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特開2024-61543構築物のメンテナンスロボット及びメンテナンスロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061543
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】構築物のメンテナンスロボット及びメンテナンスロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20240425BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240425BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B64C39/02
B64C27/08
B64D47/08
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022179155
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】591274602
【氏名又は名称】中友商事株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平田 泰久
(72)【発明者】
【氏名】田村 雄介
(72)【発明者】
【氏名】首藤 慧
(72)【発明者】
【氏名】中田 赳
(57)【要約】
【課題】 風力発電のメンテナンスに関して、従来、ドローンや自走式ロボットを用いたものが行われているが、ドローンでは強風時に動作が不安定となりやすい。また、導通検査を定期的に実施する事が法令によって義務付けられている為、非接触型のドローンでは、そのような検査が難しいという欠点がある。又、自走式ロボットについては、ロボット設置に必要な大型のウィンチ等を風力発電側に付け足しをしなければならないといった課題がある。
【解決手段】 本発明の構造物のメンテナンスロボットは、ドローンと、複数の棒状部材の両端を連結部品で連結することで構成される多数の多角形からなり、前記ドローンの動作の障害とならない空間を保つ大きさで、ドローンを内包して、ドローンに接続される外殻体と、からなり、外殻体の構造物の接触面は、構造物の少なくとも2点で接触して、構造物の外壁面と接する形状であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物のメンテナンスロボットであって、ドローンと、複数の棒状部材の両端を連結部品で連結することで構成される多数の多角形からなり、前記ドローンの動作の障害とならない空間を保つ大きさで、前記ドローンを内包し、前記ドローンに接続される外殻体とからなり、前記外殻体の前記構造物の接触面は、前記構造物の少なくとも2点で接触して、前記構造物の外壁面と接する形状であることを特徴とする、構造物のメンテナンスロボット。
【請求項2】
前記外殻体は、対向する一対の多角形のそれぞれの面心部分に、前記連結部品とベアリング支持棒状部材を介して接続されたベアリングが設けられ、前記対向する一対の多角形のそれぞれに設けられた前記ベアリングの内輪の中心には、シャフトが内輪を貫通して挿入され、前記シャフト間にはドローンがドローン固定部材を介して固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の構造物のメンテナンスロボット。
【請求項3】
前記外殻体の外部に突出した前記シャフトには、長さが可変な部材が、取り付けられ、前記長さが可変な部材は、前記構造物の外周の一部を囲むように配されることを特徴とする、請求項2に記載の構造物のメンテナンスロボット。
【請求項4】
前記ドローンは、上昇及び下降動作により、前記外壁面への、前記外殻体の接触を維持しながら上昇及び下降する、又は、推進方向を制御することで前記構造物の前記外壁面への前記外殻体の接触力を高める、又は、前記ドローンの前記推進方向とは逆の推進方向に制御すると前記構造物の前記外壁面への前記外殻体の接触力を弱める、いずれかの制御動作を行うことを特徴とする、請求項1に記載の構造物のメンテナンスロボット。
【請求項5】
前記ドローンは、前記制御動作や姿勢制御が自動運転機能又はマニュアル遠隔操作に切り替え可能であることを特徴とする、請求項4に記載の構築物のメンテナンスロボット。
【請求項6】
前記外殻体に、電磁石、真空吸着器、又は、吸着物の少なくともいずれか一つからなる吸着メカニズムを搭載したことを特徴とする、請求項1に記載の構築物のメンテナンスロボット。
【請求項7】
前記ドローンはカメラ又はセンサを備え、前記カメラ又はセンサによって、前記構造物の状況を解析することを特徴とする、請求項1に記載の構造物のメンテナンスロボット。
【請求項8】
請求項3に記載のメンテナンスロボットを複数個用い、前記メンテナンスロボットのそれぞれが前記構造物を挟み込む形でそれぞれの前記シャフト間を前記長さが可変な部材で連結されていることを特徴とする構造物のメンテナンスロボットシステム。
【請求項9】
前記メンテナンスロボットのそれぞれ前記ドローンは、同期して制御されることを特徴とする、請求項8に記載の構造物のメンテナンスロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構築物、特に風力発電のメンテナンスロボット及びメンテナンスロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した再生可能エネルギーの普及が急速に広まっている中、風力発電が注目されている。風力発電は主に海岸沿いに建設されている風車であり、大規模であれば発電量も大きくなる。又、沖に設置している洋上風力発電なら陸よりも大規模にしやすく、陸よりも大きな風力を持続的に得られる為、安定的に電力供給が可能であり、今後も規模が大きくなる事が予想される。
【0003】
しかし、規模を大きくする事で、点検、補修にかかるコストが大きくなるといった課題がある。現状、陸上及び洋上の風車の場合、十分な訓練を行った人が大掛かりな設備を使って作業を行う為、人件費がかかる。更に風の無い昼間にしか作業が出来ない為、メンテナンスの期間が長くなる事から、その間、発電が出来ないという機会損失も伴う。
【0004】
現在の風力発電のメンテナンスロボットとして主流な方法の1つとして、特許文献1のように、ドローンでメンテナンス箇所の画像を撮影し、解析する事で損傷部分を検知する手法がある。これは、高所に簡単にアクセス出来る上、コストが低いという利点がある。
【0005】
又、特許文献2のように、風力発電のタワー内外を自走しながらメンテナンスを行うロボットもある。
【0006】
【特許文献1】特表2019-523363号公報
【特許文献2】特開2021-011857号公報
【特許文献3】特開2020-097978号公報
【特許文献4】特開2018-058562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のドローンを用いて風力発電検査を行うには、風力発電には、導通検査を定期的に実施する事が法令によって義務付けられている為、ドローンを風力発電施設に接近させる必要があるが、特許文献1の非接触型のドローンを用いたものではそのようなことが行えない。また、風力発電施設に接近したドローンは強風時に動作が不安定になりやすく、最悪、風力発電施設と衝突し破損することがあり、強風時には検査は難しい。
一方、自走式ロボットについては、ロボット設置に必要な大型のウィンチ等を風力発電側に付け足しをしなければならないといった課題がある。
【0008】
近年、ドローン技術において、特許文献3,4のように、ドローン本体を外部からの衝撃から守るためガード部材を設けることが行われている。
上記技術を用いれば、ドローンを風力発電施設に接近させたとき、衝突から守ることはできる可能性がある。しかし、上記技術は、ガード部材は単に衝撃からドローンを保護する構造であるため、常時、風力発電施設に接触させて、安全に検査を行うのは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構造物のメンテナンスロボットは、ドローンと、複数の棒状部材の両端を連結部品で連結することで構成される多数の多角形からなり、前記ドローンの動作の障害とならない空間を保つ大きさで、ドローンを内包して、ドローンに接続される外殻体と、からなり、外殻体の構造物の接触面は、構造物の少なくとも2点で接触して、構造物の外壁面と接する形状であることを特徴とする。
当該構成により、本発明のメンテナンスロボットは、構造物に接触して構造物のメンテナンスを行うことができ、低コストで安全に安定した構造物の検査が可能になる。
【0010】
また、本発明のメンテナンスロボットの外殻体は、対向する一対の多角形のそれぞれの面心部分に、連結部品とベアリング支持棒状部材を介して接続されたベアリングが設けられ、対向する一対の多角形のそれぞれに設けられたベアリングの内輪の中心には、シャフトが内輪を貫通して挿入され、シャフト間にはドローンがドローン固定部材を介して固定されていることを特徴とする。
当該構成により、本発明のメンテナンスロボットは、ドローンの動きにより外殻体を制御できるので、メンテナンスロボットを任意に動かし、構造物の細かい検査や、強風等などの不測の事態の対処が可能になる。
【0011】
また、本発明のメンテナンスロボットは、外殻体の外部に突出したシャフトに長さが可変な部材が取り付けられ、長さが可変な部材は、構造物の外周の一部を囲むように配されることを特徴とする。
当該構成により、本発明のメンテナンスロボットは、長さが可変な部材で構造物の外周に固定されているので、メンテナンスロボットの安定性が増し、強風等など悪条件でも検査が可能になる。
【0012】
また、本発明のメンテナンスロボットは、ドローンの上昇及び下降動作により、外壁面への、外殻体の接触を維持しながら上昇及び下降する、又は、推進方向を制御することで構造物の外壁面への外殻体の接触力を高める、又は、ドローンの推進方向とは逆の推進方向に制御すると構造物の外壁面への外殻体の接触力を弱める、いずれかの制御動作を行うことを特徴とする。
当該構成により、本発明のメンテナンスロボットは、構造物への接触力が可変となることで、安定した構造物の接触が可能になり、検査やメンテナンスなどの動作が安定して行うことができる。
【0013】
また、本発明のメンテナンスロボットは、ドローンの制御動作や姿勢制御が自動運転機能又はマニュアル遠隔操作に切り替え可能であることを特徴とする。
当該構成により、通常は自動運転機能で、メンテナンス、検査を行うことができる。一方で、強風など自動運転が難しい場合は、マニュアル操作に切り替えることで、メンテナンスなどの動作が安定して行うことができる。
【0014】
また、本発明のメンテナンスロボットは、外殻体に電磁石、真空吸着器、又は、吸着物の少なくともいずれか一つからなる吸着メカニズムを搭載したことを特徴とする。
当該構成により、メンテナンスロボットを任意の位置で、構造物に強く固定することができ、安定した土台として、検査や、繊細な操作の必要なメンテナンスを行うことができる。
【0015】
また、本発明のメンテナンスロボットは、ドローンにカメラ又はセンサを備え、カメラ又はセンサによって、構造物の状況を解析することを特徴とする。
当該構成により、構造物のメンテナンス、検査を行うことができる。
【0016】
また、本発明のメンテナンスロボットシステムは、メンテナンスロボットを複数個用い、メンテナンスロボットのそれぞれが構造物を挟み込む形でそれぞれのシャフト間を長さが可変な部材で連結されていることを特徴とする。
当該構成により、強風などの悪条件であっても、メンテナンスロボットの安定性が飛躍的に高まり、また、複数のドローンを有することで、操作性や、重量のあるメンテナンス機器等を輸送でき、メンテナンス、検査の幅を広げることができる。
【0017】
また、本発明のメンテナンスロボットシステムのそれぞれのドローンは、同期して制御されることを特徴とする。
当該構成により、構造物へ外殻体の接触力を適切に制御でき、操作性を高め、メンテナンス、検査を容易におこうことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、本発明のメンテナンスロボットは、球殻体が構造物の外壁面に接触することで、安定した検査、メンテナンスが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例におけるメンテナンスロボットの正面図である。
図2】本発明の実施例におけるメンテナンスロボットの側面図である。
図3】本発明の実施例におけるメンテナンスロボットの平面図である。
図4】本発明の実施例における連結したメンテナンスロボットの風力発電タワーでの動作形態を表した側面図である。
図5】本発明の実施例における連結したメンテナンスロボットの風力発電タワーでの動作形態を表した平面図である。
図6】本発明の実施例における連結したメンテナンスロボットの風力発電タワーでの導通検査を表した側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態の一例について図面を参照して説明する。
なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
また、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらに限定する趣旨のものではない。
【0021】
[実施形態]
以下、本発明を実現するための実施形態の一例について説明する。
図1は、1個のメンテナンスロボット9が構造物(本発明では図4,5に示す、風力発電タワー(以下、タワーと称する))10に接しながら構造物10に対して上下移動する際に、構造物10に対向し接触する面から視た図(「正面図」ともいう。)である。図2は、メンテナンスロボット9が構造物に接しながら構造物の上下移動する際に、側面から視た図(「側面図」ともいう。)である。図3は、メンテナンスロボット9が構造物10に接しながら構造物10に対して上下移動する際に、上側から視た図(「平面図」ともいう。)である。
【0022】
図1図3に示すように、メンテナンスロボット9は所要の太さ(実施例では、直径3.5mm)を有した複数の棒状部材(実施例では、カーボンロッド)1の両端に連結部品2を連結して六角形形状、五角形形状、タワー10の外壁面に適した形状としたものを用いた球殻体(外殻体)からなる。具体的には、図2に示す側面中央に五角形形状を配し、その周辺に、六角形形状を連結して、両側面を構成する。
そして、当該両側面の間を棒状部材1と、連結部品2とを用いて、タワー10の外壁面に適した形状として連結する。
【0023】
通常、タワー10の外壁面は円筒状である。メンテナンスロボット9がタワー10の外壁面と安定して接触するには、外壁面を囲むように、少なくとも2点は必ず接触させる必要がある。
図1では、六角形形状の間を二本の棒状部材1と連結部品2を用い、球殻体の内面に凹部を形成するように、棒状部材1を内側に向けて、連結部品2で結合している。これにより、構造物10に対向し接触する面は、側面の五角形形状を軸中心として回転する際、連続して、球殻体の内面に向かう凹部が接触することができる。
【0024】
なお、タワー10の外壁面は通常円筒状であるので、球殻体の内面に向かう凹部としているが、外壁面の形状に応じて、球殻体の接触面は変更するのが好ましい。その外壁面に少なくとも球殻体の2点が接触する形で、より好ましくは、外壁面の一部を内包する形状にすれば、どのような形状の外壁面でも安定して、球殻体を接触させることができる。
【0025】
球殻体の両側面を形成する、一対の対向する五角形の中心部分にはベアリング3が設けられており、当該五角形の連結部品2から面心方向に伸びた5本のベアリング支持棒状部材4によってベアリング3の外輪に接続固定されている。もう一方の対向する五角形面上も同様の接続固定が施されている。なお、棒状部材1やベアリング支持棒状部材4等には、本発明では、カーボンロッドを用いているがこれに限らず、軽量である材質であればどのようなものも用いることができる。
【0026】
メンテナンスロボット9の球殻体の中心部には、ドローン(飛行体)5(Holybro社製 S500 V2 Kit,X型クアッドコプターでありランディングギアを除いている。)がプロペラを上に向けた水平状態に置かれていて、対向するそれぞれの五角形上のベアリング3の内輪には所要量の長さ及び直径を有したシャフト6が回転可能に挿入固定されている。シャフト6の片方の先端は、ベアリング3の内輪を貫通して球殻体の外側に所定の長さ突き出た状態にあり、もう片方の先端はメンテナンスロボット9の球殻体の中心部分まで伸びていて、シャフト連結金具7に固定されている。そのシャフト連結金具7は、中空円形のリング状になっているドローン固定部材であるドローン固定金具8と連結されている。ドローン固定金具8は、水平状態に置かれたドローン5と直交する形でドローン5を固定金具8の中空円内に連結している。また、ドローン固定金具8は、シャフト連結金具7に対して、中空円形の円周方向に所定の範囲(シャフト6の軸に対して0<θ<180)で可動に接続されており、ドローン5に側面側の傾斜も許容することで、強風などで、ドローンのバランスが崩れた場合にも修正可能に設計されている。
【0027】
また、シャフト6は、ベアリング3の内輪に回転可能(0<θ≦360)に接続されているため、ドローン固定金具8に固定されたドローン5は、図1では、シャフト6に水平に設置されているが、シャフト6を軸心として、後述する図4での方向への回転が可能となっている。
【0028】
尚、メンテナンスロボット9の球殻体は、ドローン5の動作に障害とならない空間を保つ大きさを有している。また、棒状部材1やシャフト6は、接触させる構造物10の大きさに応じて、長さは適宜変更可能である。メンテナンスロボット9はこれら図面において符号1~8で示される部材からなる構造体である。
【0029】
[メンテナンスロボットの構造物に対する構成と動作]
次に、メンテナンスロボット9の動作について図4及び図5に基づいて説明する。
図4は、構造物(タワー)10に接しながら上下移動するメンテナンスロボット9の側面図である。図5は、図4の時、上方から視た平面図である。
図4,5では、好適な例として2個のメンテナンスロボット9を表しているが、1個のメンテナンスロボット9を、構造物10に接触した上でシャフト6の球殻体の外側に突き出た両方の部分に、構造物10の外周面に巻き付ける形で、長さの変形する部材、好ましくは、所定の摩擦力と弾性のある部材(例えば、ゴム等。)を取り付け、球殻体が構造物10に常時接触することでも動作することができる。
【0030】
なお、この場合、シャフト6に取り付ける弾性のある部材のメンテナンスロボット9の対向する側に、弾性のある、車輪のような円筒部材を取り付けると、より、小さな力で、メンテナンスロボット9を、構造物に固定、且つ、移動可能にできる。
【0031】
1個のメンテナンスロボット9のみでも構造物10の検査は可能であるが、構造物10の外周に流れる強風や揺れなどが発生しやすくなるので、ドローン5の動作が不安定になりやすい場合がある。
【0032】
そこで、好適には、図4,5に示すように、メンテナンスロボット9から球殻体の外側に突き出ているシャフト6の両端同士を連結ロッド14で、二つのメンテナンスロボット9が構造物10を介して対向する形で連結し、前述した一連の動作(相対的な移動等)を同期させる事により、二つのメンテナンスロボット9の連結力でメンテナンスロボット9の動作を安定化させる事が出来る。さらに、ドローンを複数用いることで、重量のある機器を輸送することもでき、また、一方のドローンが風に煽られバランスを崩しても、もう一方のドローンは、構造物10により風から守られることが多いので、容易にメンテナンスロボット9を立て直すことができる。
【0033】
ここで用いられる連結ロッド14は、メンテナンスロボット9が構造物10の形状(直径)に合わせて接触力を可変する動作が出来るように、メンテナンスロボット9から突き出た両端のシャフト6を左右で挟み込む形にして長さが可変可能とし、且つ、連結ロッド14がメンテナンスロボット9から外れないような連結構造となっている。
なお、連結ロッド14は、弾性力のある部材で形成してもよい。
この連結ロッド14接触力を可変する構成により球殻体が構造物10に常時接触する動作が可能になる。
【0034】
以下に示す動作説明は、図4,5に示す、2個のメンテナンスロボット9について説明する。なお、1個のメンテナンスロボット9では、以下に記載のメンテナンスロボット9の1個の動きを行ったとき、長さの変形する部材が、弾性力等でメンテナンスロボット9の対向する構造物10のもう一方の面と接触することで達成される。
【0035】
メンテナンスロボット9は、構造物の外面に、メンテナンスロボット9の球殻体の1面が構造物に接しながら上下移動を行うものである。このとき、球殻体の外殻の接触部は凹形状となっているため、構造物10との少なくとも2点(或いは、それ以上)で接し、また、構造部10の外壁面との接触面積が増えているため、安定して構造物10と接触する。
【0036】
構造物10の垂直方向に対して、メンテナンスロボット9のシャフト6は、シャフト6の長手方向が、構造物10と対向する形で直交しており、図4では、ドローン5が球殻体内でプロペラを上に向けた水平状態になっている。二つのドローン5がプロペラを回転させ上昇すると、ドローン5と連結しているシャフト6が上昇し、それに伴って、両方のメンテンナンスロボット9はそれぞれの球殻体が構造物10の両方向から少なくとも2点が接触したまま、鉛直上方である矢印12a、矢印12bの方向へ上昇していく。
なお、球殻体と、構造物10との接触箇所の摩擦が問題になる場合は、構造物10と接触する、棒状部材1に弾性のある保護部材を設けてもよいし、弾性部材1の周りを回転ローラーする部材をとりつけていてもよい。
【0037】
更に、ドローン5を構造物10の垂線に対し、ドローン5の上面が鋭角をなす方向(図4に示す中抜きの矢印13aの方向(推進方向ともいう。))に姿勢を傾けると構造物10へのメンテナンスロボット9の接触力を強め、逆にドローン5を構造物10の垂線に対し、ドローン5の裏面が鋭角をなす方向(図4に示す中抜きの矢印13bの方向(逆の推進方向ともいう。))に傾けると構造物10へのメンテナンスロボット9の接触力を弱める。そのような接触力の強弱及び連結ロッド14の持つ柔軟性によって、構造物10の太さや形状に合わせてメンテナンスロボット9は適切な接触力を保ちながら移動、或いは、固定動作を実現できる。これらの動作コントロールは、操作者が操作してもよいし、予め飛行計画をドローン5にインプットしたプログラミングに基づいた周知の自動運転機能で行ってもよい。
【0038】
[メンテナンスロボットの構造物の検査機能]
前述した一連の動作により、ドローン5に内蔵されたカメラ等の撮像手段によって画像を撮影し、構造物10の外面や風車(ブレード16)の外観の破損状況を解析する事が出来る。構造物10とカメラの距離は球殻体の大きさで決まった距離から撮像できるため、破損での傷の大きさなどを正確に求めることができる。又、メンテナンスロボット9は、構造物10に接触して移動する事により、風車(ブレード16)の裏面に容易に到達できるので、通常のドローンでは難しい、ブレード16の裏面に設けられた導通検査部位での導通検査も行う事が出来る。
尚、導通検査等の方法については、後述する。
【0039】
又、構造物10の太さや大きさによって、2個に限らず、メンテナンスロボット9の連結数を増減させる事が出来、大掛かりなメンテナンス設備を風力発電側に設置しなくてもコンパクトで且つ、低コストの方法で様々な形で風力発電メンテナンスの対応を可能とする事が出来る。
【0040】
次に、図6では、連結された二つのメンテナンスロボット9で、構造物10上に設置している風力発電機15と風力発電機15の風車であるブレード16の外観検査及び導通検査を含む詳細な検査を行う方法について説明する。ここでは、二つのメンテナンスロボット9を用いた場合を例に説明する。
【0041】
二つのメンテナンスロボット9には、構造物10の接触部である球殻体の棒状部材1に真空吸着器17が搭載されており、構造物10の外面に吸着して二つのメンテナンスロボット9を任意の位置で停止且つ固定する事が出来、メンテナンスロボット9の姿勢を安定化させる。真空吸着器は周知のものを棒状部材1に取り付けてもよく、或いは、棒状部材1内に真空吸着器を用いてもよい。
なお、タワー10が金属製であれば、真空吸着器17の代替として、例えば、棒状部材1にコイルを巻くなどして構成した、電磁石を使用する事も可能である。
これら吸着器17の電源は、ドローン5から供給してもよい。
なお、吸着器17は、このような機構に限らず、構造物10の外壁面に接触する棒状部材1にポリジメチルシロキサン(PDMS)等の緩やかな吸着力のある物質や、吸盤などの吸着物を設けて、構造物10との接触性を高めてもよい
【0042】
停止した二つのメンテナンスロボット9の一方のメンテナンスロボット9には、球殻体の外側に突出したシャフト6と連結ロッド14との連結部にアーム固定器具18が連結されており、アーム固定器具18には球殻体の円周に双方向(図6中に矢印19が示す方向)に可動するアームベース20が搭載している。アームベース20は、折り畳み可能な構造であってもよい。アームベース20内には鉛直上方(図6中に矢印21に示す方向)に伸縮するアーム22が内蔵され、アーム22の先には関節23a、アーム24a、関節23b、アーム24b、関節23cが順に連結され、関節23cの他方には、センサ25が連結されている。これらの関節やアームの動作で、最先端にあるセンサ25を構造物10からブレード16の裏面に近づける方向(図6中に示す矢印26)に示す方向に移動させ、ブレード16の裏面に設けられた、ブレードの導通検査部位にセンサ25を接触させて、詳細な検査や導通検査を行う事が出来る。又、センサ25には更にカメラを搭載する事により、外観検査も同時に行う事も出来る。
【0043】
[その他]
これらの一連の動作制御は、前述したドローン5の飛行計画プログラミングと連動させる事により自動運転が可能となるが、気象状況等によってドローン5の不安定要素も予想される場合は、遠隔操作でメンテナンスロボット9をコントロールする切替えが出来る事も含めてシステムに組み込んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本不明は、風力発電タワー10に限らず、作業に危険が伴うメンテナンス作業が必要な橋梁やその他高所構造物にも応用する事が出来る。
【符号の説明】
【0045】
1 棒状部材
2 連結部品
3 ベアリング
4 ベアリング支持棒状部材
5 ドローン
6 シャフト
7 シャフト連結金具
8 ドローン固定金具
9 メンテナンスロボット
10 構造物
12a 矢印
12b 矢印
13a 矢印
13b 矢印
14 連結ロッド
15 風力発電機
16 ブレード
17 真空吸着器
18 アーム固定器具
19 矢印
20 アームベース
21 矢印
22 アーム
23a 関節
23b 関節
23c 関節
24a アーム
24b アーム
25 センサ
26 矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6