(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061607
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】モータ及びモータの組み立て方法
(51)【国際特許分類】
H02K 5/04 20060101AFI20240425BHJP
H02K 15/14 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H02K5/04
H02K15/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113505
(22)【出願日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】202211285757.0
(32)【優先日】2022-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】王 禹
(72)【発明者】
【氏名】吉野 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】楊 永剛
(72)【発明者】
【氏名】淤見 真士
【テーマコード(参考)】
5H605
5H615
【Fターム(参考)】
5H605AA08
5H605BB05
5H605CC02
5H605CC10
5H605DD01
5H605DD03
5H605EB01
5H605EB16
5H605FF01
5H605GG03
5H605GG04
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB14
5H615PP28
5H615SS03
5H615SS10
5H615SS15
5H615SS19
5H615TT13
5H615TT15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】連結用の治具の十分な作業空間を確保するモータおよびモータの組み立て方法を提供する。
【解決手段】モータ1は、底部11及び底部の縁から軸方向に沿って延在する壁部12を有するハウジングと、前記ハウジングの前記底部の軸方向一方側において、前記ハウジングと連結する蓋部20と、を備える。前記ハウジングの前記底部の軸方向一方側の表面が第1の連結面S1を有し、前記第1の連結面の径方向内側と外側の各ハウジング部分が、互いに相反しかつ前記第1の連結面と交差する方向に向かって、それぞれ屈曲する。これにより、ハウジングと蓋部の連結作業を行う際に十分な作業空間を確保できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部及び前記底部の縁から軸方向に沿って延在する壁部を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記底部の軸方向一方側において、前記ハウジングと連結する蓋部と、を備え、
前記ハウジングの前記底部の軸方向一方側の表面が第1の連結面を有し、前記第1の連結面の径方向内側と外側の各ハウジング部分が、互いに相反し且つ前記第1の連結面と交差する方向に向かって、それぞれ屈曲する、モータ。
【請求項2】
前記第1の連結面の径方向の少なくとも一方側のハウジング部分が、軸方向に沿って延び、且つ径方向に重なり合う二重ケーシング構造である、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第1の連結面の軸方向の少なくとも一方側において、径方向内側の所定距離内にモータアセンブリを有する、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記モータは軸受をさらに備え、
前記第1の連結面の径方向内側のハウジング部分が前記軸受を支持する、請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記蓋部は、前記第1の連結面に対向する第2の連結面を有し、前記第2の連結面の径方向外側の蓋部部分が軸方向の一方側に沿って延びて第2の屈曲部を形成し、
径方向において、前記モータアセンブリと前記第2の屈曲部の間に、前記ハウジングと前記蓋部とを連結するTOX連結構造を有し、前記TOX連結構造は、前記軸方向の一方側から軸方向の他方側に向かって凹んでいる、請求項3に記載のモータ。
【請求項6】
前記蓋部が単層金属板であり、
前記蓋部の、前記第1の連結面に対向する面が第2の連結面であり、
前記第1の連結面と前記第2の連結面とが軸方向においてTOXかしめによって固定される、請求項1に記載のモータ。
【請求項7】
前記第1の連結面の径方向外側のハウジング部分が軸方向の一方側に沿って延びて第1の屈曲部を形成し、
前記第2の連結面の径方向外側の蓋部部分が軸方向の一方側に沿って延びて第2の屈曲部を形成し、
前記第2の屈曲部の外周面が前記第1の屈曲部の内周面に締まり嵌め又は隙間嵌めされる、請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
前記第1の連結面の径方向外側のハウジング部分が軸方向の一方側に向かって延びて、第1の屈曲部を形成し、
前記第1の連結面の径方向内側のハウジング部分が軸方向の他方側に向かって延びて第3の屈曲部を形成する、請求項1に記載のモータ。
【請求項9】
前記第3の屈曲部が二重ケーシング構造であり、前記モータは軸受をさらに備え、前記第3の屈曲部が径方向内側において前記軸受を支持する、請求項8に記載のモータ。
【請求項10】
底部及び底部の縁から軸方向に沿って延びる壁部を有し、ハウジングの前記底部の軸方向の一方側の表面が第1の連結面を有するモータの組み立て方法であって、
前記第1の連結面の径方向両側に、前記第1の連結面と交差し、且つ相反する方向に向かって、それぞれ屈曲するハウジング部分を有するハウジングを形成すること、
前記第1の連結面に対向する面が第2の連結面である蓋部を形成すること、
前記蓋部を軸方向に沿って前記ハウジングに挿入すること、
前記第1の連結面と前記第2の連結面上に、軸方向の一方側から軸方向の他方側に向かって凹んだTOX連結構造を形成すること、
を含む、モータの組み立て方法。
【請求項11】
前記第1の連結面の径方向外側のハウジング部分が、軸方向の一方側に沿って延びて第1の屈曲部を形成し、
前記第2の連結面の径方向外側の蓋部部分が、軸方向の一方側に沿って延びて第2の屈曲部を形成し、
前記蓋部を軸方向に沿って前記ハウジングに挿入することが、前記第2の屈曲部の外周面と前記第1の屈曲部の内周面を、締まり嵌め又は隙間嵌めになるように組み立てた後、TOXかしめを行い、前記TOX連結構造を形成することを含む、請求項10に記載のモータの組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ及びモータの組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータでは、ハウジングと蓋部とが、いずれもアルミニウム製の鋳造品であり、互いにネジによって連結される場合がある。このような従来のモータだと、ハウジングと蓋部とを連結するネジの数だけモータの部品点数が増加するため、モータのコストが高くなっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
背景技術についての上記説明は、本発明の技術的解決策について明確且つ十全な説明を行うのを容易にするとともに、当業者の理解を容易にするために叙述したものであり、当業者にとって公知であると見なしてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えばモータとEPS(電動パワーステアリング)などの外部装置との取付に関して、外部装置側の要求する仕様によっては、蓋部の上側縁部が外部装置と対向し、蓋部周囲に設けられた貫通孔を介して外部装置とモータとが連結する一方で、蓋部の上側縁部と貫通孔が設けられた平面との間の距離(軸方向距離)が、一定の寸法を満たさなければならない。
【0006】
また、コストを低減するために、発明者は、アルミニウム製の鋳造品の代わりに鉄製のプレス品を採用してハウジング及び蓋部を構成し、ハウジングの底部を蓋部の凹部に挿入するとともに、TOX(トックス、登録商標)かしめによって蓋部とハウジングを連結することを考えた。しかしながら、貫通孔が設けられた平面と蓋部の上側縁部との間の距離の要求を、蓋部の段状構造によって満たす場合、TOXかしめの位置の径方向両側の距離が近すぎるため、TOXかしめ治具をその中に挿入することができず、作業が困難になる虞があった。
【0007】
本発明は、連結用の治具の十分な作業空間を確保するモータおよびモータの組み立て方法の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例示的なモータは、底部及び底部の縁から軸方向に沿って延在する壁部を有するハウジングと、ハウジングの底部の軸方向一方側において、ハウジングと連結する蓋部と、を備える。ハウジングの底部の軸方向一方側の表面が第1の連結面を有し、第1の連結面の径方向内側と外側の各ハウジング部分が、互いに相反し且つ第1の連結面と交差する方向に向かって、それぞれ屈曲する。
【0009】
また、本発明の例示的なモータの組み立て方法は、底部及び底部の縁から軸方向に沿って延びる壁部を有し、ハウジングの底部の軸方向の一方側の表面が第1の連結面を有するモータの組み立て方法であって、第1の連結面の径方向両側に、第1の連結面と交差し且つ相反する方向に向かってそれぞれ屈曲するハウジング部分を有するハウジングを形成すること、第1の連結面に対向する面が第2の連結面である蓋部を形成すること、蓋部を軸方向に沿ってハウジングに挿入すること、第1の連結面と第2の連結面上に、軸方向の一方側から軸方向の他方側に向かって凹んだTOX連結構造を形成すること、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の例示的なモータおよびモータの組み立て方法によれば、連結位置が設けられた面(第1の連結面)の径方向両側に位置するハウジング部分を、軸方向の、異なる方向に向かってそれぞれ延在させることにより、連結用治具の十分な作業空間を確保できる。
【0011】
後述の説明及び図面では、本発明の例示的な実施形態を詳細に説明しているが、それに限定されず特許請求の範囲の趣旨及び条項の範囲内で、多くの変更、修正及び均等を含む。
【0012】
なお、「及び/又は」という用語は、本明細書で使用する場合には、同じであるか又は類似した方式により、1つ又はより多くの他の実施形態において使用するか、他の実施形態と組み合わせるか、又は、他の実施形態における一部の構成要素と代替することができる。
【0013】
「~を備える/~を含む/~を有する」という用語は、技術的特徴、部品、又はアセンブリの存在を指すが、1つ又はより多くの他の技術的特徴、部品又はアセンブリの存在を排除しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の例示的なモータの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の例示的なモータの縦断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の例示的なモータにおける、ハウジングの斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の例示的なモータにおける、蓋部の斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の例示的なモータにおける、ハウジングと蓋部をTOXかしめにより連結している時点の縦断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の例示的なモータにおける、ハウジングと蓋部をTOXかしめにより連結した直後の縦断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の例示的なモータにおける、ハウジングと蓋部の連結が完了した時点の縦断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の例示的なモータの組み立て方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面及び明細書によって、本発明の特徴を説明する。図面及び明細書は、本発明の例示的な一つの実施形態を具体的に開示している。なお、本発明は、図面及び明細書に記載された実施形態に限定されず、特許請求の範囲に該当するすべての修正、変形及び均等物を含む、という点である。
【0016】
以降の説明において、「第1の」、「第2の」、「上」、「下」等の用語は、異なる要素を区別するために用いられるが、これらの要素は時間的順序又は空間的配列等を表さず、これらの要素は、これらの用語によって限定的に解釈されない。「及び/又は」という用語は、関連して列記される用語の1種又は複数のうちいずれか1つ及びすべての組み合わせを含む。「~を含む」、「~を備える」、「~を有する」等の用語は、記載の特徴、要素、部品又はアセンブリの存在を指すが、1つ又は複数の他の特徴、要素、部品又はアセンブリの存在、又はそれらを追加することを排除しない。
【0017】
また、「一」、「該」等の単数形は複数形を含み、「1種の」又は「1タイプの」と広義に理解するべきであり、「1つの」という意味に限定しない。また、「前記」という用語は、前後で別途明示されていない限り、単数形も複数形も含む。また、前後で別途明示されていない限り、「に基づいて」という用語は、「……に少なくとも部分的に基づいて」と理解すべきである。
【0018】
また、モータの中心軸に沿って延在する方向、又はそれと平行な方向を「軸方向」、中心軸を中心とする半径方向を「径方向」、中心軸を囲む方向を「周方向」と呼ぶ。また、半径方向に沿って中心軸から遠ざかる方向を「径方向外側」、半径方向に沿って中心軸に近付く方向を「径方向内側」と呼ぶ。ハウジングの底部から軸方向に沿ってハウジングの開口の方を指す方向を「軸方向の他方側」、「軸方向下側」「下側」又は「下方」と呼び、ハウジングの開口から軸方向に沿ってハウジングの底部の方を指す方向を「軸方向の一方側」、「軸方向上側」、「上側」又は「上方」と呼ぶ。これらの用語は説明の便宜のためであるに過ぎず、実際に使用及び製造する際のモータの向きを限定しない。
【0019】
本発明の例示的なモータについて説明する。
図1は、本発明の例示的なモータの斜視図である。
図2は、本発明の例示的なモータの縦断面図である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、本実施例のモータ1は、ハウジング10及び蓋部20を備える。
図3は、本発明の例示的なモータにおける、ハウジング10の斜視図である。
図4は、本発明の例示的なモータにおける、蓋部20の斜視図である。
【0021】
図2に示すように、ハウジング10は、有底略筒状の部材である。ハウジング10は、底部11と、底部11の縁から軸方向に沿って延びる壁部12と、を有する。底部11は、略円盤状の部位である。底部11の略中央には、シャフトが通されるシャフト孔が設けられる。底部11は、軸方向他方側に向かって凹む。壁部12は、軸方向に延びる筒状の部位である。壁部12の軸方向一方側には、底部11が接続される。壁部12は、後述する第1の屈曲部13を有する。底部11は、後述するハウジング部分C1およびC2を有する本実施例において、ハウジング10は、鉄やアルミニウムなどの金属製である。
【0022】
蓋部20は、有底略筒状の部材である。蓋部20の筒部は、軸方向に延びる。蓋部20の底部は、略円盤状である、蓋部20の略中央には、シャフトが通される孔が設けられている。蓋部20の筒部は、後述する第2の屈曲部21を有する。蓋部20の筒部は、径方向外側に延びるともに周方向に延びる環状部を有する。環状部は、径方向外側に突出する少なくとも1つの突出部を有する。本実施例では、環状部は、複数(3つ)の突出部を有する。突出部は、周方向に等間隔に配置される。各突出部には、軸方向に貫通する貫通孔22が設けられている。平面E3は、環状部の軸方向上側の面である。ハウジング10の底部11の少なくとも一部は、突出部と軸方向に接触する。蓋部20は、ハウジング10の底部11の軸方向一方側(
図2における上側)においてハウジング10に連結される。本実施例において、蓋部20は、鉄やアルミニウムなどの金属製である。
【0023】
蓋部20の筒部の軸方向一方側には、上側縁部E1が形成されている。本実施例では、
図2及び
図4に示すように、蓋部20の上側縁部E1と、貫通孔22が設けられた平面S3との間の距離dは、外部装置(例えば、EPSなど)との取り付けに必要な寸法を満たす。なお、本発明では、距離dが取る値は制限されず、任意の値に設定できる。
【0024】
本実施例では、
図2及び
図3に示すように、ハウジング10の底部11の軸方向一方側の表面は、第1の連結面S1を有する。より詳細には、第1の連結面S1は、ハウジング10の底部11に設けられ軸方向下側に向かって凹む凹部の底面である。第1の連結面S1の径方向内側と外側の各ハウジング部分C1及びC2が、互いに相反しかつ第1の連結面S1と交差する方向に向かって、それぞれ屈曲する。より詳細には、ハウジング部分C1は、筒状であり、第1の連結面S1よりも径方向内側の部位から軸方向他方側に向かって延びる。ハウジング部分C2は、筒状であり、第1の連結面S1の径方向外側において軸方向一方側に向かって延びる。本実施例では、ハウジング部分C1の内部には、軸受40が配置される。ハウジング部分C1は、軸受40を支持する。ハウジング部分C2は蓋部20と径方向に接触するため、蓋部20の同軸を確保するために使用することができる。これにより、連結位置が設けられた面(第1の連結面S1)の径方向両側に位置するハウジング部分C1とC2を、軸方向の、互いに異なる方向に向かってそれぞれ延ばすことにより、ハウジング部分C1とC2の両方が同一の方向に向かって延びる構成と比較して、第1の連結面S1の軸方向上下の空間がハウジング部分C1とC2の両方により制限されないため、連結用の治具の十分な作業空間を確保できる。
【0025】
図2では、第1の連結面S1の径方向両側のハウジング部分C1及びC2がそれぞれ軸方向上下両側に向かって屈曲している場合を例にしている。つまり、第1の連結面S1の径方向両側に位置するハウジング部分C1及びC2の延びる方向が、軸方向と平行である。なお、本発明はこれに限定されず、第1の連結面S1の径方向両側に位置するハウジング部分C1及びC2の延びる方向は、例えば、ハウジング内部のモータアセンブリを避けるために、軸方向から少しずれた方向に沿って延ばしてもよい。この場合でも、連結用の治具の十分な作業空間を確保できる。
【0026】
また、
図2では、第1の連結面S1の径方向内側に位置するハウジング部分C1が下側に延び、第1の連結面S1の径方向外側に位置するハウジング部分C2が上側へ延びている。なお、本発明はこれに限定されず、必要に応じて、ハウジング部分C1が上側へ延びて、ハウジング部分C2が下側に延びてもよい。
【0027】
本実施例では、第1の連結面S1の径方向の少なくとも一方側のハウジング部分が、軸方向に沿って延び、且つ径方向に重なり合う二重ケーシング構造である。例えば、
図2に示すように、第1の連結面S1の径方向内側のハウジング部分C1が軸方向に沿って延び、且つ二重ケーシング構造である。ハウジング部分C1の二重ケーシング構造は、ハウジング10の底部の一部が折り曲げられるとともに径方向に重なることにより、形成される。二重ケーシング構造により剛性が高くなるため、第1の連結面S1の変形を抑制できる。これにより、蓋部20とハウジング10との間の連結における、ハウジング10の変形の影響を抑制し、蓋部20とハウジング10とを強固且つ正確に連結することができる。
【0028】
図2では、第1の連結面S1の径方向内側のハウジング部分C1が軸方向に沿って延び、且つ二重ケーシング構造である場合を例にしている。なお、本発明はこれに限定されず、第1の連結面S1の径方向外側のハウジング部分C2が、軸方向に沿って延在し、且つ二重ケーシング構造であるように設計してもよい。
【0029】
本実施例では、
図2に示すように、第1の連結面S1の軸方向の少なくとも一方側において、径方向内側の所定距離内にモータアセンブリを有する。例えば第1の連結面S1の軸方向上側における、径方向内側の所定距離内に、カップリング30を有する。カップリング30は、例えば、上述の外部装置の一部に連結される。これにより、連結用の治具の作業空間を確保しつつ、カップリング30などのモータアセンブリを配置する空間として利用することもできる。
【0030】
図2の例示では、第1の連結面S1の軸方向上側、且つ径方向内側の所定距離内にカップリング30を有する場合を例にしている。なお、本発明はこれに限定されず、第1の連結面S1の軸方向上側の径方向内側の所定距離内に、他のモータアセンブリを有してもよい。或いは、第1の連結面S1の軸方向下側の径方向内側の所定距離内に、他のモータアセンブリを有してもよい。
【0031】
本実施例では、
図2に示すように、モータ1は軸受40をさらに備え、第1の連結面S1の径方向内側のハウジング部分C1が軸受40を支持する。本実施例では、前述の通り、ハウジング部分C1が二重ケーシング構造であるため、軸受40の支持の強度をさらに高めることができる。
【0032】
本実施例では、
図2に示すように、蓋部20は、第1の連結面S1に対向する第2の連結面S2を有する。より詳細には、蓋部20の底部は、軸方向他方側へ向かって凹む凹部を有し、当該凹部の底面が第2の連結面S2である。第2の連結面S2は、第1の連結面S1と軸方向に対向する。第2の連結面S2の径方向外側の部分が軸方向の一方側に沿って延びて、第2の屈曲部21を形成する。第2の屈曲部21は、蓋部20の底部の一部が、例えば、プレス加工等によって折り曲げられて形成される。言い換えると、蓋部20の筒部は、第2の屈曲部21を有する。径方向において、上記モータアセンブリ(例えばカップリング30)と第2の屈曲部21の間に、ハウジング10と蓋部20とを連結するTOX連結構造Lを有する。TOX連結構造Lは、軸方向の一方側(軸方向上側)から軸方向の他方側(軸方向下側)に向かって凹んでいる。これにより、TOXかしめをするための作業空間を確保することができる。
【0033】
本実施例では、蓋部20が単層金属板である。
図2に示すように、第1の連結面S1と第2の連結面S2とは、軸方向において、TOXかしめが行われることにより、固定される。第1の連結面S1と第2の連結面S2においてTOXかしめによる固定を行うことによって、ハウジング10と蓋部20との連結を容易に行うことができ、モータの製造コストを低減することができる。
【0034】
図5~
図7は、本実施例のモータ1のハウジング10と蓋部20の、1つの縦断面図であり、ハウジング10と蓋部20を示している。
図5~
図7に示すように、第1の連結面S1と第2の連結面S2が軸方向に対向している。
図5に示すように、TOXかしめ治具F1を第1の連結面S1の軸方向一方側に配置し、TOXかしめ治具F2を第2の連結面S2の軸方向他方側に配置して、TOXかしめ治具F1、F2を、ハウジング10および蓋部20に近づける。そして、TOXかしめ治具F1及びF2によって、第1の連結面S1と第2の連結面S2に対してTOXかしめによる固定を行うことで、TOX連結構造Lが形成され、ハウジング10と蓋部20とが連結される。ハウジング10と蓋部20とが連結された後、
図6および
図7に示すように、TOXかしめ治具F1及びF2をそれぞれ軸方向に移動させ、TOXかしめ治具F1及びF2をハウジング10および蓋部20から離す。
【0035】
ここで、
図5は、TOXかしめ治具F1及びF2が分離していない状況を示し、
図6は、TOXかしめ治具F1及びF2が徐々に分離する状況を示し、
図7は、TOX作業治具F1及びF2が完全に分離した状況を示している。
【0036】
本実施例では、
図5~
図7に示すように、第1の連結面S1の径方向外側のハウジング部分C2が軸方向の一方側(軸方向上側)に沿って延びて、第1の屈曲部13を形成する。すなわち、ハウジング10の底部の一部が折り曲げられることにより、第1の屈曲部13が形成される。ハウジング10の筒部12は、第1の屈曲部13を有する。第2の連結面S2の径方向外側の部分が軸方向の一方側に沿って延びて、第2の屈曲部21を形成する。第1の屈曲部13は、第2の屈曲部21よりも径方向外側に位置する蓋部20の下部がハウジング10の底部11の内部に軸方向にはめ込まれる際には、第2の屈曲部21の外周面は、第1の屈曲部13の内周面に、締まり嵌め或いは隙間嵌めされる。
【0037】
本実施例では、締まり嵌めによって、ハウジング10と蓋部20が固定されている。すなわち、本実施例では、第2の屈曲部21の外周面と第1の屈曲部13の内周面とは、締まり嵌めの状態となっている。これにより、ハウジング10と蓋部20とを固定をするだけでなく、ハウジング10と蓋部20とのセンタリングを行い、同軸度を保つことができる。なお、本実施例のように、TOXかしめによってハウジング10と蓋部20を固定する場合、第2の屈曲部21の外周面が第1の屈曲部13の内周面に隙間嵌めされても、ハウジング10と蓋部20のセンタリングをすることができる。
【0038】
本実施例では、
図5~
図7に示すように、第1の連結面S1の径方向内側のハウジング部分C1が軸方向の他方側(軸方向下側)に向かって延びて、第3の屈曲部14を形成する。第3の屈曲部14は、ハウジング10の底部11の一部が折り曲げられることにより形成される。これにより、第1の連結面S1の径方向両側の各ハウジング部分が、第1の連結面S1と交差し且つ相反する方向に向かって、それぞれ屈曲しているため、同じ方向に向かって屈曲させる構成と比較して、TOXかしめをする際の作業空間を確保することができる。言い換えると、第1の連結面S1および第2の連結面S2の軸方向一方側および他方側にそれぞれ作業空間を確保することができる。したがって、作業者や組み立て装置がかしめ等を行う際に、治具等を用いた作業がしやすくなる。
【0039】
本実施例では、
図5~
図7に示すように、第3の屈曲部14が、二重ケーシング構造であり、径方向内側において軸受40を支持する。ハウジング10の底部11の二重ケーシング構造によって軸受40を支持するため、モータにおける部材の数を増やすことなく、軸受40の支持強度を高めることができる。
【0040】
図5~
図7の例示では、第3の屈曲部14が二重ケーシング構造である場合を例にしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1の屈曲部13も二重ケーシング構造であってもよい。これにより、ハウジング10の底部11による軸受40の支持強度をさらに高めることができる。
【0041】
以上、本実施例のモータ1に関連する構造についてのみ説明した。しかしながら、上述の構造に限られず、モータはさらに、例えば固定子、回転子など、他の構成又は構造を有していてもよい。
【0042】
本発明のモータは、EPS用のモータに限らず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で様々な用途に用いることができる。
【0043】
上述の実施例から、連結位置が設けられた面(第1の連結面)の径方向両側に連結されるハウジング部分を、軸方向の、互いに異なる方向に向かってそれぞれ延ばすことにより、連結用の治具の十分な作業空間を確保することができる。
【0044】
本発明の例示的なモータの組み立て方法について説明する。例示的なモータの具体的構造についてはすでに上述しているため、同じ内容については説明を省略する。
【0045】
図8は、本実施例のモータの組み立て方法のフローチャートである。
図8に示すように、本実施例のモータの組み立て方法は、第1の連結面を有し、第1の連結面の径方向両側に、第1の連結面と交差し且つ相反する方向に向かって、それぞれ屈曲するハウジング部分を有するハウジングを形成すること(801)、第2の連結面を有し、第2の連結面が第1の連結面に対向する蓋部を形成すること(802)、蓋部を軸方向に沿ってハウジングに挿入すること(803)、第1の連結面と第2の連結面上に、軸方向の一方側から軸方向の他方側に向かって凹んだTOX連結構造を形成すること(804)、を含む。
【0046】
なお、
図8は、本実施例について概略的に説明したものに過ぎず、本発明はこれに限定されない。例えば、個々の手順の実行順序を適当に調整してもよく、他の手順を追加または削除してもよい。例えば、手順801と手順802は並行して実行してもよく、あるいは、まず手順802を実行してから手順801を実行してもよい。
【0047】
本実施例では、ハウジングにおける、蓋部との連結構造が設けられた面(第1の連結面及び第2の連結面)の径方向両側において、各ハウジング部分を軸方向の異なる方向に向かってそれぞれ延ばすことにより、連結作業の際に十分な作業空間を確保でき、ハウジングと蓋部の連結作業が容易となる。
【0048】
本実施例では、第1の連結面S1の径方向外側のハウジング部分が、軸方向の一方側に沿って延びて第1の屈曲部を形成し、第2の連結面の径方向外側の蓋部部分が、軸方向の一方側に沿って延びて第2の屈曲部を形成する。手順803では、第2の屈曲部の外周面と第1の屈曲部の内周面を、締まり嵌め又は隙間嵌めになるように組み立てる。その後、手順804を実行することで、TOX連結構造を形成する。
【0049】
本実施例では、第2の屈曲部の外周面と第1の屈曲部の内周面を、締まり嵌めにより、固定している。すなわち、蓋部をハウジングに圧入し、締まり嵌めによって、ハウジングと蓋部の間の固定をしている。また、ハウジングと蓋部の間の固定をするだけでなく、ハウジングと蓋部のセンタリングをして同軸度を保つことができる。なお、本実施例のように、TOXかしめによってハウジングと蓋部を連結する場合、隙間嵌めであっても、ハウジングと蓋部のセンタリングをすることができる。
【0050】
以上、図面を参照しながら本発明の例示的な実施例について詳述し、本発明の原理が採用され得る形態を明示した。しかしながら、本発明の実施は上述した実施例の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での、すべての変更、修正及び均等な構成および構造などを含む。