(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061596
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】収納家具と外衣、バッグまたはリュックサックとの間で使用形態が変化する製品
(51)【国際特許分類】
A41D 1/00 20180101AFI20240425BHJP
A45C 9/00 20060101ALI20240425BHJP
A45C 3/04 20060101ALI20240425BHJP
A41D 1/02 20060101ALI20240425BHJP
A45F 3/04 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A41D1/00 C
A45C9/00 Z
A45C3/04 Z
A41D1/02 Z
A41D1/00 H
A45F3/04 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086845
(22)【出願日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2022168803
(32)【優先日】2022-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】506419179
【氏名又は名称】株式会社くればぁ
(74)【代理人】
【識別番号】100180057
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】石橋衣理
【テーマコード(参考)】
2E181
3B030
3B031
3B045
【Fターム(参考)】
2E181AA04
2E181BB02
2E181BD04
3B030AA01
3B030AA06
3B030AB00
3B030AB11
3B030AB12
3B031AB12
3B031AB13
3B031AC01
3B031AC14
3B031AC15
3B031AC17
3B045AA05
3B045AA53
3B045CB05
3B045CE07
3B045FA01
3B045GA01
3B045GA02
3B045GB02
3B045JA02
3B045JB01
(57)【要約】
【課題】 フェーズフリーの考え方を取り入れた商品を提供する。
【解決手段】 収納家具5と外衣32、バッグまたはリュックサックとの間で使用形態が変化し、携行するために収納家具5から外衣32、バッグまたはリュックサックに使用形態を変化させた場合に収納家具5としての機能を維持できる製品51、および、外衣32、バッグまたはリュックサックと一体化され、背面に外衣32、バッグまたはリュックサックを収納する袋を有する収納家具5である。災害時に外衣32の形態として着用すれば、普段使う収納家具5の機能を失うことなく背負って両手を使える状態で移動できることになり、避難先で外衣32から収納家具5に使用形態を変化させれば、避難先で日常の生活を再開することもできる。これにより平常時と災害時という2つのフェーズ間をシームレスに移行できるようになる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納家具と外衣、バッグまたはリュックサックとの間で使用形態が変化する製品であって、携行するために収納家具から外衣、バッグまたはリュックサックに使用形態を変化させた場合においても収納家具としての機能を維持できる製品。
【請求項2】
外衣、バッグまたはリュックサックと一体化され、背面に外衣、バッグまたはリュックサックを収納する袋を有する収納家具。
【請求項3】
上端辺に外衣の後ろ身頃、バッグまたはリュックサックの背裏または上端との接合部を有する請求項2に記載の収納家具。
【請求項4】
前記接合部より上側または収納家具の左右端辺より外側に引掛手段を備えた、請求項3に記載の収納家具。
【請求項5】
引掛手段が、ハンガー、棒および/もしくは紐を通した通し穴、または、ハトメが入ったタグである請求項4に記載の収納家具。
【請求項6】
背面と外衣、バッグまたはリュックサックの背裏の互いに対応する位置に面ファスナーを有する請求項2に記載の収納家具。
【請求項7】
左右側辺から延びるベルト、および、当該ベルトの左右に一対の係合手段を備えた請求項2に記載の収納家具。
【請求項8】
外衣、バッグまたはリュックサックの材質は、収納家具と接合する側の面が親水性を有し、当該面と反対側の面が撥水性を有するポリエステル樹脂シートからなる請求項2に記載の収納家具。
【請求項9】
少なくとも外衣と一体化され、当該外衣の袖口に閉塞手段を備えたものである請求項2に記載の収納家具。
【請求項10】
少なくとも外衣と一体化され、当該外衣がフードを有し、当該フードが、頭部の包囲状態を保持するための手段を備える請求項2に記載の収納家具。
【請求項11】
少なくとも外衣と一体化され、当該外衣がフードを有し、当該フードが、内ポケットを有する請求項2に記載の収納家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納家具と外衣、バッグまたはリュックサックとの間で使用形態が変化する製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、地震、津波、水害、火事、空襲といった災害の頻発とともに、人々の防災意識は高まりつつある。一方で、防災用に何をどの程度備えておけばよいのか、という声も聞かれる。また、実際に災害が起きた場合に、防災用品をどこに置いたか忘れてしまい、結局着の身着のまま避難するという事態も起こり得る。このようなことを念頭に、普段使う商品に災害時に備えた機能を予め盛り込んでおくことで、防災用品か日用品かの区別をすることなく、平常時と災害時という2つのフェーズ間をシームレスに移行できるようにする、「フェーズフリー(登録商標)」な商品開発が提唱されている(非特許文献1)。
【0003】
単にある物品に他の機能・用途を持たせて転用可能にする「兼用」という考え方であれば、数多く存在する。代表的なものとしては、例えば、バッグ兼用のコート(特許文献1、特許文献2)である。これらの商品は、主にコートの携帯性を高める目的で製造されたものであり、バッグに物を入れたら物を取り出さなければコートとしては使えず、「平常時はもちろん、非常時にも役立てることができる」フェーズフリーの考え方を取り入れたものではない。
【0004】
防災を意識した商品開発の一例として、ベストの開発が知られている(特許文献3、非特許文献2)。これらのベストは、レジャー用ベストとしても着用でき、非常時に貴重品や非常時用品を収納して避難する際などに着用できると謳っている。しかし、結局は防災用ベストかレジャー用ベストかの二者択一の用途で使用することを前提とする単一機能・用途商品であり、形態も変化せず、フェーズフリーの考え方を取り入れた商品ではない。
【0005】
バッグの前面ポケットを全開放可能なダブルファスナーで構成し、旅行時にポケットを展開して確認しやすくするために一時的に吊り下げられるようにしたショルダーバッグも提案されている(非特許文献3)。この商品は、あくまで旅行時に有用なものではあるが、突っ張り棒、ポールハンガー、壁掛けフック等の任意の吊下手段に吊り下げて使用することを「主な目的」としていない以上、吊り下げ型収納袋には該当しないうえ、「平常時はもちろん、非常時にも役立てることができる」フェーズフリーの考え方を取り入れた商品ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭63-730号公報
【特許文献2】実全昭54-102396号公報
【特許文献3】実公昭63-39213号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】一般社団法人フェーズフリー協会ウェブサイト(URL: https://phasefree.or.jp/phasefree.html)
【非特許文献2】非常持出し防災ベスト「ハコベスト」(URL: http://www.hakovest.com/doc/hakovest.html#vest)
【非特許文献3】宝島CHANNEL DOD TRANSFORM SHOULDER BAG BOOK BLACK(URL: https://bit.ly/3MoEim8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記現状に鑑み、本発明は、フェーズフリーの考え方を取り入れた商品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の1つの側面は、収納家具と外衣、バッグまたはリュックサックとの間で使用形態が変化する製品であって、携行するために収納家具から外衣、バッグまたはリュックサックに使用形態を変化させた場合においても収納家具としての機能を維持できる製品である。斯かる構成であると、災害時に外衣の形態として着用またはバッグもしくはリュックサックの形態として携帯すれば、普段使う収納家具の機能を失うことなく手ぶらで移動できる一方、避難先でひとまず落ち着いたとき、外衣から収納家具に使用形態を変化させれば、日常の生活を再開することもできる。これにより平常時と災害時という2つのフェーズ間をシームレスに移行できるようになる。
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の側面は、外衣、バッグまたはリュックサックと一体化され、背面に外衣、バッグまたはリュックサックを収納する袋を有する収納家具である。斯かる構成であると、壁掛け収納に使用する際に外衣、バッグまたはリュックサックが袋内に隠れるので、収納家具自体のデザインやインテリアデザインの邪魔にならず、見せる収納等にも利用できる。
【0011】
上記収納家具は、上端辺に外衣の後ろ身頃、バッグまたはリュックサックの背裏または上端との接合部を有するものであることが好ましい。斯かる構成であると、外衣、バッグまたはリュックサックの背裏または上端の接合部から収納家具が吊り下げられた構造になる。
【0012】
上記収納家具は、引掛手段が、外衣の後ろ身頃との接合部より上側または収納家具の左右端辺より外側に設けられたものであることが好ましい。斯かる構成であると、外衣として使用する場合に、引掛手段が接合部から後ろ身頃の側に折れ曲がったり垂れたりすることがない。また外衣に傷をつけたり、外衣があることで収納家具のデザインに制約が出たり、影響を与えるおそれが少ない。
【0013】
上記収納家具は、引掛手段が、ハンガー、棒および/もしくは紐を通した通し穴、または、任意形状のハトメが入ったタグであることが好ましい。前者であれば、壁に画びょう等が刺せない場所や避難先のダンボール壁等にも直接吊り下げられる一方、後者であればハンガーや棒の重さがない分軽量で、外衣、バッグまたはリュックサックとして着用・携行したときに身軽に避難しやすい。
【0014】
上記収納家具は、背面と外衣、バッグまたはリュックサックの背裏の互いに対応する位置に面ファスナーを有するものであることが好ましい。斯かる構成であると、外衣として使用する際に収納家具と外衣とが一体化されることで、外衣の背裏部が風をはらんで膨らみにくく、バッグまたはリュックサックとして使用する際には収納家具がバッグまたはリュックサックの中でばたつかなくなる。
【0015】
上記収納家具は、左右側辺から延びるベルト、および、当該ベルトの左右に一対の係合手段を備えたものであることが好ましい。斯かる構成であると、非常時外衣の背裏部が風をはらんで膨らもうとしても、ウォールポケット自体はベルトによって身体に巻き付いたままで、行動に支障がない。
【0016】
外衣、バッグまたはリュックサックの材質は、収納家具と接合する側の面が親水性を有し、当該面と反対側の面が撥水性を有するポリエステル樹脂シートからなるものであることが好ましい。斯かる構成であると、外衣を雨合羽として使用でき、外衣が収納家具を包み込むことで収納家具の中身が濡れることなく守られる。
【0017】
上記収納家具は、少なくとも外衣と一体化され、当該外衣の袖口に閉塞手段を備えたものであることが好ましい。斯かる構成であると、袖口が絞られることから、外衣の背裏部への風の入りこみを防げる。閉塞手段としては、ゴムギャザー、ゴム紐による絞り、面ファスナーによる絞り等を採用することができる。
【0018】
上記収納家具は、少なくとも外衣と一体化され、当該外衣がフードを有し、当該フードが、頭部の包囲状態を保持するための手段を備えるものであることが好ましい。斯かる構成であると、避難時に自転車等に乗っていてもフードが飛ばされず風雨が顔に直接当たりにくいうえ、頭部とフードの隙間から外衣の背裏部への風雨の入りこみを低減できる。頭部の包囲状態を保持するための手段としては、視界を透明な素材で構成した顔の正面まで深かぶりできるフード、顎から喉元にかけて左右両側から覆うためにフードと一体化されたカバーであって顎から喉元にかけてのラインに結び紐やボタンを有するもの等を採用することができる。
【0019】
上記収納家具は、少なくとも外衣と一体化され、当該外衣がフードを有し、当該フードが内ポケットを有するものであることが好ましい。斯かる構成であると、例えば内ポケットにタオルを入れておけば頭巾のように落下物から頭を守れるほか避難時に濡れた体を拭える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、普段使う収納家具に災害時に備えた外衣機能や携帯機能を予め盛り込んでおくことで、収納家具の携帯性を高め、平常時と災害時という2つのフェーズ間をシームレスに移行できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】フード部の(a)型紙例と(b)横から見た図。
【
図5】実施形態2の前開き可能な外衣を示す模式図。
【
図6】実施形態2の面ファスナー貼付位置を示す模式図。
【
図8】本発明に係る製品の実施形態4の(a)おもて面と(b)うら面の模式図。
【
図11】本発明に係る製品の実施形態7の日常時の写真。
【
図12】実施形態7の連結具同士の連結状態を示した拡大写真。
【
図13】本発明に係る製品の実施形態7の非常時の写真。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本明細書で使用する用語の意義について説明する。
本明細書において「外衣」とは、避難時に求められる保温性、軽量性、防水性、防寒性、透湿性、防炎性、クッション性、防風性および撥水性のなかから選択された1つ以上の機能を有する主に屋外で着用することを想定した衣服を意味する。これらの避難時に求められる機能は、一定の規格や水準を要求されるものではなく、着用時に一定の効果が客観的に期待できるものであれば足りる。「外衣」には、コート、レインコート、ポンチョ、合羽、雨合羽、ウィンドブレーカー、パーカー、ジャンパー、ジャケット、ブルゾン、ケープ、防空頭巾等が含まれ、フードがついていてもいなくてもよく、プルオーバーでも前開きでもよく、前閉じにはファスナー、ボタン等がついていてもいなくてもよいものである。
本明細書において「収納家具」とは、収納を主な目的とした1つまたは2つ以上の収納部を有する家具を意味する。収納家具には、蓋、覆い、紐、面ファスナー、金属ファスナー等の収納部の開口部を閉じる部材があってもなくてもよく、また把手(持ち手)があってもなくてもよく、例えば、吊り下げ型収納袋、仕切り付きの身の回り品の整理箱、
図11に示すようなファスナーが付いた外側から視認可能なメッシュ袋の連結体等が含まれる。
本明細書において「吊り下げ型収納袋」とは、突っ張り棒、ポールハンガー、壁掛けフック等の任意の吊下手段に吊り下げて使用することを主な目的とした1つまたは2つ以上の収納部を有する収納袋を意味する。吊り下げ型収納袋には、蓋、覆い、紐、面ファスナー、金属ファスナー等の収納部の開口部を閉じる部材があってもなくてもよく、例えば、ウォールポケットが含まれる。
本明細書において「バッグ」とは、収納部を有し、携帯性があり、適宜外出先等で収納部から物を取り出せるようにすることを主な目的とした1つまたは2つ以上の収納部を有する収納袋を意味する。バッグには、蓋、覆い、紐、面ファスナー、金属ファスナー等の収納部の開口部を閉じる部材があってもなくてもよく、また把手(持ち手)、プラスチックバックルやカラビナなどの体に固定したり吊り下げたりするための部材があってもなくてもよく、例えば、肩掛けバッグ、手提げバッグ、蓋付きおよび/または持ち手付きのバスケット、ウェストポーチ等が含まれる。
本明細書において「収納家具と外衣、バッグまたはリュックサックとの間で使用形態が変化する製品」とは、通常使用する際に客観的に収納家具とみなせる使用形態と、通常使用する際に客観的に外衣、バッグまたはリュックサックとみなせる使用形態との間で使用形態が可逆的に変化する1つの製品を意味する。使用形態とは通常使用する際の形態を意味するため、例えば食品備蓄システムとしての使用形態と手提げでまとめて持ち出す使用形態のように物品としての外見の変化を伴わない場合もあるが、物品として外見の変化が生じるものであってもよい。
本明細書において「携行するために収納家具から外衣、バッグまたはリュックサックに使用形態を変化させた場合に収納家具としての機能を維持できる」とは、収納家具から外衣、バッグまたはリュックサックに使用形態を変化させた場合に収納家具に収納したものを放棄しないでよいこと、または、収納家具として通常期待される収納機能を放棄しないでよいことを意味する。
本明細書において「外衣、バッグまたはリュックサックと一体化」とは、商品としての通常使用時に外衣、バッグまたはリュックサックと分離することを想定しておらず、物理的に破壊しない限り、外衣、バッグまたはリュックサックと分離できないことを意味する。外衣、バッグまたはリュックサックが一体化の対象と視覚的に区別して認識されうる状態で接合していることを意味せず、実施形態5のようにスライダー73を除いて一体化の対象と構造上融合していてもよい。
以下、「収納家具と外衣、バッグまたはリュックサックとの間で使用形態が変化する製品」、「外衣、バッグまたはリュックサックと一体化され、背面に外衣、バッグまたはリュックサックを収納する袋を有する収納家具」を集合的に「本発明に係る製品」と称することがある。
【0023】
以下本発明を実施するための形態について以下に適宜図面を参照して説明する。
実施形態1 ウォールポケットとプルオーバー合羽との間で使用形態が変化する製品
図1、
図2Aおよび
図2Bに示す本実施形態に係る製品1は、中表にしたプルオーバー合羽部2、当該プルオーバー合羽部2の後ろ身頃3に背中あわせで上端辺4を縫い付けて接合部34を形成したウォールポケット部5、プルオーバー合羽部2の後ろ身頃3とウォールポケット部5の上端辺4との間に挟み込まれた引掛手段6とを備えている。
【0024】
プルオーバー合羽部2は、
図2Aおよび
図2Bに示すように、身頃部7、身頃部7と一体的に裁断された袖部8、ならびに、身頃部7の襟ぐり21に縫い合わされたフード部9を備えている。
身頃部7は、前身頃部11およびウォールポケット部5との接合部34を形成した後ろ身頃部3が袖部8の袖下12に相当する部分から脇13にかけて縫い合わされて袖口14と裾15を形成し、それぞれの縫い代を覆うパイピング16を施している。
身頃部7および袖部8を作成する場合は、一方の面が親水性を有し反対側の面が撥水性を有するポリエステル樹脂シートを外衣として着用する際に外側にくる撥水性面が外側に来るように重ね合わせ、身頃部7と袖部8を合わせた輪郭形状に裁断し、襟ぐり21の形状にあわせて裁断し、袖下12から脇13にかけて縫い代を形成し、パイピング16を施している。こうすることで、中表で縫い代を形成する場合に比べて、縫い目を介した雨の浸入がより確実に防げる。
フード部9を作成する場合は、
図3Aおよび
図3Bに示すように、襟ぐり21と合わせる線24に対する頭頂部17のなす角度をθと見込んで、一方の面が親水性を有し反対側の面が撥水性を有するポリエステル樹脂シートを概ね眼鏡状に左右対称に裁断し、合羽として着用する際に外側にくる撥水性面が外側に来るように重ね合わせ、頭頂部17の最後端18を基点として後頭部19から襟ぐり21の最後端と縫い合わせる点23にかけて曲線的に縫い代を形成し、パイピングを施している。こうすることで、中表で縫い代を形成する場合に比べて、縫い目を経由した雨水等の浸入をより確実に防げる。
【0025】
ウォールポケット部5は、あとでポケットに物を入れて携行することを考慮して軽量なポリエステル製ジャージー編みメッシュを壁掛け布25として採用している。
図4Aに示すメッシュ25のおもて面26には、同じくポリエステル製メッシュを3枚当てて上端辺4の方向に開口するように縫いつけてポケット部27を形成し、開口部には閉口手段として面ファスナー29を縫い付けている。
図4Bに示すメッシュの背面28には、一方の面が親水性を有し反対側の面が撥水性を有するポリエステル樹脂シートを撥水性面が主面メッシュに向くように当てて上端辺4の方向に開口するように縫いつけて外衣収納袋部31を形成し、上端辺4で一体化したプルオーバー合羽部2を収納することができる。
本実施形態において、外衣収納袋部31の開口には閉口手段を設けていないが、任意の閉口手段を設けてもよい。ポケットの数、マチの有無、面ファスナーの大きさ等は任意である。
【0026】
引掛手段としては、左右一対で略正方形のタグ6が後ろ身頃3とウォールポケット部5との接合部34より上側に出た状態で挟み込まれて縫い合わされている。タグ6には、円形のハトメ10が入っているが、ハトメの形状については特に限定されない。
【0027】
本構成によれば、シートのみで合羽部2を製造していることからウォールポケット部5の重量と合わせても軽量である。また外衣の接合部より上側はウォールポケット部5のうら面に折り曲げて収納袋部31内に収納して隠せるので、平時ウォールポケット部5として使用する場合に何ら美観を損ねることもない。
【0028】
実施形態2 合羽をファスナー付き合羽に変え、ウォールポケットの裏側下部に面ファスナーをつけた製品
本実施形態に係る製品51は、
図5に示すように合羽部32の前身頃部41を左右分割してファスナーエレメント87およびスライダー33をつけた点、
図6に示すようにウォールポケット部5の背面28の下部と合羽部32の対応する位置に面ファスナー39a,39bをつけた点を除いて、構造としては実施形態1と共通する。
本構成により、合羽部32が前開きになって蒸れを逃がし、通常中表で収容されている合羽部32の裏返し、着脱が手早く容易になる。また合羽部32として使用する際にウォールポケット部5と合羽部32とが一体化されることで、合羽部32の重みとして働き、合羽部32の背裏部が風をはらんで膨らみにくい構造になっている。
【0029】
実施形態3 ウォールポケットにベルトを備え付けた製品
図7に示す本実施形態は、タグ6を合羽部2の後ろ身頃3とウォールポケット部5の上端辺4との間に挟み込むのではなく、ウォールポケット部5の左右端辺35より外側に出るようにウォールポケット部5だけに縫い付けた点、実施形態2の面ファスナーに代えて、ウォールポケット部5の左右側辺35から一対のベルト36a,36bが延びている点において、他の実施形態と相違する。
ベルト36a,36bの両端には、係合手段として、ウォールポケット部5の背面28に回しても、おもて面26に回しても着脱が容易なプラスチックバックル37a,37bが取り付けられている。これにより、平時ウォールポケット部5として使用する際は背面28側でベルト36a,36bを結んでおき、非常時に身体に巻きつけるベルトとして使用する。またベルト36a,36bは、ウォールポケット部5の左右側辺35上同じ高さを起点として延びており、かつ一対の係合手段を有するものであれば足りる。ベルトは、腰周りと胸回りに巻くため、ウォールポケット部5の左右側辺35上で、標準的な男性または女性の腰の位置と胸の位置に対応する異なる高さ位置を起点として複数対延びていてもよい。
本構成により、非常時外衣の背裏部が風をはらんで膨らもうとしても、ウォールポケット自体はベルトによって身体に巻き付いたままで、行動に支障がない。
【0030】
実施形態4 ウォールポケットの背中からリュックサックの袋が出てくるタイプ
図8に示す本実施形態に係る製品61は、中表にしたプルオーバー合羽部2に代えて中表にしたリュックサック62の背裏に相当する部分63にウォールポケット部5の上端辺4を縫い付けて接合部74を形成した点、引掛手段6をウォールポケット部5の上端辺4のみに取り付けた点において、実施形態1と異なる。リュックサック62は、平時は中表にした状態で、ウォールポケット部5の背面にある収納袋部31に収納されているが、非常時には収納袋部31から取り出して裏返すことで、ウォールポケット部5をリュックサック62の内部に取り込みつつ、さらに必要な荷物を詰め込んで背負って逃げることができる。
【0031】
実施形態5 ウォールポケットの周縁にファスナーを設けた肩掛けバッグ
図9に示す本実施形態に係る製品71は、ウォールポケット75の外縁部76にファスナーエレメント77と2個のスライダー73とを備えており、左右側辺78上の中点の位置に縫い合わせたループ80にはDカン82が通されている。肩掛けベルト83は、両端にDカン82に係合させるためのカラビナ84を備えており、平時は底板85とともにウォールポケット75の背面にある収納袋部81に収納されている。本構成により、ウォールポケット75を2つに折りたたんで両側からスライダー73で閉じ、内部に底板85を入れることで一定のマチが形成され、上部の一部だけ開いてものを取り出せる肩掛けバッグ83になる。
【0032】
実施形態6 外衣とウォールポケットとバッグの間で相互変換する3ウェイタイプ
実施形態2と実施形態5とを組み合わせることで、外衣とウォールポケットとバッグの間で相互に使用形態の変化が可能な3ウェイコンバーチブルタイプを製造することができる。斯かる構成により、災害の種類や状況に応じて、雨合羽などとして着ることもあれば、単にバッグとして持ち出すだけで済む場合にはそのように対応できる。
【0033】
実施形態7 食品備蓄システムと手提げ付き買い物袋との間で相互変換するタイプ
図11および
図12に示すように本実施形態の食品備蓄システム91は、携帯用の把手(持ち手)92と両面マジックテープ(登録商標)からなる連結具95と開口部にファスナー93とを備えた相互に色が異なるメッシュの収納袋94を互いの連結具95にて着脱可能に連結したものである。各家庭の定番保存食品のセットを、購入した順(賞味期限順)に各収納袋に入れて保存し、使用時には購入した順に使用し、空になった収納袋94は
図13に示すように適宜連結具95をはがして手提げ買い物袋97として持ち出し、買い足したものを補充したらファスナー93を閉じ、収納袋の連結具95の最後に取り付けるようにすることで、几帳面な人でなくても簡単にローリングストックが実践できる。
メッシュで相互に色が異なることにより、各収納袋の内容物や賞味期限も確認できる。また袋が空になることが買い足しのサインとなり買い忘れを防げるうえ、家族全員が優先して食べるものを一目で判断しやすく、子供達にもローリングストックの大切さを簡単に意識付けさせることができる。
さらに、個々の収納袋に持ち手があり、連結具があることにより、在宅避難か、避難行動か、避難期間など状況により連結をはがして持ち出し量を調整したり、家族で分けて持ったり、フレキシブルに持ち出しができる。また避難所で空になったバッグは濡れた衣料の収納など多目的に使用できる。
【0034】
本発明に係る製品の用途としては、普段は収納家具のポケットに常備薬、モバイルバッテリー、筆記用具、携帯ラジオ、パンツ、タオル、生理用品、紙おむつ、保険証、保存が効く食品等を収納して使用し、災害避難時に外衣、バッグまたはリュックサック構造を展開し、収納家具のポケットを背裏または裏地に吊り下げた状態の外衣、バッグまたはリュックサックとして、あるいは手提げ付きバッグとしてそのまま使用することができる。
【0035】
本発明に係る製品は、外衣と収納家具との組み合わせとする場合、外衣のサイズに関して、平均身長の成人男性用、平均身長の成人女性用、成長期を過ぎた男子/女子用、成長期前の男子/女子用、幼稚園児用等に分けることができる。また吊り下げ型収納袋のサイズに関して、リビングルーム用の比較的大きいサイズ、子供部屋用の比較的小さいサイズと分け、前者は避難時に親が外衣を取り出して着ることとし、後者は、避難時に外衣を取り出して着て背負ってこられるように幼児に教えておくことが考えられる。外衣のサイズと吊り下げ型収納袋のサイズとは互いに独立して変えてもよい。各部屋の居住者用にそれぞれの必需品を入れる吊り下げ型収納袋として使用させてもよい。
【0036】
本発明に係る製品は、外衣と複数の吊り下げ型収納袋との組み合わせとする場合、複数の吊り下げ型収納袋の背面から外衣を取り出して重ね着も可能である。重ね着することで、複数の吊り下げ型収納袋を背負いつつ両手を活用可能な状態で避難することができ、日常時に使用するものだけでなく、非常時の必需品まで網羅することができる。
【0037】
なお、本発明の実施の形態は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、また、上記実施形態に説明される構成のすべてが本発明の必須要件であるとは限らない。本発明は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、異なる実施形態で開示された要素同士を組み合わせること等を含めて、種々の改変形態を採り得る。
例えば、金属ファスナー、面ファスナー、一対の雄雌ボタン等の部材群;バックル、プラスチックバックル等の部材群等、実質的に同様の機能を発揮しうる部材群に含まれるいずれかの部材について上記実施態様で言及している場合、部材群内のその他例示要素により置換可能であることに留意すべきである。
本発明に係る製品は、普段収納家具を吊り下げるために画鋲を使用している場合、画鋲等を安全に収納するための袋を備えていてもよい。避難先のダンボールハウスの壁等に刺してそのまま使用することができるからである。
製法や使用素材は任意であり、上記実施形態で「縫い合わせ」「縫い付け」とした箇所を「超音波ミシンによる溶着」で置き換えてもよい。
上記実施形態では、引掛手段としてタグを用いたが、タグに代えて
図10に示す接合部44、54、64より上側に(a)形成したループ47内に三角ハンガーを挿入したもの46、(b)布袋57を設け内部にハンガー部だけ埋め込みフック部58だけ露出したもの56、(c)3箇所形成したループ67内に棒68を通したうえで棒68に紐69の両端をくくりつけたもの66を用いることができる。三角ハンガー46や棒68をループ47,67から取り外してから外衣に使用形態を変化させてもよい。上記実施形態7では、連結部95として面ファスナーを採用したが、スナップボタンを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る製品は、防災用品としての需要だけでなく、一般消費者向けの収納家具に、災害に備えて持ち歩くことができるという付加価値をつけることで、高価格で販売でき、買い換え需要も喚起することができる。また地球温暖化に伴い世界各地で様々な災害が起きている状況下で、その需要は世界に広がることから、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0039】
1、51、61、71 製品
2、32 合羽部
3 後ろ身頃
4 上端辺
5、75 ウォールポケット部
6、46、56、66 引掛手段
7 身頃部
8 袖部
9 フード部
10 ハトメ
11、41 前身頃部
12 袖下
13 脇
14 袖口
15 裾
16 パイピング
17 頭頂部
18 頭頂部の最後端
19 後頭部
21 襟ぐり
23 襟ぐりの最後端と縫い合わせる点
24 襟ぐりと合わせる線
25 壁掛け布
26 おもて面
27 ポケット部
28 背面
29、39a,39b 面ファスナー
31、81 収納袋部
33、73 スライダー
34、44、54、64、74 接合部
35 左右端辺
36a,36b ベルト
37a,37b プラスチックバックル
47、67 ループ
57 布袋
58 フック部
62 リュックサック
63 背裏に相当する部分
68 棒
69 紐
76 外縁部
77、87 ファスナーエレメント
78 左右側辺
80 ループ
82 Dカン
83 肩掛けベルト
84 カラビナ
85 底板
91 食品備蓄システム
92 把手(持ち手)
93 ファスナー
94 メッシュの収納袋
95 連結具(両面マジックテープ(登録商標))
97 手提げ買い物袋