(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061553
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】水素酸化細菌の培養方法および水素酸化細菌の培養装置
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240425BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12M1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183969
(22)【出願日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2022168207
(32)【優先日】2022-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】秀嶋 保利
(72)【発明者】
【氏名】富田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】前田 郁也
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB02
4B029DB00
4B029DG10
4B029GB10
4B065AA01X
4B065AC14
4B065BA30
4B065BB03
4B065BC02
4B065BC06
4B065BC07
4B065CA54
(57)【要約】
【課題】大量の水素を保管することなく、かつ、エネルギー消費を抑えながら水素を培地に供給することができる水素酸化細菌の培養方法および水素酸化細菌の培養装置を提供すること。
【解決手段】金属体と水を含む液体とを接触させて、前記金属体に腐食反応を生じさせることにより、水素を発生させる水素発生工程と、発生させた前記水素を水素酸化細菌が接種されている培地に供給する水素供給工程と、を有することを特徴とする水素酸化細菌の培養方法。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属体と水を含む液体とを接触させて、前記金属体に腐食反応を生じさせることにより、水素を発生させる水素発生工程と、
発生させた前記水素を水素酸化細菌が接種されている培地に供給する水素供給工程と、
を有することを特徴とする水素酸化細菌の培養方法。
【請求項2】
前記金属体は、水素よりイオン化傾向が大きい金属元素を含む請求項1に記載の水素酸化細菌の培養方法。
【請求項3】
前記金属元素は、Ca、Mg、Al、TiまたはZnである請求項2に記載の水素酸化細菌の培養方法。
【請求項4】
前記金属体は、マグネシウム基合金、または、マグネシウム基合金を含有する複合材料を含む請求項3に記載の水素酸化細菌の培養方法。
【請求項5】
前記水素供給工程は、前記培地に、二酸化炭素、もしくは、酸素および二酸化炭素を供給する操作を含む請求項1または2に記載の水素酸化細菌の培養方法。
【請求項6】
前記水素発生工程は、前記液体の温度、pH、前記液体の流速、および、前記液体に対する前記金属体の移動速度、のうちの少なくとも1つを変更する操作を含む請求項1または2に記載の水素酸化細菌の培養方法。
【請求項7】
前記水素発生工程は、前記金属体を、前記液体および水素の透過速度を規制する透過規制部で覆った状態で、前記液体と接触させる操作を含む請求項1または2に記載の水素酸化細菌の培養方法。
【請求項8】
培養容器と、
前記培養容器に収容され、水を含む液体との接触によって腐食反応を生じ、水素を発生させる金属体と、
発生させた前記水素と接触するように前記培養容器に収容され、水素酸化細菌が接種されている培地と、
を備えることを特徴とする水素酸化細菌の培養装置。
【請求項9】
前記培養容器は、前記液体および前記培地が混合された状態で収容する請求項8に記載の水素酸化細菌の培養装置。
【請求項10】
前記培養容器は、
前記金属体および前記液体を収容する第1収容部と、
前記培地を収容する第2収容部と、
前記第1収容部で発生した前記水素を前記第2収容部に移送する水素移送部と、
を備える請求項8に記載の水素酸化細菌の培養装置。
【請求項11】
前記水素移送部は、前記第1収容部で発生させた前記水素を、前記液体とともに、前記第2収容部に移送する請求項10に記載の水素酸化細菌の培養装置。
【請求項12】
前記培地に二酸化炭素、もしくは、酸素および二酸化炭素を供給するガス供給部を備える請求項8に記載の水素酸化細菌の培養装置。
【請求項13】
前記液体の温度を変更する温度変更部、前記液体のpHを変更するpH変更部、前記液体の流速を変更する流速変更部、および、前記液体に対する前記金属体の移動速度を変更する移動速度変更部、のうちの少なくとも1つを備える請求項8に記載の水素酸化細菌の培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素酸化細菌の培養方法および水素酸化細菌の培養装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素酸化細菌は、水素を水に酸化することでエネルギーを獲得し、炭酸固定を行って増殖する。そこで、二酸化炭素のような無機炭素を原料として水素酸化細菌を培養し、様々な化学品を生産する取り組みが進められている。これにより、カーボンニュートラルの実現に寄与しつつ、化学品の生産が可能になる。
【0003】
特許文献1には、水素酸化細菌の培養方法として、まず、培養容器に培地を入れ、次に、培養容器内に水素、酸素および二酸化炭素を含む混合ガスを供給すること、および混合ガスが供給された培養容器内で、水素酸化細菌を静置培養または振盪培養することが開示されている。また、混合ガス中の水素、酸素、二酸化炭素の容量比を最適化することにより、水素酸化細菌の生育がよくなり、目的とする化合物を効率よく製造できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/207812号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の培養方法では、水素、酸素および二酸化炭素をあらかじめ大量に用意しておく必要がある。特に水素は、可燃性ガスであることから、その保管には細心の注意を払う必要がある。このため、特許文献1に記載の培養方法は、安全性への配慮が必要であること、設備投資の負担が大きいこと等が課題となる。また、混合ガスを培養容器内に供給するためには、水素ガスや混合ガスを加圧して保管したり、ポンプを使用したりする必要がある。このため、水素酸化細菌の社会実装を考慮した場合、水素の保管や供給に必要なエネルギーの削減が求められる。
【0006】
そこで、水素酸化細菌の培養において、大量の水素を保管することなく、かつ、エネルギー消費を抑えながら水素を供給できる仕組み作りが課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の適用例に係る水素酸化細菌の培養方法は、
金属体と水を含む液体とを接触させて、前記金属体に腐食反応を生じさせることにより、水素を発生させる水素発生工程と、
発生させた前記水素を水素酸化細菌が接種されている培地に供給する水素供給工程と、
を有する。
【0008】
本発明の適用例に係る水素酸化細菌の培養装置は、
培養容器と、
前記培養容器に収容され、水を含む液体との接触によって腐食反応を生じ、水素を発生させる金属体と、
発生させた前記水素と接触するように前記培養容器に収容され、水素酸化細菌が接種されている培地と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る水素酸化細菌の培養装置を示す模式図である。
【
図2】
図1の金属体の一例を示す部分断面図である。
【
図3】実施形態の第1変形例に係る水素酸化細菌の培養装置を示す模式図である。
【
図4】実施形態の第2変形例に係る水素酸化細菌の培養装置を示す模式図である。
【
図5】実施形態の第3変形例に係る水素酸化細菌の培養装置を示す模式図である。
【
図6】実施形態の第4変形例に係る水素酸化細菌の培養装置を示す模式図である。
【
図7】
図6に示す透過規制部を別の部材で置き換えた例である。
【
図8】
図6に示す透過規制部を別の部材で置き換えた例である。
【
図9】
図6に示す透過規制部を別の形態に変更した例である。
【
図10】実施形態の第5変形例に係る水素酸化細菌の培養装置を示す模式図である。
【
図11】実施形態の第6変形例に係る水素酸化細菌の培養装置を示す模式図である。
【
図12】実施形態に係る水素酸化細菌の培養方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の水素酸化細菌の培養方法および水素酸化細菌の培養装置を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
1.水素酸化細菌の培養装置
まず、実施形態に係る水素酸化細菌の培養装置について説明する。
【0012】
前述したように、水素酸化細菌は、水素をエネルギー源として生育するとともに、二酸化炭素を炭素源として生育できる細菌である。そして、水素酸化細菌、水素および二酸化炭素を用いることにより、化学品を合成することができる。これにより、温室効果ガスである二酸化炭素を資源化することができ、カーボンニュートラルの実現に寄与できる。
【0013】
このようにして化学品を合成するためには、水素酸化細菌を容易にかつ効率よく培養することが求められる。特に水素ガスを大量に貯蔵、輸送する場合、保安上の様々な規制を満たすための手間やコストが必要となる。このため、貯蔵や輸送する水素ガスの量をできるだけ抑えることが求められる。また、貯蔵や輸送には、水素ガスの圧縮や液化が求められる場合が多い。水素ガスの圧縮や液化には多量のエネルギーが消費されることから、水素酸化細菌の培養にあたっては、エネルギー消費の抑制も課題となる。
【0014】
本発明者は、上記の課題を解決する手段について鋭意検討を重ねた。そして、水素酸化細菌を培養しようとする場所においてオンデマンドで水素を発生させ、かつ、発生させた水素を少ないエネルギー消費で培地に送り込むことのできる培養装置を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
図1は、実施形態に係る水素酸化細菌の培養装置1を示す模式図である。
図1に示す水素酸化細菌の培養装置1は、培養容器2と、金属体3と、培地4と、を備える。金属体3は、培養容器2に収容され、水を含む液体、すなわち水溶液5との接触によって腐食反応を生じ、水素(H
2)を発生させる。また、培地4は、金属体3の腐食反応によって生じた水素と接触するように、培養容器2に収容されている。そして、培地4には水素酸化細菌が接種されている。
【0016】
このような水素酸化細菌の培養装置1によれば、金属体3と水溶液5との接触によって、水素を容易に形成することができる。このため、培地4に接種されている水素酸化細菌に対して水素を供給することができる。そうすれば、大量の水素を保管したり輸送したりすることなく、培地4に水素を供給することができる。また、水素を保管しておく必要がないため、水素の供給に必要なエネルギーの消費を抑えることができる。なお、本明細書において単に「水素」という場合には、水素分子(H2)のことを指す。
【0017】
以下、水素酸化細菌の培養装置1の各部について詳述する。
1.1.培養容器
図1に示す培養容器2は、第1収容部21と、第2収容部22と、水素移送部23と、ガス供給部25と、を備える。
【0018】
1.1.1.第1収容部
第1収容部21は、金属体3および水溶液5を収容する密閉容器である。第1収容部21には、水溶液5が貯留され、水素を発生させたいタイミングで、水溶液5中に金属体3が投入される。これにより、大量の水素を保管したり輸送したりすることなく、必要とするタイミングで水素を発生させることができる。金属体3の投入は、例えば、第1収容部21に設けられた図示しない開口部を介して行うことができる。また、金属体3が収容された第1収容部21ごと、新しいものに取り換えられるようになっていてもよい。
【0019】
水溶液5や培地4は、温度やpHや溶存水素や溶存酸素等の水質をモニタリングしておいてもよく、培地4の排ガスのガス成分をモニタリングしておいてもよく、その測定結果をフィードバックし、水溶液5の温度やpH等の水質を適時調整してもよい。
【0020】
水溶液5は、純水であってもよいが、純水は導電性が低い場合もあるため、電解質を含む水であるのが好ましい。電解質は、水溶液5に良好な導電性を付与し、局部電池の形成を促進する。
【0021】
電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化水素、塩化銅、硫化水素、水酸化ナトリウム等が挙げられる。したがって、水溶液5としては、例えば海水等が好ましく用いられる。
【0022】
水溶液5における電解質濃度は、特に限定されないが、0.5質量%以上であるのが好ましく、1質量%以上10質量%以下であるのがより好ましく、2質量%以上5質量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、電解質の消費量を抑えつつ、腐食の反応速度を特に高めることができる。つまり、電解質濃度が前記下限値を下回っても、前記上限値を上回っても、水溶液5の温度や金属体3の種類等によっては、反応速度が低下するおそれがある。
【0023】
水溶液5の温度は、特に限定されないが、15℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましい。これにより、腐食の反応速度をより高めることができる。なお、上限値は特に設定されていなくてもよいが、腐食の反応速度が高くなりすぎることや、取り扱いが難しくなること等を考慮すると、100℃以下に設定されるのが好ましい。
【0024】
第1収容部21の構成材料は、水溶液5と反応したり、水素によって変性したりしない材料であれば、特に限定されず、例えば、金属材料、ガラス材料、セラミック材料、樹脂材料等が挙げられる。
【0025】
また、
図1に示す第1収容部21は、密閉容器になっている。これにより、発生した水素をほとんど漏らさず、水素移送部23を介して第2収容部22に移送することができる。
【0026】
また、第1収容部21は、水溶液5を撹拌する撹拌装置、水溶液5を振とうさせる振とう装置等を備えていてもよい。これにより、腐食の反応速度をより高めることができる。
【0027】
さらには、金属体3表面で発生する水素は、その表面に留まる傾向があり、それを防止するため、金属体3を搖動させたり、超音波振動を与えてもよい。これらの撹拌や振とうや超音波振動は、水溶液5や培地4の、温度やpH等の水質のモニタリング結果や、培地4の排ガス成分のモニタリング結果による、フィードバックにより適時調整してもよい。
【0028】
1.1.2.第2収容部
第2収容部22は、培地4を収容する容器である。
図1では、第2収容部22が開放型の容器になっているが、密閉型の容器であってもよい。
図1に示す培地4は、液状をなしている。そして、培地4には、培養しようとする水素酸化細菌が接種されている。
【0029】
水素移送部23を介して移送された水素は、培地4中で放出される。これにより、水素がバブリングされ、培地4中に水素が供給される。
【0030】
なお、水素移送部23の培地4に浸かる先端は、
図1では単純な形状で示しているが、ドーナツ形状や渦巻形状や放射形状やその他の複雑形状であってもよいし、無数の穴があいていてもよい。
【0031】
一方、培地4には、ガス供給部25により、二酸化炭素、もしくは酸素と二酸化炭素が供給される。水素酸化細菌は、通性嫌気性や微好気性を有している場合が多いので、培地4に酸素を供給させるのが好ましい。また、二酸化炭素は、化学品の生産に必要な炭素源となる。
【0032】
第2収容部22の構成材料は、培地4と反応したり、水素によって変性したりしない材料であれば、特に限定されず、例えば、金属材料、ガラス材料、セラミック材料、樹脂材料等が挙げられる。
【0033】
また、第2収容部22は、培地4を撹拌する撹拌装置、培地4を振とうさせる振とう装置等を備えていてもよい。これにより、水素酸化細菌の培養速度をより高めることができる。
【0034】
また、培地4は、温度やpHや溶存酸素濃度や溶存水素濃度等をモニタリングしておいてもよく、培地4の排ガス成分をモニタリングしておいてもよく、その測定結果をフィードバックし、温度やpHや溶存酸素濃度や溶存水素濃度等を適時調整してもよい。
また、反応に使用されなかったガスを、再度リサイクルし、培地4に供給してもよい。
【0035】
1.1.3.水素移送部
水素移送部23は、第1収容部21と第2収容部22とを上空でつなぐ配管231を備える。配管231の一端は、第1収容部21の上部と気密的に接続され、配管231の他端は、第2収容部22に収容されている培地4中で開放されている。
【0036】
なお、水素移送部23には、図示しない水素透過膜等の膜やフィルターが用いられてもよい。これにより、より水素を選択的に供給することができる。
【0037】
また、図示しないバルブやポンプが用いられていてもよい。この場合でも、第1収容部21における水素の圧力を利用することはできるため、ポンプの容量を小さくすることが可能である。これにより、水素の供給におけるエネルギー消費を抑えることができる。
【0038】
第1収容部21で発生した水素は、浮力により上昇し、配管231の一端から他端に向かって抜け出る。これにより、第1収容部21から第2収容部22へ水素を移送することができる。また、第1収容部21では、密閉型の容器を用いることで、水素を圧縮する作業を行うことなく、大気圧より高い水素を発生させることができる。このため、水素移送部23は、ポンプを用いることなく、培地4に水素をバブリングすることができる。これにより、エネルギー消費を抑えながら水素を培地4に供給することができる。水素酸化細菌はその培養する過程において、必要とする水素も変化することから、培地4の温度やpHや溶存酸素濃度や溶存水素濃度等の水質をモニタリングして、その測定結果をフィードバックし、配管231に設置されているバルブやポンプ等の調整装置で、バブリングする水素量を調整してもよい。さらに、水素発生量が不足する場合、水溶液5中に、金属体3の量を増やしたり、温度やpH等の水質を適時調整したり、金属体3の搖動量を増加させたり、超音波振動を大きくしたりすることができる。さらに、水素移送部23を用いることで、培養容器2を第1収容部21と第2収容部22に分けることができる。これにより、水溶液5と培地4とを分けて貯留することができるので、例えば水溶液5の成分が水素酸化細菌の生育に与える影響を回避することができる。
【0039】
1.1.4.ガス供給部
ガス供給部25は、第2収容部22に収容されている培地4に対し、二酸化炭素、もしくは、酸素および二酸化炭素を含むガスG2を供給する。これにより、培地4に二酸化炭素、もしくは、酸素および二酸化炭素を継続して供給させることができる。その結果、水素酸化細菌を連続して培養することができ、かつ、二酸化炭素の固定による化学品の生産を連続して行うことができる。なお、ガスG2には、酸素や二酸化炭素以外の成分が含まれていてもよい。また、培養する水素酸化細菌の種類により、ガス供給部25より供給されるガスは適時調整され、さらには、温度やpHや溶存酸素濃度や溶存水素濃度等の水質をモニタリングして、その測定結果をフィードバックし、供給するガスを適時調整してもよい。二酸化炭素を含有するガスとは、例えば燃焼で生じた燃焼ガス等であり、水素酸化細菌の培養に影響がないもしくは小さい場合、そのまま供給でき、さらには、培地4に供給する前に、燃焼ガス等を精整し、水素酸化細菌の培養に影響のある成分を除去してもよい。
【0040】
ガス供給部25で供給される酸素は、例えば特定の水素酸化細菌の培養において、電子受容体として機能し、水素を酸化させる目的で用いられる。また、ガス供給部25で供給される二酸化炭素は、水素酸化細菌において炭酸固定され、化学品の原料とする目的で用いられる。
【0041】
なお、水素酸化細菌の培養で必要な各気体の体積比率は、水素:酸素:二酸化炭素の比が、一例として、8:1:1程度であるとされている。この比からずれていても構わないが、基本的には水素の体積比率が最も大きい。このため、ガスG2の流量も、水素に比べて十分に小さくてもよい。このため、ガス供給部25の動作に必要なエネルギーも、十分少なく抑えられる。
【0042】
1.2.金属体
金属体3の形態としては、例えば、粉状、顆粒状、塊状、チップ状、板状、棒状、線状等が挙げられる。また、成形により複雑形状の成形体にしてもよい。金属体3の形態によって比表面積が変化する。金属体3の比表面積は、水素の発生速度を左右することから、目的とする水素発生速度に応じて、金属体3の形態を選択すればよい。
【0043】
金属体3の構成材料は、水溶液5との接触によって腐食し、水素を発生し得る材料であれば、特に限定されない。金属体3は、特に、水素よりイオン化傾向が大きい金属元素を含むことが好ましい。これにより、金属体3は、水溶液5との接触によって水素を効率よく発生させる。
【0044】
水素よりイオン化傾向が大きい金属元素とは、例えば、Li、K、Ca、Na、Mg、Al、Ti、Zn、Fe、Co、Ni、Sn、Pb等が挙げられる。これらのうち、取り扱い性や水素発生効率等を考慮すると、Ca、Mg、Al、TiまたはZnが好ましく用いられる。
【0045】
金属体3の構成材料には、これらの金属元素を含む金属単体または化合物であれば好ましく用いられるが、特に、これらの金属元素で構成される金属単体または水素化化合物等がより好ましく用いられる。金属単体や水素化化合物であれば、水溶液5との反応性が特に良好な金属体3を実現することができる。
【0046】
また、金属体3の構成材料の具体例として、カルシウム単体、カルシウム基合金、水素化カルシウム、マグネシウム単体、マグネシウム基合金、水素化マグネシウム、アルミニウム単体、アルミニウム基合金、水素化アルミニウム、またはこれらを含有する複合材料等が挙げられる。
【0047】
このうち、マグネシウム単体、マグネシウム基合金、水素化マグネシウムまたはこれらのいずれかを含有する複合材料が好ましく用いられ、特にマグネシウム基合金またはマグネシウム基合金を含有する複合材料がより好ましく用いられる。これらは、水素発生効率が特に高いため、金属体3の構成材料として有用である。
【0048】
マグネシウム基合金としては、例えば、ASTM(米国試験材料協会)規格のAZ91A、AZ91B、AZ91D、AM60A、AM60B、AS41A、AZ31、AZ31B、AZ61A、AZ63A、AZ80A、AZ91C、AZ91E、AZ92A、AM100A、ZK51A、ZK60A、ZK61A、EZ33A、QE22A、ZE41A、M1A、WE54A、WE43B等が挙げられる。
【0049】
一方、複合材料としては、例えば、上記の金属元素を含む材料と、腐食を促進する成分を含む材料と、の複合材料が挙げられる。前者の材料は、例えば金属体3のマトリックス部を構成し、後者の材料はマトリックス部に分散した粒子を構成する。このような複合材料であれば、金属体3が水溶液5と接触したとき、マトリックス部と粒子との間に局部電池が形成され、かつ、その局部電池が金属体3の全体にわたってムラなく形成される。これにより、高速度で腐食反応を生じさせることができ、かつ、副生成物による反応速度の低下が抑制されやすくなる。
【0050】
図2は、
図1の金属体3の一例を示す部分断面図である。
図2に示す金属体3は、マトリックス部200と、マトリックス部200に分散する粒子部300と、を有する。なお、
図2に示す粒子部300の形状および分布状態は、模式的なものである。
【0051】
マトリックス部200は、上記の金属元素を含む材料で構成され、腐食反応によって主に腐食する部位である。マトリックス部200は、金属体3の断面において粒子部300よりも大きい面積分率を占める。
【0052】
粒子部300は、上記の腐食を促進する成分(腐食促進成分)を主成分とする材料で構成される。腐食促進成分は、マトリックス部200との間の電位差に伴うガルバニック腐食を生じさせる。これにより、粒子部300は、マトリックス部200の腐食を促進する。腐食促進成分は、Fe、Ni、Co、Cu、カーボンおよびこれらの少なくとも1種を含有する化合物のうちのいずれかであるのが好ましい。これらは、カソード過電圧が特に低くなる成分であるため、マトリックス部200の腐食を特に促進する。粒子部300において腐食促進成分が主成分であることは、元素分析の結果、原子数比でFe、Ni、Co、Cuおよびカーボンのいずれかの元素含有率が最も高いことにより特定できる。元素分析には、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX)による定性定量分析が用いられる。粒子部300におけるFe、Ni、CoまたはCuの元素含有率は、他の元素より高ければよいが、20原子%超であるのが好ましく、40原子%超であるのがより好ましい。なお、定性定量分析における粒子部300の特定にあたっては、例えば、走査型電子顕微鏡や光学顕微鏡の観察像において、他の部位とのコントラストや色調に基づく区別が可能である。また、粒子部300には、腐食促進成分以外の添加物や不純物が含まれていてもよい。
【0053】
腐食促進成分の具体例としては、鉄単体、もしくは酸化鉄、炭化鉄、窒化鉄、塩化鉄、硫化鉄、炭酸鉄、水酸化鉄のような鉄系化合物、ニッケル単体、もしくは酸化ニッケル、炭化ニッケル、窒化ニッケル、塩化ニッケル、硫化ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケルのようなニッケル系化合物、コバルト単体、もしくは酸化コバルト、炭化コバルト、窒化コバルト、塩化コバルト、硫化コバルト、炭酸コバルト、水酸化コバルトのようなコバルト系化合物、銅単体、もしくは酸化銅、炭化銅、窒化銅、塩化銅、硫化銅、炭酸銅、水酸化銅のような銅系化合物等や、グラファイト、カーボンブラック、カーボンファイバー等のカーボンが挙げられる。
【0054】
このうち、腐食促進成分は、Cu単体またはCu基化合物を主成分とすることが好ましい。また、Cu基化合物は、特に酸化銅、Cu-Al系化合物またはCu-Al-Mg系化合物であることが好ましい。これにより、金属体3の水素発生効率を特に高めることができる。また、マトリックス部200に水酸化マグネシウム層が生成した場合でも、それを破壊する効率が高いと考えられるため、より長期にわたって水素を発生させ得る金属体3を実現することができる。
【0055】
なお、酸化銅としては、例えば、CuO、Cu2O等が挙げられる。Cu-Al系化合物は、原子数比でCuの含有率が最も多く、次いでAlの含有率が高い化合物である。Cu-Al-Mg系化合物は、原子数比でCu、Al、Mgの順に含有率が高い化合物である。
【0056】
マトリックス部200と粒子部300との存在比は、金属体3の断面の観察像における面積比率によって求められる。
【0057】
図2に示す金属体3の断面の観察像において、表面101からの深さが1mmの点を中心として、500μm角の範囲Aを設定する。範囲Aの面積に対する粒子部300の面積の割合を、粒子部300の面積分率とする。
【0058】
この面積分率は、0.5%以上20.0%以下であるのが好ましく、1.0%以上15.0%以下であるのがより好ましく、2.0%以上10.0%以下であるのがさらに好ましい。粒子部300の面積分率を前記範囲内に設定することにより、マトリックス部200と粒子部300との量的なバランスが最適化されるため、金属体3の機械的強度を損なうことなく、粒子部300が均一に分布した金属体3が得られる。このような金属体3では、腐食促進成分が均一に分散しているため、腐食促進成分とマトリックス部200との間に形成される局部電池が、偏りなく分布する。このため、水素発生を阻害する副生成物が生成したとしても、金属体3の表面全体が副生成物で覆われにくくなり、結果的に腐食を継続させることができる。したがって、
図2に示すような金属体3によれば、マトリックス部200が失われるまで、水素を継続して効率よく発生させ続ける確率が高くなる。
【0059】
なお、面積分率が前記下限値を下回ると、粒子部300が不足するため、マトリックス部200や粒子部300の構成材料によっては、副生成物によって水素発生が阻害されるおそれがある。一方、面積分率が前記上限値を上回ると、粒子部300が過剰になるため、金属体3の機械的強度の低下や、マトリックス部200の比率が相対的に低下するため、水素発生効率の低下が生じるおそれがある。
【0060】
範囲Aにおける面積分率は、次のようにして算出される。まず、範囲Aにおいて、画像処理により、粒子部300の範囲を抽出する。画像処理には、例えば画像解析ソフトウエアOLYMPUS Stream等を用いることができる。また、観察像の拡大倍率は、300倍以上であるのが好ましい。次に、範囲Aの全面積に対する、粒子部300の面積の割合を算出する。この割合が面積分率となる。
【0061】
粒子部300の平均粒径は、30.0μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上15.0μm以下であるのがより好ましく、0.5μm以上10.0μm以下であるのがさらに好ましい。これにより、粒子部300が破壊の起点になりにくくなるので、金属体3の機械的強度の低下を抑制することができる。また、粒子部300がより均一に分布できるため、副生成物による水素発生の阻害がより起こりにくくなる。
【0062】
なお、粒子部300の平均粒径は、次のようにして算出される。まず、範囲Aにおいて、含まれている粒子部300の長軸の長さおよび短軸の長さをそれぞれ求める。次に、長軸の長さと短軸の長さの中間値を求める。このようにして算出した中間値の平均値が、粒子部300の平均粒径となる。
【0063】
また、粒子部300の平均アスペクト比は、4.0以下であるのが好ましく、3.0以下であるのがより好ましく、2.0以下であるのがさらに好ましい。粒子部300の平均アスペクト比が前記範囲内であれば、粒子部300の構造の異方性が小さくなる。このため、金属体3の機械的強度および剛性を等方的に高めることができる。これにより、金属体3の耐衝撃性を高めることができる。
【0064】
なお、粒子部300の平均アスペクト比は、次のようにして算出される。まず、範囲Aにおいて、含まれている粒子部300の長軸の長さおよび短軸の長さをそれぞれ求める。次に、短軸の長さに対する長軸の長さの比を「アスペクト比」とする。このようにして算出したアスペクト比の平均値が、粒子部300の平均アスペクト比となる。
【0065】
1.3.培地
培地4は、例えば、有機培地または無機培地が水に分散した液体培地とされる。有機培地としては、例えば、糖、有機酸、アミノ酸等の有機物を含む培地である。無機培地としては、例えば、炭酸塩を含む培地が挙げられる。この培地4には、水素酸化細菌が接種されている。水素酸化細菌は、培地4に供給された水素および酸素により生育し、二酸化炭素の炭酸固定を図る。その結果、様々な化学品が生産される。
【0066】
水素酸化細菌は、前述したように、水素をエネルギー源として生育するとともに、二酸化炭素を炭素源として生育できる細菌であれば、特に限定されない。水素酸化細菌の具体例としては、例えば、国際公開第2019/207812号明細書に記載されているヒドロゲノフィラス属細菌の形質転換体等が挙げられる。
【0067】
培地4の温度は、水素酸化細菌の種類に応じて適宜設定されるが、一例として30℃以上60℃以下であるのが好ましく、35℃以上55℃以下であるのがより好ましい。
【0068】
また、培地4のpHは、特に限定されないが、6.2以上8.0以下であるのが好ましく、6.4以上7.5以下であるのがより好ましい。これにより、水素酸化細菌の生育がより良好になり、化学品をより効率よく生産することができる。
【0069】
2.変形例
次に、実施形態の変形例に係る水素酸化細菌の培養装置について説明する。
【0070】
2.1.第1変形例
図3は、実施形態の第1変形例に係る水素酸化細菌の培養装置1を示す模式図である。
【0071】
以下、第1変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図3において前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0072】
図3に示す水素酸化細菌の培養装置1は、水素移送部23の構成が異なる以外、
図1に示す水素酸化細菌の培養装置1と同様である。
【0073】
図3に示す水素移送部23は、配管231と、配管231の途中に設けられたポンプ234と、を備える。配管231の一端は、水溶液5中で開放されている。そして、ポンプ234を備える水素移送部23は、溶存水素を含む水溶液5を第2収容部22へ移送する。水溶液5では、金属体3から発生した水素が飽和状態かまたはそれに近い状態で溶存している。つまり、ガスとしての水素ではなく、溶存水素を含む水溶液5を移送することにより、高濃度の溶存水素を効率よく移送することができる。その結果、培地4において水素酸化細菌を効率よく培養することができる。
【0074】
2.2.第2変形例
図4は、実施形態の第2変形例に係る水素酸化細菌の培養装置1を示す模式図である。
【0075】
以下、第2変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図4において前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0076】
図4に示す水素酸化細菌の培養装置1は、培養容器2が、水溶液5および培地4を混合した状態で収容していること以外、
図1に示す水素酸化細菌の培養装置1と同様である。つまり、
図1に示す水素酸化細菌の培養装置1では、培養容器2が第1収容部21と第2収容部22とを備えているのに対し、
図4に示す水素酸化細菌の培養装置1は、前述した第1収容部21と第2収容部22とが一体化された1つの培養容器2を備える。このような培養容器2では、金属体3からの水素の発生と、培地4に対する水素の供給と、が同時に行われる。つまり、水溶液5と培地4とが混在しているので、発生した水素を供給する手間を省くことができる。このような培養容器2は、より構造が簡単になるとともに、水素の供給に必要なエネルギーの消費を抑えることを可能にする。
【0077】
このような第2変形例によれば、培養容器2の構造の簡素化を図りつつ、金属体3の投入と少量のガスG2の供給とを行うだけで、効率よく水素を発生させ、培地4に供給することができる。
【0078】
2.3.第3変形例
図5は、実施形態の第3変形例に係る水素酸化細菌の培養装置1を示す模式図である。
【0079】
以下、第3変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図5において前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0080】
図5に示す水素酸化細菌の培養装置1は、培養容器2の内部を上下に仕切るガス透過膜26を備えること以外、
図4に示す水素酸化細菌の培養装置1と同様である。
【0081】
培養容器2の内部のうち、ガス透過膜26よりも下方の部位を下部262とし、ガス透過膜26よりも上方の部位を上部264とする。下部262には、金属体3および水溶液5が収容されている。上部264には、水素酸化細菌が接種された培地4が収容されている。
【0082】
また、
図5に示す培養容器2は、ガス供給部25を備える。ガス供給部25は、上部264にガスG2を供給する。
【0083】
このような水素酸化細菌の培養装置1では、1つの培養容器2を用いつつ、水溶液5と培地4とを互いに分離することができる。これにより、水素の発生および水素酸化細菌の生育を、互いに独立した空間で行わせることができる。その結果、培養容器2の構造の簡素化を図りつつ、水素発生効率および水素酸化細菌の培養効率をより高くできる。
【0084】
また、ガス透過膜26は、水素を選択的に透過させるため、水素の発生に伴う副生成物等の、培地4への移送を抑制することができる。
【0085】
2.4.第4変形例
図6は、実施形態の第4変形例に係る水素酸化細菌の培養装置1を示す模式図である。
【0086】
以下、第4変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図6および
図9において前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0087】
図6に示す水素酸化細菌の培養装置1は、金属体3の周囲を覆う透過規制部31を有すること以外、
図4に示す水素酸化細菌の培養装置1と同様である。
【0088】
図6に示す透過規制部31は、金属体3の表面を覆うゲル状をなしている。透過規制部31は、水素および水溶液5の透過速度を規制する機能を有する。このため、透過規制部31が設けられることにより、金属体3と水溶液5との接触機会が減少し、腐食の反応速度を低下させることができる。また、腐食によって発生した水素が上昇するとき、透過規制部31によって上昇速度が抑制される。これらの作用により、水素発生量を調整することができる。なお、透過速度を規制する機能とは、透過規制部31を設けない場合に比べて、水素の透過速度と水溶液5の透過速度の双方を小さくする機能である。
【0089】
金属体3をゲル状物質で覆うことで、金属体3の腐食生成物が水素酸化細菌と直接触れることが防げるので、水素酸化細菌の培養に腐食生成物が影響しないというメリットもある。培地4における溶存水素濃度には上限があり、一度に多量の水素が供給されても、培地4に供給できず、無駄になってしまう。このような場合、水素発生速度を抑制することができれば、無駄になる水素量を減らすことができるとともに、金属体3の腐食をより長時間にわたって持続させることができる。これにより、金属体3の消費効率を高めることができる。
【0090】
水素発生速度は、透過規制部31の厚さや密度に応じて調整できる。また、透過規制部31は、金属体3に付着させたまま一体に取り扱うことができる。
【0091】
透過規制部31の構成材料としては、例えば、各種エラストマーゲルが挙げられる。エラストマーゲルとしては、例えば、アラビアゴム、カラギーナン、寒天のような植物系高分子、キサンタンガム、デキストランのような微生物系高分子、コラーゲン、ゼラチンのような動物系高分子、カルボキシメチルデンプンのようなデンプン系高分子、メチルセルロースのようなセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウムのようなアルギン酸系高分子、ポリビニルメチルエーテルのようなビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリアクリル酸ナトリウムのようなアクリル系高分子、ポリエチレンイミンのような合成水溶性高分子、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸のような無機系水溶性高分子等が挙げられる。
【0092】
図7および
図8は、
図6に示す透過規制部31を別の部材で置き換えた例である。
図7は、金属体3の周囲を覆う透過規制部34を示す模式図である。
【0093】
前述した透過規制部31は、
図7に示す透過規制部34で置き換えられていてもよい。透過規制部34は、透過規制部31と同様、水素および水溶液5の透過速度を規制する機能を有する。また、透過規制部34は、閉じた膜状をなしており、内部にはあらかじめ水溶液5が充填されていてもよい。そして、このような透過規制部34を伴ったまま、金属体3を
図6に示す培養容器2に投入する。このような場合でも、
図6に示す水素酸化細菌の培養装置1と同様の効果が得られる。
【0094】
図8は、内部に金属体3を収容するとともに開口を有する容器35と、開口を塞ぐ透過規制部36と、を示す模式図である。
【0095】
前述した透過規制部31は、
図8に示す容器35および透過規制部36で置き換えられていてもよい。容器35は、金属体3を収容することにより、金属体3と水溶液5との接触を規制するとともに、金属体3の保管や取り扱いを容易にする。つまり、高温多湿の環境に放置しても、金属体3の変性を抑制することができる。したがって、容器35の構成材料としては、液密性や気密性を有する材料が用いられる。透過規制部36は、透過規制部31と同様、水素および水溶液5の透過速度を規制する機能を有する。そして、このような容器35や透過規制部36を伴ったまま、金属体3を
図6に示す培養容器2に投入する。このような場合でも、
図6に示す水素酸化細菌の培養装置1と同様の効果が得られる。
【0096】
以上のような透過規制部34、36が設けられることにより、金属体3と水溶液5との接触機会が減少し、腐食の反応速度を低下させることができる。また、腐食によって発生した水素が上昇するとき、透過規制部34、36によって上昇速度が抑制される。これらの作用により、水素発生量を調整することができる。
【0097】
図9は、
図6に示す透過規制部31を別の形態に変更した例である。
図9に示す水素酸化細菌の培養装置1は、培養容器2の下部に透過規制部32が充填されていること以外、
図4に示す水素酸化細菌の培養装置1と同様である。
【0098】
図9に示す透過規制部32は、金属体3を含む培養容器2の下部に充填されており、水素および水溶液5の透過速度を規制する機能を有する。つまり、透過規制部32は、体積が異なる以外、透過規制部31と同様である。したがって、透過規制部32を充填することにより、金属体3と水溶液5との接触機会が減少し、腐食の反応速度を低下させることができる。また、腐食によって発生した水素が上昇するとき、ゲル状をなす透過規制部32によって上昇速度が抑制される。これらの作用により、水素発生速度を制御することができる。
【0099】
なお、透過規制部32は、培養容器2の下部に充填しておくだけで、複数の金属体3を覆うことができる。また、金属体3を補給する場合は、透過規制部32の上方から金属体3を投入すればよい。金属体3は、比重が大きいため、透過規制部32を突き破って培養容器2の底面まで降下することができる。このため、前述した透過規制部31を形成する手間がかからず、操作が容易である。
【0100】
2.5.第5変形例
図10は、実施形態の第5変形例に係る水素酸化細菌の培養装置1を示す模式図である。
【0101】
以下、第5変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図10において前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0102】
図10に示す水素酸化細菌の培養装置1は、水溶液5に対して金属体3が移動するように構成されていること以外、
図4に示す水素酸化細菌の培養装置1と同様である。
【0103】
図10に示す水素酸化細菌の培養装置1は、撹拌器61を備える。撹拌器61は、撹拌翼612と、駆動部614と、シャフト616と、制御部618と、を有する。撹拌翼612は、回転することにより、水溶液5および培地4を撹拌する。また、撹拌翼612は、金属体3で構成されている。撹拌翼612が回転すると、水溶液5に対して金属体3が移動する。これにより、金属体3には溶存水素濃度の低い水溶液5が常に接触する。その結果、単位時間当たりの水素発生量を増やすことができる。駆動部614は、撹拌翼612を回転させる駆動力を発生させる。シャフト616は、駆動部614で発生した駆動力を撹拌翼612に伝達する。制御部618は、駆動部614の動作を制御することにより、撹拌翼612の回転速度を変更する。したがって、撹拌器61は、水溶液5に対する金属体3の移動速度を例えばゼロから所定の値まで任意に変更する移動速度変更部として機能する。これにより、水素発生量を目的とする値に調整することができる。なお、移動速度変更部の構成は、上記の構成に限定されない。
【0104】
2.6.第6変形例
図11は、実施形態の第6変形例に係る水素酸化細菌の培養装置1を示す模式図である。
【0105】
以下、第6変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図11において前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0106】
図11に示す水素酸化細菌の培養装置1は、水溶液5が流れるように構成されていること以外、
図4に示す水素酸化細菌の培養装置1と同様である。
【0107】
図11に示す水素酸化細菌の培養装置1は、水流発生器62を備える。水流発生器62は、ポンプ622と、制御部624と、を有する。ポンプ622は、水溶液5に流速を与える。流速が与えられた水溶液5は、金属体3に対して移動する。これにより、前述したように、溶存水素濃度の低い水溶液5が金属体3に接触することになり、単位時間当たりの有効な水素発生量を増やすことができる。制御部624は、ポンプ622の動作を制御することにより、水溶液5の流速を変更する。したがって、水流発生器62は、水溶液5の流速を例えばゼロから所定の値まで任意に変更する流速変更部として機能する。これにより、水素発生量を目的とする値に調整することができる。なお、流速変更部の構成は、上記の構成に限定されない。
【0108】
また、
図11に示す水素酸化細菌の培養装置1は、温度調整器63を備える。温度調整器63は、ヒーター632と、制御部634と、を有する。ヒーター632は、水溶液5の温度を上昇させる。温度が上昇した水溶液5では、金属体3を腐食させやすくなる。これにより、単位時間当たりの水素発生量を増やすことができる。制御部634は、ヒーター632の動作を制御することにより、水溶液5の温度を変更する。したがって、温度調整器63は、水溶液5の温度を例えば常温から所定の値まで任意に変更する温度変更部として機能する。これにより、水素発生量を目的とする値に調整することができる。なお、温度変更部の構成は、上記の構成に限定されない。
【0109】
また、
図11に示す水素酸化細菌の培養装置1は、pH調整器64およびセンサー65を備える。pH調整器64は、水溶液5のpHを制御する。pHを制御することで、金属体3の腐食をさせやすくなる。これにより、単位時間当たりの水素発生量を増やすことができる。センサー65は、水溶液5の温度やpHや溶存水素や溶存酸素等の測定結果、もしくは、および水溶液5からの排ガスのガス成分等の測定結果、をフィードバックする。これにより、水流や温度やpHが制御される。
【0110】
3.水素酸化細菌の培養方法
次に、実施形態に係る水素酸化細菌の培養方法について説明する。なお、以下の説明では、一例として、前述した水素酸化細菌の培養装置1を用いた方法について説明するが、本培養方法で用いる装置はこれに限定されない。
【0111】
図12は、実施形態に係る水素酸化細菌の培養方法を説明するためのフローチャートである。
【0112】
図12に示す水素酸化細菌の培養方法は、水素発生工程S102と、水素供給工程S104と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
【0113】
3.1.水素発生工程
水素発生工程S102では、金属体3と水溶液5(水を含む液体)とを接触させる。これにより、金属体3に腐食反応を生じさせ、水素を発生させる。
【0114】
金属体3と水溶液5との接触には、例えば、
図1に示すような培養容器2に水溶液5を収容し、その中に金属体3を投入する方法が用いられる。
【0115】
金属体3は、水素よりイオン化傾向が大きい金属元素を含むことが好ましい。これにより、金属体3は、水溶液5との接触によって水素を効率よく発生させることができる。
【0116】
また、上記金属元素は、特に、Ca、Mg、Al、TiまたはZnであるのが好ましい。これらを含む金属体3は、取り扱い性や水素発生効率が良好である。
【0117】
さらに、金属体3は、特に、マグネシウム基合金またはマグネシウム基合金を含有する複合材料を含むことが好ましい。これらは、水素発生効率が特に高いため、金属体3の構成材料として有用である。
【0118】
なお、水素発生工程S102では、金属体3から単位時間に発生する水素量を調整する操作を行うようにしてもよい。このような操作としては、水溶液5(液体)の温度、pH、水溶液5の流速、および、水溶液5に対する金属体3の移動速度、のうちの少なくとも1つを変更する操作が挙げられる。このような操作を含むことにより、水素発生量を目的とする値に調整することができる。これにより、無駄になる水素量を減らすことができるとともに、金属体3の腐食をより長時間にわたって持続させることができる。その結果、金属体3の消費効率を高めることができる。
【0119】
また、水素発生工程S102では、金属体3に対して部材を追加することにより、水素量を調整するようにしてもよい。例えば、
図6、
図7、
図8および
図9に示すように、金属体3を透過規制部31、32、34、36で覆った状態で、水溶液5(液体)と接触させるようにしてもよい。透過規制部31、32、34、36は、それぞれ水溶液5および水素の透過速度を規制する機能を有する。このような部材を追加することにより、水素発生量を目的とする値に調整することができる。これにより、金属体3の消費効率を高めることができる。
【0120】
3.2.水素供給工程
水素供給工程S104では、水素発生工程S102で発生させた水素を、水素酸化細菌が接種されている培地4に供給する。これにより、水素酸化細菌は、生育し、二酸化炭素の炭酸固定を図る。その結果、様々な化学品が生産される。
【0121】
また、水素供給工程S104では、
図1等に示すように、培地4に二酸化炭素もしくは酸素および二酸化炭素を供給する操作を含んでいてもよい。このような操作を含むことにより、培地4に二酸化炭素もしくは酸素および二酸化炭素を継続して供給させることができる。その結果、水素酸化細菌を連続して培養することができ、かつ、二酸化炭素の固定による化学品の生産を連続して行うことができる。
【0122】
また、水素発生工程S102および水素供給工程S104は、同時に行うようにしてもよい。つまり、水素発生工程S102および水素供給工程S104は、互いの時間的区別ができていなくてもよい。これにより、工程の管理の手間を省くことができ、省力化を図ることができる。両工程を同時に行うためには、例えば、
図4等に示す培養容器2を用いればよい。
【0123】
以上のようにして水素酸化細菌を培養することができる。培養した水素酸化細菌には、生産された化学品が含まれているので、これを任意の回収方法で回収すればよい。回収方法としては、例えば、分留、抽出、超音波霧化分離、クロマトグラフィー、晶析等の各種分離法が挙げられる。生産される化学品は、特に限定されないが、例えばエタノール、イソブタノール、乳酸等が挙げられる。また、培養した水素酸化細菌自体を、化学品として利用することができる。具体的には、培養した水素酸化細菌を、家畜飼料、養魚飼料のような各種飼料、蛋白質資源等として利用することができる。
【0124】
4.各実施形態が奏する効果
以上のように、実施形態に係る水素酸化細菌の培養方法は、水素発生工程S102と、水素供給工程S104と、を有する。水素発生工程S102では、金属体3と水溶液5(水を含む液体)とを接触させて、金属体3に腐食反応を生じさせることにより、水素を発生させる。水素供給工程S104では、発生させた水素を水素酸化細菌が接種されている培地4に供給する。
【0125】
このような水素酸化細菌の培養方法によれば、大量の水素を保管したり輸送したりすることなく、必要とするタイミングで水素を発生させることができる。また、水素の供給にあたって水素の高圧での圧縮や液化を伴わないので、水素の供給におけるエネルギー消費を抑えることができる。これにより、設備投資を抑えつつ、低コストで、水素酸化細菌を効率よく培養することができる。その結果、二酸化炭素の炭酸固定を図ることでカーボンニュートラルに寄与しつつ、化学品を生産することができる。
【0126】
また、金属体3は、水素よりイオン化傾向が大きい金属元素を含むことが好ましい。これにより、金属体3は、水溶液5との接触によって水素を効率よく発生させることができる。
【0127】
また、上述した金属元素は、Ca、Mg、Al、TiまたはZnであることが好ましい。これらを含む金属体3は、取り扱い性や水素発生効率が良好である。
【0128】
また、金属体3は、マグネシウム基合金、または、マグネシウム基合金を含有する複合材料を含むことが好ましい。これらは、水素発生効率が特に高いため、金属体3の構成材料として有用である。
【0129】
また、水素供給工程S104は、培地4に、二酸化炭素、もしくは、酸素および二酸化炭素を供給する操作を含んでいてもよい。このような操作を含むことにより、培地4に二酸化炭素もしくは酸素および二酸化炭素を継続して供給させることができる。その結果、水素酸化細菌を連続して培養することができ、かつ、二酸化炭素の固定による化学品の生産を連続して行うことができる。
【0130】
また、水素発生工程S102は、水溶液5(液体)の温度、pH、水溶液5の流速、および、水溶液5に対する金属体3の移動速度、のうちの少なくとも1つを変更する操作を含んでいてもよい。このような操作を含むことにより、水素発生量を目的とする値に調整することができる。これにより、無駄になる水素量を減らすことができるとともに、金属体3の腐食をより長時間にわたって持続させることができる。その結果、金属体3の消費効率を高めることができる。
【0131】
また、水素発生工程S102は、金属体3を、水溶液5(液体)および水素の透過速度を規制する透過規制部31、32、34、36で覆った状態で、水溶液5(液体)と接触させる操作を含んでいてもよい。透過規制部31、32、34、36は、それぞれ水溶液5および水素の透過速度を規制する機能を有する。このような操作を含むことにより、水素発生量を目的とする値に調整することができる。これにより、金属体3の消費効率を高めることができる。
【0132】
また、実施形態に係る水素酸化細菌の培養装置1は、培養容器2と、金属体3と、培地4と、を備える。金属体3は、培養容器2に収容され、水溶液5(水を含む液体)との接触によって腐食反応を生じ、水素を発生させる。培地4は、発生させた水素と接触するように培養容器2に収容され、水素酸化細菌が接種されている。
【0133】
このような水素酸化細菌の培養装置1によれば、大量の水素を保管したり輸送したりすることなく、必要とするタイミングで水素を発生させることができる。また、水素の供給にあたって水素の高圧での圧縮や液化を伴わないので、水素の供給におけるエネルギー消費を抑えることができる。これにより、構造が簡単で安価な培養装置であっても、水素酸化細菌を効率よく培養することができる。その結果、二酸化炭素の炭酸固定を図ることでカーボンニュートラルに寄与しつつ、化学品を生産することができる。
【0134】
また、培養容器2は、
図4等に示すように、水溶液5(液体)および培地4が混合された状態で収容するようになっていてもよい。このような培養容器2では、水溶液5と培地4とが混在しているので、発生した水素を供給する手間を省くことができる。したがって、培養容器2の構造をより簡単にできるとともに、水素の供給に必要なエネルギーの消費を抑えることができる。
【0135】
また、培養容器2は、第1収容部21と、第2収容部22と、水素移送部23と、を備えていてもよい。第1収容部21は、金属体3および水溶液5(液体)を収容する。第2収容部22は、培地4を収容する。水素移送部23は、第1収容部21で発生した水素を第2収容部22に移送する。
【0136】
このような培養容器2によれば、水溶液5と培地4とを分けて貯留することができる。このため、例えば水溶液5の成分が水素酸化細菌の生育に与える影響を回避することができる。
【0137】
また、水素移送部23は、水素透過膜を備えていてもよい。水素透過膜は、第1収容部21で発生した水素を第2収容部22に選択的に透過させる。これにより、水溶液5に溶解している酸素や、水素の発生に伴う副生成物等の、培地4への移送を抑制することができる。その結果、水素以外の成分が移送されることに伴う、水素酸化細菌の生育の阻害を抑制することができる。
【0138】
また、水素移送部23は、第1収容部21で発生させた水素を、水溶液5(液体)とともに、第2収容部22に移送するように構成されていてもよい。これにより、ガスとしての水素ではなく、溶存水素を含む水溶液5を移送することができるので、高濃度の溶存水素を効率よく移送することができる。その結果、培地4において水素酸化細菌を効率よく培養することができる。
【0139】
また、水素酸化細菌の培養装置1は、ガス供給部25を備えていてもよい。ガス供給部25は、培地4に二酸化炭素、もしくは、酸素および二酸化炭素を供給する。これにより、培地4に二酸化炭素、もしくは、酸素および二酸化炭素を継続して供給させることができる。その結果、水素酸化細菌を連続して培養することができる。
【0140】
また、水素酸化細菌の培養装置1は、水溶液5(液体)の温度を変更する温度変更部の一例である温度調整器63、前記液体のpHを変更するpH変更部の一例であるpH調整器64、水溶液5の流速を変更する流速変更部の一例である水流発生器62、および、水溶液5に対する金属体3の移動速度を変更する移動速度変更部の一例である撹拌器61、のうちの少なくとも1つを備える。これにより、水素発生量を目的とする値に調整することができる。その結果、金属体3の消費効率を高めることができる。
【0141】
以上、本発明の水素酸化細菌の培養方法および水素酸化細菌の培養装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の水素酸化細菌の培養方法は、前記実施形態に任意の目的の工程が付加されたものであってもよい。また、本発明の水素酸化細菌の培養装置は、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0142】
1…培養装置、2…培養容器、3…金属体、4…培地、5…水溶液、21…第1収容部、22…第2収容部、23…水素移送部、25…ガス供給部、26…ガス透過膜、31…透過規制部、32…透過規制部、34…透過規制部、35…容器、36…透過規制部、61…撹拌器、62…水流発生器、63…温度調整器、64…pH調整器、65…センサー、101…表面、200…マトリックス部、231…配管、234…ポンプ、262…下部、264…上部、300…粒子部、612…撹拌翼、614…駆動部、616…シャフト、618…制御部、622…ポンプ、624…制御部、632…ヒーター、634…制御部、A…範囲、G2…ガス、S102…水素発生工程、S104…水素供給工程