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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061586
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/26 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
G01R27/26 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050993
(22)【出願日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】111139739
(32)【優先日】2022-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523114084
【氏名又は名称】汎銓科技股▲分▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】506187511
【氏名又は名称】國立中興大學
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 茂男
(72)【発明者】
【氏名】柳 紀綸
(72)【発明者】
【氏名】周 學良
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 宜珊
(72)【発明者】
【氏名】林 喬蓉
(72)【発明者】
【氏名】薛 聿▲勲▼
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028BB05
2G028BB06
2G028CG07
2G028CG08
2G028CG30
2G028DH04
(57)【要約】
【課題】リーク電流の影響を受けずに半導体コンデンサの誘電体層の酸化膜換算膜厚を正確に計算する。また、走査型静電容量顕微鏡法を誘電体層の酸化膜換算膜厚の測定分野に利用し、走査型静電容量顕微鏡法の利用性を向上させる。
【解決手段】本発明の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法は、第1二酸化ケイ素層を有する第1半導体コンデンサ、及び第2二酸化ケイ素層を有する第2半導体コンデンサを提供し、2つの半導体コンデンサに変調電圧を印加し、第1走査型静電容量顕微鏡信号及び第2走査型静電容量顕微鏡信号を測定する。二酸化ケイ素層の酸化膜換算膜厚及び走査型静電容量顕微鏡信号に基づいてインピーダンス比を計算し、誘電体層を有する第3半導体コンデンサに変調電圧を印加し、第3走査型静電容量顕微鏡信号を測定する。最後に、第1二酸化ケイ素層の酸化膜換算膜厚、第1走査型静電容量顕微鏡信号、第3走査型静電容量顕微鏡信号、及びインピーダンス比に基づいて、誘電体層の酸化膜換算膜厚を取得する。
【選択図】図1(b)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体コンデンサ及び第2半導体コンデンサを提供する工程と、
前記第1半導体コンデンサは、第1二酸化ケイ素層及び第1空乏層を有し、
前記第2半導体コンデンサは、第2二酸化ケイ素層及び第2空乏層を有し、
前記第1二酸化ケイ素層及び前記第2二酸化ケイ素層は、既知の酸化膜換算膜厚を有し、
前記第1半導体コンデンサの第1総インピーダンスは、複数の第1領域の複数の第1インピーダンス、及び前記第1二酸化ケイ素層に対応する第1等価インピーダンスを含み、
前記第2半導体コンデンサの第2総インピーダンスは、複数の第2領域の複数の第2インピーダンス、及び前記第2二酸化ケイ素層に対応する第2等価インピーダンスを含み、
前記第1インピーダンスは、それぞれ前記第2インピーダンスに等しく、
走査型静電容量顕微鏡法(scanning capacitance microscopy)によって前記第1半導体コンデンサ及び前記第2半導体コンデンサに変調(modulation)電圧を印加し、前記第1空乏層及び前記第2空乏層の幅に周期的な変動を生じ、それぞれ前記第1半導体コンデンサ及び前記第2半導体コンデンサに対応する第1走査型静電容量顕微鏡信号及び第2走査型静電容量顕微鏡信号を測定する工程と、
前記第1二酸化ケイ素層及び前記第2二酸化ケイ素層の前記酸化膜換算膜厚、並びに前記第1走査型静電容量顕微鏡信号及び前記第2走査型静電容量顕微鏡信号に基づいて、インピーダンス比を計算する工程と、
第3半導体コンデンサを提供する工程と、
前記第3半導体コンデンサは、誘電体層及び第3空乏層を有し、
前記第3半導体コンデンサの第3総インピーダンスは、複数の第3領域の複数の第3インピーダンス、及び前記誘電体層に対応する第3等価インピーダンスを含み、
前記第3インピーダンスは、それぞれ前記第1インピーダンスに等しく、
前記走査型静電容量顕微鏡法によって前記第3半導体コンデンサに前記変調電圧を印加し、前記第3空乏層の幅に周期的な変動を生じ、前記第3半導体コンデンサに対応する第3走査型静電容量顕微鏡信号を測定する工程と、
前記第1二酸化ケイ素層の前記酸化膜換算膜厚、前記第1走査型静電容量顕微鏡信号、前記第3走査型静電容量顕微鏡信号、及び前記インピーダンス比に基づいて、前記誘電体層の酸化膜換算膜厚を取得する工程と、
を有することを特徴とする、
誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法。
【請求項2】
前記第1半導体コンデンサ、前記第2半導体コンデンサ、及び前記第3半導体コンデンサは、いずれも金属酸化膜半導体コンデンサであることを特徴とする、
請求項1に記載の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法。
【請求項3】
前記第1半導体コンデンサ、前記第2半導体コンデンサ、及び前記第3半導体コンデンサは、いずれもアースに電気的に接続される導電性プローブをさらに有することを特徴とする、
請求項1に記載の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法。
【請求項4】
前記第1二酸化ケイ素層及び前記第2二酸化ケイ素層の前記酸化膜換算膜厚は、周波数制御で前記第1半導体コンデンサ及び前記第2半導体コンデンサの静電容量-電圧の特性曲線を測定することで得られ、
前記周波数制御は、前記変調電圧の交流周波数に等しいことを特徴とする、
請求項1に記載の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法。
【請求項5】
前記第1半導体コンデンサは、第1電極層及び第1半導体基板をさらに有し、
前記第1電極層及び前記第1二酸化ケイ素層は、それぞれ前記第1半導体基板の底面及び頂面に位置し、
前記第2半導体コンデンサは、第2電極層及び第2半導体基板をさらに有し、
前記第2電極層及び前記第2二酸化ケイ素層は、それぞれ前記第2半導体基板の底面及び頂面に位置し、
前記第3半導体コンデンサは、第3電極層及び第3半導体基板をさらに有し、
前記第3電極層及び前記誘電体層は、それぞれ前記第3半導体基板の底面及び頂面に位置し、
前記第1インピーダンスは、前記第1空乏層のインピーダンス、前記第1電極層のインピーダンス、及び前記第1半導体基板のインピーダンスを含み、
前記第1等価インピーダンスは、前記第1二酸化ケイ素層と前記第1半導体基板との間の界面インピーダンス、及び前記第1二酸化ケイ素層のインピーダンスを含み、
前記第2インピーダンスは、前記第2空乏層のインピーダンス、前記第2電極層のインピーダンス、及び前記第2半導体基板のインピーダンスを含み、
前記第2等価インピーダンスは、前記第2二酸化ケイ素層と前記第2半導体基板との間の界面インピーダンス、及び前記第2二酸化ケイ素層のインピーダンスを含み、
前記第3インピーダンスは、前記第3空乏層のインピーダンス、前記第3電極層のインピーダンス、及び前記第3半導体基板のインピーダンスを含み、
前記第3等価インピーダンスは、前記誘電体層と前記第3半導体基板との間の界面インピーダンス、及び前記誘電体層のインピーダンスを含むことを特徴とする、
請求項1に記載の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法。
【請求項6】
前記第1二酸化ケイ素層及び前記第2二酸化ケイ素層の前記酸化膜換算膜厚、前記第1走査型静電容量顕微鏡信号、前記第2走査型静電容量顕微鏡信号、並びに前記インピーダンス比は、下式を満たすことを特徴とする、
請求項1に記載の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法。
S1/S2=1+(k-1)ZR
式中、S1は、前記第1走査型静電容量顕微鏡信号であり、S2は、前記第2走査型静電容量顕微鏡信号であり、kは、前記第2二酸化ケイ素層の前記酸化膜換算膜厚/前記第1二酸化ケイ素層の前記酸化膜換算膜厚であり、ZRは、前記インピーダンス比である。
【請求項7】
前記第1走査型静電容量顕微鏡信号、前記第3走査型静電容量顕微鏡信号、前記第1二酸化ケイ素層の前記酸化膜換算膜厚、及び前記インピーダンス比は、下式を満たすことを特徴とする、
請求項6に記載の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法。
S1/S3=1+(h-1)ZR
式中、S1は、前記第1走査型静電容量顕微鏡信号であり、S3は、前記第3走査型静電容量顕微鏡信号であり、ZRは、前記インピーダンス比であり、hは、前記誘電体層の前記酸化膜換算膜厚/前記第1二酸化ケイ素層の前記酸化膜換算膜厚である。
【請求項8】
前記インピーダンス比は、前記第1等価インピーダンス/前記第1総インピーダンスであることを特徴とする、
請求項6に記載の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法。
【請求項9】
前記誘電体層の異なる領域の前記酸化膜換算膜厚は、それぞれ前記異なる領域の前記第3走査型静電容量顕微鏡信号に対応することを特徴とする、
請求項1に記載の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法。
【請求項10】
前記誘電体層は、二酸化ケイ素層を有し、或いは二酸化ケイ素層及び高誘電率層を有することを特徴とする、
請求項1に記載の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜厚の取得方法、特に誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量-電圧(C-V)測定は、半導体素子、特に金属酸化膜半導体コンデンサ及び金属酸化膜半導体電界効果トランジスタのパラメータを得るために用いられる。大学の実験室及び半導体メーカーは、前記測定によって新しい材料、素子、及び回路を評価する。
【0003】
金属酸化膜半導体コンデンサは、半導体製造工程の基本要素であり、下から順に半導体基板、誘電体層、及び金属層を有する。金属酸化膜半導体コンデンサに対して静電容量-電圧測定を行う時に、金属酸化膜半導体コンデンサに直流電圧、及び周波数が10,000~1,000,000万Hzである交流信号を印加する。直流電圧によって金属酸化膜半導体コンデンサを駆動し、金属酸化膜半導体コンデンサが順に蓄積領域(accumulation region)、空乏領域(depletion region)及び反転領域(inversion region)になる。直流電圧が高い場合、基板内の多数の電荷担体が誘電体層の界面近くに蓄積される。電荷担体が誘電体層を通過できないため、電荷が界面近くに蓄積し続けて、蓄積領域の静電容量が最大値になる。直流電圧の低下につれて、誘電体層の界面において多数の電荷担体が反発し、空乏領域を形成する。逆直流電圧の増加につれて、電荷担体と誘電体層との間の距離が最大になり、総静電容量が最小値になる。静電容量-電圧測定を利用して誘電体層の酸化膜換算膜厚(EOT)を測定するが、直流電圧を利用するため、誘電体層にリーク電流を生じ、酸化膜換算膜厚の分析結果が不正確になる場合がある。
【0004】
そのため、本発明は、上記課題を鑑みて、従来の問題を解決するための誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法を提出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法によれば、直流電圧を使用しないため、リーク電流の影響を受けずに半導体コンデンサの誘電体層の酸化膜換算膜厚を正確に計算できる。また、走査型静電容量顕微鏡法を誘電体層の酸化膜換算膜厚の測定分野に利用し、走査型静電容量顕微鏡法の利用性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの実施例において、誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法は、下記工程を有する。
工程1:第1半導体コンデンサ及び第2半導体コンデンサを提供する。
第1半導体コンデンサは、第1二酸化ケイ素層及び第1空乏層を有する。第2半導体コンデンサは、第2二酸化ケイ素層及び第2空乏層を有する。第1二酸化ケイ素層及び第2二酸化ケイ素層は、既知の酸化膜換算膜厚を有する。第1半導体コンデンサの第1総インピーダンスは、複数の第1領域の複数の第1インピーダンス、及び第1二酸化ケイ素層に対応する第1等価インピーダンスを含む。第2半導体コンデンサの第2総インピーダンスは、複数の第2領域の複数の第2インピーダンス、及び第2二酸化ケイ素層に対応する第2等価インピーダンスを含む。全ての第1インピーダンスは、それぞれ全ての第2インピーダンスに等しい。
工程2:走査型静電容量顕微鏡法(scanning capacitance microscopy)によって第1半導体コンデンサ及び第2半導体コンデンサに変調(modulation)電圧を印加し、第1空乏層及び第2空乏層の幅に周期的な変動を生じ、それぞれ第1半導体コンデンサ及び第2半導体コンデンサに対応する第1走査型静電容量顕微鏡信号及び第2走査型静電容量顕微鏡信号を測定する。
工程3:第1二酸化ケイ素層及び第2二酸化ケイ素層の酸化膜換算膜厚、第1走査型静電容量顕微鏡信号、及び第2走査型静電容量顕微鏡信号に基づいて、インピーダンス比を計算する。
工程4:第3半導体コンデンサを提供する。
第3半導体コンデンサは、誘電体層及び第3空乏層を有する。第3半導体コンデンサの第3総インピーダンスは、複数の第3領域の複数の第3インピーダンス、及び誘電体層に対応する第3等価インピーダンスを含む。全ての第3インピーダンスは、それぞれ全ての第1インピーダンスに等しい。
工程5:走査型静電容量顕微鏡法によって第3半導体コンデンサに変調電圧を印加し、第3空乏層の幅に周期的な変動を生じ、第3半導体コンデンサに対応する第3走査型静電容量顕微鏡信号を測定する。
工程6:第1二酸化ケイ素層の酸化膜換算膜厚、第1走査型静電容量顕微鏡信号、第3走査型静電容量顕微鏡信号、及びインピーダンス比に基づいて、誘電体層の酸化膜換算膜厚を取得する。
【0007】
本発明の1つの実施例において、第1半導体コンデンサ、第2半導体コンデンサ、及び第3半導体コンデンサは、いずれも金属酸化膜半導体コンデンサである。
【0008】
本発明の1つの実施例において、第1半導体コンデンサ、第2半導体コンデンサ、及び第3半導体コンデンサは、いずれもアースに電気的に接続される導電性プローブをさらに有する。
【0009】
本発明の1つの実施例において、第1二酸化ケイ素層及び第2二酸化ケイ素層の酸化膜換算膜厚は、周波数制御で第1半導体コンデンサ及び第2半導体コンデンサの静電容量-電圧の特性曲線を測定することで得られる。周波数制御は、変調電圧の交流周波数に等しい。
【0010】
本発明の1つの実施例において、第1半導体コンデンサは、第1電極層及び第1半導体基板をさらに有する。第1電極層及び第1二酸化ケイ素層は、それぞれ第1半導体基板の底面及び頂面に位置する。第2半導体コンデンサは、第2電極層及び第2半導体基板をさらに有する。第2電極層及び第2二酸化ケイ素層は、それぞれ第2半導体基板の底面及び頂面に位置する。第3半導体コンデンサは、第3電極層及び第3半導体基板をさらに有する。第3電極層及び誘電体層は、それぞれ第3半導体基板の底面及び頂面に位置する。全ての第1インピーダンスは、第1空乏層のインピーダンス、第1電極層のインピーダンス、及び第1半導体基板のインピーダンスを含む。第1等価インピーダンスは、第1二酸化ケイ素層と第1半導体基板との間の界面インピーダンス、及び第1二酸化ケイ素層のインピーダンスを含む。全ての第2インピーダンスは、第2空乏層のインピーダンス、第2電極層のインピーダンス、及び第2半導体基板のインピーダンスを含む。第2等価インピーダンスは、第2二酸化ケイ素層と第2半導体基板との間の界面インピーダンス、及び第2二酸化ケイ素層のインピーダンスを含む。全ての第3インピーダンスは、第3空乏層のインピーダンス、第3電極層のインピーダンス、及び第3半導体基板のインピーダンスを含む。第3等価インピーダンスは、誘電体層と第3半導体基板との間の界面インピーダンス、及び誘電体層のインピーダンスを含む。
【0011】
本発明の1つの実施例において、第1二酸化ケイ素層及び第2二酸化ケイ素層の酸化膜換算膜厚、第1走査型静電容量顕微鏡信号、第2走査型静電容量顕微鏡信号、並びにインピーダンス比は、下式を満たす。
S1/S2=1+(k-1)ZR
式中、S1は、第1走査型静電容量顕微鏡信号である。S2は、第2走査型静電容量顕微鏡信号である。kは、第2二酸化ケイ素層の酸化膜換算膜厚/第1二酸化ケイ素層の酸化膜換算膜厚である。ZRは、インピーダンス比である。
【0012】
本発明の1つの実施例において、第1走査型静電容量顕微鏡信号、第3走査型静電容量顕微鏡信号、第1二酸化ケイ素層の酸化膜換算膜厚、及び前記インピーダンス比は、下式を満たす。
S1/S3=1+(h-1)ZR
式中、S1は、第1走査型静電容量顕微鏡信号である。S3は、第3走査型静電容量顕微鏡信号である。ZRは、インピーダンス比である。hは、誘電体層の酸化膜換算膜厚/第1二酸化ケイ素層の酸化膜換算膜厚である。
【0013】
本発明の1つの実施例において、インピーダンス比は、第1等価インピーダンス/第1総インピーダンスである。
【0014】
本発明の1つの実施例において、誘電体層の異なる領域の酸化膜換算膜厚は、それぞれ異なる領域の第3走査型静電容量顕微鏡信号に対応する。
【0015】
本発明の1つの実施例において、誘電体層は、二酸化ケイ素層を有し、或いは二酸化ケイ素層及び高誘電率層を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法によれば、直流電圧を使用しないため、リーク電流の影響を受けずに2つの既知の酸化膜換算膜厚及びインピーダンス比を利用し、半導体コンデンサの誘電体層の酸化膜換算膜厚を正確に計算できる。また、走査型静電容量顕微鏡法を誘電体層の酸化膜換算膜厚の測定分野に利用し、走査型静電容量顕微鏡法の利用性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1(a)】本発明の実施例の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法の各工程を示す模式図である。
図1(b)】本発明の実施例の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法の各工程を示す模式図である。
図2】本発明の実施例において、直流電圧を印加する前後の原子間力顕微鏡画像である。
図3】本発明の実施例において、直流電圧を印加する前後の走査型静電容量顕微鏡画像である。
図4】本発明の実施例において、直流電圧を印加する前後の酸化膜換算膜厚画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施例及び図面を開示しながら本発明の特徴及び効果を詳しく説明する。
【0019】
図面及び明細書において、同じ符号は、同じ又は類似の要素を示す。図面において、形状及び厚さを誇張して表示する場合がある。図面又は明細書に記載されていない素子は、当業者が既知のものである。当業者は、本発明の内容に基づいて様々な変更及び改良を行うことができる。
本明細書において、「1つの実施例」又は「実施例」等の文言は、少なくとも1つの実施例に関する特定な素子、構造又は特徴を示す。そのため、本明細書に記載の「1つの実施例」又は「実施例」の文言は、同じ実施例に対することとは限らない。なお、複数の実施例に記載の特定な部材、構造、及び特徴を適切に組み合わせることができる。
本明細書において、「1つの実施例」又は「実施例」等の文言は、少なくとも1つの実施例に関する特定な素子、構造又は特徴を示す。そのため、本明細書に記載の「1つの実施例」又は「実施例」の文言は、同じ実施例に対することとは限らない。なお、複数の実施例に記載の特定な部材、構造、及び特徴を適切に組み合わせることができる。
下記内容があくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示される。明細書及び請求項において、「1つ」及び「前記」は、特に限定しない限り、「1つ又は少なくとも1つ」の素子又は成分を示す。また、単数形の冠詞は、前後の文章から明らかに複数形であると分からない限り、複数の素子又は成分の意味も含む。なお、「中に」は、特に限定しない限り、「中に」及び「上に」の意味も含む。明細書及び請求項に記載の用語(terms)は、特に限定しない限り、当業者が理解する意味と同じ意味を有する。また、一部の特定の用語は、後述で明確に定義して説明する。明細書に記載の用語は、あくまで例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。なお、本発明は、下記各実施例に限定されない。
本明細書で使用する「含む、備える」、「有する」、「含有する」などの用語は、オープンエンド形式(open-ended)であり、つまり、挙げられたものに限定されないことを意図している。また、本発明のいずれの実施形態或いは特許請求の範囲は、本発明が開示した目的、長所或いは特徴の全てを達成する必要はない。また、要約と発明の名称は、特許文献を検索するのに用いられるものであり、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。
また、「(電気)接続」は、直接及び間接的な(電気)接続手段を示す。例えば、第1装置が第2装置に接続されるとは、前記第1装置が直接に前記第2装置に接続されること、又は他の装置又は他の接続手段を介して間接的に前記第2装置に接続されるのを表する。また、電気信号は、その伝送過程において減衰又は他の変化が生じる場合があるが、特に限定しない限り、伝送元又は提供元での信号及び受信側での信号が同じ信号と見なされるべきである。例えば、電気信号Sが電子回路の端子Aから電子回路の端子Bに伝送される時に、トランジスタスイッチのソースとドレイン電極、及び/又は寄生容量を通ることで電圧降下を生じる。しかしながら、意図的に伝送時に生じた減衰又は他の変化を使用して特定の技術的な効果を達成する場合以外、電子回路の端子Aでの電気信号S及び端子Bでの電気信号Sは、同じ信号と見なされるべきである。
特に明記しない限り、一部の用語は、1つの実施例において有しても有しなくてもよい特徴、素子、又は工程を示す。他の実施例において、それらの特徴、素子、又は工程が必要とされない場合がある。
【0020】
本発明の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法によれば、直流電圧を使用しないため、リーク電流の影響を受けずに2つの既知の酸化膜換算膜厚及びインピーダンス比を利用し、半導体コンデンサの誘電体層の酸化膜換算膜厚を正確に計算できる。また、走査型静電容量顕微鏡法を誘電体層の酸化膜換算膜厚の測定分野に利用し、走査型静電容量顕微鏡法の利用性を向上させる。
【0021】
図1(a)、図1(b)は、本発明の実施例の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法の各工程を示す模式図である。図1(a)、図1(b)を参照しながら説明する。以下、本発明の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法を説明する。まず、図1(a)に示す第1半導体コンデンサ10及び第2半導体コンデンサ12を提供する。第1半導体コンデンサ10は、第1二酸化ケイ素層100及び第1空乏層101を有する。第2半導体コンデンサ12は、第2二酸化ケイ素層120、及び第2空乏層121を有する。第1二酸化ケイ素層100及び第2二酸化ケイ素層120は、既知の酸化膜換算膜厚を有する。第1半導体コンデンサ10の第1総インピーダンスは、複数の第1領域の複数の第1インピーダンス、及び第1二酸化ケイ素層100に対応する第1等価インピーダンスを含む。第2半導体コンデンサ12の第2総インピーダンスは、複数の第2領域の複数の第2インピーダンス、及び第2二酸化ケイ素層120に対応する第2等価インピーダンスを含む。全ての第1インピーダンスは、それぞれ全ての第2インピーダンスに等しい。
【0022】
1つの実施例において、第1半導体コンデンサ10及び第2半導体コンデンサ12は、いずれも金属酸化膜半導体コンデンサである。第1半導体コンデンサ10は、例えば、第1二酸化ケイ素層100、第1空乏層101、第1電極層102、第1半導体基板103、及び導電性プローブ104を有する。第1電極層102及び第1二酸化ケイ素層100は、それぞれ第1半導体基板103の底面及び頂面に位置する。第1空乏層101は、第1半導体基板103内に形成される。導電性プローブ104は、第1二酸化ケイ素層100に接触し、走査型静電容量顕微鏡測定システム20及びアース端子に電気接続される。走査型静電容量顕微鏡測定システム20は、超高周波静電容量センサー(ultra-high frequency capacitance sensor)及びロックインアンプ(lock-in amplifier)を有する。第1電極層102は、変調電圧源22に電気接続される。変調(modulation)電圧源22は、交流電圧である変調電圧Vmを生じる。全ての第1インピーダンスは、導電性プローブ104のインピーダンスZp1、第1空乏層101のインピーダンスZd1、第1電極層102のインピーダンスZe1、及び第1半導体基板103のインピーダンスZs1を含む。第1等価インピーダンスZeq1は、第1二酸化ケイ素層100と第1半導体基板103との間の界面インピーダンスZit1、及び第1二酸化ケイ素層100のインピーダンスZo1を含む。第1二酸化ケイ素層100と第1半導体基板103との間の界面インピーダンスZit1を低減するために、第1半導体基板103は、例えばシリコン基板が挙げられるが、それらに限定されない。
【0023】
第2半導体コンデンサ12は、例えば、第2二酸化ケイ素層120、第2空乏層121、第2電極層122、第2半導体基板123、及び導電性プローブ124を有する。第2電極層122及び第2二酸化ケイ素層120は、それぞれ第2半導体基板123の底面及び頂面に位置する。第2空乏層121は、第2半導体基板123内に形成される。導電性プローブ124は、第2二酸化ケイ素層120に接触し、走査型静電容量顕微鏡測定システム20及びアース端子に電気接続される。第2電極層122は、変調電圧源22に電気接続される。全ての第2インピーダンスは、導電性プローブ124のインピーダンスZp2、第2空乏層121のインピーダンスZd2、第2電極層122のインピーダンスZe2、及び第2半導体基板123のインピーダンスZs2を含む。第2等価インピーダンスZeq2は、第2二酸化ケイ素層120と第2半導体基板123との間の界面インピーダンスZit2、及び第2二酸化ケイ素層120のインピーダンスZo2を含む。Zp2、Zd2、Ze2及びZs2は、それぞれZp1、Zd1、Ze1及びZs1に等しい。第2二酸化ケイ素層120と第2半導体基板123との間の界面インピーダンスZit2を低減するために、第2半導体基板123は、例えばシリコン基板が挙げられるが、それらに限定されない。
【0024】
そして、走査型静電容量顕微鏡法(scanning capacitance microscopy)及び変調電圧源22によって第1半導体コンデンサ10及び第2半導体コンデンサ12に変調電圧Vmを印加し、第1空乏層101及び第2空乏層121の幅に周期的な変動を生じ、走査型静電容量顕微鏡測定システム20を利用し、それぞれ第1半導体コンデンサ10及び第2半導体コンデンサ12に対応する第1走査型静電容量顕微鏡信号及び第2走査型静電容量顕微鏡信号を測定する。走査型静電容量顕微鏡信号の単位は、ボルト(V)である。空乏層の静電気容量値の変化量/変調電圧Vmの電圧値の変化量は、対応する走査型静電容量顕微鏡信号に正比例する。第1走査型静電容量顕微鏡信号及び第2走査型静電容量顕微鏡信号は、それぞれ以S1及びS2である。Zp1、Ze1、Zs1、Zeq1、Zp2、Ze2、Zs2、及びZeq2が固定値であり、Zd1又はZd2のみが変調電圧Vmによって変動するため、下式を得る。
式中、αは、システムパラメータである。
そして、第1二酸化ケイ素層100及び第2二酸化ケイ素層120の酸化膜換算膜厚、並びに第1走査型静電容量顕微鏡信号S1及び第2走査型静電容量顕微鏡信号S2に基づいて、インピーダンス比ZRを計算する。
式中、Ceq1は、Zeq1に対応する静電容量である。ωは、角周波数である。
Ceq2=kCeq2
式中、EOT1は、第1二酸化ケイ素層100の酸化膜換算膜厚である。EOT2は、第2二酸化ケイ素層120の酸化膜換算膜厚である。
そのため、
S1/S2=1+(k-1)ZR
式中、kは、第2二酸化ケイ素層120の酸化膜換算膜厚/第1二酸化ケイ素層100の酸化膜換算膜厚である。具体的には、インピーダンス比ZRは、第1等価インピーダンスZeq1/第1総インピーダンスである。
【0025】
インピーダンス比ZRを計算した後、図1(b)に示す第3半導体コンデンサ14を提供する。第3半導体コンデンサ14は、誘電体層140及び第3空乏層141を有する。第3半導体コンデンサ14の第3総インピーダンスは、複数の第3領域の複数の第3インピーダンス、及び誘電体層140に対応する第3等価インピーダンスを含む。全ての第3インピーダンスは、それぞれ全ての第1インピーダンスに等しい。1つの実施例において、第3半導体コンデンサ14は、金属酸化膜半導体コンデンサである。第3半導体コンデンサ14は、例えば、誘電体層140、第3空乏層141、第3電極層142、第3半導体基板143、及び導電性プローブ144を有する。第3電極層142及び誘電体層140は、それぞれ第3半導体基板143の底面及び頂面に位置する。第3空乏層141は、第3半導体基板143内に形成される。導電性プローブ144は、誘電体層140に接触し、走査型静電容量顕微鏡測定システム20及びアース端子に電気接続される。第3電極層142は、変調電圧源22に電気接続される。全ての第3インピーダンスは、導電性プローブ144のインピーダンスZp3、第3空乏層141のインピーダンスZd3、第3電極層142のインピーダンスZe3、及び第3半導体基板143のインピーダンスZs3を含む。第3等価インピーダンスZeq3は、誘電体層140と第3半導体基板143との間の界面インピーダンスZit3、及び誘電体層140のインピーダンスZo3を含む。Zp3、Zd3、Ze3及びZs3は、それぞれZp1、Zd1、Ze1及びZs1に等しい。誘電体層140と第3半導体基板143との間の界面インピーダンスZit3を低減するために、第3半導体基板143は、例えばシリコン基板が挙げられるが、それらに限定されない。
【0026】
そして、走査型静電容量顕微鏡法によって第3半導体コンデンサ14に変調電圧Vmを印加し、第3空乏層141の幅に周期的な変動を生じ、第3半導体コンデンサ14に対応する第3走査型静電容量顕微鏡信号S3を測定する。最後に、第1二酸化ケイ素層100の酸化膜換算膜厚、第1走査型静電容量顕微鏡信号S1、第3走査型静電容量顕微鏡信号S3、及びインピーダンス比ZRに基づいて、誘電体層140の酸化膜換算膜厚を取得する。
S1/S2=1+(k-1)ZR
であるため、
S1/S3=1+(h-1)ZR
式中、hは、誘電体層140の酸化膜換算膜厚/第1二酸化ケイ素層100の酸化膜換算膜厚である。
【0027】
本発明の1つの実施例において、誘電体層140は、二酸化ケイ素層を有し、或いは二酸化ケイ素層及び高誘電率層を有する。高誘電率層の材料、例えば二酸化ハフニウムが挙げられる。当誘電体層140が二酸化ケイ素層を有し、或いは二酸化ケイ素層及び高誘電率層を有する場合、二酸化ケイ素層は、高誘電率層と第3半導体基板143との間に位置する。第1二酸化ケイ素層100及び第2二酸化ケイ素層120の酸化膜換算膜厚は、周波数制御で第1半導体コンデンサ10及び第2半導体コンデンサ12の静電容量-電圧の特性曲線を測定することで得られる。高誘電率層と二酸化ケイ素層との間の界面に多くの欠陥(defects)が存在しているため、誘電体層140に高インピーダンスを生じる。そのため、第3半導体コンデンサ14に低周波の変調電圧Vmを印加する時にリーク電流を生じ、誘電体層140の酸化膜換算膜厚が不正確になる。前記問題及び静電容量-電圧(C-V)測定曲線の周波数分散(frequency dispersion)を避けるために、上記周波数制御は、変調電圧Vmの交流周波数に等しい。
【0028】
図2は、本発明の実施例において、直流電圧を印加する前後の原子間力顕微鏡(AFM)画像である。図2の横軸及び縦軸の単位は、ナノ(nm)である。図3は、本発明の実施例において、直流電圧を印加する前後の走査型静電容量顕微鏡(SCM)画像である。図3の横軸及び縦軸の単位は、ミリボルト(mV)である。図4は、本発明の実施例において、直流電圧を印加する前後の酸化膜換算膜厚(EOT)画像である。図4の横軸及び縦軸の単位はmナノ(nm)である。図1(b)、図2図3及び図4を参照しながら説明する。図2図3及び図4において、上部の画像は、直流電圧を印加する前の画像である。下部の画像は、直流電圧を印加した後の画像である。点線の円は、直流電圧の印加位置を示す。前記図面から分かるように、誘電体層140の異なる領域の酸化膜換算膜厚は、それぞれ誘電体層140の異なる領域の第3走査型静電容量顕微鏡信号に対応する。
【0029】
上記実施例の誘電体層の酸化膜換算膜厚の取得方法によれば、直流電圧を使用しないため、リーク電流の影響を受けずに2つの既知の酸化膜換算膜厚及びインピーダンス比を利用し、半導体コンデンサの誘電体層の酸化膜換算膜厚を正確に計算できる。また、走査型静電容量顕微鏡法を誘電体層の酸化膜換算膜厚の測定分野に利用し、走査型静電容量顕微鏡法の利用性を向上させる。
【0030】
上記内容は、あくまで本発明の実施例である。本発明は、上記実施例に限定されない。本発明の請求の範囲に基づいてなされた均等的な変更、改良は、いずれも本発明に含む。
【符号の説明】
【0031】
10 第1半導体コンデンサ
100 第1二酸化ケイ素層
101 第1空乏層
102 第1電極層
103 第1半導体基板
104 導電性プローブ
12 第2半導体コンデンサ
120 第2二酸化ケイ素層
121 第2空乏層
122 第2電極層
123 第2半導体基板
124 導電性プローブ
14 第3半導体コンデンサ
140 誘電体層
141 第3空乏層
142 第3電極層
143 第3半導体基板
144 導電性プローブ
20 走査型静電容量顕微鏡測定システム
22 変調電圧源
Vm 変調電圧
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
図4