(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061548
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】花蕾が落ちにくく食感が低下しない冷凍ブロッコリーの製造方法および冷凍ブロッコリー
(51)【国際特許分類】
A23B 7/04 20060101AFI20240425BHJP
A23B 7/06 20060101ALI20240425BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A23B7/04
A23B7/06
A23L3/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022179902
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】522436787
【氏名又は名称】中野 陽
(71)【出願人】
【識別番号】522436798
【氏名又は名称】小谷 幸敏
(72)【発明者】
【氏名】中野 陽
(72)【発明者】
【氏名】小谷 幸敏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 晃和
【テーマコード(参考)】
4B022
4B169
【Fターム(参考)】
4B022LA05
4B022LB02
4B022LF11
4B022LJ01
4B022LJ06
4B022LJ08
4B022LN05
4B022LP06
4B169CA01
4B169CA04
4B169HA01
4B169KD05
(57)【要約】
【課題】花蕾の落下が抑制され、凍結による食感劣化が抑制された冷凍ブロッコリー製造方法ならびに冷凍ブロッコリーの提供。
【解決手段】ブロッコリーを食べやすく加工した小房状ブロッコリーを、柔軟性を有したプラスチック製フィルムに入れ、減圧または真空包装あるいは水圧により空気を排除した後、凍結することで、凍結後のブロッコリー花蕾が締まった形状となり、耐振動性を付与することができる。このように凍結前に柔軟性のあるフィルムを密着させることで、グレーズ処理することなく花蕾を保護できる製造方法。また、ブライン凍結を行うことで、食感の低下を抑制する製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生鮮ブロッコリーをブランチング処理により食べやすく加工した小房状ブロッコリーを、柔軟性を有したプラスチック製フィルムに入れ、減圧または真空包装あるいは水圧により空気を排除し、凍結することを特徴とする冷凍ブロッコリーの製造方法。
【請求項2】
生鮮ブロッコリーをブランチング処理により食べやすく加工した小房状ブロッコリーを、柔軟性を有したプラスチック製フィルムに入れ、減圧または真空包装あるいは水圧により空気を排除し、ブライン凍結することを特徴とした冷凍ブロッコリーの製造方法。
【請求項3】
生鮮小房状ブロッコリーを真空包装し、ブランチング処理を行った後、ブライン凍結することを特徴とした冷凍ブロッコリーの製造方法。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれか一項により製造した冷凍ブロッコリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍ブロッコリーの製造法に関し、食べやすく加工した小房状ブロッコリーを、凍結前に柔軟性のあるフィルムを密着させることで、振動等による花蕾の落下を抑制した冷凍食品の製造法に関するものである。また、ブロッコリーを、ブライン凍結を用いて急速凍結することで、食感の低下を抑制した冷凍ブロッコリーの製造に関するものでもある。さらに、加熱処理前に真空包装することで、花蕾の落下が見られず、菌数が少なく、機能性成分の流出が抑制された冷凍ブロッコリーの製造に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍ブロッコリーは、具材や付け合せ等の目的で様々な加工食品に用いられている。冷凍ブロッコリーの加工に際して、生鮮ブロッコリーに含有される酵素の働きに起因する変質、例えば退色、変色、異臭発生などを防止するため、通常、酵素を失活させる目的で、生鮮ブロッコリーを熱湯または蒸気で短時間加熱するブランチング処理が行われ、その後、食べやすく加工した小房状ブロッコリーに冷風を直接当てて凍結するエアブラスト凍結や、冷凍庫に入れてそのまま凍結させる緩慢凍結等が行われる。
【0003】
しかしながら、冷凍ブロッコリーは、蕾の先端が細かい形状になっているため輸送等による振動で花蕾が脱落しやすく、見栄えを損ねるなど商品性の低下を招いていた。このため、冷凍したブロッコリーを水につける等により薄い氷の被膜を形成するグレーズ処理(特許文献1参照)を行い、花蕾の脱落を保護する方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、グレーズ処理による薄い皮膜では効果は限定的であり、皮膜を厚くすると、解凍後のドリップが多く、水っぽくなるなどの課題を有している。
【0006】
また、冷凍ブロッコリーを喫食する際、生鮮物のブロッコリーと比較して食感が低下する傾向にあり、また、茎の部分は筋っぽく感じることもある。
【0007】
そこで、本発明は、グレーズ処理を行うことなく、ブロッコリーの花蕾が落下しにくい冷凍ブロッコリーの製造方法及び冷凍ブロッコリーを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、ブライン凍結を用いて急速凍結することで、食感の低下を抑制した冷凍ブロッコリーの製造方法及び冷凍ブロッコリーを提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、ブランチング処理の前にブロッコリー小房を真空包装し、その後ブランチング処理、凍結することで、ブロッコリーの花蕾が落下しにくく、菌数が少なく、機能性成分の流出が抑制された冷凍ブロッコリーの製造方法及び冷凍ブロッコリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、ブロッコリーと該ブロッコリーを収納する包材とからなり、包材内を減圧または真空包装あるいは水圧により空気を排除し、凍結することを特徴とする。
【0011】
このときの包材として、柔軟性を有したプラスチック製フィルムを使用することにより、フィルムがブロッコリー花蕾に密着し、凍結時にブロッコリー花蕾が締まった形状となることによって、グレーズ処理することなく花蕾の落下抑制が可能になる。
【0012】
また、前記凍結方法の一つとして、ブライン凍結を用いることを特徴とする。
冷凍ブロッコリー食感低下の一因として、氷結晶成長による組織の破壊が考えられる。この防止のためには急速凍結が必要となり、その手法としては冷気を吹き付けるエアブラスト凍結、液化ガス凍結、また、不凍結液体を使用するブライン凍結などがある。本発明ではブロッコリーを、柔軟性を有したプラスチック製フィルムに収納することから、エアブラスト凍結に比べて凍結速度に優位性を持つブライン凍結が使用可能である。また、ブライン凍結は液化ガス凍結に比べて低コストであり、実用性に富んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ブロッコリーの花蕾の落下を抑制することができ、また、ブライン凍結が冷凍ブロッコリーの食感低下防止を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ブロッコリーの振動試験の結果を示す表形式の説明図である。
【
図2】ブランチング処理後のブロッコリーの凍結時の凍結速度を示す表形式の説明図である。
【
図3】ブライン凍結およびエアブラスト凍結を行った冷凍ブロッコリーの凍結速度および物性試験測定結果を示す表形式の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施態様に基づき説明する。
【0016】
生鮮ブロッコリーを水洗いした後、小房状に加工し、洗浄する。
【0017】
(発明1、2)洗浄したブロッコリーをブランチング処理としてスチームあるいはボイル加熱を行う。
【0018】
(発明1)ブランチング処理したブロッコリーを真空包装用包材に入れて真空包装あるいは減圧包装を行う。真空包装あるいは減圧包装を行う場合、フィルムを加熱して延伸して密着させるスキンパック包装やポリエチレン製規格袋を用いてもよい。また、密着性を有したフィルム(グラッド[登録商標]ストレージフードラップ(プレスンシール)でブロッコリーを包んでもよい。
【0019】
(発明1)真空包装あるいは減圧包装後の凍結処理の手段としては、例えば、エアブラスト凍結、冷凍庫に入れてそのまま凍結させる緩慢凍結、ブライン凍結がある。
【0020】
(発明1)エアブラスト凍結は、冷風をブロッコリーに直接当てて急速に凍結させる方法である。緩慢凍結は、冷凍庫の中にブロッコリーを入れて凍結する方法である。ブライン凍結は、-30℃程度に冷却したブライン液に包装したブロッコリーを入れて急速に凍結する方法である。
【0021】
(発明1)このようにして凍結したブロッコリーの包材を除去し、プラスチック製袋で含気包装して段ボール箱に入れ、包装貨物-振動試験方法(JIS Z 0232)に従い、-20℃、90分間振動を与えた時の花蕾落下の有無を
図1に示した。
図1に示したとおり、真空包装せずにエアブラスト凍結したものは花蕾が落下したのに対し、凍結前に真空包装したものは花蕾が落下しなかった。
【0022】
(発明2)包装したブロッコリーをブライン凍結により急速凍結を行う。ポリエチレン製規格袋を用いる場合は、袋上部を開放したままブライン液に沈めると、袋内部の空気が水圧により追い出されて、袋とブロッコリーが密着した状態になる。
【0023】
(発明2)このようにして凍結させたブロッコリーの凍結速度を
図2に示した。測定はブロッコリー茎部に温度センサーを取り付けて行った。
図2に示したとおり、エアブラスト凍結と比較して、ブライン凍結のブロッコリーは最大結晶氷成長帯の通過時間が短縮されていることが明らかになった。
【0024】
(発明2)冷凍ブロッコリーを流水解凍し、茎部を縦方向に半分に切断し、切断面を下にして繊維と直角方向にプランジャーを押し当て、それにかかる荷重を測定した。測定は、(株)山電クリープメータ RE2―33005Sを用い、測定速度は1mm/sで行い、破断した際の荷重である破断荷重、破断時の接戦の傾きである弾性率、破断後、落ち込んだ荷重の度合いであるもろさ荷重、プランジャーが完全に押し込んだ際の荷重である、歪率100%荷重を読み取った。
【0025】
(発明2)
図3にブライン凍結およびエアブラスト凍結を行った冷凍ブロッコリーの物性試験の結果を示した。ブライン凍結のブロッコリーはエアブラスト凍結のものと比較して破断荷重、もろさ荷重、弾性率が高く、歯ごたえに優れ、また、歪率100%荷重において、ブライン凍結のブロッコリーはエアブラスト凍結のものと比較して数値が低く、筋っぽくないことが示唆された。
【0026】
(発明3)洗浄したブロッコリーに真空包装を行い、ブランチング処理後にブライン凍結を行う。このようにして製造された冷凍ブロッコリーは、ブロッコリーの花蕾が落下しにくく、ブランチング後の二次汚染がないことから菌数が少なく、ブランチング時に機能性成分が袋内に留まるため流出が抑制され、さらにブライン凍結により食感の低下を抑制した冷凍ブロッコリーとなる。