(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061532
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/02 20060101AFI20240425BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240425BHJP
B23D 49/14 20060101ALI20240425BHJP
B27B 19/09 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B25F5/02
B25F5/00 H
B23D49/14
B27B19/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169532
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】小堀 賢志
(72)【発明者】
【氏名】平井 貴大
(72)【発明者】
【氏名】上村 淳一
【テーマコード(参考)】
3C040
3C064
【Fターム(参考)】
3C040AA12
3C040DD07
3C040LL18
3C064AA06
3C064AB01
3C064AC02
3C064BA12
3C064BB52
3C064BB77
3C064CA06
3C064CA25
3C064CA27
3C064CA54
3C064CA60
3C064CA61
3C064CB06
3C064CB08
3C064CB17
3C064CB19
3C064CB27
3C064CB32
3C064CB36
3C064CB64
3C064CB73
3C064CB77
3C064CB78
3C064CB92
(57)【要約】
【課題】作業性の良い作業機の提供。
【解決手段】モータ6と、モータ6によって駆動するブレード30と、前後方向に延びるハンドル部3aと、ハンドル部3aの前側に接続されるギヤケースカバー3hと、を有する作業機1であって、ハンドル部3aを握った作業者の手の親指を前方に伸ばして置くことができる指置き部60を有する。指置き部60は、ハンドル部3aの前部上面とギヤケースカバー3hの後部上面とに跨がって設けられる。作業機1は、指置き部60の左右からそれぞれ立ち上がる左壁部61及び右壁部62を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータによって駆動する先端工具と、
第1方向に延びるハンドル、及び前記ハンドルの前記第1方向一方側に接続されて前記先端工具を保持するヘッド部を有するハウジングと、を有し、
前記第1方向と交差する方向を第2方向とし、前記第1方向と前記第2方向の双方に交差する方向を第3方向としたとき、
前記ハンドルの前記第1方向一方側において、前記ハウジングの前記第2方向一方側には、前記ハンドルを握った作業者の手の親指を置くことができる指置き部が設けられ、
前記指置き部の前記第3方向の少なくとも一方に、前記第2方向一方側へ延びる壁部が設けられる、作業機。
【請求項2】
前記ハンドルに前記モータをオンオフするためのトリガスイッチが設けられる、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記トリガスイッチは前記ハンドルの前記第2方向他方側に設けられる、請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記ヘッド部には伝達機構が収容され、前記ヘッド部の前記ハンドルよりも前記第2方向他方側には先端工具保持部が設けられる、請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記指置き部は、前記ハンドルよりも前記第2方向一方側へ出張らない、請求項1に記載の作業機。
【請求項6】
前記壁部は、ヘッド部または前記ハンドルと一体である、請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
前記壁部は、前記指置き部の前記第3方向一方側に位置する第1壁部と、前記指置き部の前記第3方向他方側に位置する第2壁部と、を含み、
前記第1及び第2壁部の前記指置き部側の面は、前記第3方向で前記ハンドルの両端部よりも内側に位置する、請求項1に記載の作業機。
【請求項8】
前記ハンドルと前記ヘッド部は所定方向に複数設けられた接続部によって相互に固定される、請求項1に記載の作業機。
【請求項9】
前記接続部は、前記第3方向に離間した2箇所に設けられた第1及び第2接続部を含み、
前記指置き部は、前記第3方向において前記第1及び第2接続部の間に位置し、
前記指置き部とその裏面の厚さ範囲は、前記第2方向において前記第1及び第2接続部の存在範囲内に位置し又は延在する、請求項8に記載の作業機。
【請求項10】
前記指置き部は、所定方向で前記第1及び第2接続部の間に位置する、請求項9に記載の作業機。
【請求項11】
前記壁部は、前記指置き部の前記第3方向一方側に位置する第1壁部と、前記指置き部の前記第3方向他方側に位置する第2壁部と、を含み、
前記第1及び第2接続部からそれぞれ前記第2方向一方側に延びる第1及び第2リブを有し、
前記第1及び第2リブが前記第1及び第2壁部に裏側に接続される、請求項9に記載の作業機。
【請求項12】
前記壁部は、前記指置き部の表面から5~25mmの範囲で突出する、請求項1に記載の作業機。
【請求項13】
前記ハンドルの前記第1方向他方側に、前記モータを収容するモータ収容部が設けられる、請求項1に記載の作業機。
【請求項14】
前記モータ収容部の前記第1方向他方側には、電池着脱部が設けられる、請求項13に記載の作業機。
【請求項15】
前記壁部、または前記指置き部は、前記ハウジングとは別体として構成される、請求項1に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、ブレードを往復動させて切断作業を行う作業機(セーバソー)を開示する。セーバソーのような作業機は、ブレードを加工材に押し付けて加工を行うものであり、また様々な姿勢で使用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セーバソーのような作業機においては、ハンドルを握った手の親指で加工材に向けて荷重をかけたほうが作業しやすい場合がある。しかし、従来の作業機では、親指で加工材に向けて荷重をかけようとすると把持が不安定になりやすく、作業性の点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、作業性の良い作業機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、作業機である。この作業機は、
モータと、
前記モータによって駆動する先端工具と、
第1方向に延びるハンドル、及び前記ハンドルの前記第1方向一方側に接続されて前記先端工具を保持するヘッド部を有するハウジングと、を有し、
前記第1方向と交差する方向を第2方向とし、前記第1方向と前記第2方向の双方に交差する方向を第3方向としたとき、
前記ハンドルの前記第1方向一方側において、前記ハウジングの前記第2方向一方側には、前記ハンドルを握った作業者の手の親指を置くことができる指置き部が設けられ、
前記指置き部の前記第3方向の少なくとも一方に、前記第2方向一方側へ延びる壁部が設けられる。
【0007】
本発明は「電動作業機」や「電動工具」、「電気機器」等と表現されてもよく、そのように表現されたものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業性の良い作業機の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る作業機1の斜視図。
【
図3】(A)は、
図2のA-A断面図。(B)は、
図3(A)のB部拡大図。(C)は、
図3(A)のC-C断面図。
【
図4】(A)は、指置き部60に親指を置かずにブレード30を加工材32に押し付けた状態の模式図であって、加工材32からブレード30への反力F1、作業者が親指で作業機1に加える下方向の押付力W、作業者が小指で作業機1に加える上方向の支持力F2の各ベクトルも併せて示した模式図。(B)は、
図4(A)の状態において押付力Wと支持力F2から反力F1を簡易的に計算するためのモデル図。(C)は、指置き部60に親指を置いてブレード30を加工材32に押し付けた状態の模式図であって、加工材32からブレード30への反力F1'、作業者が親指で作業機1に加える下方向の押付力W、作業者が小指で作業機1に加える上方向の支持力F2の各ベクトルも併せて示した模式図。(D)は、
図4(B)の状態において押付力Wと支持力F2から反力F1'を簡易的に計算するためのモデル図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態は、作業機1に関する。作業機1は、セーバソーである。作業機1は、レシプロソーとも称される。
図2及び
図3(A)により、作業機1の互いに直交する前後、上下、左右方向を定義する。
【0011】
前後方向は、第1方向の例示である。前側は、第1方向一方側の例示である。後側は、第1方向他方側の例示である。
【0012】
上下方向は、第2方向の例示である。上側は、第2方向一方側の例示である。下側は、第2方向他方側の例示である。
【0013】
左右方向は、第3方向の例示である。左右一方側は、第3方向一方側の例示である。左右他方側は、第3方向他方側の例示である。
【0014】
作業機1は、ハウジング2を有する。ハウジング2は、ハンドルハウジング3、上側ギヤケース3f、下側ギヤケース3g、ギヤケースカバー3hを有する。ハンドルハウジング3は、ハンドル(把持部)としてのハンドル部3a、モータ収容部としてのステータ収容部3b、電池着脱部3iを有する。
【0015】
ハンドルハウジング3は、左右二分割構造の例えば樹脂成形体をネジ止め等により互いに固定、一体化したものであり、右側の分割片となる右側ハウジング3Rと、左側の分割片となる左側ハウジング3Lとを有する。ハンドル部3aは、作業者が把持可能な部分であって、前後方向に延びる筒状の部分である。ステータ収容部3bは、モータ6のステータ6cを収容保持する。ハンドル部3aの後方にステータ収容部3bが位置する。ステータ収容部3bの後端には、電池パック50を着脱可能に装着する電池着脱部3iが設けられる。作業機1は、電池パック50の電力で動作する。電池パック50は上下方向にスライドさせて着脱されるように構成される。本実施の形態においては、電池パック50は上方向にスライドさせることで電池着脱部3iに装着され、下方向にスライドさせることで電池着脱部3iから取り外すことができるように構成されている。
【0016】
上側ギヤケース3f、下側ギヤケース3g、ギヤケースカバー3hは、ヘッド部を構成する。ヘッド部は、先端工具(ブレード30)を保持する出力軸27を、駆動可能に支持する部分である。上側ギヤケース3f及び下側ギヤケース3gは、例えばアルミ等の金属製であり、ハンドル部3aの前側に接続、固定される。下側ギヤケース3gは、上側ギヤケース3fの下側に接続、固定される。ギヤケースカバー3hは、例えば樹脂成形体であって上側ギヤケース3f及び下側ギヤケース3gの表面を覆う。
【0017】
作業機1は、ステータ収容部3b内に、駆動源としてのモータ6、センサ・インバータ基板7、制御基板8、及びファン9を有する。
【0018】
モータ6は、ここではインナーロータ型のブラシレスモータであり、モータ軸6a、ロータ6b、ステータ6cを有する。モータ軸6aの中心軸は前後方向と平行である。ロータ6bは、モータ軸6aの周囲に設けられ、モータ軸6aと一体に回転する。ステータ6cは、ロータ6bの径方向外側においてステータ収容部3bに保持される。
【0019】
センサ・インバータ基板7は、ロータ6bの後方においてモータ軸6aと略垂直な姿勢でモータ6に対して固定される。センサ・インバータ基板7は、モータ6に駆動電流を供給するインバータ回路やモータ6の回転位置を検出する磁気センサを搭載する。
【0020】
制御基板8は、モータ6及びセンサ・インバータ基板7の下方において、前方ほど上側に位置するように傾斜した姿勢でステータ収容部3bに保持される。制御基板8は、モータ6の駆動制御用のマイクロコントローラ等を搭載する。また、ステータ収容部3bには外面に一部が露出した制御パネル8aが設けられる。制御パネル8aは制御基板8と不図示の配線で接続されている。制御パネル8aには制御スイッチ8bと表示部8cが設けられている。作業機1は、作業者に制御スイッチ8bを押されることで、作業機1の(制御基板8による)制御状態を変更可能に構成されている。表示部8cには、現在選択されている作業機1の制御状態が表示される。表示部には、例えば設定されたモータ6の目標回転速度(速度1、速度2…)などが表示される。
【0021】
ファン9は、ロータ6bの前方においてモータ軸6aに設けられ、モータ軸6aと一体に回転する。ファン9は、遠心ファンである。ステータ収容部3bは、ファン9の側方となる位置に排気口3cを有し、センサ・インバータ基板7の側方となる位置に吸気口3dを有する。
【0022】
ファン9の発生する気流は、吸気口3dからステータ収容部3b内に入り、センサ・インバータ基板7及びモータ6を冷却しながら前方に流れ、ファン9に吸い込まれて遠心方向に流れ、排気口3cから外部に排気される。
【0023】
作業機1は、ハンドル部3aの下部に、トリガスイッチ17を有する。トリガスイッチ17は、ユーザがモータ6のオンオフ(駆動、停止)を切り替える操作部である。
【0024】
作業機1は、ハンドル部3a内に、スリーブ13及び中間軸14を有する。スリーブ13は、例えば円筒状の金属であって、モータ軸6aの前端部と中間軸14の後端部とを連結(接続)する。中間軸14の中心軸は前後方向と平行である。中間軸14の前部は軸受15(ボールベアリング)によって回転自在に支持される。
【0025】
モータ軸6aの前端部がスリーブ13に後方から圧入され、中間軸14の後端部がスリーブ13に前方から挿入される。中間軸14の後端部は側面に2つの平面を持つ二面幅の形状を成しており、またスリーブ13の前方部は内面に2つの平面が形成される。中間軸14をスリーブ13に挿入すると、二面幅によって嵌合し、一体回転可能になる。こうしてスリーブ13により、モータ軸6aの回転が中間軸14に伝達される。
【0026】
作業機1は、上側ギヤケース3f及び下側ギヤケース3gの内部に、第1ベベルギヤ21、第2ベベルギヤ22、スピンドル23、往復動変換機構25、出力軸27(出力部)を有する。第1ベベルギヤ21、第2ベベルギヤ22及びスピンドル23は、回転伝達機構を構成する。出力軸27は、プランジャとも称される。往復動変換機構25は、偏心ピン24及びコネクタ26を有する。
【0027】
第1ベベルギヤ21は、中間軸14の前端部に設けられる。第2ベベルギヤ22は、第1ベベルギヤ21と噛合する。第1ベベルギヤ21及び第2ベベルギヤ22は、前後方向を軸とする中間軸14の回転を、上下方向を軸とする回転に90度変換すると共に減速する。スピンドル23は、第2ベベルギヤ22と共に回転する。スピンドル23の中心軸は上下方向と平行である。第1ベベルギヤ21、第2ベベルギヤ22、スピンドル23は、モータ6の回転を往復動変換機構25に伝達する伝達機構を構成する。
【0028】
スピンドル23の回転は、周知のスコッチヨーク機構等の往復動変換機構25(偏心ピン24及びコネクタ26)により出力軸27の前後方向の往復動に変換される。具体的には、スピンドル23の軸を中心に回転する偏心ピン24の前後方向の動力を、前後の壁を有するコネクタ26が受け取ることで、コネクタ26が接続された出力軸27が前後に往復動する。出力軸27の中心軸は前後方向と平行である。
【0029】
出力軸27の前端部には、先端工具としてのブレード30を着脱可能に装着、保持する先端工具保持部31が設けられる。ブレード30は、前後方向及び上下方向と平行な平面内に存在する。出力軸27及びブレード30は、ハウジング3(下側ギヤケース3g)に保持され、モータ6の駆動力によりハウジング3に対して前後方向に往復動する。出力軸27の中心軸は、ハンドル部3aの上下方向の中央部よりも下側に位置する。ブレード30は先端工具保持部31に対して後方に挿入されて保持される。
【0030】
作業機1は、ハウジング3の前端下部(上側ギヤケース3fの下方)に、ベース29を着脱可能に有する。ベース29は、ガードとも称される。ベース29は、切断作業時に被加工材(被削材)に押し当てられる部材である。ベース29は前後方向に移動可能に構成されており、その位置を変更することで被加工材に接触するブレード30の位置を調整することができる。
【0031】
ハウジング3は、ハンドル部3aを握った作業者の手の親指を
図4(C)に示すように前方に伸ばして置くことができる指置き部60を有する。
【0032】
指置き部60は、ハンドル部3aの前側において、ハウジング3の上側に位置する。具体的には、指置き部60は、ハンドル部3aの前部上面とギヤケースカバー3hの後部上面とに跨がって設けられる。
【0033】
指置き部60は、上下方向と垂直な平面である。ハンドルハウジング3(右側ハウジング3Rと左側ハウジング3L)にはハンドル側平面部(指置き部60の後半分領域)が形成され、ギヤケースカバー3hにはヘッド部側平面部(指置き部60の前半分領域)が形成され、これらハンドル側平面部とヘッド部側平面部によって指置き部60が形成される。ハンドル側平面部とヘッド部側平面部はいずれも前後方向に平行な平面であり、互いに前後方向で連続するようになっている。なお、ハンドル側平面部とヘッド部側平面部は前後方向に傾斜していてもよく、すなわち指置き部60は前後方向に傾斜してもよい。ハンドル側平面部とヘッド部側平面部は滑らかに(段差が生じないように)連続している。なお、5mm程度(未満)の段差が生じるように連続してもよい。また、指置き部60は必ずしも平面である必要はない。指置き部60は、トリガスイッチ17よりも前方に位置する。換言すれば、トリガスイッチ17よりも前方に位置し、前後方向へ延びて上方向に面する部分が指置き部60である。指置き部60の前縁部(後述する前壁部63の一部)は、親指の先端形状に沿うようにU字状に湾曲している。指置き部60は、ハンドル部3aの指置き部60より後方の部分の上面よりも上側へ出張らない。
【0034】
指置き部60は、表面の少なくとも一部がエラストマ64で構成される。なお、エラストマ64が3箇所に分かれているのは、指置き部60が左側ハウジング3L、右側ハウジング3R、ギヤケースカバー3hの3部材に跨がって設けられているためである。
【0035】
ハウジング3は、左壁部61、右壁部62、前壁部63を有する。左壁部61は左側ハウジング3Lに設けられる。右壁部62は右側ハウジング3Rに設けられる。前壁部63はギヤケースカバー3h(ヘッド部)に設けられる。左壁部61は、指置き部60の左方に位置して上側へ延びる。右壁部62は、指置き部60右方に位置して上側へ延びる。前壁部63は、指置き部60の前方に位置して上側へ延びる。左壁部61及び右壁部62の指置き部60側の面は、左右方向でハンドル部3aの両端部よりも内側に位置する。別の表現をすれば、本願発明における指置き部(指置き機構)は、指を置く平面部分を前、左、右の3方向で囲う壁部を有する、とも言える。
【0036】
指置き部60を囲う壁は、前後方向に延びる壁(第1壁)と、前後方向に対して交差する方向に延びる壁(第2壁)を有する。第1壁は左右方向一方側と他方側のそれぞれに設けられる。第2壁は本実施の形態においては湾曲している。前後方向に延びる壁(第1壁)は、左壁部61と右壁部62(ハンドルハウジング2)、前壁部63(ギヤケースカバー3h)の一部によって形成される。従って、指置き部60の第1壁は、ハンドル部3aの前部とギヤケースカバー3hの後部とに跨がって設けられる。指置き部60の第2壁は、前壁部63の一部である。すなわち、指置き部60を囲う壁は前部分、左部分、右部分の三つがあるが、それらは部品として各々完全に分かれているわけではない。なお、ある部品の壁部が、指置き部を囲う壁としてどの範囲を担うかは適宜設定が可能である。例えば、ギヤケースカバー3hに設ける壁部のみで、指置き部を囲う壁部をすべて形成してもよい。左壁部61、右壁部62、前壁部63は、それぞれ指置き部60側の面が、指置き部60の縁部から、角張らないように、かつ親指の外周面形状に沿うように、湾曲して緩やかに立ち上がる。指置き部60、左壁部61、右壁部62、前壁部63は、上方及び後方に開いた指置き用の凹部を構成する。
【0037】
図3(B)に示す高さH、すなわち指置き部60の表面からの左壁部61及び右壁部62の突出長(突出量)は、本実施の形態においては15mm程度である。なお、壁部の機能としては、少なくとも5mm以上突出すればよい。また、突出長が大きすぎても作業性に支障をきたす可能性が高いため、突出量は25mmを超えないようにするのが好ましい。すなわち、本発明においては、壁部(左壁部61及び右壁部62)の突出長は5~25mmの範囲が好ましいが、操作性と小型化を考慮するならば10~20mmの範囲がより好ましい。指置き部60の表面からの前壁部63の突出長は、指置き部60の表面からの左壁部61及び右壁部62の突出長よりも短い。
【0038】
図3(C)に示すように、ハンドル部3aは、上側ギヤケース3f及び下側ギヤケース3gの接続用のねじボス部71~74を有する。ねじボス部71、72は、それぞれ第1及び第2接続部の例示である。指置き部60は、左右方向においてねじボス部71、72の間に位置する。指置き部60とその裏面との間の厚さ範囲は、上下方向においてねじボス部71、72の存在範囲内に位置し又は延在する。
【0039】
図3(C)に示すように、ハンドル部3aは、ねじボス部71、72からそれぞれ上側に延びる左リブ65及び右リブ66を有する。左リブ65及び右リブ66は、左壁部61及び右壁部62に裏側に接続される。上下方向において左リブ65、右リブ66、ねじボス部71、72の存在範囲内に指置き部60が位置する。また、指置き部60は、前後方向で見てねじボス部71~74の中心を通る円の内部に位置する(図中破線円の内部)。
【0040】
図4(A)~(D)に示すように、作業者は、指置き部60に親指を置くことで、指置き部60に親指を置かない場合と比較してブレード30を加工材32に押し付けやすくなる。
図4(C)に示すように指置き部60に親指を置いてブレード30を加工材32に押し付けた場合は、
図4(A)に示すように指置き部60に親指を置かずにブレード30を加工材32に押し付けた場合と比較して、作業者が親指で作業機1に加える下方向の押付力Wの位置が前方になり、作業者が小指で作業機1に加える上方向の支持力F2の位置から前方に離間する。このため、押付力Wの大きさが同じでも、力のモーメントの釣り合いから、
図4(C)の場合における加工材32からブレード30への反力F1'(ブレード30から加工材32への荷重)は、
図4(A)の場合における加工材32からブレード30への反力F1(ブレード30から加工材32への荷重)よりも大きくなる。
【0041】
反力F1、F1'の位置と押付力Wの位置との間の前後方向距離をL1、L1’、押付力Wの位置と支持力F2の位置との間の前後方向距離をL2、L2’、L=L1+L2=L1’+L2’とし、一例としてL=220mm、L1=140mm、L2=80mm、L1’=80mm、L2’=140mmとすると、押付力Wの大きさが同じ場合、
図4(C)に示すように指置き部60に親指を置いてブレード30を加工材32に押し付けた場合の反力F1’は、
図4(A)に示すように指置き部60に親指を置かずにブレード30を加工材32に押し付けた場合の反力F1の約1.8倍となる。
【0042】
本実施の形態は、下記の作用効果を奏する。
【0043】
(1) 作業機1は、ハンドル部3aを握った作業者の手の親指を
図4(C)に示すように前方に伸ばして置くことができる指置き部60を有する。作業者は、指置き部60に親指を置くことで、指置き部60に親指を置かない場合と比較して、ブレード30から加工材32への荷重をかけやすく、作業性が良い。また、指置き部60が無い構成で親指を前方に伸ばすと、親指を不自然な状態で置くことになり、親指で加工材に向けて荷重をかけようとすると把持が不安定になりやすい。本実施の形態では、そのような問題を好適に解決できる。また、作業機1においては、ハンドル部3aよりも後方においても様々な操作が行われる。例えば、電池パック50が電池着脱部3iに対して上下方向に着脱されるものである。このため、電池パック50の着脱時においても、指置き部60が操作性向上に寄与する。具体的には、本実施の形態においては、ハンドル部3aを持ちながら電池パック50を取り外す際、電池着脱部3iには摩擦や機械的係合の関係で下方向の力が加わる場合がある。この時、ハンドル部3aが動きの基点となるため、ヘッド部(ギヤケースカバー3h)が上方向に動こうとする。従来の構造では、このヘッド部の動きをハンドル部3aのみで抑えなければならなかったが、本実施の形態においては指置き部60によってこの動きを容易に抑えることができる。また、ステータ収容部3bには制御パネル8aが設けられ、制御スイッチ8bを下方に押圧する際にも同じようにハンドル部3aよりも後方の部分に下方への付勢力が働くが、この時のヘッド部の上方移動を指置き部60によって容易に抑えることができる。
【0044】
(2) 作業機1は、指置き部60の左右からそれぞれ立ち上がる左壁部61及び右壁部62(第1壁)を有する。このため、指置き部60に置いた指が左右方向に移動することを抑制できる。これにより、例えば指が左右に滑って操作力が低下してしまうことを抑制できる。また、左壁部61及び右壁部62(第1壁)により、左右方向への押付力が必要な場合の作業性が良い。例えば壁に沿って床材を切断するようないわゆる際切り作業では、ブレード30を左右方向にしならせながら切断作業を行うため、ブレード30を壁に向けて左右方向に押し付ける必要がある。すなわち、ハウジング2(特にヘッド部)に左右方向の力を加える必要がある。このような場合、指置き部60と左壁部61又は右壁部62に跨がるように親指を置くことで、片手での作業においても下方への荷重(加工材への荷重)と左右方向への荷重(壁への荷重)の双方を同時にかけやすく、作業性が良い。すなわち、左壁部61及び右壁部62が無いと際切り作業等の場合に片手でブレード30を壁に向けて押し付けるのが困難で作業性が悪いが、本実施の形態ではそのような問題を好適に解決できる。また、前壁部63によって作業機1の後方への移動を指で受けることができる。例えば、ブレード30の装着時や、ベース29の位置調整時などにおいて、ハウジング2の後方への移動を抑えることができ、操作性が向上する。
【0045】
(3) 指置き部60は、ハンドル部3aの指置き部60より後方の部分の上面よりも上側へ出張らないため、親指を置いた際の違和感が抑制され、作業性が良い。すなわち、指置き部60は、別の部品が前部分と後部分とを各々担っているが、それら部品の平面部同士が段差なく連続しているため、操作性が良い。
【0046】
(4) 指置き部60の表面の少なくとも一部が弾性体としてのエラストマ64で構成され、エラストマ64が滑り止めとして機能すると共に表面に柔軟性を持たせて防振効果を奏するため、指置き部60に親指を置いてブレード30を加工材32に押し付ける場合の作業性が良い。
【0047】
(5) 左リブ65及びねじボス部71と、右リブ66及びねじボス部72と、の間のスペースを利用して指置き部60、左壁部61、右壁部62を配置しているため、ハウジング3の大型化を抑制できる。
【0048】
(6) 指置き部60、左壁部61、右壁部62、前壁部63がハンドル部3a及びギヤケースカバー3hと一体のため、別体の場合と比較して製造容易である。
【0049】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、本発明は実施の形態に限定されない。実施の形態で具体的に説明した各事項には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能である。
【0050】
指置き部60は、親指の外周面形状に沿うような湾曲面としてもよい。エラストマ64は省略してもよい。指置き部60、左壁部61、右壁部62、前壁部63は、ハンドル部3a及びギヤケースカバー3hと別体であってもよい。左壁部61と右壁部62のいずれかは省略してもよい。前壁部63は省略してもよい。本発明の作業機は、マルチツール等の他の種類のものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…作業機、2…ハウジング、3…ハンドルハウジング、3a…ハンドル部(把持部)、3b…ステータ収容部、3c…排気口、3d…吸気口、3f…上側ギヤケース、3g…下側ギヤケース、3h…ギヤケースカバー、3i…電池着脱部、6…モータ、6a…モータ軸、6b…ロータ、6c…ステータ、7…センサ・インバータ基板、8…制御基板、8a…制御パネル、8b…制御スイッチ、8c…表示部、9…ファン、10…加速度センサ基板、11…配線、13…スリーブ、14…中間軸、15…軸受、17…トリガスイッチ(操作部)、21…第1ベベルギヤ、22…第2ベベルギヤ、23…スピンドル、24…偏心ピン、25…往復動変換機構(スコッチヨーク機構)、26…コネクタ、27…出力軸(プランジャ)、29…ベース(ガード)、29a…当接部、30…ブレード(先端工具)、31…先端工具保持部、32…加工材、50…電池パック、60…指置き部、61…左壁部、62…右壁部、63…前壁部、64…エラストマ(弾性体)、65…左リブ、66…右リブ、71~74…ねじボス部(接続部)。