1に設置することにより、反応器20を燃焼排ガスGeで加熱し、反応器20の環境条件を脱硝触媒223bと同じか近似した条件にするものであった。それに対して、本実施形態の排ガス分析装置100Aは、反応器20を排ガスダクト224の外部空間S2に設置して反応器20を加熱部60により加熱することで、反応器20の環境条件を脱硝触媒223bと同じか近似した条件にするものである。
【0045】
本実施形態の採取配管10Aは、排ガスダクト224の脱硝触媒223bよりも燃焼排ガスGeの流れ方向の上流側で燃焼排ガスGeを採取して排ガスダクト224の外部に導くための配管である。採取配管10Aは、排ガスダクト224を流通する燃焼排ガスGeを採取して反応器20へ導く配管である。
【0046】
採取配管10Aは、第1端部10Aa側が内部空間S1に配置され、第2端部10Ab側が排ガスダクト224の外部空間S2に配置される。採取配管10Aは、排ガスダクト224の外周面に固定された取付座225に対して固定されている。
【0047】
図5に示すように、本実施形態の排ガス分析装置100Aにおいて、反応器20Aは、脱硝触媒21Aを有し、排ガスダクト224の外部空間S2に配置されている。反応器20Aは、供給配管40Aの第1配管41Aを介して採取配管10Aの第2端部10Abと接続され、供給配管40Aの第2配管42Aを介してNOx計測器30と接続されている。
【0048】
図5に示すように、本実施形態の排ガス分析装置100Aは、反応器20の温度を排ガスダクト224に配置される脱硝触媒223bの温度と所定温度範囲内(例えば、排ガスダクト224内の燃焼排ガスGeの温度と同等)となるように加熱する加熱部60を備える。加熱部60は、例えば、排ガスダクト224内の脱硝触媒223bの近傍の温度を計測する温度センサ(図示略)から出力される温度を参照し、加熱部60の温度を設定する。加熱部60は、例えば、内側に配置される電熱線(図示略)と電熱線を覆う断熱材により形成されている。加熱部60は、第1配管41Aと、反応器20の全体を覆うように排ガス分析装置100Aに取り付けられてもよいし、取付座225と、第1配管41Aと、反応器20の全体を覆うように排ガス分析装置100Aに取り付けられてもよい。
【0049】
本実施形態の排ガス分析装置100Aによれば、排ガスダクト224の外部に配置された反応器20が脱硝触媒223bと所定温度範囲内の温度となるように加熱部60により加熱されるため、反応器20を排ガスダクト224内の脱硝触媒223bと同等の温度条件とすることができる。
【0050】
〔第3実施形態〕
次に、本開示の第3実施形態に係る排ガス分析装置100Bについて、図面を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0051】
第1実施形態の排ガス分析装置100は、単独のNOx計測器30により、排ガスダクト224の内部空間S1から採取され、反応器20の脱硝触媒21で還元処理された燃焼排ガスGeの成分を分析するものであった。それに対して、第1実施形態の排ガス分析装置100は、NOx計測器30により、排ガスダクト224の内部空間S1から採取され、反応器20の脱硝触媒(第1反応部)21で還元処理された燃焼排ガスGeの成分を分析し、さらに、NOx計測器30により、排ガスダクト224の内部空間S1から採取され、反応器20Bの脱硝触媒(第2反応部)21Bで還元処理された燃焼排ガスGeの成分を分析するものである。ここで、脱硝触媒21Bとしては、排ガスダクト224の内部空間S1に設置される脱硝触媒223bと同じものが用いられる。
【0052】
図6は、排熱回収ボイラの部分拡大図であり、取付座に排ガス分析装置100Bが固定された状態を示す。
図6に示すように、本実施形態の排ガス分析装置100Bは、採取配管10と、反応器(反応部)20と、NOx計測器(分析部)30と、供給配管40と、吸引部50と、を有する。さらに、排ガス分析装置100Bは、採取配管10Bと、反応器(反応部)20Bと、NOx計測器(分析部)30Bと、供給配管40Bと、吸引部50Bと、を有する。
【0053】
採取配管10Bは、排ガスダクト224の脱硝触媒223bよりも燃焼排ガスGeの流れ方向の上流側で燃焼排ガスGeを採取して排ガスダクト224の外部に導くための配管である。採取配管10Bは、排ガスダクト224を流通する燃焼排ガスGeを採取して反応器20Bへ導く第1配管11Bと、反応器20Bを通過した燃焼排ガスGeを供給配管40Bへ導く第2配管12Bと、を有する。
【0054】
図6に示すように、第1配管11Bは、全体が排ガスダクト224の内部空間S1に配置されている。一方、第2配管12Bは、反応器20Bが取り付けられる端部側が内部空間S1に配置され、供給配管40Bが取り付けられる端部側が排ガスダクト224の外部空間S2に配置される。第2配管12Bは、排ガスダクト224の外周面に固定された取付座225Bに対して固定されている。
【0055】
反応器20Bは、第1配管11Bおよび第2配管12Bに取り付けられるとともに第1配管11Bおよび第2配管12Bを流通する燃焼排ガスGeに還元処理をするための脱硝触媒21Bを内部に保持する装置である。反応器20Bは、例えば、ハニカム形状を有し、内部を通過する燃焼排ガスGeに対して還元処理をして第2配管12Bに向けて通過させる。反応器20Bが内部に保持する脱硝触媒21Bは、脱硝触媒223bが担持する脱硝触媒(他の脱硝触媒)と同じものである。
【0056】
次に、本実施形態の排ガス分析装置100を用いた排ガス分析方法について図面を参照して説明する。
図7は、本実施形態の排ガス分析方法を示すフローチャートである。
ステップS201(第1採取工程)で、排ガス分析装置100Bは、吸引部50により負圧を発生させ、排ガスダクト224の内部空間S1の燃焼排ガスGeを採取配管10で採取する。
【0057】
ステップS202(第1反応工程)で、排ガス分析装置100Bは、反応器20の内部に燃焼排ガスGeを通過させ、反応器20の脱硝触媒21で燃焼排ガスGeに還元処理をする。反応器20を通過した燃焼排ガスGeは、第2配管12から供給配管40を介してNOx計測器30へ供給される。
【0058】
ステップS203(第1分析工程)で、排ガス分析装置100は、第1のNOx計測器30により、反応器20の脱硝触媒21により還元処理された燃焼排ガスGeの成分を分析する。NOx計測器30は、供給配管40から供給される燃焼排ガスGeに含まれる一酸化窒素および二酸化窒素のそれぞれの濃度を計測し、計測した一酸化窒素および二酸化窒素の濃度を表示部(図示略)に表示させる。
【0059】
ステップS204(第2採取工程)で、排ガス分析装置100Bは、吸引部50Bにより負圧を発生させ、排ガスダクト224の内部空間S1の燃焼排ガスGeを採取配管10Bで採取する。
【0060】
ステップS205(第2反応工程)で、排ガス分析装置100Bは、反応器20Bの内部に燃焼排ガスGeを通過させ、反応器20Bの脱硝触媒21Bで燃焼排ガスGeに還元処理をする。反応器20Bを通過した燃焼排ガスGeは、第2配管12Bから供給配管40Bを介してNOx計測器30Bへ供給される。
【0061】
ステップS206(第2分析工程)で、排ガス分析装置100Bは、第2のNOx計測器30Bにより、反応器20Bの脱硝触媒21Bにより還元処理された燃焼排ガスGeの成分を分析する。NOx計測器30Bは、供給配管40Bから供給される燃焼排ガスGeに含まれる一酸化窒素および二酸化窒素のそれぞれの濃度を計測し、計測した一酸化窒素および二酸化窒素の濃度を表示部(図示略)に表示させる。
【0062】
なお、ここまで
図7に示すフローチャートに沿ってステップS201(第1採取工程)ステップS203(第1分析工程)を実行した後に、ステップS204(第2採取工程)からステップS206(第2分析工程)を実行するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、ステップS201(第1採取工程)からステップS203(第1分析工程)を実行する前にステップS204(第2採取工程)からS206(第2分析工程)を実行してもよい。また、ステップS201(第1採取工程)からステップS203(第1分析工程)とステップS204(第2採取工程)からS206(第2分析工程)とを並行して実行してもよい。
【0063】
ステップS207(比較工程)で、排ガス分析装置100Bは、ステップS203で第1のNOx計測器30により計測された計測結果(一酸化窒素および二酸化窒素の濃度等)と、ステップS206で第2のNOx計測器30Bにより計測された計測結果とを比較する。排ガス分析装置100Bは、例えば、第1のNOx計測器30により計測された計測結果と第2のNOx計測器30Bにより計測された計測結果とを対比可能に表示部(図示略)に表示する。また、排ガス分析装置100Bは、例えば、第1のNOx計測器30により計測された一酸化窒素および二酸化窒素の濃度と、第2のNOx計測器30Bにより計測された一酸化窒素および二酸化窒素の濃度との差分の値を表示部(図示略)に表示する。
【0064】
本実施形態では、2つの取付座225,225Bに対して、2つのNOx計測器30,30Bをそれぞれ取り付けるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、単一の取付座225に対して、2つのNOx計測器30,30Bを順番に取り付けてNOx計測器30による反応器20の脱硝触媒21で還元処理された燃焼排ガスGeの成分を分析と、NOx計測器30Bによる反応器20Bの脱硝触媒21Bで還元処理された燃焼排ガスGeの成分を分析とを連続的に行っても良い。この場合、
図7のステップS203とステップS204との間に、採取配管10から採取配管10Bへの交換、反応器20から反応器20Bへの交換、NOx計測器30からNOx計測器30Bへの交換、供給配管40から供給配管40Bへの交換、吸引部50から吸引部50Bへの交換の作業を行う工程を追加する。
【0065】
また、以上において、反応器20から反応器20Bへの交換のみを行い、採取配管10とNOx計測器30と供給配管40と吸引部50は、反応器20から反応器20Bへの交換の前後で同一のものを利用してもよい。
【0066】
本実施形態の排ガス分析方法によれば、第1採取工程(S201)において、脱硝触媒223bの上流側で採取された燃焼排ガスGeが排ガスダクト224の外部に導かれ、第1反応工程(S202)において、反応器20の脱硝触媒21により燃焼排ガスGeに還元処理がなされる。第1分析工程(S203)は、脱硝触媒21で還元処理が行われた燃焼排ガスGeの成分を分析する。また、第2採取工程(S204)において、脱硝触媒223bの上流側で採取された燃焼排ガスGeが排ガスダクト224の外部に導かれ、第2反応工程(S205)において、反応器20Bの脱硝触媒21Bにより燃焼排ガスGeに還元処理がなされる。第2分析工程(S206)は、脱硝触媒21Bで還元処理が行われた燃焼排ガスGeの成分を分析する。そして、比較工程(S207)は、第1分析工程(S203)の分析結果と第2分析工程(S206)の分析結果とを比較する。
【0067】
本実施形態の排ガス分析方法によれば、第1反応工程(S202)および第2反応工程(S205)において脱硝触媒223bと同等の環境条件で燃焼排ガスGeに脱硝触媒21および脱硝触媒21Bにより還元処理を行い、第1分析工程(S203)により脱硝触媒223bと同等の環境条件で、脱硝触媒21により還元処理された燃焼排ガスGeの成分と、脱硝触媒21Bにより還元処理された燃焼排ガスGeの成分とを分析し、分析結果を比較することができる。これにより、脱硝触媒21による還元処理の性能と、脱硝触媒21Bによる還元処理の性能とを、脱硝触媒223bと同等の環境条件で分析して比較することができる。
【0068】
〔第4実施形態〕
次に、本開示の第4実施形態に係る排ガス分析装置100Bについて、図面を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0069】
第1実施形態の排ガス分析装置100が備える反応器20は、排熱回収ボイラ220の脱硝触媒223bと同様に、前述した反応式(1),(2),(3)によりアンモニア(NH3)による還元反応を促してNOxを分解するものであった。それに対して、本実施形態の排ガス分析装置が備える反応器20は、燃焼排ガスGeに混合されたアンモニアに分解処理(所定の反応処理)をするアンモニア分解触媒(図示略)を有する。
【0070】
本実施形態のアンモニア分解触媒は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)およびロジウム(Rh)から選ばれた1種以上の貴金属を担持したシリカおよびまたはゼオライトである第1成分と、チタン(Ti)、タングステン(W)およびバナジウム(V)から選ばれた1種以上の元素の酸化物からなる組成物である第2成分とからなる触媒である。
【0071】
本実施形態の反応器20が備えるアンモニア分解触媒は、第1成分により、以下の式(4),(5)により、アンモニア(NH3)に分解処理(所定の反応処理)をして、窒素または窒素酸化物に変換するものである。
4NH3+3O2→2N2+6H2O (4)
4NH3+5O2→4NO+6H2O (5)
【0072】
また、本実施形態の反応器20が備えるアンモニア分解触媒は、第2成分により、以下の式(6)により、アンモニアを分解するとともに式(5)で副生成されたNOの少なくとも一部を除去する。
4NH3+4NO+O2→4N2+6H2O (6)
【0073】
なお、本実施形態の反応器20が有するアンモニア分解触媒が燃焼排ガスGeに混合されたアンモニアに分解処理(所定の反応処理)をするのに対し、排熱回収ボイラ220が備える脱硝触媒223bがNOxをアンモニア(NH3)により還元処理して分解するものであり、主たる機能としては相違している。
【0074】
一方、排熱回収ボイラ220が備える脱硝触媒223bも、前述した反応式(1),(2),(3)により、アンモニアに分解処理をして窒素に変換しているため、アンモニアの分解処理(所定の反応処理)を行う点では共通している。本実施形態の排ガス分析装置は、反応器20が有するアンモニア分解触媒でアンモニアの分解処理がされた燃焼排ガスGeの成分を分析することにより、脱硝触媒223bとのアンモニアの分解処理の性能を比較することができる。
【0075】
なお、本実施形態の排ガス分析装置は、第1実施形態のNOx計測器30に替えて、燃焼排ガスGeに含まれるアンモニアの濃度を計測するアンモニア計測器(図示略)を備えるものとする。排ガス分析装置は、反応器20が有するアンモニア分解触媒でアンモニアの分解処理がされた燃焼排ガスGeに含まれるアンモニアの濃度を分析することにより、脱硝触媒223bとのアンモニアの分解処理の性能を比較する。
【0076】
〔他の実施形態〕
第1実施形態において、採取配管10は、排ガスダクト224の外周面に直交するように水平方向に沿って配置されるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、
図8の第1変形例に示すように、採取配管10が延びる軸線Xが、排ガスダクト224の外周面に対して90度以外の角度θを有するように配置してもよい。また、他の実施形態においても、採取配管10Aが延びる軸線が、排ガスダクト224の外周面に対して90度以外の角度θを有するように配置してもよい。
【0077】
また、第1実施形態において、排ガス分析装置100の反応器20は、全体が排ガスダクト224の内部空間S1に露出するように採取配管10の第1配管11の第1端部10Aaの近傍に配置するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、
図9の第2変形例に示すように、反応器20の一部が取付座225の内部に収容され、反応器20の他の一部が排ガスダクト224の内部空間S1に露出するようにしてもよい。
【0078】
第2変形例の排ガス分析装置100は、反応器20の一部が取付座225の内部に収容されるため、反応器20の全体を排ガスダクト224の内部空間S1に露出させる場合に比べ、反応器20に燃焼排ガスGeの流れと接触することによる振動や重力による影響などが生じないように、確実に排ガスダクト224に対して固定することができる。
【0079】
以上の説明において、採取配管10,10A,10Bは、採取配管10,10A,10Bのフランジ部12cを取付座225のフランジ部225bに固定することにより、取付座225に取り付けられるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、採取配管10,10A,10Bのフランジ部12cに替えて雄ねじを設け、取付座225のフランジ部225bに替えて貫通穴225aの内周面に雌ねじを設け、雄ねじと雌ねじを締結することにより、採取配管10,10A,10Bを取付座225に取り付けてもよい。この場合、シールパッキンにより雄ねじと雌ねじとの隙間から燃焼排ガスGeが漏れるのを防止するのが好ましい。
【0080】
以上説明した各実施形態に記載の排ガス分析装置および排ガス分析方法は例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る排ガス分析装置は、燃焼装置(210)から排出される排ガスが流通する排ガスダクト(224)と、前記排ガスダクトを流通する前記排ガスに所定の反応処理をする反応装置(223b)とを備える排ガス処理装置(220)に着脱可能に取り付けられる排ガス分析装置(100)であって、前記排ガスダクトの前記反応装置の上流側で前記排ガスを採取して前記排ガスダクトの外部に導くための配管(10)と、前記配管に取り付けられるとともに前記配管を流通する前記排ガスに前記所定の反応処理をする反応部(20)と、前記反応部により前記所定の反応処理が行われた前記排ガスの成分を分析する分析部(30)と、を備える。
【0081】
本開示の第1態様に係る排ガス分析装置によれば、反応装置の上流側で採取された排ガスが配管により排ガスダクトの外部に導かれるとともに、配管に取り付けられた反応部により排ガスに所定の反応処理がなされる。分析部は、反応部で所定の反応処理が行われた排ガスの成分を分析する。
【0082】
反応装置により所定の反応処理がされる排ガスと同じものが配管で採取されるため、排ガス分析装置は、反応部において反応装置と同等の環境条件で排ガスに所定の反応処理を行い、分析部により反応装置と同等の環境条件で排ガスの成分を分析することができる。すなわち、本開示の第1態様に係る排ガス分析装置によれば、排ガスダクトに設置される反応装置を撤去せずに、反応装置を置き換えるための反応部による排ガスに対する所定の反応処理の性能を、反応装置と同等の環境条件で分析することができる。
【0083】
本開示の第2態様に係る排ガス分析装置は、第1態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記反応部は、前記排ガスダクトに配置される前記反応装置と所定温度範囲内の温度となるように加熱されている。
本開示の第2態様に係る排ガス分析装置によれば、反応部が排ガスダクトに配置される反応装置と所定温度範囲内の温度となるように加熱されているため、反応部において反応装置と同等の環境条件で排ガスに所定の反応処理を行い、分析部により反応装置と同等の環境条件で排ガスの成分を分析することができる。
【0084】
本開示の第3態様に係る排ガス分析装置は、第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記反応部は、前記排ガスダクトの内部に露出するように配置されており、前記排ガスダクトを流通する前記排ガスにより加熱されている。
本開示の第3態様に係る排ガス分析装置によれば、排ガスダクトの内部に露出するように配置された反応部が、排ガスダクトを流通する排ガスにより加熱されているため、反応部を排ガスダクト内の反応装置と同等の温度条件とすることができる。
【0085】
本開示の第4態様に係る排ガス分析装置は、第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記反応部は、前記排ガスダクトの外部に配置されており、前記反応部を前記排ガスダクトに配置される前記反応装置と所定温度範囲内の温度となるように加熱する加熱部(60)を備える。
本開示の第4態様に係る排ガス分析装置によれば、排ガスダクトの外部に配置された反応部が反応装置と所定温度範囲内の温度となるように加熱部により加熱されるため、反応部を排ガスダクト内の反応装置と同等の温度条件とすることができる。
【0086】
本開示の第5態様に係る排ガス分析装置は、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記排ガスダクトの外壁には、前記排ガスダクトの内部環境を計測するための計測器が挿入される取付座(225)が設置されており、前記配管は、前記計測器が取り外された前記取付座に固定されている。
本開示の第5態様に係る排ガス分析装置によれば、排ガスダクトの内部環境を計測するための計測器が挿入される既存の取付座に対して配管を固定するため、排ガスダクトに配管を固定するために新規に取付座を設ける必要がない。
【0087】
本開示の第6態様に係る排ガス分析装置は、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記配管を介して前記排ガスダクトから前記排ガスを前記分析部に導くための吸引部(50)を備える。
本開示の第6態様に係る排ガス分析装置によれば、吸引部を用いることにより、配管を介して排ガスダクトから排ガスを分析部に導くことができる。
【0088】
本開示の第7態様に係る排ガス分析装置は、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記反応部は、前記配管を流通する前記排ガスに含まれる窒素酸化物を還元する還元処理をする。
本開示の第7態様に係る排ガス分析装置によれば、排ガスダクトに設置される反応装置を撤去せずに、反応装置を置き換えるための反応部による排ガスに対する窒素酸化物の還元処理の性能を、反応装置と同等の環境条件で分析することができる。
【0089】
本開示の第8態様に係る排ガス分析装置は、第7態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記排ガスには、前記窒素酸化物を還元するための還元剤が混合されており、前記反応部は、前記窒素酸化物を前記還元剤により還元処理するための脱硝触媒を有し、前記還元触媒は、前記反応装置が有する他の脱硝触媒とは還元処理の性能が異なる。
本開示の第8態様に係る排ガス分析装置によれば、反応装置が有する他の脱硝触媒とは還元処理の性能が異なる反応部が有する脱硝触媒の性能を、反応装置と同等の環境条件で分析することができる。
【0090】
本開示の第9態様に係る排ガス分析装置は、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記反応部は、前記配管を流通する前記排ガスに含まれるアンモニアを分解する分解処理をする。
本開示の第9態様に係る排ガス分析装置によれば、排ガスダクトに設置される反応装置を撤去せずに、反応部による排ガスに対するアンモニアの分解処理の性能を、反応装置と同等の環境条件で分析することができる。
【0091】
本開示の第10態様に係る排ガス分析方法は、燃焼装置から排出される排ガスが流通する排ガスダクトと、前記排ガスダクトに設けられて前記排ガスに所定の反応処理をする反応装置とを備える排ガス処理装置で処理される前記排ガスを分析する排ガス分析方法であって、前記排ガスダクトの前記反応装置の上流側で前記排ガスを採取して前記排ガスダクトの外部に導くための配管に採取する第1採取工程(S101,S201)と、前記第1採取工程で前記配管に導かれた前記排ガスに前記所定の反応処理をする第1反応工程(S102,S202)と、前記第1反応工程により前記所定の反応処理が行われた前記排ガスの成分を分析する第1分析工程(S103,S203)と、を備える。
【0092】
本開示の第10態様に係る排ガス分析方法によれば、第1採取工程において、反応装置の上流側で採取された排ガスが配管により排ガスダクトの外部に導かれ、第1反応工程において、配管に取り付けられた第1反応部により排ガスに所定の反応処理がなされる。第1分析工程は、第1反応部で所定の反応処理が行われた排ガスの成分を分析する。
【0093】
本開示の第10態様に係る排ガス分析方法によれば、反応装置により所定の反応処理がされる排ガスと同じものが採取されるため、第1反応工程において反応装置と同等の環境条件で排ガスに所定の反応処理を行い、第1分析工程により反応装置と同等の環境条件で排ガスの成分を分析することができる。すなわち、本開示の第10態様に係る排ガス分析方法によれば、排ガスダクトに設置される反応装置を撤去せずに、反応装置を置き換えるための第1反応部による排ガスに対する所定の反応処理の性能を、反応装置と同等の環境条件で分析することができる。
【0094】
本開示の第11態様に係る排ガス分析方法は、第10態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記第1反応工程は、前記排ガスダクトに配置される前記反応装置と所定温度範囲内の温度で前記反応処理をする。
本開示の第11態様に係る排ガス分析方法によれば、第1反応工程が排ガスダクトに配置される反応装置と所定温度範囲内の温度で反応処理をするため、第1反応工程において反応装置と同等の環境条件で排ガスに所定の反応処理を行い、第1分析工程において反応装置と同等の環境条件で排ガスの成分を分析することができる。
【0095】
本開示の第12態様に係る排ガス分析方法は、第10態様または第11態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記排ガスダクトの前記反応装置の上流側で前記排ガスを採取する第2採取工程(S204)と、前記第2採取工程で採取された前記排ガスに第2反応部により前記所定の反応処理をする第2反応工程(S205)と、前記第2反応工程により前記所定の反応処理が行われた前記排ガスの成分を分析する第2分析工程(S206)と、前記第1分析工程の分析結果と前記第2分析工程の分析結果とを比較する比較工程(S207)と、を備える。
【0096】
本開示の第12態様に係る排ガス分析方法によれば、第2採取工程において、反応装置の上流側で採取された排ガスが排ガスダクトの外部に導かれ、第2反応工程において、第2反応部により排ガスに所定の反応処理がなされる。第2分析工程は、第2反応部で所定の反応処理が行われた排ガスの成分を分析する。そして、比較工程は、第1分析工程の分析結果と第2分析工程の分析結果とを比較する。
【0097】
本開示の第12態様に係る排ガス分析方法によれば、第1反応工程および第2反応工程において反応装置と同等の環境条件で排ガスに第1反応部および第2反応部により所定の反応処理を行い、第1分析工程により反応装置と同等の環境条件で、第1反応部により反応処理された排ガスの成分と、第2反応部により反応処理された排ガスの成分とを分析し、分析結果を比較することができる。これにより、第1反応部による所定の反応処理の性能と、第2反応部による所定の反応処理の性能とを、反応装置と同等の環境条件で分析して比較することができる。
【符号の説明】
【0098】
10,10A 採取配管
10Aa 第1端部
10Ab 第2端部
11 第1配管
12 第2配管
12a 第1端部
12b 第2端部
20,20A 反応器
21 脱硝触媒
30 NOx計測器
40,40A 供給配管
41A 第1配管
42A 第2配管
50 吸引部
60 加熱部
100,100A 排ガス分析装置
200 ガスタービン複合発電設備
210 ガスタービン(燃焼装置)
211 圧縮機
212 燃焼器
213 タービン
214 発電機
220 排熱回収ボイラ(排ガス処理装置)
221 上部熱交換器
221a 伝熱管
222 下部熱交換器
222a 伝熱管
223 脱硝装置(反応装置)
223a 還元剤注入ノズル
223b 脱硝触媒
224 排ガスダクト
225 取付座
225a 貫通穴
230 還元剤供給部
231 還元剤貯蔵タンク
232 流量調整弁
233 還元剤供給配管
300 圧力センサ
Ge 燃焼排ガス
HD 高さ方向
S1 内部空間
S2 外部空間
X 軸線
θ 角度