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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061641
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】熱電設備のシミュレーションシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240425BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174707
(22)【出願日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2022169521
(32)【優先日】2022-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】305024259
【氏名又は名称】株式会社E.I.エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】藏田 聰子
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】 太陽光発電機器及び蓄電機器と他の熱電機器とを合理的に統合利用することの可能な熱電設備のシミュレーションシステムを提供すること。
【解決手段】 プロセス条件設定部22は、太陽光発電機器の水平面日射量等のプロセス条件を設定する。運転条件設定部40は、蓄電条件設定部41と太陽光発電出力条件設定部42とをさらに有する。演算部7pは、連続制御における太陽光発電機器の出力変動及び蓄電機器の充放電条件に伴い、複合全エネルギーのいずれかの製造量が目標値に収斂するまで当該熱電機器の負荷率の変更及び調整を繰り返す収斂計算を行う。蓄電機器の1日の合計充電量と蓄電機器の1日の合計放電量とが等しくなり且つ電力エネルギーのバランスを維持し得る蓄電機器の充電量及び放電量を時間帯別に求め、加算された電力エネルギーの使用量に基づいてユーティリティー消費量を計算する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱電機器が接続され、少なくとも電力及び燃料(以下、「供給エネルギー」という。)が供給され、少なくとも電力、低冷水、冷水、温水、給湯、高圧蒸気及び低圧蒸気のうち少なくともいずれか2種類のもの(以下、「複合全エネルギー」という。)を製造して利用設備に供給する熱電設備における前記熱電機器の運転条件と供給エネルギーの使用量又は複合全エネルギーの製造量との関係を求める熱電設備のシミュレーションシステムであって、
前記熱電機器は、少なくとも、太陽光発電機器及び蓄電機器並びにモータを用いたポンプを少なくとも備える熱電機器を含み、
日別で時間帯毎に利用設備で必要とされる複合全エネルギーの量を設定するエネルギー負荷設定部と、
前記熱電設備及び前記利用設備の少なくとも外気温度又は湿球温度のいずれか並びに前記太陽光発電機器の水平面日射量を含むプロセス条件を設定するプロセス条件設定部と、
時間帯別の前記熱電機器毎の運転可否及び運転優先順位を設定する運転条件設定部と、
前記運転条件設定部の運転条件に従い前記熱電設備を運転させた結果の前記複合全エネルギーの製造量を少なくとも計算する演算部とを備え、
前記運転条件設定部は、前記蓄電機器の構成及び充放電条件を設定する蓄電条件設定部と、前記太陽光発電機器の出力効率を設定すると共に前記太陽光発電機器の出力制御を連続制御に設定する太陽光発電出力条件設定部とをさらに有し、
前記熱電機器のうち前記太陽光発電機器及び前記蓄電機器を除くいずれかが前記プロセス条件によって変動する部分負荷特性を含み、
前記太陽光発電機器は、前記プロセス条件のうち前記水平面日射量に基づく斜面日射量及び外気温度によって変動する出力特性を備え、
前記演算部は、
前記連続制御における前記太陽光発電機器の出力変動及び前記蓄電機器の前記充放電条件に伴い、前記複合全エネルギーのいずれかの製造量が前記エネルギー負荷設定部で設定した目標値に収斂するように当該熱電機器の負荷率を変更させると共にその変更された負荷率に基づいて少なくとも当該熱電機器に関連する前記複合全エネルギーのバランスを調整し、前記製造量が前記目標値に収斂するまで当該熱電機器の負荷率の変更及び前記調整を繰り返す収斂計算を行って、前記蓄電機器の1日の合計充電量と前記蓄電機器の1日の合計放電量とが等しくなり且つ電力エネルギーのバランスを維持し得る前記蓄電機器の充電量及び放電量を時間帯別に求め、
求めた前記充電量を時間帯毎に電力エネルギーの使用量に加算し、
加算された電力エネルギーの使用量に基づいてユーティリティー消費量を計算する熱電設備のシミュレーションシステム。
【請求項2】
前記充放電条件は、前記蓄電機器の運用方法と、前記蓄電機器の充電スケジュールと、受電電力の上限値とを少なくとも含み、前記運用方法には、前記受電電力が前記上限値を超えないように買電量を制限するピークカット運転が選択され、前記演算部は、前記上限値を超える電力量を前記蓄電機器の放電量とすると共に前記放電量に基づいて前記蓄電機器が放電を行う時間帯を除く時間帯毎の前記充電量を求める請求項1記載の熱電設備のシミュレーションシステム。
【請求項3】
前記充電スケジュールは、前記蓄電機器の充電開始時刻と、時間帯あたりの最大可能充電量とを含み、前記演算部は、前記1日の合計放電量と前記最大可能充電量とに基づいて前記蓄電機器の充電終了時刻を決定すると共に当該充電終了時刻を含む時間帯における最終充電量を求める請求項2記載の熱電設備のシミュレーションシステム。
【請求項4】
前記充電スケジュールは、前記蓄電機器の充電開始時刻と、充電終了時刻と、これらの時刻間の時間帯毎の充電量とを含み、前記演算部は、前記1日の合計放電量と前記時間帯毎の充電量とに基づいて前記蓄電機器の充電終了時刻又は前記時間帯の内の少なくとも1以上の時間帯における充電量を求める請求項2記載の熱電設備のシミュレーションシステム。
【請求項5】
前記充放電条件は、前記蓄電機器の運用方法と、前記蓄電機器の放電時間帯と、前記放電時間帯毎の最大可能放電量と、前記蓄電機器の充電スケジュールとを少なくとも含み、前記運転条件設定部は、前記放電時間帯を少なくとも含む時間帯において前記蓄電機器を含む発電系機器の運転優先順位を設定し、前記運用方法には、前記放電時間帯及び前記放電量に基づいて前記蓄電機器より放電を行うスケジュール放電が選択され、前記演算部は、前記充電スケジュールに基づいて前記放電時間帯を除く時間帯毎に前記蓄電機器の充電量を求める請求項1記載の熱電設備のシミュレーションシステム。
【請求項6】
前記充放電条件は、前記蓄電機器の運用方法と、前記蓄電機器の放電時間帯と、前記放電時間帯毎の最大可能放電量と、前記蓄電機器の充電スケジュールとを少なくとも含み、前記運転条件設定部は、前記熱電設備から外部へ電力を供給する売電量と売電する売電時間帯を設定する売電条件設定部とをさらに有し、前記運転条件設定部は、前記放電時間帯を少なくとも含む時間帯において前記蓄電機器を含む発電系機器の運転優先順位を設定し、前記運用方法には、設定された前記放電時間帯及び前記放電量に基づいて前記蓄電機器より放電を行うスケジュール放電が選択され、前記演算部は、前記売電量が満たされるように前記運転優先順位に基づいて前記蓄電機器の放電量を求めると共に、前記充電スケジュールに基づいて前記放電時間帯を除く時間帯毎に前記蓄電機器の充電量を求める請求項1記載の熱電設備のシミュレーションシステム。
【請求項7】
前記複合全エネルギーは、電力エネルギーの前に蒸気エネルギー、この蒸気エネルギーの前にその他のエネルギーの順で計算される請求項1記載の熱電設備のシミュレーションシステム。
【請求項8】
前記熱電機器は、コージェネレーションをさらに含み、
前記蓄電機器の充電量及び放電量を時間帯別に求めた結果、前記コージェネレーションが部分負荷運転となる場合に、前記演算部は、前記収斂計算を再度行う請求項7記載の熱電設備のシミュレーションシステム。
【請求項9】
前記太陽光発電出力条件設定部は、前記太陽光発電機器と前記蓄電機器との連結をAC連結又はDC連結の一方に選択する連結状態選択部をさらに有し、DC連結が選択された場合に、前記太陽光発電機器の出力効率を1とする請求項1~8のいずれに記載の熱電設備のシミュレーションシステム。
【請求項10】
前記蓄電条件設定部は、前記蓄電機器の構成を2系列に分けて設定可能であり、前記演算部は、各系列の前記蓄電機器の充電率(SOC)が等しくなるように充放電量の分配が実行される2系列の蓄電機器を1つの蓄電機器と見なす請求項1~8のいずれに記載の熱電設備のシミュレーションシステム。
【請求項11】
各系列の前記蓄電機器にそれぞれ接続されるDC・AC変換器の変換効率が異なる場合、前記演算部は、2系列の蓄電機器全体の充電時及び放電時の総合効率を求め、求めた充電時及び放電時の総合効率を用いて前記2系列の蓄電機器全体を1つの蓄電機器と見なす請求項10記載の熱電設備のシミュレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電設備のシミュレーションシステム及び熱電設備運転方法に関する。さらに詳しくは、複数の熱電機器が接続され、少なくとも電力及び燃料(以下、「供給エネルギー」という。)が供給され、少なくとも電力、低冷水、冷水、温水、給湯、高圧蒸気及び低圧蒸気のうち少なくともいずれか2種類のもの(以下、「複合全エネルギー」という。)を製造して利用設備に供給する熱電設備における前記熱電機器の運転条件と供給エネルギーの使用量又は複合全エネルギーの製造量との関係を求める熱電設備のシミュレーションシステム及び熱電設備運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の如き熱電設備のシミュレーションシステム及び熱電設備運転方法について、次の特許文献1が知られている。同文献によれば、複合全エネルギーのいずれかの製造量が前記エネルギー負荷設定部で設定した目標値に収斂するように当該熱電機器の負荷率を変更させると共にその変更された負荷率に基づいて少なくとも当該熱電機器に関連する複合全エネルギーのバランスを調整し、製造量が目標値に収斂するまで当該熱電機器の負荷率の変更及び前記調整を繰り返すことにより、正確なシミュレーションを行っている。この熱電機器には、太陽光発電機器や太陽光集熱機等も含まれており、太陽光関連機器と他の熱電機器とを合理的に統合利用することが可能である。
【0003】
一方、近年では、太陽光発電機器及び蓄電機器の性能が飛躍的に向上し、これら機器を組み合わせた利用も増加している。それに応じて、太陽光発電機器及び蓄電機器を含めた熱電設備のシミュレーションも的確に行えるシステムが望まれるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6118973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、太陽光発電機器及び蓄電機器と他の熱電機器とを合理的に統合利用することの可能な熱電設備のシミュレーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る熱電設備のシミュレーションシステムの特徴は、複数の熱電機器が接続され、少なくとも電力及び燃料(以下、「供給エネルギー」という。)が供給され、少なくとも電力、低冷水、冷水、温水、給湯、高圧蒸気及び低圧蒸気のうち少なくともいずれか2種類のもの(以下、「複合全エネルギー」という。)を製造して利用設備に供給する熱電設備における前記熱電機器の運転条件と供給エネルギーの使用量又は複合全エネルギーの製造量との関係を求める構成において、前記熱電機器は、少なくとも、太陽光発電機器及び蓄電機器並びにモータを用いたポンプを少なくとも備える熱電機器を含み、日別で時間帯毎に利用設備で必要とされる複合全エネルギーの量を設定するエネルギー負荷設定部と、前記熱電設備及び前記利用設備の少なくとも外気温度又は湿球温度のいずれか並びに前記太陽光発電機器の水平面日射量を含むプロセス条件を設定するプロセス条件設定部と、時間帯別の前記熱電機器毎の運転可否及び運転優先順位を設定する運転条件設定部と、前記運転条件設定部の運転条件に従い前記熱電設備を運転させた結果の前記複合全エネルギーの製造量を少なくとも計算する演算部とを備え、前記運転条件設定部は、前記蓄電機器の構成及び充放電条件を設定する蓄電条件設定部と、前記太陽光発電機器の出力効率を設定すると共に前記太陽光発電機器の出力制御を連続制御に設定する太陽光発電出力条件設定部とをさらに有し、前記熱電機器のうち前記太陽光発電機器及び前記蓄電機器を除くいずれかが前記プロセス条件によって変動する部分負荷特性を含み、前記太陽光発電機器は、前記プロセス条件のうち前記水平面日射量に基づく斜面日射量及び外気温度によって変動する出力特性を備え、前記演算部は、前記連続制御における前記太陽光発電機器の出力変動及び前記蓄電機器の前記充放電条件に伴い、前記複合全エネルギーのいずれかの製造量が前記エネルギー負荷設定部で設定した目標値に収斂するように当該熱電機器の負荷率を変更させると共にその変更された負荷率に基づいて少なくとも当該熱電機器に関連する前記複合全エネルギーのバランスを調整し、前記製造量が前記目標値に収斂するまで当該熱電機器の負荷率の変更及び前記調整を繰り返す収斂計算を行って、前記蓄電機器の1日の合計充電量と前記蓄電機器の1日の合計放電量とが等しくなり且つ電力エネルギーのバランスを維持し得る前記蓄電機器の充電量及び放電量を時間帯別に求め、求めた前記充電量を時間帯毎に電力エネルギーの使用量に加算し、加算された電力エネルギーの使用量に基づいてユーティリティー消費量を計算することにある。
【0007】
上記構成によれば、熱電機器は、少なくとも、太陽光発電機器及び蓄電機器並びにモータを用いたポンプを少なくとも備える熱電機器を含む。そして、熱電機器のうち太陽光発電機器及び蓄電機器を除くいずれかはプロセス条件によって変動する部分負荷特性を含み、太陽光発電機器は、プロセス条件のうち水平面日射量に基づく斜面日射量及び外気温度によって変動する出力特性を備える。また、蓄電機器は、その構成及び充放電条件に応じて充電量及び放電量は変化する。さらに、従来の太陽光発電機器は、太陽光発電のモジュール(アレイ)の基数単位でしか出力制御ができず、段階的な出力制御となり、調整のために少なからず買電を要していた。しかし、技術の進展により、パワーコンディショナー等を含む太陽光発電機器において1%単位での定格出力制御が可能となり、太陽光発電の出力を連続的に制御することが可能となり、蓄電機器への充電が効率よく行われるようになった。本発明では、運転条件設定部は、蓄電機器の構成及び充放電条件を設定する蓄電条件設定部と、太陽光発電機器の出力効率を設定すると共に太陽光発電機器の出力制御を連続制御に設定する太陽光発電出力条件設定部とをさらに有する。これにより、上述の如き機器を含む熱電設備において、現実に即した運転条件及び充放電条件の設定が可能となる。
【0008】
そして、上記設定に基づき、演算部は、連続制御における太陽光発電機器の出力変動及び蓄電機器の充放電条件に伴い、複合全エネルギーのいずれかの製造量がエネルギー負荷設定部で設定した目標値に収斂するように当該熱電機器の負荷率を変更させると共にその変更された負荷率に基づいて少なくとも当該熱電機器に関連する複合全エネルギーのバランスを調整し、製造量が目標値に収斂するまで当該熱電機器の負荷率の変更及び調整を繰り返す収斂計算を行って、蓄電機器の1日の合計充電量と蓄電機器の1日の合計放電量とが等しくなり且つ電力エネルギーのバランスを維持し得る蓄電機器の充電量及び放電量を時間帯別に求める。そして、1日の合計充電量と蓄電機器の1日の合計放電量とが等しくなり且つ電力エネルギーのバランスを維持し得る蓄電機器の充電量及び放電量を時間帯別に求める。これによって、連続制御における太陽光発電機器の出力変動及び蓄電機器の充放電条件に応じて、各種熱電機器の出力が調整されると共に電力バランス及び蓄電バランスが確保される。そして、蓄電機器からの放電は、発電系機器での発電と見做すことができるので、求めた充電量を時間帯毎に電力エネルギーの使用量に加算し、加算された電力エネルギーの使用量に基づいてユーティリティー消費量を計算する。このように、太陽光発電機器及び蓄電機器と他の熱電機器とを合理的に統合利用してシミュレートすることができる。
【0009】
前記充放電条件は、前記蓄電機器の運用方法と、前記蓄電機器の充電スケジュールと、受電電力の上限値とを少なくとも含み、前記運用方法には、前記受電電力が前記上限値を超えないように買電量を制限するピークカット運転が選択され、前記演算部は、前記上限値を超える電力量を前記蓄電機器の放電量とすると共に前記放電量に基づいて前記蓄電機器が放電を行う時間帯を除く時間帯毎の前記充電量を求めるとよい。ピークカット運転とは、熱電設備の買電電力が、予め設定した買電量を超えるときに放電を行うことで、買電電力を一定値以下に抑える運転方法である。また、蓄電機器は、充電と放電を同時に行うことはできない。よって、演算部が、上限値を超える電力量を蓄電機器の放電量とすると共に放電量に基づいて蓄電機器が放電を行う時間帯を除く時間帯毎の前記充電量を求めることで、ピークカット運転においても、熱電設備のシミュレートが可能である。
【0010】
係る場合、前記充電スケジュールは、前記蓄電機器の充電開始時刻と、時間帯あたりの最大可能充電量とを含み、前記演算部は、前記1日の合計放電量と前記最大可能充電量とに基づいて前記蓄電機器の充電終了時刻を決定すると共に当該充電終了時刻を含む時間帯における最終充電量を求めるとよい。上述のピークカット運転において、充電スケジュールとして蓄電機器の充電開始時刻と、時間帯あたりの最大可能充電量とを設定し、1日の合計放電量と最大可能充電量に基づいて充電終了時刻及び最終充電量を決定することで、このような充電スケジュールの設定においても熱電設備のシミュレートが可能である。
【0011】
また、前記充電スケジュールは、前記蓄電機器の充電開始時刻と、充電終了時刻と、これらの時刻間の時間帯毎の充電量とを含み、前記演算部は、前記1日の合計放電量と前記時間帯毎の充電量とに基づいて前記蓄電機器の充電終了時刻又は前記時間帯の内の少なくとも1以上の時間帯における充電量を求めるとよい。上述のピークカット運転において、充電スケジュールとして蓄電機器の充電開始時刻と、充電終了時刻と、これらの時刻間の時間帯毎の充電量とを設定し、1日の合計放電量と時間帯毎の充電量とに基づいて蓄電機器の充電終了時刻又は時間帯の内の少なくとも1以上の時間帯における充電量を求めることで、このような充電スケジュールの設定においても熱電設備のシミュレートが可能である。
【0012】
前記充放電条件は、前記蓄電機器の運用方法と、前記蓄電機器の放電時間帯と、前記放電時間帯毎の最大可能放電量と、前記蓄電機器の充電スケジュールとを少なくとも含み、前記運転条件設定部は、前記放電時間帯を少なくとも含む時間帯において前記蓄電機器を含む発電系機器の運転優先順位を設定し、前記運用方法には、前記放電時間帯及び前記放電量に基づいて前記蓄電機器より放電を行うスケジュール放電が選択され、前記演算部は、前記充電スケジュールに基づいて前記放電時間帯を除く時間帯毎に前記蓄電機器の充電量を求めるとよい。スケジュール放電とは、予め設定した放電スケジュール(放電時間帯及びその時間帯での放電量)で放電を行う運転方法である。蓄電機器は、充電と放電を同時に行うことはできない。よって、放電時間帯を少なくとも含む時間帯において蓄電機器を含む発電系機器の運転優先順位を設定し、充電スケジュールに基づいて放電時間帯を除く時間帯毎に蓄電機器の充電量を求めることで、例えばピークシフト運転や電力卸市場価格連動運転のシミュレートが可能となる。ピークシフト運転とは、買電電力の平準化を目指す運用であり、基本的に買電量の多い時間帯に放電し、買電量の少ない時間帯に充電する運転である。電力卸市場価格連動運転とは、電力料金が高い時間帯に放電し、電力料金が安い時間帯に充電する運転である。上記構成によれば、このような運転方法においても、熱電設備のシミュレートが可能である。
【0013】
前記充放電条件は、前記蓄電機器の運用方法と、前記蓄電機器の放電時間帯と、前記放電時間帯毎の最大可能放電量と、前記蓄電機器の充電スケジュールとを少なくとも含み、前記運転条件設定部は、前記熱電設備から外部へ電力を供給する売電量と売電する売電時間帯を設定する売電条件設定部とをさらに有し、前記運転条件設定部は、前記放電時間帯を少なくとも含む時間帯において前記蓄電機器を含む発電系機器の運転優先順位を設定し、前記運用方法には、設定された前記放電時間帯及び前記放電量に基づいて前記蓄電機器より放電を行うスケジュール放電が選択され、前記演算部は、前記売電量が満たされるように前記運転優先順位に基づいて前記蓄電機器の放電量を求めると共に、前記充電スケジュールに基づいて前記放電時間帯を除く時間帯毎に前記蓄電機器の充電量を求めるとよい。スケジュール放電とは、予め設定した放電スケジュール(放電時間帯及びその時間帯での放電量)で放電を行う運転方法である。また、蓄電機器は、充電と放電を同時に行うことはできない。よって、熱電設備から外部へ電力を供給する売電量と、放電時間帯を少なくとも含む時間帯において蓄電機器を含む発電系機器の運転優先順位を設定し、売電量が満たされるように運転優先順位に基づいて蓄電機器の放電量を求めると共に充電スケジュールに基づいて放電時間帯を除く時間帯毎に前記蓄電機器の充電量を求めることで、例えばVPP(Virtual Power Plant=仮想発電所)発電のシミュレートが可能となる。これにより、例えば、VPP供給電力を時間帯毎に外だし電力(逆潮)に設定し、月毎パターン毎にVPP供給可能な電力量を検討することができる。
【0014】
上記構成において、前記複合全エネルギーは、電力エネルギーの前に蒸気エネルギー、この蒸気エネルギーの前にその他のエネルギーの順で計算されるとよい。そして、前記熱電機器は、コージェネレーションをさらに含み、前記蓄電機器の充電量及び放電量を時間帯別に求めた結果、前記コージェネレーションが部分負荷運転となる場合に、前記演算部は、前記収斂計算を再度行う。上記したように、前記蓄電機器の1日の合計充電量と前記蓄電機器の1日の合計放電量とが等しくなり且つ電力エネルギーのバランスを維持し得る前記蓄電機器の充電量及び放電量を時間帯別に求めた結果、電力負荷が変更される場合がある。係る場合、例えば、電力負荷の変動によりコージェネレーションが部分負荷運転となる。よって、加算された電力エネルギーの使用量に基づいて、再度収斂計算を行うことで、より正確なシミュレートが可能となる。
【0015】
上記いずれかの特徴構成において、前記太陽光発電出力条件設定部は、前記太陽光発電機器と前記蓄電機器との連結をAC連結又はDC連結の一方に選択する連結状態選択部をさらに有し、DC連結が選択された場合に、前記太陽光発電機器の出力効率を1とするとよい。図1c,1dに示すように、太陽光発電機器と蓄電機器とは、太陽光発電電力を交流(AC)に変換して熱電設備のAC母線を介して蓄電機器に連結(接続)するAC連結と、太陽光発電電力を直流(DC)のまま直接蓄電機器に連結(接続)するDC連結とがある。AC連結では変換損失が生じるが、DC連結では変換損失が生じない。よって、上記構成によれば、いずれの連結(接続)方法を選択してもシミュレートが可能であり、これらを比較することも可能となる。
【0016】
また、上記いずれかの特徴構成において、前記蓄電条件設定部は、前記蓄電機器の構成を2系列に分けて設定可能であり、前記演算部は、各系列の前記蓄電機器の充電率(SOC)が等しくなるように充放電量の分配が実行される2系列の蓄電機器を1つの蓄電機器と見なすとよい。熱電設備において、蓄電機器は1系列(1種)のみならず、例えば増設等によって1系統増加することも考えられる。上記構成によれば、蓄電機器を2系列設けた熱電設備であってもシミュレートが可能である。
【0017】
さらに、上記構成において、各系列の前記蓄電機器にそれぞれ接続されるDC・AC変換器の変換効率が異なる場合、前記演算部は、2系列の蓄電機器全体の充電時及び放電時の総合効率を求め、求めた充電時及び放電時の総合効率を用いて前記2系列の蓄電機器全体を1つの蓄電機器と見なすとよい。蓄電機器を2系列設ける場合において、蓄電機器のDC・AC変換器の変換効率が一致するとは限らない。上記構成によれば、蓄電機器のDC・AC変換器の変換効率が一致しない場合であっても、蓄電機器を2系列設けた熱電設備のシミュレートが可能である。
【発明の効果】
【0018】
上記本発明に係る熱電設備のシミュレーションシステムの特徴によれば、太陽光発電機器及び蓄電機器と他の熱電機器とを合理的に統合利用することが可能となった。また、太陽光発電機器及び蓄電機器のシミュレーションもより正確となり、これらの機器の導入評価や、その設置の事前評価や、効率の良い設置のシミュレーションも行えるようになった。
【0019】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1a】本発明に係るシミュレーションシステムの対象となる熱電設備の一般的システム図である。
図1b】熱電設備の一例におけるブロック図である。
図1c】太陽光発電機器が蓄電機器にAC連結された熱電設備における蓄電機器の構成及び電力の流れを示す模式図である。
図1d】太陽光発電機器が蓄電機器にDC連結された熱電設備における蓄電機器の構成及び電力の流れを示す模式図である。
図2a】本発明に係るシミュレーションシステムのビジネスデータフロー図である。
図2b】本発明に係るシミュレーションシステムのハードウエアの構成図である。
図2c】本発明に係るシミュレーションシステムのソフトウエアの構成図である。
図3a】各設定部の設定手順を示すフロー図である。
図3b】運転条件設定部での設定手順を示すフロー図である。
図4】熱電負荷データの一例を示す図である。
図5a】ガスエンジンコージェネレーションの機器性能データの発電効率、蒸気収率及び排温水収率の部分負荷特性グラフである。
図5b】ジェネリンクの部分負荷特性グラフである。
図6】電力負荷の切り替え選択を説明する模式図である。
図7】蓄電機器を含む発電系機器の運転条件の設定を示す図であり、(a)は8時-18時、(b)は18時-22時、(c)は22時-8時の設定例を示す。
図8a】一般的ロジックフロー全体を示す図である。
図8b】冷水及び温水エネルギーバランスの一般的ロジックフロー図である。
図8c】低圧蒸気エネルギーバランスの一般的ロジックフロー図である。
図8d】ガスエンジン排温水エネルギーバランスの一般的ロジックフロー図である。
図8e】給湯エネルギーバランス及び電力エネルギーバランスの一般的ロジックフロー図である。
図9a】ピークカット運転における時間帯別電力バランスの一例を示すグラフである。
図9b】ピークカット運転における時間帯別電力バランスの一例を示す帳票である。
図9c】ピークカット運転における蓄電機器の時間帯別放充電バランスの一例を示す帳票である。
図10a】VPP発電における時間帯別電力バランスの一例を示すグラフである。
図10b】VPP発電における時間帯別電力バランスの一例を示す帳票である。
図10c】VPP発電における蓄電機器の時間帯別放充電バランスの一例を示す帳票である。
図11a】蓄電機器を第一優先としたピークシフト運転における時間帯別電力バランスの一例を示すグラフである。
図11b】蓄電機器を第一優先としたピークシフト運転における時間帯別電力バランスの一例を示す帳票である。
図11c】蓄電機器を第一優先としたピークシフト運転における蓄電機器の時間帯別放充電バランスの一例を示す帳票である。
図11d】ガスエンジンを第一優先としたピークシフト運転における時間帯別電力バランスの一例を示すグラフである。
図11e】ガスエンジンを第一優先としたピークシフト運転における時間帯別電力バランスの一例を示す帳票である。
図11f】ガスエンジンを第一優先としたピークシフト運転における蓄電機器の時間帯別放充電バランスの一例を示す帳票である。
図12a】蓄電機器を第一優先とした電力卸市場価格連動運転における時間帯別電力バランスの一例を示すグラフである。
図12b】蓄電機器を第一優先とした電力卸市場価格連動運転における時間帯別電力バランスの一例を示す帳票である。
図12c】蓄電機器を第一優先とした電力卸市場価格連動運転における蓄電機器の時間帯別放充電バランスの一例を示す帳票である。
図13a】太陽光発電の余剰活用における時間帯別電力バランスの一例を示すグラフである。
図13b】太陽光発電の余剰活用における時間帯別電力バランスの一例を示す帳票である。
図13c】太陽光発電の余剰活用における蓄電機器の時間帯別放充電バランスの一例を示す帳票である。
図14a】2系列の蓄電機器のAC連結の例を示す図である。
図14b】2系列の蓄電機器のDC連結の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について、図1~9を参照しながら説明する。
図1aに本発明の対象となる熱電設備の一般的システム図を例示する。熱電設備Mは複数の熱電機器より構成される。同図に例示する熱電設備Mには、次の表1aの如く、蒸気R(高圧蒸気R1及び低圧蒸気R2)、化石燃料及びその他燃料(以下、単に「燃料」という。)R3、電力R4、冷水R5、温水R6が供給され、蒸気S(高圧蒸気S1及び低圧蒸気S2)、冷水S3,4、温水S5,6、給湯S7、電力S8が製造され利用設備(ビル、工場、地域冷暖房等)に供給される。
【0022】
【表1a】
【0023】
熱電機器は、大略、発電系機器M100、ボイラ系機器M200、冷水系機器M300、温水系機器M400、低冷水系機器M500、給湯系機器M600、冷却塔系機器M700(グループ冷却塔)、蓄熱系機器M800、ポンプ系機器M900及び太陽光関連機器M1000に系統別に分類されており、これらを適宜組み合わせて上述の如き熱電設備が構築される。本発明において、蓄電機器(SB)M190は、発電系機器M100に含まれる。各系統M100~1000に含まれる熱電機器を例えば表1bに列挙する。なお、表1bは例示に過ぎず、例えば低冷水系機器として、低冷水系電動ターボ冷凍機や低冷水系電動ヒートポンプを設け、低冷水が供給されるようにすることも可能である。また、ジェネリンク(登録商標)は、ガスコージェネレーション(ガスエンジン、燃料電池)から発生する100℃以下の排熱温水を有効に利用し、冷房を行う排温水投入型吸収冷凍機である。太陽光関連機器M1000は、他の熱電機器に電力R4を供給する太陽光発電機器M1100と、他の熱電機器としての太陽熱温水利用機器に太陽熱温水R7を供給する太陽熱集熱機器M1200を含む。太陽熱温水R7の供給を受ける太陽熱温水利用機器としては、ソーラージェネリンク(太陽熱温水投入型吸収冷凍機)及び/又はソーラー温水熱交換器がある。また、本明細書において、熱源機器とは、熱電機器から蓄電機器を含む発電系機器及び太陽光発電機器を除いたものをいう。なお、各機器は、受け入れるエネルギーと製造され供給するエネルギーによって特定され、上記の如く系統別に分類される。
【0024】
【表1b】
【0025】
ここで、シミュレーションシステム1は、図2aの如く構成されており、DBサーバー4に対しネットワーク5を通じて、複数のユーザー端末2と、管理者端末3とが接続されている。ユーザー端末2及び管理者端末3等のハードウエアの構成は、図2b及び表1cに示すように構成されている。各端末のハードウエアは、大略、ユーザーインターフェイス6、CPU7等を備え、データ及びプログラム等7x~7zを稼働させて処理を行う。
【0026】
【表1c】
【0027】
ユーザーインターフェイス6はモニタ6a、キーボード6b、マウス6cを備え、後述の表示画面のボタンや入力欄をユーザーが操作するためのものである。ユーザーインターフェイス6はCPU7、一時記憶メモリ7b、HDD7c、ネットワークアダプタ7d等とデータバス、アドレスバス等のバス7aにより接続されている。CPU7、一時記憶メモリ7b、HDD7c等は連携して演算部7pを構成し、上記データ、アプリケーションプログラム等を稼働させる。
【0028】
図2aに示すように、DBサーバー4のデータベース(「データベース」を以下、「DB」と省略する。)群100は、電力料金等DB101、環境負荷DB102及び機器性能DB103を備えている。この電力料金等DB101には、電力料金等の供給エネルギーの価格に関する情報が記憶され、保存される。環境負荷DB102には公表されている各種データ等から作成される環境負荷データ(単位環境負荷)が記憶される。また、機器性能DB103には、機器の部分負荷特性、外気温度及び湿球温度による機器効率の変化、内部動力消費量及びシステムに組み込まれた機器の制約条件等が主要メーカの機種別、燃料別、能力別に記憶される。
【0029】
本システムのユーザーは、DBサーバー4に対しTCP/IP等のネットワーク5を通じてアクセスし、電力料金データファイル101a、環境負荷データファイル102a及びメーカ・機器データテンプレートファイル103aを各DB101~103から読み込み、読込データ100aとして保存する。これらの読み込みにより、カタログに記載されていないデータや、更新機器のデータ、新機種のデータ等を利用することができる。
【0030】
電力料金データ及び環境負荷データは、各ユーザーの独自の評価データに手動で変更してシミュレーションを実施することもでき、ケースファイル106に保存される。このように、後述する各設定部へ設定された条件及びパラメータはケースファイルとして電子記録媒体であるHDD7cに記録可能である。なお、電子記録媒体としては、HDD7cに限らず、磁気ディスク、光ディスク、RAM等の各種のリムーバブルディスクを電子記録媒体として使用することも可能である。
【0031】
演算部7pでは、処理用アプリケーション7y、負荷作成アプリケーション7zが稼働する。負荷作成アプリケーション7zは状況に応じて熱電負荷を作成し、熱電負荷ファイル104に保存する。そして、これらを稼働させ、ユーザーが評価するエネルギーシステムに合わせたデータに修正して実施したシミュレーションデータをケースファイル106と熱電負荷ファイル104として保存することができる。評価用には、アウトプットグラフ、帳票の表示155、簡易印刷156、ファイル(表形式)157として出力を行うことができる。ユーザーは、いつでもケースファイル106を読込んで省エネルギー効果等を評価することができる。また、エネルギーシステムの太陽光発電機器及び蓄電機器を除く熱電機器のいずれかが部分負荷特性を含み、太陽光発電機器が後述の斜面日射量及び外気温度によって変動する出力特性を備え、演算部7pは連続制御における太陽光発電機器の出力特性及び蓄電機器の充放電条件に伴い複合全エネルギーのいずれかの製造量がエネルギー負荷設定部で設定した目標値となるように当該熱電機器の負荷率を変更させて収斂計算を行う。また、演算部7pは、収斂計算が完了するように熱電機器の台数を判定し台数を変更する計算判定部7qを備える。
【0032】
例えば運転条件設定部40で余分な台数又は不適切な熱電機器の種類が選択されていた場合、収斂計算が目標値に収束しないことが想定され得る。係る場合に、熱源機器では設定した優先順位に従って熱負荷に見合う台数のみを立ち上げて、その台数により演算部7pが再度収斂計算を行う。発電系機器は買電により処理でき、収束計算の負荷低減のため、自動立上を行わないように構成されている。
【0033】
一方、設定した熱電機器の能力が乏しい又は台数が少なく、目標値(例えば、目標冷水負荷)まで計算結果が到達せずに収斂計算が完了しないと判定した場合には、計算判定部7qは設定した優先順位の最も低い熱源機器を1台増加させ、再度収斂計算を行う。この収斂計算が完了可能となるまで繰り返し行い、負荷に見合うだけの台数に増加させる。ここで、優先順位の最も低い熱源機器は、通常熱電設備のシステム構成において重要度が低く、熱電設備全体に与える影響は小さいものと考えられる。また、優先順位の最も低い熱源機器の台数を増加させるだけであるので、再計算を簡易に行うことができる。これにより、熱電設備全体に大きな影響を与えることなく迅速にシミュレーションを行うことができる。
【0034】
図1bに熱電設備Mのブロックフローの一例を示す。この熱電設備Mは、ガスエンジンコージェネレーションM150(以下、「GEコージェネ」「ガスエンジンコージェネ」「ガスエンジン」と称することもある。)、低圧ボイラM220、吸収式冷凍機M310、ターボ冷凍機M350、ジェネリンクM380、太陽光発電機器M1100及び蓄電機器M190より構成してある。ガスエンジンコージェネレーションM150は、排熱ボイラM150aを備えている。
【0035】
太陽光発電機器M1100(太陽光発電ユニット)は、太陽光発電モジュール(アレイ)と、パワーコンディショナーM1101又はDC・DC変換器M1102を含む。太陽光発電機器M1100は、図1cに示す如き交流(AC)に変換してAC母線Abに接続する場合(AC連結)と、図1dに示す如き直流(DC)のまま蓄電機器M190に接続する場合(DC連結)とがある。AC連結の場合、太陽光の発電電力は、パワーコンディショナーM1101を介してAC母線Abを経由して蓄電機器M190に供給(充電)される。そのため、DC→AC→DCと変換されるので、変換損失が生じる。他方、DC連結の場合、太陽光の発電電力は、DC・DC変換器M1102を介して直接蓄電機器M190に電力が供給(充電)されると共に一部(余剰)はAC母線Abに供給される。よって、変換損失が少なくて済む。本発明では、後述する連結状態選択部42aの設定により、AC連結とDC連結とを切り替えてシミュレートすることができ、比較することも可能である。
【0036】
図2cに示すように、本発明に係るシミュレーションシステム1のソフトウェア構成は、大略、エネルギー負荷設定部10、基本条件設定部20、システム構築設定部30、運転条件設定部40、運転結果出力部50、ケースファイル等作成部60及び表示制御部70よりなる。また、DB群100は、先の図2aと同様である。
【0037】
基本条件設定部20は、ユーティリティーコスト設定部21、プロセス条件設定部22、環境負荷設定部23及び温度データ設定部24とからなる。ユーティリティーコスト設定部21は、電力コスト設定部21a及び燃料コスト設定部21bを備えている。また、運転条件設定部40は、蓄電機器M190の構成及び充放電条件を設定する蓄電条件設定部41と、太陽光発電機器M1100の出力効率を設定すると共に太陽光発電機器M1100の出力制御を連続制御に設定する太陽光発電出力条件設定部42と、熱電設備から外部へ電力を供給する売電量と売電する売電時間帯を設定する売電条件設定部43を有する。さらに、太陽光発電出力条件設定部42は、太陽光発電機器M1100と蓄電機器M190との連結をAC連結又はDC連結の一方に選択する連結状態選択部42aをさらに有する。
【0038】
ここで、図3aにシミュレーションシステムの各設定部の設定手順を示す。
この設定手順は、図2c及び図3aに示すように、まず、エネルギー負荷設定部10によりエネルギー負荷を設定する(S201)。次に、プロセス条件設定部22により熱媒のプロセス条件を設定する(S202)。そして、環境負荷設定部23及びユーティリティーコスト設定部21により環境負荷DB102及び電力料金等DB101から読み込むことで環境負荷データ及びユーティリティーコストを設定する(S203,204)。これらを設定後、システム構築設定部30において、熱電機器を選択して機器性能データを読み込むことにより熱電設備を構築し(S206,207)、その構築した熱電設備における運転条件を運転条件設定部40により設定する(S208)。熱電設備の構築状況は適宜表示制御部70を介してフロー図に表示される。上記各ステップで設定した条件は、ケースファイル等作成部60によりユーザー機器テンプレートファイル103b、熱電負荷ファイル104及びケースファイル106等の個別データ100bとして適宜保存することができる。また、上記各ステップにおいてDB群100の各種データを利用して設定したが、保存している個別データ100bを利用して各種設定を行うことも可能である。
【0039】
ここで、図1bに示す如く熱電設備Mに蓄電機器M190が含まれる場合、運転条件設定部40による設定(S208)は、図3bに示すように、蓄電条件設定部41により蓄電機器M190の運転条件を設定すると共に(S2081)、他の熱電機器の運転条件を設定して(S2082)、演算部7pにより初期のシミュレーション計算が実行される(S2083)。そこで、演算部7pは、蓄電機器M190の充電量及び放電量を時間帯別に求めて充放電のバランスを計算し(S2084)、求めた充電量を時間帯毎に電力エネルギーの使用量(電力負荷)に加算する(S2085)。そして、加算した電力エネルギーの使用量(電力負荷)に基づいて、ユーティリティー消費量を計算し、出力する(S210)。なお、ユーティリティー消費量とは、複合全エネルギーを製造するために必要となる供給エネルギーの消費量を指す。供給エネルギーは、電力、燃料及び受入熱量(蒸気、冷水、温水、排温水)を含む。
【0040】
他方、エネルギーバランスを取る必要が生じた場合(S2086)、これらの新たな設定条件及び加算された電力エネルギーの使用量に基づいて時間帯別及び/又は年間のシミュレーションを演算部7pにより実行する(S209)。その結果は運転結果出力部50により、図9等に示す如きグラフや帳票の形式で出力される(S210)。また、条件を変更して繰り返しシミュレーションを行うことも可能である。係る場合、運転優先順位、運転可否及び最低買電量、電主、熱主等の変更、蓄電機器の運転条件の変更等(S211)は運転条件で行い、比較検討の為の機器の追加、変更及び削除等(S212)はシステム構築設定で行う。そして、再度シミュレーションを実行し出力する(S209,210)。
【0041】
ここで、上記シミュレーションにおける一般的バランス計算処理手順を図8を参照しながら説明する。エネルギーバランスステップを以下、「EB」と省略する。
同図に示すように、一般的処理手順は、冷水EB(S01)、温水EB(S02)、低圧蒸気EB(S03)、高圧蒸気EB(S04)、ガスエンジン排温水EB(S05)、給湯EB(S06)、電力EB(S07)からなる。このように、複合全エネルギーは、電力エネルギーの前に蒸気エネルギー、この蒸気エネルギーの前にその他のエネルギーの順で、上記各ステップでの設定条件に基づいて順次計算される。
【0042】
エネルギー負荷設定(S201)において、エネルギー負荷設定部10は、月別、日別及びパターン別で時間帯毎に利用設備で必要とされる複合エネルギーの量を設定する。例えば、図4に示す如く、外気温度、湿球温度及び熱電負荷データとして冷水負荷、蒸気負荷、電力負荷、冷水供給温度及び冷水戻り温度を設定する。外気温度は、ガスタービンの吸気温度と関連し、その吸気温度はガスタービン発電量のパラメータとなる。
【0043】
湿球温度は、冷却水温度に影響し、吸収式冷凍機及びターボ冷凍機の性能(COP)の変数となり電力消費量、化石燃料消費量に関係する。後述する機器性能データにおいて、冷却水温度は湿球温度+任意温度例えば+5℃として規定してある。この外気温度、湿球温度は、例えば気象庁のHPからダウンロードしたデータを用いて設定する。また、外気温度、湿球温度の他、河川水温度、海水温度、下水・井戸水等の温度も月別で時間帯毎に設定可能である。
【0044】
また、冷水負荷、低冷水負荷、温水負荷、低圧蒸気、高圧蒸気、給湯負荷、電力負荷等の熱電負荷データは、熱電設備が既に稼働している場合、その稼働時に採取してある熱電負荷データを利用して設定することができる。また、このエネルギー負荷設定は、12ヶ月分を各月最大31パターンの負荷まで24時間データで設定可能であり、さらに、夏季設計日、冬期設計日の負荷を設定可能である。ここで、夏季設計日とは予測される冷熱の最大負荷で例えば8月の15%アップの負荷等を設定する。同様に冬期設計日とは予測される温熱の最大負荷で例えば2月の15%アップの負荷等を設定する。また、冷水、低冷水、温水の各供給温度及び戻り温度も同様に設定可能である。
【0045】
次に、プロセス条件設定(S202)において、プロセス条件設定部22は、基本条件、燃料データ、電気系統・蒸気系統及びガスエンジン、ガスタービン及び燃料電池等の回収蒸気の種類等の熱媒のプロセス条件を設定する。このプロセス条件設定部22は、エネルギー負荷設定部10の熱媒の温度差、外気温度及び湿球温度を使用するかを選択すると共に、冷水、温水、低冷水の供給温度と戻り温度との各目標温度差及びミニマムバイバス流量を設定する。また、高圧・低圧
【0046】
次に、プロセス条件設定(S202)において、プロセス条件設定部22は、基本条件、燃料データ、電気系統・蒸気系統及びガスエンジン、ガスタービン及び燃料電池等の回収蒸気の種類等の熱媒のプロセス条件を設定する。このプロセス条件設定部22は、エネルギー負荷設定部10の熱媒の温度差、外気温度及び湿球温度を使用するかを選択すると共に、冷水、温水、低冷水の供給温度と戻り温度との各目標温度差及びミニマムバイバス流量を設定する。また、高圧・低圧蒸気の条件(圧力MpaG、蒸気エンタルピーkJ/kg、還水のエンタルピーkJ/kg、蒸気回収率%)を設定する。
【0047】
ここで、蒸気エンタルピーの計算処理手順では、まず蒸気圧力を設定し、蒸気種別として飽和蒸気又は過熱蒸気のいずれかを選択すると、その蒸気圧力が過熱蒸気であるか飽和蒸気であるかを判定する。飽和蒸気である場合、設定された圧力により、飽和蒸気エンタルピーが計算され、その計算結果が蒸気エンタルピーとして入力される。一方、過熱蒸気である場合、過熱蒸気温度を入力すると過熱蒸気エンタルピーが計算され、計算結果が蒸気エンタルピーとして入力される。なお、高圧蒸気と低圧蒸気の各圧力は個別に設定可能であり、計算手順はいずれも同一である。
【0048】
燃料のプロセス条件では、ガス、重油、灯油及びその他の油並びに水素の発熱量及び比重を設定する。電気系統及び蒸気系統については、熱電負荷データの電力負荷、低圧蒸気負荷の内訳、発電電力の供給先、ガスエンジン、ガスタービン及び燃料電池等の回収蒸気種別、蒸気減圧による電力回収をそれぞれ設定する。
【0049】
熱電負荷データの電力負荷の内訳は、エネルギー負荷設定部10で設定した電力負荷が熱電設備以外に供給される電力負荷であるか、熱電設備の電力を含んだ電力負荷であるかを選定する。熱電設備以外の負荷の設定により、エネルギー負荷設定部10で設定した電力負荷は利用設備に供給される電力として設定される。
【0050】
同様に熱電負荷データの低圧蒸気負荷の内訳は、低圧蒸気負荷が熱電設備以外に供給される蒸気負荷であるか、熱電設備で発生する蒸気負荷であるかを選定する。熱電設備以外への供給のみの場合、設定された蒸気負荷は利用設備へ供給する蒸気である。また、全蒸気負荷(蒸気発生器からの蒸気負荷)を選択する場合は、利用設備に蒸気が供給され且つ熱電設備で蒸気が使用される場合であり、蒸気発生機器から発生する合計流量として設定される。上述の電力負荷及び蒸気負荷はシミュレーションに用いられ、結果として帳票等に出力される。
【0051】
また、蒸気減圧による電力回収は、高圧蒸気に余剰が生じ低圧蒸気に減圧される時に電力回収ができる電力回収設備について設定する。係る場合、最大発電量と部分負荷発電量に必要な高圧蒸気量と排蒸気のエンタルピーを設定する。
【0052】
各回収蒸気種別は、発電系機器(ガスエンジン、ガスタービン及び燃料電池)から発生する蒸気を低圧蒸気とするか、高圧蒸気とするかを選択する。例えば、「低圧蒸気」と設定した場合、ガスエンジンM150の排熱ボイラM150aからの蒸気供給先を低圧蒸気側に供給することが指定される。
【0053】
さらに、プロセス条件設定部22は、太陽光関連機器のプロセス条件としての水平面日射量を設定する。水平面日射量データには、機器が設置される場所の緯度、経度、標高及び元日からの通し日数を含む共通データと、データ時刻、気温、水平面全天日射量、水平面全天日射量直達成分、水平面全天日射量天空散乱成分、風速の1時間毎のデータを含む。さらに、寒冷地においては積雪のデータを含んでもよい。1時間毎のデータは、例えば公的機関等が公表している日射量データベースからダウンロードした日射量データを用いる。また、太陽光発電モジュール(又は太陽熱集熱器本体)の傾斜角(例えば水平を0度)及び方位(例えば真南を0度、西向きを正とし、-90~90度)も設定する。方位や傾斜角を任意に設定できるので、方位や傾斜角をパラメータとして容易にシミュレートすることも可能である。例えば同一地点において最適な方位や傾斜角を検討できる。
【0054】
そして、上記の水平面日射量データ、傾斜角及び方位に基づいて、斜面日射量直達成分、斜面日射量天空散乱成分及び斜面射量地面反射成分がそれぞれ求められ、これらを合算して斜面日射量が求められる。計算の詳細は、本件出願人による特許第6118973号公報に記載の通りである。
【0055】
発電電力の供給先の設定は、発電系機器が発電した電気をどこに供給し利用するかを決定するために、熱電設備と利用設備の電力を負担、熱電設備のみの電力を負担、利用設備のみの電力を負担のいずれかから選択する。例えば、「熱電設備と需要家(利用設備)の電力負担」を選択した場合、利用設備と熱電設備の両方に電力が供給される。合計電力に対して発電され不足分は買電する設定となる。
【0056】
電力供給先を「熱電設備への供給」と選択すると、熱電設備で消費される電力量にあわせて発電系機器が発電するように電力をバランスさせる。また、「需要家のみ」を選択すれば、同様に熱源以外の電力量にあわせて発電系機器が発電するように電力をバランスさせる。つまり、発電電力の供給先の決定により発電系機器が発電する量が変わることとなる。
【0057】
図6に示すように、熱電設備Mで消費される電力量CE1、利用設備Fで消費される電力量CE2、発電系機器M100及び太陽光発電機器M1100の発電量GEa(GEa1~3)とすると、熱電設備Mだけで電力が使用される場合(例えばターボ冷凍機M350への供給)、GEa1>CE1であれば逆潮しないように収斂計算を行う。熱電設備M及び利用設備Fの両方で電力が使用される場合、GEa2>CE1+CE2であれば逆潮しないように収斂計算を行う。また、利用設備Fだけで使用される場合は、GEa3>CE2であれば逆潮しないように収斂計算される。つまり、収斂させる電力の量が異なることとなる。この点は蒸気についても同様である。
【0058】
このように、電力負荷について、利用設備で使用される電力負荷のみであるか、利用設備且つ熱電設備の両方で使用される電力負荷であるかを選定することで切り替え選択してエネルギー評価することができ、又、蒸気負荷については、利用設備で使用される蒸気負荷のみであるか、利用設備且つ熱電設備の両方で使用される蒸気負荷であるかを選定することで切り替え選択してエネルギー評価することができる。
【0059】
さらに、図1bに示す如く、熱電設備Mに蓄電機器M190が含まれる場合、蓄電機器M190は、熱電設備MのAC母線Ab(AC連結)又は太陽光発電機器M1100(DC連結)から電力の供給を受けて蓄電する。すなわち、熱電機器Mで消費される電力量CE1には、蓄電機器M190が蓄電する充電量も含まれる。よって、蓄電機器M190の構成及び充放電条件に伴って、熱電機器Mで消費される電力量CE1が変化することとなり、収斂させる電力の量は蓄電機器M190によっても異なることとなる。
【0060】
また、図1bの熱電設備Mにおいては、基本条件の設定は冷水の目標温度差、低圧蒸気圧力及びそのエンタルピーの設定となる。燃料データの設定は、ガス低位発熱量及び比重の設定である。電気系統・蒸気系統の条件設定は、電力負荷の内訳を熱電設備以外の負荷(利用設備)のみに設定し、蒸気負荷の内訳を熱電設備以外(利用設備)での使用とする設定である。ガスエンジン等回収蒸気の種類は低圧蒸気と設定する。
【0061】
環境負荷データ設定(S203)において、環境負荷データ設定部23は環境負荷データを設定する。具体的には、エネルギー負荷設定部10、基本条件設定部20、システム構築設定部30及び運転条件設定部40にて設定した条件で求められた電力消費量(使用量)及び化石燃料及び他の燃料消費量に対し、環境負荷データ(単位環境負荷)をそれぞれ乗じて環境負荷(一次エネルギー、CO2、NOx、SOx)を出力するために設定する。設定されるデータは電力、ガス、灯油、重油、その他の油及び水素毎にCO2、NOx、SOxの各排出原単位及び原油換算値である。電力は、さらに一次エネルギー換算値が設定される。また、電力は、例えば昼間及び夜間のように時間帯別に設定可能である。
【0062】
次に、ユーティリティーコスト設定(S204)において、電力コスト設定部21a及び燃料コスト設定部21bは、電力及び燃料コストの設定を行う。
【0063】
システム構築設定(S206)において、システム構築設定部30は、熱電設備Mのシステム構成を構築する。このシステム構築設定部30は同一機種、能力の異なる機種、動作のためのエネルギーが異なる機種又はメーカの異なる機種の熱電機器を複数台任意に設定し、運転条件設定部40の運転条件に従い各々を動作させることが可能である。
【0064】
熱電機器の各性能データは、DB群100の機器性能DB103に記憶されており、機器データ読み込み(S207)において、この性能データを読み込むことにより設定する。機器性能DB103は、上述の機器の系統毎に、機器別、メーカー別、型番別、燃料別、能力別、性能別に分類整理されて記憶されている。性能データの読み込みは、システム構築設定部30及び表示制御部70を介してこれらの分類を選択して行う。
【0065】
この表示制御部70は、図1aに示す如きフロー図として表示すると共に、そのフロー図上で熱電設備のシステム構築を行う。このフロー図は、熱電設備Mを構成し得る複数種の熱電機器と、熱電設備Mに供給され各熱電機器に受入られる供給エネルギーと、熱電設備Mで製造され利用設備に供給される複合全エネルギーとを予め接続線で接続し関連づけた図である。
【0066】
これらの熱電機器は、その熱電機器の種別によって受入れるエネルギーと製造され供給するエネルギーが特定される。そのため、予め各熱電機器とその熱電機器で受入及び/又は製造されるエネルギーを接続線で関連づけ接続した熱電設備をフロー図として作成しておくことができる。接続線は、受入及び/又は製造されるエネルギー毎に割り振られてある。
【0067】
上述の如きフロー図上で熱電機器を選択することで、設定した熱電機器及びエネルギーが識別可能に表示されるので、熱電機器とエネルギーとの関連が視覚的に理解できる。よって、高度な専門家でなくても熱電設備Mのシステム構築が可能となる。なお、図1bの実線は各機器M150,M220,M310,M380等における内部電力を示す。また、太陽光関連機器は、水平面日射量データに基づく斜面日射量及び外気温度によって出力特性が変動し、製造される電力や太陽熱温水熱量が変動する。また、蓄電機器の充放電条件によって充電量及び放電量が変わり、電力使用量(電力負荷)も変化する。この内部電力及び太陽光関連機器の出力特性並びに蓄電機器の充電量及び放電量の変動が、エネルギーバランスの変更の一因となり、収斂計算によりエネルギーバランスが保たれる。図1a,bに示すフロー図はあくまで一例に過ぎず、適宜設定可能であり、予め複数種のフロー図を作成し記憶しておいても構わない。
【0068】
熱電設備を構成する熱電機器は、系列毎に分類され、機器種別に整理されているので、少なくとも発電系、ボイラ系、冷水系、温水系、低冷水系、給湯系及び太陽光関連系として系列別に分類された機器を選択して機器データを読込むことでその系統に選定された機器とみなされ、各系統の機能に応じて各熱電機器間並びに各熱電機器間と複合全エネルギーの系統及び供給エネルギーとを関連付けて設定することができる。その結果、各機器は読み込まれると適切に接続され、系列のバランス結果の負荷を分担する役割を担うことができる。但し、機器の選定では、熱電設備を構成したに過ぎず、運転条件設定部40で設定された優先順位に従って機器は運転される。
【0069】
ここで、上述の如く機器性能DB103より読込みこんだ熱電機器の機器性能データについて説明する。
ガスエンジンコージェネレーションM150の機器性能データは、図5aに例示する4点の負荷率で発電効率、蒸気回収率及び排温水回収率が多項式の回帰式により決定される。
【0070】
また、最低負荷率、補機の消費電力、起動時ロスに関する設定を行う。補機の消費電力は、定格負荷と部分負荷(50%負荷運転時)の出力%を設定する。また、ガスエンジンを停止しなければならない最低負荷率を設定する。起動時のエネルギーロス(定格運転(負荷率100%)相当分)が何分相当かを設定する。
【0071】
さらに、主機の能力・台数・燃料、NOx値、ガスエンジン1台当たりの能力及び水の消費量の計算に使用される排熱ボイラからのブローダウン量を設定する。また、ガスエンジンから排熱される蒸気及び排熱を外部利用するかどうかを設定する。
【0072】
ガスエンジンコージェネレーションM150の機器性能データは、システム構築設定部30により機器性能DB103から発電系、能力、メーカ等を選択して読込まれる。このデータの読み込みにより、データが設定される。コージェネレーションの排熱ボイラから発生する蒸気の接続先は、プロセス条件設定部22におけるガスエンジンの回収蒸気の種類で設定された低圧蒸気に供給される。発生する低圧蒸気の圧力及びエンタルピーはプロセス条件設定部22で設定した低圧蒸気の圧力0.785MpaG、低圧蒸気のエンタルピー2770.9kJ/kgで発生される。ガスエンジンM150から発生する排温水HHWは、排温水ヘッダーH3に供給される。
【0073】
低圧ボイラM220の機器性能データは、低圧ボイラの複数の任意の負荷率%における熱効率%を設定する。また、上記と同様に、ブローダウン量、主機の能力・台数・燃料、NOx値、補機の消費電力及び起動時のエネルギーロスを設定する。低圧ボイラM220機器の性能データも上記と同様に、データの読み込みにより設定される。低圧ボイラから発生する蒸気の接続先及び低圧蒸気の圧力及びエンタルピーは、上記と同様にプロセス条件設定部22において設定した条件にて設定される。
【0074】
吸収式冷凍機M310の機器性能データは、任意の複数の部分負荷率における冷水モード運転時のCOPを設定する。これらを設定することで、上記回帰式と同様に、各モードにおけるCOPと冷却水温度をパラメータとして、変化するCOP%との関係が設定される。また、冷水、冷却水の各設計温度差を設定する。冷却水温度は、外気湿球温度、河川水、海水の温度データに対し任意温度を付与して例えば湿球温度+5℃と設定可能であり、機器の運転可能な下限値も設定する。また、各モードにおけるCPOと出口温度をパラメータに追加してもよい。以下の各機器においても同様である。
【0075】
冷水モードCOPと冷却水温度をパラメータとして変化するCOP%との関係及び湿球温度をパラメータとして冷却塔能力との関係を上記回帰式により同様に求める。また、主機の台数、設計能力及び実際能力(経年劣化した場合等の能力)、付属冷却塔のファン1台当りの能力及び消費電力、冷却塔能力及び付属冷却塔の補給水濃縮倍率を設定する。付属冷却塔の外気湿球温度と冷却能力の関係を上述の回帰式を用いて設定する。
【0076】
さらに、ポンプの消費動力等を設定する。ポンプの消費動力は、冷水ポンプ、冷却水ポンプの各揚程を設定する。揚程は設備によって異なるため、手動で入力する。また、ポンプの流量制御方式を例えば定流量と設定する。さらに、吸収冷凍機の補機の消費電力及び起動時のエネルギーロスを上記と同様に設定する。
【0077】
ここで、ポンプ効率の計算処理手順では、上記各揚程を設定すると、自動でポンプ効率等が算出され設定される。なお、ポンプ効率を例に説明するがモータ効率も同様に計算される。本例においては、冷水、冷却水も水である為に比重は1とする。
【0078】
始めに、ポンプ容量を計算する。熱電機処理熱量及び温度差より内部計算により算出される。求めたポンプ容量を用いてポンプ効率を求める。なお、JIS B8313のA効率をポンプ容量の対数3次式で近似する。次に、モータ軸動力を求め、そのポンプ軸動力に基づいてモータ余裕率を算定する。ポンプ揚程は上記で入力された値が参照される。求めたモータ余裕率及びモータ軸動力からモータ所要動力を算出する。求めたモータ所要動力に基づいて、モータ効率を算出する。そして、求めたモータ効率及びポンプ効率からモータ、ポンプ総合効率を算出し、その計算結果が、ポンプ効率として設定される。また、上記のステップで求めたポンプ容量、ポンプ軸動力、モータ所要動力は内部データとして記憶される。
【0079】
さらに、吸収冷凍機から発生する排熱を排熱する場所を設定する。付属冷却塔からの排熱かグループ冷却塔からの排熱かを選択することが可能である。また、これら冷却塔からの排熱に変えて図1aに示す外部利用水Wである河川水/海水からの直接排熱及び河川水/海水からの間接排熱(熱交換器を介した)を選択することも可能である。外部利用水Wには河川水/海水の他、下水、井戸水、下水処理水等も含まれる。河川水/海水を選択すると、基本条件設定部20の温度データ設定部24により設定された温度データを利用して排熱される。海水へ直接排熱の場合は海水を選択して記載の温度条件で海水に排熱され海に放熱される。間接排熱の場合は、図1aの送水ポンプM960を熱電設備に追加して排熱を熱交換して同様に海に放熱される。
【0080】
熱電設備に空冷ヒートポンプや電動ヒートポンプ等のヒートポンプを備える場合、採熱についての設定も同様に可能である。空冷ヒートポンプは外気温度(空気)から採熱して温水(温熱)を作る機器である。電動ヒートポンプは冷却塔又は外部利用水Wから採熱して温水(温熱)を作ることも可能な機器である。温水は暖房に使用され冬期に負荷が大きくなるため、外気温が低い空気から採熱する空冷ヒートポンプのCOPは小さく効率は低くなる。一方、外部利用水Wは冬期でも外気温より高いので電動ヒートポンプで外部利用水Wから採熱することで高いCOPで温熱を効率よく作ることができる。例えば、河川水/海水を選択することで電動ヒートポンプの採熱源を設定する。吸収冷凍機M310の性能データも上記と同様に、データの読み込みにより、設定される。蒸気の供給、低圧蒸気の圧力及びエンタルピーは上記と同様である。
【0081】
ターボ冷凍機M350の機器性能データは、主機の能力・台数を設定する。また、部分負荷率と冷水運転の時のCOPを設定し、冷水COPと冷却水温度をパラメータとして変化するCOP%との関係を設定する。設計の冷水温度差及び冷却水温度差及び冷却水温度を設定する。これらの設定は吸収式冷凍機と同様である。また、冷水COPと負荷率をパラメータとして、変化するCOPとの関係及び冷水COPと冷却水温度をパラメータとして、変化するCOP%との関係についても同様に回帰式により求める。また、ポンプ効率や排熱先の設定も吸収式冷凍機と同様の設定であり、機器データの読み込みにより設定する。
【0082】
ジェネリンクM380の機器性能データは、図5bに示す如き排熱回収量と負荷率との関係、同図に示す如き燃料消費率と負荷率との関係を含んでいる。負荷率がP1の点よりも低い範囲では排温水のみで冷水製造でき、それを超えると燃料を消費しながら排温水も回収する。
【0083】
太陽光発電機器M1100の機器性能データは、太陽電池パネルのタイプ(例えば、結晶系であるかアモルファルス系であるか)、1基当たりの合計定格出力、標準試験条件における日射強度、電力取出し可能最低日射量、モジュール変換効率、パワーコンディショナーM1101の出力効率(実効効率)及び消費電力及び定格出力を設定する。これらのデータは機器DB103に格納されており、読み込むことで設定される。また、基数、アレイ設置方式(架台設置、屋根置き、屋根一体形等)を設定する。そして、これら設定及び先にプロセス条件設定部22の水平面日射量データに基づく斜面日射量(設定した斜面)、外気温度及び風速に基づいて有効発電電力が求められる。このように、太陽光発電機器は、斜面日射量、外気温度及び風速によって変動する出力特性を備える。なお、計算の詳細は、本件出願人による特許第6118973号公報に記載の通りである。
【0084】
蓄電機器M190の機器性能データは、蓄電容量及び充放電効率を含み、例えば、入力フォームを介して設定される。なお、蓄電機器M190の充放電条件は、後述する蓄電条件設定部41により設定される。
【0085】
運転条件設定部40は、運転条件設定(S208)において月別、日別及びパターン毎に時間帯別で前記熱電機器毎の運転可否及び/又は運転優先順位を設定する。この運転条件の設定により熱電機器の運転計画が構築される。
図7(a)(b)に示すように、発電系機器、ボイラ系機器の昼間の運転計画を設定する。この設定画面において、昼間の時間(例えば8時から22時)を任意の2つの時間帯に分け、その時間帯毎にそれぞれの負荷の状況に応じて任意に最大第8優先順位までを設定する。なお、同図は設定の一例に過ぎず、設定可能な時間帯の数及び優先順位は適宜増減可能である。例えば、8時から22時を6つの任意の時間帯に分割し、各時間帯において最大第8優先順位まで設定することも可能である。また、発電系機器の運転方式を買電制御運転、最大発電運転、熱主運転(熱負荷優先)かを選択設定する。同図では8時から18時まで、低圧ボイラ、ガスエンジンコージェネの運転を設定し、発電系機器の運転を買電制御運転としている。また、同図(c)に示すように、夜間(例えば、22時から8時)についても低圧ボイラの運転を設定して、発電系機器の運転を買電制御運転の運転方法を選定している。最低買電量を設定する項目は、電力会社から購入する最低買電電力量を規定するものであり、同図では0KWと設定してある。
【0086】
また、複数の発電系機器の運転制御方法を指定する発電系機器の負荷分担方法を選択設定する。同図には、「ラスト機のみ部分負荷」を設定した例を示す。「ラスト機のみ部分負荷」は、運転優先順位の最後に指定された機器の部分負荷運転で発電量を調整する場合に設定する。また、「全GT/全GE同一負荷運転」や「ラストモデルのみ均一負荷」の設定も可能である。「全GT/全GE同一負荷運転」は、設定された発電機ガスタービン、ガスエンジンを全て同一負荷で運転して発電量を調整する場合に設定される。また、「ラストモデルのみ均一負荷」の設定は、複数の発電機で優先順位が最後に指定されている機器が複数台であり、この最後の優先順位の複数台の機器で発電量を調整する場合に設定する。このように、複数の発電機器が設定されている場合には、様々な発電機の制御方法にて検討することができる。なお、夜間の時間(例えば22時から8時)も上記と同様に設定可能である。昼間、夜間の時間帯は自由に変更可能であり、サマータイムについても対応可能である。
【0087】
冷水、温水系機器についても運転条件を設定する。例えば昼間の時間(8時から22時)を任意の4つの時間帯に分け、その時間帯毎に負荷の状況に応じて最大第20優先順位まで設定する。なお、この設定される時間帯の数及び優先順位も上記と同様に適宜増減可能である。また、優先順位の他、各機器の出口温度も設定する。低冷水系機器も同様に設定可能である。
【0088】
図1bに示すように、熱電設備Mに蓄電機器M190が含まれる場合、運転条件設定部40は、蓄電機器M190を発電系機器の1種として、他の発電系機器との優先順位を決定する。なお、蓄電機器の運転優先順位を設定する時間帯は、蓄電機器からの放電時間帯を少なくとも含む時間帯である。蓄電機器からの放電が、発電系機器の発電と同等に見做すことができるからである。
【0089】
また、蓄電条件設定部41により蓄電機器の構成としての蓄電容量及び充放電効率並びに充放電条件としての運転パラメータの設定方法を設定する。さらに、充放電条件として、運用方法、最低蓄電量、ピークカット運転時の受電電力上限値、充電スケジュール、放電スケジュールを蓄電条件設定部41により設定する。運用方法としては、ピークカット運転やスケジュール放電等が選択可能である。充電スケジュールは、充電開始時刻及び時間帯単位での最大可能充電量を設定する場合と、任意の時間帯毎に充電量を設定する場合とがある。また、放電スケジュールは、任意の時間帯毎に放電が可能な最大可能放電量を設定する。
【0090】
図1bに示すように、熱電設備Mに太陽光発電機器M1100が含まれる場合、運転条件設定部40は、図7に示す如くユーザーが設定した運転条件(運転順位)に関わらず、強制的に太陽光発電機器を発電系機器よりも優先させる。これは、日時を問わず適用される。太陽光エネルギーは、その供給量を調整不可能であるので、太陽光関連機器で製造される電力を有効利用し且つその変動を吸収するために他の優先順位よりも優先させる。
【0091】
また、太陽光発電出力条件設定部42により、太陽光発電機器M1100の出力制御を設定する。ここで、出力制限とは、例えば、電力会社が太陽光発電事業者に対し太陽光発電の出力抑制(制限)を要請する場合が挙げられる。特に、熱電設備Mが蓄電機器M190を含む場合、太陽光発電機器の出力制御を連続制御に設定する。従来の太陽光発電機器の出力制御は、太陽光発電のモジュール(アレイ)の基数単位でしか制御できず、段階的な出力制御となり、調整のために少なからず買電を要していた。しかし、技術の進展により、パワーコンディショナーにおいて1%単位での定格出力制御が可能となり、太陽光発電の出力を連続的に制御することが可能となった。本発明では、パワーコンディショナーでの1%単位での定格出力制御を太陽光発電の連続制御として設定する。これにより、蓄電機器M190を含む熱電設備Mにおいて、電力会社から太陽光発電の出力制限を受けた場合であっても、熱電設備のシミュレーションが可能となる。
【0092】
さらに、連結状態選択部42aにより、太陽光発電機器と蓄電機器との連結がAC連結かDC連結かが選択される。DC連結が選択された場合、パワーコンディショナーの出力効率(実効効率)の出力効率を1とする。DC連結におけるDC・DC変換器は、AC連結におけるパワーコンディショナーに相当するものであり、DC・DC変換器ではほとんど変換ロスは生じない。この選択により、AC連結とDC連結との比較シミュレーションも容易に行うことができる。
【0093】
外部の活用できる高圧蒸気、低圧蒸気、冷水、温水、電力を受け入れる受入量を設定する。各受入量は、複数の任意の時間帯を設定し、各時間帯における受入量をそれぞれ設定する。例えば低圧蒸気最大1t/hを昼夜ごみ焼却設備から受け入れる設定とすると、熱電設備の低圧蒸気使用量が1t/hより小さい場合は、熱電設備に必要な蒸気量のみを受け入れる。他方、熱電設備の低圧蒸気使用量が1t/hより大きい場合は、最大の1t/hの低圧蒸気を受け入れて不足分は熱電設備で低圧蒸気をバランスさせる。なお、熱電設備で製造し他の設備に供給可能な複合全エネルギー量も同様に設定する。これらの設定値が考慮され供給エネルギーや複合全エネルギーのバランスがとられる。高圧蒸気、冷水、温水、電力も全て同様に処理される。これにより、エネルギー負荷設定部10で設定されたエネルギー負荷を参照しながら運転条件設定部40で熱電設備の運転計画を設定することができる。
【0094】
図1bに示す熱電設備Mにおいては、図7(a),(b)に示す例では、ガスエンジン及び低圧ボイラを設定する。更に太陽光発電機器は、昼間の時間帯、夜間の時間帯に関係なく日射量によって発電されるので、太陽光発電機器が熱電設備に組込まれると、昼間の時間帯の第一優先順位として太陽光発電機器が発電系機器よりも優先機器として扱われる。従って、太陽光発電機器の次にガスエンジンが優先される。また、最低買電量を0KWと設定する。一方、図7(c)に示す例では、夜間は低圧ボイラのみの表示とし、夜間の時間帯においても第一優先順位として太陽光発電機器が扱われる。最低買電量の設定を行わず不足電力は買電するように設定する。また、冷水温水の昼間で使用する設備をジェネリンク、吸収冷凍機及び電動ターボ冷凍機とする設定を行う。一方、夜間は吸収冷凍機のみに設定する。これらを12ヶ月分設定する。なお、熱電設備に蓄電機器が含まれているので、少なくとも蓄電機器の放電時間帯において、ガスエンジンと蓄電機器とで優先順位を設定可能である。
【0095】
上記各ステップにおける運転条件設定後、シミュレーションが実行されその結果が出力される。出力ステップ(S210)において、運転結果出力部50は、シミュレーション結果を時間帯別及び/又は年間計算として出力する。出力形式として、グラフや帳票等がある。
【0096】
時間帯別及び年間計算出力としては、電力バランス、低圧蒸気バランス、燃料消費、冷水バランス、運転台数、従量料金(ユーティリティーコスト)、電力消費詳細及び電力消費量(ユーティリティー消費量)の結果を出力可能である。また、蓄電機器の充放電バランス、太陽光発電の発電量等も出力可能である。
【0097】
ここで、図2c、3、8a~e、9を参照しながら、運転条件設定部40による運転条件設定(S208)及び演算部7pによるシミュレーション計算手順について以下説明する。これらは、図8aのS01~07のステップよりなり、各ステップは図8b~eに対応する。なお、以下の各説明において、買電制御運転は、電力に逆潮が生じない運転であり、最大発電運転は、発電系機器が100%の負荷で運転され電力の逆潮を許す運転である。また、各ステップの説明に当たり、図1bの熱電設備を用いた実例に関連するステップのみを先に示し、8月の買電制御運転のケースを例示する。この熱電設備Mは、図1cに示す如く、太陽光発電機器は、コンディショナーを介してAC母線にAC連結されている。この熱電設備Mのように、太陽光発電機器及び蓄電機器の双方を含む場合、電力優先運転となるため、図8c,8e中のステップS34及びS72では、YESが選択される。よって、熱主運転に関する説明を省略する。熱主運転の詳細は、本件出願人による特許第6118973号公報に記載の通りである。
【0098】
「冷水EB(S01、図8b)」
まず、冷水熱負荷及び往還温度差の読み込み(S11)、必要冷水流量の計算を計算する(S12)。次に、冷凍機の運転優先順位に基づいて、冷水熱負荷と冷水流量の両者を満足する冷凍機の運転台数を決定し(S13)、運転する各冷凍機の運転負荷率及びCOPを計算する(S14)。この計算において、冷水出口温度設定が同じであれば均一負荷率とする。そして、運転する各冷凍機の冷熱製造量、電力・燃料・蒸気の消費量、冷却塔排熱、熱回収HPの温水回収熱量等を計算し(S15)、温水エネルギーバランスステップ(S2)に移行する。なお、冷却塔排熱は上述の外部利用水への排熱も可能である。
【0099】
「低圧蒸気EB(S03、図8c)」
同図に示すように、まず、低圧プロセス蒸気熱負荷の読み込み(S31a)、低圧プロセス蒸気量の計算する(S31b)。低圧蒸気消費量を低圧プロセス蒸気量と熱電機器駆動用低圧蒸気量との和から算出し(S31c)、発電系機器が低圧蒸気回収であるか否かを判断する(S32a)。低圧蒸気回収でない場合、低圧ボイラの運転優先順位に基づいて、低圧ボイラ負荷を満足する低圧ボイラの運転台数を決定し(S33a)、運転する各低圧ボイラの運転負荷率を計算(1台のみ部分負荷率)して(S33b)、運転する各低圧ボイラの蒸気製造量、電力・燃料の消費量などを計算する(S33c)。
【0100】
他方、発電系機器が低圧蒸気回収である場合、低圧ボイラ負荷S2を低圧蒸気消費量から低圧蒸気受入量を差し引くことで求めると共に、低圧ボイラの蒸気発生量、電力消費量、燃料などを計算する(S32b)。ここで、低圧蒸気受入量は外部からの排蒸気受入も可能とする。そして、電主運転か熱主運転かを判断する(S34)。
【0101】
買電制御運転(電力優先)である場合、S35a~S35fの及び一点鎖線で囲むS71~S73の電力EBのステップが実行される。なお、電力EB07は図8eに示すが、理解の便宜のためにここで説明する。目標発電量から運転機器とその運転台数を設定し(S35a)、蓄電機器を除く発電系機器を最大負荷率(100%)に設定する(S35b)。そして、S35c~S35f、71、73のステップを実行し、余剰電力が一定誤差範囲(例えば1kW)以内であれば(S73)終了し後続のステップに移行する。ここで、ステップS35c,S71における発電量には、太陽光発電機器の発電量及び蓄電機器の放電量が加えられる。一方で、蓄電機器の充電量は、電力使用量に加えられる。余剰電力が誤差範囲以内でなければ(S73)、後述するように発電系機器の負荷率P1を変更し、S35c~S35f、71~74のステップを余剰電力が誤差範囲以内となるまで繰り返す収斂(収束)計算を実行する。
【0102】
ここで、ステップS35a~S74に関連する図1bの熱電設備Mを用いた買電制御運転の収斂計算についてさらに詳しく説明する。冷水負荷、冷水の温度差から必要な冷凍機台数と負荷率を求め、ジェネリックM380と吸収冷凍機M310を1台と決定する。そして、この時の負荷率より必要な低圧蒸気量S2(t/h)を求める(S32b)。
【0103】
システム内消費電力Ea及び最低買電量W1との差異(Ea-W1)kWを目標発電量とし、これから、太陽光発電電力の発電量及び蓄電機器の放電量を差し引いてガスエンジンコージェネM150等の運転台数を決定する(S35a)。システム内消費電力Eaは、M150,M220,M310,M350,M380等の機器の内部消費電力と電力負荷S8とを含むものとする。さらに、この電力負荷S8には、蓄電機器の充電量が含まれる。ガスエンジンM150等の蓄電機器を除く発電系機器の負荷率を100%に設定する(S35b)。そして、設定されたガスエンジンでの発電量G1(kW/h)、回収蒸気量S1(t/h)、内部消費電力、燃料消費量等を性能曲線より求める(S35c)。
【0104】
この計算結果から回収可能な低圧蒸気量S1(t)を求め、S1,S2を比較して余剰蒸気が発生するか否かを判断する(S35d)。蒸気が余剰している場合は設備外に廃棄する(S35e)。蒸気が不足の場合、S3(t/h)=S2-S1に相当する低圧ボイラM220を運転し、その蒸気発生量、内部消費電力、消費燃料等を計算する(S35f)。そして、上述の結果より、蓄電機器の充電量を含むシステム内消費電力Eaを積算計算する(S71a)。
【0105】
ここで、図示省略するが、S35c~S71,S73の初回のループのみガスエンジンコージェネが太陽光発電量Es及び蓄電機器の充電量及び放電量を考慮した上で発電量不足か否かを判定する。G1≦Ea-W1-Esの場合、不足電力を購入して、計算は終了する。一方、G1>Ea-W1-Esの場合、ABS(G1-(Ea-W1-Es))が許容される誤差範囲α以内かを判定する。本実施形態では許容誤差範囲α=±1kW以内としており、誤差範囲内の場合、計算は終了する。
【0106】
許容誤差が±1kW以内でない場合、ガスエンジンコージェネの負荷率P1を変更し、G1=Ea-W1-Esになるよう負荷率P1を求める。しかし、負荷率P1が変更され、回収蒸気量S1が変動すると、当該ガスエンジンコージェネや他の機器の運転条件の変動に伴って内部消費電力が変動し、システム内消費電力Eaも変動する結果、買電制御運転で逆潮を防ぐという当初の目的を達成できない。また、太陽光発電機器は、斜面日射量、外気温度及び風速によって発電量は変動する。そこで、S73の収斂がなされるまで、以下の如くS74の負荷率P1変更を経てS35cからS71を繰り返す収斂計算が必要となる。
【0107】
各説明変数による2次式として作成した目標発電量から負荷率%を求めると、2次式の解として得ることができる。発電量が目標発電量より小である場合にPmin=Pmid とする2分検索による収束計算で目標の負荷率%を求める。同時に、Pmid%での発電量kWと目標発電量kW間の差は、1kW以下を許容誤差としている。なお、収束不可の場合を考慮して最大収束計算回数を20回としているが、収束回数は適宜設定可能である。収斂した場合はさらに次のステップに進む(S36a)。
【0108】
2分検索方は代数方程式数値計算法よる収束計算方法の一例に過ぎない。代数方程式数値計算法よる収束計算方法は、高次代数方程式や分数方程式、無理方程式、あるいは超越方程式のように微分・積分を含まない方程式の数値計算である。その他、代表的なものとしてニュートン・ラプソン法、2分検索法、レギュラ・ファルシ法ベアストウ・ヒッチコック法、リン法、ベルヌーイ法、グレッフェ法等を用いてもよい。本発明における全ての収斂計算はこれらの各手法を用いることができる。
【0109】
ここで、蓄電機器の充放電条件の運用方法として「ピークカット運転」が選択された場合を例に説明する。ピークカット運転とは、熱電設備の買電電力が、予め設定した買電量を超えるときに放電を行うことで、買電電力を一定値以下に抑える運転方法である。例えば、蓄電機器の構成を蓄電容量6500kwh、充放電効率95%と設定すると共に、充放電条件として、ピークカット運転時の受電電力上限値を2000kw、充電スケジュールを充電開始時刻22時、時間帯毎の最大可能充電量を800kwと設定した場合のグラフ及び帳票を図9a~cに示す。
【0110】
同図の例では、16-17時は、ガスエンジンの発電量のみでは電力消費量を賄えないため買電するが、受電電力上限値(買電量)が2000kwを越えないように蓄電機器から放電され電力バランスがとられる。18-20時では、電力消費量を全て買電で賄っているが、買電量が2000kwを超えないように蓄電機器から放電することによって電力のバランスがとられる。すなわち、演算部は、受電電力上限値を超える電力量を蓄電機器の放電量とする。ここで、充電スケジュールでは、充電開始時刻22時、充電量800kwと設定されているが、蓄電機器は充電と放電を同時に行うことはできないため、放電が優先される。また、0-1時の時間帯では、充電量が設定値に満たない値となっている。これは、一日の合計放電量に見合う充電量が確保できればよいので、充電量を調整して、充電を1時で完了させている。このように、演算部は、上述の放電量に基づいて蓄電機器が放電を行う時間帯を除く時間帯毎の充電量を求める。そして、1日の合計放電量と最大可能充電量とに基づいて前記蓄電機器の充電終了時刻を決定すると共に当該充電終了時刻を含む時間帯における最終充電量を決定する。なお、グラフや帳票の数値はDCベースの値であり、本例の太陽光発電機器と蓄電機器とはAC連結であるので、充電・放電ではコンディショナーの実効効率が考慮される。例えば、22-23時の充電は800kwであるので、AC母線から800kw/0.95(実効効率)=842.1kwとなる。また、18-19時では、蓄電機器から855.4kw放電されるので、実効効率0.95を掛けてAC換算で812.6kwとなる。
【0111】
また、7-8時、11-12時では、電力消費量に対し太陽光発電量が相対的に多く行われている。ここで、太陽光発電は、発電系機器のガスエンジンよりも優先する運転順位(条件)であるため、逆潮が生じないようにガスエンジンの発電量を抑制する部分負荷運転を行われる。これにより、当該時間帯において、蒸気発生量が変化することとなり、蒸気エネルギーバランスが取られるように収斂計算が実行される。
【0112】
このように、蓄電機器の1日の充電量と放電量とが等しくなるように且つ電力バランスが維持されるように蓄電機器の充電量及び放電量が時間帯別に計算される。そして、蓄電機器の充電量を電力負荷に組み込んで計算することで、太陽光発電機器及び蓄電機器を備える熱電設備のシミュレートが可能となり、加算された電力エネルギーの使用量に基づいてユーティリティー消費量を計算することが可能となる。
【0113】
第一回目の太陽光発電量Es+ガスタービン発電機の発電量G1、上記の如く蓄電機器の充電量を含むシステム内必要電力Ea及び運転条件設定部40の最低買電量W1との関係を比較する。例えば7時から8時で逆潮電力が発生している場合、これはG1+Es>Ea-W1に相当する。発電機及び太陽光発電からの電力量が余剰電気として電力会社に逆潮しないようにガスエンジン発電機の負荷率を順次先述のPmidと変更して収斂計算を行う。G1+Es<Ea-Wである場合、収斂計算を完了する。このように、コージェネレーション機器(ガスエンジンコージェネM150)の負荷率調整により、太陽光発電機器の発電電力の変動を吸収し且つ、発電電力の逆潮を防ぐことができる。
【0114】
熱電設備の構成により、図8aに示す他のバランス計算ステップが行われる。以下に、上述以外のステップについて説明する。
【0115】
「温水EB(S02)」
図8bに示すように、温水熱負荷及び往還温度差を読み込み(S21)、必要温水流量の計算を計算する(S22)。次に、温水系機器の運転優先順位に基づいて、温水熱負荷と温水流量の両者を満足する温水系機器の運転台数を決定し(S23)、運転する各温水系機器の運転負荷率を計算する(S24)。この計算において、温水出口温度設定が同じであれば均一負荷率とし、熱回収HPの負荷率は他と異なる場合がある。そして、運転する各温水系機器の温熱製造量、電力・燃料・蒸気の消費量、採熱量などを計算し(S25)、先の低圧蒸気EB(S03)へ移行する。なお、採熱量は外部利用水(海水、河川水など)からの採熱も可能である。
【0116】
「高圧蒸気EB」
これは、S03の低圧蒸気EBにおける「低圧蒸気」が「高圧蒸気」と置換される他はほぼ同様であるため図示省略する。但し、ヘッダーで減圧されて低圧蒸気として受け入れられる分量は、先のステップS35eにおける余剰蒸気とはならない点が異なる。低圧蒸気EB(S03)の符号Bから詳細を図示しない高圧蒸気EB(S04)を経て符号C以降にガスエンジン排温水EB(S05)が実行される。
【0117】
「ガスエンジン排温水EB(S05、図8d)」
まず始めに、先の冷水EB(S01)において、各冷水系機器の運転台数及び負荷率が計算され、排温水投入型吸収冷凍機の冷水熱量(製造量Ma)A及び他の冷水系機器の冷水熱量が決定される(S13~S15)。また、先の温水EB(S02)において、各温水系機器の運転台数及び負荷率が計算され、温水回収熱交換器の温水熱量Bが決定される(S23~S25)。
【0118】
次いで、排温水投入型吸収冷凍機が運転しているか否かを判定する(S51a)。運転している場合、ガスエンジンの排温水量を計算し、その排温水量で発生可能な排温水投入型吸収冷凍機の発生冷水熱量A’を計算する(S52a)。そして、発生冷水熱量A’が先の冷水熱量Aに対して不足するかを判定し(S53a)、不足しない場合はS55aへ移行する。他方、不足する場合、不足する冷水熱量を他の冷水系機器で製造するように冷水系機器の運転優先順位に基づいて他の冷水系機器の運転台数及び負荷率を決定し(S54a)、S55aへ移行する。他の冷水系機器の必要蒸気量S2及び蒸気発生機器の発生蒸気量S1を求め(S55a、S56)、発生蒸気量S1と必要蒸気量S2の差分が所定の誤差範囲αとなるか判定する(S57)。なお、誤差範囲αの単位及び数値は、エネルギーによって異なる。
【0119】
差分が誤差範囲α以内でない場合、蒸気発生機器の負荷率を変更し(S58)、符号SR58aの経路を通ってステップS52aに戻る。不足冷水熱量が解消し且つ誤差範囲α以内となるまで上記ステップS52a~58を繰り返し行う。すなわち、発生蒸気量S1が必要蒸気量S2に収束するように蒸気発生機器の負荷率を変更させて収斂計算を行い、冷水及び蒸気のバランスがとれる冷水系機器の運転台数及び/又は負荷率を決定する。差分が誤差範囲α以内となれば、給湯EB(S06)へ移行する。
【0120】
一方、排温水投入型吸収冷凍機が運転していない場合、温水回収熱交換器が運転しているかを判定する(S51b)。温水回収熱交換器が運転している場合、図中の破線で囲むステップS52b~58,経路SR58bの手順となる。この手順は上述の冷水系機器と同様であり、蒸気発生機器の負荷率を変更させて収斂計算を行い、温水及び蒸気の双方のバランスをとれる温水系機器の運転台数及び/又は負荷率を決定する。温水回収熱交換器が運転していない場合は給湯EB(S06)へ移行する。
【0121】
「給湯EB(S06、図8e)」
まず、給湯熱負荷、給湯供給温度、給水温度が読み込まれ(S61)、給水流量および貯湯タンク内温度を計算する(S62)。次に、貯湯タンク内温度により給湯機の運転/停止および運転/停止の台数を決定し(S63)、指定時刻に貯湯タンク蓄熱満了するよう給湯機追加運転する(S64)。そして、運転する各給湯機の製造熱量、電力・燃料の消費量を計算し(S65)、次の電力EB(S07)に移行する。
【0122】
「電力EB(S07)」
ここでは、上述のS71の次に電主運転か否かが判断され(S72)、大略先の低圧蒸気EBでの説明の通りである。熱主運転の場合は(S72)、買電量を計算し(S75)、終了する。電主運転で負荷率P1を再設定した場合は、説明の便宜上低圧蒸気EB03のS35cの前(K)に戻るように設定したが、計算に矛盾を生じない限り、例えば冷水EB01の当初位置(K’)に戻るように設定しても構わない。条件を再設定し、再度全ての系統の機器において運転状態を再度調整し、特定の複合全エネルギーが目標値に収斂することに意味がある。
【0123】
各機器には関連する機器が各機器モデルの中に組み込まれ各機器毎の運転条件(負荷率)に従って、又は、制限条件があればその条件の範囲で運転され計算される。例えば、排温水投入型吸収冷凍機の関連機器としての補機動力、冷水ポンプ、冷却水ポンプ、個別冷却塔、制約条件として起動ロス、運転可能な冷却水温度の下限値等を考慮して運転される排温水投入型吸収冷凍機の排温水回収量、ガス(燃料)量、電力量、水の使用量、アウトプットされる冷水量が計算される。排温水投入型吸収冷凍機1台では負荷設定部の冷水流量が不足する場合は、運転条件設定部40で設定された冷凍機の順番で他の冷凍器(例えば吸収冷凍機)が立上がり冷水量をバランスさせる。もし、それでも冷水バランスが取れない場合は、優先順位の最後の機器(例えばターボ冷凍機)が自動的に追起動してバランスさせるように構成されている。
【0124】
吸収冷凍機に供給される蒸気は、必要蒸気バランスからボイラ系及び発電系で発生される蒸気から供給されるように構成されている。ボイラ系も発電系についても冷水系と同様に各機器はモデル化されていて、運転条件設定部40で設定された順番で立上がり蒸気量、発電量をバランスさせる。もしそれでも蒸気のバランスが取れない場合は、優先順位の最後のボイラー系機器が追起動してバランスさせるように構成されている。発電系機器は、買電により処理でき、収斂計算の負担軽減のため、追起動を行わないように構成されている。もし、ガスエンジン発電機を停止しても余剰電力が生じる場合は、太陽光発電機器の出力を下げて電力バランスがとられる。
【0125】
このように、システムバランス計算の手順は、各系列毎に順番、例えば冷水、温水、低圧蒸気、高圧蒸気、給湯、電力の順番に熱電収支バランスを組み立てる。組み立てた条件に変更が生じた時場合は、多変数代数方程式数値解析法で収斂計算を行い、全ての系統の熱電バランスを計算する。このバランス結果に基づいて各機器の負荷で運転し出力された機器のアウトプットが、必要とされる情報に整理されて運転結果出力部50により上述の如く出力される。その出力は、上述した如き時間帯別出力及び年間計算出力によるグラフ形式や帳票形式にて行われる。
【0126】
次に、本発明の他の実施形態の可能性について言及する。なお、上述の実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
上記実施形態において、蓄電機器のピークカット運転の充電スケジュールを蓄電機器の充電開始時刻と時間帯あたりの最大可能充電量とにより設定した。しかし、充電スケジュールの設定は、これに限らず、蓄電機器の充電開始時刻と、充電終了時刻と、これらの時刻間の時間帯毎の充電量とにより設定しても構わない。係る場合、1日の合計放電量と時間帯毎の充電量とに基づいて蓄電機器の充電終了時刻又は時間帯の内の少なくとも1以上の時間帯における充電量を変更して、1日の合計充電量と蓄電機器の1日の合計放電量とを等しくする。
【0127】
また、上記実施形態では、蓄電機器の運用方法をピークカット運転としたが、これに限られるものではなく、たとえば、スケジュール放電を選択することも可能である。スケジュール放電とは、予め設定した放電スケジュール(放電時間帯及びその時間帯での放電量)で放電を行う運転方法である。スケジュール放電では、蓄電機器の放電時間帯と、放電時間帯毎の放電量と、蓄電機器の充電スケジュールが設定される。これらの設定により、例えば、(1)VPP(Virtual Power Plant=仮想発電所)発電、(2)ピークシフト運転、(3)電力卸市場価格連動運転のシミュレートが可能となる。
【0128】
(1)VPP発電
この例として、蓄電機器の構成を蓄電容量8000kwh、充放電効率95%と設定すると共に、充放電条件として、充電開始時刻を20時、時間帯単位での最大可能充電量を800kw、放電スケジュールを10~13時が最大可能放電量1800kw、13時~16時が最大可能放電量2000kwと設定した場合の電力バランスのグラフ及び帳票を図10a~cに示す。同図の例では、放電時間帯を含む時間帯において、ガスエンジンコージェネ2台を蓄電機器よりも優先させている。
【0129】
VVP発電においては、さらに、売電条件設定部43により熱電設備から外部へ電力を供給(売電)する売電量及び売電時間帯が設定される。
【0130】
例えば、10時~13時に1000kwを売電し、13~16時に1500kwを売電する設定を行う。図10a,bに示すように、売電条件設定部43により設定された売電時間帯において、設定した売電量が外部へ供給(電力消費)される一方、この売電条件が満たされ且つ電力バランスが確保されるよう蓄電機器から放電が放電スケジュールに基づいて行われる。同図の例では、10-12時に、VPP発電としての供給(売電)電力1000kwが必要であるが、その供給電力を含む電力消費量に対し太陽光発電量が相対的に多く行われている。太陽光発電は、上記実施形態と同様に、発電系機器のガスエンジンよりも優先する運転順位(条件)であるため、逆潮が生じないようにガスエンジンの発電量を抑制する部分負荷運転を行われる。これにより、当該時間帯において、蒸気発生量が変化することとなり、蒸気エネルギーバランスが取られるように収斂計算が実行される。なお、8-12時においても、逆潮が生じないようにガスエンジンの発電量を抑制する部分負荷運転を行われる。
【0131】
他方、12-16時においては、電力消費量の増加に伴い太陽光発電を加えても電力が不足するため、蓄電機器より放電を行うことで電力バランスが取られる。ここで、充電スケジュールは、充電開始時刻20時、充電量800kwと設定されているが、蓄電機器は充電と放電を同時に行うことはできないため、放電が優先される。また、0-1時の時間帯では、充電量が設定値に満たない値となっている。これは、一日の合計放電量に見合う充電量が確保できればよいので、充電量を調整して、充電を1時で完了させている。このように、演算部は、上述の放電量に基づいて蓄電機器が放電を行う時間帯を除く時間帯毎の充電量を求める。
【0132】
すなわち、演算部は、売電量が満たされるように蓄電機器の放電量を求めると共に、充電スケジュールに基づいて前記放電時間帯を除く時間帯毎に前記蓄電機器の充電量を求める。このように、VPP供給電力を時間帯毎に外だし電力(逆潮)に設定し、月毎パターン毎にVPP供給可能な電力量を検討できる。そして、この検討結果に基づいて、電力会社と定量的に契約することができる。
【0133】
(2)ピークシフト運転
ピークシフト運転とは、買電電力の平準化を目指す運用であり、基本的に買電量の多い時間帯に放電し、買電量の少ない時間帯に充電する運転である。係る場合の設定は、上記と同様であり、蓄電機器の放電時間帯と、放電時間帯毎の最大可能放電量と、蓄電機器の充電スケジュールが設定される。設定した放電時間帯を少なくとも含む時間帯において蓄電機器と他の発電系機器との運転優先順位を設定する。そして、演算部は、設定した充電スケジュールに基づいて放電時間帯を除く時間帯毎に蓄電機器の充電量を求めて、電力バランスをとる。本例では、上記他の発電系機器として、ガスエンジンコージェネを例に以下説明する。
【0134】
図11a~cに示す例では、設定した充電スケジュールに従って22時~7時の間で充電がなされ、電力負荷として加算されている。そして、設定された放電スケジュールに従って8時以降に放電が開始されると共に太陽光発電の発電量も増加する。そのため、蓄電機器を発電系機器の第一優先と設定した場合、7-10時の時間帯ではガスエンジンコージェネは100%運転となるが、10時-15時の時間帯では太陽光発電が十分に行われるので、買電することなく、ガスエンジンコージェネが部分負荷運転となり電力バランスが取られる。さらに、この部分負荷運転により、低圧蒸気や排温水の発生(供給)量も低下するので、これらのエネルギーも他の機器とバランスを取るように収斂計算がなされる。
【0135】
一方、ガスエンジンコージェネを発電系機器の第一優先(100%負荷)と設定した場合は、図11d~fに例示するように、10時-12時の時間帯では太陽光発電が十分に行われるので、蓄電機器から放電することなしで、ガスエンジンコージェネが部分負荷運転となり電力バランスが取られる。他の時間帯では、蓄電機器が電力負荷に見合うように必要な放電を行う。
【0136】
(3)電力卸市場価格連動運転
電力料金の設定の一部には、電力卸市場の電力卸市場価格に連動して電力料金を設定するものがある。例えば、太陽光発電が多い昼間の時間帯の電力料金は実質0円/kWhに設定され、それ以外の太陽光発電が少ない時間帯の電力料金は高く設定されている。この電力卸市場価格連動運転は、電力料金が高い時間帯に放電し電力料金が安い時間帯に充電する運転であり、買電電力の平準化を目指すピークシフト運転と同様である。よって、この運転の場合も上記ピークシフト運転と同様に、蓄電機器の放電時間帯と、放電時間帯毎の最大可能放電量と、蓄電機器の充電スケジュールが設定される。
【0137】
図12a~cに示す例では、太陽光発電が多い8時を充電開始時刻に設定されてあり、時間帯あたりの最大可能充電量に従って8-16時の間で充電がなされ、電力負荷として加算されている。また、この時間帯は電力料金が安価に設定されているので、ガスエンジンコージェネを運転せずに買電を利用し、ランニングコストを下げる。また、設定された放電スケジュールに従って、5-8時及び16時-21時の時間帯で蓄電機器から放電される。そのため、蓄電機器を発電系機器の第一優先と設定した場合、21-1時の時間帯ではガスエンジンコージェネは100%運転となり、買電量を最小限にする運転が行われる。そして、1時-5時の時間帯では利用設備の電力消費量の減少に追従して、買電することなく、ガスエンジンコージェネが部分負荷運転となり電力バランスが取られる。さらに、この部分負荷運転により、低圧蒸気や排温水の発生(供給)量も低下するので、これらのエネルギーも他の機器とバランスを取るように収斂計算がなされる。また、16時-21時の時間帯では太陽光発電ではなく火力発電となるため、CO2の削減効果も得られる。
【0138】
さらに、上記各実施形態において、蓄電機器は1系列であった。しかし、1系列に限らず2系列でも同様にシミュレーションを実行することができる。係る場合、蓄電条件設定部41により、各系列の蓄電容量及び充放電効率がそれぞれ設定される。そして、演算部7pは、各系列の蓄電機器の充電率(SOC)が等しくなるように充放電量の分配が実行される2系列の蓄電機器を1つの蓄電機器と見なす。なお、2系列の蓄電機器を用いる場合、これらは並列接続され、充放電が行われる。
【0139】
ここで、蓄電機器の充電率とは、残存(蓄電)している電気量を蓄電機器の容量で除して%表記にしたものであり、SOC(State Of Charge)又は残容量とも表せる。本発明におけるシミュレーションでは、蓄電機器が実際に放電(充電)させることのできる蓄電量を100%(満充電)~0%(完全放電)とする。そのため、例えば、蓄電機器のカタログや技術資料等に「SOC30%~80%で使用する」と記載されている場合、この「30%~80%」が本発明の「0%~100%」に相当する。
【0140】
さらに、各系列の蓄電機器にそれぞれ接続されるDC・AC変換器の変換効率が異なる場合、演算部7pは、2系列の蓄電機器全体の充電時及び放電時の総合効率を求め、求めた充電時及び放電時の総合効率を用いて2系列の蓄電機器全体を1つの蓄電機器と見なす。
【0141】
図14aに示す如く、太陽光発電機器が蓄電機器にAC連結されている場合、まず、第一系列の蓄電機器のACベースでの放電量をPD1、第一系列の蓄電機器の双方向DC・AC変換器の変換効率ηA1とすると、第一系列の蓄電機器のDCベースの放電量は、下記式1で表される。
【0142】
【数1】
【0143】
また、第一系列の蓄電機器のACベースでの充電量PC1は、下記式2で表される。
【0144】
【数2】
【0145】
2系列の蓄電機器の充電率(SOC)が等しくなるように放電するためには、DCベースの各放電電力をP’D1,P’D2[kW]、各蓄電機器の蓄電容量をQB1,QB2[kWh]とすると下記式3を満たさなければならない。
【0146】
【数3】
【0147】
そして、ACベースでの放電量をPD1,PD2とすると、上記式3は下記式4となり、放電電力の比(PD2/PD1)となる。
【0148】
【数4】
【0149】
よって、この放電時の総合効率は、下記式5により求められる。
【0150】
【数5】
【0151】
他方、2系列の蓄電機器の充電率(SOC)が等しくなるように充電するためには、DCベースの各充電電力をP’C1,P’C2[kW]、各蓄電機器の蓄電容量をQB1,QB2[kWh]とすると下記式6を満たさなければならない。この式6は式7となり、充電効率の比となる。そして、充電時の総合効率も上記放電時と同様に下記式8により求められる。
【0152】
【数6】
【0153】
【数7】
【0154】
【数8】
【0155】
他方、図14bに示す如く、太陽光発電機器が蓄電機器にDC連結されている場合、太陽光発電電力のDC・DC変換器の出力PPVのうち、蓄電機器に流れる分が充電電力P’Cは、下記式9となる。そして、この時の太陽光発電電力の配分は、下記式10となる。これにより、2系列のDC連結の場合であっても総合効率が求められる。
【0156】
【数9】
【0157】
【数10】
【0158】
なお、上記各実施形態において、熱電機器として、発電系機器としてコージェネレーションを含むものであった。しかし、例えば、コージェネレーション等の発電系機器を含まず、蓄電機器と太陽光発電機器と熱源機器とを含む熱電設備において、太陽光発電の余剰活用をシミュレートすることも可能である。
【0159】
太陽光余剰活用をシミュレートする場合、設定は、例えば、蓄電機器の放電時間帯と、放電時間帯毎の放電量と、蓄電機器の充電スケジュールが設定される。この例では、余剰となる太陽光発電を充電し、夕方の電力が不足する時間帯に放電する。
【0160】
図13aに示す如く、充電スケジュールとして、任意の時間帯毎に充電量を設定する。これは、日照条件等に基づいて予め予測(シミュレート)した余剰太陽光発電量を充電量として設定している。上述したように、技術の進展により、パワーコンディショナーにおいて1%単位での定格出力制御(連続制御)が可能となった。よって、太陽光発電条件設定部42により太陽光発電機器の出力制御を連続制御とすることで、太陽光発電機器と蓄電機器とを少なくとも含む熱電設備Mにおいて、蓄電及び放電を考慮した電力負荷のシミュレーションが可能となる。
【0161】
本例において、図13b,cに示すように、8時~10時において電力負荷は、太陽光発電で賄えていないので、買電電力により電力バランスを取っている。一方、7-8時、10~13時、14-15時においては、太陽光発電で電力負荷を賄えており、買電が不要となる。そして、余剰分を電力単価が高くなる16時以降に放電し電力負荷のバランスをとっている。このように、充電スケジュールに日射予報等を考慮して、余剰電力量の予測値を想定して設定することで余剰太陽光発電を充電に回す運転のシミュレーションも可能となる。
【0162】
太陽光余剰活用をシミュレートする場合、熱電設備のシミュレーションシステムの構成は、以下の構成となる。
【0163】
複数の熱電機器が接続され、少なくとも電力及び燃料(以下、「供給エネルギー」という。)が供給され、少なくとも電力、低冷水、冷水、温水、給湯、高圧蒸気及び低圧蒸気のうち少なくともいずれか2種類のもの(以下、「複合全エネルギー」という。)を製造して利用設備に供給する熱電設備における前記熱電機器の運転条件と供給エネルギーの使用量又は複合全エネルギーの製造量との関係を求める熱電設備のシミュレーションシステムであって、
前記熱電機器は、少なくとも、太陽光発電機器及び蓄電機器並びにモータを用いたポンプを少なくとも備える熱電機器を含み、
日別で時間帯毎に利用設備で必要とされる複合全エネルギーの量を設定するエネルギー負荷設定部と、
前記熱電設備及び前記利用設備の少なくとも外気温度又は湿球温度のいずれか並びに前記太陽光発電機器の水平面日射量を含むプロセス条件を設定するプロセス条件設定部と、
時間帯別の前記熱電機器毎の運転可否及び運転優先順位を設定する運転条件設定部と、
前記運転条件設定部の運転条件に従い前記熱電設備を運転させた結果の前記供給エネルギーの使用量を少なくとも計算する演算部とを備え、
前記運転条件設定部は、前記蓄電機器の構成及び充放電条件を設定する蓄電条件設定部と、前記太陽光発電機器の出力効率を設定すると共に前記太陽光発電機器の出力制御を連続制御に設定する太陽光発電出力条件設定部とをさらに有し、
前記熱電機器のうち前記太陽光発電機器及び前記蓄電機器を除くいずれかが前記プロセス条件によって変動する部分負荷特性を含み、
前記太陽光発電機器は、前記プロセス条件のうち前記水平面日射量に基づく斜面日射量及び外気温度によって変動する出力特性を備え、
前記演算部は、
前記連続制御における前記太陽光発電機器の出力変動及び前記蓄電機器の前記充放電条件に伴い、前記複合全エネルギーのいずれかの製造量が前記エネルギー負荷設定部で設定した目標値になるように当該熱電機器の負荷率を変更させて前記熱電設備の電力エネルギーの使用量の算出を行って、前記蓄電機器の1日の合計充電量と前記蓄電機器の1日の合計放電量とが等しくなり且つ電力エネルギーのバランスを維持し得る前記蓄電機器の充電量及び放電量を時間帯別に求め、
求めた前記充電量を時間帯毎に電力エネルギーの使用量に加算し、
加算された電力エネルギーの使用量に基づいてユーティリティー消費量を計算する熱電設備のシミュレーションシステム。
【0164】
上記実施形態において、太陽光関連機器のパネル傾き及び方位をユーザーが入力し、その入力値(固有値)に基づき斜面日射量を求めた。しかし、例えば、太陽追尾型の太陽光発電機器の場合、これら角度は季節(月)や時間で変動する。その場合、ユーザーの入力に替えて例えば月別・時間毎に最適なパネル傾き及び方位を算出し、その算出値に基づき斜面日射量を求めるとよい。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明は、複数の熱電機器が接続され、少なくとも電力及び化石燃料が供給され、電力、低冷水、冷水、温水、給湯、高圧蒸気及び低圧蒸気を製造して利用設備に供給する熱電設備において、熱電設備が少なくとも太陽光関連機器を有し、複合全エネルギーのいずれかを製造するのに要するエネルギー使用量をシミュレートする熱電設備のシミュレーションシステムとして利用することができる。また、本発明は、エネルギー負荷設定部、基本条件設定部、システム構築設定部及び運転条件設定部の条件で求められた電力消費量及び化石燃料及び他の燃料消費量並びに環境負荷データ設定部の単位環境負荷をそれぞれ乗じて環境負荷(一次エネルギー、CO2、NOx、SOx)をシミュレートするシステムとして利用することができる。さらに、本発明は、熱電機器の現状シミュレートによる運転診断、運転方法の変更による省エネルギー、機器リニューアルによる改良とその省エネルギー、環境負荷低減の評価及び熱電設備の最適設計のコンサルテーションに利用することができる。
【符号の説明】
【0166】
1:シミュレーションシステム、2:ユーザー端末、3:管理者端末、4:DBサーバー、5:ネットワーク、6:ユーザーインターフェイス、6a:モニタ、6b:キーボード、6c:マウス、7:CPU(演算手段)、7a:バス、7b:一時記憶メモリ、7c:HDD、7d:ネットワークアダプタ、7p:演算部、7q:計算判定部、7x:データファイル、7y:処理用アプリケーション(演算手段)、7z:負荷作成アプリケーション、10:エネルギー負荷設定部、20:基本条件設定部、21:ユーティリティーコスト設定部、21a:電力コスト設定部、21b:燃料コスト設定部、22:プロセス条件設定部、23:環境負荷データ設定部、24:温度データ設定部、30:システム構築設定部、40:運転条件設定部、41:蓄電条件設定部、42:太陽光発電出力条件設定部、42a:連結状態選択部、43:売電条件設定部、50:運転結果出力部、60:ケースファイル等作成部、70:表示制御部、71:表示ウィンドゥ、100:データベース群、100a:読込データ、110:個別データ群、200:顧客データベース、201:ケースファイルデータベース、
Ab:AC母線、Db:DC母線、F:利用設備、M:熱電設備、M120a:排熱ボイラ、M190:蓄電機器、M190a:双方向DC・AC変換器、M1101:パワーコンディショナー、M1102:DC・DC変換器
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図10c
図11a
図11b
図11c
図11d
図11e
図11f
図12a
図12b
図12c
図13a
図13b
図13c
図14a
図14b