(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061550
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】回転位相変更可能なパイプシャッターバルブを持つ可変圧縮長4ストロークレシプロエンジン。
(51)【国際特許分類】
F02B 29/08 20060101AFI20240425BHJP
F02D 15/04 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
F02B29/08 F
F02D15/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022179905
(22)【出願日】2022-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】597037913
【氏名又は名称】輿石 文次
(71)【出願人】
【識別番号】507048271
【氏名又は名称】輿石 直人
(71)【出願人】
【識別番号】507048259
【氏名又は名称】輿石 美智子
(72)【発明者】
【氏名】輿石 文次
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AA01
3G092BA01
3G092DC02
3G092DC03
3G092FA50
(57)【要約】 (修正有)
【課題】4ストロークレシプロエンジンに簡単な仕組みを加えることにより任意のストロークで可変圧縮長動作を可能とし、これにより圧縮行程の上死点における圧縮される空気の量を変更する。
【解決手段】吸気ポペットバルブの上流に、クランク軸の1/2の速度で回転し、吸気行程で通気窓の開口角が閉じていく回転パイプシャッターバルブを設けることで吸気の遮断を行うパイプの回転位相を変更する機構により、上死点における開口角を必要な値に設定する。クランク軸が設定した開口角の二倍の角度まで回転した時、同期回転するシャッターバルブは閉じ、空気のシリンダー内への流入は遮断される。これにより同期回転するパイプの位相を変更するだけで4ストロークレシプロエンジンに可変圧縮長動作を行わせることが出来る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸からの回転を、回転出力軸の位相をECUからのコマンドで変更させる機構を通して、クランク軸の半分の速度で回転する回転パイプシャッターバルブを、各シリンダーの吸気ポペットバルブの手前に独立して設置することを特徴とした4ストロークレシプロエンジン。
【請求項2】
請求項1における回転出力軸の位相をECUからのコマンドで変更させる機構として、3本の回転軸を持つ差動歯車機構を用い、一つの軸の回転位置ををアクチュエータで変更する制御を行い、他の二軸の片方の軸にクランク軸の回転力を入力し、残りの一軸の出力で回転力でパイプシャッターバルブを回転させる構造。
【請求項3】
請求項1における回転出力軸の位相をECUからのコマンドで変更させる機構として、3本の回転軸を持つ遊星歯車機構を用い、一つの軸の回転位置ををアクチュエータで変更する制御を行い、他の二軸の片方の軸にクランク軸の回転力を入力し、残りの一軸の出力で回転力でパイプシャッターバルブを回転させる構造。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
4ストロークレシプロおいて可変圧縮長動作を実現する。
これによりスロットルバルブの代わりに負荷の制御を行う。
【背景技術】
【0002】
ピストンが吸気動作をしている途中で吸気ポペットバルブを閉じ、吸気を遮断することで可変圧縮長動作をさせるにが可能なことが知られている。
しかしポペットバルブを開閉するカムは金属でできているためポペットバルブの開閉タイミングを自在に変更することは不可能に近かった。
【これまでの同様な他の技術】
【0004】
一部のエンジンは揺動カムを用いたロストモーション機構により吸気動作の途中で吸気ポペットバルブを閉じることで負荷制御を行うエンジンもあるが殆ど普及していない。
【先行技術文献】
特開2014-005756
上記に揺動カムを使うロストモーション機構の図がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はできるだけ簡単な仕組みで、吸気の途中で空気の流入の遮断を行うことをで4ストロークレシプロエンジンにおいて可変圧縮長動作を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ピストンが吸気動作をしている途中でシリンダー内への吸気を遮断するために、吸気ポペットバルブの上流に別のバルブを設け、そのバルブの開閉で吸気を遮断する構造とした。
直列に配置されたバルブの遮断により、吸気ポペットバルブが開いたた状態でもシリンダー内への空気の供給は遮断されることになる。
遮断するタイミングを変更可能にすることで、可変圧縮長動作を実現する。
【0010】
【発明の詳細な説明】
【0012】
パイプの空気窓の開口角の二倍とパイプホルダーの開口角の合計が360度を超えない、つまりそれぞれの開口角が120度に近い通気窓を持ち、クランク軸の1/2の回転速度でクランク軸と同期回転するパイプによるシャッターバルブであり、パイプの軸方向から吸い込まれた空気はパイプとパイプホルダーの通気窓の重なりあいで作られる合成通気窓を通り抜け吸気ポペットバルブを通りシリンダー内へ吸入される。
同期回転シャッターバルブと吸気ポペットバルブは直列に配置されているため、どちらか片方でもバルブが閉じていれば吸気は遮断される。
【0014】
同期回転するパイプとパイプホルダーの両者の窓が重なる時だけ通気が行わえる。ならない時に通気の遮断が行われる。
燃焼により発生する熱と圧力は吸気ポペットバルブが受け持つので同期回転バルブは高温・高圧に晒されることはない。
【0016】
以下、パイプ中心からの窓の開口角とパイプホルダーの開口角は120度とし、ピストンの幾何学的圧縮比を10と仮定して説明する。
パイプはクランク軸からチェーン等で伝えられた回転力を回転軸の位相を変更することのできる機構を通してでクランク軸の1/2の速度で回転するようになっている。
つまり位相変更を行わない限りクランク軸が二回転してピストンが吸気の上死点に来た時、同期回転パイプの通気窓は必ず同じ位置にあることになる。
そして位相変更をした場合はクランクが上死点に来た時のパイプの通気窓の回転位置を変更することが出来る。
【0018】
これにより上死点におけるパイプの通気窓とパイプホルダーの通気窓により作られる合成通気窓の開口角を任意に設定可能になる。
吸気行程において合成通気窓の開口角はクランク軸が上死点から回転するに従い、クランク軸の半分の角速度で閉ていく動作をする。
上死点における同期回転パイプとパイプホルダーの作る窓の合成開口角を45度とすればクランク軸は90度、90度とすれば180度、120度とすれば240度、クランク軸が上死点から回転しその角度を通過した時点で吸気は遮断される、つまりピストンが吸気の上死点にある時に同期回転パイプの回転位相を変更し合成開口角を変更するだけでピストンが吸気の途中で吸気ポペットバルブが開いていても、任意の位置で吸気の遮断が行われ、連続的に圧縮長の制が出来ることになる。
【実施例0030】
本発明の可変圧縮長構造は主にスロットルバルブの代わりにガソリンエンジンの負荷制御を行うことを主な目的としている。
スロットルバルブを取り去り、代わりに回転シャッターバルブを取り付けシリンダーヘッドの冷却を再設計するだけでエンジン本体に大きな変更を行う必要はなく、高温高圧部分も特別に精密な部分もない。
もちろんパイプの回転や回転位相制御を行う機構は必要だが点火プラグや排気バルブ、燃料噴射に関しては大きな変更は不要である。
例えばスロットルバルブにより火花点火エンジンを1/2負荷で運転する場合は、ピストンが吸気行程の下死点に到達した時のシリンダー内圧力を1/2気圧になるようにスロットル開度を絞り空気(混合気)流入量を減らす。
下死点におけるシリンダー内にある1/2気圧の空気を上死点で5気圧に圧縮し点火することで1/2負荷の運転を行う。
しかしスロットルバルブによる負荷制御を行う場合、エンジン回転数が低いほどスロットルを閉じ気味にするため、PV線図における損失を示す負圧の面積が増えることになり吸気損失が大きくなりエンジンの熱効率が悪化する欠点があった。
可変圧縮長エンジンで1/2負荷の運転をする場合はピストンが吸気行程の半分(ストロークの4/9)くらいまで進んだ時点で同期回転するパイプの通気窓が閉じることにより吸気を遮断する。
その時点でのシリンダー内の圧力はおよそ1気圧であり、ピストンが下死点に到達したときにシリンダー内容積は2倍になり、シリンダー内の圧力はおよそ1/2気圧になる。
それ以降の圧縮行程で同期回転パイプにより吸気を遮断じた地点にピストンが戻って来るまでは、パイプ外周と吸気ポペットバルブの間で作られる空間に残る圧力による僅かな損失を除けば摩擦以外の損失はほとんど発生しない。
その後上死点でシリンダー内の空気をおよそ5気圧に圧縮して点火する。
つまり吸気を早く遮断する低負荷で運転するほど、吸気損失が発生するストロークが減り減り熱効率が上がることになり、スロットルによる負荷制御とは正反対の結果が得られる。
これによりスロットルを使う場合と比較して熱効率が良くなる。
レシプロエンジンにおいてノッキングの発生は禁物であり、特に過給エンジンでは高過給運転時に圧縮加熱でに加え高温になったシリンダーにより混合気の温度が上がりすぎノッキングが発生しやすくなる、
それを防ぐためにあらかじめピストンによる圧縮比を下げる設計をすることがあり、そのため過給エンジンでは自然吸気エンジンに比べ膨張比が小さくなり熱効率が低下しやすい傾向がある。
可変圧縮長エンジンではインタークーラー出口温度センサーやノックセンサーなどでノッキングの兆候を感知した場合、圧縮長を短くすることでピストンによる圧縮加熱を減らすことでノッキングは起きなくなる。
圧縮長を短くするとそれだけ出力が減るが、吸気損失は増えないのでノッキングの発生に比べれば大きな問題ではない。
またディーゼルエンジンにおいては高過給時に圧縮過熱温度が高くなりすぎる場合は燃焼温度が上がりすぎるためNOXの発生が多くなるが、ピストンの圧縮長を減らすことで燃焼温度を下げ、NOXの発生を減らすことが可能になる。
この場合でも熱効率を悪化させる膨張比は変わらないので熱効率は落ちない。
逆にピストンの圧縮長を長くすることで低温環境下での始動性も向上する。