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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061514
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20240425BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240425BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20240425BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H01L33/50
C09K11/08 J
C09K11/80
C09K11/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169505
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】梅津 陽介
【テーマコード(参考)】
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
4H001CA05
4H001XA07
4H001XA08
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA20
4H001XA38
4H001XA39
4H001YA58
4H001YA63
5F142AA02
5F142BA02
5F142BA32
5F142CD01
5F142CE03
5F142CG43
5F142DA02
5F142DA12
5F142DA22
5F142DA43
5F142DA45
5F142DA54
5F142DA56
5F142DA73
5F142FA28
5F142HA01
(57)【要約】
【課題】
明るさを飛躍的に向上させた平均演色評価数Raが80以下の白色の発光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
青色LEDと、第一の蛍光体と第二の蛍光体の2種類からなる蛍光体を含み、平均演色評価数Raが80以下の白色光を発光する発光装置であって、前記第一の蛍光体は、前記青色LEDの光により励起されて緑から黄色の光を発光し、Yサイトに対するCeの濃度が0.25%~1.75%の範囲にあるYAG系蛍光体である発光装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色LEDと、第一の蛍光体と第二の蛍光体の2種類からなる蛍光体を含み、平均演色評価数Raが80以下の白色光を発光する発光装置であって、
前記第一の蛍光体は、前記青色LEDの光により励起されて緑から黄色の光を発光し、Yサイトに対するCeの濃度が0.25%~1.75%の範囲にあるYAG系蛍光体であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第一の蛍光体は、色度xが0.415~0.455の範囲にある光を発光するものであることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第一の蛍光体は、Yサイトに対するCeの濃度が0.80%~1.20%の範囲ものであることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第二の蛍光体は、前記青色LEDの光により励起されて、前記第一の蛍光体の発光ピーク波長よりも大きく625nm以下の発光ピーク波長を有する光を発光するものであることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第二の蛍光体は、発光ピークの半値幅が80nm以下であり、発光ピーク波長が615nm以下のSCASN系蛍光体であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光装置は発光する白色光の色温度が5000~6500Kのものであり、前記発光装置に含まれる前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体の総量に対する前記第二の蛍光体の量が12質量%以下のものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色を発光する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
白色の発光装置として、蛍光灯から白色LEDへの置き換えが進んでいる。白色LEDが開発された当初は、青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた方式が主流だったが、赤色成分が不足していることから疑似白色と揶揄された。しかし、窒化物の赤色蛍光体が開発されるとこの問題は解決され、白色LEDの普及が加速した。この青色LEDと黄色蛍光体と赤色蛍光体を組み合わせた方式は、平均演色評価数Raが80を超えるものが多かった。
【0003】
その後、発光素子や蛍光体の発光効率改善が進むが、白色LEDの発光効率改善は飽和してきている。そうすると、蛍光体の組合せで白色LEDの発光効率を上げる技術が求められている。白色LEDが普及する前から、照明の設置場所によって必要な平均演色評価数が提案されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】JIS Z 9110:2010 照明基準総則
【非特許文献2】「質の高いあかりを提供する超高演色LED SEP1A・SEP2Aシリーズ」、インターネット<URL: https://www.semicon.sanken-ele.co.jp/guide/high_color_rendering_led.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カーボンニュートラルやSDGsの観点からも、設置場所によって演色性を変えることは必要である。普及した白色LEDは平均演色評価数Raが80以上であったが、Raが90以上の高演色の開発が進むなか(例えば、非特許文献2)、Raが80以下の発光装置の開発も必要である。
【0006】
本発明は、平均演色評価数Raが80以下の白色LEDの明るさを改善することを課題とするものである。白色LEDが開発された当初は、青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた白色LEDの平均演色評価数Raが80以下の疑似白色であった。また、その後開発された平均演色評価数Raが80以上の白色LEDは、青色LEDと黄色蛍光体と赤色蛍光体を組み合わせた白色LEDであり、疑似白色に対して演色性は高いが暗いという、明るさと演色性のトレードオフの関係がある。
【0007】
本発明は、明るさを飛躍的に向上させた平均演色評価数Raが80以下の白色の発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、青色LEDと、第一の蛍光体と第二の蛍光体の2種類からなる蛍光体を含み、平均演色評価数Raが80以下の白色光を発光する発光装置であって、前記第一の蛍光体は、前記青色LEDの光により励起されて緑から黄色の光を発光し、Yサイトに対するCeの濃度が0.25%~1.75%の範囲にあるYAG系蛍光体である発光装置を提供する。
【0009】
このような発光装置によれば、従来の青色LEDと黄色蛍光体の組合せで構成される白色の発光装置に対して、明るさを飛躍的に向上させた白色の発光装置となる。
【0010】
このとき、前記第一の蛍光体は、色度xが0.415~0.455の範囲にある光を発光するものとすることができる。
【0011】
これにより、明るさをより向上させたものとなる。
【0012】
このとき、前記第一の蛍光体は、Yサイトに対するCeの濃度が0.80%~1.20%の範囲ものとすることができる。
【0013】
このようなCeの濃度とすることで前記第一の蛍光体の発光を短波長側にシフトさせることができ、白色発光装置の視感度をより高めることが可能となる。
【0014】
このとき、前記第二の蛍光体は、前記青色LEDの光により励起されて、前記第一の蛍光体の発光ピーク波長よりも大きく625nm以下の発光ピーク波長を有する光を発光するものとすることができる。
【0015】
これにより、第二の蛍光体として長波長の視感度の低い部分(深い赤色発光)を減らした蛍光体を用いることで、明るさがより向上された発光装置となる。
【0016】
このとき、前記第二の蛍光体は、発光ピークの半値幅が80nm以下であり、発光ピーク波長が615nm以下のSCASN系蛍光体とすることができる。
【0017】
このように、第二の蛍光体として長波長の視感度の低い部分(深い赤色発光)を減らしたSCASN系蛍光体を用いることで、明るさがさらに向上された発光装置となる。
【0018】
このとき、前記発光装置は発光する白色光の色温度が5000~6500Kのものであり、前記発光装置に含まれる前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体の総量に対する前記第二の蛍光体の量が12質量%以下のものとすることができる。
【0019】
これにより、視感度をより高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の発光装置によれば、従来の青色LEDと黄色蛍光体の組合せで構成される白色の発光装置に対して、明るさを飛躍的に向上させた白色の発光装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る発光装置の一例を示す。
図2】比較例1~6における白色LEDの平均演色評価数Raと光度の関係を示す。
図3】第一の蛍光体のCeの濃度と白色LEDの明るさ(光度)の関係を示す。
図4】第一の蛍光体の色度xと白色LEDの明るさ(光度)の関係を示す。
図5】比較例1と実施例6について白色LEDの発光波長と発光強度の関係を示す。
図6】6000Kの白色LEDにおける第一の蛍光体の色度xと明るさ(光度)の関係を示す。
図7】5000Kの白色LEDにおける第一の蛍光体の色度xと明るさ(光度)の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
上述のように、明るさを飛躍的に向上させた平均演色評価数Raが80以下の白色の発光装置が求められていた。
【0024】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、青色LEDと、第一の蛍光体と第二の蛍光体の2種類からなる蛍光体を含み、平均演色評価数Raが80以下の白色光を発光する発光装置であって、前記第一の蛍光体は、前記青色LEDの光により励起されて緑から黄色の光を発光し、Yサイトに対するCeの濃度が0.25%~1.75%の範囲にあるYAG系蛍光体である発光装置により、従来の青色LEDと黄色蛍光体の組合せで構成される白色の発光装置に対して、明るさを飛躍的に向上させた白色の発光装置となることを見出し、本発明を完成した。
【0025】
以下、図面を参照して説明する。
【0026】
[発光装置]
図1に、本発明に係る発光装置100の一例を示す。本発明に係る発光装置100は、例えば、基板40上に配置された青色LED10と、青色LED10からの光の一部を吸収して青色LED10の発光波長とは異なる波長の光に変換する蛍光体1とを含むものである。蛍光体1は、第一の蛍光体1a、第二の蛍光体1bの2種類の蛍光体からなる。本発明に係る発光装置100は、平均演色評価数Raが80以下の白色光を発光する発光装置である。また、第一の蛍光体1aは、青色LED10の光により励起されて緑から黄色の光を発光し、Yサイトに対するCeの濃度が0.25%~1.75%の範囲にあるYAG系蛍光体である。
【0027】
第一の蛍光体1a、第二の蛍光体1bは、青色LED10を被覆する樹脂やガラスなどからなる封止体としても機能する蛍光体層20の中に分散させられ、パッケージ30に収納されていてもよい。蛍光体層20の中には樹脂のほか、例えば、フィラー2や、蛍光体1等の分散性を高めるための添加物などを、適宜添加することができる。また、パッケージ30と基板40とは一体成型されていても良い。
【0028】
以下、さらに詳細に説明する。
【0029】
(青色LED)
本発明に係る青色LED10は特に限定されないが、発光ピーク波長が380~480nmの範囲、より好ましくは440~470nmの範囲にあるものを使用することができる。このような青色LEDは、高品質で低コストのものが比較的容易に入手が可能なものである。
【0030】
(第一の蛍光体)
本発明に係る第一の蛍光体は、青色LEDの光により励起されて緑から黄色の光を発光するYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体であり、Yサイトに対するCeの濃度が0.25%~1.75%の範囲にあるYAG系蛍光体である。
【0031】
なお、一般的にYAG系蛍光体の組成式は、Y(Al,Ga)12:Ceなどのように記載されるが、本明細書においてYサイトに対するCeの濃度が1%のYAG蛍光体は、(Y0.99Ce0.01(Al、Ga)12のように記載することもある。
【0032】
一般的に、YAG系蛍光体Y(Al,Ga)12:CeはYサイトに対するCeの濃度で発光色を変えることが出来る。Ceの濃度を上げると発光色は長波長にシフトするが、Ceの濃度を上げ過ぎると発光強度が低下する(濃度消光)。また、Alの一部をGaで置換することで短波長に発光をシフトさせることもできる。
【0033】
本発明に係るYサイトに対するCeの濃度が1%のYAGは、原材料に酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化アルミニウムと反応促進剤としてフッ化アンモニウムを加え、乳鉢等で良く混合し、SSA-Sグレードのアルミナるつぼに充填し、横型環状雰囲気炉にて焼成することで得られる。
【0034】
焼成温度は1500℃~1600℃が好ましく、還元ガスとして水素・窒素の混合ガス(H:N=4%:96%)を流し、複数回焼成することで明るい蛍光体が得られる。
【0035】
なお、後述の実施例、比較例において得られた蛍光体は、日本分光(株)製の分光光度計FP-6500にて光学特性評価を行った。キセノンランプで分光された450nm光を励起光源とした。色度x、yについては、励起光を除去するために461~780nmの範囲で色度演算を行った。
【0036】
第一の蛍光体としては、色度xが0.415~0.455の範囲にある光を発光するものを用いることが好ましい。このような第一の蛍光体を用いると、明るさがより向上したものとなる。
【0037】
また、第一の蛍光体としては、Yサイトに対するCeの濃度が0.80%~1.20%の範囲ものを用いることが好ましい。このような第一の蛍光体を用いると、白色発光装置の視感度をより高めることが可能となる。
【0038】
(第二の蛍光体)
本発明に係る発光装置における第二の蛍光体は特に限定されないが、青色LEDの光により励起されて、第一の蛍光体の発光ピーク波長よりも大きく625nm以下の発光ピーク波長を有する光を発光するものであることが好ましい。第二の蛍光体としてこのような長波長の視感度の低い部分(深い赤色発光)を減らした蛍光体を用いることで、明るさがより向上された発光装置となる。
【0039】
また第二の蛍光体は、発光ピークの半値幅が80nm以下であり、発光ピーク波長が615nm以下のSCASN系蛍光体であることが好ましい。SCASN系蛍光体とは、(Sr,Ca)AlSiN:Euなどと表記される蛍光体である。第二の蛍光体として、このような長波長の視感度の低い部分(深い赤色発光)を減らしたSCASN系蛍光体を用いることで、明るさがさらに向上された発光装置となる。
【0040】
また、本発明に係る発光装置は、発光する白色光の色温度が5000~6500Kのものであり、発光装置に含まれる第一の蛍光体及び第二の蛍光体の総量に対する第二の蛍光体の量が12質量%以下のものであることが好ましい。第一の蛍光体及び第二の蛍光体の比率がこのような範囲のものであれば、視感度の悪い赤色成分の割合を低くできるため、視感度をより高めることができる。
【実施例0041】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0042】
発光装置として、3528サイズ(3.5mm×2.8mm)のバスタブ型のSMD(Surface Mount Device)に、発光ピーク波長447nmの青色LEDを実装したものを用意した。第一及び第二の蛍光体をシリコーン樹脂に混錬し、所定量を塗布し、その光学特性を評価した。なお、青色LEDは個々の出力差があるため、電流65mA時の光出力が25mW/srとなるように光度を補正した。第一及び第二の蛍光体として様々な物性を有するものを準備し、これらを組み合わせて評価を行う発光装置とし、評価を行った。
【0043】
実施例と比較例で使用した第一の蛍光体を、表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例と比較例で使用した第二の蛍光体を、表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表1、2に記す第一及び第二の蛍光体を青色LEDと組み合わせて、5700Kの白色光の発光装置で評価した比較例の結果を、表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
比較例1は、白色LEDが開発された当初の疑似白色のLEDである。比較例2は、赤色蛍光体が開発されて普及した平均演色評価数Raが80以上の白色LEDである。比較例2~6は、赤色蛍光体(第二の蛍光体)の発光ピーク波長を変えた白色LEDである。
【0050】
比較例1~6について、平均演色評価数Raと光度の関係を図2に示す。表3並びに図2に示すように、赤色蛍光体を短波長にすると明るさは向上するが、平均演色評価数Raは低下する(トレードオフの関係)。そこで、白色LEDの明るさを向上させるため、赤色蛍光体は発光ピークの半値幅が80nm以下と狭く、発光ピーク波長が615nm以下のSCASN系蛍光体であることが好ましい。また、第二の蛍光体を含んでおり、白色LEDに含まれる第一の蛍光体及び第二の蛍光体の総量に対する第二の蛍光体の量(第二の蛍光体の蛍光体比率)が12質量%以下であることが好ましいことがわかる。
【0051】
次に、第二の蛍光体の発光ピーク波長を609nmに固定して、第一の蛍光体を変えた評価結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
第一の蛍光体としてYAGを用いた例(表4の実施例3~12と比較例1)について、横軸に第一の蛍光体のCeの濃度を、縦軸に明るさ(光度)をプロットしたのが図3である。Ceの濃度は0.25~1.75%の間で、比較例1の疑似白色よりも明るくなることがわかる。また、Ceの濃度が0.80%~1.20%で、さらに白色LEDの光度が大きくなることがわかる。
【0054】
次に、表4の比較例1,8,9、実施例1~12について、横軸に第一の蛍光体の色度xを、縦軸に明るさ(光度)をプロットしたのが図4である。比較例1の疑似白色に対して、第一の蛍光体の色度xが0.415~0.455で白色LEDは明るくなる。特に、0.430~0.445が良いことがわかる。
【0055】
また、表4の蛍光体比率(発光装置に含まれる第一の蛍光体及び第二の蛍光体の総量に対する第二の蛍光体の量。以下、第二の蛍光体の比率ともいう)に示されるように、第二の蛍光体の比率が13%以上である比較例に対し、第二の蛍光体の比率が12%以下である実施例において高い光度の白色LEDが得られることがわかる。
【0056】
図5には、比較例1と実施例6について、白色LEDの発光波長と発光強度の関係を示す。図5に示すように、実施例6は比較例1に対して波長630~730nmの視感度の悪い赤色領域の発光強度が低くなっていることがわかる。青色LEDと第一の蛍光体のCeの濃度が2%のYAGの組合せ(疑似白色;比較例1)に対して、発光ピーク波長が短波長のYAG蛍光体と発光ピーク波長が短波長のSCASN蛍光体を組み合わせることで、白色LEDの発光スペクトルの特に視感度の悪い赤色領域の発光を削減されたことがわかる。
【0057】
以上のとおり、本発明の実施例によれば、青色LEDとYサイトに対するCeの濃度が2%のYAGの組合せである従来のものに対して、短波長のYAG蛍光体と短波長のSCASN蛍光体を組み合わせることで、白色LEDの発光スペクトルの特に視感度の悪い赤色領域の発光を削減することがわかる。また、光度が高く(明るい)、平均演色評価数Raが80以下の白色の発光装置を得ることができた。
【0058】
次に6500Kの白色LEDで評価した結果を、表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
表5の比較例10、11、実施例13~24について、横軸に第一の蛍光体の色度xを、縦軸に明るさ(光度)をプロットしたのが図6である。図6の6500Kの白色LEDにおいて、第一の蛍光体の色度xが0.425~0.440で特に明るくなることが分かる。
【0061】
次に5000Kの白色LEDで評価した比較例の結果を、表6に示す。
【0062】
【表6】
【0063】
表6の比較例12、実施例25~36について、横軸に第一の蛍光体の色度xを、縦軸に白色LEDの明るさ(光度)をプロットしたのが図7である。図7の5000Kの白色LEDにおいて、第一の蛍光体の色度xが0.430~0.450で特に明るくなることが分かる。
【0064】
以上から、白色LEDの色温度が5000~6500Kのとき、第一の蛍光体の色度xが0.430~0.445で特に明るくなることが分かる。
【0065】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:青色LEDと、第一の蛍光体と第二の蛍光体の2種類からなる蛍光体を含み、平均演色評価数Raが80以下の白色光を発光する発光装置であって、前記第一の蛍光体は、前記青色LEDの光により励起されて緑から黄色の光を発光し、Yサイトに対するCeの濃度が0.25%~1.75%の範囲にあるYAG系蛍光体である発光装置。
[2]:前記第一の蛍光体は、色度xが0.415~0.455の範囲にある光を発光するものである上記[1]の発光装置。
[3]:前記第一の蛍光体は、Yサイトに対するCeの濃度が0.80%~1.20%の範囲ものである上記[1]又は上記[2]のの発光装置。
[4]:前記第二の蛍光体は、前記青色LEDの光により励起されて、前記第一の蛍光体の発光ピーク波長よりも大きく625nm以下の発光ピーク波長を有する光を発光するものである上記[1]、上記[2]又は上記[3]のの発光装置。
[5]:前記第二の蛍光体は、発光ピークの半値幅が80nm以下であり、発光ピーク波長が615nm以下のSCASN系蛍光体である上記[1]、上記[2]、上記[3]又は上記[4]の発光装置。
[6]:前記発光装置は発光する白色光の色温度が5000~6500Kのものであり、前記発光装置に含まれる前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体の総量に対する前記第二の蛍光体の量が12質量%以下のものである上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]又は上記[5]の発光装置。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0067】
1…蛍光体、 1a…第一の蛍光体、 1b…第二の蛍光体、 2…フィラー、
10…青色LED、 20…蛍光体層、 30…パッケージ、 40…基板、
100…発光装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7