(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006159
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】位置決め装置及びこの位置決め装置を有するワークハンドリング装置
(51)【国際特許分類】
F16M 7/00 20060101AFI20240110BHJP
F16M 11/24 20060101ALI20240110BHJP
F16M 13/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F16M7/00 D
F16M11/24 C
F16M13/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106788
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】597020753
【氏名又は名称】株式会社角田
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【弁理士】
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】角田 広明
(72)【発明者】
【氏名】石原 啓一
(57)【要約】
【課題】簡単で且つ短時間で正確な位置決めを行うことが可能な位置決め装置を有するワークハンドリング装置を提供すること。
【解決手段】位置決め装置1は、ワークストッカ102及びロボット104を収納可能であり、床面上を移動可能にするキャスタ110を有する筐体101に取り付けられる位置決め装置1であって、筐体101に固定される筐体固定部10と、床面に固定され、筐体固定部10を載置する床固定部20と、を備え、筐体固定部10は、鋼球13aと、鋼球13aの一部を露出させた状態で鋼球13aを回転自在に収容する収容部13bと、鋼球13aを下方に向けた収容部13bを上下移動させる支持ボルト14と、を有し、床固定部20は、鋼球13aを載せる凹部23bを有し、凹部23bは、中央部に形成され、鋼球13aと同じ曲率の球面部23dと、球面部23dに向かって直線状に傾斜するテーパ面部23cと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送させる搬送装置を収納可能であり、床面上を移動可能にする搬送手段を有する筐体に取り付けられる位置決め装置であって、
前記筐体に固定される筐体固定部と、床面に固定され、筐体固定部を載置する床固定部と、を備え、
前記筐体固定部は、鋼球と、当該鋼球の一部を露出させた状態で前記鋼球を回転自在に収容する収容部と、前記鋼球を下方に向けた前記収容部を上下移動させる移動手段と、を有し、
前記床固定部は、前記鋼球を載せる凹部を有し、
前記凹部は、中央部に形成され、前記鋼球と同じ曲率の球面部と、当該球面部に向かって直線状に傾斜するテーパ部と、を有する位置決め装置。
【請求項2】
ワークを出し入れ自在に収納するワークストッカと、
当該ワークストッカから出されたワークを把持し、当該ワークを所定の位置に移動させるロボットと、
前記ワークストッカ及び前記ロボットを収納する筐体と、
請求項1記載の位置決め装置と、を備えたワークハンドリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークストッカ等を収納する筐体の位置決めを行う位置決め装置及びこの位置決め装置を有するワークハンドリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場等において組立ラインにロボットを導入して、ロボットを用いて部品をパレット上から取り出し、基板等に移動させて装着する、といった組立て作業の自動化を図ることが行われている。
【0003】
図7は、従来におけるワークハンドリング装置100の外観を模式的に示す斜視図である。ワークハンドリング装置100は、筐体101と、ワークストッカ102と、ロボット載置装置103と、ロボット104と、制御盤105と、操作盤106と、ロボット制御盤107と、エア機器108と、を備えている。
【0004】
筐体101は、ワークストッカ102、ロボット載置装置103、制御盤105、操作盤106、ロボット制御盤107、エア機器108、その他ワークハンドリング装置100に関わる各種の部材を収納するフレーム体である。
【0005】
ワークストッカ102は、部品等の加工対象であるワーク121を複数並べて整列させた状態で収納するワーク供給トレイ120を、複数枚上下に並べた状態で支持し、部品供給トレイを一枚ずつ出し入れする装置である。
【0006】
ロボット載置装置103は、ロボット104を載置した基台をスライド移動させて、ロボット104を筐体101の内外に出し入れする装置である。
【0007】
ロボット104は、グリッパ104aを有し、グリッパ104aを駆動してワーク供給トレイ120内からワーク121を把持して、所定の加工位置にワーク121を移動させ、加工後にワーク121を加工位置からワーク供給トレイ120内にワーク121を戻す作業を自動的に行う。
【0008】
制御盤105は、ワークストッカ102を制御するための電気制御機器を収納する。
【0009】
操作盤106は、作業員の操作によって、ワークストッカ102、ロボット載置装置103、ロボット104の起動、停止や各種の設定を行う。
【0010】
ロボット制御盤107は、ロボット104を制御するための電気制御機器を収納する。
【0011】
エア機器108は、ロボット104のグリッパ104aを駆動させるためのエアを発生させる機器である。
【0012】
筐体101の最下部は矩形に形成されており、この矩形の四隅にキャスタ110が取り付けられている。このキャスタ110により、レイアウト変更等においてワークハンドリング装置100を別の位置に移動させることが容易に可能になる。
【0013】
筐体101の最下部に矩形における互いに対向する1組の2辺の中央部に、位置決め穴が形成された延在片111が延出している。ワークハンドリング装置100の移動先に予め穴を形成しておき、この穴と延在片111の位置決め穴とにボルト等を挿入し、固定することによって、ワークハンドリング装置100の位置決めが行われる。
【0014】
しかしながら、移動後において、ワークハンドリング装置が予め設定した位置に正確に位置付けられていなければ、ワークハンドリング装置はワークを正確に加工位置に搬送することが困難になる。このため、ワークハンドリング装置を予め設定した位置に正確に位置付けるために、従来、様々な位置決め機構が提案されている。
【0015】
従来、この種の技術としては、特許文献1に記載された技術がある。特許文献1には、軸部と、この軸部の先端に一体に形成された球体部と、前記軸部の後端を筐体に上下位置調整可能に取り付ける取付手段とからなる支柱と、球体部を、その中心を定位置として滑動可能に保持する球面軸受け部と、この球面軸受け部の下方に一体に形成された接地用底面部とからなる接地ベースと、球体部を軸部の周囲から被い、球面軸受け部に装着されて球体部を押圧ロックする袋ナットとを備えた、筐体の安定支持装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、ワークハンドリング装置を設定位置に位置付けたのちに、実際にワークハンドリング装置が想定通りの動作を行うか否かを確かめるために試運転を行う。このとき、想定通りの動作でなければロボットの動作に補正を加え、想定通りの動作が行われることが確認された場合に本格的な稼働が開始される。
【0018】
ここで、ワークハンドリング装置の位置決めが正確に行われると、その後に行われる各種の機器の位置決めや調整が行い易くなり、稼働までに係る時間を短縮することが可能になる。このため、より精度のよいワークハンドリング装置の位置決めが望まれている。しかしながら、筐体に載せる機器の重量が大きくなるほどワークハンドリング装置が重くなって移動させにくくなり、1mm単位の精度で位置決めすることは大変困難な作業になる。
【0019】
特許文献1の技術においては、球体部を球面軸受け部に保持させるときに、球体部が球面軸受け部を摺動するため、摩擦が大きければ球体部の最下部位が球面軸受け部の最下部位に正確に位置付くとは限らない。このため、作業員が筐体を押して球体部を球面軸受け部に保持させる、といった作業が必要となる場合がある。また、球体部が球面軸受け部に対して円滑に摺動するように、潤滑油を補充するといったメンテナンスを行う必要がある。
【0020】
本発明は、このような問題点に対して鑑みなされたものであり、簡単で且つ短時間で正確な位置決めを行うことが可能な位置決め装置及びこの位置決め装置を有するワークハンドリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備える。
【0022】
(1) ワークを搬送させる搬送装置を収納可能であり、床面上を移動可能にする搬送手段を有する筐体に取り付けられる位置決め装置であって、
前記筐体に固定される筐体固定部と、床面に固定され、筐体固定部を載置する床固定部と、を備え、
前記筐体固定部は、鋼球と、当該鋼球の一部を露出させた状態で前記鋼球を回転自在に収容する収容部と、前記鋼球を下方に向けた前記収容部を上下移動させる移動手段と、を有し、
前記床固定部は、前記鋼球を載せる凹部を有し、
前記凹部は、中央部に形成され、前記鋼球と同じ曲率の球面部と、当該球面部に向かって直線状に傾斜するテーパ部と、を有する位置決め装置。
(2) ワークを出し入れ自在に収納するワークストッカと、
当該ワークストッカから出されたワークを把持し、当該ワークを所定の位置に移動させるロボットと、
前記ワークストッカ及び前記ロボットを収納する筐体と、
(1)の位置決め装置と、を備えたワークハンドリング装置。
【0023】
(1)、(2)によれば、筐体に筐体固定部を固定し、床面に床固定部を固定し、筐体固定部の鋼球を床固定部の凹部に載せたときに、鋼球が転がりながらテーパ部から球面部に誘導されて、球面部に鋼球が当接する。このとき、球面部と鋼球とが同じ曲率であるため、鋼球が球面部からずれ難くなる。これにより、筐体固定部の鋼球を床固定部の凹部に載せることで自動的に芯出し調整が行われるようになり、簡単で且つ短時間で正確な位置決めを行うことができる。また、鋼球が凹部内を転がることによって、鋼球が球面部に誘導されるため、鋼球が凹部を摺動することが低減される。これにより、鋼球と凹部との間に潤滑油を注入するといったメンテナンスを行う機会を低減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、簡単で且つ短時間で正確な位置決めを行うことが可能な位置決め装置及びこの位置決め装置を有するワークハンドリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態における位置決め装置1の外観及び位置決め装置1を取り付けたワークハンドリング装置100の一部を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態における位置決め装置1の外観及び位置決め装置1を取り付けたワークハンドリング装置100の一部を模式的に示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態における位置決め装置1に係るアジャスタ部13付近の内部構成を示す一部断面を含む側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態における位置決め装置1に係るアジャスタ部13付近の内部構成を示す一部断面を含む側面図である。
【
図5】ワークハンドリング装置100の位置決め作業を行う直前の状態を示す側面図である。
【
図6】ワークハンドリング装置100の位置決め作業が完了した状態を示す側面図である。
【
図7】従来におけるワークハンドリング装置100の外観を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1及び
図2は本発明の一実施形態における位置決め装置1の外観及び位置決め装置1を取り付けたワークハンドリング装置100の一部を模式的に示す斜視図であり、
図1は、ワークハンドリング装置100を移動させて位置決めした状態を示し、
図2は、ワークハンドリング装置100を移動する前の状態を示している。なお、
図7に示す従来のワークハンドリング装置100と同一の部材もしくは同一機能の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0028】
筐体101には、最下部の四隅に支持脚130が備えられており、この支持脚130の近傍にキャスタ110が備えられている。支持脚130は、床面に当接する基台と、この基台を一端部に取り付けられ、他端部が筐体101に取り付けられ、基台を回転させることによって基台を上下方向に移動可能に支持するボルトと、を備えている。キャスタ110を転動自在にする場合には、支持脚130を上方に移動させて基台を床面から離間させる。ワークハンドリング装置100の位置決めが完了した場合には、支持脚130を下方に移動させて基台を床面に当接させる。
【0029】
位置決め装置1は、筐体101に固定される筐体固定部10と、床面に固定され、筐体固定部10を載置する床固定部20と、を備えている。
【0030】
[筐体固定部10]
図1に示す本実施形態における筐体101には、
図7に示す従来における筐体101の延在片111、111が削除された代わりに、筐体101において最下に位置する矩形のフレームにおける一対の短尺のフレームに、短尺方向に沿ってそれぞれ筐体固定部10が固定されている。
【0031】
筐体固定部10は、断面がL字形状の支持フレーム11と、この支持フレーム11の長手方向両端部にそれぞれ配置される位置調整部12と、を備えている。
【0032】
支持フレーム11は、L字の一方の平板である第1平板部11aと、L字の他方の平板である第2平板部11bと、第1平板部11aの長手方向両端部にL字形状の曲げを施すことによって形成された曲げ部11c、11cとを備えている。曲げ部11c、11cの下端部と第2平板部11bとは溶接等によって接合されている。
【0033】
第1平板部11aの両端部が、筐体101に固定され、第2平板部11bの下面は床面に対向する。位置調整部12は、第2平板部11bの両端部に配置される。第2平板部11bは、両端部に後述する支持ボルト14が挿通される孔部と、長手方向中央部に形成された孔部と、を有する。
【0034】
位置調整部12は、アジャスタ部13と、支持ボルト14と、ナット15と、を備えている。
【0035】
図3及び
図4は本発明の一実施形態における位置決め装置1に係るアジャスタ部13付近の内部構成を示す一部断面を含む側面図である。
図3及び
図4において二点鎖線で囲まれている部分が断面を示している。
【0036】
アジャスタ部13は、鋼球13aと、鋼球13aを自由方向に回転自在に支持する円柱状の収容部13bと、を備えている。鋼球13aは、収容部13bの内部にガタが無いように収容されており、収容部13bの一方の端面から鋼球13aの一部が露出している。収容部13bの他方の端面の中心に支持ボルト14が立設されている。このとき、収容部13bの中心軸と支持ボルト14の中心軸とは一致しており、この中心軸上に鋼球13aの中心が位置している。
【0037】
ナット15は、支持ボルト14に螺合自在であり、第2平板部11bの両端部に形成された孔部(図示せず)と同軸になるように第2平板部11bの下面に固定される。ナット16は、支持ボルト14に螺合自在であり、収容部13bの中心軸と同軸になるように収容部13bの上面に固定される。ナット17、17は、支持ボルト14に螺合自在であり、支持ボルト14の端部に位置付けられる。
【0038】
支持フレーム11に位置調整部12を取り付ける際、ナット17、17は支持ボルト14から取り外されている。そして、支持ボルト14をナット15に下側から螺合して、第1平板部11aから先端部を突出させ、この先端部にナット17、17を螺合させることにより、位置調整部12が支持フレーム11に支持される。ナット17、17は、支持ボルト14における予め設定した位置に配置されており、この位置から移動しないように互いに密着している。支持ボルト14を回転させることにより、支持ボルト14は上下移動が可能であり、支持ボルト14の移動に従ってアジャスタ部13が上下移動する。アジャスタ部13の下方移動はナット17、17が第2平板部11bまで可能であり、それ以上の下方移動は規制される。言い換えれば、ナット17、17を第2平板部11bに当接させることによって、鋼球13aの高さが決められる。
【0039】
[床固定部20]
図1、
図2に示すように、床固定部20は、長尺のベース板21と、ベース板21を固定するアンカー22と、アジャスタ部13を載置する受け皿23と、固定板24と、調整ネジ25と、を備えている。
【0040】
ベース板21は、第2平板部11bと同じ程度の幅を有し且つ支持フレーム11よりも若干長い、直方体形状の金属板である。ベース板21の両端部にはアンカー22を通すための孔部が形成されており、この孔部に対して若干中央寄りの部位に、受け皿23を嵌合させる凹部が形成されている。ベース板21の中央部には固定板24を嵌合させる凹部が形成されている。
【0041】
受け皿23は、
図3に示すように、円板状の本体23aと、本体23aの上面の中央に形成され、直線状に傾斜している漏斗形の凹部23bを備えている。本体23aは、ベース板21の両側部に形成された凹部に嵌合され、ネジ止めによって固定される。凹部23bは、直線状に傾斜するテーパ面部23cと、凹部23bの底部に形成された球面部23dと、によって構成される。球面部23dの曲率は、鋼球13aの曲率と同一である。凹部23bの深さは、収容部13bから露出している鋼球13aの高さよりも短く設定されている。このため、
図4に示すように、凹部23bの内部にアジャスタ部13の鋼球13aを載置した場合に、鋼球13aの最下部が球面部23dに適合する。このとき、受け皿23の上面と凹部23b下面とは離間した状態で維持される。
【0042】
2つの受け皿23、23の間隔は、2つのアジャスタ部13、13の間隔と同一に設定されている。
【0043】
固定板24は、直方体形状の金属板によって構成され、上面の中央に、ワークハンドリング装置100の位置決め後にワークハンドリング装置100を固定するためのボルト26が螺合する穴を有する。固定板24は、ベース板21の中央部に形成された凹部に嵌合され、ネジ止めによって固定される。
【0044】
調整ネジ25は、受け皿23、23及び固定板24に対してベース板21の幅方向の両側部に形成されたねじ孔(図示せず)に螺合される。そして、調整ネジ25を床面に当接させ、調整ネジ25を回転させて先端部の突出量を調整することにより、ベース板21の傾きを調整することができる。
【0045】
[ワークハンドリング装置100の位置決め]
次に、ワークハンドリング装置100の位置決め作業について説明する。
図5は、ワークハンドリング装置100の位置決め作業を行う直前の状態を示す側面図であり、
図6は、ワークハンドリング装置100の位置決め作業が完了した状態を示す側面図である。
【0046】
まず、作業員は、
図2に示すように、ワークハンドリング装置100の移動先となる床面に、アンカー22、22によって床固定部20を固定する。床固定部20は、移動後の筐体固定部10、10に対向するように予め設定された部位にそれぞれ固定される。作業員は、床固定部20を床面に固定した後、筐体固定部10、10の全ての受け皿23が同一の仮想水平面上に配置されるように、調整ネジ25によって床固定部20の傾きを調整する。
【0047】
一方、ワークハンドリング装置100において、作業員は、アジャスタ部13を回転させて、
図3に示すようにアジャスタ部13を上方に移動させておく。また、作業員は、支持脚130を上方に移動させて、キャスタ110が回転可能な状態にする。
【0048】
次に、作業員は、ワークハンドリング装置100を
図2の矢印方向に移動させ、
図5に示すように、筐体固定部10の鋼球13aと床固定部20の受け皿23とを対向させる。次に、作業員は、アジャスタ部13を回転させて、ナット17が支持フレーム11に当接するまでアジャスタ部13を下方に移動させる。このとき、鋼球13aの最下部位が受け皿23の中心からずれている場合には、鋼球13aがテーパ面部23cに当接する。この状態で、アジャスタ部13が下方に移動すると、鋼球13aがテーパ面部23cを転がってアジャスタ部13が中央の球面部23dに向かって移動する。このアジャスタ部13の移動に伴ってワークハンドリング装置100が微小に移動する。これにより、鋼球13aの中心が球面部23dの中心軸上に位置付けられ、アジャスタ部13と凹部23bとの芯出しが自動的に行われる。
【0049】
一のアジャスタ部13を、ナット17が支持フレーム11に当接するまで下方に移動させた後、他のアジャスタ部13についても同様に、ナット17が支持フレーム11に当接するまで下方に移動させる。この際、一のアジャスタ部13を下方に移動させた後、次に、一のアジャスタ部13に対して対角線上に位置するアジャスタ部13を下方に移動させることが望ましい。これにより、残りの2つのアジャスタ部13を球面部23dの中心付近に対向させることが可能になる。
【0050】
4つのアジャスタ部13がそれぞれ球面部23dに載置された後に、作業員は、
図6に示すように、第2平板部11bの長手方向中央部に形成された孔部にボルト26を通して固定板24の穴に螺合させる。これにより、筐体固定部10と床固定部20とがボルト26によって連結され、筐体固定部10と床固定部20とが離間することが防止される。以上により、ワークハンドリング装置100の位置決め作業が完了する。なお、アジャスタ部13が受け皿23に対して大きくずれており、鋼球13aが球面部23dに適合していない場合には、ボルト26の取り付けが困難である。言い換えれば、ボルト26が取り付けられた場合には鋼球13aが球面部23dに適合していると見なすことができる。
【0051】
[ワークハンドリング装置100の用途]
本実施形態に記載のワークハンドリング装置100について、用途は特に限定されないが、例えば、金属加工機械への加工対象物供給装置、マシニングセンタへの加工対象物供給装置、旋盤への加工対象物供給装置、半導体製造用部品供給装置、電子回路基板製造装置用電子部品供給装置、ボルト・ナット等の部品の定量供給装置、及び回転式各種機械部品供給装置等として利用可能である。
【実施例0052】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
【0053】
[位置決め装置1による位置決めの評価]
位置決め装置1を有するワークハンドリング装置100が工作機械への移動を繰り返した場合の位置決め再現精度の評価について説明する。
【0054】
まず、正方形の金属板を所定位置に配置する。ワークハンドリング装置100のロボット104のグリッパ104aにデジマチックを取り付ける。次に、金属板の側方に位置決め装置1を有するワークハンドリング装置100を移動させる。次に、ロボット104を駆動させてデジマチックの検知針を金属板の第1側面に直角方向から押し当て、このときのデジマチックの表示値を記録する。デジマチックの表示値は、検知針の移動量を示す。次に、ロボット104を駆動させてデジマチックの検知針を金属板の第1側面に直角な第2側面に直角方向から押し当て、このときのデジマチックの表示値を記録する。次に、ロボット104を駆動させてデジマチックの検知針を金属板の上面に直角方向(鉛直方向)から押し当て、このときのデジマチックの表示値を記録する。なお。以下の説明において、第1側面を押圧してデジマチックの表示値を記録することをX軸測定、第2側面を押圧してデジマチックの表示値を記録することをY軸測定、上面を押圧してデジマチックの表示値を記録することをZ軸測定、と称する。
【0055】
なお、ロボット104は、第1側面に対向するようにデジマチックを位置付けてX軸測定を行い、続いて、第2側面に対向するようにデジマチックの方向を変えてY軸測定を行い、続いて、上面に対向するようにデジマチックの方向を変えてZ軸測定を行ってから初期位置に戻るように予めプログラム(ティーチング)されている。
【0056】
そして、位置決め再現精度の評価を行う前に、位置決め装置1を有するワークハンドリング装置100を3回慣らしで移動させ、その後に、ワークハンドリング装置100を15回移動させて、X軸測定、Y軸測定、Z軸測定を行った。
【0057】
表1は、X軸測定、Y軸測定、Z軸測定の結果を示す。表1において、測定結果とともに1回目の測定値を基準とした変位を2回目以降に示した。
【表1】
【0058】
表2は、表1に示す測定結果に基づく最大変位、最小変位、平均、標準偏差(σ、3σ)を示す。
【表2】
【0059】
表2に示すように、位置決め装置1を有するワークハンドリング装置100によれば、1mm未満の高精度の位置決めが可能になることが分かる。工作機械側の治具にワークをしっかり押し当てるようにロボット104を運用するのであれば、ワークハンドリング装置100の移動後に再度ロボット104にティーチングする必要が無い。
【0060】
以上説明したように構成された本実施形態によれば、筐体101に筐体固定部10を固定し、床面に床固定部20を固定し、筐体固定部10の鋼球13aを床固定部20の凹部23bに載せたときに、鋼球13aが転がりながらテーパ面部23cから球面部23dに誘導されて、球面部23dに鋼球13aが当接する。このとき、球面部23dと鋼球13aとが同じ曲率であるため、鋼球13aが球面部23dからずれ難くなる。これにより、筐体固定部10の鋼球13aを床固定部20の凹部23bに載せることで自動的に芯出しが行われるようになり、簡単で且つ短時間で正確な位置決めを行うことができる。しかも、ロボット104がワークを移動させる移動先に対するワークハンドリング装置100の位置も正確になり、移動先の位置調整やロボット104に新たに覚えさせる動作を少なくすることができる。
【0061】
また、鋼球13aが受け皿23の凹部23b内を転がることによって、アジャスタ部13が移動するため、鋼球13aと凹部23bとの間に潤滑油を注入するといったメンテナンスを行う機会を低減することができる。
【0062】
なお、本発明の思想の範疇において、当業者であれば各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。