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特開2024-6152アッパーマウント及びこのアッパーマウントの組立方法
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  • 特開-アッパーマウント及びこのアッパーマウントの組立方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006152
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】アッパーマウント及びこのアッパーマウントの組立方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20240110BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20240110BHJP
   B23K 11/14 20060101ALI20240110BHJP
   B60G 15/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F16F15/08 E
F16F9/54
B23K11/14
B60G15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106777
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】國本 明徳
【テーマコード(参考)】
3D301
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA72
3D301AA75
3D301AA76
3D301CA09
3D301DA33
3D301DA51
3D301DB02
3D301DB11
3D301DB17
3J048AA01
3J048BA06
3J048DA03
3J048EA16
3J069AA69
3J069CC02
3J069DD48
(57)【要約】
【課題】作動中における下側金具の円筒部のカシメ部と防振部材との干渉を回避して、防振部材の亀裂などの発生を抑制可能なアッパーマウントを提供する。
【解決手段】ショックアブソーバ1の上端部に配置されて、車体側に固定される上側金具7及び下側金具8を有するアウタ部材3と、アウタ部材の内部に収容配置されて、ショックアブソーバのピストンロッド2の上端部2aに固定されたインナ部材5と、アウタ部材とインナ部材の間に介装されたゴム材からなる防振部材6と、アウタ部材の下側金具に貫通形成されて、ピストンロッドの上端部が挿入されるロッド挿入孔9と、ロッド挿入孔の孔縁にカシメ固定される円筒状の保持金具10と、を備え、ロッド挿入孔の孔縁に、下方に延出されたカシメ用の円筒部11を設けると共に、保持金具の上端部に有する貫通孔10cの孔縁部10eを、前記円筒部11の下方から嵌装した状態で該円筒部をカシメ固定した。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバの上端部に配置されて、車体側に固定される上側金具及び該上側金具の下部に配置された下側金具を有するアウタ部材と、
前記アウタ部材の内部に収容配置されて、前記ショックアブソーバのピストンロッドの上端部に固定されたインナ部材と、
前記アウタ部材とインナ部材の間に介装されたゴム材からなる防振部材と、
前記アウタ部材の下側金具に貫通形成されて、前記ピストンロッドの上端部が挿入されるロッド挿入孔と、
前記ロッド挿入孔の孔縁にカシメ固定される円筒状の保持金具と、
を備え、
前記ロッド挿入孔の孔縁に、下方に延出されたカシメ用の円筒部を設けると共に、前記保持金具の上端部に有する固定用孔の孔縁部を、前記円筒部の下方から嵌装した状態で該円筒部によってカシメ固定したことを特徴とするアッパーマウント。
【請求項2】
請求項1に記載のアッパーマウントであって、
前記上側金具は、カップ状の本体と、該本体の下端部外周に一体に設けられた板状の固定部とを有する一方、前記下側金具は、平板状に形成されて中央に前記ロッド挿入孔が貫通形成されており、
前記上側金具の固定部と下側金具を溶接によって連結固定し、前記溶接位置を、前記保持金具の最大径の外周面の軸方向の延長線上の位置か、あるいは前記延長線上よりも内側の位置に設定したことを特徴とするアッパーマウント。
【請求項3】
請求項2に記載のアッパーマウントであって、
前記上側金具と下側金具との溶接は、プロジェクション溶接であることを特徴とするアッパーマウント。
【請求項4】
ショックアブソーバの上端部に配置されて、車体側に固定される上側金具及び該上側金具の下部に配置された下側金具を有するアウタ部材と、
前記アウタ部材の内部に収容配置されて、前記ショックアブソーバのピストンロッドの上端部に固定されたインナ部材と、
前記アウタ部材とインナ部材の間に介装されたゴム材からなる防振部材と、
前記下側金具の下部に配置されて、上端部に前記ピストンロッドの上端部が挿通される固定用孔を有する円筒状の保持金具と、
前記下側金具に貫通形成されて、前記ピストンロッドの上端部が挿入されるロッド挿入孔と、
前記ロッド挿入孔の孔縁に一体に設けられて、下方に延出したカシメ用の円筒部と、
を備えたアッパーマウントの組立方法であって、
前記上側金具と下側金具を、該両者の所定位置で予め溶接固定し、
その後、前記下側金具の円筒部の外周に前記保持金具の固定用孔を下方から嵌装した状態で、前記円筒部をカシメ加工して前記下側金具の下部に前記保持金具を固定したことを特徴とするアッパーマウントの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のストラット式サスペンションのアッパーマウント及びこのアッパーマウントの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両のストラット式サスペンションのアッパーマウントとしては以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
図1は本発明及び従来技術が適用されるアッパーマウントの平面図、図6は従来のアッパーマウントを示す図1のB-B線断面図、図7は従来のアッパーマウントの組立手順を示し、保持金具が下側金具に予めカシメ固定されている状態を示す図1のB-B線断面図である。
【0004】
この従来のアッパーマウントは、図1及び図6に示すように、ショックアブソーバ1のピストンロッド2の上端部2aに配置されたアウタ部材3と、このアウタ部材3の内部に収容配置されて、前記ピストンロッド2の上端部2aにナット4によって固定されたインナ部材5と、アウタ部材3とインナ部材5との間に介装されたゴム材からなる防振部材6と、を有している。
【0005】
アウタ部材3は、上側金具7及び該上側金具7の下部に重合状態に配置された下側金具8を有している。上側金具7は、カップ状の本体7aと、該本体7aの下端外周に一体に設けられた菱形のフランジ状の固定部7bと、を有している。
【0006】
下側金具8は、平面視菱形の平板状に形成されて、中央にピストンロッド2の上端部2aが挿入されるロッド挿入孔9が貫通形成されている。
【0007】
この下側金具8の下部には、図外のコイルスプリングの上端部を保持する保持金具10が配置されている。この保持金具10は、薄肉な金属板によって上端部10aから下端部10bにかけて段差径状に拡がった円筒状に形成され、上端部10aにはピストンロッド2の上端部2aが貫通する貫通孔10cが形成されている。
【0008】
インナ部材5は、金属材によって縦断面ほぼT字形状に形成されて、筒状部5aと、該筒状部5aの上端部外周に一体に設けられた円盤状のフランジ部5bと、を有し、内部軸方向にピストンロッド2の上端部2aが挿入される挿入孔5cが貫通形成されている。
【0009】
防振部材6は、ほぼ円筒状に形成されて、内周部がインナ部材5のフランジ部5bに加硫接着されていると共に、外周部が上側金具7の本体7aの内周面に対してはめ込みにより保持されている。また、防振部材6は、下端部6aが下側金具8の上面に当接配置されている。
【0010】
そして、前記保持金具10は、図6及び図7に示すように、上端部10aが下側金具8のロッド挿入孔9の孔縁部にカシメ加工によって連結固定されている。すなわち、図7に示すように、保持金具10の円筒状の上端部10aを、下側金具8のロッド挿入孔9の下方から上方へ挿入した後に、前記上端部10aをロッド挿入孔9の孔縁に沿って外方へ折り曲げてカシメ加工することにより、保持金具10を下側金具8に連結固定するようになっている。
【0011】
その後、図6に示すように、下側金具8の上面に、予め前記インナ部材5と防振部材6が内部に収容固定された上側金具7を載置すると共に、上側金具7の固定部7bの本体7aから径方向外側へ離れた所定位置に、例えばプロジェクション溶接法によって複数の箇所Xを溶接して下側金具8を連結固定するようになっている。なお、プロジェクション溶接を行う際には、図7に示すように、下側金具8の溶接個所に予めエンボス部8bが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009-210062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記従来のアッパーマウントにあっては、保持金具10を下側金具8のロッド挿入孔9の孔縁に連結固定するには、前述のように、保持金具10の上端部10aを、下側金具8のロッド挿入孔9に下方から挿入して径方向外側へ折り曲げてカシメ固定するようになっている。このため、上側金具7を下側金具8に載置して溶接固定すると、保持金具10の上端部10aの先端部10dが防振部材6の下端部6aに当接した状態になる。
【0014】
このため、車両の振動に伴いショックアブソーバ1が作動して、防振部材6が撓み変形すると、該防振部材6の下端部6aが保持金具10の上端部10aの先端部10dに干渉して、長期的には防振部材6の下端部6aの干渉部分から亀裂などが発生するおそれがある。この結果、防振部材6の変形特性が変化しやすくなると共に、アッパーマウントの耐久性が低下する。
【0015】
本発明は、前記従来のアッパーマウントの技術的課題に鑑みて案出されたもので、作動中における下側金具のカシメ部と防振部材との干渉を回避して、防振部材の亀裂などの発生を抑制し得るアッパーマウントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願請求項1に係る発明は、ショックアブソーバの上端部に配置されて、車体側に固定される上側金具及び該上側金具の下部に配置された下側金具を有するアウタ部材と、
前記アウタ部材の内部に収容配置されて、前記ショックアブソーバのピストンロッドの上端部に固定されたインナ部材と、
前記アウタ部材とインナ部材の間に介装されたゴム材からなる防振部材と、
前記アウタ部材の下側金具に貫通形成されて、前記ピストンロッドの上端部が挿入されるロッド挿入孔と、
前記ロッド挿入孔の孔縁にカシメ固定される円筒状の保持金具と、
を備え、
前記ロッド挿入孔の孔縁に、下方に延出されたカシメ用の円筒部を設けると共に、前記保持金具の上端部に有する固定用孔の孔縁部を、前記円筒部の下方から嵌装した状態で該円筒部によってカシメ固定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作動中における下側金具のカシメ部と防振部材との干渉を回避して、防振部材の亀裂などの発生を抑制することができ、この結果、アッパーマウントの耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明及び従来技術が適用されるアッパーマウントの平面図である。
図2】本発明の実施形態に係るアッパーマウントを示す図1のA-A線断面図である。
図3】本実施形態に係るアッパーマウントの組立手順を示し、上側金具と下側金具及び保持金具を分解して示す図1のB-B線断面図である。
図4】本実施形態に係るアッパーマウントの組立手順を示し、連結された上側金具と下側金具の下方から保持金具を配置する状態を示す図1のB-B線断面図である。
図5】本実施形態における下側金具に保持金具がカシメ固定された状態を示すB-B線断面図である。
図6】従来のアッパーマウントを示す図1のB-B線断面図である。
図7】従来のアッパーマウントの組立手順を示し、保持金具が下側金具に予めカシメ固定されている状態を示す図1のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る車両のアッパーマウントと該アッパーマウントの組立方法を図面に基づいて説明する。
【0020】
図2は本発明の実施形態に係るアッパーマウントを示す図1のA-A線断面図、図3は本実施形態に係るアッパーマウントの組立手順を示し、上側金具と下側金具及び保持金具を分解して示す図1のB-B線断面図、図4は本実施形態に係るアッパーマウントの組立手順を示し、連結された上側金具と下側金具の下方から保持金具を配置する状態を示す図1のB-B線断面図、図5は本実施形態における下側金具に保持金具がカシメ固定された状態を示すB-B線断面図である。
【0021】
アッパーマウントは、車両のストラット式サスペンションに用いられるショックアブソーバの上端部を車体に結合させるものである。なお、本実施形態では、図2中、上側が車体の上方向、下側が車体の下方向としている。
【0022】
なお、アッパーマウントの基本構成は、図6に示した従来の技術と同じであるから共通の構成部材には共通の付番を付して説明する。
【0023】
図2に示すように、ショックアブソーバ1は、図外のシリンダと、このシリンダの上端部から上方に延びるピストンロッド2とを有し、このピストンロッド2の上端部2aが振動緩衝部材としてのアッパーマウントによって車体のサスペンションメンバー01に連結されるようになっている。
アッパーマウントは、ショックアブソーバ1のピストンロッド2の上端部2aに配置されたアウタ部材3と、このアウタ部材3の内部に収容配置されて、前記ピストンロッド2の上端部2aにナット4によって固定された鉄系金属製のインナ部材5と、アウタ部材3とインナ部材5との間に介装されたゴム材からなる防振部材6と、を有している。
【0024】
アウタ部材3は、上側金具7と、該上側金具7の下部に重合状態に配置された下側金具8とを有している。上側金具7は、鉄系金属材によって一体に形成され、カップ状の本体7aと、該本体7aの下端外周に一体に設けられた菱形のフランジ状の固定部7bと、を有している。
【0025】
この固定部7bの両端部には、車体側のサスペンションメンバー01に固定する一対の連結ボルト20,20が挿通される一対のボルト挿通孔7c、7cが貫通形成されている。
【0026】
下側金具8は、鉄系金属材によって平面視菱形の平板状に形成されて、中央にピストンロッド2の上端部2aが挿入されるロッド挿入孔9が貫通形成されていると共に、両端部には前記連結ボルト20,20が挿通される下側のボルト挿通孔8a、8aが貫通形成されている。前記上側金具7の固定部7bと下側金具8は、前記各ボルト挿通孔7c、7c、8a、8aに挿通された連結ボルト20,20とナット21,21によってサスペンションメンバー01に締結固定されている。
【0027】
また、図1及び図3図4に示すように、ロッド挿入孔9の孔縁には、カシメ用の円筒部11が下方に延出して設けられている。この円筒部11は、外周面に後述するカシメ加工時に保持金具10の上端部10aの孔縁部10eが嵌装されて下から径方向外側に折り返し状に折り曲げられてカシメ加工されるようになっている。
【0028】
また、この下側金具8の下部には、図外の弾性材であるバウンドストッパの上端部を保持する保持金具10が配置されている。前記バウンドストッパは、ショックアブソーバが過度に伸縮移動した際に、シリンダに当接してショックアブソーバの過度な伸縮移動を抑制するようになっている。
【0029】
前記保持金具10は、薄肉な金属板によって上端部10aから下端部10bにかけて段差径状に拡がった円筒状に形成され、上端部10aにはピストンロッド2の上端部2aが貫挿される固定用孔である貫通孔10cが形成されている。前記保持金具10の上端部10aは、下側金具8の下面のロッド挿入孔9の周囲に下方から当接可能なほぼ円盤状に形成されて、貫通孔10cを構成する孔縁部10eが平坦な円環状に形成されている。
【0030】
インナ部材5は、従来のものとは構造が若干相違しており、鉄系金属材によって縦断面ほぼT字形状に形成されて、軸方向に短い筒状部5aと、該筒状部5aの上端部外周に一体に設けられたフランジ部5bとを有し、内部軸方向にピストンロッド2の上端部2aが挿入される挿入孔5cが貫通形成されている。
【0031】
防振部材6は、ほぼ円筒状に形成されて、内周部がインナ部材5の筒状部5a及びフランジ部5bに加硫接着されていると共に、外周部が上側金具7の本体7aの内周面に対してはめ込み保持されている。また、防振部材6は、下端部6aが下側金具8の上面に当接配置されている。
【0032】
そして、前記上側金具7の固定部7bと下側金具8とは、プロジェクション溶接法によって溶接固定されている。この溶接位置Pは、図1にも示すように、固定部7bの本体7a外周面まわりの6箇所に設定されていると共に、保持金具10の径方向の最大外径位置、つまり、下端部10bの外径よりも内側に設定されている。
〔本実施形態に係るアッパーマウントの組立方法〕
以下、図3図5に基づいてアッパーマウントにおけるアウタ部材3の上側金具7と下側金具8及び保持金具10の組立方法について説明する。
【0033】
図3に示すように、上側金具7と下側金具8及び保持金具10が上下方向に分解された状態から、図4に示すように、まず、上側金具7と下側金具8を、上下方向から位置決めしつつ重合し、上側金具7の固定部7bと下側金具8をプロジェクション溶接法によって溶接固定する。なお、上側金具7の本体7aの内部には、インナ部材5と防振部材6が加硫接着によって収容配置されている。また、下側金具8の溶接位置Pには、プロジェクション溶接のための6つのエンボス部8bが予め形成されている。
【0034】
前記プロジェクション溶接の6つの溶接位置Pは、前述したように、固定部7bの本体7aの外周面近傍であって、保持金具10の下端部10bの最大外径位置(Y)よりも径方向内側の位置になっている。
【0035】
上側金具7と下側金具8が溶接固定された後は、図4に示すように、下側金具8の円筒部11の外周面に、保持金具10の上端部10aの孔縁部10eを矢印で示すように下方向から嵌装する。
【0036】
その後、図2及び図5に示すように、円筒部11を図外のプレス機によって孔縁部10eを包むように下方へ折り返し状に折り曲げてカシメ加工する。これにより、保持金具10は、上端部10aが下側金具8の下部にカシメ固定される。
【0037】
この一連の作業によって、アウタ部材3の上側金具7と下側金具8の連結と、該下側金具8に対する保持金具10の固定作業が完了する。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、下側金具8に保持金具10をカシメ固定する際に、下側金具8の円筒部11に保持金具10の上端部10aの孔縁部10eを下方から嵌装して円筒部11をカシメ加工することによって、保持金具10を強固に固定することが可能になる。
しかも、前記円筒部11は、防振部材6とは反対側の位置で下方から径方向外側に折り返し状に折り曲げられてカシメ加工されることから、その先端部が防振部材6の下端部6aとは全く接触することがない。これによって、ショックアブソーバ1の作動時において、円筒部11の先端部と防振部材6との干渉が回避できるので、防振部材6の下端部6aに対する亀裂や部分的な破断などの発生を抑制できる。この結果、防振部材6による防振特性の自由度が図れると共に、アッパーマウントの耐久性を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、前述したように、組立の順番として、最初に上側金具7と下側金具8を溶接によって連結固定し、その後、下側金具8の円筒部11の外周面に保持金具10の上端部10aの孔縁部10eを嵌装して前記円筒部11を下方に折り曲げてカシメ加工した。このため、上側金具7と下側金具8との溶接位置Pを、保持金具10の位置に拘束されることなく自由に選択でき、円筒部11に近い内側の位置を選択することができる。
【0040】
すなわち、前記公報記載の従来のアッパーマウントでは、まず、先に下側金具8のロッド挿入孔9の孔縁部に、保持金具10の上端部10aの先端部10dをカシメ加工して該保持金具10を下側金具8に固定する。その後、上側金具7と下側金具8を溶接によって連結固定するようになっている。
【0041】
このため、図6及び図7に示すように、上側金具7と下側金具8との溶接位置Xを、保持金具10の存在によって該保持金具10の下端部10bの外周面の位置(一点鎖線Y)よりも外側の位置に設定しなければならない。つまり、下側金具8のロッド挿入孔9から径方向外側へ十分離れた位置に溶接個所を設定しなければならない。この結果、上側金具7と下側金具8との結合強度が低下するおそれがある。
【0042】
これに対して、本実施形態では、前述した図4図5に示したように、上側金具7と下側金具8を溶接固定した後に、下側金具8の円筒部11を介して保持金具10を固定するようになっていることから、溶接位置Pを保持金具10の下端部10bの外周面の位置(一点鎖線Y)よりも内側に設定することが可能になる。これによって、上側金具7と下側金具8との結合強度を高くすることが可能になる。
【0043】
本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、保持金具の外周面の外径をさらに変更することも可能であり、また、プロジェクション溶接位置Pも任意に変更することも可能である。また、溶接法としては、プロジェクション溶接に限定されるものではなく、例えばスポット溶接などであってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…ショックアブソーバ
2…ピストンロッド
3…アウタ部材
5…インナ部材
6…防振部材
6a…下端部
7…上側金具
7a…本体
7b…固定部
8…下側金具
9…ロッド挿入孔
10…保持金具
10a…上端部
10b…下端部
10c…貫通孔(固定用孔)
10d…先端部
10e…孔縁部
11…円筒部
P…本実施形態の溶接位置
X…従来の溶接位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7