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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061612
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ガラス梱包体
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/48 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
B65D85/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129129
(22)【出願日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2022168442
(32)【優先日】2022-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】小山 義久
(72)【発明者】
【氏名】小柳 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】竹村 聡
(72)【発明者】
【氏名】稲山 尚利
(72)【発明者】
【氏名】西川 佳範
(72)【発明者】
【氏名】大東 慎司
【テーマコード(参考)】
3E096
【Fターム(参考)】
3E096AA05
3E096AA15
3E096BA24
3E096BB03
3E096CA09
3E096CA21
3E096DA03
3E096EA01Y
3E096EA03Y
3E096EA06X
3E096EA07Y
3E096FA09
3E096FA28
3E096GA11
(57)【要約】
【課題】
ガラス積層体に含まれるガラス板が薄型の場合でも、ガラス梱包用パレットの下面支持部に対する緩衝部材の滑りを回避できるようにし、下面支持部から緩衝部材ごとガラス積層体が落下するのを防ぐこと。
【解決手段】
複数枚のガラス板Gを含んだガラス積層体2と、積層体2を縦置き姿勢で積載するガラス梱包用パレット3とを備え、パレット3が、緩衝部材5を介して積層体2の下面を支持する下面支持部7と、積層体2の背面を支持する背面支持部9とを有するガラス梱包体1について、下面支持部7と、下面支持部7に対して非固定である緩衝部材5と、の相互間に滑り止め部材4を介在させた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のガラス板を含んだガラス積層体と、前記ガラス積層体を縦置き姿勢で積載するガラス梱包用パレットと、を備え、
前記ガラス梱包用パレットが、
緩衝部材を介して前記ガラス積層体の下面を支持する下面支持部と、
前記ガラス積層体の背面を支持する背面支持部と、
を有するガラス梱包体であって、
前記下面支持部と、前記下面支持部に対して非固定である前記緩衝部材と、の相互間に滑り止め部材を介在させることを特徴とするガラス梱包体。
【請求項2】
前記滑り止め部材と前記緩衝部材との間の静止摩擦係数が、前記下面支持部と前記緩衝部材との間の静止摩擦係数よりも大きい請求項1に記載のガラス梱包体。
【請求項3】
前記滑り止め部材と前記緩衝部材との間の静止摩擦係数が、0.65以上である請求項1又は2に記載のガラス梱包体。
【請求項4】
前記滑り止め部材と前記下面支持部とが非接着であり、
前記滑り止め部材と前記下面支持部との間の静止摩擦係数が、前記滑り止め部材と前記緩衝部材との間の静止摩擦係数以上である請求項1又は2に記載のガラス梱包体。
【請求項5】
前記滑り止め部材が、ゴムシート、樹脂シート、又は、前記ゴムシートと前記樹脂シートとの積層体、のいずれかである請求項4に記載のガラス梱包体。
【請求項6】
前記滑り止め部材と前記下面支持部とが接着されている請求項1又は2に記載のガラス梱包体。
【請求項7】
前記滑り止め部材が、前記緩衝部材との接触面に砥粒を含んだシート材である請求項6に記載のガラス梱包体。
【請求項8】
前記ガラス積層体の下面と前記緩衝部材との相互間にカバー部材を介在させた請求項1又は2に記載のガラス梱包体。
【請求項9】
前記ガラス板の板厚が、0.7mm以下である請求項1又は2に記載のガラス梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はガラス梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚のガラス板を一まとめにして輸送・保管するための形態として、ガラス梱包体が知られている。ガラス梱包体は、複数枚のガラス板を相互間に保護シートを介在させた状態で積層してガラス積層体とし、当該ガラス積層体をガラス梱包用パレットに積載して梱包したものである。特許文献1にはガラス梱包体の一例が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたガラス梱包体は、ガラス積層体と、当該ガラス積層体を縦置き姿勢で積載するガラス梱包用パレットとを備えている。ガラス梱包用パレットは、緩衝部材を介してガラス積層体の下面を支持する下面支持部(同文献の実施形態では基台部4の上面)と、ガラス積層体の背面を支持する背面支持部とを有する。
【0004】
緩衝部材は、ガラス積層体に含まれる各ガラス板の下辺部と、ガラス梱包用パレットの下面支持部との相互間に介在することで、ガラス梱包体の輸送時の衝撃や振動等によってガラス板が破損するのを防止する役割を有する。緩衝部材は、緩衝性能が低下した場合に交換する必要があることや、接着剤の使用に由来するガラス板の汚染を防止する必要があることから、下面支持部に対して非接着(非固定)とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/129764号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年ガラス板の薄型化が推進されている。特許文献1に開示されたガラス梱包体において、ガラス板が薄型(例えば、板厚が0.7mm以下)である場合、ガラス積層体に含まれる各ガラス板の下辺部の周辺が背面支持部から離反する方向に湾曲しやすい。このことに起因して、各ガラス板の下辺部から緩衝部材に対し、当該緩衝部材を背面支持部から離反させる向きの力が作用しやすい。これにより、下面支持部に対して緩衝部材が滑ってしまい、下面支持部から緩衝部材ごとガラス積層体が落下してしまう事態を招いていた。
【0007】
上述の事情に鑑みて解決すべき技術的課題は、ガラス積層体に含まれるガラス板が薄型の場合でも、ガラス梱包用パレットの下面支持部に対する緩衝部材の滑りを回避できるようにし、下面支持部から緩衝部材ごとガラス積層体が落下するのを防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための第1のガラス梱包体は、複数枚のガラス板を含んだガラス積層体と、ガラス積層体を縦置き姿勢で積載するガラス梱包用パレットと、を備え、ガラス梱包用パレットが、緩衝部材を介してガラス積層体の下面を支持する下面支持部と、ガラス積層体の背面を支持する背面支持部と、を有するガラス梱包体であって、下面支持部と、下面支持部に対して非固定である緩衝部材と、の相互間に滑り止め部材を介在させることを特徴とする。
【0009】
第1のガラス梱包体では、下面支持部と緩衝部材との相互間に滑り止め部材を介在させるため、滑り止め部材によって下面支持部に対する緩衝部材の滑りを回避できる。これにより、ガラス積層体に含まれるガラス板が薄型であり、背面支持部から離反させる向きの力が緩衝部材に作用しやすい場合でも、下面支持部から緩衝部材ごとガラス積層体が落下するのを防ぐことが可能となる。
【0010】
第2のガラス梱包体は、上記の第1のガラス梱包体において、滑り止め部材と緩衝部材との間の静止摩擦係数が、下面支持部と緩衝部材との間の静止摩擦係数よりも大きい梱包体である。
【0011】
第2のガラス梱包体では、上記の静止摩擦係数の大小関係により、緩衝部材は下面支持部よりも滑り止め部材に対して滑り難い。このとおり、下面支持部よりも緩衝部材を滑らせ難い滑り止め部材が、下面支持部と緩衝部材との相互間に介在していることで、下面支持部に対する緩衝部材の滑りをより効果的に回避できる。
【0012】
第3のガラス梱包体は、上記の第1又は第2のガラス梱包体において、滑り止め部材と緩衝部材との間の静止摩擦係数が0.65以上である梱包体である。
【0013】
第3のガラス梱包体によれば、滑り止め部材に対する緩衝部材の滑りを的確に防止できることで、下面支持部に対する緩衝部材の滑りをより確実に回避できる。従って、下面支持部からのガラス積層体の落下を防ぐ上で更に有利となる。
【0014】
第4のガラス梱包体は、上記の第1~第3のいずれかのガラス梱包体において、滑り止め部材と下面支持部とが非接着であり、滑り止め部材と下面支持部との間の静止摩擦係数が、滑り止め部材と緩衝部材との間の静止摩擦係数以上である梱包体である。
【0015】
滑り止め部材と下面支持部とが非接着である場合、万一、下面支持部に対して滑り止め部材が滑ってしまうと、滑り止め部材上の緩衝部材、及び、緩衝部材上のガラス積層体が、滑り止め部材と一緒に下面支持部から落下してしまう恐れがある。しかしながら、第4のガラス梱包体では、上記の静止摩擦係数の大小関係により、滑り止め部材に対して緩衝部材が滑り難い以上に、下面支持部に対して滑り止め部材が滑り難い。従って、上述の恐れを的確に排除することが可能となる。さらに、滑り止め部材と下面支持部とが非接着であることで、劣化した滑り止め部材を交換する場合に、交換を迅速かつ簡便に実施できる。
【0016】
第5のガラス梱包体は、上記の第1~第4のいずれかのガラス梱包体において、滑り止め部材が、ゴムシート、樹脂シート、又は、ゴムシートと樹脂シートとの積層体、のいずれかである梱包体である。
【0017】
第5のガラス梱包体によれば、上記の第2のガラス梱包体における静止摩擦係数の大小関係や、上記の第3のガラス梱包体における静止摩擦係数の値を満足させやすい。
【0018】
第6のガラス梱包体は、上記の第1~第3のいずれかのガラス梱包体において、滑り止め部材と下面支持部とが接着されている梱包体である。
【0019】
第6のガラス梱包体によれば、上述のような、緩衝部材およびガラス積層体が滑り止め部材と一緒に下面支持部から落下してしまう恐れを確実に排除できる。
【0020】
第7のガラス梱包体は、上記の第6のガラス梱包体において、滑り止め部材が、緩衝部材との接触面に砥粒を含んだシート材である梱包体である。
【0021】
第7のガラス梱包体によれば、上記の第2のガラス梱包体における静止摩擦係数の大小関係や、上記の第3のガラス梱包体における静止摩擦係数の値を満足させやすい。
【0022】
第8のガラス梱包体は、上記の第1~第7のいずれかのガラス梱包体において、ガラス積層体の下面と緩衝部材との相互間にカバー部材を介在させた梱包体である。
【0023】
ガラス積層体の下面(ガラス積層体に含まれるガラス板の下辺部)と緩衝部材とを直接に接触させた場合、接触に起因してガラス板が汚染されてしまう恐れがある。しかしながら、第8のガラス梱包体では、ガラス積層体の下面と緩衝部材との相互間にカバー部材を介在させていることで、上述の恐れを排除することが可能となる。
【0024】
第9のガラス梱包体は、上記の第1~第8のいずれかのガラス梱包体において、ガラス板の板厚が0.7mm以下である梱包体である。
【0025】
ガラス板の板厚が薄いほど、背面支持部から離反させる向きの力が緩衝部材に作用しやすいため、下面支持部からのガラス積層体の落下が発生しやすくなる。そのため、第9のガラス梱包体のごとくガラス板の板厚が0.7mm以下と薄い場合に、本開示に係る技術を適用すれば、その効果を好適に享受できる。
【発明の効果】
【0026】
本開示に係るガラス梱包体によれば、ガラス積層体に含まれるガラス板が薄型の場合でも、ガラス梱包用パレットの下面支持部に対する緩衝部材の滑りを回避できるため、下面支持部から緩衝部材ごとガラス積層体が落下するのを防ぐことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第一実施形態に係るガラス梱包体を示す斜視図である。
図2】第一実施形態に係るガラス梱包体を示す側面図である。
図3】第一実施形態に係るガラス梱包体に備わったガラス梱包用パレットおよび滑り止め部材を示す斜視図である。
図4】第二実施形態に係るガラス梱包体に備わったガラス梱包用パレットおよび滑り止め部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態に係るガラス梱包体について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0029】
<第一実施形態>
図1及び図2に示すように、第一実施形態に係るガラス梱包体1(以下、梱包体1と表記)は、複数枚のガラス板Gを含んだガラス積層体2(以下、積層体2と表記)と、積層体2を縦置き姿勢で積載するガラス梱包用パレット3(以下、パレット3と表記)とを備えている。
【0030】
積層体2は、ガラス板Gと保護シートPとが交互に積層されてなる。本実施形態においては、ガラス板Gおよび保護シートPが共に矩形状をなしている。
【0031】
積層体2は、正面、背面、上面、下面、及び側面を有する。積層体2の正面および背面は、それぞれ積層体2の最前方および最後方に配置された保護シートPで構成される。積層体2の上面、下面、及び側面は、それぞれ積層体2に含まれる複数枚のガラス板Gの上辺部、下辺部、及び側辺部(上辺部と下辺部とを結ぶ辺部)で構成される。
【0032】
積層体2の重量は、例えば1500kg~4000kgである。積層体2に含まれるガラス板Gの枚数は、例えば200枚~400枚である。ガラス板Gのサイズ(面積)の下限値は、例えば730mm×920mmであり、好ましくは1900mm×2400mmである。ガラス板Gのサイズ(面積)の上限値は、例えば3200mm×3600mmである。ガラス板Gの板厚は、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.4mm以下である。しかしながらこの限りではなく、ガラス板Gの板厚の上限値は、例えば1.5mm以下であり、好ましくは0.7mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、さらに好ましくは0.4mm以下である。ガラス板Gの板厚の下限値は、例えば0.1mm以上であり、好ましくは0.2mm以上である。ガラス板Gの板厚が薄いほど、背面支持部9から離反させる向きの力が緩衝部材5に作用しやすい。従って、下面支持部7からの積層体2の落下が発生しやすくなるため、本発明による下面支持部7に対する緩衝部材5の滑りを回避する効果を好適に享受できる。また、ガラス板Gのサイズが大きいほど、自重が増加し、背面支持部9から離反させる向きの力が緩衝部材5に作用しやすい。従って、下面支持部7からの積層体2の落下が発生しやすくなるため、本発明による下面支持部7に対する緩衝部材5の滑りを回避する効果を好適に享受できる。ガラス板Gは、例えばディスプレイ用や、太陽電池用のガラス基板又はカバーガラスである。
【0033】
保護シートPは、例えば合紙(純パルプ紙)や発泡樹脂シートである。図1においては、説明の便宜上、ガラス板Gと保護シートPとを同じサイズに表示している。しかし、保護シートPの実際のサイズは、隣り合うガラス板G,G同士の接触を回避するため、ガラス板Gよりも大きくなっている。つまり、保護シートPは、ガラス板Gの上辺部や側辺部から食み出していてもよい。ただし、パレット3にガラス板Gを積み込む装置や、パレット3からガラス板Gを取り出す装置の作業エラーを防止する観点から、保護シートPは、ガラス板Gの下辺部からは食み出さないことが好ましい。
【0034】
パレット3は、滑り止め部材4、緩衝部材5、及びカバー部材6を介して積層体2の下面を支持する下面支持部7と、緩衝部材8を介して積層体2の背面を支持する背面支持部9と、下面支持部7および背面支持部9を支持する基台部10とを有する。
【0035】
下面支持部7、背面支持部9、及び基台部10は、例えばステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム合金等の金属製フレームにより構成される。本実施形態においては、炭素鋼製のフレームを採用している。下面支持部7には滑り止め部材4、緩衝部材5、カバー部材6、及び、積層体2を支持するための支持面7aが設けられている。支持面7aは水平面に対して傾斜している。背面支持部9は鉛直方向に対して傾斜した姿勢で起立している。基台部10にはフォークリフトの爪を差し入れるための穴10aが設けられている。
【0036】
滑り止め部材4は、下面支持部7と緩衝部材5との相互間に介在することで、下面支持部7に対する緩衝部材5の滑りを規制する役割を有する。緩衝部材5は、下面支持部7と積層体2の下面との相互間に介在することで、梱包体1の輸送時の衝撃や振動等によってガラス板Gが破損するのを防止する役割を有する。カバー部材6は、緩衝部材5と積層体2の下面との相互間に介在することで、緩衝部材5と積層体2(ガラス板G)との接触に由来するガラス板Gの汚染を防止する役割を有する。
【0037】
滑り止め部材4としては、例えばゴムシート、樹脂シート、又は、ゴムシートと樹脂シートとの積層体を採用できる。本実施形態においては、滑り止め部材4としてゴムシートを採用している。
【0038】
本実施形態における滑り止め部材4は、下面支持部7の支持面7a上に広げられて載置された単一のシートでなる(図3を参照)。滑り止め部材4の厚さは、例えば0.5mm~20mmである。ここで、支持面7a上に滑り止め部材4を広げやすくする観点(滑り止め部材4における皺の発生を防ぐ観点)からは、滑り止め部材4(ゴムシート)の厚さが1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることが更に好ましい。また、滑り止め部材4(ゴムシート)のタイプAデュロメータ硬さは、40~65である。なお、本実施形態の変形例として、滑り止め部材4は複数のシートに分割されていてもよい。この場合、複数のシートは支持面7a上で隙間なく配置されていてもよいし、間隔を空けて配置されていてもよい。
【0039】
本実施形態における滑り止め部材4は、当該滑り止め部材4上に配置された緩衝部材5と同じサイズ(面積)に形成されている。しかしながらこの限りではなく、滑り止め部材4は緩衝部材5と比較してサイズが大きくてもよいし、反対に小さくてもよい。すなわち、滑り止め部材4が緩衝部材5の端部から食み出していてもよいし、反対に緩衝部材5が滑り止め部材4の端部から食み出していてもよい。
【0040】
緩衝部材5は、カバー部材6を介して積層体2の下面の全体(積層体2に含まれる各ガラス板Gの下辺部の全長)を支持している。本実施形態における緩衝部材5は、発泡樹脂板11と、発泡樹脂板11上に重ね合わされたゴム板12とでなる。発泡樹脂板11およびゴム板12はそれぞれ単一の板でなる。しかしながらこの限りではなく、発泡樹脂板11やゴム板12が複数の板に分割されていてもよい。
【0041】
発泡樹脂板11は、例えば発泡ポリプロピレン、発泡ウレタン、発泡スチレン、発泡メラミン等を主たる材料としてなる。本実施形態では、発泡樹脂板11は発泡ポリプロピレン板でなる。発泡樹脂板11の発泡倍率は、10倍~40倍であることが好ましい。発泡樹脂板11の厚さは、例えば10mm~30mmであることが好ましい。
【0042】
ゴム板12は、例えば天然ゴムからなり、タイプAデュロメータ硬さが50~70である。ゴム板12の厚さは、例えば2mm~10mmであることが好ましい。
【0043】
緩衝部材5が発泡樹脂板11とゴム板12とでなることで、緩衝部材5は両板11,12のそれぞれの衝撃・振動吸収性能に応じた幅広い衝撃・振動を吸収できる。また、ゴム板12の存在により発泡樹脂板11の圧縮変形を低減できる効果も期待できる。効率よく衝撃や振動を吸収する観点から、ゴム板12は発泡樹脂板11よりも薄いことが好ましい。なお、ゴム板12は配置せずに省略してもよい。
【0044】
カバー部材6は、例えばチップボール紙等の板紙からなるが、板紙を多層構造とした段ボール紙等を採用してもよい。本実施形態においては、カバー部材6は単一の板紙でなるが、複数の板紙に分割されていてもよい。板紙が単層構造である場合の厚さは、例えば0.5mm~2mmであることが好ましい。
【0045】
ここで、一例であるが、カバー部材6は梱包体1の輸送に一回使用した時点で廃棄する。これに対し、緩衝部材5(特に発泡樹脂板11)は梱包体1の輸送に複数回使用すると共に、緩衝性能(厚さの回復性等)が低下した時点で交換する。カバー部材6は、緩衝部材5に比べて安価であるため、一回の輸送ごとに交換したとしても大幅なコストの増大を回避できる。なお、カバー部材6は配置せずに省略してもよい。
【0046】
滑り止め部材4は下面支持部7上に載置されているだけであり、滑り止め部材4と下面支持部7は非固定(非接着)の状態にある。同様にして、緩衝部材5は滑り止め部材4上に載置されているだけであり、緩衝部材5と滑り止め部材4は非固定の状態にある。これにより、緩衝部材5は、下面支持部7に対して非固定であると共に、当該緩衝部材5に対して背面支持部9から離反する方向の力が作用し、当該力の大きさが最大静止摩擦力を超える場合には、下面支持部7上で前方側へと滑りが生じる状態にある。最大静止摩擦力を超える力は、ガラス板Gの板厚が薄いほど発生しやすく、概ね板厚が0.5mm以下となると発生し得る。
【0047】
滑り止め部材4と下面支持部7、及び、緩衝部材5と滑り止め部材4の関係と同様にして、カバー部材6と緩衝部材5は非固定の状態にある。また、緩衝部材5を構成する発泡樹脂板11とゴム板12とは非固定の状態にある。なお、勿論であるが、積層体2はカバー部材6上に載置されているだけであり、積層体2とカバー部材6は非固定の状態にある。
【0048】
滑り止め部材4と緩衝部材5との間の静止摩擦係数は、下面支持部7と緩衝部材5との間の静止摩擦係数よりも大きくなっている。この静止摩擦係数の大小関係により、緩衝部材5は下面支持部7よりも滑り止め部材4に対して滑り難くなっている。これにより、下面支持部7から緩衝部材5ごと積層体2が落下するのを防いでいる。滑り止め部材4と緩衝部材5との間の静止摩擦係数は0.65以上である。なお、両者4,5間の静止摩擦係数としては、より好ましくは0.7以上であり、更に好ましくは1.0以上であり、最も好ましくは1.2以上である。ここで、本開示における「静止摩擦係数」とは、全てJIS K7125に基づいて測定した値である。
【0049】
滑り止め部材4と下面支持部7との間の静止摩擦係数は、滑り止め部材4と緩衝部材5との間の静止摩擦係数以上になっている。これにより、滑り止め部材4に対して緩衝部材5が滑り難い以上に、下面支持部7に対して滑り止め部材4が滑り難くなっている。
【0050】
発泡樹脂板11とゴム板12との間の静止摩擦係数、及び、ゴム板12とカバー部材6との間の静止摩擦係数は、いずれも下面支持部7と緩衝部材5との間の静止摩擦係数よりも十分に大きくなっている。このため、仮に滑り止め部材4を除去した場合には、(1)下面支持部7と緩衝部材5(発泡樹脂板11)との間、(2)発泡樹脂板11とゴム板12との間、(3)緩衝部材5(ゴム板12)とカバー部材6との間のうち、(1)で最も滑りが発生しやすい。なお、緩衝部材5が背面支持部9から離反する方向へ滑った場合、ガラス板Gの下辺部の湾曲が大きくなり、緩衝部材5を背面支持部9から離反させる向きの力がより大きくなる。緩衝部材5の滑りを許容できる限界の距離は、例えば15mmとすることが好ましい。
【0051】
緩衝部材8は、背面支持部9に取り付けられた状態で、積層体2の背面の全体を支持している。緩衝部材8は、背面支持部9に対して着脱が可能である。ここで、背面支持部9に突起部を設けると共に、緩衝部材8に突起部と嵌り合う穴部を設けることで、背面支持部9と緩衝部材8とのずれを規制するようにしてもよい。
【0052】
緩衝部材8は、例えばゴム板、発泡樹脂板、又は、ゴム板と発泡樹脂板との積層体でなる。発泡樹脂板としては、例えば発泡ポリプロピレン、発泡ウレタン、発泡スチレン、発泡メラミン等を主たる材料としてなるものが挙げられる。本実施形態においては、緩衝部材8は、発泡ポリプロピレン板でなる。
【0053】
カバー部材6の上面は、下面支持部7の支持面7aの傾斜に倣って、背面支持部9から離れるに連れて上方に移行するように水平面に対して傾斜している。カバー部材6の上面と水平面とがなす角度θ1は、例えば10°~20°である。さらに、緩衝部材8の前面は、背面支持部9の姿勢に倣って、下面支持部7から離れるに連れて後方に移行するように鉛直方向に対して傾斜している。緩衝部材8の前面と鉛直方向とがなす角度θ2は、例えば10°~20°である。なお、カバー部材6の上面と緩衝部材8の前面とがなす角度は略90°である。
【0054】
梱包体1は、所定の固定手段により積層体2がパレット3に固定されると共に、塵埃が積層体2に付着するのを防止するために袋等が被せられた状態で輸送される。
【0055】
<第二実施形態>
以下、第二実施形態に係るガラス梱包体について、図4を参照して説明する。なお、第二実施形態については上記の第一実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0056】
第二実施形態に係る梱包体1が、上記の第一実施形態に係る梱包体1と相違している点は、滑り止め部材4と下面支持部7とが接着されている点と、滑り止め部材4が単一ではなく複数備わっている点である。
【0057】
本実施形態では、四つの滑り止め部材4が備わっている。勿論この限りではなく、滑り止め部材4の数は三つ以下であってもよいし、五つ以上であってもよい。四つの滑り止め部材4は、下面支持部7の支持面7a上にて相互に間隔を空けて配置されている。各滑り止め部材4は滑り止めテープでなる。滑り止め部材4の下面は粘着面となっており、支持面7aに対して接着されている。一方、滑り止め部材4の上面(緩衝部材5との接触面)は砥粒を含んでいる。本実施形態では、砥粒は炭化ケイ素を主成分とする砥粒であり、粒度は#50(50番手)に相当する。
【実施例0058】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。下記の[表1]は、本発明の実施例1~実施例4、及び比較例を示すものである。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0059】
所定の角度で傾斜したパレット3上に、ガラス板Gと保護シートPとを交互に配列させた積層体2を積載して梱包した梱包体1をコンテナに積み込み、平均速度40km/hの自動車にて200kmの距離の陸上輸送を実施した後、緩衝部材5が背面支持部9から離反する方向へ滑った距離を測定した。
【0060】
下記の[表1]中、「パレットの傾斜角度」とは、緩衝部材8の前面と鉛直方向とがなす角度θ2である。また、実施例1~4における「摩擦係数」とは、滑り止め部材4と緩衝部材5との間の静止摩擦係数であり、比較例における「摩擦係数」とは、下辺支持部7と緩衝部材5との間の静止摩擦係数である。
【0061】
【表1】
【0062】
上記の[表1]によれば、滑り止め部材4として天然ゴム製のゴムシートAを使用した実施例1では、摩擦係数が1.08であり、滑り量が5mm以上である梱包体は発生しなかった。また、滑り止め部材4としてポリ塩化ビニル製樹脂シートを使用した実施例2では、摩擦係数が1.27であり、滑り量が5mm以上である梱包体は発生しなかった。さらに、滑り止め部材4として炭化ケイ素製の砥粒を含む滑り止めテープを使用した実施例3では、摩擦係数が1.63であり、滑り量が5mm以上である梱包体は発生しなかった。加えて、滑り止め部材4として天然ゴム製のゴムシートBを使用した実施例4では、摩擦係数が0.87であり、滑り量が5mm以上である梱包体は発生しなかった。一方で、滑り止め部材4を使用しない比較例では、摩擦係数が0.61であり、滑り量が5mm以上10mm未満である梱包体が0.28%、滑り量が10mm以上である梱包体が0.71%発生した。
【符号の説明】
【0063】
1 ガラス梱包体
2 ガラス積層体
3 ガラス梱包用パレット
4 滑り止め部材
5 緩衝部材
6 カバー部材
7 下面支持部
9 背面支持部
11 発泡樹脂板
12 ゴム板
G ガラス板
図1
図2
図3
図4