(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061501
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】自走式作業ロボットの走行制御方法及び走行制御システム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20240425BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240425BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
G05D1/02 G
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169480
(22)【出願日】2022-10-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】513192742
【氏名又は名称】建ロボテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞部 達也
(72)【発明者】
【氏名】榎本 羊太
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301BB03
5H301EE02
5H301EE12
5H301EE17
5H301EE26
5H301FF01
5H301FF21
(57)【要約】
【課題】鉄筋格子上を鉄筋に沿って自走する自走式作業ロボットを施工面の所望の位置に移動させる際に、目印の設置などの事前準備を必要とせず、天候や時間帯等の外部環境要因に依存せず、確実に目標位置に到達する自走式作業ロボットの走行制御方法及び走行制御システムを提供すること。
【解決手段】
制御部が、駆動部を駆動制御して第一の方向に走行している場合に鉄筋検知部が第二鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数の値を所定値増減する書換制御を行い、駆動部を駆動制御して第二の方向に走行している場合に鉄筋検知部が第一鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに記憶部に記録されている現在位置情報の第二変数の値を所定値増減する書換制御を行う。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工面に第一の方向に等間隔に並列敷設された複数の第一鉄筋と該第一鉄筋に交差する第二の方向に延びて等間隔に敷設された第二鉄筋とからなる鉄筋格子の上を前記第一の方向及び前記第二の方向に走行する走行部と、該走行部を駆動する駆動部と、外部からの入力を受ける入力部と、前記第一鉄筋及び前記第二鉄筋を検知する鉄筋検知部と、現在位置情報及び目標位置情報を記録する記憶部と、前記入力部からの入力内容及び前記鉄筋検知部からの検知信号に応じて前記駆動部及び前記記憶部を制御する制御部とを備えている自走式作業ロボットの走行制御方法であって、
前記制御部が、前記入力部から原点設定指示が入力された場合であって、前記鉄筋検知部が前記第二鉄筋を検知していないときには前記駆動部を駆動制御して前記第一の方向に移動して前記鉄筋検知部が前記第二鉄筋を検知して発信した検知信号を受信した際に停止制御し、前記鉄筋検知部が前記第一鉄筋を検知していないときには前記駆動部を駆動制御して前記第二の方向に移動して前記鉄筋検知部が前記第一鉄筋を検知して発信した検知信号を受信した際に停止制御し、更に、前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定した後に、
前記制御部が、前記駆動部を駆動制御して前記第一の方向に走行している場合に前記鉄筋検知部が前記第二鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の前記第一変数の値を所定値増減する書換制御を行い、前記駆動部を駆動制御して前記第二の方向に走行している場合に前記鉄筋検知部が前記第一鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の前記第二変数の値を所定値増減する書換制御を行い、
前記制御部が、前記駆動部を駆動制御して前記第一の方向に走行している場合に前記記憶部に記録されている前記現在位置情報及び前記目標位置情報を読み出して前記現在位置情報の前記第一変数が前記目標位置情報の第一変数と一致したときに前記駆動部を停止制御して前記第一の方向への走行を停止させ、前記駆動部を駆動制御して前記第二の方向に走行している場合に前記記憶部に記録されている前記現在位置情報及び前記目標位置情報を読み出して前記現在位置情報の前記第二変数が前記目標位置情報の第二変数と一致したときに前記駆動部を停止制御して前記第二の方向への走行を停止させることを特徴とする自走式作業ロボットの走行制御方法。
【請求項2】
前記制御部が、前記入力部から入力された前記目標位置情報を前記記憶部に記録する記憶制御を行った後に前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の前記書換制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の自走式作業ロボットの走行制御方法。
【請求項3】
前記制御部が、前記駆動部を停止制御して前記第一の方向及び前記第二の方向への走行を停止させた後に前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定して前記目標位置情報が更新されるまで待機することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自走式作業ロボットの走行制御方法。
【請求項4】
施工面に第一の方向に等間隔に並列敷設された複数の第一鉄筋と該第一鉄筋に交差する第二の方向に延びて等間隔に敷設された第二鉄筋とからなる鉄筋格子と、該鉄筋格子の上を前記第一の方向及び前記第二の方向に走行する走行部と該走行部を駆動する駆動部と外部からの入力を受ける入力部と前記第一鉄筋及び前記第二鉄筋を検知する鉄筋検知部と現在位置情報及び目標位置情報を記録する記憶部とを備えて前記駆動部と前記記憶部とを制御する自走式作業ロボットとからなる自走式作業ロボットの走行制御システムであって、
前記自走式作業ロボットが、前記入力部から原点設定指示が入力された場合であって、前記鉄筋検知部が前記第二鉄筋を検知していないときには前記駆動部を駆動制御して前記第一の方向に移動して前記鉄筋検知部が前記第二鉄筋を検知して発信した検知信号を受信した際に停止制御し、前記鉄筋検知部が前記第一鉄筋を検知していないときには前記駆動部を駆動制御して前記第二の方向に移動して前記鉄筋検知部が前記第一鉄筋を検知して発信した検知信号を受信した際に停止制御し、更に、前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定した後に、前記駆動部を駆動制御して前記第一の方向に走行している場合に前記鉄筋検知部が前記第二鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の前記第一変数の値を所定値増減する書換制御を行い、前記駆動部を駆動制御して前記第二の方向に走行している場合に前記鉄筋検知部が前記第一鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の前記第二変数の値を所定値増減する書換制御を行い、前記駆動部を駆動制御して前記第一の方向に走行している場合に前記記憶部に記録されている前記現在位置情報及び前記目標位置情報を読み出して前記現在位置情報の前記第一変数が前記目標位置情報の第一変数と一致したときに前記駆動部を停止制御して前記第一の方向への走行を停止させ、前記駆動部を駆動制御して前記第二の方向に走行している場合に前記記憶部に記録されている前記現在位置情報及び前記目標位置情報を読み出して前記現在位置情報の前記第二変数が前記目標位置情報の第二変数と一致したときに前記駆動部を停止制御して前記第二の方向への走行を停止させる制御部を備えていることを特徴とする自走式作業ロボットの走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋格子上を鉄筋に沿って自走する自走式作業ロボットの走行を制御する自走式作業ロボットの走行制御方法及び走行制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋格子上を自走して所望の位置に移動する自走式作業ロボットについては、複数の鉄筋上を走行する自走式作業ロボットが、鉄筋に直交配置するトラバースレール上を転動する台車と鉄筋との相互間で乗降自在に移載するもの(特許文献1参照)、自走式作業ロボット自身がクローラ機構を備えるもの(参考文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2022-18328号公報
【特許文献2】特開第2019-39174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の自走式作業ロボットを、施工面の所望の位置まで走行させるために関連する従来技術を採用する場合には、以下の問題の発生が予測される。
【0005】
まず、一般的な無人搬送車:AGV(Automatic Guided Vehicle)の構成を採用する場合には、磁気テープやQRコード(登録商標)などの目印を走行ラインに沿って設置する必要があるため、鉄筋格子の施工前にこれらの目印を施工面に設置し、又は施工中の鉄筋格子をいったん撤去した上で施工面に目印を設置する必要が生じて煩雑であり、工数増大や作業遅延が発生する。
【0006】
次に、自律走行搬送ロボット:AMR(Autonomous Mobile Robot)の構成を採用する場合には、エリア設定、ルート設定等の事前準備が必要であるため、建設現場のように日々変化する環境では、目標地点まで走行させようとする度にこれらの設定を変更する必要が生じて煩雑であり、工数増大や作業遅延が発生する。
【0007】
また、全地球測位システム:GPS(Global Positioning System)を用いる場合には、民生用のシステムでは屋外であっても建築現場に必要な精度を得ることができず、ましてや屋内では位置情報を取得できず、又は精度が著しく低下するため使用に耐えない。
【0008】
さらに、無線LAN等の無線通信を用いる場合には、位置情報の基準となるルーターなどの親機の設置が必要となり、何らかの理由で親機の設置位置が変わった際には、自走式作業ロボットの基準位置が狂ってしまうため、目標位置への到達精度を高めるために再設定の作業が発生する。また、電波強度が不安定な場合や、都市部において周囲に無関係な電波源が多数存在する場合には、通信不良により到達確度が低下する問題が生じ得る。
【0009】
その上、光学カメラや光学検知測距:LiDAR(Light Detection And Ranging)の利用により位置情報を取得する場合には、光学カメラは夜間や暗所での使用ができず、一方で、LiDARはレーザー光照射による散乱光を測定するため、雨天時や霧天時には精度が低下し、また、太陽光の散乱が存在する晴天の屋外では使用ができず、いずれの場合にも使用条件が天候や時間帯等の外部環境要因に依存して限定的である。
【0010】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、鉄筋格子上を鉄筋に沿って自走する自走式作業ロボットを施工面の所望の位置に移動させる際に、目印の設置などの事前準備を必要とせず、天候や時間帯等の外部環境要因に依存せず、確実に目標位置に到達する自走式作業ロボットの走行制御方法及び走行制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、施工面に第一の方向に等間隔に並列敷設された複数の第一鉄筋と該第一鉄筋に交差する第二の方向に延びて等間隔に敷設された第二鉄筋とからなる鉄筋格子の上を前記第一の方向及び前記第二の方向に走行する走行部と、該走行部を駆動する駆動部と、外部からの入力を受ける入力部と、前記第一鉄筋及び前記第二鉄筋を検知する鉄筋検知部と、現在位置情報及び目標位置情報を記録する記憶部と、前記入力部からの入力内容及び前記鉄筋検知部からの検知信号に応じて前記駆動部及び前記記憶部を制御する制御部とを備えている自走式作業ロボットの走行制御方法であって、前記制御部が、前記入力部から原点設定指示が入力された場合であって、前記鉄筋検知部が前記第二鉄筋を検知していないときには前記駆動部を駆動制御して前記第一の方向に移動して前記鉄筋検知部が前記第二鉄筋を検知して発信した検知信号を受信した際に停止制御し、前記鉄筋検知部が前記第一鉄筋を検知していないときには前記駆動部を駆動制御して前記第二の方向に移動して前記鉄筋検知部が前記第一鉄筋を検知して発信した検知信号を受信した際に停止制御し、更に、前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定した後に、前記制御部が、前記駆動部を駆動制御して前記第一の方向に走行している場合に前記鉄筋検知部が前記第二鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の前記第一変数の値を所定値増減する書換制御を行い、前記駆動部を駆動制御して前記第二の方向に走行している場合に前記鉄筋検知部が前記第一鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の前記第二変数の値を所定値増減する書換制御を行い、前記制御部が、前記駆動部を駆動制御して前記第一の方向に走行している場合に前記記憶部に記録されている前記現在位置情報及び前記目標位置情報を読み出して前記現在位置情報の前記第一変数が前記目標位置情報の第一変数と一致したときに前記駆動部を停止制御して前記第一の方向への走行を停止させ、前記駆動部を駆動制御して前記第二の方向に走行している場合に前記記憶部に記録されている前記現在位置情報及び前記目標位置情報を読み出して前記現在位置情報の前記第二変数が前記目標位置情報の第二変数と一致したときに前記駆動部を停止制御して前記第二の方向への走行を停止させることにより、前述した課題を解決するものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の自走式作業ロボットの走行制御方法の発明の構成に加えて、前記制御部が、前記入力部から入力された前記目標位置情報を前記記憶部に記録する記憶制御を行った後に前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の前記書換制御を行うことにより、前述した課題を解決するものである。
【0013】
本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明の自走式作業ロボットの走行制御方法の発明の構成に加えて、前記制御部が、前記駆動部を停止制御して前記第一の方向及び前記第二の方向への走行を停止させた後に前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定して前記目標位置情報が更新されるまで待機することにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0014】
本請求項4に係る発明は、施工面に第一の方向に等間隔に並列敷設された複数の第一鉄筋と該第一鉄筋に交差する第二の方向に延びて等間隔に敷設された第二鉄筋とからなる鉄筋格子と、該鉄筋格子の上を前記第一の方向及び前記第二の方向に走行する走行部と該走行部を駆動する駆動部と外部からの入力を受ける入力部と前記第一鉄筋及び前記第二鉄筋を検知する鉄筋検知部と現在位置情報及び目標位置情報を記録する記憶部とを備えて前記駆動部と前記記憶部とを制御する自走式作業ロボットとからなる自走式作業ロボットの走行制御システムであって、前記自走式作業ロボットが、前記入力部から原点設定指示が入力された場合であって、前記駆動部を駆動制御して前記第一方向又は前記第二方向にそれぞれ移動して前記鉄筋検知部が前記第二鉄筋を検知して発信した検知信号を受信したときに前記駆動部を制御して前記第一方向への走行を停止させ、前記鉄筋検知部が前記第一鉄筋を検知して発信した検知信号を受信したときに前記駆動部を制御して前記第二方向への走行を停止させて、前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定した後に、前記駆動部を駆動制御して前記第一の方向に走行している際に前記鉄筋検知部が前記第二鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の前記第一変数の値を所定値増減する書換制御を行い、前記駆動部を駆動制御して前記第二の方向に走行している際に前記鉄筋検知部が前記第一鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに前記記憶部に記録されている前記現在位置情報の前記第二変数の値を所定値増減する書換制御を行い、前記記憶部に記録されている前記現在位置情報及び前記目標位置情報を読み出して比較して前記現在位置情報の前記第一変数が前記目標位置情報の第一変数と一致した際に前記駆動部を停止制御して前記第一の方向への走行を停止させ、前記現在位置情報の前記第二変数が前記目標位置情報の第二変数と一致した際に前記駆動部を停止制御して前記第二の方向への走行を停止させる 制御部を備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る発明の自走式作業ロボットの走行制御方法によれば、施工面に第一の方向に等間隔に並列敷設された複数の第一鉄筋とこの第一鉄筋に交差する第二の方向に延びて等間隔に敷設された第二鉄筋とからなる鉄筋格子の上を第一の方向及び第二の方向に走行する走行部と、この走行部を駆動する駆動部と、外部からの入力を受ける入力部と、第一鉄筋及び第二鉄筋を検知する鉄筋検知部と、現在位置情報及び目標位置情報を記録する記憶部と、入力部からの入力内容及び鉄筋検知部からの検知信号に応じて駆動部及び記憶部を制御する制御部とを備えていることにより、自走式作業ロボットの走行を制御することができるばかりでなく、本発明の以下の構成により、本発明に固有の以下の効果を奏することができる。
【0016】
まず、制御部が、入力部から原点設定指示が入力された場合であって、鉄筋検知部が第二鉄筋を検知していないときには駆動部を駆動制御して第一の方向に移動して鉄筋検知部が第二鉄筋を検知して発信した検知信号を受信した際に停止制御し、鉄筋検知部が第一鉄筋を検知していないときには駆動部を駆動制御して第二の方向に移動して鉄筋検知部が第一鉄筋を検知して発信した検知信号を受信した際に停止制御し、更に、記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定することにより、鉄筋格子上の任意の位置に自走式作業ロボットを載置して入力部から原点設定指示を入力するだけで自動的に最寄りの格子点を原点とするため、目印の設置などの事前準備を必要とせずに自ら設定した原点を基準位置として施工面を自走する準備を整えることができる。
【0017】
次に、制御部が、記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定した後に、駆動部を駆動制御して第一の方向に走行している場合に鉄筋検知部が第二鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数の値を所定値増減する書換制御を行い、駆動部を駆動制御して第二の方向に走行している場合に鉄筋検知部が第一鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに記憶部に記録されている現在位置情報の第二変数の値を所定値増減する書換制御を行うことにより、鉄筋格子上を自走しながら通過した第一鉄筋及び第二鉄筋をそれぞれカウントして現在位置情報の第一変数及び第二変数を書換え更新するため、天候や時間帯等の外部環境要因に依存せずに作業中の任意の時点における現在位置を鉄筋格子により規定される座標系を基準とする現在位置情報として正確に記録することができる。
【0018】
更に、制御部が、記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定した後に、駆動部を駆動制御して第一の方向に走行している場合に記憶部に記録されている現在位置情報及び目標位置情報を読み出して現在位置情報の第一変数が目標位置情報の第一変数と一致したときに駆動部を停止制御して第一の方向への走行を停止させ、駆動部を駆動制御して第二の方向に走行している場合に記憶部に記録されている現在位置情報及び目標位置情報を読み出して現在位置情報の第二変数が目標位置情報の第二変数と一致したときに駆動部を停止制御して第二の方向への走行を停止させることにより、自走しながら現在位置と目標地点との異同判定を行うため、目標地点で自動的に走行を停止して確実に目標位置に到達することができる。
【0019】
本発明の請求項2に係る発明の自走式作業ロボットの走行制御方法によれば、請求項1に係る発明の自走式作業ロボットの走行制御方法の発明が奏する効果に加えて、制御部が、入力部から入力された目標位置情報を記憶部に記録する記憶制御を行った後に記憶部に記録されている現在位置情報の書換制御を行うことにより、目標位置情報を確実に設定した後に自動走行と現在位置情報の書換え更新を行うため、目標位置と現在位置との異同判定を誤差なく行って正確に目標位置に到達することができる。
【0020】
本請求項3に係る発明の自走式作業ロボットの走行制御方法によれば、請求項1又は請求項2に係る発明の自走式作業ロボットの走行制御方法の発明が奏する効果に加えて、制御部が、駆動部を停止制御して第一の方向及び第二の方向への走行を停止させた後に記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定して目標位置情報が更新されるまで待機することにより、停止した後の現在位置を改めて原点に設定するため、自走式作業ロボットの現在位置を基準にして新たな目標位置を相対的かつ容易に設定して入力、更新することができる。
【0021】
本請求項4に係る発明の自走式作業ロボットの走行制御システムによれば、施工面に第一の方向に等間隔に並列敷設された複数の第一鉄筋とこの第一鉄筋に交差する第二の方向に延びて等間隔に敷設された第二鉄筋とからなる鉄筋格子と、この鉄筋格子の上を第一の方向及び第二の方向に走行する走行部とこの走行部を駆動する駆動部と外部からの入力を受ける入力部と第一鉄筋及び第二鉄筋を検知する鉄筋検知部と現在位置情報及び目標位置情報を記録する記憶部とを備えて駆動部と記憶部とを制御する自走式作業ロボットとからなることにより、自走式作業ロボットの走行を制御することができるばかりでなく、本発明の以下の構成により、本発明に固有の以下の効果を奏することができる。
【0022】
まず、自走式作業ロボットが、入力部から原点設定指示が入力された場合であって、駆動部を駆動制御して第一方向又は第二方向にそれぞれ移動して鉄筋検知部が第二鉄筋を検知して発信した検知信号を受信したときに駆動部を制御して第一方向への走行を停止させ、鉄筋検知部が第一鉄筋を検知して発信した検知信号を受信したときに駆動部を制御して第二方向への走行を停止させて、記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定する制御部を備えていることにより、鉄筋格子上の任意の位置に自走式作業ロボットを載置して入力部から原点設定指示を入力するだけで自動的に最寄りの格子点を原点とするため、目印の設置などの事前準備を必要とせずに自ら設定した原点を基準位置として施工面を自走する準備を整えることができる。
【0023】
次に、自走式作業ロボットが、記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定した後に、駆動部を駆動制御して第一の方向に走行している際に鉄筋検知部が第二鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数の値を所定値増減する書換制御を行い、駆動部を駆動制御して第二の方向に走行している際に鉄筋検知部が第一鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに記憶部に記録されている現在位置情報の第二変数の値を所定値増減する書換制御を行う制御部を備えていることにより、鉄筋格子上を自走しながら通過した第一鉄筋及び第二鉄筋をそれぞれカウントして現在位置情報の第一変数及び第二変数を書換え更新するため、天候や時間帯等の外部環境要因に依存せずに作業中の任意の時点における現在位置を鉄筋格子により規定される座標系を基準とする現在位置情報として正確に記録することができる。
【0024】
更に、自走式作業ロボットが、記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定した後に、記憶部に記録されている現在位置情報及び目標位置情報を読み出して比較して現在位置情報の第一変数が目標位置情報の第一変数と一致した際に駆動部を停止制御して第一の方向への走行を停止させ、現在位置情報の第二変数が目標位置情報の第二変数と一致した際に駆動部を停止制御して第二の方向への走行を停止させる制御部を備えていることにより、自走しながら現在位置と目標地点との異同判定を行うため、目標地点で自動的に走行を停止して確実に目標位置に到達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る自走式作業ロボットが施工面に敷設された鉄筋格子上を自走する様子を示す模式図。
【
図3】
図2の鉄筋格子を上から見た状態を示す模式図。
【
図4A】本発明に係る鉄筋検知部を示す模式的説明図。
【
図4B】本発明に係る鉄筋検知部を示す模式的説明図。
【
図5】本発明に係る自走式作業ロボットの構成を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の自走式作業ロボットの走行制御方法は、施工面に第一の方向に等間隔に並列敷設された複数の第一鉄筋とこの第一鉄筋に交差する第二の方向に延びて等間隔に敷設された第二鉄筋とからなる鉄筋格子の上を第一の方向及び第二の方向に走行する走行部と、この走行部を駆動する駆動部と、外部からの入力を受ける入力部と、第一鉄筋及び第二鉄筋を検知する鉄筋検知部と、現在位置情報及び目標位置情報を記録する記憶部と、入力部からの入力内容及び鉄筋検知部からの検知信号に応じて駆動部及び記憶部を制御する制御部とを備えている自走式作業ロボットの走行制御方法であって、制御部が、入力部から原点設定指示が入力された場合であって、鉄筋検知部が第二鉄筋を検知していないときには駆動部を駆動制御して第一の方向に移動して鉄筋検知部が第二鉄筋を検知して発信した検知信号を受信した際に停止制御し、鉄筋検知部が第一鉄筋を検知していないときには駆動部を駆動制御して第二の方向に移動して鉄筋検知部が第一鉄筋を検知して発信した検知信号を受信した際に停止制御し、更に、記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定した後に、駆動部を駆動制御して第一の方向に走行している場合に鉄筋検知部が第二鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数の値を所定値増減する書換制御を行い、駆動部を駆動制御して第二の方向に走行している場合に鉄筋検知部が第一鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに記憶部に記録されている現在位置情報の第二変数の値を所定値増減する書換制御を行い、駆動部を駆動制御して第一の方向に走行している場合に記憶部に記録されている現在位置情報及び目標位置情報を読み出して現在位置情報の第一変数が目標位置情報の第一変数と一致したときに駆動部を停止制御して第一の方向への走行を停止させ、駆動部を駆動制御して第二の方向に走行している場合に記憶部に記録されている現在位置情報及び目標位置情報を読み出して現在位置情報の第二変数が目標位置情報の第二変数と一致したときに駆動部を停止制御して第二の方向への走行を停止させることにより、鉄筋格子上を鉄筋に沿って自走する自走式作業ロボットを施工面の所望の位置に移動させる際に、目印の設置などの事前準備を必要とせず、天候や時間帯等の外部環境要因に依存せず、確実に目標位置に到達するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0027】
また、本発明の自走式作業ロボットの走行制御システムは、施工面に第一の方向に等間隔に並列敷設された複数の第一鉄筋とこの第一鉄筋に交差する第二の方向に延びて等間隔に敷設された第二鉄筋とからなる鉄筋格子と、この鉄筋格子の上を第一の方向及び第二の方向に走行する走行部とこの走行部を駆動する駆動部と外部からの入力を受ける入力部と第一鉄筋及び第二鉄筋を検知する鉄筋検知部と現在位置情報及び目標位置情報を記録する記憶部とを備えて駆動部と記憶部とを制御する自走式作業ロボットとからなる自走式作業ロボットの走行制御システムであって、制御部が、入力部から原点設定指示が入力された場合であって、鉄筋検知部が第二鉄筋を検知していないときには駆動部を駆動制御して第一の方向に移動して鉄筋検知部が第二鉄筋を検知して発信した検知信号を受信した際に停止制御し、鉄筋検知部が第一鉄筋を検知していないときには駆動部を駆動制御して第二の方向に移動して鉄筋検知部が第一鉄筋を検知して発信した検知信号を受信した際に停止制御し、更に、記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数及び第二変数の値をそれぞれ初期値に設定した後に、駆動部を駆動制御して第一の方向に走行している場合に鉄筋検知部が第二鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに記憶部に記録されている現在位置情報の第一変数の値を所定値増減する書換制御を行い、駆動部を駆動制御して第二の方向に走行している場合に鉄筋検知部が第一鉄筋を検知して発信する検知信号を受信するたびに記憶部に記録されている現在位置情報の第二変数の値を所定値増減する書換制御を行い、駆動部を駆動制御して第一の方向に走行している場合に記憶部に記録されている現在位置情報及び目標位置情報を読み出して現在位置情報の第一変数が目標位置情報の第一変数と一致したときに駆動部を停止制御して第一の方向への走行を停止させ、駆動部を駆動制御して第二の方向に走行している場合に記憶部に記録されている現在位置情報及び目標位置情報を読み出して現在位置情報の第二変数が目標位置情報の第二変数と一致したときに駆動部を停止制御して第二の方向への走行を停止させることにより、鉄筋格子上を鉄筋に沿って自走する自走式作業ロボットを施工面の所望の位置に移動させる際に、目印の設置などの事前準備を必要とせず、天候や時間帯等の外部環境要因に依存せず、確実に目標位置に到達するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0028】
例えば、自走式作業ロボットの作業内容は、鉄筋結束作業の他に、配筋検査、タッカー作業、ピンタッカー(ピンネイラー)作業、螺子止め又は荷物運搬等、鉄筋格子の上で行う作業であれば如何なるものであってもよい。
また、鉄筋検知部を構成するセンサは、磁気センサの他に、接触センサ、フォトマイクロセンサ(光学センサ)等の公知のセンサを用いることができる。
左右走行ユニットは、第二鉄筋に沿って走行するものであれば、一対のクローラから構成する以外に、二対の駆動輪から構成してもよい。
入力部は、外部から送信される電波を受信する通信装置の他に、タッチパネルやボタンなどの入力装置であってもよく、これらを併設してもよい。また、入力部から目標位置を入力して指定する際には、鉄筋間隔(メートル)と目標相対位置(メートル)をそれぞれ入力して、乗り越える鉄筋の本数によって規定される左右移動数と前後移動数とを計算する方式の他に、乗り越える鉄筋の本数によって規定される左右移動数と前後移動数とを直接入力する構成としてもよい。
鉄筋格子を構成する第一鉄筋と第二鉄筋との配置は、直交以外にやや斜交していてもよく、第一鉄筋同士又は第二鉄筋同士が平行を保っている限り、緩やかにカーブしていても構わない。
【実施例0029】
以下、添付図面を参照しながら本発明の自走式作業ロボットの好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る自走式作業ロボットが施工面に敷設された鉄筋格子上を自走する様子を示す模式図であり、
図2は、
図1を横方向から見た状態を示す模式図であり、
図3は、
図2の鉄筋格子を上から見た状態を示す模式図であり、
図4A及び
図4Bは、本発明に係る鉄筋検知部を示す模式的説明図であり、
図5は、本発明に係る自走式作業ロボットの構成を示す機能ブロック図である。なお、
図4A及び
図4Bでは、説明の都合上、鉄筋結束機等の記載を省略している。
【0030】
本発明の一実施例である走行制御システム100は、
図1及び
図2に示すように、自走式作業ロボット110と、複数の第一鉄筋120aと複数の第二鉄筋120bとを直交させて格子状に組んだ鉄筋格子120とから構成されている。
【0031】
本実施例の自走式作業ロボット110は、所定作業として鉄筋結束作業を行うものであり、鉄筋格子120が敷設された施工面上を自動走行しながら、自走式作業ロボット110に保持された市販の鉄筋結束機により第一鉄筋120aと第二鉄筋120bとの交差部の鉄筋結束作業を行う。
【0032】
ここで、
図3に示すように、複数の第一鉄筋120aは等間隔で相互に平行に配設されており、この第一鉄筋120aの長手方向を「前後方向」とし、複数の第二鉄筋120bは等間隔で相互に平行に配設されており、この第二鉄筋120bの長手方向を「左右方向」とし、これら「前後方向」及び「左右方向」と直交する鉛直方向を「上下方向」とする。
【0033】
本実施例においては、「前後方向」が「第一の方向」に、「左右方向」が「第二の方向」に、「Y」が「第一変数の値」、「X」が「第二変数」の値に対応する。
【0034】
自走式作業ロボット110は、
図2、
図4A、
図4B及び
図5に示すように、鉄筋格子120上を走行する走行部111と、この走行部を駆動するための駆動部112と、自走式作業ロボットに対する外部からの指示を受けるための入力部113と、鉄筋格子120上を走行中に第一鉄筋120a及び第二鉄筋120bを検知するための鉄筋検知部114と、現在位置及び目標位置を記録するための記憶部115と、駆動部112、入力部113、鉄筋検知部114及び記憶部115を制御するための制御部116とを備えている。
【0035】
走行部111は、複数の第一鉄筋120aのうち任意の1本の第一鉄筋120a及びその近傍の他の第一鉄筋120aの上をこれらの第一鉄筋120aに沿って走行する前後走行ユニット111aと、複数の第二鉄筋120bの上をこれらの第二鉄筋120bに沿って走行する不図示の左右走行ユニット111bとからなる。
【0036】
前後走行ユニット111aは、例えば、自走式作業ロボット110の本体に懸架された二対の駆動輪から構成されている。また、不図示の左右走行ユニット111bは、一対のクローラから構成されている。
【0037】
駆動部112は、前後走行ユニット111aを駆動して前後方向に走行させる前後走行モータ112aと、左右走行ユニット111bを駆動して左右方向に走行させる左右走行モータ112bとを備えている。
【0038】
入力部113は、初期位置座標の設定指示、鉄筋間隔の入力、目標位置の入力、移動の開始・再開指示等の入力を、外部から送信される電波を受信する通信装置から構成されている。
【0039】
鉄筋検知部114は、鉄筋格子120上を前後方向に走行中に第二鉄筋120bを検知するための前後移動時鉄筋センサ114aと、鉄筋格子120上を左右方向に走行中に第一鉄筋120aを検知するための不図示の左右走行時鉄筋センサ114bを備えている。
【0040】
前後移動時鉄筋センサ114aは、
図2、
図4A及び
図4Bに示すように、自走式作業ロボット110の下面の前後方向略中央位置であって、前方駆動輪と後方駆動輪との間に設けられている。
【0041】
前後移動時鉄筋センサ114aは、円盤状のスペーサーと、このスペーサーに連動して上下動する磁気センサ素子114aaとを備えている。前後移動時鉄筋センサ114aのスペーサーの円盤面は、その法線が磁気センサ素子114aaの検出対象である第二鉄筋120bの長手方向と平行となるように配置されており、スペーサーの円弧状の外周面が第二鉄筋120bに接触した際にキー溝114abに沿って上下方向に移動して第二鉄筋120bに接触しながら乗り上げる構成となっている。
【0042】
特に、第一鉄筋120aと第二鉄筋120bとが直交して構成している鉄筋格子120上を走行する場合には、前後移動時鉄筋センサ114aのスペーサーの円盤面は、第一鉄筋120aの長手方向と平行に配置されることとなる。
【0043】
磁気センサ素子114aaは、
図4A及び
図4Bに示すように、その検出範囲Sが下方に向くように設置されており、非接触で第二鉄筋120bを検出可能である。磁気センサ素子114aaの下端は、円盤状のスペーサーの下端よりも上方に位置しており、第二鉄筋120bに接近した際には磁気センサ素子114aaよりも先にスペーサーが第二鉄筋120bに接触して磁気センサ素子114aaを保護する。
【0044】
磁気センサ素子114aaは、渦電流式の磁気センサであり、接近した第二鉄筋120bに向けて高周波磁束を発生可能である。
図4Bに示すように、この磁気センサ素子114aaに第二鉄筋120bが近づくと、渦電流損が大きくなって発振振幅が小さくなる。この発振振幅を整流して、第二鉄筋120bまでの距離を直流電圧の変化で検出している。このように、磁気センサを用いれば、太陽光や風などの外部環境の影響を受けにくくなる。よって、自走式作業ロボット110を屋外で使用しても、安定して第二鉄筋120bを検知することができる。
【0045】
また、磁気センサ素子114aaは、前後走行ユニット111aよりも下方に突出して設置されているため、自走式作業ロボット110が左右方向に走行する際には、第一鉄筋120aに接触する可能性がある。これを避けるために、前後移動時鉄筋センサ114aは、必要に応じて上側に移動して、自走式作業ロボット110内に収納される構成となっている。
【0046】
図4A及び
図4Bに示した前後移動時鉄筋センサ114aは、自走式作業ロボット110の右側に設置されているが、自走式作業ロボット110の左側にも同様の前後移動時鉄筋センサ114aが、右側と対称な位置に設置されている。
【0047】
不図示の左右走行時鉄筋センサ114bは、前後移動時鉄筋センサ114aと同様の構成となっており、自走式作業ロボット110が左右方向に走行している際に、第一鉄筋120aを検知する。
【0048】
記憶部115は、現在位置を記憶する現在位置メモリ115aと目標位置を記憶する目標位置メモリ115bとを備えている。
【0049】
制御部116は、駆動部112を駆動制御又は停止制御して走行または停止させ、入力部113からの入力に従って目標位置メモリ115bを書換制御して記憶内容を更新し、鉄筋検知部114からの検知信号に従って現在位置メモリ115aを書換制御して記憶内容を更新する。
【0050】
次に、自走式作業ロボット110が鉄筋格子120の上を走行する際に制御部116が実行する制御の内容とその流れを説明する。
図6A、
図6B及び
図6Cは、本発明に係る制御の流れを示すフロー図である。
【0051】
まず、
図3に示すように、鉄筋格子120のA点近傍でA点よりもやや後方かつやや左方に自走式作業ロボット110を搭載した後に、A点を出発位置として目標位置であるB点まで移動する際の制御を説明する。
【0052】
<初期位置原点設定>
初期位置原点設定指示待ち(S01)において、入力部113から原点設定指示として初期位置座標設定指示が入力されるまでループして待機し(S02)、初期位置原点指示が入力されたら、前後移動時鉄筋センサ114aが第二鉄筋120bを検知しているか否か判断し(S03)、検知していない場合には、前後走行モータ112aを駆動制御して前後走行ユニット111aにより前進し(S04)、第二鉄筋120bを検知するまでループして待機し(S05)、検知したら前後走行モータ112aを停止制御して前移動を停止する(S06)。また、S03において第二鉄筋120bを検知している場合には、前後移動時鉄筋センサ114aの位置に基づく自走式作業ロボット110の前後位置が第一鉄筋120aに一致しているため、前移動することなく停止している(S06)。
【0053】
次に、左右移動時鉄筋センサ114bが第一鉄筋120aを検知しているか否か判断し(S07)、検知していない場合には、左右走行モータ112bを駆動制御して左右走行ユニット111bにより右に移動し(S08)、第一鉄筋120aを検知するまでループして待機し(S09)、検知したら左右走行モータ112bを停止制御して右移動を停止する(S10)。また、S07において第一鉄筋120aを検知している場合には、左右移動時鉄筋センサ114aの位置に基づく自走式作業ロボット110の左右位置が第二鉄筋120bに一致しているため、左後移動することなく停止している(S06)。
【0054】
以上の動作により、自走式作業ロボット110の位置が、第一鉄筋120aと第二鉄筋120bとの格子点であるA点に一致するため、この段階で初期位置原点設定として、現在位置メモリ115aを書換制御して、現在位置情報として記憶される現在位置座標(X,Y)を(0,0)に更新する。
【0055】
続いて、鉄筋配置間隔入力待ち(S12)において、入力部113から鉄筋間隔Px、Py(例えば、それぞれ0.4メートル)が入力されるまでループして待機し(S13)、入力があったら鉄筋間隔メモリ115cを記憶制御して鉄筋間隔Px、Pyを記憶させてS14に進む。
【0056】
なお、S10からS14までのプロセスにおいては自走式作業ロボット110が停止しているので、自走式作業ロボット110が荷物運搬作業を行う場合には、この間に作業者が荷上げ作業を行う。
【0057】
<目標位置設定>
次に、入力部113からも目標相対位置(Xe,Ye)が入力されるまでループして待機し(S15)、入力があったら記憶部115を記憶制御して記憶させてS16に進む。なお、Xeは、A点からB点までの左右方向の相対距離(メートル)であり、Yeは、A点からB点までの前後方向の相対距離(メートル)である。
【0058】
S16では、目標位置メモリ115bに記憶されている目標相対位置(Xe,Ye)と鉄筋間隔メモリ115cに記憶されている鉄筋間隔Px、Pyとを読み出して目標位置情報として記憶される移動数(Xc,Yc)を演算し、移動数メモリ115dに記憶させる。ここで、左右移動数Xc及び前後移動数Ycは、Xc=Xe/Px,Yc=Ye/Pyの計算式により求めることができる。本実施例で、A点を出発地B点点を目標地点として走行する場合には、(Xe,Ye)=(-1.2,3.2)、(Xc,Yc)=(-3,8)となる。
【0059】
<目標位置への走行>
<左右移動>
S17ではXcの値に基づいて左右移動の要否を判断する。ここで、Xc≠0の場合、すなわち、左右移動がある場合には、現在位置メモリ115aを書換制御して、現在位置座標(X,Y)について、改めてX=0に更新する。
【0060】
次にXcの値の正負の符号により左右の移動の向きを判断する(S19)。ここでXc>0の場合、すなわち目標相対位置が現在位置よりも右にある場合には、左右走行モータ112bを駆動制御して左右走行ユニット111bにより第一鉄筋120aを検知するまで右移動し(S20)、左右移動時鉄筋センサ114bが第一鉄筋120aを検知するたびに(S21)、現在位置メモリ115aを書換制御して、現在位置座標(X,Y)のうちXの値を1(所定値)だけ大きい値に更新する(S22)。
【0061】
次に、移動数メモリ115dに記憶されているXcと現在位置メモリ115aに記憶されているXとを比較して(S23)、X=Xcとなるまで右移動を継続し、X=Xcとなったら左右移動を停止する(S28)。
【0062】
なお、S19において、Xc<0の場合、すなわち目標相対位置が現在位置よりも左にある場合には、移動方向が左移動となり、第一鉄筋120aを検知するたびにXの値を1(所定値)だけ小さい値に更新する以外は、右移動の場合と同じ動作を行う(S24~S28)。
【0063】
また、S17で、Xc=0の場合、すなわち、左右移動がない場合には、左右移動のプロセスを経ずに左右移動を停止する(S28)。
【0064】
<前後移動>
次に、Ycの値に基づいて前後移動の要否を判断する(S29)。ここでYc>0の場合、すなわち目標相対位置が現在位置よりも前にある場合には、前後走行モータ112aを駆動制御して前後走行ユニット111aにより第二鉄筋120bを検知するまで前進移動し(S32)、前後移動時鉄筋センサ114aが第二鉄筋120bを検知するたびに(S33)、現在位置メモリ115aを書換制御して、現在位置座標(X,Y)のうちYの値を1(所定値)だけ大きい値に更新する(S34)。
【0065】
次に、移動数メモリ115dに記憶されているYcと現在位置メモリ115aに記憶されているYとを比較して(S35)、Y=Ycとなるまで前進移動を継続し、Y=Ycとなったら前後移動を停止する(S40)。
【0066】
なお、S31において、Yc<0の場合、すなわち目標相対位置が現在位置よりも後ろにある場合には、移動方向が後進移動となり、第二鉄筋120bを検知するたびYの値を1(所定値)だけ小さい値に更新する以外は、前進移動の場合と同じ動作を行う(S36~S40)。
【0067】
また、S29で、Yc=0の場合、すなわち、前後移動がない場合には、前後移動のプロセスを経ずに前後移動を停止する(S40)。
【0068】
以上で、A点を出発位置として目標位置であるB点までの移動が完了したこととなるので、この段階で改めて現在位置原点設定として、現在位置メモリ115aを書換制御して、記録内容である現在位置座標(X,Y)を(0,0)に更新して、S14に戻る。
【0069】
なお、S40からS14までのプロセスにおいては自走式作業ロボット110が停止しているので、自走式作業ロボット110が荷物運搬作業を行っていた場合には、この間に作業者が荷下し作業を行う。
【0070】
<現在位置原点設定>
以上の動作により、自走式作業ロボット110の位置が、第一鉄筋120aと第二鉄筋120bとの格子点であるB点と一致して停止しており、現在位置座標(X,Y)が(0,0)となっている。本実施例で、B点を新たな出発点とし、C点を新たな目標位置として移動する際には、(Xe,Ye)=(2,-3.6)、(Xc,Yc)=(5,-9)と再設定されることとなる。